(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のガラス成形体の製造装置及び製造方法の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、共通の構成及び機能を有する部位については、同じ符号を付して、説明を省略する。
図1は、本実施形態で用いられるガラス成形体の製造装置の構成を示す水平断面図であり、
図2は、
図1におけるA−A断面図、
図3は
図1におけるB−B断面図である。
図1に示すように、本実施形態のガラス成形体の製造装置1は、有底円筒状に形成された装置筐体2と、装置筐体2内に設けられた回転テーブル4と、回転テーブル4の上方に設けられた水平断面円弧状の内部ケーシング6と、を有する。これら装置筐体2、内部ケーシング6及び回転テーブル4は同心同軸に配置されている。
【0013】
装置筐体2は、上下に略円形の上蓋および底板(図示省略)が取り付けられており、その内部は密閉状態にある。装置筐体2の内部空間は不活性ガス雰囲気とされている。不活性ガスとしては、窒素やアルゴンなどが使用され、酸素濃度が5ppm以下であることが好ましい。なお、このように内部空間を不活性ガス雰囲気とすることで、金型ユニット8の酸化やガラス材料の表面変質を防止できる。
【0014】
上蓋には、成形型を装置内に供給するとともに成形型を装置内から搬出できる搬入・搬出口(図示せず)が形成されていて、その下方の装置内部には搬入・搬出部46が形成されている。なお、本実施形態では、搬入・搬出部46が本発明における供給部と搬出部とを兼ね備えた例を示しているが、搬入部(供給部)と搬出部(搬出口)とを個別に設けてもよい。
【0015】
回転テーブル4は、回転盤10と、回転盤10の中心に接続された駆動軸(図示せず)と、駆動軸を回転させる、例えば、モータなどの駆動機構(図示せず)と、を備える。回転盤10上には、処理室の数に応じた数(本実施形態では8個)の金型ユニット8が等間隔に配置されている。金型ユニット8は、後述するように、支持台(支持部材)12と、支持台12に載置された複数の(本実施形態では4つ)の成形型52と、により構成される。
【0016】
回転盤10上に配置された金型ユニット8は、回転盤10が回転することにより、内部ケーシング6内の各処理室を間欠的に移送される。本実施形態では、回転テーブル4は、駆動機構が所定時間おきに、間欠的に45度ずつ回転することにより、所定の半径の円周に沿って金型ユニット8を搬送する。この金型ユニット8の搬送される経路が、本発明の搬送経路に相当する。また、回転テーブル4は、各回転動作の間に、予め設定された所定の停止時間にわたり停止する。なお、この回転テーブル4の停止時間は、後述するプレス室26におけるプレス処理に要する時間よりも長くなるように決定されている。
【0017】
内部ケーシング6は、装置筐体2と同心同軸に水平方向に270度の角度範囲にわたって円弧状に延びる内壁6Aと、内壁6Aの半径方向外側に位置し、水平方向に270度の角度範囲にわたって円弧状に延びる外壁6Bと、内壁6Aと外壁6Bの上部の間を塞ぐ天井部と、内壁6Aと外壁6Bの下部の間を塞ぐ底部とを有する。これら内壁6A、外壁6B、天井部6C、及び底部6Dにより、内部ケーシング6内には水平断面が円弧形状の処理空間が形成されている。内部ケーシング6の底部6Dには、金型ユニット8の搬送経路に沿って、円弧状のスリット6Eが形成されている。
【0018】
内部ケーシング6の処理空間は、回転テーブル4の回転方向に45度の角度範囲で6つの室に区切られている。これら6つの室は、金型ユニット8の搬送経路に沿って、第1加熱室20、第2加熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30の順序で並んでいる。本実施形態における第1加熱室20及び第2加熱室22は本発明の加熱部に相当し、本実施形態の均熱室24は本発明の均熱部に相当し、本実施形態のプレス室26は本発明のプレス部に相当し、本実施形態の第1徐冷室28及び第2徐冷室30は本発明の冷却部に相当する。
【0019】
加熱部は、常温に近い温度の金型ユニット8の成形型52とガラス材料60をプレス成形に適した温度まで急速に加熱するための処理部である。本実施形態では、加熱部として、第1加熱室20及び第2加熱室22の2つの加熱室を設け、段階的に金型ユニット8を昇温しているが、処理時間と目的温度に応じて室数を増減してもよい。
【0020】
均熱部は、金型ユニット8をほぼ一定の温度で加熱することにより、成形型52とガラス材料60を均熱化して、プレス成形に適切な温度にするための処理部である。なお、プレス成形に適切な温度は、ガラス硝種や成形体の形状、体積などによって異なるが、概ねガラス材料が10
6〜10
11dPa・sの粘度となる温度であり、ガラス屈伏点温度[Ts]近傍であることが好ましい。
【0021】
プレス部は、成形型52に荷重を印加することにより、所定の温度まで加熱され軟化したガラス材料を変形させるとともに成形型の成形面の形状を転写して、ガラス成形体を形成する処理部である。プレス部は、後述する
図10に示した実施形態のように、複数個所設けてもよい。
【0022】
冷却部は、プレス部にて形成されたガラス成形体を所定の冷却速度で徐冷する徐冷部を含む処理部である。本実施形態では、冷却部として第1冷却室28及び第2冷却室30の2つの冷却室を設け、段階的に金型ユニット8を徐冷しているが、必要に応じて室数を増減してもよい。
【0023】
内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間には、隣接する処理室を区画するためのシャッター(図示せず)が設けられている。
【0024】
第1加熱室20、第2加熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30の搬送経路の両側部には、それぞれ、ヒータ32、34、36、38、40、42が設けられている。これらヒータ32、34、36、38、40、42は、それぞれ、第1加熱室20、第2加熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30内を所定の温度になるように加熱している。
【0025】
また、
図3のみに示すが、均熱室24には、内壁6A及び外壁6Bに沿ってリフレクター36Aが設けられている。リフレクター36Aは、ヒータ32から放射された熱エネルギーを反射するとともに、ヒータ外部へ熱が放出されるのを防ぐ。これにより、熱エネルギーを集中的に成形型に導き、成形型を効率良く加熱することができる。なお、リフレクター36Aは、ヒータ32、34、36、38、40、42が設けられている第1加熱室20、第2加熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30内にも設置される。
【0026】
また、
図2及び
図3に示すように、均熱室24には、複数の遮蔽機構62が設けられている。各遮蔽機構62は、鉛直断面形状がコの字形の遮蔽部64と、遮蔽部64の上部に接続され、上下方向に延びる軸部66と、軸部66を上下させる昇降機構68とにより構成される。遮蔽部64は、例えばニッケル合金やタングステン合金等の耐熱性の高い金属またはセラミックスにより製作される。遮蔽機構62は、金型ユニット8の成形型52のそれぞれに対して金型ユニット8と同数設けられている。また、各遮蔽機構62の昇降機構68は、モータや油圧シリンダ等の駆動機構を有し、制御部70に通信可能に接続されている。制御部70は、昇降機構68を制御し、所望のタイミングで遮蔽部64を下降及び上昇させることができる。
【0027】
プレス室26の上方の上蓋には、プレス機構(図示せず)が設けられている。プレス機構は、支持台12に載置された複数の成形型それぞれに対応して設けられたモータや油圧シリンダ等の駆動機構を備え、この駆動機構を駆動することにより、駆動機構の一端部に取り付けられたプレスヘッドが、プレス室26内の金型ユニット8の各成形型52を上方から押圧し、ガラス素材に対してプレス処理を行う。なお、回転テーブル4のプレス機構の下方に相当する位置には、プレス機構が成形型を押圧する際に、回転盤10または支持台12を下方から支持する受圧部材を設けておくことが望ましい。
【0028】
図1に示すように、装置筐体2内の搬送経路の第2徐冷室30と、第1加熱室20との間には、急冷部44及び搬入・搬出部46が形成されている。急冷部44は、金型ユニット8を急速に冷却するための領域であり、周囲にヒータが配置されていない。また、搬入・搬出部46は搬入・搬出口を通じて、成形が完了したガラス成形体が収容された成形型と、成形処理が行われていない新たなガラス材料が収容された成形型とを交換するための領域である。なお、搬入・搬出部46には、金型ユニット8を昇降させることができる搬入・搬出機構が設けられており、搬入・搬出機構により金型ユニット8が持ち上げられることにより、搬入・搬出口から成形が完了した成形型52を取り出し、新たな成形型52を支持台12に載置することができる。この搬入・搬出機構が本発明の供給機構及び搬出機構に相当する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、金型ユニット8は、支持台12と、支持台12に載置された複数の(本実施形態では4つ)の成形型52と、により構成される。これら成形型52の材料としては、炭化珪素や超硬合金、窒化珪素等が用いられている。支持台12は、基部12Aと、基部12Aに立設された複数の(本実施形態では4つ)の円柱状の支持部12Bとを備える。各支持部12Bの先端部には、各支持部12Bの先端部の温度を検知可能な温度センサー13が埋設されている。この温度センサー13は制御部70に通信可能に接続されており、各支持部12Bの温度センサー13により測定された温度は、制御部70へと送信される。なお、
図2及び
図3に示すように、成形型52が支持台12に載置された状態では、各支持部12Bの先端部の温度は成形型52の底部の温度と略等しく、温度センサー13により測定された温度は、成形型52の温度とみなすことができる。
【0030】
各成形型52は、支持台12のそれぞれの支持部12B上に載置されている。成形型52は、製造すべきガラス成形体の形状に合わせて形成された成形面を有する上型54、下型56と、これら上型54及び下型56の径方向の相互位置を規制する胴型58とを有する。上型54及び下型56の成形面には離型膜が成膜されている。ガラス材料60は、上型54と下型56の間に挟み込まれた状態で配置されている。ガラス材料60をガラス屈伏点温度以上に加熱した状態で、上下型54、56を相対的に近接する方向に加圧することにより、ガラス材料に成形面形状が転写され、所望の形状のガラス成形体(光学素子)にプレス成形することができる。
【0031】
制御部70には、レンズの成形を開始する前に、予め、遮蔽機構62を停止させた状態で支持台12に成形型52を載置して製造装置1を駆動し、その際、温度センサー13により測定された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴が記録されている。後述するように、制御部70は、この記録された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴に基づき、各金型ユニット8のそれぞれの金型の温度が実質的に均一になるように、昇降機構68が遮蔽部64を下降及び上昇させるタイミングを制御する。
【0032】
以下、本実施形態のガラス成形体の製造装置1により、ガラス成形体を製造する方法を説明する。なお、以下の説明では、一の金型ユニット8に着目して、ガラス成形体を製造する方法を説明するが、本実施形態のガラス成形体の製造装置1では、各処理室の数に応じた複数の金型ユニット8が回転テーブル4の回転盤10上に45度の等角度範囲で配置される。そして、これら複数の金型ユニット8が回転テーブル4により連続して搬送経路に沿って搬送されて、各処理室で加熱処理、プレス処理、徐冷処理等の処理が並行して行われる。
【0033】
まず、回転テーブル4が回転し、成形処理が完了したガラス成形体を収容する金型ユニット8が搬入・搬出部46に到達すると、搬入・搬出機構により金型ユニット8が持ち上げられ、搬入・搬出口から、処成形理が完了した4個の成形型52を同時に装置筐体2の外部へ搬出する。そして、これらの成形型52を図示しないロボットハンドで把持して、支持台12の支持部12Bから取り外す。その後、新たなガラス材料60が装填された成形型52を支持台12の支持部12Bにそれぞれ載置する。
【0034】
そして、前回の回転動作の完了から予め設定された回転テーブル4の停止時間(以下、タクトタイムという)が経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、成形型52は支持台12に保持された状態で、第1加熱室20内に搬送される。この際、支持台12の支持部12Bは、内部ケーシング6の底部に設けられたスリット6E内を通るため、支持部12Bと内部ケーシング6とが干渉することはない。
【0035】
第1加熱室20に金型ユニット8が搬送されると、金型ユニット8を加熱する第1の加熱ステップが行われる。第1加熱室20内は、搬送経路の両側に設けられたヒータ32により、ガラス屈伏点温度(Ts)と同等もしくはそれ以上の温度に保たれている。そして、第1加熱室20に搬送された金型ユニット8は、ヒータ32により加熱される。
【0036】
前回の回転テーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、金型ユニット8は、第2加熱室22内に搬送される。
【0037】
第2加熱室22に金型ユニット8が搬送されると、金型ユニット8の成形型52をガラス屈伏点温度程度まで加熱する第2の加熱ステップが行われる。第2加熱室22内は、ヒータ34によりガラス屈伏点温度と同等もしくはそれ以上の温度に保たれている。これにより、第2加熱室22内に搬送された金型ユニット8内のガラス材料60がガラス屈伏点温度程度に到達するまで加熱される。
【0038】
前回の回転テーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、金型ユニット8は、均熱室24内に搬送される。
【0039】
均熱室24に成形型52が搬送されると、成形型52及び内部に収容されたガラス材料60を均熱化する均熱ステップが行われる。均熱室24内は、ヒータ36によりガラス屈伏点温度程度に保たれている。
【0040】
本実施形態では、均熱ステップにおいて、成形型52の温度のライン間ばらつき及びユニット間ばらつきを低減するため、遮蔽機構62の遮蔽部64により均熱室24内に位置する金型ユニット8の各成形型52をヒータ36から遮蔽し、さらに、制御部70により各金型ユニット8の複数の成形型52の温度が実質的に均一になるように、複数の遮蔽機構62の遮蔽時間をそれぞれ制御する。具体的には、制御部70に記録された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴における均熱室24から搬出される際の温度が、プレス処理における最適温度に対して非常に高い場合には、遮蔽機構62による遮蔽時間を長時間に設定し、プレス処理における最適温度に対してわずかに高い場合には、遮蔽機構62による遮蔽時間を短時間に設定する。
【0041】
以下、一例をあげて、各金型ユニット8の複数の成形型52の温度が実質的に均一になるように遮蔽機構62による遮蔽時間の制御方法を説明する。なお、以下の説明では、各金型ユニット8における支持台12の複数の支持部12Bを、搬送経路の進行方向前側から後側に向かってそれぞれAライン、Bライン、Cライン、Dラインということとする。また、金型ユニット8については、各処理部に搬送される順番に第1金型ユニット、第2金型ユニット、・・・ということとする。
【0042】
図4は、第1金型ユニットにおけるA〜Dラインの成形型52に対して、各遮蔽機構62によりヒータ36から遮蔽するタイミングを示すタイムチャートである。また、
図5は、第2金型ユニットにおけるA〜Dラインの成形型52に対して、各遮蔽機構62によりヒータ36から遮蔽するタイミングを示すタイムチャートである。これら各遮蔽機構62により成形型52をヒータ36から遮蔽するタイミングは、制御部70に記録された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴に基づき決定されている。
【0043】
本実施形態のように、支持台12に4つの成形型52が取り付けられている場合には、搬送経路の進行方向の中央に位置する成形型52及び支持部12Bは、進行方向の前方側及び後方側の端に位置する成形型52及び支持部12Bに比べて、ヒータ36から大量に輻射熱を受けるとともに、隣接する成形型52及び支持部12Bの熱を受けるため、温度が上昇しやすい。このため、制御部70に記録されている温度履歴は、各金型ユニットに共通してA,Dラインに比べて、B、Cラインの方が高温になる傾向にある。
【0044】
さらに、本実施形態のように、均熱室24が第2加熱室22とプレス室26との間に設けられている場合には、プレス室26の方が第2加熱室22に比べて高温に保たれている。このため、制御部70に記録されている温度履歴は、各金型ユニットに共通してAラインの方がDラインに比べて高温になる傾向にある。
【0045】
したがって、制御部70に記録されている均熱室24から搬出される際の温度も、B、Cラインの成形型52及び支持部12Bの温度が最も高く、次いで、Aラインの成形型52及び支持部12Bの温度が高く、Dラインの成形型52及び支持部12Bの温度が最も低くなる場合が多い。
【0046】
このため、本実施形態では、A〜Dラインの遮蔽時間は、各ラインの温度履歴における均熱室24から搬出される際の温度と、プレス処理における最適温度との差に応じて決定する。
図4に示すように、第1金型ユニット8において、最も温度が高いB、Cラインでは、均熱室24に金型ユニット8が搬送されてから5秒後から40秒後まで、すなわち、35秒間にわたって遮蔽機構62により成形型52を遮蔽する。また、次いで温度が高いAラインでは、均熱室24に金型ユニット8が搬送されてから、5秒後から20秒後まで、すなわち、15秒間にわたって遮蔽機構62により成形型52を遮蔽する。また、最も温度が低いDラインでは、均熱室24に金型ユニット8が搬送されてから、5秒後から15秒後まで、すなわち、10秒間にわたって、遮蔽機構62により成形型52を遮蔽する。これにより、プレス室26に搬送される際の金型ユニット8における各成形型52のライン間ばらつきは低減されている。
【0047】
さらに、支持台の製造誤差により、各金型ユニット間で均熱室24から搬出される際の温度にばらつきが生じることがある。本実施形態では、第2金型ユニットのBラインの均熱室24から搬出される際の温度が、第1金型ユニットのBラインの温度よりも高温になっていたとする。このような場合には、第2金型ユニットのBラインの遮蔽機構62による遮蔽時間を第1金型ユニットのBラインに対する遮蔽時間より長くする。すなわち、
図5に示すように、Bラインでは、均熱室24に金型ユニット8が搬送されてから、5秒後から45秒後まで、すなわち、40秒間にわたって遮蔽機構62により成形型52を遮蔽することとする。これにより、プレス室26に搬送される際の第1及び第2金型ユニット8における各成形型52のユニット間ばらつきは低減されている。
【0048】
このようにして、制御部70が、第1〜第8金型ユニット8の各成形型52に対して、それぞれ、適切な遮蔽機構62による遮蔽時間が設定し、これに基づき、制御部70により遮蔽機構62の遮蔽部64を昇降させるタイミングを制御する。これにより、各成形型52は均熱室24において実質的に均一な温度に均熱化される。
【0049】
なお、上述の通り、本明細書において「温度が実質的に均一」とは、ライン間ばらつき及びユニット間ばらつきにおける最大温度差が10度以下であることをいう。仮に、ライン間ばらつきが10℃以下に抑えられたとしても、ユニット間の温度ばらつきが10℃を超えてしまうと、ガラス素材の粘度で10〜10
2dPa・sの差が生じてしまう。このような粘度差が生じると、プレス成形品の肉厚が均一にならなかったり、発泡やカン・ワレ、転写不良などの成形不良が発生したりしてしまう。本実施形態によれば、ライン間ばらつき及びユニット間ばらつきにおける最大温度差を10度以下、厳密に制御すれば5℃以下に抑制できるので、成形不良を招くことなく肉厚が均一な成形体を得ることができる。
【0050】
前回の回転テーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、金型ユニット8はプレス室26内に搬送される。
【0051】
プレス室26に金型ユニット8が搬送されると、プレスステップが行われる。プレスステップでは、ヒータ38により金型ユニット8をガラス屈伏点温度程度に保つように加熱しながら、プレス機構により金型ユニット8の成形型52を押圧し、ガラス材料をプレス成形する。プレス荷重は、10〜1000kgf/cm
2の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0052】
そして、プレスステップが完了し、前回の回転テーブル4の回転からタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、金型ユニット8の成形型52は、第1徐冷室28内に搬送される。
【0053】
第1徐冷室28ではヒータ40により成形型52の温度を調整しながら、ゆっくりと成形型52を冷却する第1の徐冷ステップが行われる。ことのきの冷却速度は、10〜100℃/分の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0054】
そして、第1の徐冷ステップが完了し、前回の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、金型ユニット8の成形型52は、第2徐冷室30内に搬送される。
【0055】
第2徐冷室30ではヒータ42により成形型52の温度を調整しながら、ゆっくりと成形型52を冷却する第2の徐冷ステップが行われる。ことのきの冷却速度は、10〜100℃/分の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0056】
前回の回転テーブル4の回転からタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、回転テーブル4が平面視反時計回りに45度回転する。これにより、金型ユニット8の成形型52は、第2徐冷室30から急冷部44へ搬送される。
【0057】
急冷部44に成形型52が搬送されると、急冷ステップが行われる。急冷部44には、ヒータが設置されておらず、装置の周囲と同程度の温度となっている。このため、金型ユニット8及び成形体52の内部のガラス成形体は急速に冷却される。このときの冷却速度は、徐冷ステップでの冷却速度よりも速く、例えば、30〜300℃/分の範囲内で適宜設定することが好ましい。また、必要に応じて金型ユニット8に向けて冷却ガスを吹き付けてもよい。
【0058】
さらに、前回の回転テーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、回転テーブル4が45度回転して、金型ユニット8が搬入・搬出部46へ移送される。
成形処理が完了したガラス成形体を収容する金型ユニット8が搬入・搬出部46に到達すると、昇降機構によって金型ユニット8が上昇し、搬入・搬出口から、成形処理が完了した成形型52を複数個同時に装置筐体2の外部へ搬出する。
以上の工程により、製造装置1によりガラス成形体を連続的に製造することができる。
【0059】
なお、上記の実施形態では、均熱室24のみに遮蔽機構62を設けているが、これに限らず、第1加熱室20、第2加熱室22、第1徐冷室28、及び第2徐冷室30に遮蔽機構62を設け、均熱室24と同様に、遮蔽機構62による遮蔽時間を制御することとしてもよい。この場合には、各室における遮蔽機構の遮蔽時間は、制御部70に記録されている温度履歴における各室から搬出される直前の温度に基づき設定すればよい。
【0060】
また、遮蔽機構62を加熱部のみに設けてもよい。加熱部は金型ユニット8を加熱する初期段階にあるため、加熱の初期から金型ユニット8の均熱化を図ることができる。なお、本実施形態のように、複数の加熱室(第1加熱室20、第2加熱室22)が設けられている場合には、遮蔽機構62を何れか一つの加熱室に設けてもよいし、複数の加熱室に設けてもよい。
【0061】
発明者らは、本発明の製造装置によれば、成形型の温度のライン間ばらつき、及びユニット間ばらつきを低減できることを実験により確認した。以下、この実験について説明する。
【0062】
本実験では、遮蔽機構62を駆動した状態及び遮蔽機構62を停止した状態で、それぞれ製造装置1を駆動してガラス成形体を製造し、各金型ユニット8の各ラインA〜Dの温度履歴を測定した。なお、本実験では、均熱室24に加えて、第2加熱室22にも遮蔽機構62を設けている。
【0063】
図6は、遮蔽機構62を駆動した状態で製造装置1を駆動してガラス成形体を製造した場合(以下、実施例1という)における、温度センサーにより測定されたA〜Dラインの支持部12Bの先端の温度履歴(成形型の温度履歴に相当する)を示すグラフである。また、
図7は、遮蔽機構62を停止させた状態で製造装置1を駆動してガラス成形体を製造した場合(以下、比較例1という)における、温度センサーにより測定されたA〜Dラインの支持部12Bの先端の温度履歴を示すグラフである。なお、これら温度履歴は、第1〜第8金型ユニットの平均の温度履歴を示している。
【0064】
図7に示すように、比較例1では、第2加熱ステップから均熱ステップの間において、上述の通り、B、Cラインの支持部12Bの先端の温度は、A、Dラインに比べて非常に高く上昇している。また、Aラインの支持部12Bの先端の温度は、Dラインに比べて高くなっている。均熱ステップの開始時における最も温度の高いBラインと、最も温度の低いDラインとの温度差は、約15度となっている。そして、この温度差は、プレス工程、及び徐冷工程においてもほとんど解消されることなく残存している。
【0065】
これに対して、
図6に示すように、実施例1では、第2の加熱ステップから均熱ステップの間においても、A〜Dラインの温度は実質的に同一な温度履歴を示している。また、均熱ステップの開始時における最も温度の高いBラインと、最も温度の低いDラインとの温度差は約5度と、比較例に比べて非常に小さくなっている。そして、この温度差はプレス工程、及び徐冷工程において、大きくなることはない。
【0066】
また、
図8は、遮蔽機構62を駆動した状態で製造装置1を駆動してガラス成形体を製造した場合(以下、実施例2という)であって、均熱室における温度センサーにより測定された第1〜第8の金型ユニットのA〜Dラインの支持部12Bの先端の温度を示すグラフである。また、
図9は、遮蔽機構62を停止させた状態で製造装置1を駆動してガラス成形体を製造した場合(以下、比較例2という)であって、均熱室における温度センサーにより測定された第1〜第8の金型ユニットのA〜Dラインの支持部12Bの先端の温度を示すグラフである。なお、
図8及び
図9における横軸の数字1から8はそれぞれ、第1〜第8金型ユニットに対応している。
【0067】
図9に示すように、比較例2では、各金型ユニットにおいて、ライン間で大きな温度ばらつきが生じており、第1〜第8金型ユニットにおけるライン間の温度差は、ほとんどが10℃を超えている。また、比較例2では、均熱室から搬出された際の各金型ユニットの温度にもばらつきが生じている。最も温度の高い第5の金型ユニットのBラインの温度と、最も温度の低い第3の金型ユニットのDラインの温度の差は、15℃以上となっている。
【0068】
これに対して、
図8に示すように、実施例2では、各金型ユニットにおけるライン間の温度ばらつきは比較例2に比べて非常に小さくなっており、第1〜第8金型ユニットにおけるライン間の温度差はいずれも5℃以下である。また、実施例2では、均熱室から搬出された際の各金型ユニットの温度のばらつきも非常に小さくなっている。
このように、上記の実験により、本実施形態のガラス成形体の製造装置によれば、各金型ユニットにおけるライン間の温度ばらつきのみならず、金型ユニット間の温度のばらつきをも低減できることが確認された。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、金型ユニット8の支持部12Bに載置される複数の成形型52に対して、それぞれ、遮蔽機構62を設け、制御部によりこれら遮蔽機構62による遮蔽時間を各金型ユニット8のそれぞれの成形型52に対して制御するため、均熱室24から搬出される際の成形型52の温度のばらつき、特に、ユニット間ばらつきを低減することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、予め、遮蔽機構62を停止させた状態で支持台12に成形型52を載置して製造装置1を駆動し、その際、測定された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴が制御部70に記録されている。そして、制御部70はこの温度履歴に基づき、遮蔽機構62による遮蔽時間を制御する。このように、実際に駆動した状態における温度履歴に基づき、遮蔽機構62による遮蔽時間を制御することにより、各成形型52の温度のばらつきをより低減することができる。
【0071】
そして、このように各成形型52の温度のばらつきを低減できるため、ガラス成形体の成形精度を向上することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、回転テーブル4により円形経路に沿って金型ユニット8を搬送することとしているが、これに限らず、アーム等の搬送手段により金型ユニット8を搬送してもよい。また、搬送経路は円形には限られず、直線状としてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、予め、測定された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴に基づき、制御部70は遮蔽機構62による遮蔽時間を制御することとしたが、本発明はこれに限られない。
【0074】
例えば、温度センサー13により測定された各金型ユニット8の各支持部12Bの温度に基づき、リアルタイムで遮蔽機構62の遮蔽時間を制御してもよい。このような場合は、例えば、制御部70は、温度センサー13により測定された温度と基準となる温度との差に基づき、遮蔽機構62により遮蔽すべき時間を算出する。そして、制御部70は、算出した遮蔽時間にわたって、遮蔽機構62により成形型52を遮蔽する。このような構成によっても、各金型ユニットのそれぞれの成形型52の温度を実質的に均一にすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、第1加熱室20、第2加熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30が内部ケーシング6内に形成された製造装置1について説明したが、複数のプレス室を備えた製造装置にも本発明を適用することができる。
【0076】
図10は、2つのプレス室を備えた製造装置101の構成を示す水平断面図である。同図に示すように、
図10に示す製造装置101では、内部ケーシング6内に、加熱室120、第1均熱室122、第1プレス室124、第1徐冷室126、第2均熱室128、第2プレス室130、第2徐冷室132が設けられている。また、加熱室120、第1均熱室122、第1プレス室124、第1徐冷室126、第2均熱室128、第2プレス室130、第2徐冷室132には、それぞれ、ヒータ134、136、138、140、142、144、146が設けられている。
【0077】
このように二つのプレス室を備えた製造装置においても、上記の実施形態と同様に第1及び第2均熱室122、128にそれぞれ遮蔽機構を設けるとよい。
【0078】
この場合、上記の実施形態と同様に、予め、遮蔽機構62を停止させた状態で支持台に成形型52を載置して製造装置101を駆動し、その際、測定された各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴に基づき、各均熱室122、128の遮蔽機構62の遮蔽時間を設定してもよい。さらに、以下のようにして各均熱室の遮蔽機構62の遮蔽時間を設定することも可能である。
【0079】
まず、予め、第1及び第2均熱室122、128の遮蔽機構62を停止させた状態で支持台12に成形型52を載置して製造装置101を駆動し、各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴を測定する。そして、この温度履歴に基づき、第1均熱室122の各遮蔽機構62の遮蔽時間を、第1均熱室122から搬出される直前の温度が実質的に均一になるように設定する。
【0080】
次に、第2均熱室128の遮蔽機構62は停止させ、第1均熱室122の遮蔽機構62を起動させた状態で製造装置101を駆動し、各金型ユニット8のそれぞれの支持部12Bの先端部における温度履歴を測定する。なお、この際、第1均熱室122の遮蔽機構62は上記設定した時間だけ、成形型をヒータ136から遮蔽するように駆動させる。
【0081】
そして、このようにして測定された温度履歴に基づき、第2均熱室128の各遮蔽機構62の遮蔽時間を、第2均熱室128から搬出される直前の温度が実質的に均一になるように設定する。
【0082】
このように、第1及び第2均熱室122、128の遮蔽機構62の遮蔽時間を設定することにより、第1及び第2プレス室124、130に搬入される成形型52の温度をより一層均一にすることができる。
【0083】
本発明は以上説明したような実施形態に限定されることなく本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。たとえば、本発明における遮蔽部64の形状は断面コの字形状の他に断面U字形状や有底円筒状のものであってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、4本の支持部12Bを有する支持台12に成形型52を4個載置した例を示したが、支持部12Bおよび当該支持部に載置される成形型52の数は、複数であれば2、3、5〜8個のいずれの数量であってもよい。
【0085】
以下、本発明を図面を参照しながら、総括する。
本発明のガラス成形体の製造装置1は、
図1に示すように、支持台12と、支持台12に搬送経路に沿って並置され内部にガラス材料60を収容した複数の成形型52と、を含む複数の金型ユニット8を、順次、搬送する回転テーブル4と、搬送経路に沿って設けられたガラス材料に加熱処理を行う第1及び第2加熱室20、22、ガラス材料を均熱化する均熱室24、金型に収容されたガラス材料にプレス処理を行い成形体に成形するプレス室26、及び成形体に徐冷処理を行う第1及び第2徐冷室28、30を含む複数の処理部と、複数の処理部の搬送経路に沿って設けられたヒータ32、34、36、38、40、42と、を備える。そして、
図2及び
図3に示すように、ガラス成形体の製造装置1は、さらに、加熱部(第1加熱室20、第2加熱室22)もしくは均熱室24に設けられ、かつ、複数の成形型52をそれぞれヒータ32から遮蔽することができるように移動可能な複数の遮蔽機構62と、複数の遮蔽機構62により対応する成形型52を遮蔽する遮蔽時間をそれぞれ制御する制御部70と、を備え、制御部70は、各金型ユニット8の複数の成形型52の温度が実質的に均一になるように、複数の遮蔽機構62の遮蔽時間をそれぞれ制御する。
【0086】
また、本発明のガラス成形体の製造方法は、上記の製造装置1を用いた方法であって、第1及び第2加熱室20、22において、ガラス材料に加熱処理を行う加熱ステップと、均熱室24において、ガラス材料を均熱化する均熱ステップと、プレス室26においてガラス材料にプレス処理を行い成形体に成形するプレスステップと、第1及び第2徐冷室28、30において、成形体を冷却する冷却ステップと、を備え、加熱ステップもしくは均熱ステップにおいて、各金型ユニット8の複数の金型の温度が実質的に均一になるように、複数の遮蔽機構62の遮蔽時間をそれぞれ制御する。