(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動軸周りに形成されたパッキン収容溝にVパッキンを収容し、ボルトの締め付けにより軸方向に可動する押圧部材によって前記Vパッキンを変形させて、前記駆動軸周りを封止する軸封装置の調整方法であって、
前記ボルトの締め付けトルクと、前記駆動軸の前記Vパッキンに対する摺動トルクとの相関関係を計測する相関関係計測工程と、
前記相関関係に基づいて、前記ボルトの締め付けトルクを管理する締め付けトルク管理工程と、を有する、ことを特徴とする軸封装置の調整方法。
前記相関関係計測工程の前に、前記ボルトの締め付け及び締め付け解除をセットで行うプレ締め付け工程を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の軸封装置の調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、軸封装置では、気密性を保ちつつ、パッキン材を痛めることなく、また、コントロールモータのトルク不足になることがないような適正な調整を行う必要がある。従来の軸封装置の調整では、コントロールモータを取り外し、駆動軸にバネ測り等を設置して、パッキンを締め付けつつ、駆動軸のパッキン材に対する摺動トルクが適正な値になるように調整していた。
【0007】
しかしながら、ターボ圧縮機の製造時に軸封装置の調整を行っても、搬送時に振動等の影響を受けるため、ターボ圧縮機の納入先で軸封装置の調整を行う必要がある。そうすると、再びコントロールモータを取り外し、駆動軸にバネ測りを設置する等、軸封装置の調整作業が煩雑であった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、作業の煩雑さを解消できる軸封装置の調整方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意実験を重ねた結果、パッキン材にVパッキンを採用した場合に、そのVパッキンを締め付けるボルトのトルクと、駆動軸のVパッキンに対する摺動トルクとの間に相関関係があることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明は、駆動軸周りに形成されたパッキン収容溝にVパッキンを収容し、ボルトの締め付けにより軸方向に可動する押圧部材によって前記Vパッキンを変形させて、前記駆動軸周りを封止する軸封装置の調整方法であって、前記ボルトの締め付けトルクと、前記駆動軸の前記Vパッキンに対する摺動トルクとの相関関係を計測する相関関係計測工程と、前記相関関係に基づいて、前記ボルトの締め付けトルクを管理する締め付けトルク管理工程と、を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ボルトの締め付けトルクと駆動軸の摺動トルクとの相関関係を計測し、ボルトの締め付けトルクを代理として管理することで、駆動軸の摺動トルクを管理することができる。このため、本発明では、コントロールモータを取り外し、駆動軸にバネ測り等を設置し、駆動軸の摺動トルクを直接管理する必要がなく、軸封装置の調整作業の煩雑さを解消できる。
【0010】
また、本発明においては、前記相関関係計測工程の前に、前記ボルトの締め付け及び締め付け解除をセットで行うプレ締め付け工程を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ボルトの締め付けトルクと駆動軸の摺動トルクとの相関関係を計測する前に、ボルトの締め付け及び締め付け解除をセットで行うことで、軸封装置の調整精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記プレ締め付け工程では、前記ボルトの締め付け及び締め付け解除のセットを複数回行う、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ボルトの締め付け及び締め付け解除のセットを複数回行って、ボルトを物理的になじませ、ボルトの締め付けトルクと駆動軸の摺動トルクとの相関関係の再現性を高め、軸封装置の調整精度をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記駆動軸には、モータユニットが接続されており、前記締め付けトルク管理工程は、前記駆動軸と前記モータユニットとが接続された状態で行う、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、駆動軸からモータユニットを取り外すことなく、軸封装置の調整を行うため、作業の煩雑さを解消することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記Vパッキンは、雄アダプタと雌アダプタとの間に複数のV字ピースが挟まれて形成されており、前記パッキン収容溝には、その溝底に前記雄アダプタ側を向けた第1のVパッキンと、前記第1のVパッキンの前記雌アダプタ側に、前記雌アダプタ側を向けた第2のVパッキンと、が収容されている、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、パッキン収容溝に向きの異なる第1のVパッキンと第2のVパッキンとを収容することで、ボルトの締め付けトルクと駆動軸の摺動トルクとの相関関係の再現性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業の煩雑さを解消できる軸封装置の調整方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるターボ冷凍機1の系統図である。
本実施形態のターボ冷凍機1は、例えばフロンを冷媒として、空調用の冷水を冷却対象物とするものである。ターボ冷凍機1は、
図1に示すように、凝縮器2と、エコノマイザ3と、蒸発器4と、ターボ圧縮機5と、を備えている。
【0017】
凝縮器2は、流路R1を介してターボ圧縮機5のガス吐出管5aと接続されている。凝縮器2には、ターボ圧縮機5によって圧縮された冷媒(圧縮冷媒ガスX1)が流路R1を通って供給されるようになっている。凝縮器2は、この圧縮冷媒ガスX1を液化するものである。凝縮器2は、冷却水が流通する伝熱管2aを備え、圧縮冷媒ガスX1と冷却水と間の熱交換によって、圧縮冷媒ガスX1を冷却するようになっている。
【0018】
圧縮冷媒ガスX1は、冷却水との間の熱交換によって冷却され、液化し、冷媒液X2となって凝縮器2の底部に溜まる。凝縮器2の底部は、流路R2を介してエコノマイザ3と接続されている。流路R2には、冷媒液X2を減圧するための膨張弁6が設けられている。エコノマイザ3には、膨張弁6によって減圧された冷媒液X2が流路R2を通って供給されるようになっている。エコノマイザ3は、減圧された冷媒液X2を一時的に貯留し、冷媒を液相と気相とに分離するものである。
【0019】
エコノマイザ3の頂部は、流路R3を介してターボ圧縮機5のエコノマイザ連結管5bと接続されている。ターボ圧縮機5には、エコノマイザ3によって分離した冷媒の気相成分X3が、蒸発器4及び第1圧縮段11を経ることなく、流路R3を通って第2圧縮段12に供給され、効率を高めるようになっている。一方、エコノマイザ3の底部は、流路R4を介して蒸発器4と接続されている。流路R4には、冷媒液X2をさらに減圧するための膨張弁7が設けられている。
【0020】
蒸発器4には、膨張弁7によってさらに減圧された冷媒液X2が流路R4を通って供給されるようになっている。蒸発器4は、冷媒液X2を蒸発させてその気化熱によって冷水を冷却するものである。蒸発器4は、冷水が流通する伝熱管4aを備え、冷媒液X2と冷水と間の熱交換によって、冷水を冷却すると共に冷媒液X2を蒸発させるようになっている。冷媒液X2は、冷水との間の熱交換によって熱を奪って蒸発し、冷媒ガスX4となる。
【0021】
蒸発器4の頂部は、流路R5を介してターボ圧縮機5のガス吸入管5cと接続されている。ターボ圧縮機5には、蒸発器4において蒸発した冷媒ガスX4が流路R5を通って供給されるようになっている。ターボ圧縮機5は、蒸発した冷媒ガスX4を圧縮し、圧縮冷媒ガスX1として凝縮器2に供給するものである。ターボ圧縮機5は、冷媒ガスX4を圧縮する第1圧縮段11と、一段階圧縮された冷媒をさらに圧縮する第2圧縮段12と、を具備する2段圧縮機である。
【0022】
第1圧縮段11にはインペラ13が設けられ、第2圧縮段12にはインペラ14が設けられており、それらが回転軸15で接続されている。ターボ圧縮機5は、モータ10によってインペラ13,14を回転駆動させて冷媒を圧縮するようになっている。インペラ13,14は、ラジアルインペラであり、軸方向で吸気した冷媒を半径方向に導出する不図示の3次元的ねじれを含むブレードを有する。
【0023】
ガス吸入管5cには、第1圧縮段11の吸入量を調節するためのインレットガイドベーン16が設けられている。インレットガイドベーン16は、冷媒ガスX4の流れ方向からの見かけ上の面積が変更可能なように回転可能とされている。インレットガイドベーン16は、ターボ圧縮機5の筐体20の外部に配置されたIGVコントロールモータユニット16a(モータユニット)から駆動力を伝達されて駆動する構成となっている。
【0024】
インペラ13,14の周りには、それぞれディフューザ流路が設けられており、半径方向に導出した冷媒を、当該流路において圧縮・昇圧し、また、さらにその周りに設けられたスクロール流路によって次の圧縮段に供給することができるようになっている。インペラ14の周りには、出口絞り弁17が設けられており、ガス吐出管5aからの吐出量を制御できるようになっている。出口絞り弁17は、ターボ圧縮機5の筐体20の外部に配置されたDDCコントロールモータユニット17a(モータユニット)から駆動力を伝達されて駆動する構成となっている。
【0025】
ターボ圧縮機5は、密閉型の筐体20を備える。筐体20は、圧縮流路空間S1と、第1の軸受収容空間S2と、モータ収容空間S3と、ギヤユニット収容空間S4と、第2の軸受収容空間S5と、に区画されている。圧縮流路空間S1には、インペラ13,14が設けられている。インペラ13,14を接続する回転軸15は、圧縮流路空間S1、第1の軸受収容空間S2、ギヤユニット収容空間S4に挿通して設けられている。第1の軸受収容空間S2には、回転軸15を支持する軸受21が設けられている。
【0026】
モータ収容空間S3には、ステータ22と、ロータ23と、ロータ23に接続された回転軸24と、が設けられている。この回転軸24は、モータ収容空間S3、ギヤユニット収容空間S4、第2の軸受収容空間S5に挿通して設けられている。第2の軸受収容空間S5には、回転軸24の反負荷側を支持する軸受31が設けられている。ギヤユニット収容空間S4には、ギヤユニット25と、軸受26,27と、オイルタンク28と、が設けられている。
【0027】
ギヤユニット25は、回転軸24に固定される大径歯車29と、回転軸15に固定されると共に大径歯車29と噛み合う小径歯車30と、を有する。ギヤユニット25は、回転軸24の回転数に対して回転軸15の回転数が増加(増速)するように、回転駆動力を伝達するものである。軸受26は、回転軸24を支持するものである。軸受27は、回転軸15を支持するものである。オイルタンク28は、軸受21,26,27,31等の各摺動部位に供給される潤滑油を貯溜するものである。
【0028】
このような筐体20には、圧縮流路空間S1と第1の軸受収容空間S2との間において、回転軸15の周囲をシールするシール部32,33が設けられている。また、筐体20には、圧縮流路空間S1とギヤユニット収容空間S4との間において、回転軸15の周囲をシールするシール部34が設けられている。また、筐体20には、ギヤユニット収容空間S4とモータ収容空間S3との間において、回転軸24の周囲をシールするシール部35が設けられている。また、筐体20には、モータ収容空間S3と第2の軸受収容空間S5との間において、回転軸24の周囲をシールするシール部36が設けられている。
【0029】
次に、
図2及び
図3を参照して、インレットガイドベーン16の駆動軸41周りを封止する軸封装置40の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態における軸封装置40の外観を示す斜視図である。
図3は、本発明の実施形態における軸封装置40の構成を示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、IGVコントロールモータユニット16aは、スタッフィングボックス42を介して筐体20に取り付けられている。スタッフィングボックス42は、台形の枠状に形成されている。スタッフィングボックス42の下底部42bは、複数のボルト43aによって筐体20に対し締結固定されている。また、スタッフィングボックス42の上底部42aには、IGVコントロールモータユニット16aが複数のボルト43bによって取り付けられている。
【0031】
図3に示すように、スタッフィングボックス42の上底部42aには、IGVコントロールモータユニット16aの出力軸44が挿通するための挿通穴45が形成されている。出力軸44は、インレットガイドベーン16の駆動軸41と軸カップリング46を介して接続されている。軸カップリング46は、回転方向で出力軸44及び駆動軸41のそれぞれと係合する係合溝47を有し、出力軸44の駆動力を駆動軸41に伝達することが可能な構成となっている。
【0032】
スタッフィングボックス42の下底部42bには、筐体20に形成された挿通穴48に嵌入する嵌入部49が形成されている。なお、嵌入部49の周りには、スタッフィングボックス42と筐体20との間をシールするOリング50が配置されている。このスタッフィングボックス42の下底部42bには、嵌入部49を挿通するように挿通穴51が形成されている。この挿通穴51には、スペーサー52を挟んで駆動軸41が配置されている。軸封装置40は、スタッフィングボックス42に設けられており、挿通穴51に配置された駆動軸41の周りを封止する構成となっている。
【0033】
軸封装置40は、パッキン収容溝60と、Vパッキン70と、押圧部材80と、ボルト90と、を有する。パッキン収容溝60は、駆動軸41周りに円筒状に形成されている。このパッキン収容溝60は、スタッフィングボックス42に形成され、駆動軸41の径よりも大きな径を有している。Vパッキン70は、雄アダプタ71と雌アダプタ72との間に複数のV字ピース73が挟まれて形成されている。
【0034】
パッキン収容溝60には、第1のVパッキン70Aと第2のVパッキン70Bとが収容されている。第1のVパッキン70Aは、パッキン収容溝60の溝底61に雄アダプタ71側を向けて配置されている。また、第2のVパッキン70Bは、第1のVパッキン70Bの雌アダプタ72側に、雌アダプタ72側を向けて配置されている。すなわち、第1のVパッキン70Aは、筐体20の内部から外部へのガス漏れを防止する向きで配置されている。また、第2のVパッキン70Bは、真空気密試験等において、筐体20の外部から内部へのガスの流入を防止する向きで配置されている。
【0035】
押圧部材80は、パッキン収容溝60に収容されたVパッキン70を軸方向に押圧するものである。押圧部材80は、平面視で長方形の板状に形成されており、駆動軸41が挿通する挿通穴81と、ボルト90が挿通する挿通穴82と、Vパッキン70を押圧する押圧部83と、を有する。挿通穴81は、押圧部材80の中央に形成されており、挿通穴82は、挿通穴81の中心から等間隔で対となって形成されている。押圧部83は、押圧部材80の裏面側において環状に突出しており、パッキン収容溝60に進入可能な構成となっている。
【0036】
ボルト90は、押圧部材80を締め付け、押圧部材80を軸方向に可動させるものである。ボルト90は、押圧部材80の挿通穴82を挿通して配置され、スタッフィングボックス42に形成されたネジ穴53に螺合し、押圧部材80を締め付けるようになっている。本実施形態では、駆動軸41を挟んだ二箇所でボルト90の締め付けを行い、押圧部材80を軸方向に可動させる構成となっている。また、本実施形態のボルト90は、スタッフィングボックス42の脚部42cの間を通過する方向において対となって配置されており、ねじ回し工具のアクセスが容易になっている。
【0037】
続いて、上記構成の軸封装置40の調整方法(以下、本手法と称する場合がある)について説明する。
図4は、本発明の実施形態における軸封装置40の調整方法を示すフロー図である。
図4に示すように、本手法では、プレ締め付け工程s1、相関関係計測工程s2、締め付けトルク管理工程s3を、順に行う。なお、プレ締め付け工程s1、相関関係計測工程s2は、例えばターボ圧縮機5の製造元で行い、締め付けトルク管理工程s3は、例えばターボ圧縮機5の納入先(ターボ冷凍機1の組立現場)で行う。
【0038】
プレ締め付け工程s1は、相関関係計測工程s2の前に、ボルト90の締め付け及び締め付け解除をセットで行う工程である。本手法では、ボルト90の締め付け及び締め付け解除のセットを複数回行う。具体的に、ボルト90のネジ穴53に対する螺入/螺入解除を1セットとして、それを数セット(例えば2〜5セット)行ったらプレ締め付け工程s1を終了する。
【0039】
次の相関関係計測工程s2は、ボルト90の締め付けトルクと、駆動軸41のVパッキン70に対する摺動トルクとの相関関係を計測する工程である。この工程では、IGVコントロールモータユニット16aを取り外し、駆動軸41にバネ測り等を設置できるようにする。また、ボルト90の締め付けトルクをバネ測り等で計測し、その時の駆動軸41のVパッキン70に対する摺動トルクをバネ測り等で計測する。そして、ボルト90を締め付けつつ、その都度、駆動軸41の摺動トルクを計測し、駆動軸41の摺動トルクが適正な値(
図5に示すTr)となるまで計測を行う。
【0040】
図5は、本発明の実施形態におけるボルト90の締め付けトルクと駆動軸41の摺動トルクとの相関関係を示す図である。
図5に示すように、パッキン材にVパッキン70を採用した場合に、そのVパッキン70を締め付けるボルト90のトルクと、駆動軸41のVパッキン70に対する摺動トルクとの間に相関関係があることが分かる。Vパッキン70は、グランドパッキン等と異なり、弾性力(復元力)が強く、締め付けて変形しても締め付けを解除すれば、元の形状に戻り易いため、グランドパッキンのように潰されたままになるといったことがなく、結果、このような相関関係が生じるものと考察される。
【0041】
また、Vパッキン70による軸封のメカニズムは、次のようなものである。すなわち、ボルト90の締め付けにより、押圧部材80に軸方向の推力が生じる。押圧部材80が軸方向に可動すると、パッキン収容溝60に収容されたVパッキン70が軸方向に縮む。Vパッキン70が軸方向に縮むと、Vパッキン70が径方向に膨らむ。Vパッキン70が径方向に膨らむと、Vパッキン70の内径と駆動軸41の周面がきつく当たり、駆動軸41の摺動摩擦抵抗が大きくなる。駆動軸41の摺動摩擦抵抗(摺動トルク)がある値以上になるとガス漏れがない適正な軸封状態となる。
【0042】
このように、Vパッキン70による軸封のメカニズムからも、ボルト90の締め付けトルクが、駆動軸41のVパッキン70に対する摺動トルクに関係していることが分かる。なお、ボルト90の締め付けトルクと駆動軸41の摺動トルクとの相関関係の再現性を高めるためには、パッキン材としてVパッキン70を選定するだけでなく、Vパッキン70の締め付けを行うボルト90も重要である。本手法では、プレ締め付け工程s1において、ボルト90の締め付け及び締め付け解除のセットを複数回行って、ボルト90とネジ穴53とを物理的になじませている。これにより、ボルト90やネジ穴53に細かなバリ等を除去し、Vパッキン70の締め付けを円滑に行えるようにして、ボルト90の締め付けトルクと駆動軸41の摺動トルクとの相関関係の再現性を高めている。
【0043】
次の締め付けトルク管理工程s3は、相関関係計測工程s2で計測した相関関係に基づいて、ボルト90の締め付けトルクを管理する工程である。締め付けトルク管理工程s3は、ターボ圧縮機5の納入先で行う。ターボ圧縮機5の製造時に軸封装置40の調整を行っても、搬送時に振動等の影響を受けるため、ターボ圧縮機5の納入先で軸封装置40の再調整を行う必要があるためである。この工程は、
図2に示すように、駆動軸41とIGVコントロールモータユニット16aとが接続された状態で行う。すなわち、スタッフィングボックス42の脇から露出するボルト90にアクセスし、バネ測り等でボルト90の締め付けトルクが適正な値(
図5に示すTc)となるまで締め付けを行う。
【0044】
図5に示すように、ボルト90の締め付けトルクと駆動軸41の摺動トルクとには相関関係があるため、ボルト90の締め付けトルクを適正な値(Tc)に調整すれば、駆動軸41の摺動トルクも適正な値(Tr)に調整することができる。すなわち、本手法では、ボルト90の締め付けトルクと駆動軸41の摺動トルクとの相関関係を計測し、ボルト90の締め付けトルクを代理として管理することで、駆動軸41の摺動トルクを管理することができる。このため、本手法では、ボルト90の締め付けトルクを管理するだけでよく、例えば、重量のあるIGVコントロールモータユニット16aをいちいち取り外し、駆動軸41にバネ測り等を設置し、駆動軸41の摺動トルクを直接管理する必要がなく、ターボ圧縮機5の納入先での軸封装置40の調整作業の煩雑さを解消し、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0045】
したがって、上述の本実施形態によれば、駆動軸41周りに形成されたパッキン収容溝60にVパッキン70を収容し、ボルト90の締め付けにより軸方向に可動する押圧部材80によってVパッキン70を変形させて、駆動軸41周りを封止する軸封装置40の調整方法であって、ボルト90の締め付けトルクと、駆動軸41のVパッキン70に対する摺動トルクとの相関関係を計測する相関関係計測工程s2と、相関関係に基づいて、ボルト90の締め付けトルクを管理する締め付けトルク管理工程s3と、を有する、という手法を採用することによって、ボルト90の締め付けトルクを代理として管理することで、駆動軸41の摺動トルクを管理することができ、軸封装置40の調整作業の煩雑さを解消することができる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、
図6に示すような構成を採用しても良い。なお、
図6において、上記実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付している。
図6は、本発明の別実施形態における軸封装置40の外観を示す斜視面である。
【0048】
図6に示すように、別実施形態の軸封装置40は、DDCコントロールモータユニット17aを筐体20に取り付けるスタッフィングボックス42に設けられている。軸封装置40及びスタッフィングボックス42の構成は、上記実施形態と略同一である。
図1に示すように、出口絞り弁17も筐体20を貫通する駆動軸54によって駆動するため、駆動軸54の周りを軸封装置40で封止する必要がある。この別実施形態であっても、上記手法を採用すれば、DDCコントロールモータユニット17aを取り外すことなく、軸封装置40の調整が適正に行えるため、調整作業の煩雑さを解消することができる。
【0049】
また、例えば、上記実施形態では、ターボ圧縮機のインレットガイドベーンの駆動軸や出口絞り弁の駆動軸の周りを封止する軸封装置の調整方法に本手法を適用した形態を例示したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、本手法は、同じく流体を扱う弁装置の弁軸の軸封装置の調整方法にも適用することができる。