(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(A1)におけるナフタレンジカルボン酸含有原料が、置換基を2つ有するナフタレンを酸化触媒存在下で分子状酸素により酸化することにより得られたものである、請求項1に記載の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、晶析での加熱、冷却又は濃縮に必要なエネルギーや不活性ガスのコストが問題となる。また、精製ナフタレンジカルボン酸を高回収率で得ようとすると不純物の除去性能が低下し、ナフタレンジカルボン酸の精製率が低下する問題がある。
特許文献2に記載の方法について本研究者らが詳細に検討を行ったところ、実施例に記載されている水素化処理を行うと、アルデヒド不純物であるホルミルナフトエ酸を取り除くことはできるが、その際に生成するメチルナフトエ酸はアミン化合物を留去する際に2,6−ナフタレンジカルボン酸と共に析出し、充分に除去し得なかった。その他の不純物に関しても臭素付加物やトリカルボン酸、テトラカルボン酸のような比較的親水性の不純物はよく除去されるものの、上述したメチルナフトエ酸に加え、ナフトエ酸のような比較的親水性の低い不純物やトリメリット酸の除去性能は低かった。
特許文献3に記載の方法では、晶析に多大なエネルギーコストを要するため、プロセスコストの点で不十分であった。
特許文献4に記載の方法では、主に脱色のために、大量の活性炭が必要となるという欠点がある。また、モノカルボン酸やトリカルボン酸等の有機不純物の除去性能も高くない。
【0010】
特許文献5に記載の方法は、粗ナフタレンジカルボン酸、アミン及び含水溶媒を混合するのみであり、昇温操作による全溶解状態を経由せずに粗ナフタレンジカルボン酸結晶からナフタレンジカルボン酸アミン塩結晶への反応、すなわち固体から固体への反応を進行させる。よって、アミン塩を水に溶解後に冷却して精製結晶を得る方法や晶析する方法等、従来から報告されてきた方法に比べてエネルギーコストが大幅に低減できる利点がある。
しかしながら、該アミン塩を形成する際のアミン添加を特許文献5のように一度に全量添加した場合には、粒径の小さいアミン塩の結晶が得られるため、以下のような点で工業的製造としては不十分であることが分かった。
(1)固液分離が困難である
(2)結晶ケーキの排出及び移送時に閉塞を起こす
(3)固液分離後におけるアミン塩結晶中の母液及びリンス液の含有率が高く、母液及びリンス液中の有機溶媒の回収率が低下する
【0011】
また、特許文献5には、塩形成操作により得た有機不純物が低減された芳香族ポリカルボン酸アミン塩は、水に溶解して水溶液とし、ろ過、遠心分離及びデカンテーション等の固液分離により、異物や不溶化した金属不純物等を除去するとの記述がある。
しかし、具体的には実験室手法による1μmフィルターを用いたろ過のみであり、工業的手法については何ら記述がない。また、本発明者らが、特許文献5による金属分の分離法を詳細に検討したところ、有機不純物が低減されたナフタレンジカルボン酸アミン塩を水に溶解しただけでは、含まれている金属分の一部は析出せずに溶液中に溶解したままであり、それらはろ過等の方法によって分離除去できないことが分かった。即ち、固体吸着剤等の処理をしないと望ましいレベルまで金属分が低減しなかった。更には、ナフタレンジカルボン酸のアミン塩を水に溶解した際に析出する不溶金属分の平均粒径は10μm以下と小さく、且つ粘稠であるため、非常に分離が困難であることも分かった。
【0012】
特許文献6の方法では、固体吸着剤処理をしなければ、製品として十分なレベルまで金属分を低減できておらず、労力的に不利である。また、固体吸着剤を用いることはコスト及び廃棄物等の点でも不利となることが明らかである。
また、工程の流れは、粗ナフタレンジカルボン酸のアミン水溶解、次いでろ過及び固体吸着剤使用での金属分除去、次いでナフタレンジカルボン酸のアミン塩分解であり、特許文献5のような有機不純物除去工程である塩形成工程がないものである。この方法では、目的の色相改善及び高い回収率は得られるが、水素化処理しない場合は2,6−ホルミルナフトエ酸(FNA)の残存量は最良でも200ppmであり、有機不純物の低減に関して、十分な精製度合いが得られていない。
【0013】
更に、金属分分離、次いで塩形成、次いでナフタレンジカルボン酸のアミン塩分解というような工程の流れになっていたとしても、金属分を分離した塩が大量の水に溶解されており、大量の水を必要としない塩形成工程が非常にやりづらくなり、非効率的である。
【0014】
特許文献6には、特許文献5と同様、工業的なろ過方法の記述がない上に、本発明者が実験室手法(例えば特許文献6の実施例3にあるような細孔径10μmの焼結金属フィルターでのろ過及び細孔径1μmのニトロセルロース製メンブランフィルターでのろ過の組み合わせ)により多段ろ過を実施したところ、金属分のろ過速度は小さく工業的な手法ではないと判断された。また活性炭処理により製品の金属分は低くなっているものの、非常に煩雑な処理を強いられている。
【0015】
本発明の第一の課題は、粗ナフタレンジカルボン酸から色相が良好で精製されたナフタレンジカルボン酸を製造するにあたって、作業性及びプロセスコストに優れた製造方法を提供することである。
本発明の第二の課題は、粗ナフタレンジカルボン酸から、色相が良好で有機不純物が少なく且つ金属分の低いナフタレンジカルボン酸を低製造コスト、簡便な構成、且つ工業的手法により容易に製造する方法を提供することである。さらに具体的に言えば、塩形成操作では金属分はナフタレンジカルボン酸アミン塩に残留したままとなることが初めて見出され、その解消により、金属分の低いナフタレンジカルボン酸を低製造コスト、簡便な構成、且つ工業的手法により容易に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らが鋭意詳細に検討した結果、水、有機溶媒及びナフタレンジカルボン酸を含むスラリーにアミンを添加してナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成させる工程において、アミンの添加速度を特定の範囲とすることで、得られるナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶の粒径を制御することが可能であり、その結果、精製ナフタレンジカルボン酸を工業上有利に製造出来ることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、第1の実施形態として、以下の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法を提供する。
(A1)水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程;及び
(A2)前記工程(A1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程
を含む精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法であって、
前記工程(A1)が、
(A11)水と有機溶媒との混合液にナフタレンジカルボン酸含有原料を添加することで、ナフタレンジカルボン酸が分散したスラリーを調製する工程;
(A12)前記工程(A11)で調製したスラリーにアミンを添加しナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成させることで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶が分散したスラリーを調製する工程;及び
(A13)前記工程(A12)で調製したスラリーを固液分離することで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程
を含み、
前記工程(A12)におけるアミンの添加速度がナフタレンジカルボン酸1モルに対し毎分0.002〜0.4モルである、
精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法。
【0017】
また、本発明者らが鋭意検討を行った結果、水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得た後、該ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液を調製し、該ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液にアミンを添加することで、該水溶液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理;又は該ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液を固液分離して得た液にアミンを添加することで、該固液分離して得た液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理、によりナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、第2の実施形態として、以下の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法を提供する。
(B1)水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程;及び
(B2)前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程
を含む精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法であって、
前記工程(B2)が、
(B21)前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する工程;
(B22)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する工程;及び
(B23)前記工程(B22)で金属分を除去した後のナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程を含み、
前記工程(B22)において、
(a)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液にアミンを添加することで、該水溶液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理;又は
(b)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を固液分離して得た液にアミンを添加することで、該固液分離して得た液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理
により、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する、
精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1実施形態の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法によれば、精製ナフタレンジカルボン酸の製造中間物であるナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶は、純度が高くかつ粒径が大きくなる。アミン塩結晶の粒径が大きいことにより、
(1)固液分離が容易であり、
(2)結晶ケーキの排出及び移送時に閉塞がなく、排出及び移送が容易であり、
(3)アミン塩結晶の含液率(アミン塩結晶中の母液及びリンス液の量)が低く、プロセスコストを改善できる。
したがって、精製ナフタレンジカルボン酸を工業的に有利に製造することができる。本発明は、ナフタレンジカルボン酸の精製において工業的意義が大きい。
本発明の第2実施形態の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法によれば、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に、又はナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を固液分離して得た液に、アミンを添加して、金属分の析出を促進させることで、低製造コスト、簡便な構成、且つ工業的手法により容易に高純度のナフタレンジカルボン酸を製造することが可能である。本発明の方法は工業的にも優れた方法であることから、本発明の工業的意義は非常に大きい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法は、(A1)水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程;及び(A2)前記工程(A1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程を含む。
前記工程(A1)は、(A11)水と有機溶媒との混合液にナフタレンジカルボン酸含有原料を添加することで、ナフタレンジカルボン酸が分散したスラリーを調製する工程;(A12)前記工程(A11)で調製したスラリーにアミンを添加しナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成させることで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶が分散したスラリーを調製する工程;及び(A13)前記工程(A12)で調製したスラリーを固液分離することで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程を含む。
前記工程(A12)におけるアミンの添加速度は、ナフタレンジカルボン酸1モルに対し毎分0.002〜0.4モルである。
以下、各工程について説明する。
【0020】
<工程(A1):ナフタレンジカルボン酸アミン塩結晶を得る工程>
工程(A1)では、水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る。
ナフタレンジカルボン酸含有原料とは、公知のナフタレンジカルボン酸の製造方法によって得られる生成物であり、当該生成物には、通常、目的とするナフタレンジカルボン酸だけでなく、不純物も含まれている。本発明では、この不純物を除去することで、ナフタレンジカルボン酸の純度が向上した精製ナフタレンジカルボン酸が製造される。以後、ナフタレンジカルボン酸含有原料を、精製ナフタレンジカルボン酸と区別するために、「粗ナフタレンジカルボン酸」と称する場合もある。
【0021】
[粗ナフタレンジカルボン酸の製造]
上述の通り、粗ナフタレンジカルボン酸は、公知のナフタレンジカルボン酸の製造方法によって得られるものである。その製造方法は特に限定されないが、例えば、置換基を2つ有するナフタレンを、酸化触媒存在下で分子状酸素により酸化することにより得られる。前記置換基は、酸化によりカルボキシル基を形成する基であればよく、例えば、メチル基、エチル基及びイソプロピル基等のアルキル基、ホルミル基、並びにアセチル基等が挙げられる。前記酸化触媒としては、CoやMn等の重金属及び臭素を含む触媒が好適に用いられる。
【0022】
[酸化原料]
前記置換基を2つ有するナフタレン(以後、「二置換ナフタレン化合物」と称する場合もある)は、ポリエステル、ウレタン及び液晶ポリマー等の原料としては、特に2,6−置換体、2,7−置換体及び1,5−置換体が有用である。具体例としては、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン及びブチリルメチルナフタレン等のジアルキル置換ナフタレン、メチルナフトアルデヒド、並びにイソプロピルナフトアルデヒドが挙げられ、なかでもジアルキル置換ナフタレンが好ましい。
【0023】
[酸化反応条件]
粗ナフタレンジカルボン酸の生成反応では、二置換ナフタレン化合物をCoやMn等の重金属及び臭素を含む酸化触媒存在下で分子状酸素により酸化することが好ましい。
酸化触媒の量は二置換ナフタレン化合物に対して0.05〜2質量%、反応温度は120〜250℃、酸素分圧は全体圧を考慮して爆発範囲外となる圧力(通常は0.01〜0.1MPaG)とすることが好ましい。
なお酸化反応での酸化剤として用いられる分子状酸素含有ガスとしては、空気、不活性ガス希釈された酸素、及び酸素富化空気等が挙げられるが、設備面及びコスト面から通常は空気の使用が好ましい。
【0024】
[粗ナフタレンジカルボン酸]
粗ナフタレンジカルボン酸に含まれるナフタレンジカルボン酸は2,6−体、2,7−体又は1,5−体が好ましい。各置換体は酸化原料及び酸化反応条件により適宜選択できる。
各異性体の中では、より工業的に有用な2,6−体(2,6−ナフタレンジカルボン酸)が好ましい。
粗ナフタレンジカルボン酸には、着色成分や酸化触媒金属の他に、酸化反応の中間生成物であるホルミルナフトエ酸、ナフタレン環の分解で生じるトリメリット酸、Brが付加したナフタレンジカルボン酸ブロマイド、またナフタレントリカルボン酸等の有機不純物が含まれる。
【0025】
<工程(A11):ナフタレンジカルボン酸分散スラリーの調製工程>
工程(A11)では、水と有機溶媒との混合液にナフタレンジカルボン酸含有原料を添加することで、ナフタレンジカルボン酸が分散したスラリーを調製する。
前記混合液における水と有機溶媒の混合比については、水1質量部に対して有機溶媒が0.7〜9質量部であることが好ましく、1〜6質量部であることがより好ましく、1.5〜4質量部であることがさらに好ましい。
前記有機溶媒としては、ケトン及びアセトニトリル等の公知の有機溶媒が使用できるが、ケトンが好ましく、脂肪族ケトン及び脂環式ケトンがより好ましく、脂肪族ケトンがさらに好ましい。
脂肪族ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン及びアセトニルアセトン等が挙げられる。脂環式ケトンの具体例としては、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、水と混合したときにナフタレンジカルボン酸アミン塩に対する溶解度の温度依存性が最も大きく、さらに取り扱いや入手の容易さからアセトンが特に好ましい。
また、スラリー中のナフタレンジカルボン酸の含有量は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、15〜35質量%がさらに好ましい。
【0026】
<工程(A12):ナフタレンジカルボン酸アミン塩分散スラリーの調製工程>
工程(A12)では、前記工程(A11)で調製したスラリーにアミンを添加しナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成させることで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶が分散したスラリーを調製する。
前記工程(A11)で調製したスラリーにアミンを添加することで塩形成反応が進行するものであり、適切な量及び含水率の溶媒下では、アミンの添加開始後ただちに塩形成反応が進行する。塩形成反応は、常温常圧条件において無溶媒では進行せず、溶媒中で行う必要がある。また、該アミン塩に対して水は良溶媒、ケトンは貧溶媒であるが、溶媒にケトンのみを用いると、やはり塩形成反応が進行しない。このように、該アミン塩に対し溶解度を有する溶媒中で反応させる必要がある。
生成したアミン塩は混合液中に飽和まで溶解し、限界溶解量を超える分のアミン塩が結晶として析出することで、アミン塩の結晶が分散したスラリーが得られる。
【0027】
工程(A12)で添加するアミンとしては、脂肪族アミン及び脂環式アミンが好適である。脂肪族アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、及び2−エチルエキシルアミン等が挙げられる。脂環式アミンの具体例としては、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピロリジン、エチレンイミン、及びヘキサメチレンイミン等が挙げられる。これらのアミンは単独で用いても、混合物で用いてもよい。これらのアミンの中でもナフタレンジカルボン酸とのアミン塩を分解する際に分解速度が大きく、アミンの回収が容易なトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリイソプロピルアミン等の第三級アミンが好ましく、トリエチルアミン及びトリメチルアミンがより好ましい。
【0028】
アミンの使用量は、スラリー中のナフタレンジカルボン酸のカルボキシル基の当量あるいはそれ以上である。工業的に実施する経済的な使用量としては、該カルボキシル基に対し1〜1.5当量が適当である。
【0029】
本発明の第1実施形態では、工程(A12)におけるアミンの添加速度を、スラリー中のナフタレンジカルボン酸の1モルに対し毎分0.002〜0.4モルとなるように制御する。アミンの添加速度を小さくするほど塩結晶の品質は向上し、粒径も大きくなるが、毎分0.002モル倍より小さくしても、それ以上の効果は得られず、作業時間のみ増すこととなるので工業的に好ましくない。また、アミンの添加速度が大きいと、塩結晶の品質は低下し、結晶粒子径が小さくなる。アミンの添加速度が毎分0.4モル倍を超えると、得られる結晶粒子系が小さすぎるために、(1)固液分離が困難である、(2)結晶ケーキの排出及び移送時に閉塞を起こす、(3)固液分離後におけるアミン塩結晶中の母液及びリンス液の含有率が高く、母液及びリンス液中の有機溶媒の回収率が低下する等、作業性及びプロセスコストの観点で不利になる。
アミンの添加速度は、スラリー中のナフタレンジカルボン酸の1モルに対し、好ましくは毎分0.005〜0.4モル、より好ましくは毎分0.01〜0.2モルである。
【0030】
工程(A12)は従来の晶析のように全溶解状態を経由するものではなく、固体(ナフタレンジカルボン酸)から固体(ナフタレンジカルボン酸アミン塩結晶)への反応系である。このような反応系において、アミンの添加速度を限定することにより、該アミン塩の精製効果を維持しつつ結晶粒径を大きくできるという知見は、これまでに報告されていなかった。
【0031】
このようにして得られたアミン塩の結晶が分散したスラリーに対し、そのまま後述の工程(A13)の処理をしてもよいが、塩に対する貧溶媒である有機溶媒をこのスラリーに添加してから工程(A13)の処理をする方が好ましい。有機溶媒を添加することでスラリー中に溶解している塩が晶出するため、以下式で定義される結晶化率を向上させることができる。なお、ここで添加する有機溶媒としては、前記工程(A11)の有機溶媒と同じものを例示することができ、アセトンが好ましい。
結晶化率=(アミン塩結晶の質量)/(アミン塩の総質量)
【0032】
<工程(A13):ナフタレンジカルボン酸アミン塩分散スラリーの固液分離工程>
工程(A13)では、前記工程(A12)で調製したスラリーを固液分離することで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る。
工程(A13)では、工程(A12)で調製したスラリーを固液分離機により結晶と母液に分離する。母液中には不純物が高い濃度で溶解しているため、得られる結晶の品質を高めるために結晶ケーキをリンスする。
尚、塩形成時に等量以上に加えたアミンは、該リンス工程で系外に排出される。
リンス液に用いるものはアミン塩結晶を溶解させないものが好ましく、アセトンを用いることがより好ましい。固液分離機には、工業的にはバスケット型遠心分離機やロータリーバキュームフィルター等が用いられるが、結晶粒径が小さいと固液分離機での濾過工程及びリンス工程での負荷が増大したり、ケーキの流動性が悪化してケーキ排出及び移送時に閉塞する等のトラブルが発生する。よって、結晶粒径は大きいほど好ましい。
【0033】
また、結晶粒径が小さいと固液分離後又はリンス後のケーキの含液率が高くなる。この場合、やはりケーキの流動性を悪化させてケーキの排出及び移送時に閉塞する等のトラブルが発生するばかりか、含んでいるリンス液のロスにつながり、経済的でない。よって、結晶粒径は大きいほど好ましい。
得られたナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶の平均粒子径は、450μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、600μm以上であることがさらに好ましい。なお、前記平均粒子径は、レーザー式粒度分布計を用い、乾式測定法にて測定したものである。
また、得られたナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶の含液率は、3.5質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
なお前記含液率は、下記の式により算出される。
含液率(質量%)=(a−b)/b×100
[式中、aは含液した結晶ケーキの質量を表し、リンス後に得られる結晶ケーキの質量である。bは前記結晶ケーキ中の液を取り除き、乾いた状態の塩結晶ケーキの質量を表す。]
【0034】
このようにして得られたナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶に対し、そのまま後述の工程(A2)の処理をしてもよいが、再結晶することにより精製してから後述の工程(A2)の処理をしてもよい。ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を再結晶する方法は、溶媒存在下、加熱により溶解し、冷却や濃縮等の操作により結晶を析出させる方法でもよく、水等のアミン塩の溶解度の高い溶媒にアミン塩を溶解後、アセトンやアルコール等のアミン塩の溶解度の低い溶媒加えることにより結晶を析出させてもよい。その際に用いる溶媒は、必ずしも工程(A11)で用いたものと同種の溶媒を用いる必要はないが、工業的には工程(A11)に用いたものと同じ水と有機溶媒との混合液とする方が有利である。ナフタレンジカルボン酸アミン塩を、溶媒に溶解し結晶化を行うことにより、著しく色相が改善され、且つ有機不純物が少ない、非常に高度に精製されたナフタレンジカルボン酸アミン塩を得ることが可能となる。
【0035】
<工程(A2):ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程>
工程(A2)では、前記工程(A1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る。
前記工程(A2)は、好ましくは、(A21)前記工程(A1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する工程;及び(A22)前記工程(A21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程を含む。
【0036】
<工程(A21):ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液の調製工程>
工程(A21)では、前記工程(A1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する。
なお、ナフタレンジカルボン酸アミン塩を水に溶解させたときに、アミン塩結晶中に混在する異物及び金属含有不純物等が、水に溶解せずに固体物として残る場合がある。そのような場合には、濾過、遠心分離、及びデカンテーション等の固液分離操作により、固体物を除去することが好ましい。
また、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に、アミンを添加して該水溶液中の金属分を析出させて、除去することが好ましい。アミン塩結晶中に混在する金属成分は、アミン塩とともに水に溶解して残存することがあるが、アミンを添加することで金属成分は水酸化物として不溶化し、析出する。析出した金属水酸化物は、濾過、遠心分離及びデカンテーション等により除去することができる。なお、ここで添加するアミンとしては、前記工程(A12)のアミンと同じものを例示することができ、トリエチルアミン及びトリメチルアミンが好ましい。
【0037】
<工程(A22):ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程>
工程(A22)では、前記工程(A21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る。
前記工程(A22)においてナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得るための具体的な処理方法としては(1)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の溶解している水溶液に、ナフタレンジカルボン酸よりも酸性度の高い酸を加えてナフタレンジカルボン酸を析出させる方法、(2)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液をそのまま加熱して水とアミンを完全に留出除去する方法、及び(3)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を水存在下で加熱することによりアミン塩を分解して水とアミンを留出させ、塩水溶液中にナフタレンジカルボン酸を析出させる方法等がある。
【0038】
(1)のナフタレンジカルボン酸よりも酸性度の高い酸を加えてナフタレンジカルボン酸を析出させる方法では、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の溶解した水溶液に、酢酸若しくはプロピオン酸等の有機酸、又は硫酸若しくは塩酸等の無機酸を添加することにより、ナフタレンジカルボン酸を析出させる。この方法では微細な結晶が析出し易いため、100℃以上、好ましくは150℃の高温下で析出させるか、長い滞留時間を取ることにより、粒径を改善する。析出した結晶は、濾過や遠心分離等の方法で固液分離することにより回収後、得られた結晶を水や使用した有機酸等で洗浄し、更に乾燥することにより、精製されたナフタレンジカルボン酸が得られる。
【0039】
(2)のナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液をそのまま加熱して水とアミンを完全に留出除去する方法では、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の溶解した水溶液を攪拌下、加熱することによりアミン塩を分解し、水と同伴してアミンを完全に留去することにより、精製されたナフタレンジカルボン酸を得る。それに対し(3)のナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を水存在下で加熱することによりアミン塩を分解して水とアミンを留出させ、塩水溶液中にナフタレンジカルボン酸を析出させる方法では、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の溶解した水溶液を、水存在下で加熱することによりアミン塩を分解し、水とアミンとを留出させることにより、塩水溶液中にナフタレンジカルボン酸を析出させる。この方法では、工程(A1)で除去されなかった微量の有機不純物が、水溶液中にアミン塩のまま溶解残存するため、精製されたナフタレンジカルボン酸を得ることができる。
【0040】
塩分解を水存在下で行うに際して、分解方法に制限はないが、例えば、塩分解を行う反応釜にナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を仕込み、アミン塩を分解温度以上に加熱することにより分解し、脱離されたアミンを含む留出液を得る。この際、釜中にナフタレンジカルボン酸が析出するが、同時に釜内に水を供給することにより、釜内に水を一定量以上存在させておくことが好ましい。アミン塩の分解率が一定以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは90%以上進行したところで塩の分解を終了する。
【0041】
塩分解の際に用いる水の量は、ナフタレンジカルボン酸やアミンの種類により異なるが、ナフタレンジカルボン酸アミン塩に対し、0.5〜3質量倍の範囲で行うことが望ましい。また加熱温度は、低すぎるとアミン塩の分解速度が遅くなるため非経済的であり、高すぎるとアミンやナフタレンジカルボン酸が変質したり、着色する場合があるので、120〜210℃の範囲で行うことが望ましい。圧力は、その温度での内容物の組成に依存するが、通常は−0.1〜5MPaGの範囲で、好ましくは0〜2MPaGの範囲で行われる。
【0042】
上記の方法で、ナフタレンジカルボン酸アミン塩が分解され、発生するアミンは冷却して捕集することにより、全量回収できる。このアミンは、必要に応じて精製し、工程(A1)で再使用する。アミンが留出されると同時に、溶液中には遊離のナフタレンジカルボン酸が析出する。析出したナフタレンジカルボン酸は、濾過や遠心分離等の固液分離操作により回収する。また適宜水洗操作を行い、結晶に付着した不純物を除去する操作等を加える。
固液分離後の母液や結晶洗浄液は、工程(A2)内で循環することで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩からナフタレンジカルボン酸への収率を高められて好ましいが、全量を工程(A2)内で循環する操作を続けると、いずれ母液へ不純物が過度に蓄積し、結晶の品質が低下する。よって、母液や結晶洗浄液の一部を工程(A1)へ循環して再精製することが好ましい。結晶は、乾燥することにより、精製されたナフタレンジカルボン酸が得られる。
このように水存在下でアミン塩を分解する方法を用いることにより、工程(A1)での除去効果の比較的低いナフタレントリカルボン酸やBrが付加したナフタレンジカルボン酸等の有機不純物はほぼ完全に除去される。また色相も改善されたナフタレンジカルボン酸を得ることができる。
【0043】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態の精製ナフタレンジカルボン酸の製造方法は、(B1)水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程;及び(B2)前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程を含む。
前記工程(B2)は、(B21)前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する工程;(B22)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する工程;及び(B23)前記工程(B22)で金属分を除去した後のナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程を含む。
前記工程(B22)において、(a)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液にアミンを添加することで、該水溶液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理;又は(b)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を固液分離して得た液にアミンを添加することで、該固液分離で得た液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理、によりナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する。
【0044】
<工程(B1):ナフタレンジカルボン酸アミン塩結晶を得る工程>
工程(B1)では、水と有機溶媒との混合液中においてナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを混合してナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る。
工程(B1)のナフタレンジカルボン酸含有原料は、本発明の第1実施形態の工程(A1)におけるナフタレンジカルボン酸含有原料と同様であり、その製造方法も同様である。
工程(B1)の混合液に用いる有機溶媒は、本発明の第1実施形態の工程(A11)の有機溶媒と同様である。
工程(B1)の水と有機溶媒の混合比は、本発明の第1実施形態の工程(A11)の水と有機溶媒の混合比と同様である。
工程(B1)で添加されるアミンは、本発明の第1実施形態の工程(A12)のアミンと同様である。
前記工程(B1)は、好ましくは、(B11)水と有機溶媒との混合液に、ナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを添加しナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成させることで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶が分散したスラリーを調製する工程;及び(B12)前記工程(B11)で調製したスラリーを固液分離することで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る工程を含む。
【0045】
<工程(B11):ナフタレンジカルボン酸アミン塩分散スラリーの調製工程>
工程(B11)では、水と有機溶媒との混合液に、ナフタレンジカルボン酸含有原料とアミンとを添加しナフタレンジカルボン酸アミン塩を形成させることで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶が分散したスラリーを調製する。
工程(B11)では、水と有機溶媒との混合液に、ナフタレンジカルボン酸含有原料及びアミンを添加すると、ナフタレンジカルボン酸とアミンの塩形成反応が進行する。塩形成反応は、常温常圧条件において無溶媒では進行せず、溶媒中で行う必要がある。また、該アミン塩に対して水は良溶媒、ケトンは貧溶媒であるが、溶媒にケトンのみを用いると、やはり塩形成反応が進行しない。このように、該アミン塩に対し溶解度を有する溶媒中で反応させる必要がある。
生成したアミン塩は混合液中に飽和まで溶解し、限界溶解量を超える分のアミン塩が結晶として析出することで、アミン塩の結晶が分散したスラリーが得られる。
アミンの使用量は、ナフタレンジカルボン酸のカルボキシル基の当量あるいはそれ以上である。工業的に実施する経済的な使用量としては、該カルボキシル基に対し1〜1.5当量が適当である。
【0046】
このようにして得られたアミン塩の結晶が分散したスラリーに対し、そのまま後述の工程(B12)の処理をしてもよいが、塩に対する貧溶媒である有機溶媒をこのスラリーに添加してから工程(B12)の処理をする方が好ましい。有機溶媒を添加することでスラリー中に溶解している塩が晶出するため、結晶化率を向上させることできる。なお、ここで添加する有機溶媒としては、上述の混合液に用いた有機溶媒と同じものを例示することができ、アセトンが好ましい。
【0047】
<工程(B12):ナフタレンジカルボン酸アミン塩分散スラリーの固液分離工程>
工程(B12)では、前記工程(B11)で調製したスラリーを固液分離することで、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を得る。
工程(B12)では、工程(B11)で調製したスラリーを固液分離機により結晶と母液に分離する。母液中には不純物が高い濃度で溶解しているため、得られる結晶の品質を高めるために結晶ケーキをリンスする。リンス液に用いるものはアミン塩結晶を溶解させないものが好ましく、アセトンを用いることがより好ましい。尚、塩形成時に等量以上に加えたアミンは、リンス工程で系外に排出される。
固液分離機には、工業的にはバスケット型遠心分離機やロータリーバキュームフィルター等が用いられる。
【0048】
このようにして得られたナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶に対し、そのまま後述の工程(B2)の処理をしてもよいが、再結晶することにより精製してから後述の工程(B2)の処理をしてもよい。ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を再結晶する方法は、溶媒存在下、加熱により溶解し、冷却や濃縮等の操作により結晶を析出させる方法でもよく、水等のアミン塩の溶解度の高い溶媒にアミン塩を溶解後、アセトンやアルコール等のアミン塩の溶解度の低い溶媒加えることにより結晶を析出させてもよい。その際に用いる溶媒は、必ずしも工程(B11)で用いたものと同種の溶媒を用いる必要はないが、工業的には工程(B11)に用いたものと同じ水と有機溶媒との混合液とする方が有利である。ナフタレンジカルボン酸アミン塩を、溶媒に溶解し結晶化を行うことにより、著しく色相が改善され、且つ有機不純物が少ない、非常に高度に精製されたナフタレンジカルボン酸アミン塩を得ることが可能となる。
【0049】
<工程(B2):ナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程>
工程(B2)では、前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶から精製ナフタレンジカルボン酸を得る。
工程(B2)は、(B21)前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する工程;(B22)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する工程;及び(B23)前記工程(B22)で金属分を除去した後のナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程を含む。
【0050】
<工程(B21):ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する工程>
工程(B21)前記工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させることでナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を調製する。
工程(B21)では、工程(B1)で得たナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させるが、その際に該結晶中に混入している金属分も、少なくともその一部が水に溶解する。また、結晶中に含まれている異物及び金属含有不純物等が、水に溶解せずに固体物としての残る場合もある。
【0051】
<工程(B22):ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液中の金属分の除去工程>
工程(B22)では、前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する。
本発明の第2実施形態では、工程(B22)において、以下の(a)又は(b)の処理により、ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液に含まれる金属分を除去する。
(a)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液にアミンを添加することで、該水溶液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理
(b)前記工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を固液分離して得た液にアミンを添加することで、該固液分離で得た液中に含まれる金属分を不溶化させて析出させ、析出した金属分を固液分離により除去する処理
このような処理をすることによって、最終的に得られる精製ナフタレンジカルボン酸中の金属分を十分に低減することができる。
【0052】
上述したように、工程(B21)においてナフタレンジカルボン酸アミン塩の結晶を水に溶解させる際に金属分も水に溶解するため、工程(B22)において当該金属分をアミン添加により不溶化して、固液分離により除去するものである。
処理(b)では、アミンの添加前に行う固液分離により、工程(B21)において結晶中に含まれている異物及び金属含有不純物等が水に溶解せずに水溶液中に固体物として残った場合に、当該固体物を除去することができる。ただし、工程(B21)において水溶液中に固体物が残った場合に必ず処理(b)を選択しなければならないわけではなく、処理(a)を選択してもよい。
【0053】
[不溶化の時機と金属分分離工程順序]
不溶化を行う時機、即ちアミンを添加する時機は特に制限されない。考えられる金属分分離工程での順序と共に示すと下記の通りとなる。
(I)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水への溶解→不溶化→分離
(II)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水への溶解→不溶化→分離→分離
(III)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水への溶解→分離→不溶化→分離
(I)〜(III)のうちどれが好ましいというものはなく、用いる分離方法および分離機によって選択すれば良い。(I)〜(III)のいずれでも金属分は問題なく分離可能である。
【0054】
[固液分離方法及び用いる分離機]
処理(a)における固液分離方法としては、ろ過及び遠心沈降が好ましく用いられ、それらを単独で行ってもよいし又は組み合わせてもよい。具体的な固液分離方法としては、一回のろ過、二回のろ過、ろ過次いで遠心沈降、一回の遠心沈降、二回の遠心沈降、及び遠心沈降次いでろ過、が挙げられる。
処理(b)におけるアミン添加前の固液分離方法及びアミン添加後の固液分離方法は、それぞれ、処理(a)における固液分離方法と同様、ろ過及び遠心沈降が好ましく用いられ、それらを単独で行ってもよいし又は組み合わせてもよい。好ましくは、アミン添加前の固液分離が一回のろ過又は一回の遠心沈降によってなされ、かつ、アミンを添加した後の固液分離が一回のろ過又は一回の遠心沈降によってなされる。
用いることのできる分離機は、ろ過装置として、水平ろ葉型加圧ろ過機、自動ろ紙交換式加圧フィルター、振動式膜分離装置、セラミック膜フィルター、遠心沈降装置として、デカンタ型遠心分離機、標準分離板型遠心沈降機、を挙げることができる。
【0055】
処理(a)における固液分離を一回のろ過で行う場合は、ろ過装置は制限されず、いずれの装置も用いることが可能であるが、水平ろ葉型加圧ろ過機、自動ろ紙交換式加圧フィルター、振動式膜分離装置を用いることが好ましい。水平ろ葉型加圧ろ過機、自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いる場合は、珪藻土等のろ過助剤をプリコート(ろ材表面に助剤の層を形成)及びボディーフィード(原液に助剤を添加)に用いることが好ましい。プリコートとボディーフィードを行うことで、ろ材の目詰まり防止とろ過抵抗の低減が可能となる。
【0056】
処理(a)における固液分離を二回のろ過で行う場合、及び処理(b)におけるアミン添加前の固液分離を一回のろ過で行い、かつ、アミンを添加した後の固液分離を一回のろ過で行う場合は、用いるろ過装置は制限されず、いずれの装置も用いることが可能であり、現状保有する装置及びコスト等の面から勘案すればよい。この場合、二段目に用いるろ過装置の能力等は、ろ過装置のみ用いる場合と比較して低いものを用いることが可能になり、コスト面でろ過装置のみ用いる場合より有利となる場合がある。水平ろ葉型加圧ろ過機、自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いる場合は、珪藻土等のろ過助剤をプリコート及びボディーフィードに用いることが好ましい。
【0057】
処理(a)における固液分離をろ過次いで遠心沈降で行う場合、及び処理(b)におけるアミン添加前の固液分離を一回のろ過で行い、かつ、アミンを添加した後の固液分離を一回の遠心沈降で行う場合は、用いるろ過装置及び遠心沈降装置は制限されず、いずれの装置も用いることが可能であり、現状保有する装置及びコスト等の面から勘案すればよい。一段目のろ過で水平ろ葉型加圧ろ過機、自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いる場合は、珪藻土等のろ過助剤をプリコート及びボディーフィードに用いることが好ましい。
【0058】
処理(a)における固液分離を一回の遠心沈降で行う場合は、分離機として高い遠心力を得ることが可能な標準分離板型遠心沈降機を用いることが好ましい。
【0059】
処理(a)における固液分離を二回の遠心沈降で行う場合、及び処理(b)におけるアミン添加前の固液分離を一回の遠心沈降で行い、かつ、アミンを添加した後の固液分離を一回の遠心沈降で行う場合は、用いる遠心沈降装置は制限されないが、デカンタ型遠心分離機を用いて粗分離した後、標準分離板型遠心沈降機を用いるのが好ましい。この場合、二段目に用いる標準分離板型遠心沈降機の能力等は、標準分離板型遠心沈降機のみ用いる場合と比較して低いものを用いることが可能になり、コスト面で標準分離板型遠心沈降機のみ用いる場合より有利となる場合がある。
【0060】
処理(a)における固液分離を遠心沈降次いでろ過で行う場合、及び処理(b)におけるアミン添加前の固液分離を一回の遠心沈降で行い、かつ、アミンを添加した後の固液分離を一回のろ過で行う場合は、用いる遠心沈降装置及びろ過装置は制限されず、いずれの装置も用いることが可能であり、現状保有する装置及びコスト等の面から勘案すればよい。二段目のろ過で水平ろ葉型加圧ろ過機、自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いる場合は、珪藻土等のろ過助剤をプリコート及びボディーフィードに用いることが好ましい。
【0061】
[不溶化と金属分分離時の雰囲気]
処理(a)及び(b)における不溶化(アミン添加)と金属分分離時における雰囲気については特に制限されないが、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン及び窒素等が挙げられ、好ましくは窒素が用いられる。不活性ガス雰囲気下で不溶化を行うことにより、ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液に溶解しているコバルト及びマンガン等の金属分は水酸化物として不溶化し析出してくることになる。
【0062】
[不溶化で用いるアミンとその添加量]
処理(a)及び(b)において添加するアミンとしては、工程(B1)と同様のアミンが例示でき、トリエチルアミンが好ましい。また、工程(B1)で循環使用しているものを不溶化で用いてもよいし、工程(B22)で循環使用しているものを工程(B1)で用いることもできる。
なお、アミンに代えて、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基を用いても塩水溶液に溶解しているコバルト及びマンガン等の金属分は不溶化により除去可能であるが、用いた無機塩基由来のナトリウムやカリウムが塩水溶液中に残留してしまう問題がある。
アミンの添加量は工程(B21)で調製したナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液に溶解しているコバルト及びマンガン等の金属分量を勘案して決定すればよい。一般的にはナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液中に溶解している金属総量の1当量以上100当量以下であり、好ましくは2当量以上50当量以下であり、特に好ましくは5当量以上20当量以下である。尚、当量とはモル当量を示す。
【0063】
[不溶化条件]
不溶化における温度条件は特に制限されないが、25℃〜80℃が好ましく、40℃〜70℃がより好ましい。金属分分離におけるろ過及び遠心沈降のいずれも有機不純物が精製されたナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液の粘度は低い方が好ましいので、金属分分離の際は上記液温のまま実施することが好ましい。圧力条件は特に制限されないが、アミン揮散防止の観点から常圧若しくは微加圧が好ましい。不溶化時間は1分以上であれば特に制限されないが、好ましくは5分以上60分以下、特に好ましくは10分以上30分以下である。
【0064】
<工程(B23):ナフタレンジカルボン酸アミン塩水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る工程>
工程(B23)では、前記工程(B22)で金属分を除去した後のナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得る。
前記工程(B23)においてナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液から精製ナフタレンジカルボン酸を得るための具体的な処理方法は、本発明の第1実施形態の工程(A22)と同様である。即ち、(1)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の溶解している水溶液に、ナフタレンジカルボン酸よりも酸性度の高い酸を加えてナフタレンジカルボン酸を析出させる方法、(2)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液をそのまま加熱して水とアミンを完全に留出除去する方法、及び(3)ナフタレンジカルボン酸アミン塩の水溶液を水存在下で加熱することによりアミン塩を分解して水とアミンを留出させ、塩水溶液中にナフタレンジカルボン酸を析出させる方法等があり、(3)の方法が好ましい。
【実施例】
【0065】
以下に実施例及び比較例により本発明の方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない
以下の各実施例、比較例及び表中に記した略号は次の通りである。
NDCA:2,6−ナフタレンジカルボン酸
NA:ナフトエ酸
MNA:メチルナフトエ酸
FNA:ホルミルナフトエ酸
ANA:アセトキシナフトエ酸
TMA:トリメリット酸
Br−NDCA:ナフタレンジカルボン酸ブロマイド
NTCA:ナフタレントリカルボン酸
TEA:トリエチルアミン
NDCA・TEA:2,6−ナフタレンジカルボン酸トリエチルアミン塩
【0066】
以下の実施例及び比較例において、粗ナフタレンジカルボン酸及び精製ナフタレンジカルボン酸の評価方法は以下の通りである。
また、NDCA・TEA結晶は、そのままでは不純物に関しての品質評価ができないので、便宜上、110℃で3hr真空乾燥することによりアミンを脱離させてナフタレンジカルボン酸含有結晶とし、同様に評価した。
[NDCA純度及び有機不純物含量]
メチルエステル化後にガスクロマトグラフィーにより分析した。
[色相値]
試料1gを1N−水酸化ナトリウム水溶液10mlに溶解し、光路長10mmの石英セルを用いた400nmの吸光度(以下、「OD400値」と略記する)で評価した。
[残留金属分]
湿式分解処理後、ICP発光分析法にて分析した。
[NDCA回収率]
NDCA回収率は、原料として仕込んだ粗ナフタレンジカルボン酸中のナフタレンジカルボン酸の量に対する、上記ナフタレンジカルボン酸含有結晶中に含まれるナフタレンジカルボン酸の量の割合で示した。
[NDCA・TEAの結晶の粒径]
レーザー式粒度分布計を用い、乾式測定法にて測定した。
[NDCA・TEAのケーキの性状]
NDCA・TEAのケーキの性状を、以下の基準で判断した。
悪い:ケーキの剥離、移相が困難。
問題有り:ケーキの剥離、移相は可能なものの、リンス液(溶媒)のロスが多い。
良好:ケーキの剥離、移相可能な状態で、かつ、リンス液のロスが少ない。
【0067】
<製造例A1>
酸化反応器に、撹拌装置、還流冷却器、原料2,6−ジメチルナフタレン供給管、溶媒供給管、空気供給管及び反応生成物抜き出し管等が設置されている内容積3Lのチタン製外部加熱器つきオートクレ−ブを使用し、2,6−ナフタレンジカルボン酸を連続的に製造した。
2,6−ジメチルナフタレン原料は液状に保つために130℃に加熱し、ピストン型ポンプを使用して酸化反応器へ供給した。溶媒は調合槽で予め触媒成分を加えて調合し、ピストン型ポンプを使用して酸化反応器へ供給した。反応液面は常にコントロールされ、反応器容量のほぼ50%になるように運転した。調合槽は外部加熱装置によって加熱調節した。原料2,6−ジメチルナフタレン供給量及び溶媒供給量及び溶媒成分は次の通りであった。
2,6−ジメチルナフタレン供給量:毎時300g
溶媒:酢酸、供給量は毎時1200g
溶媒中他成分の質量組成
水分:5%
Mn:2000ppm
Co:1000ppm
Br:3000ppm
なお、Mnは酢酸マンガン4水和物、Coは酢酸コバルト4水和物、Brは臭化水素酸として添加した。圧縮空気を酸化反応器のベントガス中の酸素濃度が1.2〜2.0%の範囲になるように供給速度を調節した。酸化反応温度は酸化反応器の中段下部に挿入した温度計が210℃になるように外部加熱器を調節した。反応圧力は還流冷却器の下流に設置した圧力計が20MPaGになるように下流の圧力調製弁で調製した。還流冷却器で凝縮した凝縮液は一部系外へ排出し、残りの部分は酸化反応器へ還流させた。以上の操作により得られたNDCAを含むスラリーを濾過、乾燥することで、粗ナフタレンジカルボン酸を得た。
粗ナフタレンジカルボン酸は、NDCAの純度が97.00%であり、不純物としてNAを870ppm、MNAを210ppm、TMAを7700ppm、FNAを3900ppm、ANAを330ppm、Br−NDCAを1600ppm、及びNTCAを3200ppm含んでいた。
【0068】
<実施例A1>
還流冷却器、攪拌装置、温度測定管付きの500mLのガラス製3口フラスコに、製造例A1で得た原料の粗ナフタレンジカルボン酸54.4gを、水32.7g及びアセトン54.9gの混合液に添加して攪拌した。攪拌しながらTEA60.0gを毎分2.0gの速度で滴下し、塩形成反応を行った。粗ナフタレンジカルボン酸のNDCA純度から、粗ナフタレンジカルボン酸中に含まれるNDCA量を計算すると52.8gと算出された。前記NDCA量に基づいて、アミンの添加速度を計算すると、アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.081モル倍と算出された。次にこのスラリーを攪拌しながらアセトンを200g追加し、母液に溶解している塩を晶出させた。晶出後のスラリーの温度を25℃に調節し、バスケット型遠心分離機を用いて150Gの遠心力にて固液分離し、100gのアセトンでリンスした。リンス後、バスケット型遠心分離機の回転を30秒間維持し、リンス液の脱液をおこなった。この時の結晶含液率は1.8%であった。ケーキの性状は良好で、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性に問題なかった。ケーキを全量回収し、付着しているリンス液を風乾により除き、NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得た。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表1に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表1に示す。ナフタレンジカルボン酸含有結晶中に存在するNDCA量から算出したNDCA回収率は95%と算出された。
上記NDCA・TEA結晶101gと水121g及びTEA12gを混合し、NDCA・TEA水溶液を調製した。このNDCA・TEA水溶液は含金属スラッジにより濁っており、0.1μmフィルターにより濾過することで、清澄なNDCA・TEA水溶液を得た。この清澄なNDCA・TEA水溶液を、コンデンサー、攪拌装置、加圧濾過装置、アルミブロックヒーターを備えた500mLのSUS304製オートクレーブに仕込み、150℃に加熱して、攪拌下同温度に維持しながら、毎時200gの速度でイオン交換水を新たに添加し、添加量と同量の留出液を得る塩分解操作を1hr行った。ついで、100℃まで放冷後に加圧濾過し、得られた結晶を水100gで洗浄後、110℃で3hr乾燥した。その結果、表1に示す組成と色相の十分精製された高純度なナフタレンジカルボン酸を得た。
【0069】
<実施例A2>
TEAを毎分10.2gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.41モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は3.2%であり、性状は良好で、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性に問題なかった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表1に示す。またNDCA・TEA結晶の品質評価を表1に示す。
上記NDCA・TEA結晶を用いて、塩分解操作を実施例A1と同一に行った。その結果、表1に示す組成と色相の十分精製された高純度なナフタレンジカルボン酸を得た。
【0070】
<実施例A3>
TEAを毎分5.0gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.20モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は2.2%であり、性状は良好で、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性に問題なかった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表1に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表1に示す。
上記NDCA・TEA結晶を用いて、塩分解操作を実施例A1と同一に行った。その結果、表1に示す組成と色相の十分精製された高純度なナフタレンジカルボン酸を得た。
【0071】
<実施例A4>
TEAを毎分0.26gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.011モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は1.7%であり、性状は良好で、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性に問題なかった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表1に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表1に示す。
上記NDCA・TEA結晶を用いて、塩分解操作を実施例A1と同一に行った。その結果、表1に示す組成と色相の十分精製された高純度なナフタレンジカルボン酸を得た。
【0072】
<実施例A5>
TEAを毎分0.13gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.0053モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は1.7%であり、性状は良好で、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性に問題なかった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表1に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表1に示す。
上記NDCA・TEA結晶を用いて、塩分解操作を実施例A1と同一に行った。その結果、表1に示す組成と色相の十分精製された高純度なナフタレンジカルボン酸を得た。
【0073】
<実施例A6>
TEAを毎分0.051gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.0021モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は1.6%であり、性状は良好で、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性に問題なかった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表1に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表1に示す。
上記NDCA・TEA結晶を用いて、塩分解操作を実施例A1と同一に行った。その結果、表1に示す組成と色相の十分精製された高純度なナフタレンジカルボン酸を得た。
【0074】
<比較例A1>
TEA60.0gを100mlビーカーにとり、スラリーに対して一度に添加した以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。なおこの際のアミンの添加時間は約10秒であったため、添加速度はNDCAに対して毎分約15モル倍と算出され、ケーキの含液率は10%であった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出されたNDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表2に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表2に示す。
上記NDCA・TEA結晶の粒径は小さく、含液率は高く、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性等の性状は著しく悪いものであった。工業的に行った場合には、(イ)固液分離での困難(ロ)工程での閉塞(ハ)プロセスコスト高を懸念される結果であった。また、上記NDCA・TEA結晶の品質評価でもOD400値及び有機不純物の量は実施例と比較して高く、十分な精製効果も得られなかった。
【0075】
<比較例A2>
TEAを毎分12.0gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.49モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってアミン塩を得た。ケーキの含液率は4.0%であった。乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表2に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表2に示す。
上記NDCA・TEA結晶の粒径は小さく、含液率は高く、濾布からの剥離性、ケーキの移送性、流動性等が実施例の条件よりも悪化した。工業的に行った場合には、(イ)固液分離での困難(ロ)工程での閉塞(ハ)プロセスコスト高を懸念される結果であった。また、上記NDCA・TEA結晶の品質評価でも有機不純物の量は実施例と比較して高く、十分な精製効果も得られなかった。
【0076】
<比較例A3>
TEAを毎分20.0gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.81モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は5.0%であった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表2に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表2に示す。
上記NDCA・TEA結晶の粒径は小さく、含液率は高く工業的に行った場合には、(イ)固液分離での困難(ロ)工程での閉塞(ハ)プロセスコスト高を懸念される結果であった。また、上記NDCA・TEA結晶の品質評価でも有機不純物の量は実施例と比較して高く、十分な精製効果も得られなかった。
【0077】
<比較例A4>
TEAを毎分0.026gの速度で滴下(アミンの添加速度はNDCAに対して毎分0.0011モル倍)する以外は実施例A1と同一に行ってNDCA・TEAを得た。ケーキの含液率は1.6%であった。NDCA・TEAの乾燥結晶101gを得て、NDCA回収率は95%と算出された。NDCA・TEA結晶の粒径及び含液率を表2に示す。また、NDCA・TEA結晶の品質評価を表2に示す。実施例A6と比較して結晶の品質は同等であった。
しかし、塩形成工程におけるTEAの投入に要する時間が膨大過ぎて工業的に採用できる方法ではなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
以下に実施例B1〜B21及び比較例B1〜B3において用いた装置の詳細を示す。
標準分離板型遠心沈降機:アルファ・ラバル株式会社製ディスク型遠心分離機 型式LAPX404
デカンタ型遠心分離機:三菱化工機株式会社製ミニベーンデカンター 型式DS100V
水平ろ葉型加圧ろ過機:IHI株式会社製リーフフィルター 型式CFR0.5−3−50型 ろ過面積0.5m
2
自動ろ紙交換式加圧フィルター:三菱化工機株式会社製シュナイダフィルター 型式CF−20−S4 ろ過面積0.2m
2
振動式膜分離装置:テクノアルファ株式会社製V−SEP L−モード ろ過面積0.046m
2 MF0.45μm膜使用
セラミック膜フィルター:日本ガイシ株式会社製テスト機 ろ過面積0.35m
2 セフィルトMF0.1μm膜使用
【0081】
<製造例B1>
特許文献6の製造例を参考にして、2,6−ジメチルナフタレンの酸化反応を実施し、粗ナフタレンジカルボン酸を得た。
氷酢酸179.7kgに、酢酸コバルト(四水塩)0.38kg、酢酸マンガン(四水塩)3.2kg、臭化水素(47%水溶液)0.743kgを混合し溶解させ、触媒液を調製した。撹拌機、還流冷却器及び原料送液ポンプを備えた500Lチタン製オートクレーブに前記の触媒液74kgを仕込んだ。残りの触媒液は2,6−ジメチルナフタレン18kgと混合して原料供給槽に仕込み、加熱して2,6−ジメチルナフタレンを溶解させ原料液を調製した。窒素で反応系内の圧力を1.8MPaGに調製し、撹拌しながら温度200℃に加熱した。温度、圧力が安定した後、原料液及び圧縮空気を反応器に供給し酸化反応を開始した。反応器オフガス中の酸素濃度が1.0容量%になるように供給空気流量を調節しながら、原料液を2時間かけて連続的に供給した。原料液の供給終了後、空気の供給を9分間継続した。反応終了後、反応器を室温まで冷却して反応生成物を取り出し、ヌッチェを用いて吸引ろ過し、水及び酢酸で洗浄後、乾燥した。その結果、NDCA純度98.60%であり、FNA2600ppm、コバルト360ppm、マンガン2500ppm含む粗ナフタレンジカルボン酸が得られた。
【0082】
<製造例B2>
特許文献5の実施例21を参考にして、塩形成−晶出操作を実施し、NDCA・TEAの結晶を得た。
還流冷却器、撹拌装置、温度測定管付き200LのSUS316L製反応器に、製造例B1で得られた粗ナフタレンジカルボン酸20kg、アセトン16kg、水12kgを仕込み(溶媒含水率42.8%)、TEA20kgを加え、25℃に保って30分撹拌混合し、塩形成を行った。次にアセトン64.4kgを添加し、30分撹拌混合し、更にNDCA・TEA結晶を析出させた。25℃でNDCA・TEA結晶を含むスラリーをバスケット型遠心分離機で遠心分離した後、バスケット型遠心分離機ろ布上の結晶をアセトン30kgでリンスした。その結果、NDCA・TEA結晶が41.4kg得られた。該NDCA・TEA結晶を110℃で3hr真空乾燥することで得られたナフタレンジカルボン酸含有結晶は、NDCA純度が99.88%であり、FNAを170ppm、コバルトを360ppm、マンガンを2500ppm含んでおり、NDCAの回収率は98.0%であった。上記操作を10回繰り返し行い、NDCA・TEAを415kg得た。
【0083】
<実施例B1>
撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。次に窒素雰囲気下でTEA373g(10当量)を添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。得られた溶液を窒素雰囲気下、70℃において水平ろ葉型加圧ろ過機に供給しろ過を行い、金属分を分離した。水平ろ葉型加圧ろ過機でのろ過を行う際は、プリコート用ろ過助剤としてラヂオライト♯100及びラヂオライト♯800S(いずれも昭和化学工業製)の混合物を、ボディーフィード用ろ過助剤としてラヂオライト♯800Sをそれぞれ用いた。この溶液700gを撹拌装置、加圧ろ過装置、ガス抜き出し口を備えた3LのSUS316L製オートクレーブに入れ、窒素置換後、200℃まで加熱し、同温度下で100g/hrの速度で水を加えながら、送水量と同量の留出液を反応装置上部より抜き出す操作を2時間行った。総留出液量は溶液中のNDCA量に対して約21倍であった。次いで同温度で加圧ろ過し、得られた結晶を水で洗浄後、120℃で5時間真空乾燥し、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0084】
<実施例B2>
不溶化においてTEA746gを加えた以外は実施例B1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0085】
<実施例B3>
ろ過において自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いた以外は実施例B2と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0086】
<実施例B4>
ろ過において振動式膜分離装置を用いた以外は実施例B2と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、この場合はろ過助剤を用いていない。
【0087】
<実施例B5>
50LのSUS316L製容器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。この溶液を70℃において水平ろ葉型加圧ろ過機に供給しろ過を行い、金属分を分離し、撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器にろ液を受けた。水平ろ葉型加圧ろ過機でのろ過を行う際は、プリコート用ろ過助剤としてラヂオライト♯100及びラヂオライト♯800Sの混合物を、ボディーフィード用ろ過助剤としてラヂオライト♯800Sをそれぞれ用いた。次に窒素雰囲気下でTEA746gを添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。得られた溶液を窒素雰囲気下、70℃においてセラミック膜フィルターに供給しろ過を行い、金属分を分離した。なお、セラミック膜フィルターを用いたろ過時には、10分間隔でろ液による逆洗を行った。その後は、実施例B1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0088】
<実施例B6>
一段目のろ過において自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いた以外は実施例B5と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0089】
<実施例B7>
一段目のろ過において振動式膜分離装置を用いた以外は実施例B5と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、振動式膜分離装置でのろ過においてはろ過助剤は用いていない。
【0090】
<実施例B8>
二段目のろ過において振動式膜分離装置を用いた以外は実施例B7と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0091】
<実施例B9>
50LのSUS316L製容器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。この溶液を70℃において水平ろ葉型加圧ろ過機に供給しろ過を行い、撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器にろ液を受けた。水平ろ葉型加圧ろ過機でのろ過を行う際は、プリコート用ろ過助剤としてラヂオライト♯100及びラヂオライト♯800Sの混合物を、ボディーフィード用ろ過助剤としてラヂオライト♯800Sをそれぞれ用いた。次に窒素雰囲気下でTEA746gを添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。この不溶化液を標準分離板型遠心沈降機に窒素雰囲気下、70℃において2L/minで供給し金属分を分離した。その後は実施例B1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸Aを得た。
【0092】
<実施例B10>
一段目のろ過において振動式膜分離装置を用いた以外は実施例B9と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、振動式膜分離装置を用いたろ過においては、ろ過助剤は用いていない。
【0093】
<実施例B11>
撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器に、製造例2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。次に窒素雰囲気下でTEA746gを添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。この不溶化液を標準分離板型遠心沈降機に窒素雰囲気下、70℃において1L/minで供給し金属分を分離した。その後は実施例1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0094】
<実施例B12>
撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。次に窒素雰囲気下でTEA746gを添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。この不溶化液をデカンタ型遠心分離機に窒素雰囲気下、70℃において1L/minで供給し金属分を分離し、50LのSUS316L製容器に溶液を受けた。この溶液を標準分離板型遠心沈降機に窒素雰囲気下、70℃において2L/minで供給し金属分を分離した。その後は実施例B1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0095】
<実施例B13>
50LのSUS316L製容器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。この溶液をデカンタ型遠心分離機に70℃において1L/minで供給し金属分を分離し、撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器に溶液を受けた。次に窒素雰囲気下でTEA746gを添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。この不溶化液を標準分離板型遠心沈降機に窒素雰囲気下、70℃において2L/minで供給し金属分を分離した。その後は実施例B1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0096】
<実施例B14>
2L/minで供給した以外は実施例B11と同様の操作を行い、標準分離板型遠心沈降機で金属を分離した。得られた溶液を窒素雰囲気下、70℃において水平ろ葉型加圧ろ過機に供給しろ過を行った。水平ろ葉型加圧ろ過機でのろ過を行う際は、プリコート用ろ過助剤としてラヂオライト♯100及びラヂオライト♯800Sの混合物を、ボディーフィード用ろ過助剤としてラヂオライト♯800Sをそれぞれ用いた。水平ろ葉型加圧ろ過機でのろ過後は、実施例B1と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0097】
<実施例B15>
50LのSUS316L製容器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶15kgと15kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。この溶液を標準分離板型遠心沈降機に70℃において2L/minで供給し金属分を分離し、撹拌装置、温度測定管付き50LのSUS316L製反応器に溶液を受けた。次に窒素雰囲気下でTEA746gを添加し、70℃で30分撹拌し不溶化を行った。不溶化後は水平ろ葉型加圧ろ過機を用い実施例B14と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0098】
<実施例B16>
二段目のろ過において自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いた以外は実施例B14と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0099】
<実施例B17>
二段目のろ過において自動ろ紙交換式加圧フィルターを用いた以外は実施例B15と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。
【0100】
<実施例B18>
二段目のろ過において振動式膜分離装置を用いた以外は実施例B14と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、振動式膜分離装置を用いたろ過においては、ろ過助剤は用いていない。
【0101】
<実施例B19>
二段目のろ過において振動式膜分離装置を用いた以外は実施例B15と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、振動式膜分離装置を用いたろ過においては、ろ過助剤は用いていない。
【0102】
<実施例B20>
二段目のろ過においてセラミック膜フィルターを用いた以外は実施例B14と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、セラミック膜フィルターを用いたろ過時には、10分間隔でろ液による逆洗を行った。また、セラミック膜フィルターを用いたろ過においては、ろ過助剤は用いていない。
【0103】
<実施例B21>
二段目のろ過においてセラミック膜フィルターを用いた以外は実施例B15と同様の操作を行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。なお、セラミック膜フィルターを用いたろ過時には、10分間隔でろ液による逆洗を行った。また、セラミック膜フィルターを用いたろ過においては、ろ過助剤は用いていない。
【0104】
<比較例B1>
特許文献5の実施例17を参考に操作を実施した。
3Lのガラス製容器に、製造例B2で得られたNDCA・TEA結晶1kgと1kgの水を仕込み、NDCA・TEA結晶を溶解させた。この溶液を1μmのフィルターで精密ろ過して異物と不溶金属分を分離した。その後、塩分解操作を実施例B1と同様に行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。得られた精製ナフタレンジカルボン酸は塩形成−晶出工程は行っているので、FNA分は問題ないが、不溶化を行っていないため、残留金属分が高いものであった。
【0105】
<比較例B2>
特許文献6の実施例1を参考に操作を実施した。
還流冷却器、撹拌装置、温度測定管を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに製造例B1で得られた粗ナフタレンジカルボン酸200g、水1070g、TEA205.9g(NDCAに対して1.1当量)を加え30分撹拌した。溶解せずに析出した金属分を、細孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、さらに細孔径5μmのフィルターを用いろ過した。その後、塩分解操作を実施例B1と同様に行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。得られた精製ナフタレンジカルボン酸はFNA分、金属分共に高いものであった。
【0106】
<比較例B3>
特許文献6の実施例3を参考に操作を実施した。
還流冷却器、撹拌装置、温度測定管を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに製造例B1で得られた粗ナフタレンジカルボン酸200g、水1070g、TEA205.9g(NDCAに対して1.1当量)を加え30分撹拌した。溶解せずに析出した金属分を、細孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、細孔径1μmのニトロセルロース製メンブランフィルターを用いろ過した。さらに、活性炭を充填したガラス製カラムに流通させた。その後、塩分解操作を実施例B1と同様に行い、表3に示す精製ナフタレンジカルボン酸を得た。得られた精製ナフタレンジカルボン酸はFNAが200ppmでわずかに高い以外は問題なかったが、操作が非常に煩雑であった。
【0107】
【表3】