(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの複数の半導体チップを同一パッケージに収納したモジュール型半導体装置において、半導体チップの高集積化が進んでいる。このため、モジュール型半導体装置では、パッケージ内の配線基板に接合される外部端子の接合強度や信頼性に加えて、外部端子の寸法精度も求められている。
【0003】
図13は、従来のモジュール型半導体装置について模式的に示す平面図である。また、
図14は、
図13の切断線AA−AA’における断面図である。
図15は、
図13の切断線BB−BB’における断面図である。
図13〜15に示すように、従来の半導体装置100は、半導体チップ101と、配線基板102と、アルミワイヤ103と、主端子104と、制御端子105と、金属ベース106と、樹脂ケース120と、を備えている。樹脂ケース120は、蓋121と側壁122とが一体成形されてなる。
【0004】
配線基板102は、絶縁基板の表面に回路パターン102a,102bを形成した基板である。半導体チップ101の裏面は、図示省略した接合材を介して配線基板102の回路パターン102aと接合している。半導体チップ101の表面に設けられた図示省略した電極と、配線基板102の回路パターン102bとはアルミワイヤ103によって電気的に接続されている。また、配線基板102の回路パターン102bには、接合材111を介して、外部端子である主端子104および制御端子105のそれぞれ一端が接合されている。
【0005】
配線基板102の裏面には金属膜102cが設けられており、この金属膜102cが図示を省略した接合材を介して金属ベース106と接合している。金属ベース106は、良熱伝導体の材質で作られており、半導体チップ101で発生し配線基板102を介して伝わる熱を半導体装置100の外部へ伝導する。金属ベース106の周縁には樹脂ケース120が接着されている。主端子104の他端および制御端子105の他端は、それぞれ樹脂ケース120の蓋121を貫通して樹脂ケース120の外側に露出している。
【0006】
蓋121には、制御端子105が貫通する貫通孔121aが設けられている。貫通孔121aは、1枚の板状部材から成形される制御端子105の幅および厚さに対応した寸法を有する略矩形状の平面形状を有する。貫通孔121aの長手方向の幅w101は、制御端子105の蓋121を貫通する部分(以下、貫通部とする)105aの幅w111と、後述する貫通部105aの突起部105dの幅w112とを加算した寸法となっている。貫通孔121aの長手方向の側部は、蓋121に固定された主端子104の並列方向に平行になっている。
【0007】
貫通孔121aの短手方向の側部には、蓋121の、樹脂ケース120の外側に露出する面(以下、おもて面とする)側にL字状の段差121bが設けられている。蓋121の、樹脂ケース120の内側に露出する面(以下、裏面とする)には、貫通孔121aの、段差121bが設けられた側部に対向する側部に連なって、配線基板102側に突出する凸部121cが設けられている。制御端子105は、段差121bおよび凸部121cにそれぞれ接触し係止(固定)される。
【0008】
具体的には、制御端子105は、蓋121の貫通孔121aを貫通する貫通部105aと、配線基板102の回路パターン102bに接合された接続部105cと、貫通部105aと接続部105cとを連結する連結部105bとからなる。貫通部105a、連結部105bおよび接続部105cは板状部材からなる。接続部105cの、連結部105bに連結された端部(以下、上端部とする)に対して反対側の他端(以下、下端部とする)は、接合材111を介して配線基板102の回路パターン102bと接合している。
【0009】
接続部105cの平坦面は、配線基板102のおもて面とほぼ垂直になっている。連結部105bは、接続部105cの蓋121側(上端部)で接続部105cに連結され、接続部105cとL字形状をなす。連結部105bの平坦面は、接続部105cの平坦面とほぼ直角で、かつ配線基板102のおもて面にほぼ平行になっている。さらに、連結部105bは、貫通部105aの配線基板102側の端部(以下、下端部とする)に連結され、貫通部105aとL字形状をなす。
【0010】
連結部105bの平坦面は、貫通部105aの平坦面とほぼ直角になっている。貫通部105aの平坦面は、配線基板102のおもて面とほぼ垂直になっている。貫通部105aの下端部に対して反対側の端部(以下、上端部とする)は、蓋121に設けられた貫通孔121aから樹脂ケース120の外側に露出されている。貫通部105aの、貫通孔121aの側部に設けられた段差121bに対向する側面には、突起部105dが設けられている。
【0011】
突起部105dは、貫通部105aの上端部側が狭く下端部側に向って広がった形状をなす。突起部105dの下端部は、段差121bの底面に接触する。突起部105dは、制御端子105の配線基板102側への移動を阻止する。また、連結部105bの蓋121側の面は、蓋121の裏面に設けられた凸部121cに近接する。連結部105bは、制御端子105の配線基板102から離れる方向への移動を阻止する。
【0012】
つぎに、蓋121に制御端子105を係止する方法について説明する。
図16は、従来の組み立て途中の半導体装置の要部を示す説明図である。
図16(a)〜16(c)には、
図14に示す半導体装置100の制御端子近傍130を示す。
図16(a)には、貫通孔121aに差し込まれる前の制御端子105を示す。
図16(b)には、貫通孔121aに差し込まれたときの制御端子105を示す。
図16(c)には、蓋121に係止された制御端子105を示す。
【0013】
図16(a)〜16(c)に示す製造途中の半導体装置100は、樹脂ケース120を金属ベース(不図示)に接着する処理である。
図16(a)〜16(c)では図示を省略するが、制御端子105の接続部105cの下端部は、配線基板102の回路パターン102bと接合している。まず、
図16(a)に示すように、蓋121の裏面側から貫通孔121aに制御端子105の貫通部105aを差し込む。
【0014】
そして、
図16(b)に示すように、貫通部105aの突起部105d部分が蓋121のおもて面側に露出するように、さらに、貫通孔121aに貫通部105aを差し込む。貫通孔121aの長手方向の幅w101は貫通部105aの幅w111と突起部105dの幅w112とを加算した寸法(w101=w111+w112)となっているので、貫通部105aの突起部105dが設けられた部分も貫通孔121aを通過する。
【0015】
つぎに、貫通部105aの下端部に連結された連結部105bの蓋121側の面が蓋121の裏面に設けられた凸部121cに接触するまで、貫通部105aを貫通孔121aに差し込む。連結部105bの蓋121側の面が凸部121cに接触したとき、貫通部105aの上端部が樹脂ケース120の外側に露出され、貫通部105aに設けられた突起部105dは、段差121b内に露出される。
【0016】
その後、制御端子105を蓋121のおもて面に平行な方向に移動し、
図16(c)に示すように、突起部105dの下端部を段差121bの底面に接触させる。これにより、突起部105dおよび連結部105bによって制御端子105の移動が阻止され、制御端子105は蓋121に係止される。
【0017】
このように制御端子と樹脂ケースとが分離されたアウトサート構造のモジュール型半導体装置として、次の装置が提案されている。蓋体は3つのブロックを備え、各ブロックの上面略中央部には、それぞれナット収納溝が形成されている。各ブロックは、連結部により互いに連結され、各ブロック間には、空隙部がそれぞれ形成されている。この空隙部は、後に封止樹脂の充填により閉塞される。ブロックの側面には、一対の張出部が設けられ、この張出部に信号端子が挿入・仮固定される4個の角孔が形成されている。信号端子は、板材により略L字状に形成され、起立部の中央よりやや上端寄りに膨出部が形成され、また、中央よりやや下端寄りには、係止部が形成されている。膨出部が角孔の内壁と接触し、さらに強制的に係止部の位置まで挿入することにより、信号端子が下方に落下しないように係止される(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0018】
また、別の装置として、次の装置が提案されている。樹脂ケースの側壁が内部に向かって伸び中央に開放部を有する挾持部と、挾持部に囲まれ外壁に設けられた溝と、挾持部の下部に設けられ内部に向かって伸びる支持台とにより構成されている。さらに外部引き出し端子が挾持部の開放部より小さい幅の切欠部と、側壁側に向かって突出する突部と、切欠部の下部に設けられ内部に向かって伸びる折り曲げ部とにより構成されている。樹脂ケースの外壁の挾持部の開放部に外部引き出し端子の切欠部を通し、外部引き出し端子を下げると、支持台に外部引き出し端子の折り曲げ部が支持されるとともに、外部引き出し端子のつめが樹脂ケースの溝に係合される(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0019】
さらに、別の装置として、次の装置が提案されている。絶縁ケース自体に外部導出端子を半田固着する際の位置決め用の係止部を備え、また、前記絶縁ケースの下端面に放熱板と該絶縁ケースを接着する接着剤溜り用の傾斜溝部を形成する。絶縁ケースの外部導出端子挿入孔はその一部が相対的に口の広い幅広の角穴となっており、小径の角穴との連通部に形成される段部に外部導出端子の係止部を係止させることで、該導出端子の仮止めができるようにしてある。下方の角穴側から外部導出端子を挿入し、係止部の位置では外側に広がろうとするばね力に抗してさらに挿入することにより、角穴を通過した段階で該係止部が幅広の角穴内で広がり、段部と幅広の角穴の内壁により規制されて仮止めがなされる(例えば、下記特許文献3参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、次のような問題が生じることが新たに判明した。
図11は、従来の半導体装置の制御端子近傍を示す説明図である。
図11には、
図13〜15に示す半導体装置100の制御端子近傍130の状態を示す。
図11に示すように、貫通孔121aの長手方向の幅w101は、貫通部105aの幅w111と突起部105dの幅w112(
図16(b)参照)とを加算した寸法とする必要があるため、突起部105dの幅w112の分だけ貫通部105aの幅w111よりも広くなっている。
【0022】
このため、突起部105dが段差121bに接触している状態では、貫通部105aと、貫通孔121aの段差121bが設けられた側部に対向する側部との間に隙間w113が生じる。このように隙間w113が生じていることにより、例えば、貫通部105aの突起部105dが設けられた側面の斜め上方(例えば白抜き左下向矢印で示す方向)131から貫通部105aに圧縮荷重がかかった場合、制御端子105がずれて突起部105dが段差121bから外れてしまう。
【0023】
突起部105dが段差121bから外れた場合、制御端子105が樹脂ケース120内に埋没する虞がある。このため、制御端子105に接合された回路パターン102bに制御端子105を介して圧縮荷重がかかり、配線基板102が割れたり、配線基板102の回路パターン102a,102bが破損するという問題がある。
【0024】
さらに、突起部105dが段差121bから外れた場合、制御端子105にかかる圧縮荷重を突起部105dと樹脂ケース120とで受けることができないので、制御端子105が長い場合に制御端子105が変形しやすいという不都合がある。制御端子105が変形することで、制御端子105の寸法精度が低下したり、制御端子105や蓋121の接合位置がずれる虞がある。また、隙間w113が生じていることにより制御端子105の位置の寸法精度が悪くなることもある。
【0025】
また、上記特許文献1〜3に示す半導体装置では、次のような問題が生じることが発明者によって確認された。
図12は、従来の半導体装置の制御端子近傍の別の一例を示す説明図である。
図12に示す制御端子145は、
図13〜15に示す制御端子105と同様に、貫通部145a、連結部145bおよび接続部145cが連結されてなる。
図12(a)は、貫通部145aの平坦面側から図示した平面図である。
図12(b)は、貫通部145aの端部側から図示した平面図である。制御端子145には、貫通部145aの平坦面の一部が切り出され、かつ貫通部145aにつながった上端145d−1が曲げられることで貫通部145aの平坦面から外側に張り出した張り出し部145dが設けられている。
【0026】
このような張り出し部145dは、プレス加工によって一枚の金属板から制御端子145を成形するときに、張り出し部145dとなる部分を貫通部145aから切り出す処理と、切り出した張り出し部145dを曲げる処理とを同時に行う切り曲げ加工によって形成される。貫通部145aには、張り出し部145dを切り出したことによって、張り出し部145dとほぼ等しい形状の穴145d−3が形成される。
【0027】
しかし、このように形成された張り出し部145dには、例えば張り出し部145dの下端部145d−2などにバリが発生する。このため、張り出し部145dを穴145d−3に戻す方向(白抜き右向矢印で示す方向)140から圧力がかかったとしても、張り出し部145dは穴145d−3内に完全に収納されない。したがって、制御端子145の厚さt110は、貫通部145aの厚さt101と、張り出し部145dが貫通部145aの平坦面から張り出している厚さt102との和になり、貫通孔の短手方向の幅を貫通部145aの厚さt101よりも広くする必要がある。これにより、貫通部145aと貫通孔の側部との間に隙間(不図示)が生じ、半導体装置100と同様の問題が生じる。
【0028】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、機械的強度の高い半導体装
置を提供することを目的とする。また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、寸法精度の高い半導体装
置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は
、半導体チップが接合された絶縁基板と、前記絶縁基板の前記半導体チップが接合された面を覆うケースと、一方の端部が前記半導体チップに電気的に接続され、他方の端部が前記ケースを貫通して前記ケースの外側に露出する制御端子と、を備え
る。前記制御端子の前記ケースの外側に露出された部分に、当該露出された部分の一部が切り抜かれてなる切り抜き部と、前記切り抜き部に囲まれ前記制御端子に残る部分を折り曲げることで成形され、前記ケースの外側から前記ケースに接触して前記制御端子の移動を阻止する阻止部と、が形成されている。
前記ケースは、前記制御端子が貫通する貫通孔と、前記貫通孔の側部に前記ケースの外側から設けられ、前記制御端子から張り出した前記阻止部が底面に接触する段差と、を有する。前記段差の側部と底面とのなす角度は鋭角であることを特徴とする。また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記阻止部は、U字状の前記切り抜き部に囲まれ前記制御端子に残る部分からなることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記阻止部は、前記切り抜き部側に押される方向に圧力がかかったときに、前記切り抜き部内に収納される構成を有することを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記阻止部は、前記切り抜き部側に押される方向に圧力がかかったときに、前記阻止部を構成する材料のもつ弾力性により前記切り抜き部内に収納される構成を有することを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記制御端子は、前記ケースの外側に一方の端部が露出され、前記ケースの外側に露出する部分に前記阻止部が設けられた貫通部と、前記貫通部の他方の端部に連結して前記貫通部と直交し、前記絶縁基板に平行な平坦面を有する連結部と、を備えることを特徴とする。
【0033】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ケースは、前記絶縁基板の前記半導体チップが接合された面の上方に配置される蓋と、前記蓋に設けられ
た前記貫通孔と、前記貫通孔の側部
に設けられ
た前記段差と、前記蓋の、前記絶縁基板側の面に設けられ、前記連結部の平坦面に接触する凸部と、を備えることを特徴とする。
【0034】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記貫通孔の開口幅は、前記貫通孔を貫通する前記制御端子の、前記貫通孔の側部に対向する側面の幅とほぼ同じ寸法であることを特徴とする。
【0035】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記制御端子と前記ケースとは個別部品として設けられ、前記制御端子を前記ケースに差し込むことで組み立てられる構造を有することを特徴とする。
【0036】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、金属ベース上に、半導体チップおよび制御端子が固定された半導体装置の製造方法であって、次の特徴を有する。前記金属ベースの前記半導体チップおよび前記制御端子が固定された面をケースで覆い、前記制御端子を前記ケースに貫通させ、前記ケースの外側に、前記制御端子の一部が切り抜かれてなる切り抜き部に囲まれ前記制御端子に残る部分を折り曲げることで成形された阻止部を露出させる
第1工程を行う。そして、前記ケースの外側から前記阻止部を前記ケースに接触させて前記制御端子を前記ケースに係止する
第2工程を行う。
前記ケースは、前記制御端子が貫通する貫通孔と、前記貫通孔の側部に前記ケースの外側から設けられた段差と、を有し、前記段差の側部と底面とのなす角度は鋭角であり、前記第2工程では、前記制御端子から張り出した前記阻止部を前記段差の底面に接触させる。また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記貫通孔の開口幅は、前記貫通孔を貫通する前記制御端子の、前記貫通孔の側部に対向する側面の幅とほぼ同じ寸法であることを特徴とする。
【0037】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、半導体チップが接合された絶縁基板と、前記絶縁基板の前記半導体チップが接合された面を覆うケースと、一方の端部が前記半導体チップに電気的に接続され、他方の端部が前記ケースを貫通して前記ケースの外側に露出する制御端子と、を備える。前記制御端子は、前記ケースの外側に一方の端部が露出された貫通部と、前記貫通部の、前記ケースの外側に露出された部分の一部が切り抜かれてなる切り抜き部と、前記切り抜き部に囲まれ前記貫通部に残る部分を折り曲げることで成形され、前記ケースの外側から前記ケースに接触して前記制御端子の移動を阻止する阻止部と、前記貫通部の他方の端部に一方の端部が連結して前記貫通部と直交し、前記貫通部に対し前記阻止部と反対方向へ張り出し、かつ前記絶縁基板に平行な平坦面を有する連結部と、前記連結部の他方の端部に一方の端部が連結して前記連結部と直交し、他方の端部が前記絶縁基板に接合された接続部と、を有する。前記ケースは、前記絶縁基板の前記半導体チップが接合された面の上方に配置される蓋と、前記蓋に設けられ、前記制御端子が貫通する貫通孔と、前記貫通孔の側部に前記蓋の前記ケースの外側に露出する面側から設けられ、前記阻止部が接触する段差と、前記蓋の、前記絶縁基板側の面に設けられ、前記貫通孔に対し前記段差と反対側に配置され、かつ前記連結部の平坦面に接触する凸部と、を有することを特徴とする。また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記貫通孔の幅は、前記貫通部の厚さに等しいことを特徴とする。また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、異なる前記貫通孔を貫通し隣り合って配置され、前記連結部の張り出し方向を同じ方向に向けた2つの前記制御端子を1組とする。前記1組の前記制御端子のうち、一方の前記制御端子の前記阻止部が接触する前記段差と、他方の前記制御端子の前記連結部が接触する前記凸部と、が前記蓋の厚さ方向に対向することを特徴とする。
【0038】
上述した発明によれば、ケースの蓋に設けられた貫通孔に制御端子が差し込まれたとき、制御端子に設けられた阻止部は、阻止部を構成する材料の弾力性により切り抜き部内に収納される。このため、貫通孔を通過するときの制御端子の厚さを、阻止部を設けてない場合の厚さと等しくすることができる。これにより、貫通孔の開口幅を制御端子の幅および厚さに対応した寸法とすることができる。したがって、阻止部の自由端がケースの蓋のおもて面に接触し制御端子がケースに係止されたときに、制御端子と貫通孔の側部との間に生じる隙間を従来よりも少なくすることができる。このため、制御端子がケースに係止された後、阻止部の自由端がケースの蓋のおもて面から外れることはない。
【0039】
また、上述した発明によれば、制御端子がケースの蓋に設けられた貫通孔を通過し終えた後、制御端子に設けられた阻止部は、阻止部を構成する材料の弾力性により制御端子の平坦面から張り出した状態に戻る(スプリングバック)。これにより、阻止部の自由端が蓋のおもて面に接触し、制御端子がケースに係止される。したがって、阻止部によってケースに係止された制御端子に圧縮荷重がかかったとしても、阻止部がケースの蓋のおもて面から外れることはない。
【0040】
このように、制御端子がケースに係止された後、阻止部の自由端がケースの蓋のおもて面から外れないため、制御端子がケース内に埋没することを防止することができる。したがって、制御端子を介して配線基板や回路パターンに圧縮荷重がかかることで配線基板が割れたり、配線基板の回路パターンが破損することを防止することができる。
【0041】
また、上述した発明によれば、阻止部がケースの蓋のおもて面に設けられた段差から外れることはないので、制御端子を介して阻止部とケースとに圧縮荷重がかかり、制御端子にかかる圧縮荷重が軽減される。このため、制御端子が変形することを軽減することができる。また、上述した発明によれば、貫通孔の開口幅を貫通部の幅および厚さに対応した寸法とすることができるので、組み立て後の半導体装置において、例えば制御端子に斜め上方から圧力がかかったときの制御端子の移動可能範囲を狭くすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明にかかる半導体装
置によれば、機械的強度を向上した半導体装置を提供することができるという効果を奏する。また、本発明にかかる半導体装
置によれば、寸法精度の高い半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装
置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかるモジュール型半導体装置について示す平面図である。また、
図2は、
図1の切断線A−A’における断面図である。
図3は、
図1の切断線B−B’における断面図である。
図1〜3に示すように、実施の形態にかかる半導体装置10は、半導体チップ1と、配線基板2と、ワイヤ配線3と、主端子4と、制御端子5と、金属ベース6と、樹脂ケース20と、を備えている。樹脂ケース20は、蓋21と側壁22とが一体成形されてなる。
【0046】
配線基板2は、絶縁基板の表面に回路パターン2a,2bを形成した基板である。半導体チップ1の裏面は、図示省略した接合材を介して配線基板2の回路パターン2aと接合している。回路パターン2aには、例えばIGBTやFWDなどの複数の半導体チップ1が接合されている。半導体チップ1のおもて面に設けられた図示省略した電極(以下、おもて面電極とする)と、他の半導体チップ1のおもて面電極とはワイヤ配線3によって電気的に接続されている。例えばIGBTやFWDなどの半導体チップ1は、回路パターン2aとワイヤ配線3等により逆並列に接続され、アームを構成するようにしてもよい。ワイヤ配線3は例えばアルミワイヤである。
【0047】
半導体チップ1のおもて面電極と配線基板2の回路パターン2bとはワイヤ配線3によって電気的に接続されている。また、配線基板2の回路パターン2bには、接合材11を介して主端子4の一端および制御端子5の一端がそれぞれ接合されている。主端子4は、配線基板2との電気的な接続に供される外部端子である。制御端子5は、図示しない装置との電気的な接続に供される外部端子である。
【0048】
配線基板2の裏面には金属膜2cが設けられており、この金属膜2cが図示を省略した接合材を介して金属ベース6と接合している。金属ベース6は、良熱伝導体の材質で作られており、半導体チップ1で発生し配線基板2を介して伝わる熱を半導体装置10の外部へ伝導する。金属ベース6の周縁には樹脂ケース20が接着されている。主端子4の他端および制御端子5の他端は、それぞれ樹脂ケース20の蓋21を貫通して樹脂ケース20の外側に露出している。
【0049】
蓋21には、制御端子5が貫通する貫通孔21aが設けられている。貫通孔21aは、例えば一枚の板状部材から成形される制御端子5の幅および厚さに対応した寸法を有する略矩形状の断面形状を有する。制御端子5の厚さは、制御端子5の成形に用いる板状部材の厚さである。具体的には、貫通孔21aの長手方向の幅w1は、制御端子5の、蓋21を貫通する部分(貫通部)5aの幅w11よりも若干大きい寸法となっている。貫通孔21aの短手方向の幅w2は、貫通部5aの厚さt1よりも若干大きい寸法となっている。貫通部5aの厚さt1を例えば0.5mmとしたときに、貫通孔21aの短手方向の幅w2は例えば0.6mmであってもよい。
【0050】
貫通部5aの寸法よりも若干大きい寸法とは、制御端子5の貫通部5aを通過させることができ、かつ、例えば貫通部5aに斜め上方から圧力がかかったときの貫通部5aの移動可能範囲が狭く、貫通部5aの平坦面を配線基板2にほぼ垂直に維持することができる寸法である。貫通孔21aの長手方向の側部は、蓋21に固定された主端子4の並列方向にほぼ平行になっている。
【0051】
貫通孔21aの長手方向の側部には、蓋21の、樹脂ケース20の外側に露出する面(おもて面)側にL字状の段差21bが設けられている。貫通孔21aと段差21bとはつながっている。段差21bは、蓋21を貫通しない深さで設けられている。段差21bの底面は、蓋21のおもて面にほぼ垂直に設けられた段差21bの側部とのなす角度が鋭角となるように斜度を有していてもよい。
【0052】
蓋21の、樹脂ケース20の内側に露出する面(裏面)には、貫通孔21aの、段差21bが設けられた側部に対向する側部に連なって、配線基板2側に突出する凸部21cが設けられている。組み立てられた半導体装置10において、凸部21cは、制御端子5の、貫通部5aとほぼ直角をなす部分(以下、連結部とする)5bに接触する。このように、制御端子5は、蓋21のおもて面および裏面にそれぞれ設けられた段差21bおよび凸部21cにそれぞれ接触あるいは近接し、係止(固定)される。
【0053】
つぎに、制御端子5について詳細に説明する。
図4は、実施の形態にかかるモジュール型半導体装置の要部について示す説明図である。
図4(a),4(b)には、それぞれ
図2,3に示す制御端子5の断面構成を示す。
図4に示すように、制御端子5は、蓋21の貫通孔21aを貫通する貫通部5aと、配線基板2の回路パターン2bに接合され配線基板2との電気的な接続に供される接続部5cと、貫通部5aと接続部5cとを連結する連結部5bとからなる。制御端子5は、貫通部5a、連結部5bおよび接続部5cが連続した1つの部品として、1枚の金属平板から切り出される。
【0054】
接続部5cの、連結部5bに連結された端部(上端部)に対して反対側の他端(下端部)は、接合材11を介して配線基板2の回路パターン2bと接合している。接続部5cの平坦面は、配線基板2のおもて面とほぼ垂直になっている。連結部5bは、接続部5cの蓋21側(上端部)で接続部5cに連結され、接続部5cとL字形状をなす。連結部5bの平坦面は、接続部5cの平坦面とほぼ直角で、かつ配線基板2のおもて面にほぼ平行になっている。
【0055】
さらに、連結部5bは、貫通部5aの配線基板2側の端部(下端部)に連結され、貫通部5aとL字形状をなす。連結部5bの平坦面は、貫通部5aの平坦面とほぼ直角になっている。貫通部5aの平坦面は、配線基板2のおもて面とほぼ垂直になっている。貫通部5aの下端部に対して反対側の端部(上端部)は、蓋21に設けられた貫通孔21aから樹脂ケース20の外側に露出される。
【0056】
このように連結部5bと貫通部5aとを直角にすることで、貫通部5aにかかる圧縮荷重によって連結部5bが撓む(ばね効果)。これにより、貫通部5aにかかる圧縮荷重を連結部5bで吸収することができるので、貫通部5aにかかる圧縮荷重による接合材11へのダメージを小さくすることができる。また、連結部5bを曲げ加工により形成するとともに、接続部5cを面形状としたので、貫通孔21aに制御端子5を差し込むときの荷重による制御端子5の変形を低減することができる。
【0057】
貫通部5aの、貫通孔21aの側部に設けられた段差21bに対向する側面には、制御端子5の移動を阻止する阻止部(フック)5dが設けられている。阻止部5dは、貫通部5aが樹脂ケース20の外側に露出されたとき、樹脂ケース20の段差21bに露出される。そして、阻止部5dは、貫通孔21aの側部に設けられた段差21bの底面に接触して、制御端子5の移動を阻止する。具体的には、制御端子5の上方側から制御端子5にかかる圧縮荷重は阻止部5dが受けるため、配線基板2の回路パターン2bに制御端子5が押し付けられることが阻止される。
【0058】
阻止部5dは、例えばコの字状あるいはU字状の穴を貫通部5aから切り抜いて形成される短冊形状の部分を、貫通部5aにつながるその端部(以下、基点端とする)5d−1を基点に折り曲げ、飛び出し加工することにより成形されている。短冊形状の部分の外形は阻止部5dの輪郭と一致する。具体的には、阻止部5dは、貫通部5aにつながっている基点端5d−1を基点にして、基点端5d−1に対して反対側の貫通部5aから離れている端部(以下、自由端)5d−2側が阻止部5dの平坦面内から離れた位置となるように折り曲げられている。
【0059】
より具体的には、阻止部5dの輪郭は例えば略矩形状であり、矩形状の一辺である基点端5d−1が貫通部5aにつながっている。阻止部5dの基点端5d−1以外の一辺にあたる端部は、貫通部5aから離れている。阻止部5dの基点端5d−1に対向する一辺である自由端5d−2は、貫通部5aに連結された連結部5bとは反対の方向に張り出している。このように阻止部5dおよび連結部5bが貫通部5aに対し相互に反対の方向へ張り出しているので、制御端子5の先端側から圧縮荷重がかかった場合でも、制御端子5がその厚み方向に傾くことを防止することができる。樹脂ケース20に制御端子5を貫通させたとき、樹脂ケース20の段差21bの底面には、阻止部5dの自由端5d−2が接触する。
【0060】
貫通部5aの阻止部5dの周囲には、阻止部5dの輪郭を囲むように、貫通部5aの樹脂ケース20の外側に露出された部分の一部が切り抜かれてなる切り抜き部5eが設けられている。切り抜き部5eは、貫通部5aに阻止部5dとなる部分を形成する際に切り抜いた阻止部5dの輪郭を囲むコの字状(またはU字状)の穴と、飛び出し加工により阻止部5dを形成する際に形成された阻止部5dと同形状の穴とがつながってなる。すなわち、切り抜き部5eは、阻止部5dが切り抜き部5eに収納されたときに、阻止部5dの、貫通部5aにつながっている部分を除く側面が切り抜き部5eの側部に接触しない大きさで貫通部5aに設けられた穴である。
【0061】
阻止部5dおよび切り抜き部5eは、例えば、次のように形成される。まず、貫通部5aの樹脂ケース20の外側に露出された部分に、阻止部5dとなる部分を残して、阻止部5dとなる部分の輪郭を囲むコの字状あるいはU字状の穴を形成する。これにより、貫通部5aに切り抜き部5eが形成されたとき、阻止部5dとなる部分は基点端5d−1が貫通部5aにつながった状態で残る。阻止部5dとなる部分は、例えば基点端5d−1が貫通部5aにつながった状態の略矩形状に形成される。貫通部5aを切り抜いて形成したコの字状(またはU字状)の穴は、阻止部5dが完成した後に切り抜き部5eとなる。
【0062】
つぎに、阻止部5dとなる部分を貫通部5aにつながった端部(基点端5d−1)を基点として折り曲げ、貫通部5aにつながった端部に対向する端部(自由端5d−2)を貫通部5aの平坦面内から張り出させる(飛び出し加工)。これにより、貫通部5aの側面に対して斜度を有する阻止部5dが形成される。また、阻止部5dが形成されたことにより、阻止部5dの外形よりも大きな例えば略矩形状を有する切り抜き部5eが形成される。阻止部5dおよび切り抜き部5eの形状は、矩形状に限らず種々変更可能である。
【0063】
貫通部5aの厚さt1を例えば0.5mmとしたときに、阻止部5dの貫通部5aにつながった一辺に向かい合う一辺から貫通部5aの側面までの、配線基板2に平行な方向の距離(以下、阻止部5dの張り出し距離とする)t2は、例えば0.2mm以上1.5mm以下であってもよい。阻止部5dの張り出し距離t2は、貫通部5aを構成する材料、すなわち制御端子5を構成する材料の弾力性で決まる。
【0064】
阻止部5dを構成する材料は、制御端子5にかかる圧縮荷重によって阻止部5dが破壊されない強度を有するのが望ましい。制御端子5を構成する材料は、例えば、銅系材料、鉄系材料であってもよい。阻止部5dの、貫通部5aにつながっている一辺の長さ(以下、阻止部5dの幅とする)w12は、例えば、0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。阻止部5dの、貫通部5aにつながっていない一辺の長さ(以下、阻止部5dの高さとする)hは、例えば、2.0mm以上8.0mm以下であってもよい。また、コの字状あるいはU字状の穴の幅は、例えば、0.1mm以上1.5mm以下であってもよい。
【0065】
このように貫通部5aを切り抜いてコの字状またはU字状の穴を形成することで、阻止部5dの形状よりも大きい寸法を有する略矩形状の切り抜き部5eが形成される。このため、阻止部5dが切り抜き部5eに収納されたときに、阻止部5dの基点端5d−1以外の端部(自由端5d−2や自由端5d−2に直交する端部)にバリが生じていたとしても、阻止部5dの基点端5d−1以外の端部と切り抜き部5eの側部とが接触しない。これにより、樹脂ケース20の蓋21に設けられた貫通孔21aに制御端子5が差し込まれたときに、貫通孔21aの側部から受ける圧力31によって阻止部5dは切り抜き部5e内に収納され、阻止部5dの張り出し距離t2=0とすることができる。
【0066】
また、連結部5bの蓋21側の面は、蓋21の裏面に設けられた凸部21cに接触する。連結部5bは、制御端子5が配線基板2から離れる方向にかかる引張荷重を受け、制御端子5が配線基板2から離れる方向に移動することを阻止する。このため、阻止部5dの自由端5d−2を支点とする回転方向の力が制御端子5に作用しない。このように、阻止部5dおよび連結部5bが、蓋21のおもて面および裏面にそれぞれ設けられた段差21bおよび凸部21cにそれぞれ接触し、制御端子5が樹脂ケース20の蓋21に係止される。
【0067】
図5は、実施の形態にかかる半導体装置について示す平面図である。
図5には、配線基板2の回路パターン2aに接合材を介して接合された半導体チップ1、および配線基板2の回路パターン2bに接合材を介して接合された制御端子5の一例を示す。
図5に示すように、配線基板2の回路パターン2a上に複数の半導体チップ1が集積される。半導体チップ1は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)チップ、FWD(Free Wheeling Diode:還流ダイオード)チップなどであってもよい。また、配線基板2の各回路パターン2b上には、上述した構成を有する制御端子5がそれぞれ接合される。
【0068】
つぎに、蓋21に制御端子5を係止する方法について説明する。
図6は、実施の形態にかかる組み立て途中の半導体装置の要部を示す説明図である。
図6(a)〜6(c)には、
図2に示す半導体装置10の制御端子近傍30を示す。
図6(a)には、貫通孔21aに差し込まれる前の制御端子5を示す。
図6(b)には、貫通孔21aに差し込まれたときの制御端子5を示す。
図6(c)には、蓋21に係止された制御端子5を示す。
【0069】
図6(a)〜6(c)に示す製造途中の半導体装置10は、樹脂ケース20を金属ベース(不図示)に接着する処理である。
図6(a)〜6(c)では図示を省略するが、制御端子5の接続部5cは配線基板2の回路パターン2bと接合している。まず、
図6(a)に示すように、蓋21の裏面側から貫通孔21aに制御端子5の貫通部5aを差し込む。
【0070】
そして、
図6(b)に示すように、さらに、貫通孔21aに貫通部5aを差し込む。貫通孔21aの短手方向の幅w2は、貫通部5aの厚さt1に対応した寸法となっている。このため、貫通部5aが貫通孔21aを通過するときに、貫通部5aに設けられた阻止部5dの自由端5d−2は、貫通孔21aの側部によって切り抜き部5e側に押され、貫通部5aおよび阻止部5dを構成する材料の弾力性によって切り抜き部5e内に収納される(スプリングバック)。
【0071】
したがって、貫通孔21aの短手方向の幅w2が貫通部5aの厚さt1に対応した寸法であっても、貫通部5aの阻止部5dが設けられた部分は貫通孔21aを通過することができる。つぎに、貫通部5aの下端部に連結された連結部5bの蓋21側の面が蓋21の裏面に設けられた凸部21cに接触するまで、貫通部5aを貫通孔21aに差し込む。
【0072】
連結部5bの蓋21側の面が凸部21cに接触したとき、阻止部5dの自由端5d−2は段差21b内に露出し、阻止部5dの自由端5d−2は圧力を受けなくなる。阻止部5dの自由端5d−2にかかっていた圧力がなくなるため、阻止部5dは、阻止部5dを構成する材料の弾力性により(スプリングバック)、再度、貫通部5aの平坦面内から張り出した状態に戻る。これにより、
図6(c)に示すように、阻止部5dの下端部が段差21bの底部21b−1に接触し、制御端子5が蓋21に係止される。
【0073】
つぎに、半導体装置10の製造方法について説明する。
図7〜9は、実施の形態にかかる組み立て途中の半導体装置を示す説明図である。半導体装置10は、制御端子5と樹脂ケース20とが分離されたアウトサート構造のモジュール型半導体装置であり、制御端子5と樹脂ケース20とは互いに独立した個別の部品である。まず、
図7に示すように、金属ベース6のおもて面に配線基板2の金属膜2cを、配線基板2の回路パターン2aに半導体チップ1の裏面を、それぞれ例えばはんだ41、42を介して接合し、半導体チップ1と配線基板2の回路パターン(不図示)とをワイヤ配線3によって電気的に接続する。
【0074】
図7では図示省略するが金属ベース6上には、
図5に示すように複数の配線基板2が接合される。そして、各配線基板2上には回路パターン2a,2bが設けられており、各回路パターン2aにそれぞれ半導体チップ1が接合される。また、
図8に示すように、配線基板2の回路パターン(不図示)に、例えばはんだなどの接合材を介して主端子4および制御端子5を接合する。つぎに、
図9に示すように、主端子4側から樹脂ケース20を被せ、樹脂ケース20の蓋21に形成された貫通孔の側部に沿って、蓋21の裏面側から貫通孔21aに制御端子5の貫通部5aを挿入し、樹脂ケース20を金属ベース6に接着する。
【0075】
このとき、制御端子5の連結部(不図示)が、蓋21の裏面に形成された凸部(不図示)に支持されるとともに、制御端子5の阻止部の下端部が蓋21の段差に係合し、制御端子5が樹脂ケース20に係止される。その後、図示省略する付随樹脂ケースを樹脂ケース20に取り付けて主端子4の上端部を固定することで、半導体装置10が完成する。
【0076】
図10は、実施の形態にかかる半導体装置の耐荷重試験の一例について示す断面図である。実施の形態に従い半導体装置10を作製した。そして、
図10に示すように、制御端子5の、樹脂ケース20の外側に露出する端部に荷重治具50を取り付けて、制御端子5の貫通部5aに平行な方向に圧縮荷重がかかるように制御端子5を固定した。そして、荷重治具50によって半導体装置10が破壊されるまで制御端子5に圧縮荷重をかけつづけ、制御端子5の最大圧縮荷重を測定した。
【0077】
比較として、従来の半導体装置100を作製し、半導体装置10と同様の方法で半導体装置100の最大圧縮荷重を測定した。圧縮荷重とは、制御端子5を配線基板2側に押し付ける方向にかかる荷重である。半導体装置10が破壊されるとは、製品として使用できない状態である。具体的には、半導体装置10が破壊されるとは、制御端子5が変形や破断等したり、制御端子5に設けられた阻止部5dが段差に引っかからない状態になったり、樹脂ケース20が壊れることをいう。
【0078】
その結果、実施の形態にかかる半導体装置10の最大圧縮荷重は従来の半導体装置100の2倍以上の強度であることが確認された。このように、実施の形態にかかる半導体装置10は、従来の半導体装置100に比べて機械的強度が向上していることが確認された。
【0079】
以上、説明したように、実施の形態にかかる半導体装置10および半導体装置10の製造方法によれば、樹脂ケース20の蓋21に設けられた貫通孔21aに制御端子5が差し込まれたとき、制御端子5の貫通部5aに設けられた阻止部5dは、阻止部5dを構成する材料の弾力性により切り抜き部5e内に完全に収納される。このため、貫通孔21aを通過するときの貫通部5aの厚さt1を、阻止部5dを設けてない場合の厚さと等しくすることができる。これにより、貫通孔21aの開口幅を貫通部5aの幅w11および厚さt1に対応した寸法とすることができる。したがって、阻止部5dの自由端5d−2が段差21bの底部21b−1に接触し制御端子5が樹脂ケース20に係止されたときに、制御端子5と貫通孔21aの側部との間に生じる隙間を従来よりも少なくすることができる。このため、制御端子5が樹脂ケース20に係止された後、阻止部5dの自由端5d−2が段差21bの底部21b−1から外れることはない。
【0080】
また、実施の形態にかかる半導体装置10および半導体装置10の製造方法によれば、貫通部5aが貫通孔21aを通過し終えた後、阻止部5dは、阻止部5dを構成する材料の弾力性により貫通部5aの平坦面から張り出した状態に戻る(スプリングバック)。これにより、阻止部5dの自由端5d−2が段差21bの底部21b−1に接触し、制御端子5が樹脂ケース20に係止される。したがって、阻止部5dによって樹脂ケース20に係止された制御端子5に圧縮荷重がかかったとしても、阻止部5dの自由端5d−2が段差21bの底部21b−1から外れることはない。
【0081】
このように、制御端子5が樹脂ケース20に係止された後、阻止部5dの自由端5d−2が段差21bの底部21b−1から外れないため、制御端子5が樹脂ケース20内に埋没することを防止することができる。したがって、制御端子5を介して配線基板2や回路パターン2bに圧縮荷重がかかることで配線基板2が割れたり、配線基板2の回路パターン2bが破損することを防止することができる。したがって、機械的強度を向上した半導体装置10を提供することができる。
【0082】
また、実施の形態にかかる半導体装置10および半導体装置10の製造方法によれば、阻止部の自由端5d−2が段差21bの底部21b−1から外れることはないので、制御端子5を介して阻止部5dと樹脂ケース20とに圧縮荷重がかかり、制御端子5にかかる圧縮荷重が軽減される。このため、制御端子5が変形することを軽減することができる。これにより、機械的強度を向上した半導体装置10を提供することができる。また、実施の形態にかかる半導体装置10および半導体装置10の製造方法によれば、貫通孔21aの開口幅を貫通部5aの幅w11および厚さt1に対応した寸法とすることができるので、組み立て後の半導体装置10において、例えば制御端子5に斜め上方から圧力がかかったときの制御端子5の移動可能範囲を狭くすることができる。このため、寸法精度の高い半導体装置10を提供することができる。
【0083】
以上において本発明では、IGBTチップおよびFWDチップなどの複数の半導体チップが絶縁基板の回路パターンにはんだを介して接合されたパワーモジュールを例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、さまざまな構成のモジュールのパッケージに適用することが可能である。また、上述した実施の形態では、貫通部と連結部とがL字形状をなす制御端子を例に説明しているが、これに限らず、制御端子は、ケースの蓋の裏面側に設けられた凸部に接触し、制御端子を係止することができる構成であればよい。具体的には、例えば、制御端子は、貫通部と連結部とがT字形状であってもよいし、貫通部と連結部とのなす角度が鋭角となるように連結された構成であってもよい。
【0084】
また上述した実施の形態では、制御端子の阻止部がケースの蓋に設けられた段差の底面に接触する構成としているが、これに限らず、制御端子の阻止部がケースに接触するにより制御端子が係止されればよい。具体的には、例えば、制御端子の阻止部がケースの蓋のおもて面の平坦な部分に接触する構成であってもよい。