特許第5994788号(P5994788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5994788パターン形成用自己組織化組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994788
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】パターン形成用自己組織化組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20160908BHJP
   C08F 297/02 20060101ALI20160908BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160908BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   C08L53/00
   C08F297/02
   H01L21/30 502D
   G03F7/40 511
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-542944(P2013-542944)
(86)(22)【出願日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2012078394
(87)【国際公開番号】WO2013069544
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年7月16日
(31)【優先権主張番号】特願2011-245991(P2011-245991)
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-180689(P2012-180689)
(32)【優先日】2012年8月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】浪江 祐司
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 信也
(72)【発明者】
【氏名】永井 智樹
(72)【発明者】
【氏名】曽根 卓男
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/132901(WO,A1)
【文献】 特開2005−008701(JP,A)
【文献】 特開2005−007244(JP,A)
【文献】 特開2009−175746(JP,A)
【文献】 特開2007−246600(JP,A)
【文献】 特開平06−202329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00−53/02
C08F 297/00−297/08
G03F 7/00−7/42
H01L 21/00−21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]スチレン単位を有するポリスチレンブロック、及び炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル単位を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックを含むブロック共重合体
を含有するパターン形成用自己組織化組成物であって、
[A]ブロック共重合体が、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、かつ酸素原子を含む基(α)を有し、
[A]ブロック共重合体における(メタ)アクリル酸アルキル単位に対するスチレン単位のモル比が、30/70以上70/30以下であり、かつ
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が1000以上150,000以下であることを特徴とするパターン形成用自己組織化組成物。
【請求項2】
上記基(α)が下記式(1)で表される請求項1に記載のパターン形成用自己組織化組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは、単結合又は炭素数1〜30の2価の有機基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。)
【請求項3】
上記(メタ)アクリル酸アルキル単位が、メタクリル酸メチル単位である請求項1に記載のパターン形成用自己組織化組成物。
【請求項4】
[A]ブロック共重合体が、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックからなるジブロック共重合体又はトリブロック共重合体である請求項1に記載のパターン形成用自己組織化組成物。
【請求項5】
上記基(α)が、エポキシ化合物に由来する請求項1に記載のパターン形成用自己組織化組成物。
【請求項6】
(1)請求項1に記載のパターン形成用自己組織化組成物を用い、基板上に相分離構
造を有する自己組織化膜を形成する工程、及び
(2)上記自己組織化膜の一部の相を除去する工程
を含むパターン形成方法。
【請求項7】
上記(1)工程前に、
(0−1)基板上に下層膜を形成する工程、及び
(0−2)上記下層膜上にプレパターンを形成する工程
をさらに有し、
上記(1)工程において、自己組織化膜を上記プレパターンによって区切られた上記下層膜上の領域に形成し、
上記(1)工程後に、
(2’)プレパターンを除去する工程
をさらに有する請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
得られるパターンがラインアンドスペースパターン又はホールパターンである請求項6に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成用自己組織化組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるパターンの微細化が要求されている。現在、例えばArFエキシマレーザー光を用いて線幅90nm程度の微細なパターンを形成することができるが、さらに微細なパターン形成が要求されるようになってきている。
【0003】
上記要求に対し、秩序パターンを自発的に形成するいわゆる自己組織化による相分離構造を利用したパターン形成方法がいくつか提案されている。例えば、一の性質を有する単量体化合物と、それと性質の異なる単量体化合物とが共重合してなるブロック共重合体を用いた自己組織化による超微細パターンの形成方法が知られている(特開2008−149447号公報、特表2002−519728号公報、特開2003−218383号公報参照)。この方法によると、上記ブロック共重合体を含む組成物をアニーリングすることにより、同じ性質を持つポリマー構造同士が集まろうとするために、自己整合的にパターンを形成することができる。また、互いに性質の異なる複数のポリマーを含む組成物を自己組織化させることにより微細パターンを形成する方法も知られている(米国特許出願公開2009/0214823号明細書、特開2010−58403号公報参照)。
【0004】
しかし、上記従来の自己組織化によるパターン形成方法によって得られるパターンは、未だ十分に微細であるとは言えず、またパターン形状においてもパターンサイズのバラつきが大きく、デバイスとして利用する際に十分な性能を見出しているとは言えないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−149447号公報
【特許文献2】特表2002−519728号公報
【特許文献3】特開2003−218383号公報
【特許文献4】米国特許出願公開2009/0214823号明細書
【特許文献5】特開2010−58403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、十分に微細かつ良好なパターンを形成することが可能なパターン形成用自己組織化組成物、及びこのパターン形成用自己組織化組成物を用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]スチレン単位を有するポリスチレンブロック、及び(メタ)アクリル酸アルキル単位を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックを含むブロック共重合体(以下、「[A]ブロック共重合体」ともいう)
を含有するパターン形成用自己組織化組成物であって、
[A]ブロック共重合体が、主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、かつヘテロ原子を含む基(α)を有することを特徴とするパターン形成用自己組織化組成物である。
【0008】
当該パターン形成用自己組織化組成物は、[A]ブロック共重合体が、主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、かつヘテロ原子を含む基(α)を有することで、相分離し易くなるため、十分に微細なパターンを形成することができる。また、ヘテロ原子を含む基(α)を有することで、パターン形状が安定し、パターンサイズのバラつきを低減させることが可能となる。なお、ここで「主鎖の少なくとも一方の末端」における「末端」とは、単量体を重合させて重合体を合成した際にできる重合体主鎖部分の最末端の炭素原子のことをいう。
【0009】
上記ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、スズ原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。[A]ブロック共重合体が、主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、これらのうちのいずれかのヘテロ原子を含む基(α)を有することで、相分離がより起こり易くなる。
【0010】
上記基(α)は下記式(1)で表されることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、Rは、単結合又は炭素数1〜30の2価の有機基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。)
【0011】
当該パターン形成用自己組織化組成物は、[A]ブロック共重合体が、主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、上記式で表される基(α)を有することで、さらに相分離し易くなるため、十分に微細かつ良好なパターンを形成することができる。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸アルキル単位は、メタクリル酸メチル単位であることが好ましい。当該パターン形成用自己組織化組成物は、上記(メタ)アクリル酸アルキル単位がメタクリル酸メチル単位であることで、より相分離し易くなるため、十分に微細かつ良好なパターンを形成することができる。
【0013】
[A]ブロック共重合体は、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックからなるジブロック共重合体又はトリブロック共重合体であることが好ましい。[A]ブロック共重合体を上記ジブロック共重合体又はトリブロック共重合体とすることで、当該パターン形成用自己組織化組成物は、さらに相分離し易くなるため、微細かつ良好なパターンを形成することができる。
【0014】
[A]ブロック共重合体における(メタ)アクリル酸アルキル単位に対するスチレン単位のモル比は、10/90以上90/10以下であることが好ましい。パターン形成用自己組織化組成物は、[A]ブロック共重合体における上記各単位の含有率(モル%)の比を上記特定範囲の中で適宜選択することにより、微細かつ複雑な所望のパターンを良好に形成することができる。
【0015】
上記基(α)は、エポキシ化合物に由来することが好ましい。例えば、エポキシ化合物を用いることにより、上記ブロック共重合体の重合末端に、エポキシ化合物に由来する基である上記基(α)を容易に導入することができる。また、上記基(α)がエポキシ化合物に由来する基であると、当該パターン形成用自己組織化組成物は、より相分離し易くなり、微細かつ良好なパターンを形成することができる。
【0016】
本発明のパターン形成方法は、
(1)本発明のパターン形成用自己組織化組成物を用い、基板上に相分離構造を有する自己組織化膜を形成する工程、及び
(2)上記自己組織化膜の一部の相を除去する工程
を含む。
【0017】
本発明のパターン形成方法においては、当該パターン形成用自己組織化組成物を用いて自己組織化膜を形成するため、十分に微細なパターンを形成することができる。
【0018】
本発明のパターン形成方法は、
上記(1)工程前に、
(0−1)基板上に下層膜を形成する工程、及び
(0−2)上記下層膜上にプレパターンを形成する工程
をさらに有し、
上記(1)工程において、自己組織化膜を上記プレパターンによって区切られた上記下層膜上の領域に形成し、
上記(1)工程後に、
(2’)プレパターンを除去する工程
をさらに有する方法であることが好ましい。
【0019】
本発明のパターン形成方法が下層膜及びプレパターンを形成する工程をさらに有することで、当該パターン形成用自己組織化組成物の相分離がより精密に制御され、得られるパターンをより微細なものとすることができる。なお、ここでプレパターンとは、所謂ガイドパターンのことであり、ブロック共重合体の相分離の位置制御及び配向制御をするためのパターンである。
【0020】
本発明のパターン形成方法により得られるパターンは、ラインアンドスペースパターン又はホールパターンであることが好ましい。当該パターン形成方法によると、さらに微細な所望のラインアンドスペースパターン又はホールパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、十分に微細なパターンを形成することができるパターン形成用自己組織化組成物及びこれを用いたパターン形成方法を提供することができる。本発明のパターン形成用自己組織化組成物及びパターン形成方法は、さらなる微細化が要求されている半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス製造におけるリソグラフィー工程に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のパターン形成方法において、基板上に下層膜を形成した後の状態の一例を示す模式図である。
図2】本発明のパターン形成方法において、下層膜上にプレパターンを形成した後の状態の一例を示す模式図である。
図3】本発明のパターン形成方法において、プレパターンによって挟まれた下層膜上の領域にパターン形成用自己組織化組成物を塗布した後の状態の一例を示す模式図である。
図4】本発明のパターン形成方法において、プレパターンによって挟まれた下層膜上の領域に自己組織化膜を形成した後の状態の一例を示す模式図である。
図5】本発明のパターン形成方法において、自己組織化膜の一部の相及びプレパターンを除去した後の状態の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のパターン形成用自己組織化組成物、パターン形成方法の実施の形態について詳説する。
【0024】
<パターン形成用自己組織化組成物>
自己組織化(Directed Self Assembly)とは、外的要因からの制御のみに起因せず、自発的に組織や構造を構築する現象を指す。本発明においては、パターン形成用自己組織化組成物を基板上に塗布することにより、自己組織化による相分離構造を有する膜(自己組織化膜)を形成し、この自己組織化膜における一部の相を除去することにより、パターンを形成することができる。
【0025】
本発明のパターン形成用自己組織化組成物は、[A]スチレン単位を有するポリスチレンブロック、及び(メタ)アクリル酸アルキル単位を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックを含むブロック共重合体を含有するパターン形成用自己組織化組成物であって、[A]ブロック共重合体が、主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、かつヘテロ原子を含む基(α)を有することを特徴とする。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」の表記は、メタクリル酸とアクリル酸の両方を示すものである。当該パターン形成用自己組織化組成物は、重合体の主鎖の少なくとも一方の末端が上記ヘテロ原子を含む基(α)である[A]ブロック共重合体を含有するため相分離し易く、十分に微細なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができる。当該パターン形成用自己組織化組成物は、[A]ブロック共重合体以外に、本発明の効果を損なわない限り、溶媒、界面活性剤等の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について詳述する。
【0026】
[[A]ブロック共重合体]
[A]ブロック共重合体は、スチレン単位を有するポリスチレンブロック、及び(メタ)アクリル酸アルキル単位を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックを含むブロック共重合体であり、その主鎖の少なくとも一方の末端に結合し、かつヘテロ原子を含む基(α)を有する。
【0027】
[A]ブロック共重合体は、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックを少なくとも含む複数のブロックが結合した構造を有する。上記ブロックのそれぞれは、1種類の単量体由来の単位の連鎖構造を有する。即ち、上記ポリスチレンブロックはスチレン単位の連鎖構造を有し、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックは(メタ)アクリル酸アルキル単位の連鎖構造を有する。このような複数のブロックを有する[A]ブロック共重合体を適切な溶媒に溶解させると、同じ種類のブロック同士が凝集し、同種のブロックからなる相を形成する。このとき異なる種類のブロックから形成される相同士は互いに混ざり合うことがないため、異種の相が周期的に交互に繰り返される秩序パターンを有する相分離構造を形成することが出来ると推察される。
【0028】
[A]ブロック共重合体は、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックのみからなるブロック共重合体であってもよいし、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックに加えて、これら以外の他のブロックをさらに含んでいてもよいが、より微細なミクロドメイン構造を有するパターンを形成できるという観点から、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックのみからなるブロック共重合体であることが好ましい。
【0029】
ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックのみからなる[A]ブロック共重合体としては、例えばジブロック共重合体、トリブロック共重合体、テトラブロック共重合体等が挙げられる。これらのうち、所望の微細なミクロドメイン構造を有するパターンを容易に形成できるという観点から、ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体が好ましく、ジブロック共重合体がより好ましい。
【0030】
上記ジブロック共重合体としては、ポリスチレンブロック−ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの構造を有する共重合体が挙げられ、中でもポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの主鎖の末端に上記基(α)が結合している構造となっているジブロック共重合体が好ましい。
【0031】
上記トリブロック共重合体としては、ポリスチレンブロック−ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロック−ポリスチレンブロック、又は、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロック−ポリスチレンブロック−ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの構造を有する共重合体が挙げられる。
【0032】
上記テトラブロック共重合体としては、ポリスチレンブロック−ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロック−ポリスチレンブロック−ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの構造を有する共重合体が挙げられる。
【0033】
これらのうち、所望の微細なミクロドメイン構造を有するパターンを容易に形成できるという観点から、ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体が好ましく、ジブロック共重合体がより好ましく、ポリスチレンブロック−ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの構造を有し、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックの主鎖の末端に上記基(α)が結合している構造となっているジブロック共重合体がさらに好ましい。
【0034】
上記ポリスチレンブロックは、スチレン単位を有し、スチレンを重合することにより合成することができる。また、上記ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックは、(メタ)アクリル酸アルキル単位を有し、(メタ)アクリル酸アルキルを重合することにより合成することができる。
【0035】
上記スチレンとしては、スチレンが有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換されているスチレン化合物を用いることもできる。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸アルキルとしては、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルが有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。これらのうち、(メタ)アクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0037】
上記他のブロックとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロック以外の他の(メタ)アクリル系ブロック、ポリビニルアセタール系ブロック、ポリウレタン系ブロック、ポリウレア系ブロック、ポリイミド系ブロック、ポリアミド系ブロック、エポキシ系ブロック、ノボラック型フェノールブロック、ポリエステル系ブロック等が挙げられる。[A]ブロック共重合体における他のブロックの割合としては、共重合体中の全構造単位に対して10モル%以下であることが好ましい。
【0038】
[A]ブロック共重合体におけるポリ(メタ)アクリル酸アルキル単位に対するスチレン単位のモル比は、10/90以上90/10以下であることが好ましく、20/80以上80/20以下であることがより好ましく、30/70以上70/30以下であることがさらに好ましい。[A]ブロック共重合体におけるポリ(メタ)アクリル酸アルキル単位の含有率(モル%)に対するスチレン単位の含有率(モル%)の比を上記特定の範囲とすることで、当該パターン形成用自己組織化組成物は、より微細かつ良好なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができる。
【0039】
[A]ブロック共重合体は、ポリスチレンブロック及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロック、さらに必要に応じて他のブロックを所望の順で合成した後、その重合末端を適切な末端処理剤で処理して上記基(α)を導入することにより合成することができる。[A]ブロック共重合体は、その主鎖の少なくとも一方の末端に上記基(α)を有する構造であることにより、相分離がより起こり易くなるため、当該パターン形成用自己組織化組成物は、従来の組成物と比較して、さらに微細かつ良好なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができる。
【0040】
上記ヘテロ原子を含む基(α)におけるヘテロ原子としては、特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、スズ原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
【0041】
上記基(α)としては、上記式(1)で表される基が好ましい。
【0042】
上記式(1)中、Rは、単結合又は炭素数1〜30の2価の有機基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。
【0043】
上記Rで表される炭素数1〜30の2価の有機基としては、例えば炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、これらの炭化水素基の炭素−炭素間に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を有する基を含む基等が挙げられる。
【0044】
上記炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、n−プロパンジイル基、i−プロパンジイル基、n−ブタンジイル基、i−ブタンジイル基、n−ペンタンジイル基、i−ペンタンジイル基、n−ヘキサンジイル基、i−ヘキサンジイル基等が挙げられる。これらのうち、当該パターン形成用自己組織化組成物が相分離をより起こし易くなるという観点から、メチレン基、エタンジイル基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0045】
上記炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンダンジイル基等が挙げられる。
【0046】
上記炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0047】
また、これらの炭化水素基の炭素−炭素間に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を有する基を含む基としては、例えば上記炭化水素基の炭素−炭素間に、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NO−、−NH−等の少なくともひとつのヘテロ原子を有する結合基を含む基等が挙げられる。
【0048】
上記Rとしては、単結合又は炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基が好ましく、メチレン基、エタンジイル基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0049】
上記Rで表される炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、これらの炭化水素基の炭素−炭素間に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を有する基を含む基等が挙げられる。
【0050】
上記炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等が挙げられる。
【0051】
上記炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0052】
上記炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフタレニル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0053】
また、これらの炭化水素基の炭素−炭素間に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を有する基を含む基としては、上記炭化水素基の炭素−炭素間に、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NO−、−NH−等の少なくともひとつのヘテロ原子を有する結合基を含む基等が挙げられる。
【0054】
上記Rとしては、水素原子、炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基、及び炭素数1〜30の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素−炭素間に−O−を有する基が好ましく、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族鎖状炭化水素基、及び炭素数1〜10の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素−炭素間に−O−を有する基がより好ましい。
【0055】
上記基(α)としては、例えば下記式で表される構造等が挙げられる。
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
【化4】
【0059】
【化5】
【0060】
【化6】
【0061】
【化7】
【0062】
上記式中、Rは、水素原子又は1価の有機基である。*は、[A]ブロック共重合体において、重合体の主鎖末端の炭素原子に結合する部位を示す。
【0063】
これらのうち、上記式(1)で表される基である(1−1)〜(1−7)で表される基が好ましく、(1−2)、(1−3)及び(1−4)で表される基がより好ましい。
【0064】
[A]ブロック共重合体の上記基(α)が結合するブロックは、ポリスチレンブロックであっても、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックであっても、その他のブロックであってもよいが、ポリスチレンブロック又はポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックであることが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルブロックであることがより好ましい。これらのブロックの主鎖の末端に、上記基(α)が結合した構造となっていることで、当該パターン形成用自己組織化組成物は、より微細かつ良好なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができる。
【0065】
<[A]ブロック共重合体の合成方法>
[A]ブロック共重合体は、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合等によって合成することが出来るが、これらのうち、任意の末端構造を容易に導入することができるリビングアニオン重合がより好ましい。例えばポリスチレンブロック、ポリメタクリル酸メチルブロック及びこれら以外の他のブロックを所望の順で重合しながら連結し、その重合末端を、任意の末端処理剤で処理し、上記式(1)で表される基等の上記基(α)を導入することにより合成することができる。
【0066】
例えば、ポリスチレンブロック及びポリメタクリル酸メチルブロックからなるジブロック共重合体である[A]ブロック共重合体を合成する場合は、まずアニオン重合開始剤を使用して、適当な溶媒中でスチレンを重合することによりポリスチレンブロックを合成する。次にポリスチレンブロックに繋げて、メタクリル酸メチルを同様に重合してポリメタクリル酸メチルブロックを合成する。その後、1,2−ブチレンオキシド等の末端処理剤で処理することにより、ポリメタクリル酸メチルブロックの主鎖の末端に、上記基(α)を導入することができる。なお、それぞれのブロックの合成方法としては、例えば、開始剤を含有する反応溶媒中に、単量体を含有する溶液を滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することができる。
【0067】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記重合における反応温度は、開始剤の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常−150℃〜50℃であり、−80℃〜40℃が好ましい。反応時間としては、通常5分〜24時間であり、20分〜12時間が好ましい。
【0069】
上記重合に使用される開始剤としては、例えばアルキルリチウム、アルキルマグネシウムハライド、ナフタレンナトリウム、アルキル化ランタノイド系化合物等が挙げられる。これらのうち、モノマーとしてスチレン、メタクリル酸メチルを使用して重合する場合には、アルキルリチウム化合物を用いることが好ましい。
【0070】
上記末端処理の方法としては、例えば下記スキームに示すような方法等が挙げられる。即ち、得られたブロック共重合体に、1,2−ブチレンオキシド等の末端処理剤を添加して末端を変性し、酸による脱メタル処理等を行うことで、例えば上記式(1)で表される基(α)を末端に有するブロック共重合体が得られる。
【0071】
【化8】
【0072】
上記スキーム中、n及びmは、10〜5,000の整数である。
【0073】
上記末端処理剤としては、例えば1,2−ブチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、エポキシアミン等のエポキシ化合物;
イソシアネート化合物、チオイソシアネート化合物、イミダゾリジノン、イミダゾール、アミノケトン、ピロリドン、ジエチルアミノベンゾフェノン、ニトリル化合物、アジリジン、ホルムアミド、エポキシアミン、ベンジルアミン、オキシム化合物、アジン、ピドラゾン、イミン、アゾカルボン酸エステル、アミノスチレン、ビニルピリジン、アミノアクリレート、アミノジフェニルエチレン、イミド化合物等の含窒素化合物;
アルコキシシラン、アミノシラン、ケトイミノシラン、イソシアネートシラン、シロキサン、グリシジルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、ピリジルシラン、ピペラジルシラン、ピロリドンシラン、シアノシラン、イソシアン酸シラン等のシラン化合物;
ハロゲン化スズ、ハロゲン化ケイ素、二酸化炭素等が挙げられる。これらのうち、エポキシ化合物が好ましく、1,2−ブチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル及びプロピレンオキシドが好ましい。
【0074】
上記末端処理を施した[A]ブロック共重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、末端処理反応終了後、反応液を再沈溶媒に投入することにより、目的の共重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0075】
[A]ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜150,000が好ましく、1,500〜120,000がより好ましく、2,000〜100,000がさらに好ましい。[A]ブロック共重合体のMwを上記特定範囲とすることで、当該パターン形成用自己組織化組成物は、より微細かつ良好なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができる。
【0076】
[A]ブロック共重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1〜5であり、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1〜1.5がさらに好ましく、1〜1.2が特に好ましい。Mw/Mnをこのような特定範囲とすることで、当該パターン形成用自己組織化組成物は、より微細で良好なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができる。
【0077】
なお、Mw及びMnは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、以上東ソー社製)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、試料濃度1.0質量%、試料注入量100μL、カラム温度40℃の分析条件で、検出器として示差屈折計を使用し、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものである。
【0078】
[溶媒]
当該パターン形成用自己組織化組成物は、通常溶媒を含有する。上記溶媒としては、例えば[A]ブロック共重合体の合成方法において例示した溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。これらのうちプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。なお、これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0079】
[界面活性剤]
当該パターン形成用自己組織化組成物は、さらに界面活性剤を含有してもよい。当該パターン形成用自己組織化組成物が界面活性剤を含有することで、基板等への塗布性を向上させることができる。
【0080】
<当該パターン形成用自己組織化組成物の調製方法>
当該パターン形成用自己組織化組成物は、例えば上記溶媒中で、[A]ブロック共重合体、界面活性剤等を所定の割合で混合することにより調製できる。また、パターン形成用自己組織化組成物は、適当な溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0081】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
(1)本発明のパターン形成用自己組織化組成物を用い、基板上に相分離構造を有する自己組織化膜を形成する工程、及び
(2)上記自己組織化膜の一部の相を除去する工程
を含むパターン形成方法である。
【0082】
また、上記(1)工程前に、(0−1)基板上に下層膜を形成する工程、及び(0−2)上記下層膜上にプレパターンを形成する工程をさらに有し、上記(1)工程において、自己組織化膜を上記プレパターンによって区切られた上記下層膜上の領域に形成し、上記(1)工程後に、(2’)プレパターンを除去する工程を有することが好ましい。
さらに、上記(2)工程後に、(3)上記形成されたパターンをマスクとして、上記基板をエッチングする工程をさらに有することが好ましい。以下、各工程について詳述する。なお、各工程については、図1〜5を参照しながら説明する。
【0083】
[(0−1)工程]
本工程は、下層膜形成用組成物を用いて、基板上に下層膜を形成する工程である。これにより、図1に示すように、基板101上に下層膜102が形成された下層膜付き基板を得ることができ、自己組織化膜はこの下層膜102上に形成される。上記自己組織化膜が有する相分離構造(ミクロドメイン構造)は、パターン形成用自己組織化組成物が含有する[A]ブロック共重合体の各ブロック間の相互作用に加えて、下層膜102との相互作用によっても変化するため、下層膜102を有することで構造制御が容易となり、所望のパターンを得ることができる。さらに、自己組織化膜が薄膜である場合には、下層膜102を有することでその転写プロセスを改善することができる。
【0084】
上記基板101としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。
【0085】
また、上記下層膜形成用組成物としては、従来公知の有機下層膜形成材料を用いることができる。
【0086】
上記下層膜102の形成方法は特に限定されないが、例えば、基板101上にスピンコート法等の公知の方法により塗布して形成された塗膜を、露光及び/又は加熱することにより硬化して形成することができる。この露光に用いられる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等が挙げられる。また、塗膜を加熱する際の温度は、特に限定されないが、90〜550℃であることが好ましく、90〜450℃がより好ましく、90〜300℃がさらに好ましい。なお、上記下層膜102の膜厚は特に限定されないが、50〜20,000nmが好ましく、70〜1,000nmがより好ましい。また、上記下層膜102は、SOC(Spin on carbon)膜を含むことが好ましい。
【0087】
[(0−2)工程]
本工程は、図2に示すように、上記下層膜102上に、プレパターン形成用の組成物を用いてプレパターン103を形成する工程である。上記プレパターン103によってパターン形成用自己組織化組成物の相分離によって得られるパターン形状が制御され、所望の微細パターンを形成することができる。即ち、パターン形成用自己組織化組成物が含有する[A]ブロック共重合体が有するブロックのうち、プレパターンの側面と親和性が高いブロックはプレパターンに沿って相を形成し、親和性の低いブロックはプレパターンから離れた位置に相を形成する。これにより所望のパターンを形成することができる。また、プレパターンの材質、サイズ、形状等により、パターン形成用自己組織化組成物の相分離によって得られるパターンの構造を細かく制御することができる。なお、プレパターンとしては、最終的に形成したいパターンに合わせて適宜選択することができ、例えばラインアンドスペースパターン、ホールパターン等を用いることができる。
【0088】
上記プレパターン103の形成方法としては、公知のレジストパターン形成方法と同様の方法を用いることができる。また、上記プレパターン形成用の組成物としては、従来のレジスト膜形成用組成物を用いることができる。具体的なプレパターン103の形成方法としては、例えば、市販の化学増幅型レジスト組成物を用い、上記下層膜102上に塗布してレジスト膜を形成する。次に、上記レジスト膜の所望の領域に特定パターンのマスクを介して放射線を照射し、露光を行う。上記放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、ArFエキシマレーザー光やKrFエキシマレーザー光に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザー光がより好ましい。また、露光方法としては液浸露光を行うこともできる。次いでポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液、有機溶剤等の現像液を用いて現像を行い、所望のプレパターン103を形成することができる。
【0089】
なお、上記プレパターン103の表面を疎水化処理又は親水化処理してもよい。具体的な処理方法としては、水素プラズマに一定時間さらす水素化処理等が挙げられる。上記プレパターン103の表面の疎水性又は親水性を増長させることにより、パターン形成用自己組織化組成物の自己組織化を促進することができる。
【0090】
[(1)工程]
本工程は、パターン形成用自己組織化組成物を用い、基板上に相分離構造を有する自己組織化膜を形成する工程である。上記下層膜及びプレパターンを用いない場合には、基板上に直接当該パターン形成用自己組織化組成物を塗布して塗膜を形成し、相分離構造を備える自己組織化膜を形成する。また、上記下層膜及びプレパターンを用いる場合には、図3及び図4に示すように、パターン形成用自己組織化組成物をプレパターン103によって挟まれた下層膜102上の領域に塗布して塗膜104を形成し、基板101上に形成された下層膜102上に、基板101に対して略垂直な界面を有する相分離構造を備える自己組織化膜105を形成する工程である。即ち、互いに不相溶な2種以上のブロックを有する[A]ブロック共重合体を含有するパターン形成用自己組織化組成物を基板上に塗布し、アニーリング等を行うことで、同じ性質を有するブロック同士が集積して秩序パターンを自発的に形成する、いわゆる自己組織化を促進させることができる。これにより、海島構造、シリンダ構造、共連続構造、ラメラ構造等の相分離構造を有する自己組織化膜を形成することができるが、これらの相分離構造としては、基板101に対して略垂直な界面を有する相分離構造であることが好ましい。本工程において、当該パターン形成用自己組織化組成物を用いることで、相分離が起こり易くなるため、より微細な相分離構造(ミクロドメイン構造)を形成することができる。
【0091】
プレパターンを有する場合、この相分離構造はプレパターンに沿って形成されることが好ましく、相分離により形成される界面は、プレパターンの側面と略平行であることがより好ましい。例えば、プレパターン103と[A]ブロック共重合体のスチレンブロックとの親和性が高い場合には、スチレンブロックの相がプレパターン103に沿って直線状に形成され(105b)、その隣にポリメタクリル酸メチルブロックの相(105a)及びスチレンブロックの相(105b)がこの順で交互に配列するラメラ状相分離構造等を形成する。なお、本工程において形成される相分離構造は、複数の相からなるものであり、これらの相から形成される界面は通常略垂直であるが、界面自体は必ずしも明確でなくてよい。また、[A]ブロック共重合体分子における各ブロック鎖(スチレンブロック鎖、ポリメタクリル酸メチルブロック鎖等)の長さの比、[A]ブロック共重合体分子の長さ、プレパターン、下層膜等により、得られる相分離構造を精密に制御し、所望の微細パターンを得ることができる。
【0092】
当該パターン形成用自己組織化組成物を基板上に塗布して塗膜104を形成する方法は特に制限されないが、例えば使用される当該パターン形成用自己組織化組成物をスピンコート法等によって塗布する方法等が挙げられる。これにより、当該パターン形成用自己組織化組成物は、上記下層膜102上の上記プレパターン103間に充填される。
【0093】
アニーリングの方法としては、例えばオーブン、ホットプレート等により80℃〜400℃の温度で加熱する方法等が挙げられる。アニーリングの時間としては、通常1分〜120分であり、5分〜90分が好ましい。これにより得られる自己組織化膜105の膜厚としては、0.1nm〜500nmが好ましく、0.5nm〜100nmがより好ましい。
【0094】
[(2)工程]
本工程は、図4及び図5に示すように、上記自己組織化膜105が有する相分離構造のうちの一部のブロック相105aを除去する工程である。自己組織化により相分離した各相のエッチングレートの差を用いて、ポリメタクリル酸メチルブロック相105aをエッチング処理により除去することができる。相分離構造のうちのポリメタクリル酸メチルブロック相105a及び後述するようにプレパターン103を除去した後の状態を図5に示す。なお、上記エッチング処理の前に、必要に応じて放射線を照射してもよい。上記放射線としては、エッチングにより除去する相がポリメタクリル酸メチルブロック相である場合には、254nmの放射線を用いることができる。上記放射線照射により、ポリメタクリル酸メチルブロック相が分解されるため、よりエッチングされ易くなる。
【0095】
上記自己組織化膜105が有する相分離構造のうちのポリメタクリル酸メチルブロック相105aの除去の方法としては、例えばケミカルドライエッチング、ケミカルウェットエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE);スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等の公知の方法が挙げられる。これらのうち反応性イオンエッチング(RIE)が好ましく、中でもCF、Oガス等を用いたケミカルドライエッチング、有機溶媒、フッ酸等の液体のエッチング溶液を用いたケミカルウェットエッチング(湿式現像)がより好ましい。上記有機溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0096】
[(2’)工程]
本工程は、図4及び図5に示すように、プレパターン103を除去する工程である。プレパターン103を除去することにより、より微細かつ複雑なパターンを形成することが可能となる。なお、プレパターン103の除去の方法については、相分離構造のうちの一部のブロック相105aの除去の方法の上記説明を適用できる。また、本工程は、上記(2)工程と同時に行ってもよいし、(2)工程の前又は後に行ってもよい。
【0097】
[(3)工程]
本工程は、(2)工程後、残存した相分離膜の一部のブロック相であるポリスチレンブロック相105bからなるパターンをマスクとして、下層膜及び基板をエッチングすることによりパターニングする工程である。基板へのパターニングが完了した後、マスクとして使用された相は溶解処理等により基板上から除去され、最終的にパターニングされた基板(パターン)を得ることができる。上記エッチングの方法としては、(2)工程と同様の方法を用いることができ、エッチングガス及びエッチング溶液は、下層膜及び基板の材質により適宜選択することができる。例えば、基板がシリコン素材である場合には、フロン系ガスとSFの混合ガス等を用いることができる。また、基板が金属膜である場合には、BClとClの混合ガス等を用いることができる。なお、当該パターン形成方法により得られるパターンは半導体素子等に好適に用いられ、さらに上記半導体素子はLED、太陽電池等に広く用いられる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0099】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0100】
13C−NMR分析]:
13C−NMR分析は、日本電子社製JNM−EX400を使用し、測定溶媒としてDMSO−dを使用して行った。ポリマーにおける各構造単位の含有率は、13C−NMRで得られたスペクトルにおける各構造単位に対応するピークの面積比から算出した。
【0101】
<[A]ブロック共重合体の合成>
[合成例1]
500mLのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン200gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、s−ブチルリチウム(s−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を0.27g注入し、蒸留脱水処理を行ったスチレン10.7g(0.103モル)を30分かけて滴下注入した。このとき反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後30分間熟成した後、さらに蒸留脱水処理を行ったメタクリル酸メチル10.3g(0.103モル)を30分かけて滴下注入し、30分間反応させた。この後、末端処理剤として1,2−ブチレンオキシド1gを注入し反応させた。反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮してプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)で置換した後、シュウ酸2%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、リチウム塩を除去した後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸除去した後、溶液を濃縮してn−ヘキサン500g中に滴下して、重合体を析出させた。減圧濾過した樹脂をn−ヘキサンで2回洗浄した後、60℃で減圧乾燥させることで、白色のブロック共重合体(A−1)20.5gを得た。
ブロック共重合体(A−1)のMwは41,200であり、Mw/Mnは1.13であった。また、13C−NMR分析の結果、ブロック共重合体(A−1)におけるスチレン単位の含有率とメタクリル酸メチル単位の含有率の比は50.1(モル%):49.9(モル%)であった。なお、ブロック共重合体(A−1)はポリスチレンブロックとポリメタクリル酸メチルブロックとのジブロック共重合体であり、上記ポリメタクリル酸メチルブロックの末端が末端処理剤により修飾されていた。
【0102】
[合成例2〜8]
s−BuLiの1Nシクロヘキサン溶液の使用量、及び末端処理剤の種類を表1に記載の通りとした以外は合成例1と同様の方法によりジブロック共重合体(A−2)〜(A−6)及び(a−1)〜(a−2)を合成した。各ブロック共重合体におけるスチレン単位の含有率とメタクリル酸メチル単位の含有率、Mw及びMw/Mnは、表1に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
<パターン形成用自己組織化組成物の調製>
[実施例1〜5及び比較例1〜2]
上記ジブロック共重合体を、それぞれプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、1質量%溶液とした。これらの溶液を孔径200nmのメンブレンフィルターで濾過してパターン形成用自己組織化組成物を調製し、下記の方法によりパターンを形成した。
【0105】
<パターン形成方法1>
12インチシリコンウエハ上に、架橋剤を含む下層膜形成用組成物を、CLEAN TRACK ACT12(東京エレクトロン製)を使用してスピンコートした後、205℃で60秒間ベークして膜厚77nmの下層膜を形成した。次に、この下層膜上に、酸解離性樹脂、光酸発生剤及び有機溶媒を含有するArFレジスト組成物をスピンコートした後、120℃で60秒間プレベーク(PB)して膜厚60nmのレジスト膜を形成した。次いで、ArF液浸露光装置(NSR S610C、ニコン製)を使用し、NA;1.30、CrossPole、σ=0.977/0.78の光学条件にて、マスクパターンを介して露光した。その後、115℃で60秒間PEBを行った後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により23℃で30秒間現像し、水洗し、乾燥し、プレパターン(1)(直径75nmホール/150nmピッチ)を得た。次いで、このプレパターンに254nmの紫外線を150mJ/cmの条件で照射後、170℃で5分間ベークすることで評価用基板を得た。
次に、各パターン形成用自己組織化組成物を上記評価用基板上に厚さ30nmになるように塗布し、250℃で5分間加熱して相分離させ、ミクロドメイン構造を形成した。さらに、254nmの放射線を3,000mJ/cmで照射し、メチルイソブチルケトン(MIBK)/2−プロパノール(IPA)=2/8(質量比)の溶液中に5分間浸漬させてメタクリル酸メチル相を除去し、パターン(1)を形成した。
【0106】
<パターン形成方法2>
マスクパターンの形状を変えてプレパターン(2)(75nmライン/150nmピッチ)を得た以外は上記パターン形成方法1と同様に操作して、パターン(2)を形成した。
【0107】
<評価>
上記のように形成したパターン(1)について、測長SEM(S−4800、日立社製)を用いて観察し、その白く見える溝部分の幅を測定し、ミクロドメイン構造幅(nm)とした。
また、上記のように形成したパターン(2)について、走査型電子顕微鏡(CG4000、日立ハイテクノロジーズ製)を用い、パターン上部から観察し、任意の10点においてパターンの線幅を測定した。線幅の測定値から分布度合いとしての3シグマ値を求め、この値をLWR(nm)とした。LWR(nm)が5nm以下である場合を良好と、5nmを超える場合及びミクロドメイン構造を形成しない場合を不良と判断した。
上記ミクロドメイン構造幅及びLWRの評価結果を表2に示す。なお、表2中の「−」は、ミクロドメイン構造を形成しなかったために、ミクロドメイン構造幅及びLWRを測定できなかったことを示す。
【0108】
【表2】
【0109】
表2に示されるように、実施例のパターン形成用自己組織化組成物を用いた場合においては、十分微細かつ良好なミクロドメイン構造が得られることがわかった。比較例のパターン形成用自己組織化組成物では、パターン形成の際の相分離が起こり難く、ミクロドメイン構造が形成されないものもあった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によると、十分に微細かつ良好なミクロドメイン構造を有するパターンを形成することができるパターン形成用自己組織化組成物及びこれを用いたパターン形成方法を提供することができる。従って、本発明のパターン形成用自己組織化組成物及びパターン形成方法は、さらなる微細化が要求されている半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス製造におけるリソグラフィー工程に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0111】
101 基板
102 下層膜
103 プレパターン
104 塗膜
105 自己組織化膜
105a ポリメタクリル酸メチルブロック相
105b ポリスチレンブロック相
図1
図2
図3
図4
図5