(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁開閉時期制御機構が、前記カムシャフトとして吸気カムシャフトに備えられ、前記第1ロック位相が吸気弁の開閉時期を最も遅らせる最遅角位相に設定され、前記第2ロック位相が前記最遅角位相より吸気弁の開閉時期を早める中間ロック位相に設定されている請求項1記載の車両の制御装置。
前記位相変換制御に基づき、前記第1ロック位相から前記第2ロック位相に移行する過程で前記内燃機関が停止操作された場合、前記制御ユニットが前記第2ロック位相への移行の完了を確認した後に前記内燃機関が停止される請求項1又は2記載の車両の制御装置。
前記位相変換制御に基づき、前記第1ロック位相から前記第2ロック位相に移行する過程で前記内燃機関が停止するように前記変速機構が操作された場合には、この操作が行われた時点から設定時間が経過した後に前記内燃機関が停止する請求項1又は2記載の車両の制御装置。
前記位相変換制御に基づき前記内燃機関が始動される制御が、前記内燃機関へ供給される燃料の燃焼により前記クランクシャフトが回転を開始する状態に移行するまで継続する請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるアイドルストップ制御では、弁開閉時期制御機構の相対回転位相を最遅角位相でロックし、内燃機関を停止している。この状態で内燃機関を再始動する場合には、内燃機関の圧縮比が低く、クランキングを軽負荷で行い円滑な始動を実現する。アイドルストップ制御は、燃料を無駄に消費しないためハイブリッド型の車両でも行われる技術である。
【0006】
また、通常ストップ制御では、弁開閉時期制御機構の相対回転位相を中間ロック位相でロックした後、内燃機関を停止する。中間ロック位相での再始動の際には、内燃機関の圧縮比が適度に高く設定されるため、内燃機関を、低温状態でも良好に始動させることができる。
【0007】
特許文献1に示される制御形態では、イグニッションスイッチをOFF操作した場合には、この操作の後に、弁開閉時期制御機構の相対回転位相が中間位相に移行し、ロック状態に達した後に内燃機関が停止する。
【0008】
しかしながら、内燃機関の駆動力で駆動されるポンプを備え、このポンプから供給される流体により弁開閉時期制御機構の相対回転位相を制御する構成では、以下のような不都合を招くことが考えられた。つまり、イグニッションスイッチで内燃機関を停止させる操作を行うタイミングで、既にアイドルストップ制御等により内燃機関が停止している場合には、流体圧を得るために内燃機関を始動する制御を必要とする。更に、相対回転位相を中間ロック位相に向けて変位させた後、ロック状態に移行し、内燃機関を停止させる制御を必要とする。このため、制御を完了するまでに時間を要することになり改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、停止制御により内燃機関が停止する状況において、イグニッションスイッチがOFF操作された場合に、システムを停止するまでの時間の短縮が可能な車両の制御装置を構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、車両に備えられた内燃機関と、前記内燃機関の駆動力を変速して走行駆動系に伝える変速機構と、前記内燃機関を始動する電動型のモータと、前記内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体、及び、前記駆動側回転体と同軸芯に配置され前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体を有し、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を第1ロック位相と前記第1ロック位相とは異なる第2ロック位相との少なくとも何れか一方に保持するロック機構を有する弁開閉時期制御機構と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に形成される進角室と遅角室とに対する流体の給排に応じて相対回転位相を制御し、前記ロック機構に対する流体の給排に応じてロック状態の保持及び解除を選択的に行う制御弁機構と、
前記車両が走行可能な第1変速位置に前記変速機構が設定された状態で前記車両が停車する場合、前記ロック機構を前記第1ロック位相に保持して前記内燃機関を停止する停止制御を行い、前記停止制御に基づき前記内燃機関が停止する状況で前記変速機構が前記第1変速位置と異なる第2変速位置へ切替られた場合に前記モータを制御して前記内燃機関を始動し、前記ロック機構が前記第1ロック位相から前記第2ロック位相に移行する位相変換制御を実行する制御ユニットと、を備えている点にある。
【0011】
第1ロック位相を、例えば、低温状態の内燃機関の始動を良好に行う位相に設定し、第2ロック位相をクランキング時における負荷を軽減する位相に設定することが考えられる。このように設定した場合には、停止制御において、相対回転位相をロック機構により第2ロック位相に保持することにより、内燃機関の始動を円滑に行うことが可能となる。また、この停止制御により内燃機関が停止する状況において運転者が駐車を行う場合には、変速機構をパーキング位置やニュートラル位置に操作した後に、イグニッションスイッチをOFF操作する順序となる。このような理由から、停止制御により内燃機関が停止する状況において、変速機構の変速位置が第1変速位置から第2変速位置に変更された場合に相対回転位相を第1ロック位相から第2ロック位相に変更することにより、この後に、イグニッションスイッチがOFF操作された場合に、迅速にシステムを停止できる。
従って、停止制御により内燃機関が停止する状況において、イグニッションスイッチがOFF操作された場合に、システムを停止するまでの時間の短縮が可能な車両の制御装置が構成された。
【0012】
本発明は、前記弁開閉時期制御機構が、前記カムシャフトとして吸気カムシャフトに備えられ、前記第1ロック位相が吸気弁の開閉時期を最も遅らせる最遅角位相に設定され、前記第2ロック位相が前記最遅角位相より吸気弁の開閉時期を早める中間ロック位相に設定されても良い。
【0013】
これによると、弁開閉時期制御機構の相対回転位相が、第1ロック位相としての最遅角位相に設定されることにより、内燃機関の始動時の負荷を低下させてクランキング時に短時間のうちにクランクシャフトの回転速度を上昇させ、内燃機関の始動までの時間を短縮できる。また、相対回転位相が、第2ロック位相として中間ロック位相に設定された場合には、低温状態の内燃機関であっても適正に始動できる。
【0014】
本発明は、前記位相変換制御に基づき、前記第1ロック位相から前記第2ロック位相に移行する過程で前記内燃機関が停止操作された場合、前記制御ユニットが前記第2ロック位相への移行の完了を確認した後に前記内燃機関が停止されても良い。
【0015】
これによると、停止制御で内燃機関が停止する状況において、例えば、運転者がシフトレバーをドライブ位置からパーキング位置に操作し、次に、イグニッションスイッチをOFF操作する操作を短時間のうちに行った状況を想定する。この想定の操作が行われても、ロック機構が第2ロック位相に移行したことが確認された後に内燃機関を停止させることが可能となる。その結果、この後に、内燃機関を始動する場合には、ロック機構が第2ロック位相でロックされた状態で内燃機関の始動が可能となる。
【0016】
本発明は、前記位相変換制御に基づき、前記第1ロック位相から前記第2ロック位相に移行する過程で前記内燃機関が停止するように前記変速機構が操作された場合には、この操作が行われた時点から設定時間が経過した後に前記内燃機関が停止しても良い。
【0017】
これによると、停止制御の実行時において、例えば、運転者がシフトレバーをドライブ位置からパーキング位置に操作し、次に、イグニッションスイッチをOFF操作する操作を短時間のうちに行った状況を想定する。この想定の操作が行われても、OFF操作が行われた時点から設定時間が経過した後に内燃機関を停止するため、この設定時間を第2ロック位相に移行するに充分な時間に設定することにより、ロック機構を第2ロック位相に移行した後に内燃機関を停止させることが可能となる。その結果、この後に、内燃機関を始動する場合には、ロック機構が第2ロック位相でロックされた状態で内燃機関の始動が可能となる。
【0018】
本発明は、前記位相変換制御に基づき前記内燃機関が始動される制御が、前記内燃機関へ供給される燃料の燃焼により前記クランクシャフトが回転を開始する状態に移行するまで継続しても良い。
【0019】
これによると、内燃機関の始動時には、内燃機関が燃料の燃焼により回転を開始する状態に移行させる。これにより、内燃機関の駆動力で駆動されるポンプからの高い圧力の流体を得て、第2ロック位相への移行を確実に行わせることが可能となる。
【0020】
本発明は、前記モータが、走行用のものであっても良い。
【0021】
これによると、ハイブリッド型車両のように走行駆動系に駆動力を伝える走行用のモータで内燃機関の始動も可能となる。これにより、内燃機関を始動するための専用のモータを必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、内燃機関としてのエンジンEの駆動力を変速機構Tから走行駆動系に伝える車両が構成されている。この車両において電動型のモータとしてのスタータモータMと、吸気カムシャフト3に備えられる弁開閉時期制御機構10と、この弁開閉時期制御機構10を制御する制御弁機構Vとを備え、これらを制御する制御ユニット40(ECU)を備えて車両の制御装置が構成されている。
【0024】
吸気カムシャフト3は、燃焼室の吸気バルブ1Vを開閉作動させる機能を有し、弁開閉時期制御機構10は、相対回転位相の設定によりエンジンEの吸気タイミングを設定するように機能する。
【0025】
この車両の制御装置は、車両が信号待ち等で停車した場合にエンジンEを停止するアイドルストップ制御(停止制御の一例)を実現すると共に、エンジンEの回転速度や、エンジンEに作用する負荷等に基づいて弁開閉時期制御機構10の相対回転位相を設定する制御を行う。
【0026】
〔エンジン・変速装置・スタータモータ〕
エンジンEは、乗用車等の車両に備えられる4サイクル型のものである。このエンジンEには、インテークポートあるいは燃焼室には燃料を供給するインジェクタを備え、燃焼室の混合気の点火を行う点火プラグを備えている。インジェクタは燃料制御装置5によって制御され、点火プラグは点火制御装置6によって制御される。また、エンジンEには、クランクシャフト1の回転角と回転速度とを検出するシャフトセンサ1Sを備えている。
【0027】
変速機構Tは、エンジンEのクランクシャフト1からの駆動力を変速して走行駆動系に伝える。具体的な構成として、油圧制御により複数の変速段を作り出すオートマチック変速機構とトルクコンバータとで構成されるものや、ベルトCVTにより無段階に変速を行うベルト無段変速機構と電磁クラッチとで構成されるもの等が用いられる。また、この変速機構Tはシフトレバー9を備え、このシフトレバー9はドライブ位置やリバース位置等の走行位置と、ニュートラル位置と、パーキング位置との少なくとも3種のシフト位置に設定自在に構成されている。スタータモータMは、駆動回転時に、その駆動力をクランクシャフト1に伝えるように構成されている。
【0028】
〔弁開閉時期制御機構〕
図1〜
図3に示すように、弁開閉時期制御機構10は、エンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転体としての外部ロータ11と、エンジンEの燃焼室の吸気バルブ1Vを開閉する吸気カムシャフト3に連結ボルト13により連結する従動側回転体としての内部ロータ12とを備えている。内部ロータ12は吸気カムシャフト3の回転軸芯Xと同軸芯に配置され、外部ロータ11の内部に内部ロータ12を嵌め込むことにより、各々が回転軸芯Xを中心にして相対回転自在となるように構成されている。
【0029】
弁開閉時期制御機構10の外部には、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相を検出する位相検出センサ46が備えられている。
【0030】
外部ロータ11はフロントプレート14とリヤプレート15とに挟み込まれる状態で複数の締結ボルト16により締結され、このフロントプレート14とリヤプレート15との間に内部ロータ12が配置される。リヤプレート15の外周にはタイミングスプロケット15Sが形成されている。
【0031】
外部ロータ11には、半径方向の内側に向けて突出する複数の突出部11Tが一体的に形成されている。内部ロータ12は複数の突出部11Tの突出端に密接する外周を有する円柱状に形成されている。これにより、回転方向で隣接する突出部11Tの中間位置で、内部ロータ12の外周側に複数の流体圧室Cが形成される。内部ロータ12の外周には、流体圧室Cに向けて突出するように嵌め込まれた仕切部としての複数のベーン17を備えている。流体圧室Cがベーン17で仕切られることにより進角室Caと遅角室Cbとが形成される。このベーン17は回転軸芯Xから離間する方向にバネ等で付勢されることにより、突出端が流体圧室Cの内周面に接触する。
【0032】
内部ロータ12とフロントプレート14とに亘って、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相(以下、相対回転位相と称する)が最遅角位相から中間ロック位相P2に達するまで付勢力を作用させるトーションスプリング18が備えられている。
【0033】
この弁開閉時期制御機構10では、エンジンEのクランクシャフト1に設けた出力スプロケット7と、タイミングスプロケット15Sとに亘ってタイミングチェーン8が巻回され、これにより外部ロータ11はクランクシャフト1と同期回転する。図面には示していないが、排気側のカムシャフトの前端にも弁開閉時期制御機構10と同様の構成の装置が備えられており、この装置に対してもタイミングチェーン8から回転力が伝達される。
【0034】
図2、
図3に示すように、弁開閉時期制御機構10は、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ11が駆動回転方向Sに向けて回転する。内部ロータ12が外部ロータ11に対して駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。
【0035】
ベーン17で仕切られた流体圧室Cのうち、作動油が供給されることで相対回転位相を進角方向Saに変位させる空間が進角室Caであり、これとは逆に、作動油が供給されることで相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる空間が遅角室Cbである。ベーン17が進角方向Saの作動端(ベーン17の進角方向Saの作動端の近傍の位相を含む)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン17が遅角方向Sbの作動端(ベーン17の遅角方向Sbの作動端の近傍の位相を含む)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。
【0036】
〔弁開閉時期制御機構:ロック機構〕
弁開閉時期制御機構10は、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相が、最進角位相となる最遅角ロック位相P1(第1ロック位相の一例)と、最進角位相及び最遅角位相の中間となる中間ロック位相P2(第2ロック位相の一例)との何れか一方の位相に保持する一対のロック機構Lを備えている。
【0037】
各々のロック機構Lは、外部ロータ11に対し、その突出端が回転軸芯Xに近接・離間可能に支持された一対のロック部材31と、各々のロック部材31を突出方向に付勢するロックスプリング32とを備えている。また、内部ロータ12には、最遅角ロック位相P1において、一方のロック部材31が係合する最遅角ロック凹部34と、中間ロック位相P2において一対のロック部材31が独立して係合する一対の中間ロック凹部33とが形成されている。
【0038】
これにより、相対回転位相が中間ロック位相P2に達することにより
図2に示すように、一対のロック部材31が同時に対応する中間ロック凹部33に係合し、相対回転位相が中間ロック位相P2に保持される。また、相対回転位相が最遅角位相に達することにより
図3に示すように、一方のロック部材31が最遅角ロック凹部34に係合し、相対回転位相が最遅角ロック位相P1に保持される。
【0039】
尚、中間ロック位相P2は、前述したようにエンジンEの燃焼室の温度が外気温まで低下した状況でもエンジンEの始動を良好に行わせる位相である。また、最遅角ロック位相P1は、吸気圧縮比を大きく低減させるため、軽負荷でクランキングを行わせることが可能な位相である。また、ロック部材31は板状に構成されるものであるが、ロッド状に構成されるものでも良く、単一のロック部材31で中間ロック位相P2に保持するように構成されるものでも良い。
【0040】
〔油圧制御系〕
エンジンEには、クランクシャフト1の駆動力でオイルパンのオイルを吸引して作動油(流体の一例)として送り出す油圧ポンプPを備えている。この油圧ポンプPは、電磁操作型の位相制御弁21と電磁操作型のロック制御弁22とに作動油を供給する。この実施形態では制御弁機構Vとして位相制御弁21とロック制御弁22を備えているが、例えば、単一のスプールを備えた制御弁で制御弁機構Vを構成しても良い。
【0041】
また、この車両の制御装置では、位相制御弁21から内部ロータ12の進角室Caに連通する進角流路24と、位相制御弁21から遅角室Cbに連通する遅角流路25とが形成されている。この進角流路24は、最遅角ロック凹部34に連通している。更に、ロック制御弁22から内部ロータ12の中間ロック凹部33に連通するロック解除流路26が形成されている。
【0042】
位相制御弁21は、その電磁ソレノイドに供給する電力の調整により進角ポジションと中立ポジションと遅角ポジションとに操作自在に構成されている。進角ポジションでは、油圧ポンプPの作動油を進角流路24から進角室Caに供給し、遅角室Cbから作動油を排出して相対回転位相を進角方向Saに変位させる。
【0043】
また、位相制御弁21を、中立ポジションでは、進角流路24と遅角流路25との何れに対する流体の給排を行わず相対回転位相を維持する。遅角ポジションでは、油圧ポンプPの作動油を遅角流路25から遅角室Cbに供給し、進角室Caから作動油を排出して相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる。
【0044】
ロック制御弁22は、その電磁ソレノイドに供給する電力の調整によりロックポジションとロック解除ポジションとに操作自在に構成されている。ロックポジションでは、ロック解除流路26から作動油を排出し、非ロック位置にあるロック部材31のロック状態への移行を可能にし、既にロック位置にあるロック部材31のロック状態を維持する。
【0045】
これに対して、ロック解除ポジションでは、ロック解除流路26に作動油を供給して中間ロック凹部33に嵌合状態にあるロック部材31を、ロックスプリング32の付勢力に抗して中間ロック凹部33から離脱させ、ロック状態の解除を実現する。
【0046】
〔制御ユニット〕
制御ユニット40は、ECUとして構成されるものであり、ソフトウエアで構成される機関制御部41と位相制御部42とを備えている。この制御ユニット40は、シャフトセンサ1Sと、イグニッションスイッチ43と、ブレーキペダルセンサ45と、位相検出センサ46と、シフト位置センサ47と、走行速度センサ48とからの信号が入力する。
【0047】
また制御ユニット40は、スタータモータMと、燃料制御装置5と、点火制御装置6の夫々に対して制御信号を出力すると共に、位相制御弁21とロック制御弁22とに制御信号を出力する。
【0048】
イグニッションスイッチ43は、エンジンEを稼働させるシステムを起動させるスイッチとして構成され、ON操作によりシステムを起動すると共に、機関制御部41がエンジンEを始動し、OFF操作により機関制御部41がエンジンEを停止させ、システムを停止する。また、イグニッションスイッチ43のON操作の後には、アイドルストップ制御(停止制御の一例)によるエンジンEの自動停止と自動始動とが可能となる。
【0049】
ブレーキペダルセンサ45は、ブレーキペダル(不図示)の踏み込みを検出する。位相検出センサ46は、弁開閉時期制御機構10の相対回転位相を検出する。シフト位置センサ47はシフトレバー9のシフト位置を検出し、走行速度センサ48は車両の走行速度を検出する。
【0050】
機関制御部41は、エンジンEの始動制御と、走行を停止した場合にエンジンEを一時的に停止するアイドルストップ制御とを実現する。
【0051】
アイドルストップ制御は、運転中にブレーキペダルを踏み込んで走行を停止した場合のように、変速機構Tのシフトレバー9が、走行可能な第1変速位置としてのドライブ位置にある状態で、走行を停止する際に実行される。このアイドルストップ制御により、エンジンEが停止されて燃料消費が抑制され燃費が向上する。また、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止された状態から、ブレーキペダルの踏みが解除されたときエンジンEの始動制御が実行される。
【0052】
位相制御部42は、エンジンEの稼動時にエンジンEの回転速度等の情報に基づいて弁開閉時期制御機構10による吸気バルブ1Vの開閉時期の制御を行う。また、この位相制御部42は、アイドルストップ制御に基づきエンジンEが停止された場合、ロック機構Lを最遅角ロック位相P1においてロック状態に移行する。更に、位相制御部42はイグニッションスイッチ43がOFF操作された場合、ロック機構Lが中間ロック位相P2においてロック状態に保持されるように指令する。これらの制御形態を以下に説明する。
【0053】
〔制御形態〕
制御ユニット40によるエンジン制御を
図4のフローチャートに示しており、このエンジン制御における弁開閉時期制御機構10の回転位相やエンジンEの状態を
図7のタイミングチャートに示している。
【0054】
エンジン制御では、イグニッションスイッチ43(
図4ではIG・SW)のON操作によりエンジンEの制御システムを起動し、エンジンEを始動する(#01〜#03ステップ)。このエンジンEの始動の後には、エンジンEの回転速度、エンジンEに作用する負荷等の情報に基づいて相対回転位相を適切に設定制御が行われる。
【0055】
このステップでは、イグニッションスイッチ43がON操作されることにより、エンジンEの制御システムを起動すると共に、機関制御部41が、スタータモータMを駆動してクランキングを行う。このクランキングによりクランクシャフト1の回転速度が所定値まで上昇した後に、燃料制御装置5により燃焼室の混合気を供給し、点火制御装置6で点火を行うことによりエンジンEを始動する。これがエンジンEの始動制御である。
【0056】
尚、エンジンEの始動とは、クランキングの後に燃料の燃焼によりクランクシャフト1から回転力が出力される状態に移行することである。
【0057】
次に、エンジンEが稼働する状況において信号待ち等で運転者がブレーキペダルを踏み込み、走行が停止する直前でアイドルストップ制御に移行する(#04、#100ステップ)。
【0058】
〔制御形態:アイドルストップ制御〕
アイドルストップ制御(#100ステップ)は、ブレーキペダルセンサ45でブレーキペダルの踏み込みを検出し、走行速度センサ48で走行速度が設定値未満まで低下した場合に実行される。このアイドルストップ制御では、
図5のフローチャート及び
図7に示すように、ロック制御弁22をロックポジションに操作し、位相制御弁21の操作により作動油を制御して相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる。
【0059】
この相対回転位相の変位時には、位相検出センサ46で検出される相対回転位相がフィードバックされ、相対回転位相が最遅角ロック位相P1に達し、この最遅角ロック位相P1に維持されていると判定した場合には、ロック機構Lがロック状態にあると判断し、エンジンEを停止する(#101〜#103ステップ)。尚、エンジンEを停止する場合には燃料制御装置5での燃料供給を停止し、点火制御装置6による点火を停止する。
【0060】
尚、このアイドルストップ制御は、走行が完全に停止した後に実行するように制御開始のタイミングが設定されても良い。
【0061】
次に、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止する状況で、駐車予備操作があった場合には、ロック位相変換制御(位相変換制御の具体例)を行う(#05、#200ステップ)。
【0062】
駐車予備操作として、本実施形態ではシフトレバー9が、第1変速位置としてのドライブ位置から、第2変速位置としてのパーキング位置や、ニュートラル位置にシフトされたことを想定している。この実施形態では、シフト位置センサ47の検出信号から、シフトレバー9がドライブ位置からドライブ位置以外の位置に設定されたことに基づいてロック位相変換制御(#200ステップ)が実行される。
【0063】
この駐車予備操作はエンジンEを停止させるために操作(イグニッションスイッチ43のOFF操作)に先行して行われる操作である。従って、パーキング状態を作り出すパーキングボタンの操作を駐車予備操作としても良い。
【0064】
〔制御形態:ロック位相変換制御〕
ロック位相変換制御(#200ステップ)は、
図6のフローチャート及び
図7に示すように、スタータモータMを駆動し、クランクシャフト1の回転速度が所定値に達した後に燃料制御装置5と点火制御装置6とを制御してエンジンEを始動する(#201ステップ)。この始動の後に、位相制御弁21を進角ポジションに操作することより相対回転位相を進角方向Saに変位させる。尚、エンジンEの始動とは、前述したようにクランキングの後に燃料の燃焼によりクランクシャフト1から回転力が出力される状態に移行することである。
【0065】
これにより、油圧ポンプPからの作動油が進角流路24から最遅角ロック凹部34に供給され、嵌合状態にあるロック部材31を作動油の油圧により最遅角ロック凹部34から離脱させる(ロック状態を解除する)。これと同時に、進角室Caに作動油が供給されることにより相対回転位相が進角方向Saに変位する。
【0066】
相対回転位相が進角方向Saへ変位する際には位相検出センサ46によって検出される相対回転位相がフィードバックされる。そして、相対回転位相が中間ロック位相P2に達し、この中間ロック位相P2に維持されている場合には、位相検出センサ46の検知結果に基づいてロック機構Lがロック状態にあると判断し、エンジンEを停止する制御が行われる(#202〜#204ステップ)。
【0067】
〔制御形態:エンジンの始動〕
また、ロック位相変換制御(#200ステップ)の制御の実行、非実行に拘わらずイグニッションスイッチ43がON状態で、ブレーキペダルの踏み込み操作が解除された場合には、エンジンEを始動する(#06、#07、#03ステップ)。
【0068】
更に、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止する状況においてイグニッションスイッチ43がOFF操作された場合には、相対回転位相が中間ロック位相P2にない場合にのみ、ロック位相変換制御を実行し(#06、#08、#200ステップ)、この後に制御システムを停止する(#09ステップ)。
【0069】
つまり、アイドルストップ制御が行われる車両では、イグニッションスイッチ43をOFF操作する時点で、エンジンEは既に停止している。従って、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止する状況でシフトレバー9をパーキング位置にシフトした場合には、前述したロック位相変換制御(#201〜#206ステップ)により弁開閉時期制御機構10は中間ロック位相P2でロック状態に保持される。
【0070】
これに対して、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止する状況でシフトレバー9を操作せずにイグニッションスイッチ43をOFF操作した場合には、弁開閉時期制御機構10の相対回転位相は最遅角ロック位相P1にあるためロック位相変換制御(#200ステップ)が実行される。この制御が行われた後に、制御システムへの電力供給が停止される。
【0071】
〔実施形態の効果〕
アイドルストップ制御では、ロック機構Lが最遅角ロック位相P1においてロック状態に保持された状態でエンジンEが停止される。この最遅角ロック位相P1は、軽負荷でのクランキングを可能にする位相であり、温熱状態にあるエンジンEの再始動に最適の位相となる。
【0072】
このように、アイドルストップ制御に基づきエンジンEが停止されるとき、運転者が駐車のために、先ずシフトレバー9をパーキング位置等に操作した場合には、エンジンEが始動された後、弁開閉時期制御機構10の相対回転位相が中間ロック位相P2に変位され、ロック機構Lがロック状態に保持される。これにより、イグニッションスイッチ43のOFF操作からシステムを停止するまでの時間の短縮が可能となる、
【0073】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように実施しても良い。
【0074】
(a)電動型のモータとして、車両を走行させる走行モータを備え、この走行モータに電力を供給するバッテリーを備えたハイブリッド型の車両に本発明を適用する。このハイブリッド型の車両では走行モータの駆動力でエンジンEを始動する構成のものを想定しており、構成は
図1に示すものと基本的に同じであり、走行モータがエンジンEを始動するモータとして利用しても良く、また、本発明の車両の制御装置の適用も可能である。
【0075】
(b)前述した別実施形態(a)の構成のハイブリッド型の車両においてエンジンEを停止させる条件が成立した場合にアイドルストップ制御(停止制御の一例)を行うものに適用する。このアイドルストップ制御はブレーキペダルの踏み込みに連係するものではなく、所定の条件に基づいてエンジンEの停止と始動とが行われるものであり、その制御形態を
図8のフローチャートに示している。尚、エンジンEを停止する条件として、充電により、バッテリーの電圧が所定値まで上昇した場合が想定され、エンジンEを始動する条件として、バッテリーの電圧が所定値を下回る値まで低下した場合が考えられる。
【0076】
このエンジン制御では、イグニッションスイッチ43をON操作することでシステムが起動し、エンジン始動条件が成立した場合にエンジンEを始動し、エンジン停止条件が成立した場合には、アイドルストップ制御によりエンジンEを停止する(#301〜#305ステップ、#100ステップ)。
【0077】
また、この制御においても、駐車予備操作があった場合には、ロック位相変換制御を行う(#306、#200ステップ)。また、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止する状況においてイグニッションスイッチ43がOFF操作された場合には、ロック位相変換制御を実行した後に制御システムを停止する(#307、#308、#200、#309ステップ)、又は、直接的に制御システムを停止する(#309ステップ)制御が行われる。
【0078】
この別実施形態(b)のエンジン制御はハイブリッド型の車両を対象としたものであるが、アイドルストップ制御(#100ステップ)において中間ロック位相P2に設定する点は、前述した実施形態のアイドルストップ制御と共通している。また、アイドルストップ制御によりエンジンEが停止する状況において駐車予備操作があった場合には、実施形態と同様にロック位相変換制御(#200ステップ)が実行される。これにより、先に説明した実施形態の作用・効果と同様の作用・効果を奏する。
【0079】
(c)ロック位相変換制御(#200ステップ)の制御として、
図9のフローチャートに示す制御を行う。この制御は、実施形態の構成と、ハイブリッド型の車両構成との何れの構成も対象とするものであり、スタータモータMの駆動によりエンジンEを始動し、位相制御弁21を進角ポジションに操作することより相対回転位相を進角方向Saに変位させる(#201、#202ステップ)。
【0080】
また、相対回転位相の変位時にイグニッションスイッチ43がOFF操作されず、相対回転位相が中間ロック位相P2に達したことを位相検出センサ46の検知信号により確認した場合(ロック機構Lがロック状態に達したことを確認した場合)に、エンジンEを停止してリターンする(#210、#203、#204ステップ)。これに対して、相対回転位相の変位時に(中間ロック位相P2に達する以前に)イグニッションスイッチ43がOFF操作された場合(エンジンEが停止操作された場合)には、中間ロック位相P2に達したことを位相検出センサ46の検知信号により確認した後にエンジンEを停止し、更に、制御システムを停止する(#210〜#213ステップ)。
【0081】
この別実施形態(c)では、相対回転位相が中間ロック位相P2に達する以前に、イグニッションスイッチ43がOFF操作された場合には、エンジンEの停止後に、制御システムの停止を実現する。このように制御システムを停止することにより電力の無駄を低減する。特に、ロック機構Lがロック状態に達したことを位相検出センサ46の検知信号により確認するため、ロック状態への移行も確実に行われる。
【0082】
(d)ロック位相変換制御(#200ステップ)の制御として、
図10のフローチャートに示す制御を行う。この別実施形態(d)の制御は基本的に別実施形態(c)の制御を行うが、#211ステップの制御として、相対回転位相を中間ロック位相P2の方向に向けて変位させた場合に、この変位を設定時間が経過するまで行う点で異なる。
【0083】
この別実施形態(d)では、別実施形態(c)と同様の作用・効果を奏すると共に、#211ステップで設定時間が経過するまで中間ロック位相P2への変位を継続するため、位相検出センサ46の検出信号をフィードバックする制御を行うことなく中間ロック位相P2に移行を確実に行わせることが可能となる。