(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、目標座標としての各格子点の間隔が短いほど、一層正確にガイド光の位置ずれを補正することができるが、データテーブルのデータ量が大きくなってしまう。また、ガイド光の照射位置がデータテーブルに記憶された目標座標と同じ場合は、位置ずれ量を加算するだけで、ガイド光の照射位置を特定することができるが、ガイド光の照射位置がデータテーブルに記憶された目標座標と異なる場合は、ガイド光の照射位置の周囲の目標座標から補間して、ガイド光の照射位置を算出するという複雑な処理が必要であった。
【0008】
具体的には、レンズによって歪んだ格子内で、その内部のガイド光の照射位置を補間しようとすると、複雑な処理が必要であり、精度よく算出することは難しかった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光との間の位置ずれを精度良く補正することができるレーザ加工装置、制御方法、及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、レーザ加工装置であって、レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ光とは異なる波長を有する可視レーザ光を出射する可視レーザ光源と、同軸上に出射された前記レーザ光、又は前記可視レーザ光を走査する走査部と、前記走査部によって走査された前記レーザ光、又は前記可視レーザ光とを集光しながら加工対象物に向けて出射する集光部と、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置と前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置との間の位置ずれを補正する補正手段と、前記走査部の中心軸に入射する前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データを原点とした場合、前記集光部の光軸に入射する前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す光軸座標と、前記光軸座標から前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離に対する、前記光軸座標から前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離の倍率とを記憶する記憶部と、前記走査部を制御して、前記レーザ光を前記レーザ光の照射位置を表す座標データに基づいて、走査する第1走査制御手段と、前記走査部を制御して、前記可視レーザ光を前記補正手段が補正した前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データに基づいて、走査する第2走査制御手段と、を備え、前記補正手段は、前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データを、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データと、前記記憶部に記憶された前記倍率と前記光軸座標とに基づいて補正
し、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データを(x,y)とし、前記補正手段で補正された後の前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データを(X,Y)とし、前記倍率を表す定数を「α(x)」と「α(y)」とし、前記光軸座標を表す定数を「β(x)」と「β(y)」とすると、X = α(x)×x+β(x)、Y = α(y)×y+β(y)の各関係式が成立すること、を特徴とする。
【0012】
また、請求項
2に係る発明は、請求項
1に記載するレーザ加工装置であって、前記各関係式で算出された後の前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置と前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置との距離が複数の照射位置について算出され、前記算出された各距離の中で最大値が算出され、前記最大値が前記各定数の複数の組合せについて算出され、前記算出された各最大値の中で最も小さい値が算出される際の前記各定数の組合せを前記補正手段で用いること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項
3に係る発明は、請求項
1に記載するレーザ加工装置であって、前記各関係式で算出された後の前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置と前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置との距離が複数の照射位置について算出され、前記算出された各距離の総和が算出され、前記総和が前記各定数の複数の組合せについて算出され、前記算出された各総和の中で最も小さい値が算出される際の前記各定数の組合せを前記補正手段で用いること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項
4に係る発明は、請求項
1乃至請求項
3のいずれか一つに記載するレーザ加工装置であって、前記各定数の変更を受け付ける受付手段を備えたこと、を特徴とする。
【0015】
また、請求項
5に係る発明は、レーザ加工装置を制御するコンピュータに実行される制御方法であって
、前記レーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、可視レーザ光を出射する可視レーザ光源と、同軸上に出射された前記レーザ光、又は前記可視レーザ光を走査する走査部と、前記走査部によって走査された前記レーザ光、又は前記可視レーザ光を集光しながら加工対象物に向けて出射する集光部と、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データと対応関係にある前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データの倍率と光軸座標とを記憶する記憶部と、前記走査部の中心軸に入射する前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データを原点とした場合、前記集光部の光軸に入射する前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す光軸座標と、前記光軸座標から前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離に対する、前記光軸座標から前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離の倍率と
光軸座標とを記憶する記憶部と、を備え、当該制御方法は、前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データを、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データ
と、前記記憶部に記憶された前記倍率と前記光軸座標とに基づいて補正する補正工程と、前記走査部を制御して、前記レーザ光を前記レーザ光の照射位置を表す座標データに基づいて、走査する第1走査制御工程と、前記走査部を制御して、前記可視レーザ光を前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データに基づいて、走査する第2走査制御工程と、を備え
、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データを(x,y)とし、前記補正工程で補正された後の前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データを(X,Y)とし、前記倍率を表す定数を「α(x)」と「α(y)」とし、前記光軸座標を表す定数を「β(x)」と「β(y)」とすると、X = α(x)×x+β(x)、Y = α(y)×y+β(y)の各関係式が成立すること、を特徴とする。
【0016】
また、請求項
6に係る発明は、レーザ加工装置を制御するコンピュータによって実行されるプログラムであって、前記レーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、可視レーザ光を出射する可視レーザ光源と、同軸上に出射された前記レーザ光、又は前記可視レーザ光を走査する走査部と、前記走査部によって走査された前記レーザ光、又は前記可視レーザ光を集光しながら加工対象物に向けて出射する集光部と、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データと対応関係にある前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データの倍率と光軸座標とを記憶する記憶部と、前記走査部の中心軸に入射する前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データを原点とした場合、前記集光部の光軸に入射する前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す光軸座標と、前記光軸座標から前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離に対する、前記光軸座標から前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離の倍率と光軸座標とを記憶する記憶部と、を備え、当該プログラムは、前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データを、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データと、前記記憶部に記憶された前記倍率と前記光軸座標とに基づいて補正する補正処理と、前記走査部を制御して、前記レーザ光を前記レーザ光の照射位置を表す座標データに基づいて、走査する第1走査制御処理と、前記走査部を制御して、前記可視レーザ光を前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データに基づいて、走査する第2走査制御処理と、を備え
、前記加工対象物上の前記レーザ光の照射位置を表す座標データを(x,y)とし、前記補正処理で補正された後の前記加工対象物上の前記可視レーザ光の照射位置を表す座標データを(X,Y)とし、前記倍率を表す定数を「α(x)」と「α(y)」とし、前記光軸座標を表す定数を「β(x)」と「β(y)」とすると、X = α(x)×x+β(x)、Y = α(y)×y+β(y)の各関係式が成立すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、請求項1に係る発明であるレーザ加工装置では、加工対象物上のレーザ光の照射位置と加工対象物上の可視レーザ光の照射位置との間の位置ずれを補正する。その位置ずれの補正は、加工対象物上の可視レーザ光の照射位置と対応関係にある加工対象物上のレーザ光の照射位置を表す座標データに対する倍率と光軸座標とに基づいて行われる。よって、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光との間の集光部の色収差による位置ずれを精度良く補正することができる。
【0018】
また、請求項
1に係る発明であるレーザ加工装置では、X=α(x)×x+β(x)、Y=α(y)×y+β(y)の各関係式を使用して補正する。よって、その補正では、倍率を表す定数である「α(x)」と「α(y)」や、光軸座標を表す定数である「β(x)」と「β(y)」のみを記憶するだけであり、座標がどの位置であっても、XとYの各計算は同じ計算量であるので、その補正のための時間、補正のために記憶すべきデータを削減することができる。
【0019】
ちなみに、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光に関し、集光部からの出射角度は、集光部に対する射波長と入射角に依存する。また、集光部は、光軸から照射位置までの距離が入射角に略比例するように設計されており、その比例係数は波長によって異なる。そのため、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光では、照射位置が異なる。もっとも、異なる照射位置のいずれも、集光部に対する入射角に比例しているので、その比例係数の比が一次の係数(「α(x)」と「α(y)」)に相当するとともに、補正の際に使用する関係式が一次関数となる。
【0020】
また、集光部で構成される光学系が光軸対象なので、補正の際に使用する関係式である一次関数の係数(「α(x)」と「α(y)」)は、近似的にはx方向とy方向とで一致するはずであるが、走査部の中心軸と集光部の光軸が調整不足でずれている可能性があるため、x方向とy方向とで異なる可能性がある。そこで、補正の際に使用する関係式である一次関数の係数(「α(x)」と「α(y)」)を異なるようにすれば、走査部の中心軸と集光部の光軸がずれていても、照射位置を補正することができる。
【0021】
また、走査部の中心軸と集光部の光軸については、位置及び角度とも完全に一致すれば、補正の際に使用する関係式である一次関数の光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)はいらない。しかしながら、走査部の中心軸と集光部の光軸については、位置及び角度とも、完全に一致するように調整するのは困難であり、ずれる可能性がある。そこで、補正の際に使用する関係式である一次関数の光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を設けるようにすれば、走査部の原点と集光部の光軸がずれていても、照射位置を補正することができる。
【0022】
また、走査部の原点と集光部の光軸とのずれがx方向とy方向とで異なるケースでは、補正の際に使用する関係式である一次関数の光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を異なるようにすれば、照射位置を補正することができる。
【0023】
また、請求項
2に係る発明であるレーザ加工装置では、先ず、各関係式で算出された後の加工対象物上の可視レーザ光の照射位置と加工対象物上のレーザ光の照射位置との距離が複数の照射位置について算出される。次に、その各距離の中で最大値が算出される。次に、そのような最大値が各定数の複数の組合せについて算出される。そして、算出された各最大値の中で最も小さい値が算出される際の各定数の組合せが補正の際に各関係式で用いられる。つまり、多数存在する各定数の組合せの中から、座標系全体において最も大きい距離を最も小さくさせる各定数の組合せを一つ求め、その求めた各定数の組合せを各関係式に用いる。よって、座標系全体において最も大きい距離を重視した補正の下で、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光との間の集光部の色収差による位置ずれを精度良く補正することができる。
【0024】
また、請求項
3に係る発明であるレーザ加工装置では、先ず、各関係式で算出された後の加工対象物上の可視レーザ光の照射位置と加工対象物上のレーザ光の照射位置との距離が複数の照射位置について算出される。次に、その各距離の総和が算出される。次に、そのような総和が各定数の複数の組合せについて算出される。そして、算出された各総和の中で最も小さい値が算出される際の各定数の組合せが補正の際に各関係式で用いられる。つまり、多数存在する各定数の組合せの中から、座標系全体において各距離の総和を最も小さくさせる各定数の組合せを一つ求め、その求めた各定数の組合せを各関係式に用いる。よって、座標系全体において各距離の平均を重視した補正の下で、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光との間の集光部の色収差による位置ずれを精度良く補正することができる。
【0025】
また、請求項
4に係る発明であるレーザ加工装置では、補正の際に各関係式で用いられる各定数の変更を受け付けることができるので、レーザ発振器から出射されるレーザ光などの変更に対応させることができる。
【0026】
また、補正の際に各関係式で用いられる各定数の変更を受け付けることができることから、請求項
4に係る発明であるレーザ加工装置では、座標系の中でユーザが注目する位置(例えば、座標系の中心部又は周辺部など)を重視した補正を行うことができる。
【0027】
また、請求項
5に係る発明である制御方法では、加工対象物上のレーザ光の照射位置と加工対象物上の可視レーザ光の照射位置との間の位置ずれを補正する。その位置ずれの補正は、加工対象物上の可視レーザ光の照射位置と対応関係にある加工対象物上のレーザ光の照射位置を表す座標データに対する倍率と光軸座標とに基づいて行われる。よって、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光との間の集光部の色収差による位置ずれを精度良く補正することができる。
【0028】
また、請求項
6に係る発明であるプログラムでは、そのプログラムが実行されると、加工対象物上のレーザ光の照射位置と加工対象物上の可視レーザ光の照射位置との間の位置ずれを補正する。その位置ずれの補正は、加工対象物上の可視レーザ光の照射位置と対応関係にある加工対象物上のレーザ光の照射位置を表す座標データに対する倍率と光軸座標とに基づいて行われる。よって、加工用のレーザ光とガイド用の可視レーザ光との間の集光部の色収差による位置ずれを精度良く補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るレーザ加工装置、制御方法及びプログラムをレーザ加工システムについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】
[1.レーザ加工システムの概略構成]
先ず、本実施形態であるレーザ加工システム1の概略構成について
図1〜
図3に基づいて説明する。本実施形態に係るレーザ加工システム1は、パーソナルコンピュータ等から構成される印字情報作成装置2とレーザ加工装置3とから構成されている。
【0032】
レーザ加工装置3は、レーザ加工装置本体部5とレーザコントローラ6とから構成されている。レーザ加工装置本体部5は、レーザ光Qを加工対象物7の加工面8を2次元走査してマーキング(印字)加工を行う。
【0033】
レーザコントローラ6はコンピュータで構成され、印字情報作成装置2と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部5と電気的に接続されている。そして、レーザコントローラ6は、印字情報作成装置2から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部5を駆動制御する。つまり、レーザコントローラ6は、レーザ加工装置3の全体を制御する。
【0034】
レーザ加工装置本体部5の概略構成について説明する。尚、レーザ加工装置本体部5の説明において、レーザ発振器21からレーザ光Qを出射する方向が、レーザ加工装置本体部5の前方向である。また、本体ベース11のレーザ発振器21を取り付けた取付面に対して垂直方向が、レーザ加工装置本体部5の上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部5の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部5の左右方向である。
【0035】
レーザ加工装置本体部5は、本体ベース11と、レーザ光Qを出射するレーザ発振ユニット12と、光シャッター部13と、不図示の光ダンパーと、ハーフミラー101(
図3参照)と、ガイド光部15と、反射ミラー16と、光センサ17と、ガルバノスキャナ18と、fθレンズ19等から構成され、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0036】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ等で構成され、加工対象物7の加工面8にマーキング(印字)加工を行うためのレーザ光Qを出力する。ビームエキスパンダ22は、レーザ光Qのビーム径を調整する(例えば、ビーム径を拡大する。)ものであり、レーザ発振器21と同軸に設けられている。取付台23は、レーザ発振器21がレーザ光Qの光軸Cを調整可能に取り付けられ、各取付ネジ25で本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に固定されている。
【0037】
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザ光Qの光路を遮る位置に回転された際には、レーザ光Qを光シャッター部13に対して右方向に設けられた不図示の光ダンパーへ反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたレーザ光Qの光路上に位置しないように回転された場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザ光Qは、光シャッター部13の前側に配置されたハーフミラー101に入射する。
【0038】
不図示の光ダンパーは、シャッター27で反射されたレーザ光Qを吸収する。尚、不図示の光ダンパーは不図示の冷却装置によって冷却される。ハーフミラー101は、レーザ光Qの光路に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置される。ハーフミラー101は、後側から入射されたレーザ光Qのほぼ全部を透過する。また、ハーフミラー101は、後側から入射されたレーザ光Qの一部、例えば、レーザ光Qの1%を、反射ミラー16へ45度の反射角で反射する。反射ミラー16は、ハーフミラー101のレーザ光Qが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
【0039】
ガイド光部15は、可視可干渉光である可視レーザ光R(
図3参照)、例えば、赤色レーザ光を出射する可視半導体レーザ28(
図2、
図3参照)と、可視半導体レーザ28から出射された可視レーザ光Rを平行光に収束する不図示のレンズ群とから構成されている。
【0040】
可視レーザ光Rは、レーザ発振器21から出射されるレーザ光Qと異なる波長である。本実施形態では、レーザ光Qの波長は1064nmであり、可視レーザ光Rの波長は、650nmである。
【0041】
ガイド光部15は、ハーフミラー101のレーザ光Qが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視レーザ光Rは、ハーフミラー101のレーザ光Qが出射される略中央位置に、ハーフミラー101の前側面、つまり、反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でレーザ光Qの光路上に反射される。
【0042】
ここで、ハーフミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ハーフミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理をされており、可視レーザ光Rの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光はほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0043】
反射ミラー16は、レーザ光Qの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラー101の後側面において反射されたレーザ光Qの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラー16は、反射面に対して45度の入射角で入射されたレーザ光Qを45度の反射角で前側方向へ反射する。
【0044】
光センサ17は、レーザ光Qの発光強度を検出するフォトディテクタ等で構成され、反射ミラー16のレーザ光Qが反射される略中央位置に対して、
図1中、前側方向に配置されている。この結果、光センサ17は、反射ミラー16で反射されたレーザ光Qが入射され、この入射されたレーザ光Qの発光強度を検出する。従って、光センサ17を介してレーザ発振器21から出力されるレーザ光Qの発光強度を検出することができる。
【0045】
ガルバノスキャナ18は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット12から出射されたレーザ光Qと、ハーフミラー101で反射された可視レーザ光Rとを下方へ2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18は、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されて本体部33に取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラー18X、18Y(
図3参照)が内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラー18X、18Yを回転させることによって、レーザ光Qと可視レーザ光Rとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)である。
【0046】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザ光Qと可視レーザ光Rとを下方に配置された加工対象物7の加工面8に集光する。従って、各モータ31、32の回転を制御することによって、レーザ光Qと可視レーザ光Rが、加工対象物7の加工面8上において、所望の印字パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
【0047】
次に、レーザ加工システム1を構成する印字情報作成装置2とレーザ加工装置3の回路構成について
図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工装置3の回路構成について
図2に基づいて説明する。
【0048】
図2に示すように、レーザ加工装置3は、レーザ加工装置3の全体を制御するレーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38等から構成されている。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、光センサ17、シャッターモータ26等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6には、外部の印字情報作成装置2が双方向通信可能に接続され、印字情報作成装置2から送信された印字情報、レーザ加工装置本体部5の制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。
【0049】
レーザコントローラ6は、レーザ加工装置3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU41、RAM42、ROM43、時間を計測するタイマ44等を備えている。また、CPU41、RAM42、ROM43、タイマ44は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0050】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、印字情報作成装置2から送信された印字情報に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM42に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM43には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
【0051】
また、ROM43には、印字情報作成装置2から受信した印字情報に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Qのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18によるレーザ光Qを走査する速度を表すガルバノ走査速度情報等の各種制御パラメータをRAM42に格納するプログラムが記憶されている。
【0052】
そして、CPU41は、かかるROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、ROM43に記憶されているプログラムには、
図5に示すフローチャートのプログラム等がある。
【0053】
また、CPU41は、印字情報作成装置2から入力された印字情報に基づいて算出した印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、印字情報作成装置2から入力された印字情報に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Qのレーザパルス幅等のレーザ駆動情報をレーザドライバ37に出力する。CPU41は、光センサ17から入力されたレーザ光Qの発光強度に基づいて、レーザ発振器21のレーザ出力制御信号をレーザドライバ37に出力する。
【0054】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。CPU41は、シャッターモータ26に対して、シャッター27をレーザ光Qの光路を遮る位置に回転させるように指示する遮光指示信号、又は、シャッター27をレーザ光Qの光路を遮らない位置に回転させるように指示する開放指示信号を出力する。
【0055】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された印字パターンのXY座標データ(X、Y)、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ36へ出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザ光Q又は可視レーザ光Rを2次元走査する。
【0056】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Qのレーザパルス幅等のレーザ駆動情報と、レーザ発振器21のレーザ出力制御信号等に基づいて、レーザ発振器21を駆動する。また、半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯する。
【0057】
次に、印字情報作成装置2の回路構成について
図2に基づいて説明する。
図2に示すように、印字情報作成装置2は、印字情報作成装置2の全体を制御する制御部51、
図1に示すマウス52とキーボード53等から構成される入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、CD−ROM57に各種データ、プログラム等を書き込み及び読み込むためのCD−R/W58等から構成されている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して入力操作部55、液晶ディスプレイ56、CD−R/W58等が接続されている。
【0058】
CD−R/W58は、各種アプリケーションソフトウェア等をCD−ROM57から読み込む、又は、CD−ROM57に対して書き込む。
【0059】
制御部51は、印字情報作成装置2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ65、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。また、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ65は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。また、CPU61とHDD66は、不図示の入出力インターフェースを介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
【0060】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものである。
【0061】
また、HDD66は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する。
【0062】
[2.レーザ光と可視レーザ光の照射位置のずれ]
次に、レーザ光Qと可視レーザ光Rの照射位置のずれについて
図3に基づいて説明する。
【0063】
図3に示すように、レーザ光Qは、レーザ発振器21、及びビームエキスパンダ22等で構成されたレーザ発振ユニット12から出射される。その出射されたレーザ光Qは、ハーフミラー101を透過する。その透過したレーザ光Qは、ガルバノスキャナ18の走査ミラー18X、18Yで2次元走査される。その2次元走査されたレーザ光Qは、fθレンズ19に入射する。その入射したレーザ光Qは、fθレンズ19に集光され、fθレンズ19から出射する。
【0064】
その出射されたレーザ光Qは、加工対象物7を照射する。そのレーザ光Qの照射位置PQは、fθレンズ19の光軸Cの加工対象物7上の位置を原点OとしたXY座標の座標データでは、(x、y)で示される。つまり、fθレンズ19の光軸Cに入射する加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データを原点Oとすると、加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQの座標データは、(x、y)で示される。
【0065】
一方、可視レーザ光Rは、可視半導体レーザ28から出射される。その出射された可視レーザ光Rは、ハーフミラー101でレーザ光Qの光路上に反射される。その反射された可視レーザ光Rは、ガルバノスキャナ18の走査ミラー18X、18Yで2次元走査される。その2次元走査された可視レーザ光Rは、fθレンズ19に入射する。その入射した可視レーザ光Rは、fθレンズ19に集光され、fθレンズ19から出射する。その出射された可視レーザ光Rは、加工対象物7上で照射する。
【0066】
その出射された可視レーザ光Rは、加工対象物7を照射する。その可視レーザ光Rの照射位置PRは、fθレンズ19の光軸Cの加工対象物7上の位置を原点OとしたXY座標の座標データでは、(X、Y)で示される。つまり、fθレンズ19の光軸Cに入射する加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データを原点Oとすると、加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PRの座標データは、(X、Y)で示される。
【0067】
そして、可視レーザ光Rの照射位置PRとレーザ光Qの照射位置PQとの間には、位置ずれZが発生する。その位置ずれZは、fθレンズ19の色収差を発生要因とする。
【0068】
[3.レーザ光と可視レーザ光の照射位置の関係式]
加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)と対応関係にある加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)について、以下の各関係式(1)(2)が成立するものとする。
X=α(x)×x+β(x) …(1)
Y=α(y)×y+β(y) …(2)
ここで、「β(x)」と「β(y)」は、ガルバノスキャナ18の中心軸に入射する加工対象物7上のレーザ光の照射位置を表す座標データを原点Oとした場合、fθレンズ19の光軸Cに入射する加工対象物7上のレーザ光の照射位置を表光軸座標を表す定数であり、「α(x)」と「α(y)」は、光軸座標β(x)、β(y)から加工対象物7上のレーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離に対する、光軸座標β(x)、β(y)から加工対象物7上の可視レーザ光の照射位置を表す座標データまでの距離の倍率を表す定数である。
【0069】
ところで、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qとガイド用の可視レーザ光Rに関し、fθレンズ19からの出射角度は、fθレンズ19に対する入射波長と入射角に依存する。また、fθレンズ19は、光軸Cから照射位置(を表す各座標データ(x、y)(X、Y))までの距離が上記入射角に略比例するように設計されており、その比例係数は波長によって異なる。
【0070】
この点、上述したように、本実施形態では、レーザ光Qの波長は1064nmであり、可視レーザ光Rの波長は、650nmである。そのため、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)は、ガイド用の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)とは異なる。
【0071】
もっとも、異なる照射位置PQ、PRのいずれも、fθレンズ19に対する入射角に比例しているので、その比例係数の比が一次の係数(「α(x)」と「α(y)」)に相当するとともに、上記の各関係式(1)(2)が一次関数となる。上記の各関係式(1)(2)を使用すれば、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)を補正することで、ガイド用の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)を算出することができる。
【0072】
また、fθレンズ19で構成される光学系が光軸Cを中心にした軸対象であるので、補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の係数(「α(x)」と「α(y)」)は、近似的にはx方向とy方向とで一致するはずであるが、ガルバノスキャナ18の中心軸とfθレンズ19の光軸Cが調整不足でずれている可能性があるため、x方向とy方向とで異なる可能性がある。
【0073】
そこで、補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の係数(「α(x)」と「α(y)」)を異なるようにすれば、ガルバノスキャナ18の中心軸とfθレンズ19の光軸Cがずれていても、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)を補正することで、ガイド用の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)を算出することができる。
【0074】
また、ガルバノスキャナ18の原点とfθレンズ19の光軸Cについては、位置及び角度とも完全に一致すれば、補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)はいらない。しかしながら、ガルバノスキャナ18の原点とfθレンズ19の光軸Cについては、位置及び角度とも、完全に一致するように調整するのは困難であり、ずれる可能性がある。そこで、補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を設けるようにすれば、ガルバノスキャナ18の原点とfθレンズ19の光軸Cがずれていても、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)を補正することで、ガイド用の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)を算出することができる。
【0075】
また、ガルバノスキャナ18の原点とfθレンズ19の光軸Cとのずれがx方向とy方向とで異なるケースでは、補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を異なるようにすれば、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)を補正することで、ガイド用の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)を算出することができる。
【0076】
[4.倍率と光軸座標の決定(その1)]
補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)は、
図6に示す組合せ決定処理に従って、決定される。
【0077】
S20では、先ず、レーザ発振器21は、加工対象物7上のN個の格子点PQ(1)〜PQ(N)に、レーザ光Qを照射する。記録者は、レーザ光Qによって加工された加工対象物7上のN個の加工痕の座標PQを、座標データ(x、y)として記録する。
【0078】
S21では、係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の所定の組合せを使用した上記の各関係式(1)(2)をもって、加工対象物7上のN個の格子点PR(1)〜PR(N)に可視レーザ光Rを照射する。加工対象物7上のN個の可視レーザ光Rの照射位置を、座標データ(X、Y)として記録する。
【0079】
S22では、加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)と実際に加工された加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)との距離Lが、N個の照射位置について、以下の式(3)をもって算出される。
L(n)={(X(n)−x(n))
2 +(Y(n)−y(n))
2 }
1/2 …(3)
n=1〜N
【0080】
具体的に言えば、例えば、
図4に示すように、基準位置の外枠が正方形の場合には、レーザ光Qの歪は一点鎖線で示され、可視レーザ光Rの歪は点線で示される。ここで、外枠が正方形である基準位置を複数のマトリックスで構成した場合には、N個の各格子点について、上記の式(3)でN個の各距離L(n)が求められる。
【0081】
n=1では、上記の各関係式(1)(2)で算出された後の加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PR(1)を表す座標データ(X(1)、Y(1))と加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQ(1)を表す座標データ(x(1)、y(1))との距離L(1)が求められる。
【0082】
そして、n=Nでは、上記の各関係式(1)(2)で算出された後の加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PR(N)を表す座標データ(X(N)、Y(N))と加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQ(N)を表す座標データ(x(N)、y(N))との距離L(N)が求められる。
【0083】
尚、
図4では、外枠が正方形である基準位置を16個のマトリックスで構成しており、格子点は25個あるので、(N=)25個の距離Lが求められる。
【0084】
S23では、その各距離L(n)の中で最大値が算出される。つまり、以下の式(4)をもって、最大値が算出される。
MAX(L(1),L(2),…,L(n−1),L(n)) …(4)
n=N
【0085】
次に、上記の各関係式(1)(2)で係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を変化させることにより、上記の式(3)(4)を介して求められる最大値が、係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せ毎に算出される。
【0086】
S24では、算出された各最大値の中で最も小さい値が算出される際の係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せを決定する。そして、その組合せを、補正の際に各関係式(1)(2)で用いる。
【0087】
つまり、多数存在する係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せの中から、XY座標系の全体において最も大きい距離Lを最も小さくさせる係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せを一つ求める。
【0088】
その求めた各定数の組合せを上記の各関係式(1)(2)に用いる。よって、XY座標系全体において最も大きい距離Lを重視した補正の下で、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qとガイド用の可視レーザ光Rとの間のfθレンズ19の色収差による位置ずれZを精度良く補正することができる。
【0089】
[5.倍率と光軸座標の決定(その2)]
補正の際に使用する上記の各関係式(1)(2)である一次関数の係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)は、
図7に示す組合せ決定処理に従って、決定されてもよい。
【0090】
S20では、先ず、レーザ発振器21は、加工対象物7上のN個の格子点PQ(1)〜PQ(N)に、レーザ光Qを照射する。記録者は、その加工対象物7上のN個の照射位置PQを、座標データ(x、y)として記録する。
【0091】
S21では、係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の所定の組合せを使用した上記の各関係式(1)(2)をもって、加工対象物7上のN個の格子点PR(1)〜PR(N)に可視レーザ光Rを照射する。記録者は、加工対象物7上のN個の可視レーザ光Rの照射位置PRを、座標データ(X、Y)として記録する。
【0092】
S22では、加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)と実際に加工された加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)との距離Lが、N個の照射位置について、以下の式(3)をもって算出される。
L(n)={(X(n)−x(n))
2 +(Y(n)−y(n))
2 }
1/2 …(3)
n=1〜N
【0093】
具体的に言えば、例えば、
図4に示すように、基準位置の外枠が正方形の場合には、レーザ光Qの歪は一点鎖線で示され、可視レーザ光Rの歪は点線で示される。ここで、外枠が正方形である基準位置を複数のマトリックスで構成した場合には、N個の各格子点について、上記の式(3)でN個の各距離L(n)が求められる。
【0094】
n=1では、上記の各関係式(1)(2)で算出された後の加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PR(1)を表す座標データ(X(1)、Y(1))と加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQ(1)を表す座標データ(x(1)、y(1))との距離L(1)が求められる。
【0095】
そして、n=Nでは、上記の各関係式(1)(2)で算出された後の加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PR(N)を表す座標データ(X(N)、Y(N))と加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQ(N)を表す座標データ(x(N)、y(N))との距離L(N)が求められる。
【0096】
尚、
図4では、外枠が正方形である基準位置を16個のマトリックスで構成しており、格子点は25個あるので、(N=)25個の距離Lが求められる。
【0097】
S33では、その各距離L(n)の総和が算出される。つまり、以下の式(5)をもって、総和が算出される。
L(1)+L(2)+…+L(n−1)+L(n) …(5)
n=N
【0098】
次に、上記の各関係式(1)(2)で係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を変化させることにより、上記の式(3)(5)を介して求められる総和が、係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せ毎に算出される。
【0099】
S34では、算出された各総和の中で最も小さい値が算出される際の係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せを決定する。そして、その組合せを、補正の際に各関係式(1)(2)で用いる。
【0100】
つまり、多数存在する係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せの中から、XY座標系の全体において各距離Lの総和を最も小さくさせる係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の組合せを一つ求める。
【0101】
その求めた各定数の組合せを上記の各関係式(1)(2)に用いる。よって、XY座標系全体において各距離Lの平均を重視した補正の下で、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qとガイド用の可視レーザ光Rとの間のfθレンズ19の色収差による位置ずれZを精度良く補正することができる。
【0102】
[6.補正処理]
次に、本実施形態に係るレーザ加工システム1のレーザ加工装置3のCPU41が実行する補正処理について
図5に基づいて説明する。
【0103】
S10において、CPU41は、「α(x)」と「α(y)」と「β(x)」と「β(y)」の各定数の変更を受け付ける。具体的には、CPU41は、LCD56に各定数を変更するための画面を表示させる。ユーザが、
図1に示すマウス52とキーボード53等から構成される入力操作部55を介して、各定数の値を入力する。CPU41は、入力操作部55を介して入力された各定数の値を、RAM62に記憶させる。これにより、ユーザは、可視レーザ光Rの照射位置を所望の位置に調整することができる。例えば、、S13における補正の際に上記の各関係式(1)(2)で用いられる係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)をユーザによる操作で調整することができることから、XY座標系の中でユーザが注目する位置(例えば、
図4の原点O又は周辺部など)の可視レーザ光Rとレーザ光Qとが一致する値を重視する等、ユーザが所望する照射位置に補正を行うことができる。
【0104】
先ず、S11において、CPU41は、目標位置の座標データを取得する。具体的には、CPU41は、印字情報作成装置2から印字パターンを描くための座標データを受信する。CPU41は、印字情報作成装置2から送信された印字情報に基づいて、加工対象物7上のXY座標における位置を表す座標データ(x′、y′)を算出する。CPU41は、算出した座標データ(x′、y′)をRAM42に記憶させる。
【0105】
理想的には、目標位置の座標データ(x′、y′)により、
図4に示すPQ′にレーザ光が照射される。しかしながら、実際には、fθレンズ19の歪みにより、レーザ光Qと可視レーザ光Rは、目標位置に対してずれが生じる。具体的には、座標データ(x′、y′)に従って、レーザ光Qを加工対象物7上に照射した場合、
図4に示すPQに照射される。また、座標データ(x′、y′)に従って、可視レーザ光Rを加工対象物7上に照射した場合、
図4に示すPRに照射される。
【0106】
S12では、CPU41は、fθレンズ19の歪補正式でRAMに記憶された座標データ(x′、y′)を補正する。具体的には、CPU41は、特許文献1に記載の公知の方法で補正する。上記S11で取得した加工対象物7上のXY座標における位置を表す座標データ(x′、y′)について、以下の各関係式(6)(7)で歪補正して、歪補正されたレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)が取得される。
x=x′+A(x′)×y′
2×x′+B(x′)×y′ …(6)
y=y′+A(y′)×x′
2×y′+B(y′)×x′ …(7)
ここで、上記の各関係式(6)(7)で使用される係数(「A(x′)」と「A(y′)」と光軸座標(「B(x′)」と「B(y′)」)は、レーザ光Qの波長毎に既に求められており、ROM43内の補正データテーブルに記憶されている。
【0107】
各関係式(6)(7)により、可視レーザ光R及びレーザ光Qの座標データ(x′、y′)を補正した場合、
図8に示す様に可視レーザ光R及びレーザ光Qの照射位置が補正される。具体的には、座標データ(x、y)に従って、レーザ光Qを加工対象物7上に照射した場合、
図8に示すPQ(x、y)に照射される。また、座標データ(x、y)に従って、可視レーザ光Rを加工対象物7上に照射した場合、
図8に示すPR(x、y)に照射される。
【0108】
S13では、CPU41は、歪補正された座標データ(x、y)を補正式で補正する。具体的には、上記S12で歪補正されたレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)と下記の各関係式(1)(2)とを用いて、歪補正された可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)が求められる。
X=α(x)×x+β(x) …(1)
Y=α(y)×y+β(y) …(2)
【0109】
各関係式(1)(2)により、可視レーザ光Rの座標データ(x、y)を補正した場合、
図9に示す様に可視レーザ光Rの照射位置が補正される。具体的には、座標データ(X、Y)に従って、可視レーザ光Rを加工対象物7上に照射した場合、
図9に示すPR(X、Y)に照射される。
【0110】
ここで、上記の各関係式(1)(2)で使用される係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)は、上述した[4.倍率と光軸座標の決定(その1)]又は[5.倍率と光軸座標の決定(その2)]によって既に求められており、ROM43に記憶されている。
【0111】
以下、その記憶形態について説明する。本実施の形態では、上記S12で歪補正されたレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)を取得するための上記の各関係式(6)(7)の係数(「A(x′)」と「A(y′)」と光軸座標(「B(x′)」と「B(y′)」)を使って、座標データ(x′、y′)に対して、CPU41が単純な掛け算を施す。また、CPU41は、上記S13で歪補正された可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)を取得するための上記の各関係式(1)(2)の係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)を使って、座標データ(x、y)を求める。
【0112】
S14では、CPU41は、ガルバノスキャナ18を制御して、可視半導体レーザ28から出射した可視レーザ光Rを、S12及びS13で補正した可視レーザ光Rの照射位置を表す座標データ(X、Y)に基づいて、走査する。具体的には、CPU41は、ガルバノコントローラ35に座標データ(X、Y)及びガルバノ走査速度情報等を出力する。ガルバノコントローラ35は、座標データ(X、Y)及びガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ36へ出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、可視レーザ光Rを2次元走査する。
【0113】
S15では、CPU41は、ガルバノスキャナ18を制御して、レーザ発振器21から出射したレーザ光Qを、S12で補正したレーザ光Qの照射位置を表す座標データ(x、y)に基づいて、走査する。具体的には、CPU41は、ガルバノコントローラ35に座標データ(x、y)及びガルバノ走査速度情報等を出力する。ガルバノコントローラ35は、座標データ(x、y)及びガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ36へ出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザ光Qを2次元走査する。CPU41は、S15終了後、補正処理を終了する。
【0114】
[7.まとめ]
すなわち、本実施形態に係るレーザ加工システム1では、加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)と加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PRを表す座標データ(X、Y)との間のfθレンズ19の色収差による位置ずれZを補正する。その位置ずれZの補正は、加工対象物7上の可視レーザ光Rの照射位置PRと対応関係にある加工対象物7上のレーザ光Qの照射位置PQを表す座標データ(x、y)に対する倍率(「α(x)」と「α(y)」)と光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)とに基づいて行われる(S13)。よって、マーキング(印字)加工用のレーザ光Qとガイド用の可視レーザ光Rとの間のfθレンズ19の色収差による位置ずれLを精度良く補正することができる。
【0115】
また、本実施形態に係るレーザ加工システム1では、下記の各関係式(1)(2)を使用して歪補正する(S13)。
X=α(x)×x+β(x) …(1)
Y=α(y)×y+β(y) …(2)
よって、その歪補正では、倍率を表す定数である「α(x)」と「α(y)」、光軸座標を表す定数である「β(x)」と「β(y)」のみをROM43に記憶するだけであり、座標がどの位置であっても、XとYの各計算は同じ計算量であるので、その補正のための時間、補正のために記憶すべきデータを削減することができる。
【0116】
[8.その他]
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
S13において、上記の各関係式(1)(2)で使用される係数(「α(x)」と「α(y)」)及び光軸座標(「β(x)」と「β(y)」)の各値は、上述した[4.倍率と光軸座標の決定(その1)]及び[5.倍率と光軸座標の決定(その2)]を評価し、それらの分布状態から選択されていてもよい。このようなケースでは、α(x)=1.021、α(y)=1.013、β(x)=0.094[mm]、β(y)=0.070[mm]となる。
【0117】
また、
図5に示すフローチャートのプログラムは、印字情報作成装置2のROM63に記憶させてもよい。あるいは、
図5に示すフローチャートのプログラムは、HDD66に記憶されていてもよいし、CD−ROM57等の記憶媒体から読み込まれてもよいし、図示しないインターネットなどのネットワークからダウンロードされてもよい。これらのケースでは、
図5に示すフローチャートのプログラムは、印字情報作成装置2のCPU61によって実行される。