特許第5994859号(P5994859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994859
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】充電制御装置及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20160908BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20160908BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H02J7/02 B
   H02J7/04 L
   H02J7/04 C
   H02J7/00 P
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-536770(P2014-536770)
(86)(22)【出願日】2013年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2013074394
(87)【国際公開番号】WO2014045942
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-209193(P2012-209193)
(32)【優先日】2012年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】保坂 賢司
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519466(JP,A)
【文献】 特開2002−374635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器からの出力電力によりバッテリを所定の充電率まで充電する充電制御装置において、
前記バッテリの温度、前記バッテリの充電率、及び前記バッテリの充電時間に対応する前記バッテリの充電電力の関係を示す第1マップに基づいて、前記充電器の出力電力を制御する充電器制御手段と、
前記バッテリの充電開始から前記バッテリを前記所定の充電率まで充電する充電時間の許容充電時間を演算する許容充電時間演算手段と、
前記バッテリの温度を検出する温度検出手段を備え、
前記充電器制御手段は、
前記第1マップを参照し、前記許容充電時間で前記バッテリを充電する前記充電電力を演算し、前記許容充電時間に基づいて演算した前記充電電力で、前記出力電力を制御し、
前記許容充電時間演算手段は、
前記温度検出手段の検出温度に応じて前記許容充電時間を演算する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記許容充電時間演算手段は、
前記バッテリの温度が所定の温度より高いほど、前記許容充電時間を長く、かつ、前記バッテリの温度が前記所定の温度より低いほど、前記許容充電時間を長くする
ことを特徴とする請求項1記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記バッテリの上限温度に対する前記許容充電時間は、
前記バッテリの温度と前記バッテリの副反応の起こり易さとの関係に基づいて予め設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記バッテリの下限温度に対する前記許容充電時間は、
前記バッテリの温度と前記バッテリの反応速度との関係に基づいて予め設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記許容充電時間演算手段は、
前記充電器から前記バッテリへ出力可能な電力を示す出力可能電力に応じて前記許容充電時間を演算する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記許容充電時間演算手段は、
前記出力可能電力が所定の出力より高い前記充電器の前記出力可能電力と、前記許容充電時間との関係を示す第2マップに基づいて、前記許容充電時間を演算する
ことを特徴とする請求項に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記許容充電時間演算手段は、
前記出力可能電力が高いほど、前記許容充電時間を短くする
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の充電制御装置。
【請求項8】
前記バッテリの充電状態を演算する充電状態演算手段をさらに備え、
前記許容充電時間演算手段は、
前記充電状態に応じて前記許容充電時間を演算する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項9】
前記許容充電時間演算手段は、
前記バッテリの充電状態が高いほど、前記許容充電時間を短くする
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項10】
前記充電制御装置を備えた車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記充電器の位置と、前記充電器から出力可能な電力を示す出力可能電力とを対応づけて記録する記録手段とを備え、
前記許容充電時間演算手段は、
前記記録手段に記録されたデータを参照して、前記位置検出手段により検出された前記車両の検出位置に対応する前記充電器を特定し、
特定された前記充電器の前記出力可能電力に応じて前記許容充電時間を演算する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項11】
充電器からの出力電力によりバッテリを所定の充電率まで充電する充電制御方法において、
前記バッテリの温度を検出し、
前記バッテリの検出温度に応じて前記バッテリの充電時間の許容充電時間を演算し、
前記バッテリの温度、前記バッテリの充電率、及び前記バッテリの充電時間に対応する前記バッテリの充電電力の関係を示すマップを参照して、前記許容充電時間で前記バッテリを充電する前記充電電力を設定し、
前記充電器からの出力電力を、前記許容充電時間に基づいて設定した前記充電電力となるように制御し、
前記バッテリの充電時間は前記バッテリの充電開始から前記バッテリの所定の充電率まで充電する時間である
ことを特徴とする充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置及び充電制御方法に関するものである。
【0002】
本出願は、2012年9月24日に出願された日本国特許出願の特願2012―209193号に基づく優先権を主張するものであり、文献の参照による組み込みが認められる指定国については、上記の出願に記載された内容を参照により本出願に組み込み、本出願の記載の一部とする。
【背景技術】
【0003】
所定の境界温度Tcを境として、組電池を構成する複数の二次電池の中で最も温度の高い電池の温度である最高電池温度が境界温度Tcより低い場合には、一定の電流値A1で充電し、最高電池温度が境界温度Tcより高い場合には電流値A1よりも小さな電流値A2で充電するように設定した、組電池の充電装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−314046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の充電装置では、電池の温度条件のみでバッテリの充電電流を設定しているため、電池の温度が高く、小さな電流値で充電した場合には、充電時間がかかりすぎて、ユーザに対して違和感を与える、という問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ユーザに対して違和感を与えないような、充電時間でバッテリを充電できる充電制御装置又は充電制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バッテリの状態及びバッテリの充電時間に対応するバッテリの充電電力の関係を示すマップを参照し、演算された許容充電時間でバッテリを充電する充電電力を演算し、演算された充電電力で充電器の出力電力を制御することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、許容充電時間で充電を終了させる充電電力を演算し、バッテリの充電を制御することで、許容充電時間を超えて、バッテリを充電することがなくなるため、充電時間がかかりすぎてユーザに対して違和感を与えることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る充電システムのブロック図である。
図2図1のバッテリの充電電流に対する、最高電圧セルの電圧特性を示すグラフである。
図3図1の充電時間演算部に記録されるマップの概要図である。
図4図1の許容充電時間演算部に記録されるマップの概要図である。
図5図1の充電時間演算部で演算される充電電力と充電時間との特性、及び、許容充電時間の関係を示すグラフである。
図6図1のバッテリにおいて、(a)は充電時間に対する充電電力の特性を示すグラフであり、(b)は充電時間に対する電池温度の特性を示すグラフである。
図7図1のバッテリにおいて、充電時間に対する充電電力の特性を示すグラフである。
図8図1のLBCの制御手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の変形例に係る充電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る充電制御装置の充電システムのブロック図である。本例の充電システムは、電気自動車、プラグインハイブリッド車両の車両等に搭載のバッテリを充電するシステムである。充電制御装置は、充電システムの構成の一部であり、当該車両等に搭載されている。
【0012】
本例の充電システムは、充電器10と、バッテリ20と、LBC50とを備えている。バッテリ20及びLBC50は、車両側に搭載される。なお、図1では図示を省略しているが、充電制御装置を搭載する車両は、バッテリ20等の構成の他に、モータ等の構成を備えている。
【0013】
充電器10は、バッテリ20を充電する充電器であり、車両の外部に設けられている。充電器10は、LBC50の制御に基づいて、交流電源100から入力される電力をバッテリ20の充電に適した電力に変換して、バッテリ20に出力する充電回路を有している。充電器10は、インバータ、DC/DCコンバータ及びコントローラ等を有している。充電器10は、ケーブル等によりバッテリ20に接続される。
【0014】
バッテリ20は、リチウムイオン電池等の二次電池(以下、セルとも称す。)を複数接続することで構成される電池であって、車両の動力源である。バッテリ20は、インバータ(図示しない)を介して、モータ(図示しない)に接続されている。バッテリ20は、当該モータの回生により充電され、また車両外の充電器10により充電される。
【0015】
LBC(リチウムイオンバッテリコントローラ)50は、バッテリ20に接続されている電圧、電流のセンサ及びバッテリ20の温度を検出するセンサの検出値により、バッテリ20のSOC等を測定し、バッテリ20に充電されている電池容量等のバッテリ20の状態を管理するコントローラである。またLBC50は、充電器10と制御信号の送受信を行い、充電器10を制御することで、バッテリ20の充電を制御するコントローラでもある。
【0016】
LBC50は、電流検出部51、電圧検出部52、温度検出部53、SOC演算部54、充電可能電力演算部55、充電時間演算部56、許容充電時間演算部57、制限充電電力演算部58、及び、指令値演算部59を有している。
【0017】
電流検出部51は、バッテリ20に接続され、バッテリ20の電流を検出するセンサである。電流検出部51の検出値は、SOC演算部54、充電可能電力演算部55、充電時間演算部56に出力される。
【0018】
電圧検出部52は、バッテリ20に接続され、バッテリ20の電圧を検出するセンサである。電圧検出部52は、バッテリ20に含まれる複数の電池の各電圧、及び、当該複数の電池の総電圧を検出する。電圧検出部52の検出値は、充電可能電力演算部55及び充電時間演算部56に出力される。
【0019】
温度検出部53は、バッテリ20に設けられ、バッテリ20の温度を検出するセンサである。温度検出部51の検出値は、充電可能電力演算部55、充電時間演算部56及び許容充電時間演算部57に出力される。
【0020】
SOC演算部54は、電流検出部51により検出された検出値を積算することで、充電電流を積分して、バッテリ20のSOCを演算する。SOC演算部54は、演算したSOCを充電時間演算部56及び許容充電時間演算部57に出力する。
【0021】
なお、SOC演算部54は、電圧検出部52の検出電圧からバッテリ20のSOCを演算してもよい。バッテリ20の電圧とSOCとの間には相関性があるため、当該相関性を示すマップがメモリ40に記録され、SOC演算部54は、メモリ40の当該マップを参照して、電圧検出部52の検出電圧に対応するSOCを、バッテリ20のSOCとして演算する。
【0022】
なお、バッテリ20の電圧とSOCとの相関性は、バッテリ20の劣化度に応じて変わるため、マップは、バッテリ20の劣化度に応じたマップにしてもよい。バッテリ20の劣化度は、例えば、バッテリ20の内部抵抗から演算すればよい。また、バッテリ20の内部抵抗は、例えば電流検出部51により検出された電流値の変化と、電圧検出部52により検出された電圧の変化とを用いて算出することができる。
【0023】
充電可能電力演算部55は、電流検出部51の検出電流、電圧検出部52の検出電圧及び温度検出部53の検出温度から、バッテリ20の充電可能電力を演算する。充電可能電力は、バッテリ20の充電の際、バッテリ20の劣化の促進を抑制しながら充電できる最大の電力であって、充電器10からバッテリ20に入力可能な最大の入力電力である。なお充電可能電力は一般的に、入力可能電力あるいは最大充電可能電力や最大入力可能電力とも言われ、本実施形態においては充電可能電力と記載する。充電可能電力演算部55は、以下の要領で、充電可能電力を演算する。
【0024】
バッテリ20には、バッテリ20の性能に応じて、充電上限電圧がセル毎に設定されている。充電上限電圧は、バッテリ20の劣化を防止するために、バッテリ20を充電する際の、上限となる電圧である。充電上限電圧は、バッテリ20を構成する電池(セル)の内部で、リチウムの析出が開始する電圧、または、リチウムの析出が開始する電圧よりも低い電圧が設定される。
【0025】
充電上限電圧は、バッテリ20へ入力される充電電流、バッテリ温度、及び、バッテリ20の内部抵抗に応じて、演算される。例えば、充電上限電圧は、バッテリ20の充電電流が大きいほど低く演算され、バッテリ20の充電電流が小さいほど高く演算される。
【0026】
バッテリ20が複数の電池により構成されている場合には、複数の電池の中で最も電圧が高い電池の電圧を、充電上限電圧に抑えなければならない。充電可能電力演算部55は、電圧検出部52により検出される各セルの電圧から、最も電圧が高いセルを特定する。充電可能電力演算部55は、特定されたセルの電圧、当該セルの内部抵抗、セルの充電電流及び充電上限電圧に基づき、バッテリに入力可能な入力可能電流を演算する。
【0027】
入力可能電流は、最も高い端子電圧を有するセルの内部抵抗と、当該セルの充電上限電圧から算出される。セルの内部抵抗は、電圧検出部52により検出される当該セルの端子電圧と、当該セルの充電電流から演算される。
【0028】
図2は、入力可能電流(IMAX)の演算方法を説明する図である。充電可能電力演算部55は、最も高い端子電圧を有するセルの内部抵抗から、図2に示すように、当該セルの内部抵抗線Lを演算する。
【0029】
内部抵抗線Lは、最も高い端子電圧を有するセルについて、当該セルの充電電流と、当該セルの電圧との関係を示す直線である。なお、内部抵抗線Lは、例えばバッテリ20の総内部抵抗及びバッテリ20の開放電圧から算出することができる。バッテリ20の総内部抵抗は、バッテリ20に含まれる複数のセルの全体の抵抗値である。
【0030】
充電上限電圧線LV_LIMは、バッテリ20の充電電流と相関性を有している。そのため、充電上限電圧とバッテリ20の充電電流との相関性をもつマップが、予めメモリに記録され、充電可能電力演算部55は、当該マップを参照し、電流検出部51の検出電流を用いることで、充電上限電圧(充電上限電圧線LV_LIMに相当)を演算すればよい。
【0031】
図2に示す特性において、充電上限電圧線LV_LIMと内部抵抗線Lとの交点における電流が、最も高い端子電圧を有するセルへの入力可能電流となる。これにより、入力可能電流が、充電可能電力演算部55により演算される。
【0032】
そして、充電可能電力演算部55は、バッテリ20の総内部抵抗に入力可能電流(IMAX)の2乗を乗じることで、充電可能電力を演算することができる。なお、充電可能電力の演算方法は、上記以外の方法であってもよい。充電可能電力演算部55は、演算した充電可能電力を指令値演算部59に出力する。
【0033】
図1に戻り、充電時間演算部56は、バッテリ20の状態、バッテリ20の充電時間及びバッテリの充電電力の対応関係を示すマップに基づいて、充電時間を演算する。また、充電時間演算部56は、当該マップを用いて、バッテリ20の充電時間に対するバッテリの充電電力の特性を演算し、制限充電電力演算部58に出力する。充電時間演算部56は、バッテリ20の状態を示す指標として、バッテリ20の温度に基づき、充電時間を演算する。バッテリ20の充電電力は、充電中、バッテリ20に実際に供給されている電力を示しており、電流検出部51の検出電流及び電圧検出部52の検出電圧により演算される値である。
【0034】
許容充電時間演算部57は、バッテリの充電時間の許容充電時間を演算し、制限充電電力演算部58に出力する。許容充電時間は、ユーザにより許容される充電時間あって、予め設定されている時間である。充電時間が極端に長い場合に、当該充電時間が経過するまで、ユーザを待たせることは、ユーザにとって不便である。そのため、本例は、ユーザの利便性等を鑑みて、ユーザにより許容される充電時間を予め実験等によって求めて設定し、許容充電時間演算部57に記録されている。なお、許容充電時間については、後述でも説明する。
【0035】
制限充電電力演算部58は、充電時間演算部56により演算された、バッテリ20の充電時間に対するバッテリの充電電力の特性と、許容充電時間演算部58により演算された許容充電時間に基づき、許容充電時間で、バッテリ20を充電する充電電力を、制限充電電力として演算し、指令値演算部59に出力する。制限充電電力は、許容充電時間でバッテリ20を充電する場合に、バッテリ20に実際に供給される充電電力の制限電力を示している。
【0036】
指令値演算部59は、充電可能電力演算部55により演算されたバッテリ20の充電可能電力と、充電器10の出力可能電力に基づいて、充電器10から出力される電力の指令値を演算する。また指令値演算部59は、バッテリ20の充電電力を、制限充電電力演算部58により演算された制限充電電力とするために、充電器10から出力される電力の指令値を演算する。
【0037】
充電器10の出力可能電力は、充電器10から出力可能な最大の出力電力を示しており、充電器10の定格電力に相当する。すなわち、出力可能電力は充電器10の能力に応じて予め設定されている値であり、充電器10の出力電力は、この出力可能電力以下に制限されている。充電器10には、出力可能電力が高い急速充電器と、急速充電器よりも出力可能電力が低い普通充電器がある。LBC50は、ケーブル等により、充電器10とバッテリ20との間の接続を確認すると、充電器10から送信される信号を受信し、充電器10の出力可能電力を取得する。
【0038】
指令値演算部59は、演算した出力電力の指令値を充電器10に送信する。充電器10は、指令値演算部59により送信されて指令値の電力を出力するよう、交流電源100の電力を変換して、バッテリ20に供給する。これにより、充電器10は、指令値演算部59の指令値に基づき制御され、バッテリ20が充電される。
【0039】
次に、LBC50の制御について説明する。LBC50は、充電時間を許容充電時間に限らず、バッテリ20を充電する制御と、許容充電時間演算部50で演算された許容充電時間に基づいてバッテリ20を充電する制御とを行う。まず、前者の通常の充電制御について説明する。
【0040】
LBC50は、ユーザ等の操作に基づき、充電器10によりバッテリ20の充電を開始する旨の信号を受信すると、バッテリ20の目標充電率を設定し、充電器10とバッテリ20との間の接続を確認して、充電制御を開始する。ここでは、目標充電率が満充電の充電率に設定されたとする。
【0041】
指令値演算部59は、充電器10から、充電器10の出力可能電力を取得する。また、充電器制御部57は、充電可能電力演算部55により演算された充電可能電力を取得する。そして、指令値演算部59は、出力可能電力と、充電可能電力とを比較し、その比較結果とバッテリ20の現在のSOCから、バッテリ20へ出力される充電器10の出力電力を演算する。
【0042】
本例のバッテリ20は車両等に搭載される二次電池であり、バッテリ20の電池容量は大きい。充電器10は、交流電源100の定格電力、充電器10のコンバータの昇圧等により、出力可能電力を上げるにも限界がある。そのため、バッテリ20のSOCが低い場合には、充電器10の出力可能電力が、バッテリ20の充電可能電力よりも低くなる。
【0043】
バッテリ20のSOCが高い場合には、バッテリ20への入力可能な電力が低くなる。そのため、バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力よりも低くなる。
【0044】
バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力以上である場合には、指令値演算部59は、充電器10から、充電器10の出力可能電力を出力させるよう、出力電力の指令値を演算し、充電器10に出力する。充電器10は、出力可能電力でバッテリ20を充電開始する。これにより、バッテリ20は定電力充電制御で充電される。
【0045】
一方、バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力未満である場合には、指令値演算部59は、充電器10から、バッテリ20の充電可能電力を出力させるよう、出力電力の指令値を演算し、充電器10に出力する。充電器10は、バッテリ20への出力電力が充電可能電力になるよう、出力電流を下げて、バッテリ20を充電する。また、指令値演算部59は、バッテリ20のSOCの上昇に伴い、充電器10の出力電力が下がるよう指令値を演算し、充電器10は当該指令値に基づき、出力電流を徐々にさげる。なお、出力電圧は一定のため、バッテリ20は定電圧充電制御で充電される。
【0046】
充電可能電力演算部55は、バッテリ20の充電中、電流検出部51等の検出値により、バッテリ20の充電可能電力を演算し、指令値演算部59に送信している。バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力より高い場合には、LBC50は、定電力充電制御で充電器10を制御する。一方、バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力より低い場合には、LBC50は、定電圧充電制御で充電器10を制御する。そして、SOC演算部54で演算されるSOCに基づき、バッテリ20が満充電の状態になると、LBC50はバッテリ20の充電を終了する。なお、バッテリ20の満充電では、例えば定電圧充電制御でバッテリ20を充電した場合には、バッテリ20の充電電流が、満充電を判定する電流閾値まで下がった時に、バッテリ20が満充電に達したと判定される。なお、満充電の判定は上記に限定されず、例えばSOC演算部54で演算されるSOCの時間あたりの増加量が所定値以下となったことによって満充電を判定してもよい。
【0047】
また、充電時間演算部56は、充電中、充電開始時のバッテリ20のSOCから満充電に相当するSOCまで充電する充電時間を演算する。充電時間演算部56には、バッテリ20の状態を示す電池温度、バッテリ20の充電時間及びバッテリ20の充電電力の対応関係を示すマップが予め記録されている。図3を用いて、充電時間演算部56のマップを説明する。図3は、マップを説明するための概要図である。
【0048】
図3に示すように、マップは、SOC及び電池温度に対する充電時間の相関関係を、充電電力毎に示した複数のマップである。充電時間は、対応するSOCから満充電に相当するSOCまで充電する時間である。例えば、現在の充電中のバッテリ20の充電電力(充電器10が出力している電力であり、バッテリ20を充電している電力)が50kWで、バッテリ20の温度が10度、バッテリ20のSOCが10%である場合には、充電時間演算部56は、図3のマップから、充電電力(50kW)のマップを抽出し、バッテリ20の温度(10度)及びSOC(10%)に対応する時間(70分)を、充電時間として演算する。LBC50は、充電時間演算部56により演算された充電時間を、車室内に設けられたディスプレイ(図示しない)に表示し、又は、ユーザの所有する携帯端末等に表示させるために、当該携帯電末に対して充電時間を含む信号を送信する。
【0049】
次に、許容充電時間に基づくバッテリ20の充電制御について説明する。許容充電時間演算部57には、図4に示すように、充電器10の出力可能電力、バッテリ20の電池温度及び許容充電時間の対応関係を示すマップが予め記録されている。図4を用いて、許容充電時間演算部57のマップを説明する。図4は、当該マップを説明するための概要図である。
【0050】
バッテリの20の温度と許容充電時間の関係について、基準となるバッテリ20の温度に対する充電許容時間に対し、バッテリ20の温度が高くなるほど許容充電時間は長くなるよう設定され、バッテリ20の温度が低くなるほど許容充電時間は長くなるよう設定されている。すなわち、許容充電時間が最も短くなる、バッテリ20の温度(図4においては0℃〜10℃)を中心として、バッテリ20が高温になるほど、許容充電時間は長くなり、バッテリ20が低温になるほど、許容充電時間は長くなるよう、許容充電時間は設定されている。
【0051】
マップで設定されている温度範囲は、バッテリ20の使用状態、バッテリ20の環境条件等に応じて、想定される温度範囲、または、当該想定される温度範囲よりも少し広い範囲に設定されている。
【0052】
そして、当該温度範囲の上限温度、又は、当該温度範囲の高い側の温度に対する許容充電時間は、バッテリ20の温度と副反応の起こり易さとの関係に基づいて設定されている。バッテリ20の副反応とは、例えば、バッテリ20の電解液の分解反応等のバッテリ20の劣化の原因となる反応である。そして、二次電池の性能として、電池の温度が高い状態で、高い充電電力で電池を充電すると、副反応が発生しやすくなり、バッテリ20の劣化が過度に進んでしまう。そして、一般的なユーザは、電池温度が高い場合には、バッテリ20の劣化を防ぐために、充電の際に、充電時間が長くなることを認識している。そのため、マップで設定する温度範囲のうち、より高温側の温度ほど、許容充電時間が長くなるように、設定されている。
【0053】
また、マップで設定する温度範囲の下限温度、又は、当該温度範囲の低い側の温度に対する許容充電時間は、バッテリ20の温度とバッテリ20の反応速度との関係に基づいて設定されている。二次電池の性能として、電池の温度が低くなるほど、電池内の反応速度が遅くなり、電池の内部抵抗が高くなってしまう。そのため、電池の温度が低い場合には、バッテリ20の充電電流を高くすることができず、充電に時間がかかってしまう。そして、一般的なユーザは、電池温度が低い場合には、充電時間が長くなることを認識している。そのため、マップで設定する温度範囲のうち、より低温側の温度ほど、許容充電時間が長くなるように、設定されている。
【0054】
次に、充電器10の出力可能電力と許容充電時間との関係について説明する。充電器10の出力可能電力が高いほど、充電時間が短くなることは、一般的なユーザにより認識されている事項である。そのため、充電器10の出力可能電力が高いほど、許容充電時間が短くなるよう設定されている。
【0055】
すなわち、図4のマップに設定される許容充電時間は上記を考慮して、充電時の充電電力がバッテリ20を過度に劣化させることが無い程度の充電電力となるように、言い換えるとバッテリ20を過度に劣化させることが無い程度に長い充電時間であって、且つ、ユーザに違和感を与えない程度の充電時間が温度と充電器10の出力可能電力とに応じて設定されている。
【0056】
また、図4のマップ上で設定されている出力可能電力の範囲は、普通充電の充電器(普通充電器)10の定格電力(出力可能電力)よりも高い範囲に設定されている。すなわち、図4のマップは、急速充電の充電器(急速充電器)10の定格出力(出力可能電力)と対応させたマップである。また、急速充電器の定格出力は、充電器10の種類に応じて異なるため、マップで設定する充電器出力(出力可能電力)は、充電器10の種類に応じて異なる出力可能電力を含む一定の範囲で設定されている。
【0057】
次に、許容充電時間とSOCとの関係について説明する。バッテリ10を充電し、SOCが満充電のSOCに近づくと、バッテリ20を充電する時間に対して、SOCの上昇率が低くなる。また、急速充電器を用いてバッテリ20を充電する場合には、バッテリ20への負荷を考慮して、上限の目標充電率(目標SOC)を、バッテリ20の満充電より低く設定している場合がある。このような場合には、許容充電時間は、満充電のSOCより低いSOCまで充電するまでの充電時間に設定されている。
【0058】
なお、上限の目標充電率(目標SOC)を、充電中の単位時間あたりのSOC上昇率が所定の上昇率よりも低くなる、予め定められた所定のSOCとし、許容充電時間は充電開始から、この予め定められた所定のSOCまで充電する時間を考慮して設定されていてもよい。すなわち、SOCの上昇率が所定の上昇率よりも高いSOCの領域でのみ充電することで、許容充電時間を極力短く設定し、充電時間が長いというユーザの不満を抑えることができる。
【0059】
上記のとおり、許容充電時間は、ユーザにより許容される充電時間を、バッテリ20の状態、充電器10の出力可能電力の条件毎に設定する。また、充電時間を設定する際の目標充電率を、満充電よりも低い充電率に設定することで、充電時間に対して充電効率が高い領域で充電し、長い充電時間をかけて満充電まで充電することでユーザに対して違和感を与えないような、許容充電時間が設定されている。
【0060】
LBC50は、充電器10とバッテリ20との間の接続を確認して、充電制御を開始すると、まず充電器10の出力可能電力を取得する。LBC50は、充電器10の出力可能電力が、図4のマップで設定する充電器出力(出力可能電力)の範囲内にあるか否かを判定する。出力可能電力が、マップで設定する出力可能電力範囲でない場合には、LBC50は充電器10が普通充電器であると判定して、上記の通常の充電制御を行う。
【0061】
一方、充電器10の出力可能電力が、図4のマップで設定する充電器出力(出力可能電力)の範囲内にある場合には、LBC50は、許容充電時間演算部57により許容充電時間を演算する。
【0062】
許容充電時間演算部57は、充電器10の出力可能電力、温度検出部53により検出されるバッテリ20の温度、及び、充電開始時のSOCを取得する。許容充電時間演算部57は、図4のマップを参照し、出力可能電力、電池温度及びSOCに対応する充電時間を、許容充電時間として演算し、制限充電電力演算部58に出力する。
【0063】
また、充電器10の出力可能電力が、図4のマップで設定する充電器出力の範囲内にある場合には、充電時間演算部56は、バッテリ20の温度及びSOCを取得する。そして、充電器時間演算部56は、充電電力毎のマップで、バッテリ20の温度及びSOCに対応する充電時間をそれぞれ抽出し、充電電力と充電時間との特性(相関関係)を演算し、演算結果を制限充電電力演算部58に出力する。
【0064】
制限充電電力演算部58は、充電時間演算部56で演算された充電電力と充電時間との特性、及び、許容充電時間演算部57で演算された許容充電時間に基づいて、制限充電電力を演算する。
【0065】
図5は、充電時間と充電時間との特性、及び、許容充電時間の関係を示すグラフである。充電時間と充電時間との特性はグラフaで示されている。許容充電時間(To)は、図4のマップにより演算される一義的な値であるため、一定値で表される。一方、充電時間及び充電電力の特性は、図3に示す各マップからそれぞれ抽出された値を、近似的な曲線で結ぶことで導出され、曲線で示される。
【0066】
そして、充電時間及び充電電力の特性と、許容充電時間(To)の特性との交点に相当する電力が、制限充電電力(Po)となる。そして、制限充電電力演算部58は、指令値演算部59に制限充電電力(Po)を出力する。指令値演算部59は、バッテリ20の充電電力を制限充電電力(Po)とする、充電器10の出力電力の指令値を演算し、充電器10に出力する。
【0067】
LBC50は、制限充電電力(Po)でバッテリ20を充電中、SOC演算部54により、バッテリ20のSOCを管理している。指令値演算部59は、バッテリ20のSOCの上昇に伴い、充電器10の出力電力が制限充電電力(Po)より下がるよう指令値を演算し、充電器10は当該指令値に基づき、出力電流を徐々にさげる。そして、バッテリ20が目標SOCに達すると、LBC50はバッテリ20の充電を終了する。なおここで、センサ誤差等による制御上の誤差等で許容充電時間が経過しても充電が終了しない場合を考慮して、バッテリ20が目標SOCに達する前であっても、許容充電時間が経過した場合には充電を終了することが好ましい。この場合、バッテリ20は目標SOCよりも低いSOCまでしか充電されないが、その差は制御的な誤差範囲であり、バッテリ20は目標SOCに略等しいSOCまで充電されているため問題は無い。
【0068】
これにより、バッテリ20の充電電力を制限充電電力にして、バッテリ20を充電した場合には、バッテリ20が過度に劣化するほど、バッテリ20の温度が上昇することなく、バッテリ20の充電を許容充電時間で終了させることができる。
【0069】
ここで、充電時間と温度との関係、及び、充電時間と電池温度との関係について、図6を用いて説明する。図6(a)は充電時間に対する充電電力の特性を示すグラフであり、(b)は充電時間に対する電池温度の特性を示すグラフである。図6(a)、(b)のグラフaは本発明の特性を示し、グラフbは本発明とは異なり温度のみに基づいて充電電力を設定した場合の特性(比較例1)を示し、グラフcは本発明とは異なり温度や充電時間の制限を設けず、充電器10の最大出力(Pc)で充電した場合の特性(比較例2)を示すグラフである。電力(Pe)は、満充電の判定の閾値であって、定電流制御において、バッテリ20の満充電を判定するための電流閾値に相当する。なお、グラフa、bに示す本発明及び比較例において、充電開始時の電池温度、SOC及び目標充電率は同じとする。また、使用する充電器10の出力可能電力も同じ電力とする。
【0070】
本例では、許容充電時間を演算して、許容充電時間で充電を終わらせるよう、充電電力を設定しているため、充電時間に対する充電電力の特性は、グラフaのようになる。一方、比較例1では、温度のみに基づいて充電電力を設定しており、充電中、電池温度がほとんど上がらないように、充電電力を設定するため、充電開始時の充電電力(Pb)が本発明の電力(Po)よりも低くなる。そして、充電電力が低い分、比較例1の充電時間(Tb)は、本発明の充電時間(To)と比較して長くなる。また、比較例2の充電時間(Tc)は、本発明の充電時間(To)と比較して短くなる。
【0071】
電池温度について、充電終了時のバッテリの温度は、充電電力が高い分、本発明の電池温度(to)は比較例1の電池温度(tb)よりも高い。そして、比較例2の電池温度(tc)は電池温度(to)よりも高い。
【0072】
バッテリ20の充電中に、バッテリ20に加わる熱量は、バッテリ20の内部抵抗(R)に、充電電流(I)の2乗の値を乗算した値に相関する。そのため、グラフa、bと比較すると、バッテリ20の充電電流を下げたとしても、電池温度の低下分は、それほど大きくなく、むしろ、充電時間が長くなる。言い換えると、比較例1に対して本発明のように、許容充電時間でバッテリ20の充電を終了させるために、バッテリ20の充電電流を上げたとしても、電池温度の上昇分は小さく、充電時間をより短くすることができる。
【0073】
さらに、図7を用いて、充電電力、充電時間及び電池温度との関係について、説明する。図7は充電時間に対する充電電力の特性を示すグラフである。図7のグラフaは本発明の特性を示し、グラフdは本発明とは異なり、許容充電時間より短い充電時間に基づいて充電電力を設定した場合の特性(比較例3)を示す。電力(Pe)は、満充電の判定の閾値である。なお、グラフa、dに示す本発明及び比較例において、充電開始時の電池温度、SOC及び目標充電率は同じとする。また、使用する充電器10の出力可能電力も同じ電力とする。
【0074】
比較例3は、充電時間を、許容充電時間(To)より短い時間(Td)に設定している分、充電電力(Pd)は制限充電電力(Po)よりも高くなっている。そして、比較例3では、充電電力(Pd)が制限充電電力(Po)より高いため、充電中の電池の温度が、本発明よりも高くなり、電池の劣化が過度に進む可能性がある。
【0075】
上記のように、本例は、許容充電時間に基づいて制限充電電力(Po)を演算して、バッテリ20を充電する際の、充電器10の出力電力を制御しているため、バッテリ20の温度と充電時間とを両立させて、バッテリ20の温度上昇による電池劣化を極力抑えつつ、ユーザに対して違和感を与えない充電時間でバッテリ20を充電することができる。
【0076】
次に、図8を用いて、LBC50の充電制御について説明する。図8はLBC50の充電制御の制御手順を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS1にて、LBC50は、充電器10からの信号に基づき、充電器10の出力可能電力を検出する。ステップS2にて、LBC50は、充電器10の出力可能電力がマップ(図4のマップ)で設定する設定電力の範囲内にあるか否かを判定する。充電器10の出力可能電力がマップの設定電力の範囲外である場合には、ステップS20にて、LBC50は充電時間を許容充電時間に限らない、通常の充電制御を行う。
【0078】
一方、充電器10の出力可能電力がマップの設定電力の範囲内にある場合には、ステップS3にて、温度検出部53はバッテリ20の温度を検出する。ステップS4にてSOC演算部54はバッテリ20のSOCを演算する。ステップS5にて、許容充電時間演算部57は、ステップS1の出力可能電力、ステップS3のバッテリ20の温度及びステップS4のSOCに基づいて、図4マップを参照して、許容充電時間を演算する。
【0079】
ステップS6にて、充電時間演算部56は、ステップS3の電池温度及びステップS4のSOCに基づいて、図3のマップを参照し、充電電力−充電時間特性を演算する。ステップS7にて、制限充電電力58は、許容充電時間及び充電電力−充電時間特性に基づいて、制限充電電力を演算する。
【0080】
ステップS8にて、指令値演算部59は、制限充電電力に基づき、充電器10の出力電力の指令値を演算し、充電器10に出力することで、バッテリ10の充電を開始させる。ステップS9にて、バッテリ20の充電中、電流検出部51及び電圧検出部53は、バッテリ20の電流及び電圧を検出する。
【0081】
ステップS10にて、LBC50は、ステップS9の検出電圧及び検出電流に基づいて、充電器10を制御し、バッテリ20の充電電力を制御する。ステップS11にて、LBC50は、バッテリ20の充電電流が、満充電を示す電流閾値(満充電の判定の電流閾値)以下であるか否かを判定する。
【0082】
バッテリ20の充電電流が電流閾値より高い場合には、ステップS9に戻り、バッテリ20の充電が継続される。一方、バッテリ20の充電電流が電流閾値以下である場合には、指令値演算部59は、充電器10に対して充電終了の指令値を出力する。そして、本例の充電制御を終了する。
【0083】
上記のように、本例は、バッテリ20の状態及びバッテリ20の充電時間に対応するバッテリ20の充電電力の関係を示すマップ(図3のマップに相当)を参照して、許容充電時間でバッテリ20を充電する充電電力を設定し、許容充電時間に基づき設定された充電電力で、充電器10の出力電力を制御する。これにより、電池の劣化を極力抑制しながら、ユーザに違和感を与えない充電時間で、バッテリ20を充電することができる。
【0084】
また本例は、バッテリ20の温度に応じて、許容充電時間を演算する。ユーザは温度条件に応じた充電時間を目安として認識している。そのため、バッテリ20の温度条件に対して、ユーザに違和感を与えない充電時間でバッテリ20を充電し、かつ、温度上昇に伴うバッテリの劣化を抑制することができる。
【0085】
また本例は、バッテリ20の温度が所定の温度より高いほど、許容充電時間を長く、バッテリ20の温度が当該所定の温度より低いほど、許容充電時間を長くするように、設定されている。上記のとおり、バッテリ20の温度が高すぎると、充電時間は長くなり、また、バッテリ20の温度が低すぎても、充電時間は長くなる。そのため、この特性に応じた許容充電時間を演算することができるため、電池の劣化を極力抑制しながら、ユーザに違和感を与えない充電時間で、バッテリ20を充電することができる。
【0086】
また、本例は、バッテリ20の上限温度に対する許容充電時間を、バッテリ温度とバッテリ20の副反応の起こり易さとの関係に基づいて設定し、また、バッテリ20の下限温度に対する許容充電時間を、バッテリ温度とバッテリ20の反応速度との関係に基づいて設定する。これにより、バッテリ20の上限温度及び下限温度に対する、それぞれの許容充電時間を、バッテリ20の性質に基づく、適切な時間に設定することができる。その結果として、ユーザに違和感を与えない充電時間で、バッテリ20を充電することができる。
【0087】
また本例は、充電器10の出力可能電力に応じて、許容充電時間を演算する。ユーザは充電器10の定格電力に応じた充電時間を目安として認識している。そのため、バッテリ20の出力可能電力の条件に対して、ユーザに違和感を与えない充電時間でバッテリ20を充電し、かつ、温度上昇に伴うバッテリの劣化を抑制することができる。
【0088】
また本例は、出力可能電力が所定の電力より高い充電器10の出力可能電力と、許容充電時間との関係を示すマップ(図4のマップに相当)に基づいて、許容充電時間を演算する。これにより、所定の電力より出力可能電力が高い充電器10で充電する際に、許容充電時間で充電を終わらせることができる。急速充電器等の出力可能電力が高い充電器では、バッテリ20の充電電力も高く、バッテリ20が高温になり易い。その一方で、SOCが高い領域では、充電時間をかけて、充電を行ってもSOCの上昇率は低い。そのため、マップ上の目標SOCを満充電より低いSOCに設定し、設定されたSOCまでに充電する充電時間を許容充電時間と設定することで、充電時間を短くしつつ、バッテリ20の温度上昇に伴う劣化を抑制することができ、ユーザに違和感を与えない充電時間でバッテリ20を充電することができる。
【0089】
また本例は、出力可能電力が高いほど、充電時間を短くする。ユーザは充電器10の定格電力が高いほど、充電時間が短くなることを認識している。そのため、バッテリ20の出力可能電力の条件に対して、ユーザに違和感を与えない充電時間でバッテリ20を充電し、かつ、温度上昇に伴うバッテリの劣化を抑制することができる。
【0090】
また本例は、SOCに応じて充電時間を演算し、SOCが高いほど許容充電時間を短くする。ユーザはSOCに応じた充電時間を目安として認識している。そのため、バッテリ20のSOCの条件に対して、ユーザに違和感を与えない充電時間でバッテリ20を充電し、かつ、温度上昇に伴うバッテリの劣化を抑制することができる。
【0091】
なお、本例において、許容充電時間演算部57に記録されるマップの充電器出力は、急速充電の充電器10の出力可能電力に対応させたが、必ずしも急速充電器の出力に対応させる必要はなく、普通充電の充電器10の出力と対応させてもよい。
【0092】
また、図3に示すマップは、バッテリ20を満充電の状態にする際の、マップを示したが、目標充電率毎にマップを設けてもよい。
【0093】
また、本発明の変形例として、図9に示すように、LBC50は、上記構成の他に、車両位置検出部60、メモリ61及び出力可能電力演算部62を有している。図9は、変形例に係る充電システムのブロック図である。
【0094】
車両位置検出部60は、GPSシステム(グローバルポジションシステム)を利用して、GPS衛星と通信を行い、車両の位置を検出する。メモリ61は、地図データ及び地図データ上の施設等の位置と施設情報(POI情報)等を記録する記録媒体である。メモリ61には、外部施設の充電器10の位置と、当該充電器10の出力可能電力が対応づけて記録されている。
【0095】
出力可能電力取得部62は、メモリ61に記録されているデータを参照し、車両位置検出部60で検出された車両の検出位置に対応する充電器10(使用中、または、使用しようとしている充電器)を特定し、特定された充電器10の出力可能電力を抽出することで、出力可能電力を取得し、許容充電時間演算部57及び指令値演算部59に出力する。そして、許容充電時間演算部57は、出力可能電力取得部62で取得された出力可能電力に基づいて許容充電時間を演算し、指令値演算部59は当該許容充電時間に基づき指令値を演算する。これにより、本例は、充電器10から出力可能電力を含む信号を受信しなくても、使用する充電器10の出力可能電力を取得することができる。
【0096】
上記温度検出部53が本発明の温度検出手段に相当し、SOC演算部54が本発明の「充電状態演算手段」に、許容充電時間演算部57が本発明の「許容充電時間演算手段」に、制限充電電力演算部58及び指令値演算部59が本発明の「充電器制御手段」に相当し、車両位置検出部60が本発明の「位置検出手段」に、メモリ61が本発明の「記録手段」に相当する。
【符号の説明】
【0097】
10…充電器
20…バッテリ
50…LBC
51…電流検出部
52…電圧検出部
53…温度検出部
54…SOC演算部
55…充電可能電力演算部
56…充電時間演算部
57…許容充電時間演算部
58…制限充電電力演算部
59…指令値演算部59
60…車両位置検出部
61…メモリ
62…出力可能電力演算部
100…交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9