特許第5994943号(P5994943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994943
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】車両用電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20160908BHJP
   H01H 50/30 20060101ALI20160908BHJP
   H01H 50/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   B60L3/04 E
   H01H50/30 B
   H01H50/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-525121(P2015-525121)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2014065695
(87)【国際公開番号】WO2015001941
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-141458(P2013-141458)
(32)【優先日】2013年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】清田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】田中 良幸
(72)【発明者】
【氏名】井口 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 弘明
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−238632(JP,A)
【文献】 特開2007−118797(JP,A)
【文献】 特開2006−136095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
H01H 50/04
H01H 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧回路の接続/遮断を行う2個の接点可動式の第1リレーと第2リレーが配置された車両用電源システムにおいて、
前記第1リレーと前記第2リレーを配置する際、第1可動接点と第2可動接点が接続/遮断に伴って移動する方向が互いに対向方向となるように配置し、且つ、前記第1リレーと前記第2リレーのうち一方のリレーを、車両衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置した
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用電源システムにおいて、
前記車両衝突時に最も加速度入力がかかる方向を車両前後方向とし、前記第1リレーと前記第2リレーのうち一方のリレーを、車両前後方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置した
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された車両用電源システムにおいて、
前記高電圧回路は、高電圧バッテリと、ジャンクションボックスと、インバータと、モータ/ジェネレータを、ハーネスを介して接続することで構成した電動車両の走行モータ電源回路であり、
前記第1リレーと前記第2リレーは、前記ジャンクションボックスに設けられ、前記高電圧バッテリのプラス側とマイナス側にそれぞれ1個ずつ配置した
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載された車両用電源システムにおいて、
前記第1リレーと前記第2リレーに、車両衝突を感知するとリレー遮断制御を行う衝突対応制御手段を接続した
ことを特徴とする車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧回路の接続/遮断を行う2個の接点可動式の第1リレーと第2リレーが配置された車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両衝突時、衝突センサで衝突を感知すると、2個のシステムメインリレーを遮断する制御を行う車両用電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−136095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用電源装置にあっては、2個のシステムメインリレーの可動接点が移動する方向が同じ車幅方向であり、可動接点の通電移動方向と遮断移動方向も互いに同じ方向に一致させて配置されている。このため、衝突制御により2個のシステムメインリレーの電磁力をOFFにし、高電圧回路を遮断したとしても、衝突時にばね力に打ち勝つ大きな加速度入力が加わった際、2つの可動接点を同じ方向に動かして通電させてしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、衝突時、2つのリレーが同時に通電することを防止可能な車両用電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、高電圧回路の接続/遮断を行う2個の接点可動式の第1リレーと第2リレーが配置されている。
この車両用電源システムにおいて、前記第1リレーと前記第2リレーを配置する際、第1可動接点と第2可動接点が接続/遮断に伴って移動する方向が互いに対向方向となるように配置し、且つ、前記第1リレーと前記第2リレーのうち一方のリレーを、車両衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置した。
【発明の効果】
【0007】
よって、車両衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対し、第1リレーと第2リレーのうち一方のリレーの可動接点が固定接点から離れる向きに配置され、他方のリレーの可動接点が固定接点に接する向きに配置されることになる。
すなわち、車両衝突時に最も加速度入力がかかる方向が、例えば、車両前後方向である場合、前突時に両リレーを遮断すると、車両前方からの加速度入力により一方のリレーの可動接点が固定接点から離れたままとなり、高電圧回路の遮断が確保される。また、後突時に両リレーを遮断すると、車両後方からの加速度入力により他方のリレーの可動接点が固定接点から離れたままとなり、高電圧回路の遮断が確保される。このように、車両衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対し、1つのリレーを可動接点が離れる向きに配置することにより、車両衝突時、2つのリレーが同時に通電することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の電動車両用走行モータ電源システム(車両用電源システムの一例)を示す全体システム図である。
図2】実施例1の電動車両用走行モータ電源システムの高電圧回路に用いられるジャンクションボックスの一例を示す斜視図である。
図3】実施例1のジャンクションボックスに用いられる接点可動式のリレー構成の一例を示す遮断状態断面図である。
図4】実施例1のジャンクションボックスに用いられる接点可動式のリレー構成の一例を示す接続状態断面図である。
図5】比較例におけるリレー配置の課題を示す課題説明図である。
図6】実施例1の電動車両用走行モータ電源システムにおけるリレー作用を示すリレー作用説明図である。
図7】2個のリレーの配置を実施例1とは異ならせた第1の配置例を示すリレー配置説明図である。
図8】2個のリレーの配置を実施例1とは異ならせた第2の配置例を示すリレー配置説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両用電源システムを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1における電動車両用走行モータ電源システム(車両用電源システムの一例)の構成を、[全体システム構成]、[2個のリレーの配置構成とリレー構成]に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の電動車両用走行モータ電源システムを示す。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
【0012】
前記電動車両用走行モータ電源システムは、ハイブリッド車両や電気自動車等の電動車両に搭載された走行モータの電源システムとして適用される。このシステムは、図1に示すように、高電圧バッテリ1と、ジャンクションボックス2と、インバータ3と、モータ/ジェネレータ4と、を備えている。そして、これらの構成要素1,2,3,4を、ハーネス5,6,7を介して接続することで高電圧回路8を構成している。
【0013】
前記高電圧バッテリ1は、モータ/ジェネレータ4の電源として搭載された二次電池であり、例えば、多数のセルを積層したセルモジュールを、バッテリパックケース内に設定したリチウムイオンバッテリ等が用いられる。
【0014】
前記ジャンクションボックス2は、高電圧バッテリ1とインバータ3の間に介装され、強電の供給/遮断/分配を行うリレー回路を集約させている。このジャンクションボックス2には、高電圧回路8を接続/遮断する接点可動式の第1リレー21と第2リレー22が設けられる。そして、第1リレー21と高電圧バッテリ1の+側は、バッテリハーネス5(+)により接続される。第2リレー22と高電圧バッテリ1の−側は、バッテリハーネス5(-)により接続される。
【0015】
前記インバータ3は、ジャンクションボックス2とモータ/ジェネレータ4の間に介装され、高電圧バッテリ1の放電によりモータ/ジェネレータ4を駆動する力行時、DCハーネス6(+),6(-)からの直流を、ACハーネス7(u),7(v),7(w)への三相交流に変換する。また、モータ/ジェネレータ4での発電により高電圧バッテリ1を充電する回生時、ACハーネス7(u),7(v),7(w)からの三相交流をDCハーネス6(+),6(-)への直流に変換する。
【0016】
前記モータ/ジェネレータ4は、三相交流の永久磁石型同期モータであり、力行時、ステータコイルに対しACハーネス7(u),7(v),7(w)を介して三相交流が印加され、回生時、ステータコイルにより発生した三相交流を、ACハーネス7(u),7(v),7(w)を介してインバータ3へ送る。
【0017】
前記高電圧回路8には、プラス側に第1リレー21を配置し、マイナス側に第2リレー22を配置するというように、それぞれ1個ずつの合計2個のリレー21,22が配置されている。これは、2個のリレー21,22が、共にONになって初めて通電する回路とすることで、2個のリレー21,22のうち、どちらか一方が固着した場合でも、回路遮断ができるようにしている。
【0018】
前記第1リレー21と第2リレー22の制御系として、衝突センサ9と、他のセンサ・スイッチ類10と、コントローラ11と、駆動回路12と、を備えている。
【0019】
前記第1リレー21と第2リレー22は、それぞれ第1固定接点21a,第1可動接点21b,第1コイル21cと、第2固定接点22a,第2可動接点22b,第2コイル22cを有する。なお、詳しいリレー構成の説明は後述する。
【0020】
前記衝突センサ9は、前後Gセンサ等が用いられ、センサ値が衝突閾値を超えることで前突発生や後突発生を検出する。他のセンサ・スイッチ類10は、第1リレー21と第2リレー22の接続/遮断の必要情報を検出する。
【0021】
前記コントローラ11は、衝突センサ9からのセンサ値が衝突閾値を超えることで衝突直前であると判断されたとき、第1リレー21と第2リレー22を遮断する指令を出力する衝突対応制御を行う。駆動回路12は、コントローラ11から第1リレー21と第2リレー22を遮断する指令を入力すると、コイル21c,22cへ流していた駆動電流を遮断する。
【0022】
[2個のリレーの配置構成とリレー構成]
図2は、高電圧回路8に用いられるジャンクションボックス2の一例を示す。以下、図2に基づき、2個の第1リレー21と第2リレー22の配置構成を説明する。
【0023】
前記第1リレー21と前記第2リレー22を配置する際、第1リレー21と第2リレー22が車両前後方向に離れた配置にすると共に、車幅方向に一部をオーバーラップさせてずらした配置にしている。そして、下記の(a),(b)の配置条件が共に成立する配置にしている。
【0024】
(a) 第1可動接点21bと第2可動接点22bが接続/遮断に伴って移動する方向が互いに対向方向となるように配置する。
すなわち、第1リレー21の第1可動接点21bの移動方向は、図2に示すように、遮断→通電に伴って移動する方向が車両前方であり、通電→遮断に伴って移動する方向が車両後方である。これに対し、第2リレー22の第2可動接点22bの移動方向は、図2に示すように、遮断→通電に伴って移動する方向が車両後方であり、通電→遮断に伴って移動する方向が車両前方である。
【0025】
(b) 第1リレー21と第2リレー22のうち一方のリレーを、衝突時に最も加速度入力がかかる方向として実施例1にて選択された車両前後方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置する。
すなわち、車両後方に向かって衝撃力が入力される前突時には、図2に示すように、第2リレー22の第2可動接点22bが第2固定接点22aへ接する向きであるのに対し、第1リレー21の第1可動接点21bを第1固定接点21aから離れる向きに配置する。車両前方に向かって衝撃力が入力される後突時には、図2に示すように、第1リレー21の第1可動接点21bが第1固定接点21aへ接する向きであるのに対し、第2リレー22の第2可動接点22bを第2固定接点22aから離れる向きに配置する。
【0026】
前記第1リレー21の詳細な構成を、図3及び図4に基づき説明する。
前記第1リレー21は、図3及び図4に示すように、第1固定接点21a、第1可動接点21b、第1コイル21c、第1固定鉄芯21d、第1可動鉄芯21e、第1復帰ばね21fと、を備えている。
【0027】
前記第1コイル21cは、ヨーク21gに内装したボビン21hに巻装され、ボビン21hの内径側には鉄芯ケース21iを嵌装配置してある。鉄芯ケース21iは有底筒状に形成してあり、その上端部内に第1固定鉄芯21dを配設してある。
【0028】
前記第1可動鉄芯21eは、第1コイル21cの励磁により第1固定鉄芯21dと共に磁化されるもので、鉄芯ケース21i内で第1固定鉄芯21dの下方に上下方向に摺動可能に配置して、第1固定鉄芯21dと軸方向に対向して接・離可能としてある。この第1固定鉄芯21dと第1可動鉄芯21eの各対向面中央部には、座ぐり部が形成され、第1復帰ばね21fはこれらの座ぐり部間に弾装固定してある。
【0029】
前記第1可動鉄芯21eの中心部にはロッド21jを一体に立設している。このロッド21jは第1固定鉄芯21dの中心部およびヨーク21gの上部端板を貫通し、該上部端板に固設したシールドケース21k内に突出している。
【0030】
前記第1固定接点21aは、シールドケース21kの上壁を上下方向に貫通して配設してある。一方、第1可動接点21bは、シールドケース21k内において第1固定接点21aと対向配置され、ロッド21jの上端部に接点圧付加ばね21mにより弾性支持して配設してある。具体的には、第1可動接点21bは、ロッド21jの上端末のストッパー21nと、接点圧付加ばね21mとにより上下方向に可動的に弾性挟持され、接点圧付加ばね21mは、ロッド21jに設けたスプリングシート21o(ゴムダンパ21pにより弾性支持)と第1可動接点21bとの間に弾装してある。
【0031】
ここで、上述のように構成された第1リレー21では、第1コイル21cに通電して第1コイル21cに磁力が発生すると、第1固定鉄芯21dと第1可動鉄芯21eが磁化され、両鉄芯21d,21eが互いに引き合う。これにより第1可動鉄芯21eと一体に第1可動接点21bが軸方向移動し、第1固定接点21aと接触することで、図3の遮断状態から図4の接続状態へと移行することで高電圧回路8を接続する。
【0032】
一方、第1コイル21cへの通電を停止して第1コイル21cが消磁すると、第1固定鉄芯21dと第1可動鉄芯21eの磁化が直ちに解消され、第1復帰ばね21fのばね力によって、両鉄芯21d,21eが相互に開離する。これにより第1可動鉄芯21eと一体に第1可動接点21bが軸方向移動し、第1固定接点21aから開離し、図4の接続状態から図4の遮断状態へと移行することで高電圧回路8を切断する。なお、第2リレー22の構成は、第1リレー21と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0033】
次に、作用を説明する。
実施例1の電動車両用走行モータ電源システムにおける衝突時の高電圧回路遮断作用を、図5及び図6に基づき説明する。
【0034】
例えば、図5に示すように、加速度入力方向とリレーの可動接点が固定接点に接触する方向が一致している場合を比較例とする。
この比較例の場合、衝突対応制御により衝突前にリレーの電磁力をOFFにし、高電圧回路を遮断していたとする。しかし、衝突時にばね力に打ち勝つ大きな加速度入力が加わると、可動接点を固定接点に向かう方向に動かして接触し、高電圧回路を通電させてしまう。
このように、衝突時に高電圧回路を通電させてしまうと、衝撃力により高電圧を通電している状態でのハーネス断線等が発生してしまう。
【0035】
これに対し、実施例1では、第1リレー21と第2リレー22を配置する際、第1可動接点21bと第2可動接点22bが接続/遮断に伴って移動する方向が互いに対向方向となるように配置する。そして、第1リレー21と第2リレー22のうち一方のリレーを、衝突時に最も加速度入力がかかる車両前後方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置する構成を採用した。
【0036】
よって、衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対し、第1リレー21と第2リレー22のうち一方のリレーの可動接点が固定接点から離れる向きに配置され、他方のリレーの可動接点が固定接点に接する向きに配置されることになる。
【0037】
すなわち、前突時に衝突対応制御により両リレー21,22を遮断すると、図6に示すように、車両前方からの加速度入力により第1リレー21の第1可動接点21bが第1固定接点21aから離れたままとなる。なお、このとき第2リレー22の第2可動接点22bは、加速度入力により第2固定接点22aに向かって移動して接続状態になる。したがって、車両前方からの加速度入力がある前突時には、両リレー21,22のうち、第1リレー21の遮断が車両前方からの加速度入力にかかわらず維持されることで、高電圧回路8の遮断が確保される。
【0038】
また、後突時に衝突対応制御により両リレー21,22を遮断すると、図6とは反対方向である車両後方からの加速度入力により第2リレー22の第2可動接点22bが第2固定接点22aから離れたままとなる。なお、このとき第1リレー21の第1可動接点21bは、加速度入力により第1固定接点21aに向かって移動して接続状態になる。したがって、車両後方からの加速度入力がある後突時には、両リレー21,22のうち、第2リレー22の遮断が車両後方からの加速度入力にかかわらず維持されることで、高電圧回路8の遮断が確保される。
【0039】
このように、衝突時に最も加速度入力がかかる車両前後方向に対し、両リレー21,22のうち、1つのリレーを可動接点が離れる向きに配置することにより、衝突時、2つのリレー21,22が同時に通電することが防止され、確実な高電圧回路8の遮断が可能になる。この結果、前突時、或いは、後突時、高電圧回路8を遮断することができ、衝突直前に高電圧回路8を遮断するという衝突対応制御の実効を図ることができる。
【0040】
次に、効果を説明する。
実施例1の電動車両用走行モータ電源システムにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0041】
(1) 高電圧回路8の接続/遮断を行う2個の接点可動式の第1リレー21と第2リレー22が配置された車両用電源システム(電動車両用走行モータ電源システム)において、
前記第1リレー21と前記第2リレー22を配置する際、第1可動接点21bと第2可動接点22bが接続/遮断に伴って移動する方向が互いに対向方向となるように配置し、且つ、前記第1リレー21と前記第2リレー22のうち一方のリレーを、衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置した(図6)。
このため、衝突時、2つのリレーが同時に通電することを防止できる。
【0042】
(2) 前記衝突時に最も加速度入力がかかる方向を車両前後方向とし、前記第1リレー21と前記第2リレー22のうち一方のリレーを、車両前後方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置した(図6)。
このため、(1)の効果に加え、前突時と後突時の両方の衝突に対し、高電圧回路8を遮断することができる。
【0043】
(3) 前記高電圧回路8は、高電圧バッテリ1と、ジャンクションボックス2と、インバータ3と、モータ/ジェネレータ4を、ハーネス5,6,7を介して接続することで構成した電動車両の走行モータ電源回路であり、
前記第1リレー21と前記第2リレー22は、前記ジャンクションボックス2に設けられ、前記高電圧バッテリ1のプラス側とマイナス側にそれぞれ1個ずつ配置した(図1)。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、衝突時、電動車両の走行モータ電源回路における高電圧回路8を遮断することができる。
【0044】
(4) 前記第1リレー21と前記第2リレー22に、車両衝突を感知するとリレー遮断制御を行う衝突対応制御手段(コントローラ11)を接続した(図1)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、衝突直前に高電圧回路8を遮断するという衝突対応制御の実効を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の車両用電源システムを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0046】
実施例1では、第1リレー21と第2リレー22の配置として、車両前後方向に離れた配置にすると共に、車幅方向に一部をオーバーラップさせてずらした配置とする例を示した。しかし、第1リレー21と第2リレー22の配置としては、図7に示すように、車両前後方向に重なり合う配置にすると共に、車幅方向に並べた配置とする例としても良い。また、第1リレー21と第2リレー22の配置としては、図8に示すように、車両前後方向に並べた配置にすると共に、車幅方向に重なり合う配置にする例であっても良い。要するに、第1リレーと第2リレーを配置する際、第1可動接点と第2可動接点が接続/遮断に伴って移動する方向が互いに対向方向となるように配置し、且つ、第1リレーと第2リレーのうち一方のリレーを、衝突時に最も加速度入力がかかる方向に対して可動接点が固定接点から離れる向きに配置するものであれば本発明に含まれる。
【0047】
実施例1では、衝突時に最も加速度入力がかかる方向を車両前後方向とし、第1リレー21と第2リレー22を配置する例を示した。しかし、衝突時に最も加速度入力がかかる方向としては、衝突時に最も加速度入力がかかる方向を車幅方向として側方からの衝突に対応させる例としても良いし、衝突時に最も加速度入力がかかる方向を車両前後方向と車幅方向の中間方向とし、前方からの衝突、後方からの衝突、側方からの衝突、オフセット衝突等に対応させる例としても良い。
【0048】
実施例1では、第1リレー21と第2リレー22に、車両衝突を感知するとリレー遮断制御を行うコントローラ11を接続する例を示した。しかし、第1リレー21と第2リレー22に、衝突対応制御手段を接続しないものであっても良い。すなわち、衝突時、第1リレー21と第2リレー22が共に接続状態にあっても、衝突による加速度入力により一方のリレーの可動接点を固定接点から離し、高電圧回路を遮断することができる。
【0049】
実施例1では、本発明の車両用電源システムを、電動車両用走行モータ電源システムに適用する例を示した。しかし、本発明の車両用電源システムは、ハイブリッド車両や電気乗車等に搭載される電動車両用走行モータ電源システム以外であっても、接続/遮断を行う2個の接点可動式の第1リレーと第2リレーが配置された高電圧回路を備えた車両に対して適用することができる。
【関連出願の相互参照】
【0050】
本出願は、2013年7月5日に日本国特許庁に出願された特願2013−141458に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8