(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド部材は、前記第一案内レール、前記中間案内レール及び前記第二案内レールに沿って転動可能なガイドローラと、前記ガイドローラを支持するローラブラケットと、を備え、前記ローラブラケットは、前記搬送台車に鉛直軸回りに回動自在に取り付けられている請求項2に記載の搬送システム。
前記搬送台車の走行輪は、前記第一走行路及び前記第二走行路の相対移動により前記中間走行路に生じる軌間距離の最小値及び最大値に対応した横幅を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の搬送システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。この説明で用いる寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定しない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付すことにより重複した説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
本発明の第一実施形態に係る搬送システム1は、
図1A及び
図1Bに示したように、互いに相対移動可能に間隔Cを隔てて配置された第一床F1と第二床F2との間で荷物を搬送する搬送システムであって、第一床F1に固定して敷設される一対の第一走行レールR1と、第二床F2に敷設方向に移動自在に敷設される一対の第二走行レールR2と、一端が第一走行レールR1の端部に回動自在に連結されるとともに他端が第二走行レールR2の端部に回動自在に連結される一対の中間走行レールRMと、第一走行レールR1、中間走行レールRM及び第二走行レールR2上を走行する搬送台車Dと、を備えている。
【0017】
このような搬送システム1は、例えば、自動倉庫や荷捌き棟等を備えた物流センターに設けられ、第一床F1は、自動倉庫内の免震床であり、第二床F2は、自動倉庫外(荷捌き棟内)の通常床である。また、第一床F1及び第二床F2とは、互いに相対移動可能であれば、両方とも免震床であってもよいし、両方とも通常床であってもよい。第一床F1と第二床F2とは、図示したように、間隔Cを隔てて配置されており、第一床F1と第二床F2とが地震等により相対移動することによって、間隔Cの大きさが変動する。
【0018】
搬送台車Dは、四隅に設けられた走行輪D1を有し、搬送台車D上には自動倉庫等に搬出入される荷物が載置される。また、搬送台車Dは、例えば、自動倉庫のラックに荷物を格納したり、ラックから荷物を取り出したりするスタッカクレーン等の搬送装置15に対して、荷物を受け渡し及び受け取り可能なコンベヤ等の移載機構D2を備えていてもよい。なお、
図1A及び
図1Bにおいて、自動倉庫のラックの図は省略してある。
【0019】
第一走行レールR1は、一対のレール部材を所定の軌間距離を空けて平行に第一床F1に固定することによって、第一床F1上に軌道を形成する。したがって、第一走行レールR1は、第一床F1に対して相対移動しないように構成される一対の第一走行路に相当する。また、第一走行レールR1の第二床F2に最も接近した端部は、第一床F1の第二床F2に対峙した端面から一定の距離だけ奥まった位置に配置される。
【0020】
第二走行レールR2は、一対のレール部材を所定の軌間距離を空けて平行に第二床F2上で移動可能に配置することによって、第二床F2上に軌道を形成する。したがって、第二走行レールR2は、第二床F2に敷設方向に移動自在に敷設される一対の第二走行路に相当する。具体的には、第二走行レールR2は、下面に長手方向に沿って配置された複数の車輪3を有し、第一走行レールR1と同じ高さを維持しつつ敷設方向(長手方向)に沿ってスライドできるように構成されている。
【0021】
また、第二床F2上には、第二走行レールR2の軌間距離を保持しつつ敷設方向への移動を案内する複数のガイドコロ4が配置されている。ガイドコロ4は、例えば、第二走行レールR2の両側面に沿って配置される。このようなガイドコロ4によって、第二走行レールR2の軌間距離は、第一走行レールR1と同一の軌間距離に設定される。
【0022】
また、通常状態(第一床F1及び第二床F2が静止した状態であって、第一走行レールR1、中間走行レールRM及び第二走行レールR2が一直線上に配置された状態)において、第二走行レールR2の第一床F1に最も接近した端部は、第二床F2の第一床F1に対峙した端面から一定の距離だけ奥まった位置に配置される。
【0023】
中間走行レールRMは、第一走行レールR1と第二走行レールR2とを連結して一本の軌道を形成するレール部材である。したがって、中間走行レールRMは、一端が第一走行路の端部に回動自在に連結されるとともに他端が第二走行路の端部に回動自在に連結される一対の中間走行路に相当する。中間走行レールRMは、第一走行レールR1及び第二走行レールR2とピン結合され、水平面内で回動可能に構成される。すなわち、第一走行レールR1、第二走行レールR2及び中間走行レールRMによってリンク機構が構成され、このようなリンク機構の作用により第一床F1と第二床F2との左右方向の相対移動を吸収することができるように構成されている。
ここで、第一走行レールR1と中間走行レールRMとは連結部6において連結し、第一走行レールG1と中間案内レールGMとは連結部7において連結している。また、中間走行レールRMと第二走行レールR2とは連結部90において連結し、中間案内レールGMと第二案内レールG2とは連結部100において連結している。
なお、第一走行レールR1、中間走行レールRM及び第二走行レールR2は、それぞれ第一走行路、中間走行路及び第二走行路の単なる一例に過ぎない。
また、左右方向は、敷設方向と直角の方向を指す。
【0024】
ところで、第一床F1と第二床F2とが左右方向に相対移動した場合、第一走行レールR1の端部と第二走行レールR2の端部との敷設方向の間隔は、最大で第一床F1と第二床F2との間隔Cに等しい分減少する。即ち、相対移動角θ(第一走行レールR1と第二走行レールR2とが一直線上にある状態からのずれ角度)とすれば、第一走行レールR1の端部と第二走行レールR2の端部との敷設方向の間隔の減少分1−cosθは、Cを超えない範囲で変動する。ここで、中間走行レールRMの長さを便宜的に1とし、θ<90°、1>Cである。この変動分は、第二走行レールR2が第二床F2上を移動することによって吸収される。
【0025】
また、第一床F1と第二床F2とが敷設方向に相対移動した場合、第一走行レールR1の移動に伴って、中間走行レールRMを介して第二走行レールR2が引っ張られ、第二走行レールR2が第二床F2上を移動する。したがって、第一床F1と第二床F2との敷設方向の相対移動による移動量は、第二走行レールR2の移動によって吸収される。
【0026】
なお、実際の地震では、第一床F1と第二床F2との左右方向及び敷設方向の相対移動が混在した状態になっているものの、上述したレール構成により、水平面内における全ての相対移動量を吸収しつつ軌道を確保することができる。したがって、レールの破損を抑制することができ、搬送台車の脱線や落下を抑制することができる。
【0027】
また、図示した搬送システム1は、第一走行レールR1の軌間中間部に第一走行レールR1と平行かつ第一床F1に固定して敷設される第一案内レールG1と、第二走行レールR2の軌間中間部に第二走行レールR2と平行かつ第二床F2に敷設方向に移動自在に敷設される第二案内レールG2と、一端が第一案内レールG1の端部に回動自在に連結されるとともに他端が第二案内レールG2の端部に回動自在に連結される中間案内レールGMと、を備え、搬送台車Dは、第一案内レールG1、中間案内レールGM及び第二案内レールG2に沿って移動可能なガイド部材2を有している。
【0028】
第一案内レールG1は、第一走行レールR1の軌間の略中央部に配置されており、実質的に第一走行レールR1と同様の構成により第一床F1に配置される。また、第二案内レールG2は、第二走行レールR2の軌間の略中央部に配置されており、実質的に第二走行レールR2と同様の構成により第二床F2に配置される。また、中間案内レールGMは、中間走行レールRMの軌間の略中央部に配置されており、実質的に中間走行レールRMと同様の構成により、第一案内レールG1及び第二案内レールG2に接続される。
【0029】
このような構成により、第一案内レールG1、第二案内レールG2及び中間案内レールGMは、上述した第一走行レールR1、第二走行レールR2及び中間走行レールRMと同様の作用を有し、第一床F1と第二床F2とが左右方向及び敷設方向に相対移動した場合であっても、水平面内における全ての相対移動量を吸収しつつ軌道を確保することができる。したがって、レールの破損を抑制することができ、搬送台車の脱線や落下を抑制することができる。
【0030】
なお、ここでは、第一案内レールG1、第二案内レールG2及び中間案内レールGMが、それぞれ第一走行レールR1、第二走行レールR2及び中間走行レールRMの軌間中間部に配置された場合について説明したが、第一案内レールG1、第二案内レールG2及び中間案内レールGMは、それぞれ第一走行レールR1、第二走行レールR2及び中間走行レールRMの軌間外側に配置してもよい。
【0031】
以下、
図2A〜
図2C及び
図3A〜
図3Cに示した断面図に基づいて、上述した搬送システム1について、詳述する。ここで、
図2Aは、
図1Aに示した搬送システムのa−a線断面図であり、
図2Bは
図1Aに示した搬送システムのb−b線断面図であり、
図2Cは
図1Aに示した搬送システムのc−c線断面図である。また、
図3Aは、
図1Aに示した搬送システムのd−d線断面図であり、
図3Bは
図1Aに示した搬送システムのe−e線断面図であり、
図3Cはガイド部材の変形例である。
【0032】
図2Aに示したように、第一走行レールR1は、所定の軌間距離を有するように、ボルト等の締結具によって第一床F1に固定される。第一走行レールR1の上面には、搬送台車Dの走行輪D1が転動する。ここで、一般に、レール上を走行する車輪には、レールに沿って車輪を案内するためのフランジが形成されているが、本実施形態における走行輪D1にはフランジが形成されていない。
【0033】
中間走行レールRMは、第一床F1と第二床F2との相対移動により軌間距離が変動することから、搬送台車Dの走行輪D1にフランジを形成した場合、走行輪D1の車輪間隔を軌間距離の変動に追従させる必要がある。しかしながら、走行輪D1の車輪間隔を変動させるには複雑な構造とならざるを得ず、地震等により生じる複雑な相対移動による変動に追従させることも困難である。そこで、本実施形態では、搬送台車Dのガイド機構を走行輪D1から分離して、ガイド部材2を配置している。
【0034】
ガイド部材2は、例えば、
図2A〜
図2Cに示したように、第一案内レールG1、中間案内レールGM及び第二案内レールG2に沿って転動可能なガイドローラ21と、ガイドローラ21を支持するローラブラケット22と、を備え、ローラブラケット22は、搬送台車Dに鉛直軸23回りに回動自在に取り付けられている。ガイドローラ21は、例えば、
図2Aに示したように、第一案内レールG1の両側面に接触して転動する一対のガイドローラ21により構成される。なお、ガイド部材2の作用については、後述する。
【0035】
図2Bに示したように、中間走行レールRM及び中間案内レールGMには、第一床F1上を滑るスライドシュー5が配置されている。スライドシュー5は、中間走行レールRM及び中間案内レールGMの下面に取り付けられた樹脂等のブロックにより構成され、中間走行レールRM及び中間案内レールGMが、第一床F1に対して移動した際に第一床F1上を滑る。
【0036】
スライドシュー5は、例えば、中間走行レールRMと第一走行レールR1との連結部6及び中間案内レールGMと第一案内レールG1との連結部7の直下又はその近傍に配置される。また、上記のような配置箇所よりも第二床F2に近い側にもスライドシュー5を配置するようにしてもよい。スライドシュー5は、中間走行レールRM及び中間案内レールGMの高さを保持するとともに、中間走行レールRM上を走行する搬送台車Dの重量を支持する。なお、ここでは、中間走行レールRM及び中間案内レールGMにスライドシュー5を配置した場合について説明したが、スライドシュー5は第一床F1に配置してもよい。
【0037】
図2Cに示したように、中間走行レールRMの下部には、第一床F1と第二床F2との間隔Cを覆うための床板11が配置されている。床板11は、例えば、中間案内レールGMの両側面に接続され、中間走行レールRMに向かって延設されている。中間走行レールRMの内側面には、床板11を支持するブラケット12が接続されている。なお、床板11を中間走行レールRMに接続し、ブラケット12を中間案内レールGMに接続してもよい。ここで、搬送システム1は、地上(床)から離れて高所に設置される場合がある。その様な場合、床板11を使用することで、第一床F1と第二床F2との間の隙間に荷物が落下することを防ぐことができる。
【0038】
このように、床板11をブラケット12上で摺動可能に支持することにより、中間走行レールRMの軌間距離が変動した場合であっても、床板11が中間走行レールRMの挙動を阻害することがなく、かつ、中間走行レールRMの軌間距離が最大限に広がった場合であっても床板11をブラケット12上で支持することができる。
【0039】
床板11は、第一床F1と第二床F2とを連結する通路を構成する渡り廊下に相当する。したがって、
図1Aに示したように、床板11は、間隔Cよりも大きい長さを有するように構成される。また、中間走行レールRMの外側面にも副床板13を配置してもよい。また、
図1Aに示したように、床板11及び副床板13により構成される渡り廊下の四隅には、スライドシュー14が配置されていてもよい。スライドシュー14は、第一床F1又は第二床F2上に摺動可能に接触している。ここで、副床板13も、上記のような床板11と同様の効果を奏する。
【0040】
ところで、第一床F1と第二床F2との相対移動により、中間走行レールRMの軌間距離が変動した場合であっても、搬送台車Dの走行輪D1が中間走行レールRMから脱線しないようにする必要がある。そこで、搬送台車Dの走行輪D1は、第一走行レールR1及び第二走行レールR2の相対移動により中間走行レールRMに生じる軌間距離の最小値及び最大値に対応した横幅Wを有していることが好ましい。
【0041】
ここで、中間走行レールRMの軌間距離は、通常状態(第一床F1及び第二床F2が静止した状態であって、第一走行レールR1、中間走行レールRM及び第二走行レールR2が一直線上に配置された状態)において最大値を有し、最小値は第一床F1及び第二床F2の相対移動による相対移動角θにより変動する(ただし、θ<90°である)。具体的には、第一床F1と第二床F2との間隔Cの大きさ、想定される相対移動量(相対移動角θ)、中間走行レールRMの軌間距離、中間走行レールRMのレール幅等の条件に基づいて、走行輪D1の横幅Wが設定される。
【0042】
図3Aに示したように、中間走行レールRM及び中間案内レールGMには、第二床F2上を滑るスライドシュー8が配置されている。スライドシュー8は、上述したスライドシュー5と実質的に同一の部品であり、同一の構成を有していることから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
図3Bに示したように、第二走行レールR2及び第二案内レールG2には、第二床F2上を転動可能な車輪3が敷設方向に沿って複数配置されている。第二走行レールR2及び第二案内レールG2の下部構造は、断面U字状を有しており、開放部が下向きに形成されている。車輪3は、例えば、断面U字状の凹部内に配置される。
【0044】
また、第二床F2上には、複数のガイドコロ4が、第二走行レールR2及び第二案内レールG2の両側面に沿って敷設方向に配置されている。ガイドコロ4は、第二走行レールR2及び第二案内レールG2の下部構造の側面を両側から挟持するように配置される。このような構成により、一対の第二走行レールR2が第二床F2上を移動した場合であっても、第二走行レールR2の軌間距離は、第一走行レールR1と同一の距離に保持される。
【0045】
ここで、
図3Cにガイド部材2の変形例を示す。
図3Cは、
図2Aと同じa−a線断面図である。例えば、図示したように、第一案内レールG1の上部構造が、断面U字状を有し、開放部が上向きに形成されている場合には、一つのガイドローラ21を、第一案内レールG1の凹部に挿入し、内側面に接触して転動するように配置してもよい。この場合も、ガイドローラ21を支持するローラブラケット22は、搬送台車Dに鉛直軸23回りに回動自在に取り付けられる。このような構成によっても、上述したガイド部材2と同一の作用を有する。
【0046】
なお、上述した第二走行レールR2及び第二案内レールG2のスライド機構は、図示した構成に限定されず、例えば、車輪3に替えてスライドシューを配置してもよいし、ガイドコロ4に替えて低摩擦の摺動面を備えたガイドレールであってもよい。
【0047】
上述した第一実施形態に係る搬送システム1では、
図1Aに示したように、第二走行レールR2の側方の第二床F2に搬送台車Dから荷物を受ける荷受部16が配置されている。荷受部16は、例えば、ローラコンベヤやベルトコンベヤ等により構成されており、荷受部16の隣にはターンテーブル17が配置され、ターンテーブル17の隣には入出庫部18が配置されている。
【0048】
そして、上述した第一実施形態に係る搬送システム1においては、入庫時に、入出庫部18に載せられた荷物は、ターンテーブル17を経て荷受部16に移送され、荷受部16に隣接して停車された搬送台車Dに移載される。荷物を搭載した搬送台車Dは、第二走行レールR2、中間走行レールRM、第一走行レールR1上を走行し、第二床F2(通常床)のエリアから第一床F1(免震床)のエリアに移送される。搬送台車Dは、所定の搬送装置15の位置で停車し、荷物を搬送装置15に移載し、搬送装置15により荷物は所定のラックに格納される。出庫時には、逆の経路を経て荷物がラックから入出庫部18に出庫される。
【0049】
次に、
図4A〜
図4C及び
図5を用いて、本実施形態に係る搬送システム1の作用について詳述する。
【0050】
図4Aは、第一床F1と第二床F2とが通常状態のときの平面図であり、各レールと直行する方向をX軸、各レールの敷設方向(長手方向)をY軸とする。本実施形態において、「通常状態」とは、第一床F1及び第二床F2が静止した状態であって、第一走行レールR1、中間走行レールRM及び第二走行レールR2が一直線上に配置された状態を意味している。
【0051】
地震により第一床F1と第二床F2とがY軸方向に相対的に移動した場合、
図4Bに示したように、第一床F1が第二床F2に接近し、間隔Cが通常状態よりも狭くなる場合がある。このとき、第一床F1の移動に伴って第一走行レールR1及び第一案内レールG1も移動し、中間走行レールRM及び中間案内レールGMを介して第二走行レールR2及び第二案内レールG2はY軸のマイナス方向に押し退けられる。そして、第二走行レールR2及び第二案内レールG2は、ガイドコロ4に案内されて第二床F2上をスライドする。したがって、Y軸方向の相対移動による移動量を吸収することができ、レールの破損を抑制することができ、搬送台車Dの脱線や落下を抑制することができる。
【0052】
図示しないが、地震により第一床F1と第二床F2とがY軸方向に相対的に移動した場合、第一床F1が第二床F2から離隔し、間隔Cが通常状態よりも広くなる場合がある。このとき、第一走行レールR1及び第一案内レールG1の移動に伴って、中間走行レールRM及び中間案内レールGMを介して第二走行レールR2及び第二案内レールG2がY軸のプラス方向に引っ張られ、第二走行レールR2及び第二案内レールG2は、ガイドコロ4に案内されて第二床F2上をスライドする。
【0053】
また、地震により第一床F1と第二床F2とがX軸方向に相対的に移動した場合、
図4Cに示したように、中間走行レールRMが、第一走行レールR1及び第二走行レールR2に対して回動し、これに伴い、第二走行レールR2はガイドコロ4に案内されて第二床F2に対してY軸方向に僅かにスライドする。同様に、中間案内レールGMが、第一案内レールG1及び第二案内レールG2に対して回動し、これに伴い、第二案内レールG2はガイドコロ4に案内されて第二床F2に対してY軸方向に僅かにスライドする。
【0054】
このように、第一走行レールR1を第一床F1に固定し、第二走行レールR2を第二床F2に対してY軸方向に移動可能に配置し、中間走行レールRMを第一走行レールR1及び第二走行レールR2に対して回動可能に接続したことにより、地震等により第一床F1と第二床F2とがX軸方向及びY軸方向に相対的に移動した場合であっても、その移動量を吸収することができ、レールの破損を抑制することができる。また、レールの破損を抑制することにより、搬送台車Dの脱線や落下を抑制することもできる。第一案内レールG1、中間案内レールGM及び第二案内レールG2についても、同様である。
【0055】
なお、実際の地震では、第一床F1と第二床F2との相対移動の方向が、X軸方向とY軸方向に対して斜めの方向である場合もあるが、斜め方向の移動は、X軸方向成分とY軸方向成分とに分解することができ、結局、
図4B及び
図4Cに図示した状態で説明することができる。
【0056】
また、
図4A〜
図4Cに示したように、第一床F1と第二床F2との間隔Cは、床板11及び副床板13によって覆われている。床板11及び副床板13のY軸方向長さは、想定されるY軸方向の相対移動量の最大値に対応するように設定される。また、床板11は、ブラケット12上で摺動可能に配置されている。そのため、
図4Cに示したように、中間走行レールRM及び中間案内レールGMがX軸方向に移動した場合であっても、床板11は、中間走行レールRM及び中間案内レールGMの移動と干渉することもなく、落下することもない。
【0057】
次に、搬送台車Dが、中間走行レールRM上を走行中に第一床F1と第二床F2とがX軸方向に相対移動した場合について、
図5を参照しつつ説明する。
【0058】
図5に示したように、ガイド部材2は、例えば、搬送台車Dの前後の二点に配置される。このように、ガイド部材2を搬送台車Dの前方部及び後方部に配置することにより、搬送台車Dの案内を安定させることができる。なお、ガイド部材2の配置箇所や配置個数は、図示したものに限定されず、中心部の一箇所に配置してもよいし、三箇所以上に配置してもよい。
【0059】
図5に示したように、例えば、一方のガイド部材2が中間案内レールGM上に位置し、他方のガイド部材2が第一案内レールG1上に位置する場合、中間案内レールGMの回動に伴って搬送台車Dは角度φだけ回動する。この角度φは、中間案内レールGMの相対移動角θよりも小さい。この搬送台車Dの回動する角度φと相対移動角θとの差分を吸収しなければ、ガイド部材2は中間案内レールGM又は第一案内レールG1と干渉し、損傷の原因となる。そこで、本実施形態では、ガイドローラ21を支持するローラブラケット22を鉛直軸23回りに回動可能に構成することにより、この差分を吸収している。
【0060】
ここで、
図6は、本発明の第二実施形態に係る搬送システム1を示す平面図である。第二実施形態に係る搬送システム1では、荷受部16を第二走行レールR2及び第二案内レールG2の敷設方向に配置している。このとき、荷受部16の前方に第二走行レールR2及び第二案内レールG2を案内するガイドレール部19を配置してもよい。なお、図示しないが、荷受部16の側方又は敷設方向の隣には、ターンテーブルが配置され、ターンテーブルの隣には入出庫部が配置される。その他の構成については、上述した第一実施形態と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
また、
図7Aは、本発明の第三実施形態に係る搬送システムの平面図であり、
図7Bは
図7Aにおけるa−a線断面図である。第三実施形態に係る搬送システム1は、第一走行レールR1に替えて、第一床F1上で直に搬送台車Dを走行させている。第一床F1には、第二床F2と対峙した部分に形成される横幅の広い第一段差部9と、第一段差部9と連通し横幅の狭い第二段差部10と、が形成されている。
【0062】
第一段差部9の底部91には、中間走行レールRM及び中間案内レールGMがそれぞれ連結部6及び連結部7により回動可能に接続されている。したがって、中間走行レールRM及び中間案内レールGMは、第一段差部9の底部91と同一平面上で第一床F1に対して相対移動可能に構成されている。第一段差部9の横幅は、中間走行レールRM及び中間案内レールGMが回動した際に、中間走行レールRM、中間案内レールGM、床板11又は副床板13が第一床F1と接触しない大きさに形成される。また、第一段差部9の深さは、第一床F1の上面と中間走行レールRMの高さとが一致するように形成される。また、第二段差部10の底部101には、第一案内レールG1が敷設される。
【0063】
このような構成により、第一床F1の上面を走行路として使用することにより第一走行レールを省略し、レールの敷設工程を削減することができ、搬送システム1のコストダウンを図ることができる。なお、その他の構成については、上述した第一実施形態と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
なお、第3実施形態の場合、第二段差部10の左右方向の第一床F1が、第一床に対して相対移動しないように構成される一対の第一走行路に相当する。また、第二走行レールR2は、第二床F2に敷設方向に移動自在に敷設される一対の第二走行路に相当する。さらに、中間走行レールRMは、一端が第一床F1に回動自在に連結されるとともに他端が第二走行路の端部に回動自在に連結される一対の中間走行路に相当する。
【0064】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属する。
【0065】
例えば、上述した搬送システム1は、自動倉庫に使用されるものに限定されず、相対移動可能な第一床F1及び第二床F2を有する全ての建造物及び構造物に対して使用することができる。