(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二次電池の入出力特性とエネルギー容量特性とは相反する関係にあるため、上述したような二次電池であっても、瞬時に大電流を出し入れできる優れた入出力特性や、長時間駆動可能な高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような事情に鑑み、優れた入出力特性及び高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、電解液と、該電解液に浸漬されて用いられる電極部材とを具備する二次電池であって、前記電極部材は、正極集電箔の表面に形成された正極活物質層を有する正極と、負極集電箔の表面に形成された負極活物質層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとが積層されて、前記セパレータを介して相対向する前記正極活物質層と前記負極活物質層とで電極対を構成し、前記正極及び前記負極は、それぞれ集電箔の両面に活物質層を具備し、前記正極及び負極の少なくとも一方は、前記集電箔の一方の面に相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を有する第1の活物質層を具備すると共に他方の面に相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を有す
る第2の活物質層を具備し、前記電極対は、前記第1の特性を具備する第1の活物質層からなる第1の電極対と、前記第2の特性を具備する第2の活物質層からなる第2の電極対とを備え、前記第1の電極対の前記第1の活物質層と、前記第2の電極対の前記第2の活物質層とは、層を形成する活物質の種類が異なることにより、前記第1の特性及び前記第2の特性を有することを特徴とする二次電池にある。
【0008】
かかる本発明によれば、1つの電極部材内に、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を具備する第1の電極対と、相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を具備する第2の電極対とを具備するので、これを電極として用いることにより、全体として、優れた入出力特性と高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
また、正極及び負極の少なくとも一方の集電箔の両面に入出力特性及び容量特性の異なる活物質層がそれぞれ形成されるので、1つの電極部材内には、入出力特性及び容量特性の異なる活物質層がそれぞれ複数設けられる。このため、全体として、優れた入出力特性と高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【0010】
また、活物質の種類の違いにより、前記第1の特性と前記第2の特性とを発現
することにより、1つの電極部材内に、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を具備する第1の電極対と、相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を具備する第2の電極対とを具備するので、これを電極として用いることにより、全体として、優れた入出力特性と高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【0013】
ここで、前記正極及び前記負極の集電箔には複数の孔が形成されていることが好ましい。
【0014】
これによれば、集電箔に孔を設けることで、充電及び放電後における活物質層の電位が異なる状態となった際に、リチウムイオンが集電箔の孔を介しても活物質層中を移動できるので、電位の緩和が促進される。
【0015】
また、前記第1の電極対と前記第2の電極対とが複数積層され又は巻回されて構成されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、電極対を複数積層して又は巻回することにより、活物質層のそれぞれの表面積を大きくすることができるので、二次電池の入出力特性及びエネルギー容量特性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次電池によれば、優れた入出力特性及び高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態に係る二次電池は、ラミネート型リチウムイオン二次電池であり、例えば、電気自動車である電動車両の底部(フロア下)に搭載され、電動車両の走行用モーター等に電力を供給するものである。
【0021】
本発明の実施形態1に係る二次電池及びそれに用いられる電極部材について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るラミネート型リチウムイオン二次電池の斜視図であり、
図2は、
図1のX−X′線断面模式図であり、
図3は、
図2に示す二次電池の電極部材の一部拡大断面模式図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、ラミネート型リチウムイオン二次電池1は、電極部材2が収納された矩形平板状のラミネート外装体3と、該ラミネート外装体3の長手方向両側の短辺側から突出して設けられ、電極部材2から電力を取り出す正極端子4と負極端子5とから構成される。電極部材2は、複数の正極10と、複数の負極20とがセパレータ30を介して積層されたものであり、複数の正極10は正極端子4に、複数の負極20は、負極端子5に電気的に接続されている。また、電極部材2は、ラミネート外装体3内で電解液6に浸漬されている。
【0023】
図3に示すように、電極部材2の正極10は、正極集電箔11の両面にそれぞれ正極活物質層が形成されたものであり、相対的に薄い第1の正極活物質層12が両面に形成された正極10aと、相対的に厚い第2の正極活物質層13が両面に形成された正極10bとを具備する。一方、負極20は、負極集電箔21の一方面に相対的に薄い第1の負極活物質層22が形成され、他方面には相対的に厚い第2の負極活物質層23が形成されたものである。これら正極10a、10bと負極20とは、間にセパレータ30を挟んで交互に積層され、正極10aの第1の正極活物質層12と負極20の第1の負極活物質層22とがセパレータ30を介して対向し、また、正極10bの第2の正極活物質層13と負極20の第2の負極活物質層23とがセパレータ30を介して対向するようになっている。そして、セパレータ30を介して第1の正極活物質層12と第1の負極活物質層22とが対向した部分が第1の電極対41となり、セパレータ30を介して第2の正極活物質層13と第2の負極活物質層23とが対向した部分が第2の電極対42となり、本実施形態では、2つの第1の電極対41と2つの第2の電極対42とが交互に積層された構成となっている。
【0024】
ここで、セパレータ30を介して第1の正極活物質層12と第1の負極活物質層22とが対向した第1の電極対41は、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を具備するものであり、セパレータ30を介して第2の正極活物質層13と第2の負極活物質層23とが対向した第2の電極対42は相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を具備するものとなる。
【0025】
本実施形態では、相対的に厚さの異なる活物質層、すなわち、相対的に薄い第1の正極活物質層12と第1の負極活物質層22とからなる第1の電極対41と、相対的に厚い第2の正極活物質層13と第2の負極活物質層23とからなる第2の電極対42とを具備する電極部材2とすることにより、相反する2つの電池特性を具備する二次電池としている。
【0026】
ここで、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性とは、この場合、第2の特性と比較して入出力特性が高く且つエネルギー容量特性が低いという意味であり、相対的に低出力且つ高容量の第2の特性とは、第1の特性と比較して入出力特性が低く且つエネルギー容量特性が高いという意味である。
【0027】
このような第1の特性と第2の特性を
図4を参照しながら説明する。
図4は、二次電池の出力する時間と出力する電流値との関係を示すものである。
【0028】
図4に示すように、第1の電極対41の部分では、第1の正極活物質層12及び第1の負極活物質層22が薄い分、活物質層の内部抵抗が小さくなるため、大電流の入出力が可能だが、全体の活物質量が少ないので持続時間(容量)は小さくなる。一方、厚い正極活物質層13及び負極活物質層23を有する第2の電極対42の部分は、活物質層が厚いので第1の電極対41と比較して内部抵抗が大きくなり、第1の電極対41ほど大電流は流せないが、活物質層が厚い分、エネルギー容量は高いため、より大きな容量を得ることができる。本実施形態では、前者を第1の特性、後者を第2の特性としている。
【0029】
ここで、相対的に薄い第1の正極活物質層12と相対的に薄い第1の負極活物質層22とからなる第1の電極対41についてさらに説明する。リチウムイオン二次電池の充電や放電は、正極と負極間をリチウムイオンが移動(拡散)することで進行するため、リチウムイオンの移動する距離が短い、即ち、活物質層の厚さが薄い方が内部抵抗を下げることができ、入出力特性が向上するが、一方、容量は低下する。すなわち、第1の正極活物質層12と第1の負極活物質層22とからなる第1の電極対41は、大電流の入出力に対して応答性が速く、迅速に電位変化する優れた入出力特性を有するが、低容量であり、高出力且つ低容量の第1の特性を具備することになる。
【0030】
一方、相対的に厚い第2の正極活物質層13と第2の負極活物質層23とからなる第2の電極対42について説明する。リチウムイオン二次電池のエネルギー容量を向上させるためには、活物質層のエネルギー密度を高くすることが必要であり、このためには、例えば、活物質層の厚さを厚くすればよいが、逆にリチウムイオンの移動距離が大きくなるので、入出力特性については不利となる。このため、第2の正極活物質層13と第2の負極活物質層23とからなる第2の電極対42は、長時間駆動可能な高いエネルギー容量特性を有するが、低入出力特性となり、低出力且つ高容量の第2の特性を具備することになる。
【0031】
このような第1の特性及び第2の特性の両方を具備する二次電池とするためには、例えば、厚さの異なる第1の負極活物質層22と第2の負極活物質層23とを具備するようにすればよく、本実施形態では、負極集電箔21の両面に相対的に薄い第1の負極活物質層22と相対的に厚い負極活物質層23とを設け、第1の特性及び第2の特性の両方を兼ね備えるようにしている。本実施形態では、第1の負極活物質層22の厚さが1〜10μmの場合、第2の負極活物質層23の厚さは10〜100μmが好ましく、第1の負極活物質層22の厚さが10〜50μmの場合、第2の負極活物質層23の厚さが50〜200μmであるのが好ましい。
【0032】
また、相対的に薄い第1の負極活物質層22及び相対的に厚い第2の負極活物質層23には、それぞれに対応するリチウム移動量を具備する正極活物質層が必要であり、それぞれ第1の正極活物質層12及び第2の正極活物質層13を対応させて、第1の電極対41及び第2の電極対42を構成するようにしている。すなわち、第1の正極活物質層12と第1の負極活物質層22との間、また、第2の正極活物質層13と第2の負極活物質層23との間で、充電時及び放電時におけるリチウムイオンの一方の活物質層から他方の活物質層への移動を対等にし、電位変化を安定させ、二次電池の制御を容易にし、二次電池の信頼性を高めている。
【0033】
なお、本実施形態では、正極10として、正極集電箔11の両面に相対的に薄い第1の正極活物質層12を有する正極10aと、正極集電箔11の両面に相対的に厚い第2の正極活物質層13を有する正極10bとを用いることで、第1の負極活物質層22及び第2の負極活物質層23に対応するようにしている。これは、表裏で異なる厚さの正極を形成するよりも、表裏で同じ厚さの正極を形成する方が容易であることに鑑みて、厚さの異なる二種類の正極10a、10bを用いている。勿論、正極集電箔11の一方面に薄い正極活物質層12、他方面に厚い正極活物質層13を設けた正極を用いてもよいことは言うまでもない。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る電極部材2は、1つの電極部材2内に異なる厚さの活物質層を形成することにより、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を具備する第1の電極対41と、相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を具備する第2の電極対42とがそれぞれ複数形成される。これを電極として用いることにより、全体として優れた入出力特性及び高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【0035】
ここで、第1の正極活物質層12及び第2の正極活物質層13を形成する正極活物質としては、例えば層状構造型の金属酸化物、スピネル型の金属酸化物及び金属化合物、リン酸塩型の金属酸化物などが挙げられる。層状構造型の金属酸化物としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、三元系複合酸化物(LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2)が挙げられる。リチウムニッケル系複合酸化物としては、好ましくはニッケル酸リチウム(LiNiO
2)が挙げられる。リチウムコバルト系複合酸化物としては、好ましくはコバルト酸リチウム(LiCoO
2)が挙げられる。スピネル型の金属酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)等のリチウムマンガン系複合酸化物が挙げられる。リン酸塩型の金属酸化物としては、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)等が挙げられる。本実施形態では、正極の活物質としてLiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2を用いているが、本発明に適用可能な正極活物質はこれに限定されず、また例示した正極活物質に限定されるものでもなく、正極における電池反応を生じるものであれば他にも用いることができる。
【0036】
また、第1の負極活物質層22及び第2の負極活物質層23を形成する負極活物質としては、通常用いられる活物質、例えば黒鉛、ソフトカーボン又はハードカーボン等の非晶質炭素材料を挙げることができる。また、黒鉛は人造黒鉛であっても天然黒鉛であっても良い。また、金属リチウム、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等を挙げることができる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物やケイ素酸化物などが挙げられる。本実施形態では、負極の活物質としては黒鉛を用いているが、本発明に適用可能な負極活物質はこれに限定されず、また例示した負極活物質に限定されるものでもなく、負極における電池反応を生じるものであれば他にも用いることができる。
【0037】
なお、正極活物質層及び負極活物質層を形成する場合、正極活物質又は負極活物質に、それぞれさらにバインダーが含有されていてもよく、例えばポリフッ化ビニリデンを用いることができる。なお、正極又は負極活物質層にはアセチレンブラック等の導電性向上剤が含まれていてもよい。
【0038】
また、電解液6は、通常用いられる溶媒、例えば環状炭酸エステルであるエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートと、また、鎖状炭酸エステルであるジメチルカーボネートやエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートとの混合溶液に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1リットル当たり1モル濃度程度溶解した有機電解液が挙げられる。
【0039】
次に、
図5(a)〜(c)に、本実施形態の二次電池の充電状態(以下「SOC」と言う。)を示す図を示す。なお、
図5中のAは、相対的に薄い活物質層により構成された第1の電極対41の充電状態に対応し、
図5中のBは、相対的に厚い活物質層により構成された第2の電極対42の充電状態に対応する。
【0040】
図5(a)は、充電が開始された時の電圧を示す図である。充電が開始された時は、相対的に薄い第1の負極活物質層22を具備する第1の電極対41(A)の方が内部抵抗が小さいため、電圧は急速に上昇し、これに伴い充電も急速に進行する。一方、相対的に厚い第2の負極活物質層23を具備する第2の電極対42(B)は、第1の電極対41と比べて内部抵抗が大きいため、充電は緩やかに進行していく。すなわち、充電は、正極活物質層から脱離したリチウムイオンが電解液を通り、セパレータを介して負極活物質層に移動することにより進行する。このため、リチウムイオンの移動距離が短い、即ち、第1の負極活物質層22を具備する第1の電極対41の方が充電が速く進行し、第2の負極活物質層23を具備する第2の電極対42の方は遅く進行する。
【0041】
図5(b)は、充電が終了し、相対的に薄い第1の負極活物質層22を具備する第1の電極対41と相対的に厚い第2の負極活物質層23を具備する第2の電極対42の電位状態が緩和される時の電圧を示す図である。充電が終了した時は、第1の電極対41(A)のSOCが高く、第2の電極対42(B)のSOCは低い。これは、上記の充電速度の相違から、相対的に薄い第1の負極活物質層22では、容量が相対的に低いので充電量が許容範囲内で最大に満たされたからであり、相対的に厚い第2の負極活物質層23では、容量が相対的に大きいので、同時間で充電量が許容範囲を下回っているからである。この充電量の差(電位差)を緩和するために、リチウムイオンは相対的に薄い第1の負極活物質層22から相対的に厚い第2の負極活物質層23へ電解液を介して移動し、平衡状態へと移行していく。
【0042】
図5(c)は、緩和が終了した時の電圧を示す図である。緩和が終了すると、相対的に薄い第1の負極活物質層22を具備する第1の電極対41と相対的に厚い第2の負極活物質層23を具備する第2の電極対42の電圧は同一となる。
【0043】
このように、相対的に薄い第1の負極活物質層22を具備する第1の電極対41では、充電、特に急速充電のような大電流入力に対する応答性が速いので、入力特性に優れるが、厚さが薄い分、充電量がすぐに満たされてしまい、エネルギー容量特性は低くなる。一方、相対的に厚い第2の負極活物質層23を具備する第2の電極対42では、充電に対する応答性は遅いが、厚い分、高いエネルギー容量を確保することができる。なお、
図5では、相対的に薄い活物質層により構成された第1の電極対41と相対的に厚い活物質層により構成された第2の電極対42の充電に対する入力特性及びエネルギー容量特性について説明したが、放電に対しても同様の出力特性及びエネルギー容量特性であることは言うまでもない。
【0044】
したがって、1つの電極部材2内に、異なる厚さの活物質層からなる第1の電極対41と第2の電極対42を設けることにより、入出力特性に優れた部分及び高いエネルギー容量特性を有する部分とが共存することになる。これを電極として用いることにより、全体として優れた入出力特性及び高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、集電箔の両面に活物質層を設けて正極又は負極を形成したが、集電箔の片面のみに活物質層を設けた正極及び負極を用いて上述した電極部材を構成することもできる。
【0046】
(実施形態2)
本実施形態は、実施形態1の電極部材の変形例であり、
図6に示すように、全面に複数の貫通孔50を具備する正極集電箔11A及び負極集電箔21Aを用いて、実施形態1と同様の活物質層を設けた正極及び負極とした以外は、実施形態1と同様なものである。
【0047】
このような正極集電箔11A及び負極集電箔21Aを用いるのは、上述した
図5(b)の電位状態の緩和を促進するためである。すなわち、電位状態の緩和の際に、例えば、リチウムイオンは相対的に薄い第1の負極活物質層22から相対的に厚い第2の負極活物質層23へ貫通孔50を介しても移動するようになり、平衡状態への移行が促進される。
【0048】
なお、貫通孔50の形成位置は図示のものに限定されず、例えば、貫通孔50の形成密度を場所によって変更してもよく、例えば、各集電箔の短手方向の中央部が短手方向の端部よりも密となるようにしてもよい。また、貫通孔50の形状についても円形状に限定されず、例えば略矩形状であってもよい。
【0049】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について、
図7を用いて説明する。実施形態3は、電極部材の構成の変形例であり、実施形態1と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
実施形態1では、第1の特性を有する第1の電極対41と第2の特性を有する第2の電極対42とを設けるために、相対的に薄い第1の正極活物質層12及び第1の負極活物質層22と、相対的に厚い第2の正極活物質層13及び第2の負極活物質層23とを形成したが、本実施形態では、活性物質層を形成する正極活性物質の種類を異なるものとすることにより、相対的に異なる第1の特性と第2の特性とを設けたものである。
【0051】
図7は、本実施形態に係る電極部材の一部拡大断面模式図である。同図に示すように、電極部材2Aは、正極集電箔11の一方面に第1の正極活物質層12Aを、他方面に第2の正極活物質層13Aをそれぞれ形成した正極10Aを具備する。ここで、第1の正極活物質層12Aと、第2の正極活物質層13Aとは、詳細は後述するが、異なる活物質を用いて形成されて、異なる特性を具備するものである。
【0052】
具体的には、第1の正極活物質層12Aは、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を有する活物質の種類から構成され、第2の正極活物質層13Aは、相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を有する活物質の種類から構成される。そのため、第1の正極活物質層12Aと第2の正極活物質層13Aの厚さはほぼ同等であるが、それぞれ異なる特性を具備するものである。勿論、活物質の種類と同時に厚さを変えて第1の正極活物質層12Aを薄くし、第2の正極活物質層13Aを厚くしてもよい。
【0053】
一方、正極10Aに対応する負極としては、第1の正極活物質層12Aに対向する位置には、負極集電箔21の両面に相対的に薄い第1の負極活物質層22を形成した負極20aを設け、第2の正極活物質層13Aに対向する位置には、負極集電箔21の両面に相対的に厚い第2の負極活物質層23を形成した負極20bを設けたものである。そして、第1の正極活物質層12Aと第1の負極活物質層22とで第1の特性を有する第1の電極対41Aを構成し、第2の正極活物質層13Aと第2の負極活物質層23とで第2の特性を有する第2の電極対42Aを構成している。
【0054】
なお、第1の特性とは、実施形態1と同様に、相対的に高出力且つ低容量という意味であり、第2の特性とは、相対的に低出力且つ高容量という意味である。
【0055】
このように、実施形態1では、第1の特性を具備する第1の電極対41と、第2の特性を具備する第2の電極対42との特性の差を、各電極対を構成する活物質層の厚さを異なるものとすることにより設けたが、本実施形態では、活物質層の厚さではなく、正極活物質の種類を異なるものとし、正極活物質層と対向する負極活物質層の厚さを正極活物質の特性に対応させることで、第1と第2の特性の差を設けた。
【0056】
例えば、高出力且つ低容量の第1の特性を具備する第1の電極対41Aについては、電子伝導性の高い活物質を適用する。すなわち、リチウムイオン二次電池の入出力特性を向上させるためには、例えば、活物質層の内部抵抗を下げればよいが、電子伝導性が高ければ、充電時及び放電時における活物質の表面及び活物質間での電子の伝導が迅速に進行し、活物質層の内部抵抗を下げることができる。そして、このような活性層は高い入出力特性を維持することができる。
【0057】
一方、低出力且つ高容量の第2の特性を具備する第2の電極対42Aについては、高いエネルギー容量を備えた活物質を適用する。リチウムイオン二次電池のエネルギー容量を向上させるためには、活物質自体のエネルギー密度(容量)を高くすることが必要だからである。
【0058】
ここで、高出力且つ低容量の第1の特性を有する正極活物質と、低出力且つ高容量の第2の特性を有する正極活物質について説明する。
【0059】
高出力特性を有するか否かは、各種活物質の種類及びその粒子径や添加される導電助剤量により判断できる。
【0060】
一方、高容量特性を有するか否かは、例えば、活物質の理論容量に基づき判断することができる。LiCoO
2の理論容量は274mAh/g、LiNiO
2の理論容量は274mAh/g、LiMn
2O
4の理論容量は148mAh/g、LiFePO
4の理論容量は170mAh/gである。よって、ここではLiCoO
2及びLiNiO
2は、LiMn
2O
4及びLiFePO
4と比較して相対的に高容量の特性を有するものと判断でき、LiFePO
4は、LiMn
2O
4と比較して相対的に高容量の特性を有するものと判断できる。
【0061】
このように、活物質の種類及びその粒子径や添加される導電助剤量や、理論容量、好ましくは実容量の値を相対的に比較することにより、高出力且つ低容量の第1の特性を有する活物質と低出力且つ高容量の第2の特性を有する活物質との組み合わせを選択することができ、本実施形態では、第1の正極活物質層12Aを形成する正極活物質としては、相対的に高出力低容量のLiMn
2O
4を用い、第2の正極活物質層13Aを形成する正極活物質としては、相対的に低出力で高容量のLiFePO
4を用いた。
【0062】
勿論、活物質層の入出力特性や実容量の値は、活物質の粒子サイズを変えたり、導電材料を添加したり、表面処理を施したり、結晶構造やバルク改質等を行うことにより変動する値であるため、これらを同時に変更することにより、第1の正極活物質層12Aと第2の正極活物質層13Aとの入出力特性及び容量特性を変更するようにしてもよい。
【0063】
また、このような活物質の改質により、極めて優れた高出力且つ低容量の第1の特性を有する活物質と、これと相反する低出力且つ極めて優れた高容量の第2の特性を有する活物質を形成することは可能であり、これらを組み合わせた電極部材を用いれば、さらに優れた入出力特性及び高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【0064】
なお、第1及び第2の負極活物質層22,23を形成する負極活物質としては、実施形態1に例示した活物質から適宜選択して、厚さを変更して設ければよいが、上述した正極活物質と同様に、活物質の特性を検討して第1の特性に対応する負極活物質と第2の特性に対応する負極活物質とを異なるようにしてもよく、活物質の種類と同時に厚さを変更するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る電極部材2Aも、実施形態1と同様に、相対的に高出力且つ低容量の第1の特性を具備する第1の電極対41Aと、相対的に低出力且つ高容量の第2の特性を具備する第2の電極対42Aを具備するので、これを電極として用いることにより、全体として優れた入出力特性及び高いエネルギー容量特性を同時に兼ね備えた二次電池を実現することができる。
【0066】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、正極及び負極が厚さ方向に積層された積層型の電極を例示したが、長尺の正極及び負極を巻回した巻回型の電極としてもよい。例えば、実施形態1の例では、
図3に示すような、正極を構成する3層及び負極を構成する4層の計7層の積層体を巻回すれば、巻回型の電極部材とすることができる。
【0067】
また、上述した実施形態では、リチウムイオン二次電池用電極部材を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、電解質にゲル状のポリマーを利用したリチウムポリマー二次電池にも適用することができる。また、携帯電話やノート型パソコン等の小型ポータブル電子機器に搭載されるニッケルカドミニウム電池やニッケル水素電池等のアルカリ二次電池にも適用することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る二次電池の容器、形状は、ラミネート型又は缶型であるが、これに限定されない。例えばコイン型、円筒型、ボタン型、シート型、角型等であってもよい。また、これらの二次電池は、複数個を直列に接続したものでもよいし、並列に接続したものでもよい。