特許第5994997号(P5994997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994997
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】貫通部遮蔽構造
(51)【国際特許分類】
   B05C 15/00 20060101AFI20160908BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20160908BHJP
   B05C 3/10 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
   B05C15/00
   B05C13/02
   !B05C3/10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-13528(P2013-13528)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-144400(P2014-144400A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 義信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友志
(72)【発明者】
【氏名】林 慶一
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−245137(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0140516(US,A1)
【文献】 独国特許発明第3636416(DE,C1)
【文献】 特開平06−277577(JP,A)
【文献】 米国特許第03563203(US,A)
【文献】 実開昭59−007289(JP,U)
【文献】 実開昭61−009368(JP,U)
【文献】 実開平04−116280(JP,U)
【文献】 実開昭57−095277(JP,U)
【文献】 米国特許第03749229(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/00−15/12
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通部材を横向き姿勢で貫通させる開口を、水平方向に延びる又は水平方向に対して傾斜する斜め方向に延びるスリット状開口にし、
このスリット状開口の上縁部から垂下する遮蔽具を前記スリット状開口の延び方向に密に並べて配置することで、前記スリット状開口を前記遮蔽具により遮蔽した状態にするとともに、
この遮蔽状態において、前記スリット状開口に貫通させた前記貫通部材を、前記遮蔽具に対する当接により前記遮蔽具を順次に押し開きながら前記スリット状開口の延び方向に移動させる貫通部遮蔽構造であって、
前記遮蔽具としてゴム材製の短冊状シート部材を用い、
このゴム材製の短冊状シート部材を垂下状態で前記スリット状開口の延び方向に並べて配置するのに、
各短冊状シート部材を前記スリット状開口の開口面に沿う姿勢で前記スリット状開口の上縁部から垂下するとともに、各短冊状シート部材の横幅方向における左右一方側部分の表面に、その左右一方側の隣に位置する短冊状シート部材の横幅方向における左右他方側部分の裏面が重なる状態にして、それら短冊状シート部材を前記スリット状開口の延び方向に並べて配置してある貫通部遮蔽構造。
【請求項2】
ゴム材製の前記短冊状シート部材の主素材をクロロプレンゴムにしてある請求項1記載の貫通部遮蔽構造。
【請求項3】
ゴム材製の前記短冊状シート部材を樹脂製繊維により補強してある請求項1又は2記載の貫通部遮蔽構造。
【請求項4】
互いに隣り合う前記短冊状シート部材の横幅方向における重なり代を、前記短冊状シート部材の横幅寸法の1/2にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の貫通部遮蔽構造。
【請求項5】
前記短冊状シート部材の厚みが0.7〜2.0mmの範囲内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の貫通部遮蔽構造。
【請求項6】
前記短冊状シート部材の横幅寸法と垂下長との比が1:2〜1:8である請求項1〜5のいずれか1項に記載の貫通部遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貫通部遮蔽構造に関し、
詳しくは、貫通部材を横向き姿勢で貫通させる開口を、水平方向に延びる又は水平方向に対して傾斜する斜め方向に延びるスリット状開口にし、このスリット状開口の上縁部から垂下する遮蔽具を前記スリット状開口の延び方向に密に並べて配置することで、前記スリット状開口を前記遮蔽具により遮蔽した状態にするとともに、この遮蔽状態において、前記スリット状開口に貫通させた前記貫通部材を、前記遮蔽具に対する当接により前記遮蔽具を順次に押し開きながら前記スリット状開口の延び方向に移動させる貫通部遮蔽構造に関する。
【0002】
即ち、この種の貫通部遮蔽構造は、横向き姿勢でスリット状開口に貫通させた貫通部材をスリット状開口の延び方向に移動させることを可能にしながら、遮蔽具によるスリット状開口の遮蔽により塵埃やミストなどの他物がスリット状開口を通過することを防止するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の貫通部遮蔽構造を構成するのに、樹脂製や金属製のブラシを遮蔽具として垂下状態でスリット状開口の延び方向に並置したものがある。
【0004】
また、樹脂製の布材やシート材を遮蔽具として垂下状態でスリット状開口の延び方向に並置したもの、あるいは、特許文献1に見られるように、金属箔を遮蔽具として垂下状態でスリット状開口の延び方向に並置したものもある。
【0005】
さらにまた、特許文献2に見られるように、可動板を遮蔽具として垂下状態でスリット状開口の延び方向に並置し、隣り合う2枚の可動板をリンク機構により連動させるようにしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2003/0140516 A1
【特許文献2】特開2007−245137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、樹脂製や金属製のブラシを遮蔽具とするものでは、
・それらブラシによるスリット状開口の遮蔽で得られる気密性や水密性が低い
・移動する貫通部材の当接に対してブラシの耐久性が低くて破断し易く、ブラシの頻繁な交換が必要になる
・貫通部材の繰り返しの当接でブラシに形状的なクセが付き易くてクセが付くと元の形状に戻らず、そのことでスリット状開口の遮蔽が不完全になり易い
・破断したブラシ片がごみになる
などの問題があった。
【0008】
また、樹脂製の布材やシート材を遮蔽具とするものでは、
・移動する貫通部材の当接に対する耐久性が低くて破断し易く、頻繁な交換が必要になる
・貫通部材の繰り返しの当接で形状的なクセが付き易くてクセが付くと元の形状に戻らず、そのことでスリット状開口の遮蔽が不完全になり易い
などの問題があった。
【0009】
さらに、金属箔を遮蔽具とするものでは、
・移動する貫通部材の当接に対して金属箔の耐久性が低くて破断し易く、頻繁な交換が必要になる
・隣り合う金属箔どうしの重なりの関係で、貫通部材の移動を一方向きにしか許容することができない
・金属箔が損傷したとき、その損傷した金属箔が障害となり貫通部材の移動に支障を来し易い
・金属箔の製作や組み付けに高い精度が要求される
などの問題があった。
【0010】
そしてまた、隣り合うものをリンク機構により連動させる可動板を遮蔽具とするものでは、
・可動板が損傷したとき、その損傷した可動板が障害となり貫通部材の移動に支障を来し易い
・スリット状開口が水平方向に対して傾斜した斜め方向に延びる部分では、リンク機構により連結された可動板どうしが円滑に開閉動作せず使用することができない
・可動板の製作や組み付けに高い精度が要求される
などの問題があった。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、垂下遮蔽具の合理化により上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は貫通部遮蔽構造に係り、その特徴は、
貫通部材を横向き姿勢で貫通させる開口を、水平方向に延びる又は水平方向に対して傾斜する斜め方向に延びるスリット状開口にし、
このスリット状開口の上縁部から垂下する遮蔽具を前記スリット状開口の延び方向に密に並べて配置することで、前記スリット状開口を前記遮蔽具により遮蔽した状態にするとともに、
この遮蔽状態において、前記スリット状開口に貫通させた前記貫通部材を、前記遮蔽具に対する当接により前記遮蔽具を順次に押し開きながら前記スリット状開口の延び方向に移動させる貫通部遮蔽構造であって、
前記遮蔽具としてゴム材製の短冊状シート部材を用い、
このゴム材製の短冊状シート部材を垂下状態で前記スリット状開口の延び方向に並べて配置するのに、
各短冊状シート部材を前記スリット状開口の開口面に沿う姿勢で前記スリット状開口の上縁部から垂下するとともに、各短冊状シート部材の横幅方向における左右一方側部分の表面に、その左右一方側の隣に位置する短冊状シート部材の横幅方向における左右他方側部分の裏面が重なる状態にして、それら短冊状シート部材を前記スリット状開口の延び方向に並べて配置してある点にある。
【0013】
この構成によれば、図5に示すように、移動する貫通部材6aの当接に対して遮蔽具としてのゴム材製の短冊状シート部材8を、ゴム材が備える柔軟性と弾性とにより、しなやかにねじれ変形させて面接触状態ないしそれに近い接触状態(即ち、局部的に大きな力を受けない状態)で貫通部材6aに接触させることができ、これにより、移動する貫通部材6aと短冊状シート部材8との摺接に伴う摩擦抵抗を軽減した状態で、貫通部材6aの移動に伴い短冊状シート部材8を貫通部材6aにより円滑に持ち上げさせて貫通部材6aを円滑に通過移動させることができる。
【0014】
そして、この摩擦抵抗の軽減による円滑化と、ゴム材が備える弾性により短冊状シート部材8そのものが引きちぎりに対して高い耐性を備えることとが相俟って、短冊状シート部材8の破損を効果的に防止することができ、これにより、短冊状シート部材8の遮蔽具としての耐久性を高めることができる。
【0015】
また、各短冊状シート部材8の横幅方向における左右一方側部分の表面に、その左右一方側の隣に位置する短冊状シート部材8の横幅方向における左右他方側部分の裏面が重なる状態にしてあるから、貫通部材6aとの当接により先にねじれ変形して持ち上がった短冊状シート部材8を案内として、隣に位置する次の短冊状シート部材8のねじれ変形及び持ち上がりが連鎖的に円滑に行われ、このことからも、貫通部材6aの通過移動を円滑化するとともに短冊状シート部材8の遮蔽具としての耐久性を高めることができる。
【0016】
さらに、この重ね合わせ状態にして短冊状シート部材8を並置することで、スリット状開口7を気密性や水密性の高い状態で良好に遮蔽することができるとともに、貫通部材6aをスリット状開口7の延び方向において一方向き及び逆向きのいずれにも円滑に移動させることができ、また、スリット状開口7が水平方向に対して傾斜した斜め方向に延びる部分でも、スリット状開口7を良好に遮蔽した状態で貫通部材6aを一方向き及び逆向きのいずれにも円滑に移動させることができる。
【0017】
そしてまた、貫通部材6aの繰り返しの当接に対してもゴム材が備える弾性により短冊状シート部材8に形状的なクセが付きにくく、このことからもスリット状開口7を長期にわたり良好に遮蔽することができる。
【0018】
しかも、ゴム材製の短冊状シート部材8を垂下状態で並置するだけであるから、製作及び組み付けを容易にすることができるとともに、コストも安価にすることができ、また、ゴム材製の短冊状シート部材8であるから、仮に、それが破断し損傷したとしても貫通部材6aの移動に支障を来すことがない。
【0019】
即ち、これらの点で前述した従来の貫通部遮蔽構造に比べ実用性の面で一層優れた貫通部遮蔽構造とすることができる。
【0020】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
ゴム材製の前記短冊状シート部材の主素材をクロロプレンゴムにしてある点にある。
【0021】
この構成によれば、短冊状シート部材の遮蔽具としての耐久性を高く確保しながら、貫通部材の繰り返しの当接よる短冊状シート部材の形状的なクセ付きを一層効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
ゴム材製の前記短冊状シート部材を樹脂製繊維により補強してある点にある。
【0023】
この構成によれば、貫通部材の当接に対して短冊状シート部材をしなやかにねじれ変形させる機能を維持しながら、短冊状シート部材の遮蔽具としての耐久性を一層高めることができる。
【0024】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
互いに隣り合う前記短冊状シート部材の横幅方向における重なり代を、前記短冊状シート部材の横幅寸法の1/2にしてある点にある。
【0025】
この構成によれば、貫通部材との当接によりねじれ変形して持ち上がった短冊状シート部材を隣に位置する次の短冊状シート部材に対し効果的に案内機能させることができて、次の短冊状シート部材の連鎖的なねじれ変形及び持ち上がりを効果的に円滑化することができる。
【0026】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記短冊状シート部材の厚みが0.7〜2.0mmの範囲内である点にある。
【0027】
この構成によれば、短冊状シート部材の遮蔽具としての耐久性を高く確保しながら、貫通部材の当接に対する短冊状シート部材のしなやかなねじれ変形及び持ち上がりを一層効果的に円滑化することができる。
【0028】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記短冊状シート部材の横幅寸法と垂下長との比が1:2〜1:8である点にある。
【0029】
この構成によれば、貫通部材との当接により短冊状シート部材を次々と連鎖的にねじれ変形させながら持ち上がらせて貫通部材を通過移動させる機能を一層効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】電着塗装設備における搬送設備の横断面図
図2】同搬送設備の概略側面図
図3】水平搬送部分における短冊状シート部材の施設構造を示す側面図
図4】傾斜搬送部分における短冊状シート部材の施設構造を示す側面図
図5】短冊状シート部材の開き動作を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は電着塗装設備において塗装対象の被塗物1(例えば自動車ボディなど)を搬送する搬送設備を示し、この搬送設備では、コンベア2を被塗物搬送経路Lの上方で被塗物搬送経路Lに沿わせて施設し、被塗物1を吊り下げるハンガー3を搬送方向に間隔をあけてコンベア2に多数取り付けてある。
【0032】
被塗物搬送経路L及びコンベア2は、各種の前処理槽や各種のスプレー装置及び電着塗装槽にわたらせて施設してあり、このため図2に示す如く、被塗物搬送経路L及びそれに平行するコンベア2には、水平に延びる水平搬送部分Ls,2sだけでなく、斜め下向きに延びる下降傾斜搬送部分Ld,2d及び斜め上向きに延びる上昇傾斜搬送部分Lu,2uがある。
【0033】
コンベア2は底部及び両側部を室壁4により囲んだ搬送機室5に収容してあり、この搬送機室5はコンベア2とともに被塗物搬送経路Lに沿って連続に延びるものにしてある。
【0034】
搬送機室5を形成する室壁4のうち一方の側壁4aには、ハンガー3における吊り下げシャフト6のコンベア2に対する連結部である横向き姿勢のシャフト上端部6aを貫通させる開口7を形成してあり、この開口7はコンベア2に沿って延びるスリット状開口にしてある。
【0035】
つまり、貫通部材としての吊り下げシャフト上端部6aは、スリット状開口7に対する貫通状態でコンベア2によるハンガー3の搬送移動に伴いスリット状開口7に沿って移動させる。
【0036】
このスリット状開口7の上縁部(即ち、スリット状開口7の上方に位置する側壁部分4aの下縁部)には、遮蔽具としてゴム材製の短冊状シート部材8を、垂下状態でスリット状開口7の延び方向に密に並べて取り付けてある。
【0037】
これら遮蔽具としての短冊状シート部材8は、その下端がスリット状開口7の下方に位置する側壁部分4aの上縁部にわたる長さを有し、これら短冊状シート部材8によりスリット状開口7の全体を遮蔽することで、電着塗装設備において発生する蒸気や各種ミストがスリット状開口7を通じて搬送機室5に侵入することを防止する。
【0038】
また、この遮蔽状態において、スリット状開口7に貫通させた吊り下げシャフト上端部6aは、垂下状態の短冊状シート部材8に対し順次当接させて短冊状シート部材8を押し開きながらスリット状開口7の延び方向に移動させる。
【0039】
ゴム材製の短冊状シート部材8を垂下状態でスリット状開口7の延び方向に並べて配置するのに、コンベア2の水平搬送部分2sについては図3に示すように、また、コンベア2の傾斜搬送部分2d,2uについては図4に示すように、それら水平搬送部分2s及び傾斜搬送部分2d,2uの夫々において、各短冊状シート部材8は、スリット状開口7の開口面に沿う姿勢にして、その上端部をスリット状開口7の上方に位置する側壁部分4aの下縁部に対しボルト9により連結することで、スリット状開口7の上縁部から垂下させてある。
【0040】
また、各短冊状シート部材8の横幅方向における左右一方側部分の表面に、その左右一方側の隣に位置する短冊状シート部材8の横幅方向における左右他方側部分の裏面が重なる状態にして、それら短冊状シート部材8をスリット状開口7の延び方向に並べて配置してあり、互いに隣り合う短冊状シート部材8の横幅方向における重なり代eは、短冊状シート部材8の横幅寸法wの1/2(e=w/2)にしてある。
【0041】
即ち、垂下状態で装備する遮蔽具としてゴム材製の短冊状シート部材8を採用することで、図5に示す如く、移動する吊り下げシャフト上端部6aの当接に対し短冊状シート部材8を、ゴム材が備える柔軟性と弾性とにより、しなやかにねじれ変形させて面接触状態ないしそれに近い接触状態で吊り下げシャフト上端部6aに接触させ、これにより、移動する吊り下げシャフト上端部6aと短冊状シート部材8との摺接に伴う摩擦抵抗を軽減した状態で、吊り下げシャフト上端部6aの移動に伴い短冊状シート材8を吊り下げシャフト上端部6aにより順次円滑に持ち上げさせて吊り下げシャフト上端部6aを通過移動させるようにしてある。
【0042】
また、吊り下げシャフト上端部6aの繰り返しの当接よる短冊状シート部材8の形状的なクセ付きも効果的に防止できるようにし、これにより、短冊状シート部材8の形状的なクセ付きのためにスリット状開口7の遮蔽が不完全になるのを防止する。
【0043】
そしてまた、ゴム材製の短冊状シート部材8を上記の如く横幅方向において重ね合わせた状態で並置することにより、吊り下げシャフト上端部6aとの当接により先にねじれ変形して持ち上がった短冊状シート部材8を案内として、隣に位置する次の短冊状シート部材8のねじれ変形及び持ち上がりが連鎖的に円滑に行われるようにするとともに、コンベア2による被塗物搬送の搬送向きの切り換えに伴い吊り下げシャフト上端部6aを、コンベア2の水平搬送部分2s及び傾斜搬送部分2d,2uの夫々において一方向き及び逆向きのいずれにも円滑に移動させることができるようにしてある。
【0044】
なお、本例においてゴム材製の短冊状シート部材8は、クロロプレンゴム(ネオプレン)を主素材とするとともに、樹脂製繊維による補強を施したものにしてある。
【0045】
ゴム材製の短冊状シート部材8の厚みtの好適範囲としては0.7〜2.0mmの範囲(特に1mm程度)を挙げることができ、ゴム材製の短冊状シート部材8の横幅寸法wと垂下長dの比の好適範囲としては1:2〜1:8の範囲挙げることができ。
【0046】
本例では、吊り下げシャフト上端部6aの直径Dが114mmであるのに対して、ゴム材製の短冊状シート部材8の厚みt,横幅寸法w、垂下長dの夫々をt=1mm,w=100〜200mm,d=600mmにしてある。
【0047】
ゴム材製の短冊状シート部材8を垂下状態でスリット状開口7の上縁部に取り付ける貫通部遮蔽構造の施設方法としては、複数の短冊状シート部材8を上記の重ね合わせ状態で並べて予め一体化したシート部材ユニットとして、ユニットの横幅寸法uwが500mm〜1000mm程度の手作業での持ち運びが可能なシート部材ユニットを必要数だけ予め作製し、このシート部材ユニットを順次、取付け箇所に運んでスリット状開口7の上縁部に並べて取り付けるようにすれば、多数の短冊状シート部材8の取付け作業を容易かつ能率良く行うことができる。
【0048】
〔別実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を列記する。
【0049】
短冊状シート部材8を形成する具体的なゴム材としては、クロロプレンゴムの他にも、貫通部材6aの当接に対してしなやかにねじれ変形させることができるものであれば、種々のゴム材(特に合成ゴム材)を採用することができる。
【0050】
ゴム材製の短冊状シート部材8を樹脂製繊維により補強したものにする場合、その補強用の樹脂製繊維にも種々の材質のものを採用することができ、また、ゴム材の材質等によっては、短冊状シート部材8を樹脂製繊維による補強の施しがないものにしてもよい。
【0051】
隣り合う短冊状シート部材8を前記の重ね合わせ状態で並置するのに、その重なり代eは短冊状シート部材8の横幅寸法wの1/2程度にするのが望ましいが、場合によっては、その重なり代eを短冊状シート部材8の横幅寸法wの1/2より大きい寸法あるいは小さい寸法にしてもよい。
【0052】
スリット状開口7に貫通させた状態で移動させる貫通部材6aは、搬送装置におけるハンガー3のシャフト部分に限られるものではなく、スリット状開口7に貫通させた状態で移動させる必要のあるものであれば、どのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による貫通部遮蔽構造は、各種分野における種々の用途の貫通部に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
6a 貫通部材
7 スリット状開口
8 ゴム材製の短冊状シート部材(遮蔽具)
e 重なり代
t 厚み
w 横幅寸法
d 垂下長
図1
図2
図3
図4
図5