特許第5995003号(P5995003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995003
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/00 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   A01F12/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-179887(P2013-179887)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47102(P2015-47102A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 賢一朗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 章史
(72)【発明者】
【氏名】上加 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】川口 弘道
(72)【発明者】
【氏名】水島 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 龍介
(72)【発明者】
【氏名】井原 靖
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−11748(JP,A)
【文献】 特開2013−9653(JP,A)
【文献】 特開平6−46661(JP,A)
【文献】 実開昭57−56442(JP,U)
【文献】 実開平3−67521(JP,U)
【文献】 実開昭57−56443(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)の上方に、機体前方に設けた刈取装置(4)により刈り取り搬送された穀稈を脱穀する脱穀装置(3)を設け、脱穀装置(3)の扱室(16)上方は上部カバー(20)により包囲し、該上部カバー(20)は、前記刈取装置(4)により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(17)を設けた側が上方回動するように付勢部材(G)により付勢されて上方回動するように構成し、前記扱室(16)を包囲した状態で上部カバー(20)を固定する固定装置(25)は、機枠(24)側に設けた係合体(26)と上部カバー(20)側に設けた係合フック(27)を有し、係合フック(27)を係合体(26)に係合する方向に付勢する付勢手段(28)を設けた構成とし、前記固定装置(25)には、付勢部材(28)の作用弾力を変更して、固定装置(25)の操作荷重を軽減させる付勢力切替機構(35)を設けたコンバイン。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、前記固定装置(25)は、係合フック(27)を軸(30)により回動自在に上部カバー(20)に取付け、前記付勢部材(28)をトルクスプリング(34)により構成して前記軸(30)に巻回して構成したコンバイン。
【請求項3】
請求項2記載の発明において、前記トルクスプリング(34)は、該トルクスプリング(34)の一端(36)を前記係合フック(27)側に係止し、トルクスプリング(34)の他端(37)は前記付勢力切替機構(35)に設けたステー(38)に係止し、ステー(38)は軸(30)に回動自在に取付け、ステー(38)には切替レバー(40)を取付けて前記付勢力切替機構(35)を構成したコンバイン。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の発明において、付勢部材(28)のトルクスプリング(34)は、該トルクスプリング(34)の一端(36)を前記係合フック(27)側に係止し、トルクスプリング(34)の他端(37)は前記付勢力切替機構(35)に設けたステー(38)に係止し、該ステー(38)に、所定の手扱ぎモードに設定された場合に前記トルクスプリング(34)の付勢力を軽くするモータ(50)のリンク機構(51)を接続して、前記付勢力切替機構(35)を構成したコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室の上方を上部カバーにより包囲し、該上部カバーは扱室に供給する穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置を設けた側の反対側に設けた取付軸中心に上方回動オープンする構成とし、この上部カバーを、係合フックと係合体とを有する固定装置により固定するようにした構成は、公知である(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−275934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、係合フックが係合体に係合するようにバネで付勢しているので、上部カバーをオープンさせるとき、バネの弾力に抗して操作しなければならず、操作加重が重く容易でないという課題がある。
このとき、単に、バネの弾力を弱く設定すると、振動等の衝撃によって作業中に上部カバーが開いてしまう。
本願は、上部カバーの固定装置による固定の確実性を担保しつつ、上部カバーのオープン操作の操作荷重の軽減を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、走行装置2の上方に、機体前方に設けた刈取装置4により刈り取り搬送された穀稈を脱穀する脱穀装置3を設け、脱穀装置3の扱室16上方は上部カバー20により包囲し、該上部カバー20は、前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置17を設けた側が上方回動するように付勢部材Gにより付勢されて上方回動するように構成し、前記扱室16を包囲した状態で上部カバー20を固定する固定装置25は、機枠24側に設けた係合体26と上部カバー20側に設けた係合フック27を有し、係合フック27を係合体26に係合する方向に付勢する付勢手段28を設けた構成とし、前記固定装置25には、付勢部材28の作用弾力を変更して、固定装置25の操作荷重を軽減させる付勢力切替機構35を設けたコンバインとしたものであり、付勢力切替機構35により付勢部材28の付勢力を、通常作業では「強(大)」として作業時の振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止し、非作業位置では付勢力切替機構35により付勢部材28の付勢力を「弱(小)」に切り替えて、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
請求項2記載の発明は、前記固定装置25は、係合フック27を軸30により回動自在に上部カバー20に取付け、前記付勢部材28をトルクスプリング34により構成して前記軸30に巻回して構成したコンバインとしたものであり、係合フック27を軸30により上部カバー20に回動自在に取付け、軸30にトルクスプリング34のコイル部を挿通して巻回する。
請求項3記載の発明は、前記トルクスプリング34は、該トルクスプリング34の一端36を前記係合フック27側に係止し、トルクスプリング34の他端37は前記付勢力切替機構35に設けたステー38に係止し、ステー38は軸30に回動自在に取付け、ステー38には切替レバー40を取付けて前記付勢力切替機構35を構成したコンバインとしたものであり、切替レバー40を作業位置にすると、ステー38はトルクスプリング34の他端37を巻き締める側に軸30中心に回動して、トルクスプリング34の弾力を「強」とし、切替レバー40を非作業位置にすると、ステー38はトルクスプリング34の他端37を巻き弛み側に軸30中心に回動して、トルクスプリング34の弾力を「弱」に切り替える。
請求項4記載の発明は、付勢部材28のトルクスプリング34は、該トルクスプリング34の一端36を前記係合フック27側に係止し、トルクスプリング34の他端37は前記付勢力切替機構35に設けたステー38に係止し、該ステー38に、所定の手扱ぎモードに設定された場合に前記トルクスプリング34の付勢力を軽くするモータ50のリンク機構51を接続して、前記付勢力切替機構35を構成したコンバインとしたものであり、所定の手扱ぎモードに設定されると、モータ50はリンク機構51によりステー38を巻き弛み側に回動させて、トルクスプリング34の弾力を「弱」に切り替える。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、付勢部材28の付勢力を付勢力切替機構35により変更できるので、作業時では不用意な固定装置25の固定解除を防止でき、しかも、非作業時では上部カバー20のオープン操作荷重を軽減させることができ、上部カバー20の固定の確実化と開放操作の容易化とを両立させることができる。
請求項2記載の発明では、固定装置25および付勢力切替機構35の構成を簡素にでき、小型化およびコストダウンできる。
請求項3記載の発明では、簡単な構成で付勢力切替機構35を実現できる。
請求項4記載の発明では、モータ50により付勢部材28の付勢力を切り替えるので、操作性を向上させることができる。
また、手扱ぎ作業時には、自動的に付勢手段28の付勢力が「弱」に設定されるので、扱室16に異物が供給された際に、容易に上部カバー20を開放して除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの側面図。
図2】脱穀装置の上部カバーの固定装置付近の正面図。
図3】同一部正面図。
図4】固定装置および付勢力切替機構付近の正面図。
図5】同側面図。
図6】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図7】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図8】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図9】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図10】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図11】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図12】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図13】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
図14】付勢力切替機構の他の実施形態の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例をコンバインの図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前側に設けた操縦部である。
前記刈取装置4は、立毛する穀稈を左右に分草する分草装置8を最先端位置の左右に並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、引起装置9の後側には刈刃10を設けて構成している。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴15を軸装した扱室16を設け、扱室16の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置17の供給搬送チエン18を設ける。穀稈供給搬送装置17は供給搬送チエン18の上方に挾扼杆19を設けて、供給搬送チエン18と挾扼杆19により穀稈を挟持搬送する。
挾扼杆19は、扱室16の上方を包囲する上部カバー20に取付ける。上部カバー20は、取付軸21により脱穀装置3側に回動自在に構成する。
前記穀稈供給搬送装置17は、機体を走行停止状態においても、手作業で扱室16に穀稈を供給する手扱ぎ作業可能に構成する。
【0009】
上部カバー20は、脱穀装置3の機枠24側に固定装置25により固定する。固定装置25は、機枠24側に設けた係合体26と上部カバー20側に設けた係合フック27を有し、係合フック27を常時係合体26に係合するように付勢する付勢部材28を設け、該付勢部材28の作用弾力を変更して、固定装置25の操作荷重を軽減させるように構成する。
そのため、固定装置25は、付勢部材28の付勢力により係合フック27を係合体26に係合させて、通常の刈取脱穀作業時に上部カバー20が開かないようにするが、メンテナンス時に上部カバー20を上方回動させるとき、固定装置25の操作荷重を軽減させて、固定装置25のロック解除作業を容易にする。
前記係合フック27はオープン操作レバー29により係合解除するように連結する。係合フック27は軸30により回動自在に上部カバー20に取付ける。
【0010】
固定装置25は、付勢部材28の付勢力により係合フック27を係合体26に係合させて、通常の刈取脱穀作業時に上部カバー20が開かないようにし、一方、メンテナンスや手扱ぎ作業時等の非作業位置に上部カバー20を上方回動させるとき、固定装置25の操作荷重を軽減させて、固定装置25のロック解除作業を容易にし、上部カバー20の固定の確実化と開放操作の容易化とを両立させられる。
前記付勢部材28はトルクスプリング34により構成し、トルクスプリング34の付勢力切替機構35を設ける。
そのため、付勢部材28をトルクスプリング34により構成しているので、簡易な構成になり、固定装置25の小型化および低コスト化できる。
トルクスプリング34は、その一端36を係合フック27側に係止し、トルクスプリング34の他端37は付勢力切替機構35に設けたステー38に係止し、ステー38は軸30に回動自在に取付け、ステー38には付勢力(弾力)切替レバー40を取付けて前記付勢力切替機構35を構成する。
そのため、切替レバー40によりステー38の位置を切替えることにより、トルクスプリング34の弾力を変更する。
【0011】
切替レバー40は作業位置に位置させると、トルクスプリング34の弾力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。一方、切替レバー40を非作業位置に上方回動位置させると、トルクスプリング34の弾力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
本実施形態では、切替レバー40はオープン操作レバー29と同軸の軸30に取り付けている。
切替レバー40を作業位置と非作業位置に保持する構成は、任意であり、例えば、図示は省略するが、切替レバー40を摩擦ブレーキ部材を介して軸30に取付け、摩擦ブレーキ部材の摩擦力により夫々の位置に保持するようにすればよい。
この場合、切替レバー40はオープン操作レバー29よりも長さを長く形成し、仮に、摩擦ブレーキ部材の摩擦力により夫々の位置に保持するようにしても、操作荷重を軽減させられる。
【0012】
図6図7は、付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、前記軸30に取付けたステー38の一端に前記トルクスプリング34の一端36を係止し、ステー38の他端にカム体41を当接させ、カム体41は前記切替レバー40に取付ける。42は切替レバー40を取付ける取付軸42である。
カム体41は切替レバー40を作業位置に位置させると、ステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。一方、切替レバー40を非作業位置に位置させると、カム体41はステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
この場合、ステー38とカム体41との当接状態を、トルクスプリング34の弾力により、作業位置と非作業位置とに所謂死点越えとなって、夫々の位置に切替レバー40を保持するように構成すると、好適である。
【0013】
前記固定装置25は、前記上部カバー20の前後両側に夫々設け、前後の固定装置25のカム体41を取付けた切替レバー40の先端部が上部カバー20の外側に突出するように延長し、この延長部を連結バー(図示省略)により連結する。
そのため、前後の切替レバー40を連結バーにより補強でき、固定装置25の操作機構の歪み発生を防止して、上部カバー20のオープン操作の確実性を向上させられる。
前記前後一対設けた固定装置25の、夫々の係合フック27の開放操作するカム体41は、それぞれ解放時期がずれるように位相を相違させて設け、固定装置25のロック解除のタイミングがずれるように構成する。
そのため、二つの係合フック27を夫々別に開放させられるので、操作荷重を軽減させられる。
前記係合フック27は、前記係合体26に係合する係合面44を、前記係合体26に係合方向に対して直角より大きい鈍角に対峙するように構成する。
そのため、係合フック27を開放方向に回動させるに従い係合体26に対する係合抵抗を減少させられ、操作荷重(抵抗)を軽減させられる。
【0014】
前記固定装置25には、何れかの箇所に係合凹部(図示省略)と係合凸部(図示省略)を設け、係合フック27が係合体26にロックすると、係合凹部と係合凸部とが互いに係合するようにする。
そのため、係合フック27を係合体26にロックさせるときの操作に、所謂クリック感を与え、操作終了の認識の確実性を向上させられる。
また、前記カム体41を、係合フック27が係合する係合体26側に設けてもよい。カム体41は、縦長の係合フック27の係合体26に面する側の側部に作用するように配置することが、好ましく、それによって、係合フック27の係合解除を確実化ができる。
即ち、係合体26の一部に前記カム体41を設け、カム体41を回転させることにより係合フック27を離脱方向に押し出す。
【0015】
図7は、付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、前記ステー38にモータ50のリンク機構51を接続して、付勢力切替機構35を構成する。
モータ50は、所定の手扱ぎモードに設定された場合、モータ50によりリンク機構51がステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
一方、モータ50は、手扱ぎモードが解除させると、リンク機構51はステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。
この場合、手扱ぎモードは、手作業で脱穀装置3に穀稈を供給する際の設定であり、エンジンの回転を低くし、穀稈供給搬送装置17の搬送速度を遅くさせる。
【0016】
この手扱ぎモードに設定するための構成は、本願の要件ではなく、意識的なスイッチ操作あるいは穀稈供給搬送装置17に穀稈を案内するガイドの位置変更の検出等により、手扱ぎモードとなるようにすればよい。
図8は、付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、前記軸30にステー38を取付け、ステー38の一端に前記トルクスプリング34の他端37を係止し、ステー38の他端に取付けたカム体41をモータ50のリンク機構51により切り替えるようにしたものである。
図9は、付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、前記係合体26に係合する前記係合フック27を長い長フック55と短い短フック56を設け、長フック55と短フック56とは夫々別のトルクスプリング34で係合するように付勢している。
長フック55は長フック用レバー58の操作によって作動し、短フック56は短フック用レバー57の操作によって作動する。短フック用レバー57を開放側へ操作すると、長フック55用のトルクスプリング34の一端が係合するステー38が、トルクスプリング34の弾力を弱める側へ回動する。また、短フック用レバー57は前述の摩擦ブレーキ部材により、任意の位置で保持可能に構成されている。
【0017】
そのため、短フック用レバー57を開放側へ操作するほど、短フック56用のトルクスプリング34による操作荷重は増大するが、長フック55用のトルクスプリング34による操作荷重は減少させられ、その結果、全操作範囲で短フック用レバー57の操作荷重を略一様にでき、短フック用レバー57の操作が容易化される。
また、短フック用レバー57による短フック56のロック解除操作が行われると、二つの係合フック27のうちの短フック56が外れて、上部カバー20を上方回動させるが、長フック55が係合体26に係合し、上部カバー20がオープンするのを防止する。
短フック56のみが外れた半開き状態は、扱室16の処理物の吹き出しを防止しながら供給搬送チエン18の異物を取り除ける。
そして、この半開き状態では、長フック55の弾力が「弱(小)」に設定されているので、供給搬送チエン18を除去した後に、脱穀装置3駆動を停止して、扱室16内に混入した異物を取り除ける。
【0018】
図10は、長短フックにより係合フック27を構成した付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、前記軸30に取付けたステー38の一端に前記トルクスプリング34の他端37を係止し、ステー38には、モータ50のリンク機構51を連結する。
モータ50は、スイッチ操作により作業位置にすると、リンク機構51がステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。一方、モータ50は、スイッチ操作によりリンク機構51を非作業位置に位置させると、リンク機構51はステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
図11は、長短フックにより係合フック27を構成した付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、前記軸30に取付けたステー38の一端にカム体41を介して短レバー58を取付けたものである。
この場合、カム体41を前記モータ50により切り替える構成としてもよい(図12)。
【0019】
図13は、長短フックにより係合フック27を構成した付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、 長レバー57と短レバー58の間に圧縮スプリング60を設け、短レバー58を操作すると、長フック55の操作荷重を軽くする。
図14は、長短フックにより係合フック27を構成した付勢力切替機構35の他の実施形態を示し、 長レバー57と短レバー58の間に引っ張りスプリング61を設け、短レバー58を操作すると、長フック55の操作荷重を軽くする。
また、上述したレバー(オープン操作レバー)29とレバー(切替レバー)40のうち、何れか一方を開き専用レバーとし、何れか他方を閉じ専用レバーとしてもよい。
例えば、上述のレバー(オープン操作レバー)29を開き専用レバーとし、レバー(切替レバー)40を閉じ専用レバーとし、開き専用のレバー(オープン操作レバー)29の内側に閉じ専用のレバー(切替レバー)40を設ける。
そのため、開閉のレバーを専用化することにより、使いやすく、確実にできる。
【0020】
また、開き専用のレバー29の内側に閉じ専用のレバー40を設けているので、開き専用のレバー29の長さを閉じ専用のレバー40に比し長くでき、開けるときの操作荷重を一層軽減させられる。
この場合、開き専用レバーのレバー29に対して閉じ専用レバーのレバー40の設置高さを低くすると、上部カバー20を上方開放したときに、閉じ専用レバーのレバー40に手が届きやすく、操作が容易になる。
また、閉じ専用レバーのレバー40は、穀稈供給搬送装置17の挾扼杆19の上方位置させると、閉じ専用レバーのレバー40が、搬送中の穀稈を上方から押さえ、補助挾扼杆としての作用を期待できる。
また、開き専用レバーとしたレバー29は、上下何れの方向に操作しても、付勢力切替機構35のロックを解除するように構成する。
前記固定装置25は、前記係合体26と前記係合フック27の位置とを入れ替えて、脱穀装置3の機枠機枠24側に係合フック27を設け、上部カバー20側に係合体26を設け、係合体26を係合フック27に対して移動させて係脱させる構成でもよい。
【0021】
(実施形態の作用)
走行装置2により機体を前進走行させて、刈取装置4により穀稈を刈り取り、刈取搬送され穀稈は脱穀装置3にて脱穀される。
脱穀装置3の扱室16は上部カバー20により包囲され、上部カバー20により包囲された状態で刈取脱穀作業を行い、上部カバー20を上方回動させて脱穀装置3のメンテナンスを行う。
上部カバー20は、取付軸21により脱穀装置3の機枠24側に回動自在に取付け、付勢部材Gにより上方回動するように付勢して、前記上部カバー20の上方回動オープン作業を容易にしているが、固定装置25により作業時には扱室16の上方を包囲するように固定する。
【0022】
固定装置25は、機枠24側に設けた係合体26と上部カバー20側に設けた係合フック27と有し、係合フック27を常時係合体26に係合するように付勢する付勢部材28を設け、該付勢部材28の作用弾力を変更して、固定装置25の操作荷重を軽減させるように構成しているので、通常の刈取脱穀作業時では付勢部材28の付勢力を「強(大)」として上部カバー20が開かないようにするが、メンテナンス時に上部カバー20を上方回動させるとき、付勢部材28の付勢力を「弱(小)」に変更し、操作荷重を軽減させて、固定装置25のロック解除作業を容易にする。
したがって、上部カバー20の固定の確実化と開放操作の容易化とを両立させられる。
【0023】
付勢部材28はトルクスプリング34により構成し、トルクスプリング34の弾力切替機構付勢力切替機構35を固定装置25に設けているので、簡易な構成になり、固定装置25および付勢力切替機構35の小型化および低コスト化できる。
トルクスプリング34の一端36を係合フック27側に係止し、トルクスプリング34の他端37は付勢力切替機構35に設けたステー38に係止し、ステー38は軸30に回動自在に取付け、ステー38には弾力の切替レバー40を取付けて付勢力切替機構35を構成しているので、切替レバー40によりステー38の位置を切替えることにより、トルクスプリング34の弾力を変更する。
切替レバー40は作業位置に位置させると、トルクスプリング34の弾力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。
一方、切替レバー40を非作業位置に上方回動位置させると、トルクスプリング34の弾力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
【0024】
図6の付勢力切替機構35の他の実施形態では、軸30にステー38を取付け、ステー38の一端に前記トルクスプリング34の一端36を係止し、ステー38の他端にカム体41を当接させ、カム体41は前記切替レバー40に取付けているので、カム体41は切替レバー40を作業位置に位置させると、ステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。一方、切替レバー40を非作業位置に位置させると、カム体41はステー38を回動させてトルクスプリング34の弾力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
この場合、ステー38とカム体41との当接状態を、トルクスプリング34の弾力により、作業位置と非作業位置とに所謂死点越えとなって、夫々の位置に切替レバー40を保持するように構成できるので、簡易な構成になり、固定装置25および付勢力切替機構35の小型化および低コスト化できる。
【0025】
固定装置25は、上部カバー20の前後両側に夫々設け、前後の固定装置25のカム体41を取付けた切替レバー40を連結バー(図示省略)により連結すると、前後の切替レバー40を連結バー43により補強でき、固定装置25の操作機構の歪み発生を防止して、上部カバー20のオープン操作の確実性を向上させられ、好適である。
前後一対設けた固定装置25の、夫々の係合フック27の開放操作するカム体41を、解放時期がずれるように位相を相違させて設け、固定装置25のロック解除のタイミングをずらせて構成すると、二つの係合フック27を夫々別に開放させられるので、操作荷重を軽減させられ、好適である。
【0026】
固定装置25の係合フック27は、係合体26に係合する係合面44を、係合体26への係合方向に対して直角より大きい鈍角に対峙するように構成すると、係合フック27を開放方向に回動させるに従い係合体26に対する係合抵抗を減少させられ、操作荷重(抵抗)を軽減させられ、好適である。
固定装置25には、何れかの箇所に係合凹部と係合凸部を設け、係合フック27が係合体26にロックすると、係合凹部と係合凸部とが互いに係合するようにすると、係合フック27を係合体26にロックさせるときの操作に、所謂クリック感を与え、操作終了の認識の確実性を向上させられ、好適である。
【0027】
図7の付勢力切替機構35の他の実施形態では、ステー38にモータ50のリンク機構51を接続して、付勢力切替機構35を構成し、モータ50は所定の手扱ぎモードに設定された場合(スイッチ操作あるいは検出)、モータ50によりリンク機構51がステー38を回動させて付勢部材28の弾力を切替変更するので、付勢部材28の弾力を切替変更操作の容易化を図れる。
また、手扱ぎ作業時には、自動的に付勢手段28の付勢力が「弱」に設定されるので、扱室16に異物が供給された際に、容易に上部カバー20を開放して除去することができる。
【0028】
所定の手扱ぎモードに設定されると、モータ50によりリンク機構51がステー38を回動させて付勢部材28の付勢力を「弱(小)」に切り替え、上部カバー20のオープン操作の際の操作荷重を軽減させる。
一方、手扱ぎモードが解除すると、リンク機構51はステー38を回動させて付勢部材28の付勢力を「強(大)」にして作業時に振動等によって上部カバー20がオープンするのを防止する。
また、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0029】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、8…分草装置、9…引起装置、10…刈刃、15…扱胴、16…扱室、17…穀稈供給搬送装置、18…搬送チェン、19…挾扼杆、20…上部カバー、21…取付軸、24…機枠、25…固定装置、26…係合体、27…係合フック、28…付勢部材、29…オープン操作レバー(レバー)、30…軸、34…トルクスプリング、35…付勢力切替機構、36…一端、37…他端、38…ステー、40…切替レバー、41…カム体、42…取付軸、44…係合面44、50…モータ、51…リンク機構、60…圧縮スプリング、61…引っ張りスプリング。
図1
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