(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995019
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】ステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20160908BHJP
B01D 47/02 20060101ALI20160908BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20160908BHJP
B01D 50/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
B01D53/64ZAB
B01D47/02 B
B01D47/06 A
B01D50/00 501A
B01D50/00 501L
B01D50/00 501P
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-30122(P2015-30122)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-150324(P2016-150324A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年3月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508271768
【氏名又は名称】株式会社アオシマシステムエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【弁理士】
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】青 島 康 一 郎
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−039902(JP,A)
【文献】
特開平04−073937(JP,A)
【文献】
特開平10−104380(JP,A)
【文献】
特開2006−021204(JP,A)
【文献】
特開平03−166304(JP,A)
【文献】
特開平11−140550(JP,A)
【文献】
特開2001−335857(JP,A)
【文献】
特開昭50−021375(JP,A)
【文献】
特開昭52−127471(JP,A)
【文献】
特開平03−072913(JP,A)
【文献】
特開昭59−196718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/14−53/18
B01D 46/00−46/54
B01D 47/00−47/18
B01D 49/00−51/10
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法であって、
ステアリン酸亜鉛を含む気体を第1の処理室に導き、前記第1の処理室内で水を噴霧又は散水して前記ステアリン酸亜鉛を含む気体を冷却することにより、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させて捕捉し、
前記第1の処理室で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をスクラバーに導き、前記第1の処理室で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を捕捉し、
前記スクラバーで捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をフィルター室に導き、該フィルター室内のフィルターで前記スクラバーで捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸の粉体を捕捉する
ことを特徴とするステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法。
【請求項2】
第1の処理室の下流側の噴霧する水又は散水の温度は、前記第1の処理室の上流側の噴霧する水又は散水の温度より低い
ことを特徴とする請求項1記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法。
【請求項3】
下流側の噴霧する水又は散水はチリングユニットにより、上流側の噴霧する水又は散水はクーリングタワーにより、それぞれ冷却される
ことを特徴とする請求項2記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法に係り、特に、ステアリン酸亜鉛を含む気体の大気への放出を防いで、環境に寄与することができるステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーター(材料に塗料を塗布するための機器)にステアリン酸亜鉛を含む気体が発生し、従来、前記気体をそのまま大気へ放出していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、ステアリン酸亜鉛を含む気体をそのまま大気へ放出すると、ステアリン酸亜鉛を含む気体を大気へ導くダクトの内壁にステアリン酸亜鉛が固着し、ダクト内の通路を狭めたり、また、大気へ放出する周囲にステアリン酸亜鉛が固着し、除去・洗浄が困難であるという問題点が生じていた。
また、ステアリン酸亜鉛自体、人体にも害を及ぼす影響があるため、そのまま屋外へ排出したり、堆積する事は望ましくない。
【0004】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、ステアリン酸亜鉛を含む気体の大気への放出を防いだステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法は、ステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法であって、ステアリン酸亜鉛を含む気体を第1の処理室に導き、前記第1の処理室内で水を噴霧又は散水して前記ステアリン酸亜鉛を含む気体を冷却することにより、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させて捕捉し、前記第1の処理室で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をスクラバーに導き、前記第1の処理室で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を捕捉し、前記スクラバーで捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をフィルター室に導き、該フィルター室内のフィルターで前記スクラバーで捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸の粉体を捕捉するものである。
【0007】
また、請求項
2記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法は、請求項
1記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法において、第1の処理室の下流側の噴霧する水又は散水の温度は、前記第1の処理室の上流側の噴霧する水又は散水の温度より低いものである。
【0008】
また、請求項
3記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法は、請求項
2記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法において、下流側の噴霧する水又は散水はチリングユニットにより、上流側の噴霧する水又は散水はクーリングタワーにより、それぞれ冷却されるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法によれば、ステアリン酸亜鉛を含む気体を第1の処理室に導き、前記第1の処理室内で水を噴霧又は散水して、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させて捕捉し、前記第1の処理室で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をスクラバーに導き、前記第1の処理室で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を捕捉し、前記スクラバーで捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をフィルター室に導き、該フィルター室内のフィルターで前記スクラバーで捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸の粉体を捕捉するため、つまり、第1の処理室の水の噴霧又は散水効果による1次捕捉、スクラバーによる2次捕捉、フィルターによる3次捕捉を行うことで、ステアリン酸亜鉛を含む気体の大気への放出を防いで、環境に寄与することができる。
【0011】
また、請求項
2記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法によれば、前述の請求
項1記載の発明の効果に加え、第1の処理室の下流側の噴霧する水又は散水の温度は、前記第1の処理室の上流側の噴霧する水又は散水の温度より低いため、段階的冷却作用により屋外排出の前段階で強制冷却固化させ、更に段階的な捕捉を行う事により効率良くステアリン酸を回収することができる。
【0012】
また、請求項
3記載のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法によれば、前述の請求項
2記載の発明の効果に加え、下流側の噴霧する水又は散水はチリングユニットにより、上流側の噴霧する水又は散水はクーリングタワーにより、それぞれ段階的に冷却するシステムであるため、段階的に安定して且つ低コストでステアリン酸亜鉛を回収することができる。特に、燃焼処理等の方式に比較しても、イニシャルコスト、ランニングコストともはるかに安価な処理方式である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法の概略的工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例のステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法を、図面を参照して説明する。
図1において、1はコーター(材料に塗料を塗布するための機器)の乾燥工程における排気中にステアリン酸亜鉛を含む気体が発生する工場の乾燥炉ゾーン(屋内)で、2はステアリン酸亜鉛を含む気体を工場1の外へ導くダクトである。ダクト2の先端は、屋外に臨んでいる。
【0015】
ダクト2内の気体は、排気ファン21により排気されるようになっている。ダクト2は、中途より分岐し、一方は後述する第1の処理室3、スクラバー4、フィルター室5を介して屋外に、他方は、分岐ダクト22を介してそのまま大気へ放出されるようになっている。第1のダンパー23、第2のダンパー24の開閉切替により、分岐ダクト22への気体の導入を制御するようになっている。
【0016】
このように、第1のダンパー23、第2のダンパー24の開閉を選択的にしているのは、コーター(材料に塗料を塗布するための機器)にステアリン酸亜鉛を含む気体が発生する場合には、第1のダンパー23を開、第2のダンパー24を閉とし、ステアリン酸亜鉛を含む気体を第1の処理室3、スクラバー4、フィルター室5に導き、ステアリン酸亜鉛を含む気体が発生しない場合には、第1のダンパー23を閉、第2のダンパー24を開とし、分岐ダクト22を介して屋外に排気するためである。
【0017】
従って、コーター(材料に塗料を塗布するための機器)にステアリン酸亜鉛を含む気体が発生する場合には、第1のダンパー23を開、第2のダンパー24を閉とし、排気ファン21により、ステアリン酸亜鉛を含む気体(温度は、例えば、約120℃〜約150℃))は、ダクト2を介して第1の処理室3に導かれる。処理工程に導かれる際には、処理吸引ファン25が連動運転し、スクラバー4で必要なマイナス側の差圧約280mmAq(2台とも)を吸引運転する事によりスクラバー4の効果が発揮される。
第1の処理室3内では、水(気体のステアリン酸亜鉛を冷却する冷却水)がゾーン毎に噴霧され、噴霧された水と気体中に含まれるステアリン酸亜鉛が接触し、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させて捕捉するようになっている。
なお、冷却手段として水(気体のステアリン酸亜鉛を冷却する冷却水)を噴霧したが、本願発明にあっては、水の噴霧に限らず、散水(シャワーリング)して冷却するようにしても良い。
【0018】
捕捉は、例えば、第1の処理室3内の水を水回路(図示せず)に導き、該水回路の循環回路及びオーバーフロー回路に設けたフィルター(図示せず)を介して固形のステアリン酸亜鉛を回収するようにしている。
また、第1の処理室3の下流側の噴霧する水(又は散水)の温度は、第1の処理室3の上流側の噴霧する水の温度より低くなっている。
より具体的に言えば、
図1に示すように、第1の処理室3は、仕切り部材31、31、31により仕切られ、ステアリン酸亜鉛を含む気体が蛇行するように形成され、噴霧された水とステアリン酸亜鉛を含む気体が効率良く接触するようになっている。
このように、第1の処理室3に噴霧する水(又は散水)が下流側にいくに従い低い温度に制御をされているため、効率良く段階的にステアリン酸亜鉛を固化することができる。
【0019】
また、32、32、32は水が噴霧(又は散水)される第1(前半ゾーン)の噴霧口(又は散水口)で、33は水が噴霧(又は散水)される第2(後半ゾーン)の噴霧口(又は散水口)である。
第1の処理室3の下流側の噴霧する水(又は散水)は図示しないチリングユニットにより、例えば、約10℃に冷却され、冷却された水は、第2の噴霧口(又は散水口)33を介して第1の処理室3に供給される。
また、第1の処理室3の上流側の噴霧する水(又は散水)は図示しないクーリングタワーにより、例えば、外気湿球温度程度まで冷却され、冷却された水は、第1の噴霧口(又は第1の散水口)32、32、32を介して第1の処理室3に供給される。
このように、第1の処理室3の下流側の噴霧する水(又は散水)は図示しないチリングユニットにより、第1の処理室3の上流側の噴霧する水は図示しないクーリングタワーにより、それぞれ冷却されるため、段階的に安定して且つ低コストでステアリン酸亜鉛を回収することができる。
【0020】
第1の処理室3で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をスクラバー4、4に導き、第1の処理室3で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を捕捉する。
スクラバー4は、下部からステアリン酸亜鉛を含む気体を吸引させ、タンク内の水とバブリングし接触させる事により、ステアリン酸亜鉛を含む気体を洗浄し,ステアリン酸亜鉛の凝集をはかり、ステアリン酸亜鉛を水中に捕捉するものである。浄化された気体は上部より次工程へと導かれる。
なお、スクラバー4内の固化したステアリン酸亜鉛は、水中内に沈殿せずに浮き上がってくるため、スクラバー4に蒸発分とオーバーフロー分の給水を行い、常時オーバーフローさせ、オーバーフローした排水の中途に設けたフィルター(図示せず)を介して固形のステアリン酸亜鉛を回収するようにしている。
【0021】
そして、スクラバー4で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体を排気ファン25、25によりフィルター室5に導き、フィルター室5のフィルター(例えば、不織布のフィルター)51、(例えば、30/30形のフィルター)52で、スクラバー4で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸の粉体を捕捉して、つまり、第1の処理室3の水の噴霧又は散水効果による1次捕捉、スクラバー4による2次捕捉、フィルター室5のフィルターによる3次捕捉を行うことで、ステアリン酸亜鉛を含む気体の大気への放出を防いで、環境に寄与することができる。
【0022】
本発明にあっては、上述したように、望ましくは、ステアリン酸亜鉛を含む気体を第1の処理室3に導き、第1の処理室3内で水を噴霧(又は散水)して、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させて捕捉し、第1の処理室3で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をスクラバー4に導き、第1の処理室3で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を捕捉し、スクラバー4で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体をフィルター室5に導き、フィルター室5内のフィルター51でスクラバー4で捕捉しきれないステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸の粉体を捕捉するが、本願発明はこれに限らず、ステアリン酸亜鉛を含む気体の処理方法にあっては、ステアリン酸亜鉛を含む気体を第1の処理室3に導き、前記第1の処理室3内で水を噴霧(又は散水)して、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させる工程を含むものであれば良い。
これは、本実施例の全工程中、ステアリン酸亜鉛を含む気体中に含まれるステアリン酸の粉体の約6〜7割を第1の処理室3内で水を噴霧(又は散水)して、気体中に含まれるステアリン酸亜鉛を固化させる工程により、捕捉することができたからである。
【符号の説明】
【0023】
3 第1の処理室
4 スクラバー
5 フィルター室