特許第5995057号(P5995057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5995057磁石埋込型永久磁石回転電機のロータおよびその組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995057
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】磁石埋込型永久磁石回転電機のロータおよびその組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20160908BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20160908BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
   H02K1/22 A
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 501K
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-98689(P2012-98689)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-229955(P2013-229955A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】持田 敏治
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−172359(JP,A)
【文献】 特開2006−029321(JP,A)
【文献】 特開昭58−195462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトに組み付けたロータコアに、複数のセグメント永久磁石を周方向に配列して埋設した磁石埋込型永久磁石回転電機のロータであり、その磁極配列に対応してロータコアの外周部には軸方向に延在する凹溝状の磁石スロットを形成した上で、該磁石スロットに永久磁石,および軟磁性体の磁石抑え部材をd軸方向に積層して嵌入配置されたものにおいて、
前記磁石スロットの開口端部には前記磁石抑え部材と間隙を隔てて対向するスペーサ係合段部を軸方向に沿って形成した上で、該スペーサ係合段部と磁石抑え部材との間の間隙に嵌挿した非磁性金属のパイプ状スペーサを介して永久磁石,磁石抑え部材の遠心荷重を支えるようにし、磁石スロットの凹溝幅を永久磁石,磁石抑え部材より一回り大に設定したことを特徴とする磁石埋込型永久磁石回転電機のロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、ロータコア,および磁石抑え部材を電磁鋼板の積層体で構成したことを特徴とする磁石埋込型永久磁石回転電機のロータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータにおいて、ロータコアと磁石抑え部材との間に介挿したパイプ状スペーサの内部を非磁性の固体で満たしたことを特徴とする磁石埋込型永久磁石回転電機のロータ。
【請求項4】
請求項に記載のロータにおいて、パイプ状スペーサの材質が銅、該スペーサの内部を満たした非磁性の固体がハンダであることを特徴とする磁石埋込型永久磁石回転電機のロータ。
【請求項5】
請求項1ないしに記載のロータの組立方法であって、永久磁石に磁石抑え部材をd軸方向に重ね合わせた上で、この積層体をロータコアに形成した磁石スロット内に嵌入する第1の工程と、磁石スロットの開口端側部に形成したスペーサ係合段部と磁石抑え部材との間に非磁性金属のパイプ状スペーサを軸方向に嵌挿する第2の工程と、ロータコアの軸中心部に穿設したシャフト挿通孔にロータシャフトを圧入して「しまりばめ」する第3の工程と、その後にパイプ状スペーサの内部を非磁性の固体で満たす第4の工程からなる磁石埋込型永久磁石回転電機のロータ組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型永久磁石回転電機におけるロータの組立構造,およびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先ず、磁石埋込型永久磁石回転電機(IPM)を例に、その全体の組立構造を図6に示す。図6において、1は円筒状の外囲フレーム1とその両端に締結ボルト3を介してブラケット4,5を結合したモータケーシング、6は前記フレーム1の内側に支持したステータ、7はステータの内周側にギャップを隔てて対向するロータ組立体、8はロータコア、9はロータコア8の周方向に配列してその外周近くに埋設したセグメント永久磁石(以下、「永久磁石」と略称する)、10はロータコア9の両端に配した非磁性体のエンドプレート、11はロータコア8の締結ボルト、12はロータコア8を搭載したロータシャフト、13はロータシャフト12をブラケット4,5に軸支する軸受、14は冷却ファンである。
【0003】
一方、IPMモータのロータについて、鋳鉄系磁性体になるロータコアの外周面近くに穿設した磁石挿入孔に嵌入して埋設した永久磁石の漏れ磁束を抑えるために、永久磁石の磁極配列に合わせてロータコアの外周部に永久磁石を収容する凹溝を形成した上で、この凹溝に収容した永久磁石を外周側から抑え込むように電磁鋼板の積層体になる抑え材を前記凹溝と非接触の姿勢に配置した上で、この抑え材,および永久磁石をロータコアから前記凹溝に張り出すリブ状の張り出し箇所とロータコアの両端に配したエンドプレートとの間に挟み込んで固定し、さらに前記抑え材,およびコアの張り出し箇所を軸方向に貫通する棒材の両端エンドプレートに固定し、ロータの回転に伴って永久磁石,磁石抑え部材の遠心荷重を支えるようにしたロータの組立構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−125104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されているロータの組立構造によれば、永久磁石の漏れ磁束を抑えつつ、ロータの回転に伴いロータコアの凹溝内に収容した永久磁石,抑え材の遠心荷重を支えることができるものの、一方では高速回転時における耐遠心力強度の確保、ロータの組立性など面で次記のような課題が残る。
【0006】
すなわち、軸方向に分割した永久磁石,および電磁鋼板積層体の抑え材をロータコアの両端に配したエンドプレートとロータコアに一体形成した前記張り出し箇所の間に挟み込んで軸方向に挟持締結した構造では、ロータコアの軸方向の長さが大きくなると、永久磁石,抑え材の中央部分に加わる遠心荷重をエンドプレート,コアの張り出し箇所で支えることかできず、このままでは高速回転に対して信頼性の高い耐遠心荷重強度を確保することが困難である。
【0007】
この点について特許文献1では、抑え材,およびロータコアの張り出し箇所を軸方向に貫通する棒材を追加してその両端をエンドプレートで支持するようにしているが、この棒材で抑え材の遠心荷重を支えるには、前記張り出し箇所の数を増やしてその相互間隔(棒材の支点間スパン)を狭める必要がある。しかしながら、この張り出し箇所はモータの駆動トルクに寄与せず、逆に永久磁石の漏れ磁束の経路になるために、ロータコアに一体形成した前記張り出し箇所の数が増えると、ロータコアの軸長が増加してモータのトルク密度が低下する。そのほか、ロータコアに組み込む永久磁石,抑え材は、前記張り出し箇所の相互間隔に合わせて軸方向に分割する必要があり、前記棒材の組立構造も複雑となるほか組立工数も増すなどして製品コストが嵩む。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的はロータコアに埋設した永久磁石の漏れ磁束を抑えつつ、ロータコアの外周部に形成した凹溝の中に収容配置した永久磁石,およびその磁石抑え部材に加わる遠心荷重を簡易な構造で確実に支えることができるように改良した磁石埋込型永久磁石回転電機のロータ組立構造,およびその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ロータシャフトに組み付けたロータコアに、複数のセグメント永久磁石を周方向に配列して埋設した磁石埋込型永久磁石回転電機のロータであり、その磁極配列に対応してロータコアの外周部には軸方向に延在する凹溝状の磁石スロットを形成した上で、該磁石スロットに永久磁石,および軟磁性体の磁石抑え部材をd軸方向に積層して嵌入配置したものにおいて、
前記磁石スロットの開口端部には前記磁石抑え部材と間隙を隔てて対向するスペーサ係合段部を軸方向に沿って形成した上で、該スペーサ係合段部と磁石抑え部材との間に嵌挿した非磁性金属になるパイプ状のスペーサを介して永久磁石,磁石抑え部材に加わる遠心力荷重を支えるようにし、磁石スロットの凹溝幅を永久磁石,磁石抑え部材より一回り大に設定し(請求項1)、具体的には次記のような態様で構成する。
(1)前記のロータコア,および磁石抑え部材を電磁鋼板の積層体で構成する(請求項2)。
(2)前記ロータコアと磁石抑え部材との間に介挿したパイプ状スペーサの内部を非磁性の固体で満たす(請求項)。
(3)前項()において、パイプ状スペーサの材質が銅、該スペーサの内部を満たした非磁性の固体がハンダである(請求項)。
【0010】
また、本発明によれば、前記組立構造のロータを次記工程からなる組立方法により組み立てるものとする。すなわち、
第1の工程では永久磁石に磁石抑え部材をd軸方向に重ね合わせた上で、この積層体をロータコアの磁石スロット内に嵌入し、続く第2の工程で磁石スロットの開口端部に形成したスペーサ係合段部と磁石抑え部材との間に非磁性金属のパイプ状スペーサを軸方向に嵌挿する。次に、第3の工程でロータコアのシャフト貫通穴にロータシャフトを圧入してロータコアを「しまりばめ」した後、第4の工程でパイプ状スペーサの内部を非磁性の固体で満たす(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
上記組立構造になるロータによれば、次記の効果を奏することができる。
(1)ロータの組立状態では、ロータコアの磁石スロット(凹溝)に収容した永久磁石,および磁石抑え部材の積層体を、磁石スロットの開口端部に沿って軸方向に形成したスペーサ係合段部と磁石抑え部材との間の間隙に嵌挿した非磁性金属のパイプ状スペーサを介して永久磁石,磁石抑え部材の遠心荷重をその軸方向の全長域で担持することができる。
【0012】
これにより、ロータの組立工程では特許文献1の開示構造のように永久磁石,抑え材を軸方向に分割したり、抑え材,コアの張り出し箇所を貫通して両端のエンドプレートに支持する棒材を設けたりする必要が無く、ロータの組立作業性が向上する。また、ロータコアには磁石スロットを軸方向に分割する張り出し箇所を設ける必要がないので、この張り出し箇所の配列によるモータのトルク密度低下、ロータの軸長増大化も回避できる。
(2)ここで、ロータに外周部に形成した凹溝状の磁石スロットについて、その周方向の溝幅を永久磁石,磁石抑え部材より一回り大に設定しておくことにより、ロータの組立時には永久磁石と磁石抑え部材の積層体をロータのd軸方向から容易に挿入することができて組立作業性の簡易化が図れる。
(3)また、ロータの組立方法において、ロータコアに形成した凹溝状の磁石スロットに永久磁石,磁石抑え部材を収容し、次いで磁石スロットの凹溝開口端の側縁に沿って形成したスペーサ係合段部と間隙を隔てて対峙する磁石抑え部材との間に非磁性のパイプ状スペーサを軸方向に嵌挿した組立状態で、次にロータコアの中心部に穿設したシャフト挿通孔にロータシャフトを圧入(ないし焼き嵌め)して「しまりばめ」すると、「しまりばめ」荷重を受けてロータコアが僅かに変形(圧入膨れ)してパイプ状スペーサを嵌挿した部分の隙間が圧縮され、この変形を受けてスペーサのパイプが僅かに押し潰されたかたちで磁石スロットと磁石抑え部材との間に遊び隙間を残さずに密着状態に挟み込まれる。そして、この組立段階でパイプの内部にハンダ等の非磁性固体を満たすことにより、パイプ状のスペーサが中実体となって永久磁石,磁石抑え材の全長域に作用する遠心荷重をロータコアで確実に支えることができる。
(4)さらに、ロータのコア本体,および磁石抑え部材を電磁鋼板の積層体で構成することにより、コア本体と磁石スロットの張り出し箇所を鋳鉄系の磁性体で一体に構成した構造(特許文献1)と比べて、ロータコアの鉄損を低めて高トルク,大出力のモータを小型コンパクトに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例によるロータの主要部構造を軸方向から見た模式図である。
図2図1における各部品の形状図であって、(a)はロータコア,(b)は永久磁石,(c)は磁石抑え部材の模式断面図である。
図3図1に示したロータの組立手順(工程:I)の説明図である。
図4図1に示したロータの組立手順(工程:II)の説明図である。
図5図1に示したロータの組立手順(工程:III)の説明図である。
図6】磁石埋込型永久磁石回転電機の構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1図5に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図6に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
すなわち、永久磁石の配列に合わせてロータコア8の外周部には軸方向に延在する凹溝状の磁石スロット8aを形成し、該磁石スロット8aの凹溝内には永久磁石9,および軟磁性体の磁石抑え部材15をd軸方向に積層して嵌入配置されている。
【0015】
ここで、ロータコア8,および磁石抑え部材15は電磁鋼板の積層体である。また、永久磁石8は平角形のセグメント永久磁石(図2(b)参照)であり、磁石抑え部材15はその長手方向(軸方向)に沿って左右両側縁部に頂部より一段低い肩部15aが形成された台形形状になる。
【0016】
一方、ロータコア8の外周部に形成した凹溝状の磁石スロット8は、その周方向の溝幅A(図2参照)を永久磁石9,磁石抑え部材15の横幅Bよりも一回り大きく(A>B)設定し、さらに凹溝開口端部の溝内側壁面には前記磁石抑え部材15の肩部15aとの間に間隙を隔てて対向する凹状のスペーサ係合段部8bがロータの軸方向に沿って形成されている。また、図示構造では永久磁石9の左右側面に対向してスペーサ係合段部8bと凹溝底面との中間に突起部8cを形成している。
【0017】
そして、前記スペーサ係合段部8bと磁石抑え部材15の肩部15aとの間の間隙には非磁性金属製のパイプ状スペーサ16を軸方向に嵌挿して永久磁石9,磁石抑え部材15aを磁石スロット8aの凹溝底面に抑え込むようにしている。
【0018】
ここで、前記のパイプ状スペーサ16は銅などで作られた非磁性金属パイプ(外径が例えば3mm程度)であり、後記のようにロータコア8をロータシャフト12に圧入して「しまりばめ」した組立段階で、パイプの内部にハンダ等の非磁性固体17を満たしてパイプ状スペーサ16の剛性を高めるようにしている。
【0019】
上記の組立構造によれば、永久磁石9のN極とロータコア8との間が間隙を隔てて隔離され、さらに永久磁石9に積層した軟磁性体の磁石抑え部材15とロータコア8との間には非磁性金属のパイプ状スペーサ16を介挿しているので、永久磁石9の漏れ磁束を効果的に抑制しつつ、ロータの回転に伴って発生する永久磁石10,および磁石抑え部材16の遠心荷重を、パイプ状スペーサ16を介してロータコア8に支えることができる。しかも、このパイプ状スペーサ16は磁石スロット8aの軸方向全域に延在しているので、遠心荷重をパイプ全長で分担して高速回転に伴う大きな遠心荷重も安全に支えることができる。
また、磁石スロット8aの凹溝内の側壁には永久磁石9の左右側面に細隙を隔てて対峙する突起部8c(図1参照)が形成されているので、回転電機の運転時に永久磁石9がトルク荷重を受けて定位置から周方向にずれ動いてd軸が変位するのを防ぐことができる。
【0020】
次に、図1のロータ組立構造について、その組立工程,作業手順を図3図5により説明する。
まず、第1の工程では永久磁石9に磁石抑え部材15をd軸方向に重ね合わせて一体化した上で、この積層体をロータコア8の磁石スロット8aに挿入する(図3参照)。この際に、磁石スロット8aの溝幅Aを永久磁石9,磁石抑え部材15の横幅Bよりも一回り大きく(A>B)設定しておくことで、永久磁石9と磁石抑え部材15の積層体をロータコア8のd軸方向から挿入することが可能であり、特にロータコア8,永久磁石9の軸長が大である場合でも、ラジアル方向から作業性よく容易に嵌入できる。また、永久磁石9(例えば、ネオジウム磁石)は脆くて機械強度が低いが、前記のように永久磁石9に磁石抑え部材15をあらかじめ接着して一体化しておけば、ロータコア9に組み込む際には磁石抑え部材15を治具で把持して磁石スロット8aへの嵌入作業を安全に行える。
【0021】
続く第2の工程では、磁石スロット8aの開口端部に形成した凹状のスペーサ係合段部8bと磁石抑え部材15の肩部15aとの間に非磁性金属のパイプ状スペーサ16を軸方向に嵌挿する(図4参照)。なお、この嵌挿作業が楽に行えるようにするために、パイプ状スペーサ16はその外径を前記隙間に対して僅かなクリアランス(数百μm程度)を確保するように細めに設定しておくものとする。
【0022】
次に、第3の工程でロータコア8の軸中心に穿設したシャフト嵌挿孔にロータシャフト12を圧入,ないし焼き嵌めしてロータコア8をロータシャフト12に「しまりばめ」する(図5参照)。このシャフトの圧入によりロータコア8は「しまりばめ」荷重Fを受けて僅かに膨れ変形し、磁石スロット8aの開口端側ではパイプ状スペーサ16を嵌挿した部分の隙間が圧縮されるので、パイプ状スペーサ16はパイプ自身が僅かに押し潰された状態でスペーサ係合段部8bと磁石抑え部材15との間に隙間無く密着して挟み込まれるようになる。これにより、ロータコア9,磁石抑え部材15の寸法精度の誤差をパイプ状スペーサ16の潰れ変形により吸収させることができる。
【0023】
次の第4工程では、パイプ状スペーサ16のパイプ内を非磁性固体17で満たす。これにより今まで中空体であったパイプ状のスペーサ16が中実体になって剛性が増し、永久磁石9,磁石抑え材15の全長域に加わる遠心荷重を確実に支えることができる。
【0024】
なお、前記の非磁性固体17に例えばハンダを採用し、このハンダを溶融状態でパイプ内に満たした後に冷却,固化させるものとし、具体的にはパイプ状スペーサ16のパイプ径に対応した太さの棒状ハンダにあらかじめ細いニクロム線(ヒータ線)を仕込んでおき、この棒状ハンダをパイプ内に挿入した状態でニクロム線に通電してハンダを溶かし、パイプ内を隙間無く満たす。そして、パイプを冷却してハンダ層を固化した後にニクロム線と一緒にパイプの端部を封じ切る。なお、パイプ状スペーサ9の内部を満たす非磁性固体17としては、ハンダ以外に例えば熱硬化性樹脂を充填して硬化させてもよい。
【符号の説明】
【0025】
6 ステータ
7 ロータ組立体
8 ロータコア
8a 磁石スロット
8b スペーサ係合段部
9 永久磁石
12 ロータシャフト
15 磁石抑え部材
15a 肩部
16 非磁性のパイプ状スペーサ
17 非磁性固体
図1
図2
図3
図4
図5
図6