特許第5995110号(P5995110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995110
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】心室内ロープロファイル補綴僧帽弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-535104(P2013-535104)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(65)【公表番号】特表2013-545515(P2013-545515A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】US2011057170
(87)【国際公開番号】WO2012054776
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/405,370
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】コヴァルスキー イゴール
(72)【発明者】
【氏名】クレーグ シンシア ティー
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/150529(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/053497(WO,A1)
【文献】 特表2010−502320(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098857(WO,A1)
【文献】 特表2011−528256(JP,A)
【文献】 特表2011−512922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓内の僧帽弁のところに経皮的に配備可能に構成された補綴弁であって、前記補綴弁は、
補綴心臓弁を支持するよう構成された支持構造体を備え、該支持構造体がステント状フレームを有し、該ステント状フレームは、下流側区分よりも大きな拡張直径を備えた上流側区分を有し、前記ステント状フレームの円周で互いに交互に位置する複数の連続領域と複数の不連続領域を形成し、
前記ステント状フレームの連続領域の各々が、前記ステント状フレームの上流端から下流端まで互いに接続され長手方向に延びるセルのバンドを形成し、
前記ステント状フレームの不連続領域の各々が、前記ステント状フレームの上流端から下流端まで長手方向に延びるセルのバンドであって、前記上流側区分と下流側区分の間で隣接するセルが互いに接続されていない、セルのバンドを形成し、
前記ステント状フレームの不連続領域内の各々においては、前記下流側区分の接続されていないセルが、前記ステント状フレームの前記上流側区分内を長手方向に延びることによって、前記下流側区分の接続されていないセルが前記上流側区分の接続されていないセルの径方向内方に位置決めされるように、前記上流側区分の接続されていないセルと少なくとも部分的にオーバーラップしている、
ことを特徴とする補綴弁。
【請求項2】
前記ステント状フレームのストラットが、前記連続領域および不連続領域のセルを形成する、
請求項1に記載の補綴弁。
【請求項3】
前記下流側区分の接続されていないセルが、前記不連続領域の各々内に前記下流側区分の上流側の内側端部を形成している、
請求項1に記載の補綴弁。
【請求項4】
前記ステント状フレームの下流側区分に取り付けられた補綴三尖心臓弁を更に備え、前記補綴三尖心臓弁の葉片の各々は、その最も高い曲率箇所のところが前記下流側区分の対応の上流側の内側端部に取り付けられている、
請求項3に記載の補綴弁。
【請求項5】
前記不連続領域の各々内において、前記上流側区分の接続されていないセルが内方に湾曲し、生体内への配備時に前記支持構造体を固定するための突刺となるよう構成されている、
請求項3に記載の補綴弁。
【請求項6】
前記ステント状フレームの下流側区分は、拡張形態において、長さL1の短いセグメント及び前記長さL1よりも長い長さL2の長いセグメントを含む円筒を構成する、
請求項1に記載の補綴弁。
【請求項7】
前記下流側区分の短いセグメントは、前記ステント状フレームの連続領域内に位置し、前記下流側区分の長いセグメントは、前記ステント状フレームの不連続領域内に位置し、前記短いセグメントと前記長いセグメントは、前記ステント状フレームの周囲に沿って互いに交互に位置している、
請求項6に記載の補綴弁。
【請求項8】
前記下流側区分の前記長いセグメントは、前記不連続領域の各々内の前記上流側区分と前記下流側区分との間に、前記少なくとも部分的なオーバーラップを生じさせるよう前記上流側区分の内側で延びる上流側の内側端部を有する、
請求項7に記載の補綴弁。
【請求項9】
前記ステント状フレームの下流側区分に取り付けられた補綴三尖心臓弁を更に備え、
前記補綴三尖心臓弁の葉片の各々は、その最も高い曲率箇所のところが前記下流側区分の対応の上流側の内側端部に取り付けられている、
請求項8に記載の補綴弁。
【請求項10】
前記筒体の長さL1は、14mm〜18mmであり、前記筒体の長さL2は、8mm〜13mmである、
請求項6に記載の補綴弁。
【請求項11】
前記ステント状フレームに固定され、前記不連続領域内に滑らかな流れ面を提供する内張りを更に備えている、
請求項1に記載の補綴弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、非外科的インターベンション手技で生まれつきの弁又は以前移植された補綴弁に代わる補綴弁に関する。特に、本発明は、補綴心臓弁と関連した器械及び方法に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2010年10月21日に出願された米国特許仮出願第61/405,370号について35U.S.C.§119(e)の規定による権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁は、2種類の病理学的症状、即ち、逆流症及び狭窄症を示す。逆流症は、2つの欠陥又は障害のよく見受けられる結果である。いずれの欠陥又は障害も、外科的修復によって治療可能である。或る特定の条件下では、僧帽弁を交換する必要がある。僧帽弁置換術の標準的な外科的アプローチでは、生まれつきの僧帽弁にアクセスするために心臓の左側を切断開放する必要がある。
【0004】
チューバル等(Tuval et al.)の米国特許出願公開第2008/0071363号明細書は、少なくとも一実施形態では経心尖的アプローチにより生まれつきの弁複合体の生まれつきの大動脈半月弁のところに移植可能な補綴具を記載している。補綴具は、下流側動脈中に位置決めされるよう構成されると共に正確には3つの近位係合アームを定めるよう形作られた遠位固定部材を含み、これら3つの近位係合アームは、半月洞の各々内に少なくとも部分的に位置決めされるよう構成されると共に組み合わせ状態で半月洞を構成する組織に心室の方へ向けられた第1の軸方向力を加えるよう構成されている。補綴具は、生まれつきの半月弁の心室側に少なくとも部分的に位置決めされて生まれつきの弁複合体の心室側に下流側動脈の方へ向けられた第2の軸方向力を加えるよう構成された近位固定部材を更に含み、第1及び第2の力を加えると、補綴具が生まれつきの弁複合体に結合するようになっている。
【0005】
ロウ等(Rowe et al.)の米国特許出願公開第2009/0276040号明細書は、補綴僧帽弁組立体及び少なくとも一実施形態において経心尖的アプローチによりこの補綴僧帽弁組立体を挿入する方法を記載している。或る特定の実施形態では、補綴僧帽弁組立体は、生まれつきの僧帽弁の輪郭にフィットするようラッパ形上端部及びテーパ付き部分を備えたステント又は外側フレームを含む。
【0006】
チャウ等(Chau et al.)の米国特許出願公開第2010/0217382号明細書は、補綴僧帽弁組立体及び少なくとも一実施形態において経心尖的アプローチにより補綴僧帽弁組立体を挿入する方法を記載している。補綴僧帽弁組立体は、ステントフレーム・弁組み合わせを含み、上側固着部分は、左心房内で僧帽弁の弁輪上方に位置決め可能である。ステントフレームの上方固着部分は、セルが隣接のセルから意図的に切り離されたままであって僧帽弁組立体を定着させた枝部を形成するよう外方に曲げられた状態で構成された格子構造体を含む場合がある。
【0007】
ゴーツ等(Goetz et al.)の米国特許出願公開第2009/0005863号明細書は、機能不全状態の生まれつきの心臓弁の口の中央に移植可能な置換弁を記載している。置換弁は、患者の胸部中の肋間口及び人の心臓の心尖部の口を通って低侵襲状態で入るよう設計されている。置換弁は、機能不全状態の生まれつきの弁葉片に巻き付いてこれら葉片をサンドイッチして置換弁を所望の場所に定着させるための別個のアンカーか組み合わせアンカーかのいずれかを含む。
【0008】
ストロービンガー等(Straubinger et al.)の米国特許出願公開第2009/0216312号明細書(以下、「ストロービンガー等」と言う場合がある)は、補綴弁を患者の心臓内の移植位置に位置決めして定着させるステントを記載している。具体的に言えば、ストラウビンガー等は、位置決めアーチ及び保持アーチを備えた体内補綴具用の拡張型ステントに関し、少なくとも1つの位置決めアーチは、第1の連結ウェブにより少なくとも1つの保持アーチに連結される。ステントは、少なくとも1つの位置決めアーチに連結された少なくとも1つの保持アーチのそれぞれのアームに連結される少なくとも1つの補助保持アーチを更に含む。
【0009】
ギュエノット等(Guyenot et al.)の米国特許出願公開第2008/0255660号明細書は、患者の体内に導入されて患者の大動脈中に補綴心臓弁を固定するよう拡張可能な体内補綴具を用いて心臓弁閉鎖不全症を治療する医用器具を記載している。体内補綴具は、複数の位置決めアーチを有するのが良く、これら複数の位置決めアーチは、補綴心臓弁を支持するよう複数の保持アーチに連結されると共にこれらの上方に位置決めされた患者の大動脈に対して位置決めされるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0071363号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0276040号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0217382号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0005863号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0216312号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0255660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
他の弁、例えば肺動脈弁や大動脈弁と比較してこれらとは異なる僧帽弁の物理的特性に起因して、僧帽弁位置への補綴弁の経皮的移植は、弁置換に関してそれ自体の独特の要件を有する。当該技術分野において、低侵襲技術により送達することができると共に心臓の構造に対応することができる改良型僧帽弁置換具を提供することが要望され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態は、心臓内の僧帽弁のところに配置可能に構成されていて、補綴僧帽弁を支持するステント状支持構造体を含む補綴心臓弁に関する。支持構造体は、生体内への配備時に左心室中に突き出るほんの短い長さ分を備えた心室内ロープロファイルを有するよう構成されている。支持構造体は、補綴僧帽弁を心房壁内に少なくとも部分的に定着させるために配備時に心房壁に当たるよう外方に拡張可能な上流側区分及び補綴僧帽弁が結合される下流側区分を有する。下流側区分は、左心房と左心室との間で生まれつきの僧帽弁を貫通するよう構成され、補綴心臓弁の心室内ロープロファイルは、配備拡張形態において下流側区分が支持構造体の周囲に沿って所与の領域で支持構造体の上流側区分内に延びると共にこれとオーバーラップするよう支持構造体を付形することによって達成される。
【0013】
本発明の上記特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付の図面に示されている本発明の実施形態の以下の説明から明らかになろう。添付の図面は、本明細書に組み込まれたその一部をなし、これら添付の図面は、更に、本発明の原理を説明すると共に当業者が本発明を構成して利用することができるようにするのに役立つ。図面は、縮尺通りにはなっていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】補綴僧帽弁又は僧帽弁バイオ補綴具の支持構造体の側面図であり、支持構造体が、本発明の実施形態に従って連続領域及び不連続領域を備えるよう形作られている状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に従って補綴僧帽弁の輪郭と重ね合わされた図1の平べったくされた非拡張支持構造体の略図である。
図3図1の支持構造体の概略断面図である。
図4図1の支持構造体の概略断面図であり、この支持構造体内に本発明の実施形態に従って内張りが設けられている状態を示す図である。
図5A図1の支持構造体の斜視図であり、本発明の実施形態に従って補綴僧帽弁が支持構造体内に配置されている状態を示す図である。
図5B図1の支持構造体の側面図であり、本発明の実施形態に従って補綴僧帽弁がこの支持構造体内に配置されている状態を示す図である。
図5C】支持構造体の上流側端面図であり、図5Bに示された補綴僧帽弁がこの支持構造体内に配置されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の特定の実施形態について説明する。以下の説明において、「上流側」及び「下流側」という用語が心臓を通る血流に対する位置又は方向に関して用いられている。更に、本明細書で用いられる「外方」又は「外方に」という用語は、補綴具の長手方向軸線LAから半径方向に遠ざかる位置に関し、「内方」又は「内方に」という用語は、補綴具の長手方向軸線LAに半径方向に向かう位置を示している。更に、「自己拡張性」という用語が補綴弁の支持構造体に関して以下の説明において用いられる場合、この用語は、支持構造体が圧縮又は収縮送達形態から拡張配備又は展開形態に戻る機械的記憶特性を有する材料から形作られ又は形成されていることを意味するようになっている。非限定的な例示の自己拡張性材料としては、ステンレス鋼、疑似弾性金属、例えばニッケルチタン金属又はニチノール、ポリマー又はいわゆるスーパーアロイ(超合金)が挙げられ、このようなスーパーアロイは、ニッケル、コバルト、クロム又は他の金属の母材を有する場合がある。機械的記憶特性は、例えばステンレス鋼にスプリングテンパーを達成し又は影響を受けやすい金属合金、例えばニチノールに形状記憶特性を設定する熱処理によってワイヤ又は管状構造体に付与できる。形状記憶特性を有するよう作ることができる種々のポリマーも又、本発明の実施形態に用いるのに適している場合があり、このようなポリマーとしては、ポリノルボレン(polynorborene)、トランス‐ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエン及びポリウレタンのようなポリマーが挙げられる。ポリL‐D乳酸コポリマー、オリゴカプリルアクトンコポリマー及びポリシクロ‐オクチンも又、他の形状記憶ポリマーとは別個に又はこれらと関連して使用できる。
【0016】
本発明の他の実施形態では、補綴弁の支持構造体は、形状記憶生分解性材料、例えば天然又は合成生分解性ポリマーで作られるのが良く、このような形状記憶生分解性材料の非限定的な例は、多糖類、例えばアルギネート、デキストラン、セルロース、コラーゲン及びこれらの化学的誘導体、タンパク、例えばアルブミン、ゼイン及びこれらのポリマー配合物だけを含み又は合成ポリマー、ポリヒドロキシ酸、例えばポリラクチド、ポリグリコリド及びこれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシバレリアン酸)、ポリ[ラクチド‐コ(ε‐カプロラクトン)]、ポリ[グリコリド‐コ‐(ε‐カプロラクトン)]、ポリカーボネート、ポリ(ピエゾアミノ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ無水物、ポリオルトエステル及びこれらの配合物及びコポリマーと組み合わせて含む。
【0017】
以下の詳細な説明は、性質上例示に過ぎず、本発明又は本発明の用途及び使用を限定するものではない。本発明の説明は、心臓弁、例えば僧帽弁の治療と関連しているが、本発明は、有用であると考えられる任意他の体内通路にも利用できる。さらに、上述の技術分野、背景技術、発明の概要又は以下の詳細な説明に提供される明示され又は示唆された理論によって束縛されるものではない。
【0018】
本発明の実施形態は、左心房と左心室との間に位置するよう心臓内の僧帽弁のところに配置可能に構成された補綴弁に関する。図1は、補綴僧帽弁、又は僧帽弁バイオ補綴具22の支持構造体20を本発明の実施形態に従って拡張形態で示す。支持構造体20は、拡張直径D1を備えた上流側端部10及び拡張直径D1よりも小さい拡張直径D2を備えた下流側端部12を備えた段付き拡張プロフィールを有する自己拡張性ステント状フレームである。ステント状フレームは、ダイヤモンド形状のセルCを備えるが、本発明の範囲から逸脱せずに他のセル形状が想定される。補綴弁が取り付けられた支持構造体20は、心臓内の治療部位まで追跡可能なカテーテルを利用した送達システムのシース又は他の格納構造体内で半径方向に圧縮可能であり、この支持構造体は、この構造体の自己拡張特性により図1に示されている拡張形態に戻る。
【0019】
図2は、平べったくされ、即ち管の形にまだ形成されておらず、補綴僧帽弁28の輪郭と重ね合わされた支持構造体20を示している。支持構造体20のステント状フレームは、セルCを連続領域30及び不連続領域32を備えたメッシュ、又はネットパターンで構成する複数のストラットSによって形成されている。支持構造体20の連続領域30を支持構造体の上流側端部10から下流側端部12まで互いに連続的に連結されたセルCの長手方向に延びるバンド又はストリップを形成するものとして説明する場合がある。支持構造体20の不連続領域32を1組又は1対の長手方向に隣接即ち隣り合うセル、例えば破断部即ち隙間Gが上流側区分24及び下流側区分26内に存在するよう互いに連結されていない上流側区分24の下流側セルC1及び下流側区分26の対応の上流側セルC2を有するセルCの長手方向に延びるバンド又はストリップを形成するものとして説明する場合がある。連続領域30と不連続領域32は、図1及び図2に示されているように支持構造体の周囲に沿って互いに交互に位置し、支持構造体20の円周方向部分を包囲する円周方向移行即ちジョイントセグメント34を構成しており、この場合、1組又は一群の連結されていない又は不連続のセルが1組の又は一群の連結された、又は連続したセルによって分離されている。
【0020】
支持構造体20は、本質的に、ジョイントセグメント34で、上流側の区分24及び下流側の区分26に分れ、ジョイントセグメント34内の不連続部又は隙間により、セグメント内の接合又は連結セルは、ヒンジとして働くことができ、ここで、上流側区分24は、拡張形態にあるとき実質的に円筒形の下流側区分26から移行するよう外方に曲がる。本発明の実施形態では、上述のヒンジ作用は、バイオ補綴具に小さなクリンププロフィール並びに送達形態において可撓性の増大を提供することによってバイオ補綴具を例えば経中隔的に送達することが容易になる。
【0021】
上流側区分24は、支持構造体20の上流側端部10からジョイントセグメント34のところの内方に湾曲した端部14までの拡張D1を有し、下流側区分26は、支持構造体20の下流側端部12からジョイントセグメント34のところの内側端部16までの拡張直径D2を有している。各不連続領域32内において、下流側区分26は、それぞれの内側端部16から支持構造体の下流側端部12まで延びる長さL2の長いセグメントを有する。下流側区分26は、実質的に上流側区分24の湾曲部分から支持構造体の下流側端部12まで延びる長さL1の多数の短いセグメントを更に有し、この構成は、図1及び図3図2及び図4をそれぞれ比較することによって理解できる。
【0022】
上述したように、上流側区分24の内方湾曲端部14及び下流側区分26の内側端部16は、支持構造体20のジョイントセグメント24内で生じる。具体的に説明すると、不連続領域32内において、支持構造体20が図1図3及び図4に示されているように拡張状態にあるとき、下流側区分26の内側端部16は、上流側に且つ上流側区分24の内方湾曲端部14の半径方向内方に位置決めされていて、拡張状態における各支持構造体20の下流側区分26が支持構造体20の上流側区分24とオーバーラップする部分を有するものと考えることができるよう上流側区分24の内側内に延びている。換言すると、不連続領域32内において、支持構造体20が拡張状態にあるとき、下流側区分26のそれぞれの上流側セルC2は、上流側区分と下流側区分とのオーバーラップを生じさせるよう上流側区分24の代表的な下流側セルC1内で少なくとも部分的に延びると共にこの下流側セルC1の半径方向内方に位置決めされる。このオーバーラップ構成により、望ましくは、僧帽弁バイオ補綴具22の心室内プロフィールが最小限に抑えられ、即ち、バイオ補綴具が患者の左心室流出路中に突き出る程度が最小限に抑えられる。一実施形態では、支持構造体20は、その15mm未満の長さ分だけが生体内への配備時に左心室中に突き出るよう心室内ロープロファイルを有するよう構成される。別の実施形態では、支持構造体20は、その12mm未満の長さ分だけが生体内への配備時に左心室中に突き出るよう心室内ロープロファイルを有するよう構成される。
【0023】
心臓内に配備されると、上流側区分24は、左心房内に全体が配置される長さ及び直径のものであり、下流側区分26は、心臓の左心房内から生まれつきの僧帽弁輪を通って心臓の左心室まで延びる長さ及び直径のものであり、下流側区分26の長さL1分だけが左心室中に延びる。具体的に説明すると、上流側区分24は、僧帽弁バイオ補綴具22を左心房壁内に少なくとも部分的に定着させるよう半径方向に膨張して生まれつきの僧帽弁を包囲した左心房壁に接触するよう寸法決めされており、下流側区分26は、生まれつきの僧帽弁輪を貫通して嵌まると共にこれに固定された補綴僧帽弁28の展開直径を支持する全体として円筒形の又は管状の拡張形態になるよう半径方向に拡張するよう寸法決めされている。
【0024】
図2図4及び図5A図5Cに示されているように、補綴僧帽弁28は、支持構造体20の下流側区分26に結合されている。補綴僧帽弁28は、3つの湾曲した葉片を有する三尖弁である。各葉片は、その曲率の最も高い上流側箇所、即ち、弁葉片の最下点が下流側区分26の内側端部16の各々にそれぞれ縫い付けられている。各湾曲葉片の残部は、下流側区分26に沿って下流側端部12まで延びていて、このような残部は、これに対応して、ステント状フレームに縫い付けられており、その結果、僧帽弁バイオ補綴具22を拡張させると、補綴僧帽弁28がその完全展開直径まで広がることができるようになっている。支持構造体20は、その実施形態では、下流側区分26の直径D2が25〜35mmであるよう寸法決めされているのが良く、下流側区分26の下流側ベース部分の長さL1は、8〜13mmであり、内側端部16のところの下流側区分26の長さL2は、14〜18mmであり、したがって、支持構造体20は、約30mmの有効直径を有する補綴僧帽弁を受け入れることができる。本発明の実施形態に従って、長さL2とL1の比は、5:4であるのが良く、より具体的に言えば4:3であるのが良い。
【0025】
本発明の実施形態によれば、図2を参照すると、支持構造体20は、金属又はポリマー材料の単一片又はシートから切断形成されるのが良い。図示のように、連続領域30内において、支持構造体のストラットとは、連続しているセルを形成し、不連続領域32内では、ストラットにより構成された1対の隣り合うセル相互間には隙間が存在する。したがって、支持構造体20は、自己拡張性材料の中実コンポーネントからレーザ切断されるのが良く、その結果、支持構造体は、個々のコンポーネントを備えていない一体形構造体であるようになる。単一の一体形構造体により、支持構造体を低送達プロフィールの状態にクリンプ即ち圧縮することができる。変形例として、レーザ切断されるのではなく、当業者に明らかな多種多様な方法、例えば個々の環状ステントストラットを互いに連結すること、化学エッチング又は所望の形状を中実コンポーネントから切断形成する別の方法を用いて支持構造体20を形成しても良い。
【0026】
本発明の実施形態では、支持構造体20をこれが上流側区分24と下流側区分26との間に不連続部すなわち隙間を有するよう付形した結果として、バイオ補綴具22の上流側区分と下流側区分との間の機械的結合解除が行われ、即ち、支持構造体20の付形により、上流側区分24及び下流側区分26をこれらが互いに異なるそれぞれの特性を有するよう形成することができる。変形実施形態では、本明細書において説明する器械及び方法は、別々の金属片から切断され、互いに結合される上流側区分及び下流側区分を含む支持構造体に利用できる。別の実施形態では、一体形又は他部品構成型支持構造体20が生体内でのバイオ補綴具22の展開時に左心房壁への上流側区分の同形化を容易にするために可撓性であるよう形作られる上流側区分24を有するのが良い。
【0027】
バイオ補綴具22が二葉弁を含むものとして図2に示されているが、本明細書において説明する器械及び技術は、補綴二葉弁に合わせて改造可能である。補綴二葉弁の場合、図示のように、支持構造体20は、3つの組をなす内側端部16を備えた上流側及び下流側区分24,26の隣り合うセル相互間に隙間Gが存在する状態で3つの不連続領域が支持構造体20の周囲に沿って等距離間隔を置いた場所に位置するよう形作られ、各組は、上述した補綴三葉弁の対応の湾曲葉片の最下点に取り付け可能である。図示の実施形態では、支持構造体20の周囲に沿うジョイントセグメント34内の全部で15個のセル接合部40のうちで、6つのセル接合部40が互いに連結されておらず、或いは換言すると不連続である。
【0028】
一実施形態では、支持構造体20の隙間Gに隣接して維持する上流側区分24のセルは、突刺すなわちバーブ36として働くことができる。このような突刺36の使用により、左心房内の生まれつきの僧帽弁の付近に位置する組織に定着状態になることによって左心室中へのバイオ補綴具22の下流側への移動を阻止される。図1に示されているように、本発明の実施例では、突刺36の特性は、突刺を形成するセルの幅W1及び高さH1並びにセルの内方曲率で決まる場合がある。
【0029】
さらに図4を参照すると、支持構造体20は、本発明の実施形態に従ってその内部に設けられた内張り42を有するのが良い。内張り42は、例えば縫合子44により支持構造体20に取り付け可能に支持構造体20の内面の内側に、又はこれに沿って配置されるのが良く、したがって、内張り42は、支持構造体の不連続領域32内の隙間Gを内張りして滑らかな流れ面を提供すると共に/或いはもしそのように構成されていなければ不連続領域32内で生じる恐れのある血液の停滞、又はうっ滞を阻止するようになっている。一実施形態では、内張り42は、下流側区分26が上流側区分24とオーバーラップする支持構造体の領域についてのみ支持構造体20の内面を覆うのが良く、それにより支持構造体のこの領域に滑らかな流れ面を提供すると共に/或いはこの領域の血液の停滞又はうっ滞を阻止する。本発明の実施形態では、内張り42は、生体適合性材料であり、支持構造体に取り付けられたときに一方向流体通路を作る低多孔性織布、例えばポリエステル、ダクロン(Dacron)ファブリック又はPTFEであるのが良い。一実施形態では、内張りは、組織内方成長の媒質を提供すると共にファブリックが伸びて湾曲面に合致することができるようにすることが望ましい場合に利用できる編組又は織成ポリエステル、例えばポリエステル又はPTFEニットであるのが良い。変形例として、例えば一方の側に組織内方成長のための媒質を提供すると共に他方の側に滑らかな表面を提供することが望ましい場合、ポリエステルベロアファブリックを用いることができる。これら適当な心臓血管用ファブリック及び他の適当な心臓血管用ファブリックは、例えばアリゾナ州テンプ所在のバード・ペリフェラル・ヴァスキュラー・インコーポレイテッド(Bard Peripheral Vascular, Inc.)から市販されている。別の実施形態では、内張り42は、生まれつきの材料、例えば心膜又は別の膜様組織、例えば粘膜化組織であっても良い。
【0030】
注目されるように、バイオ補綴具22の支持構造体20の下流側区分26を全体として円筒形であるものとして上述したが、ここでの実施形態は、下流側端部のところに外方にラッパ状に広がった下流側区分を有する支持構造体を含む。
【0031】
本発明の実施形態に従って補綴僧帽弁に用いるための置換弁葉片のための生まれつきの組織を例えばヒト又は動物からの例えばウシ又はブタ由来の心臓弁、大動脈基部、大動脈壁、大動脈葉片、心膜組織、例えば心膜パッチバイパスグラフト、血管、腸粘膜化組織、へそ組織等から得ることができる。本発明に用いるのに適した合成材料としては、デラウェア州ウィルミントン所在のインヴィスタ・ノース・アメリカ・エス・エー・アール・エル(Invista North America S.A.R.L.)から市販されているDACRON(登録商標)ポリエステル、他の布材料、ナイロン配合物、ポリマー材料及び真空蒸着ニチノール二次加工材料が挙げられる。葉片の他のポリマー構成材料は、オランダ国のロイヤル・デーエスエム(Royal DSM)社からの商品名DYNEEMAで市販されエチル超高分子量ポリエチレン材料である。或る特定の補綴葉片材料を用いると、葉片の一方の側又は両方の側を、過剰成長を阻止し又は最小限に抑える材料で被覆することが望ましい場合がある。さらに、補綴葉片材料は、耐久性があり、引っ張り、変形又は疲労を生じないことが望ましい。
【0032】
本発明の実施形態としての僧帽弁バイオ補綴具は、適当なカテーテル利用送達システム、例えばAccuTrak(商標)Stability Layer and the Engager(商標)Transcatheter Aortic Valve Implantation Systemを備えたMedtronic CoreValve(登録商標)送達システムにより生まれつきの僧帽弁又は先に移植された補綴弁内に配備されるのが良く、これらシステムの各々は、ミネソタ州ミネアポリス所在のメドトロニック・インコーポレイテッド(Medtronic, Inc.)により開発された心臓弁送達システムであり、このような心臓弁送達システムは、本発明の実施形態において使用できるよう改造可能である。本発明の実施形態としての僧帽弁バイオ補綴具は、好ましい場合があり、又特定の医師により選択される適当な経大腿的、経心尖的、経中隔的及び経心房的アプローチのうちの任意の1つによって心臓内の配備部位に位置決め可能であり又は追跡可能である。
【0033】
本発明の種々の実施形態を上述したが、これら実施形態は、説明のため及び例示のために提供されているに過ぎず、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。当業者には明らかなように本発明の精神及び範囲から逸脱することなくこのような実施形態の形態及び細部における種々の変更を行うことができる。かくして、本発明の広さ及び範囲は、上述の例示の実施形態のどれによっても制限されることはなく、特許請求の範囲の記載及びその均等範囲にのみ基づいて定められるべきである。また、本明細書において説明した各実施形態の各特徴及び本明細書において引用した各先行技術文献の各特徴を任意他の実施形態の特徴と組み合わせて利用することができることは理解されよう。本明細書において説明した全ての特許文献及び非特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C