【実施例】
【0024】
<構成>以下、構成について説明する。
【0025】
図1〜
図12は、この実施例を示すものである。
【0026】
自動車などの車両には、車室内の温度調節を行うための空気調和装置(以下、空調装置という)が設けられている。
【0027】
この空調装置は、車室の前部に設置された空調ユニットと、この空調ユニットから車室の各部に設けられた吹出口に対して空調用空気を送給する空調ダクト(外部ダクト)とを備えている。
【0028】
より具体的には、
図1〜
図3に示すように、上記した空調ユニット1は、中空の空調ケース2と、この空調ケース2の車両前後方向の後面と側面とのコーナー部に対して一体的に取付けられたフットダクト3(内部ダクト)とを有している。なお、フットダクト3は、空調ケース2の片側だけでなく、運転席用と助手席用として両側部にそれぞれ一対設けられている。
【0029】
そして、
図4Aに示すように、上記した空調ケース2は、内部に空調用空気の温度を調整するためのエアミックス室4を備えている。また、上記したフットダクト3は、
図4Bに示すように、エアミックス室4と連通可能なフット通路5を形成するものとされている。なお、フット通路5は、フットダクト3単体で形成されるようにしても良いし、また、フットダクト3と、空調ケース2(の後面と側面とのコーナー部)との両部材に跨って形成されるようにしても良い。即ち、空調ケース2を利用してフット通路5を形成しても良い。
【0030】
より具体的には、上記した空調ケース2は、空気入口部6と、空気取出口部7(ベント開口やデフ開口やフット開口7cなどの空調ケース2からの吹出口)とを有しており、その内部には、風上側から順に、ブロワ(図示せず)と、エバポレータ9(冷却用熱交換器)と、ヒータコア11(加熱用熱交換器)とが設置されている。
【0031】
ここで、上記したベント開口は、乗員の上半身(または胸元など)へ向けて空調用空気を吹出すためのものであり、デフ開口は、フロントウインドウガラスへ向けて窓曇防止用に空調用空気を吹出すためのものであり、フット開口は、乗員の下半身(または足元など)へ向けて空調用空気を吹出すためのものである。
【0032】
そして、エバポレータ9の風下側は、温風通路12とバイパス通路13(またはバイパス部)とに上下に分けられており、ヒータコア11は、下側に位置する温風通路12の内部に設けられている。
【0033】
そして、エバポレータ9とヒータコア11との間には、エバポレータ9を通過した空調用空気を温風通路12とバイパス通路13とに対して分配可能なミックスドア14が設けられている。
【0034】
また、温風通路12とバイパス通路13との出側には、温風通路12およびバイパス通路13を通ってきた空調用空気を混合することによって温度を調整可能な、上記したエアミックス室4が設けられている。上記した空気取出口部7は、文字通り、空調ケース2からの空気の出口となる部分のことであり、例えば、エアミックス室4の上部に直接設けられている。或いは、上記した空気取出口部7(7c)は、上記したフットダクト3の内部に設けられている。これらの空気取出口部7には、空気取出口部7,7cを開閉するためのモードドア15(ベントドアやデフドアやフットドア15cなど)がそれぞれ設けられている。
【0035】
なお、フットダクト3(や空調ケース2)には、空気取出口部7cよりも下流側の位置に、空気取出口部3aが別に設けられる。この空気取出口部3aには、前席乗員の下半身へ向けて送られる空調用空気を取出すようにしたものや、後席乗員の下半身へ向けて送られる空調用空気を取出すようにしたものなどが存在する。
【0036】
この場合、温風通路12(
図4A)と、フット通路5(
図4B)とは、空調ケース2の幅方向に対して重複するように設けられている。
【0037】
更に、
図3に示すように、空調ケース2の外側(外側面部分)には、各種の補機(例えば、
図4Aに示すようなモードドア15を駆動するための駆動装置16aやそのリンク機構16bや、
図4Aに示すようなミックスドア14を駆動するための駆動装置16cなど)が設置されている。また、空調ケース2の外側面の後部には、上下方向の広い範囲に亘って上記したフットダクト3が取付けられている。
【0038】
加えて、空調ケース2の(車両)後面と側面とのコーナー部近傍には、外部構造物(ステアリングサポートメンバ17a(車体強度部材)や、ステアリングサポートメンバ17aから下方へ向けて延設されたステー17bなど)が設置されている。
【0039】
更に、空調ケース2の(車両)後面に面する側には、図示しない空調コントローラパネルや、車載用オーディオ装置や、カーナビゲーション装置などの各種の電子機器類が配置されている。
【0040】
そのため、空調ケース2の側面や後面やその周辺には、余分なスペースがほとんどない状態となっている。
【0041】
そして、空調ユニット1の外側面には、空調用空気の圧力を利用してベンチュリー効果で車室内の空気を吸込ませるようにしたアスピレータ19が取付けられている。このアスピレータ19には、アスピレータ19へ吸込まれた車室内の空気の温度を検出するための図示しない室温センサーが取付けられる。
【0042】
上記したアスピレータ19は、
図4Cの原理図に示すように、内筒19aと外筒19bとを有する二重管構造を有しており、内筒19aの一端部(図中下端部)が車室2内の空気の取入口19cとされ、他端部(図中上端部)がノズル部19dとされている。この空気の取入口19cに対し、車室内の空気を吸込むためのホース(図示せず)と、車室内の温度を検出可能な室温センサー(車室内温度検出器、図示せず)とが取付けられる。
【0043】
そして、外筒19bの一端側は閉塞されると共に(閉塞部19e)、この一端側の側面に空調ケース2内部の空調用空気を取入可能な短円筒状の高圧空気取込口19fが突出形成されている。そして、外筒19bの他端側が上記したノズル部19dに連通されると共に(ベンチュリー部19g)、他端側に空気排出口19hが形成されている。
【0044】
そして、以上のような構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えている。
【0045】
(構成1)
図5、
図6に示すように、空調ケース2の後面の側部における、フットダクト3上端部近傍位置に、エアミックス室4と連通するアスピレータ用空気取出口21(
図4、
図7参照)を形成する。
【0046】
このアスピレータ用空気取出口21に、フット通路5の外部を通って下方へ延びる延長用流路22を介してアスピレータ19を接続可能に構成する。
【0047】
また、上記した延長用流路22が、空調ケース2の後面に形成された第一の二重壁部23(
図8参照)と、フットダクト3の後面に形成されて、第一の二重壁部23の外端縁に接続可能な第二の二重壁部24(
図9参照)と、フットダクト3の外側面に取付けられて、第二の二重壁部24の外端縁を閉塞可能な流路形成部材25(
図10参照)とを備えるものとされる。
【0048】
そして、この流路形成部材25が、フットダクト3の外側面よりも外方へ突出した状態でフットダクト3の外側面に取付けられると共に、その下部にアスピレータ接続口26を有するものとされる(
図11、
図12も併せて参照)。
【0049】
(補足説明1)
ここで、上記した延長用流路22は、
図12に示すように、フット通路5とは独立したものとされる。
【0050】
この延長用流路22は、空調ケース2の第一の二重壁部23と、フットダクト3の第二の二重壁部24と、流路形成部材25との3つの部材によって構成される。これらの3つの部材は、延長用流路22の延設方向にほぼ沿った分割線により横方向(空調ケース2の幅方向或いは、車幅方向)に分割される。但し、上記した分割線は、必ずしも上下方向に延びる直線状をしている必要はない(例えば、第一の二重壁部23と、第二の二重壁部24との分割線は、途中で屈折された非直線状のものとされている(
図5参照))。
【0051】
そして、第一の二重壁部23の外端縁と第二の二重壁部24の内端縁との間には、閉ループ形状(開口形状)をした第一の接続部22a(合せ用開口部)が形成されている(
図8参照。第一の二重壁部23側のみ図示しているが、第二の二重壁部24側も同じ形状をしている)。
【0052】
同様に、第二の二重壁部24の外端縁と流路形成部材25の内側縁部との間には、閉ループ形状(開口形状)をした第二の接続部22b(合せ用開口部)が形成されている(
図9参照。第二の二重壁部24側のみ図示しているが、流路形成部材25側も同じ形状をしている)。
【0053】
この際、第二の接続部22bは、第一の接続部22aよりも下方へ長く延びるものとされている。即ち、第二の接続部22bは、第一の接続部22aよりも大きな(上下方向に対して長い)開口形状を有して、下方へ延びるものとされている。
【0054】
なお、上記した第一の接続部22aと第二の接続部22bとを構成する開口形状は、空調ケース2やフットダクト3の型抜方向と一致されるようになっており、第一の二重壁部23と第二の二重壁部24とを容易に成形することが可能となっている。
【0055】
そして、延長用流路22は、立体的に見ると非常に複雑な形状をしているが、概略すると、上半部が、主に空調ケース2およびフットダクト3の後面に沿って斜め下方に延設され、主に下半部(上半部も一部含まれている)がフットダクト3の側面に沿って斜め下方に延設されるものとなっている。
【0056】
この延長用流路22の側面形状については、
図10の流路形成部材25の形状によって知ることができる。即ち、上半部が下方へ向けて徐々に広がる漸拡形状を有し、下半部がほぼ平行に延びる平行形状を有している。そして、流路形成部材25の下辺部が直線形状を呈し、上辺部がほぼ鈍角状の折線形状を呈している。なお、この折線形状の頂部周辺には、後述する膨出部32が形成される。
【0057】
図12は、上記した延長用流路22の断面図で、(a)が上部、(b)が中間部、(c)が下部を示しており、延長用流路22が空調ケース2およびフットダクト3の後面からフットダクト3の側面へと回り込んで延びて行く様子が示されている。
【0058】
そして、
図3に示すように、上記したアスピレータ19は、モードドア15を駆動するための駆動装置16aおよびそのリンク機構16bと、ミックスドア14を駆動するための駆動装置16cとの間の上下方向位置に設置されるように、アスピレータ接続口26の位置が設定されている。アスピレータ接続口26には、アスピレータ19の高圧空気取込口19fが接続される。
【0059】
なお、アスピレータ19は、空調ケース2における、上記したアスピレータ用空気取出口21の位置の側面に対して取付けるのが理想的である。しかし、この位置には、上記した駆動装置16aおよびそのリンク機構16bが存在しており、これらとの干渉が生じるため、直接取付けることができないものである。
【0060】
(構成2)
上記において、
図7に示すように、フットダクト3の側面の、第二の二重壁部24における下部周辺の部分に、内方へ凹む凹部31が形成されるようにする。
【0061】
そして、
図9に示すように、第二の二重壁部24に、上方へ膨出する膨出部32が形成されるようにする。
【0062】
(補足説明2)
ここで、上記した凹部31は、主に、延長用流路22の下部周辺の通路断面積を拡張するために設けられる。また、この凹部31は、アスピレータ19をフットダクト3に近寄せて設置し得るようにするために設けられる。即ち、アスピレータ19が空調ケース2の側面から大きく張出さないようにするために設けられる。
【0063】
この凹部31により、フット通路5は部分的に通路断面積が小さくなるが、フット通路5の内部に、フット通路5を若干絞るように設けられているフット開口7cの開口面積よりも小さくならないようにすれば、支障はない。なお、特に図示しないが、凹部31は、フット開口7cの出口側の位置に設けられる(
図9参照)。凹部31は、フット通路5内に急激な形状変化を有する部分が生じないようにするために、延長用流路22の外側の部分にまで拡がるように設けられている。
【0064】
また、上記した膨出部32は、主に、延長用流路22の凹部31よりも上流側に位置する中間部分の通路断面積を拡張するために設けられる。
【0065】
なお、
図5に示すように、膨出部32よりも上流側の部分は、アスピレータ用空気取出口21を横長形状とすることによって、空調ケース2の後面側への張出量小さくなるようにしつつ、通路断面積を確保し得るようにしている(横長空気取出口)。また、延長用流路22は、上記したように、流路形成部材25が、フットダクト3の外側面よりも外方へ突出した状態でフットダクト3の外側面に取付けられることによって、全体的な通路断面積を確保し得るようにしている(
図12参照)。
【0066】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0067】
図示しないブロワを駆動することによって空気取入部6から空調ケース2の内部に取入れられた空気は、エバポレータ9で除湿されると共に冷却され、ミックスドア14で温風通路12とバイパス通路13とに分配される。
【0068】
温風通路12へ分配された空調用空気は、ヒータコア11で加熱された後、エアミックス室4へ送られる。また、バイパス通路13へ分配された空調用空気は、直接エアミックス室4へ送られてヒータコア11で加熱された空調用空気と混合され、温度が調整される。そして、エアミックス室4内で温度が調整された空調用空気は、空気取出口部7から空調ダクトを通って車室の各部に設けられた吹出口から吹出される。
【0069】
例えば、フットドア15cによってフット開口7cを開くことにより、フット通路5を介して、乗員の下半身(足元など)へ向けて空調用空気が吹出される。
【0070】
一方、エアミックス室4で温度調整された空調用空気の一部は、空調ケース2の車両後面の側部における、フットダクト3上端部近傍位置に設けられたアスピレータ用空気取出口21からバイパス通路13を通って、空調ケース2側面の、モードドア15を駆動するための駆動装置16aおよびそのリンク機構16bと、ミックスドア14を駆動するための駆動装置16cとの間の位置に設置されたアスピレータ接続口26からアスピレータ19の高圧空気取込口19fへと供給される。アスピレータ19へ入った空調用空気は、
図4Cに示すように、内筒19aと外筒19bとの間を通ってベンチュリー部19gへ達し、空気排出口19hから図中上方へ向けて排出される。そして、空気排出口19hから図中上方へ排出される空調用空気の流れによって、内筒19aの内部に負圧が発生し、この負圧によって、内筒19aの下端部の取入口19cから車室2内の空気が吸込まれることになる。
【0071】
このように、アスピレータ19は、空調用空気の圧力を利用して車室内の空気を吸込むように機能する。アスピレータ19へ吸込まれた車室内の空気は、図示しない室温センサーによって車室の温度を検出するのに使用される。エアミックス室4内の空調用空気は、圧力が高く且つ安定しており、しかも、温度調節がなされていることから、アスピレータ19に使用するのには最適である。
【0072】
この実施例では、アスピレータ19を、上下に位置する駆動装置16aと駆動装置16cとの間に配置するようにしているので、バイパス通路13も短くて済み、バイパス通路13による圧力損失を最小限に抑えることができる。
【0073】
<効果>以下、この実施例の効果について説明する。
【0074】
(効果1)
上記構成1により、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
即ち、エアミックス室4にアスピレータ用空気取出口21を設けることにより、エアミックス室4で温度が調整された空調用空気がアスピレータ19へ送られ車室内へ放出されるようになると共に、アスピレータ19はエアミックス室4内の圧力によって必要な風量を確保することが可能となる。
【0076】
また、アスピレータ用空気取出口21に、下方へ延びる延長用流路22を介してアスピレータ19を接続することにより、空調ケース2の外側(外側面部分)に設置される補機(モードドア15を駆動するための駆動装置16aやリンク機構16bなど)や空調ケース2の近傍に設置される外部構造物(ステアリングサポートメンバ17aやステー17bなど)などを避けてアスピレータ19を設置することが可能となるので、アスピレータ19の設置自由度を向上することができるようになる。
【0077】
そして、延長用流路22が、フット通路5の外部を通るようにしたことにより、フット通路5の開閉や、フット通路5内の空調用空気の流量などに影響されないようにすることができる。
【0078】
更に、空調ケース2に第一の二重壁部23を形成し、フットダクト3に第二の二重壁部24を形成することにより、空調ケース2やフットダクト3を直接利用して延長用流路22を設けることができる。
【0079】
(効果2)
上記構成2により、以下のような効果を得ることができる。
【0080】
即ち、フットダクト3の側面の、第二の二重壁部24の下部周辺の部分に、内方へ凹む凹部31を設けたことにより、延長用流路22の流路面積を確保(拡大)すると共に、アスピレータ19を凹部31の分だけフットダクト3に近接させて配置することが可能となる。
【0081】
また、第二の二重壁部24に、上方へ膨出する膨出部32が形成されることにより、延長用流路22の流路面積を確保(拡大)することが可能となる。
【0082】
よって、空調ケース2の周囲に余分なスペースがない場合であっても、アスピレータ19に接続するための延長用流路22を設置することが可能となる。
【0083】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。