特許第5995178号(P5995178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5995178-高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワー 図000002
  • 特許5995178-高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワー 図000003
  • 特許5995178-高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワー 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5995178
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワー
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/18 20060101AFI20160908BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   F04C18/18 C
   F04C18/18 A
   F04C29/00 C
   F04C29/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-140839(P2015-140839)
(22)【出願日】2015年6月29日
【審査請求日】2015年7月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505420301
【氏名又は名称】株式会社四葉機械製作所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 勝
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0300014(US,A1)
【文献】 特表2011−517481(JP,A)
【文献】 特開2014−199003(JP,A)
【文献】 特開2003−307192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/18
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガス製造設備に使用出来るルーツブロワーであって、該ルーツブロワーは、駆動ロータや従動ロータを収納出来、強度計算の可能なケーシングと、該ケーシングを固持するサイドフレームと、前記駆動ロータや従動ロータを駆動する駆動部や冷却機構,オイルレベル確認機構,タイミングギヤー等とからなり、前記ケーシングは、前記駆動ロータや従動ロータを回転可能に保持する円筒状のインナーケーシングと該インナーケーシングを収納する円型の内孔を有するバレルケーシングとからなりこれ等は前記サイドフレームに固定され、前記インナーケーシングの外周と前記バレルケーシングの前記内孔との間には隙間が形成され流通媒体は前記バレルケーシングとインナーケーシングを通り前記まゆ型の孔内に流通して圧縮されると共に前記隙間内に流通することを特徴とする高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワー。
【請求項2】
請求項1に記載のバレルケーシングとインナーケーシングとの間に形成されている隙間の流通媒体の出口側の前記隙間には該隙間側への流通媒体の浸入を防止するシールバーが設けられることを特徴とする高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス保安協会(KHKと称す)の安全基準を満足出来、高圧ガス製造設備に使用出来るバレル型ルーツブロワーに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプやブロワーとしては「特許文献1」や「特許文献2」等が挙げられる。「特許文献1」はバレル内にウズマキケーシングやヨウスイカン等を有するものであり、本発明のものとは構造的に相異する。本発明は「特許文献2」に示すようにケーシングのまゆ型の孔の内部に図示のような形状の駆動ロータと従動ロータを有するものからなる。図3はこのタイプのルーツブロワーの一例を示したものであるがこの形状のケーシングではKHKの安全基準を満足することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−018186
【特許文献2】特開2008−283972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧ガス製造設備に使用出来るルーツブロワーとしては次の項目をクリアすることがKHKとしては安全基準として決められている。
1)強度計算出来る部品や付属品については強度計算書を提出する。
2)設計圧力の1.5倍の圧力を掛けての実施試験を行う。
3)以上の1),2)について合格が必要となる。
4)もし強度計算が出来ない部品については設計圧力の4倍の耐圧試験を行って合格することが必要となり、試験を行った部品は製品として使用しない。
【0005】
以上の条件を満足出来るものとして図3に示したケーシングではまず強度計算することが難しい。また、図示していないが従来のルーツブロワーのケーシングとしては強度計算は困難である。従って、高圧ガス製造設備に使用するには前記の4)項の耐圧テストを行って合格する必要がある。このために受注に先立って耐圧テスト用のケーシングを製作しテストを行い合格する必要がありテスト費用がかかると共に納期が不明確となる恐れがある。更に、テスト品は使用出来ず経済的に不合理であると共に受注に結びつく事が難しくなる問題点がある。また、テストが不合格の場合には別のテスト品の再製作が必要となり、納期,価格等が不透明となり実用的でない問題点ががあった。
【0006】
本発明は以上の問題点を解決すべく創案されたものであり、ルーツブロワーとしての機能を満足し、強度計算が可能でありKHKの安全基準を満足出来、製作納期も透明となり高圧ガス製造設備に使用出来る高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上の目的を達成するため、請求項1の発明は、高圧ガス製造設備に使用出来るルーツブロワーであって、該ルーツブロワーは、駆動ロータや従動ロータを収納出来、強度計算の可能なケーシングと、該ケーシングを固持するサイドフレームと、前記駆動ロータや従動ロータを駆動する駆動部や冷却機構,オイルレベル確認機構,タイミングギヤー等とからなり、前記ケーシングは、前記駆動ロータや従動ロータを回転可能に保持する円筒状のインナーケーシングと該インナーケーシングを収納する円型の内孔を有するバレルケーシングとからなりこれ等は前記サイドフレームに固定され、前記インナーケーシングの外周と前記バレルケーシングの前記内孔との間には隙間が形成され流通媒体は前記バレルケーシングとインナーケーシングを通り前記まゆ型の孔内に流通して圧縮されると共に前記隙間内に流通することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のバレルケーシングとインナーケーシングとの間に形成されている隙間の流通媒体の出口側の前記隙間には該隙間側への流通媒体の浸入を防止するシールバーが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワーによれば、流通媒体は前記隙間とまゆ型の孔内に流入するため前記インナーケーシングはその内外周側からほぼ同一の圧力を受け肉厚部には圧力が殆ど作用しない、そのため耐圧作用を考慮する必要はなく、前記ケーシングの強度計算はリング状のバレルケーシングに限定するため強度計算を容易に実施する事が出来る。これにより、KHKの安全基準を満足するルーツブロワーを製作することが出来る。
【0010】
また、請求項2の高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワーによれば、シールバーの設置により圧縮された媒体の隙間への洩れが防止され、インナーケーシングの耐圧についての安定性をより確実のものにすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のルーツブロワーのケーシングの構造を示す断面図。
図2】本発明のケーシングを有するルーツブロワーの全体構造を示す軸断面図。
図3】強度計算の困難なルーツブロワーのケーシングの構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワーの実施の形態を図面を参照して詳述する。なお、本発明は図1に表示された内容に主点があるが、まず、図2により本発明のルーツブロワーの全体構造を説明する。
【0013】
ケーシングはサイドフレーム11の中央部に固持されて配置される。駆動ロータ7はサイドフレーム11に枢支される駆動シャフト9に固定され従動ロータ8は同じくサイドフレーム11に枢支される従動シャフト10に固定される。この駆動シャフト9はモータ12に連結され駆動シャフト9と従動シャフト10との間にはタイミングギヤー13が介設され駆動部を形成する。サイドフレーム11には冷却機構やオイルレベル確認機構等が設けられているがその詳細構造は本発明の主点でないため説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
まず、図1及び図2によりケーシングの構造を説明する。
ケーシングはインナーケーシング1とバレルケーシング2とからなる。バレルケーシング2は図2によく示されているように底脚を有するケース体状のものからなりその中心部には内孔15が形成されており、流通媒体である圧縮ガスの流入する圧縮ガス入口5と反対側に圧縮ガス出口6が形成されているものからなり図1に示すようにサイドフレーム11に固定されているものからなる。
一方、インナーケーシング1は図1及び図2に示すように円形型の形状のものからなりバレルケーシング2の内孔15内に収納されるものからなり、これも図に明示されていないがサイドフレーム11に固定されている。このインナーケーシングには図2に示すように中央部にまゆ型の孔3が開口形成されこのまゆ型の孔3には互いに接触駆動される駆動ロータ7と従動ロータ8が収納されている。
また、バレルケーシング2の内孔15とインナーケーシング1と外周との間には隙間4が形成される。この隙間4は0.5mm〜1.0mm程度の微少のものであるが、この寸法に限定されるものではない。この隙間4は圧縮ガス入口5や圧縮ガス出口6と連通するものからなる。従って、圧縮ガスは圧縮ガス入口5からバレルケーシング2内に入りインナーケーシング1のまゆ型の孔3内に導入されると共に隙間4間にも流入する。また、圧縮された圧縮ガスは圧縮ガス出口6から流出すると共に隙間4内にも浸入することになる。
【0015】
以上の媒体の流通によりインナーケーシング1の肉厚部には隙間4とまゆ型の孔3の双方からほぼ同一の圧力が作用する。このためインナーケーシング1の肉厚部には殆ど内部圧力が発生せず耐圧を考慮した強度計算等が不要となる。よって、インナーケーシング1はKHKによる強度計算は不要である。一方、バレルケーシング2には圧力が作用するが内孔15を有するリング体のため強度計算は容易に出来る。
【実施例2】
【0016】
「実施例1」では隙間4内には何等のシールバーが存在していなかったが、「実施例2」では隙間4の圧縮ガス出口6側の近傍には隙間4への圧縮ガスの浸入を防止するためのシールバー14が設けられている。このシールバー14の存在により圧縮された圧縮ガスの隙間4内への浸入が防止され、隙間4内には圧縮ガス入口5からの圧縮ガス(流通媒体)のみが浸入する事によりインナーケーシング1の肉厚部にはほぼ同圧の圧力しか作用しない。
【0017】
以上により、本発明の高圧ガス圧送用バレル型ルーツブロワーの場合は図3等に示したものと異なり、KHKの要請に十分に対応することが出来、これにより高圧ガス製造設備に使用出来るルーツブロワーを設計製作することが出来る。
【0018】
本発明は以上の内容のものからなるが、その内容は以上の説明に限定するものではなく、同一技術的範疇のものが適用されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、まゆ型の孔を有するすべてのルーツブロワーに適用可能であり、その利用範囲極めて広い。
【符号の説明】
【0020】
1 インナーケーシング
2 バレルケーシング
3 まゆ型の孔
4 隙間
5 圧縮ガス入口
6 圧縮ガス出口
7 駆動ロータ
8 従動ロータ
9 駆動シャフト
10 従動シャフト
11 サイドフレーム
12 モータ
13 タイミングギヤー
14 シールバー
15 内孔
100 ケーシング
【要約】
【課題】高圧ガス保安協会(KHK)の安全基準を満足し高圧ガス製造設備に使用可能なルーツブロワーを提供する。
【解決手段】ルーツブロワーのサイドフレーム11に固持されるケーシング100は駆動ロータ7や従動ロータが駆動されるまゆ型の孔3を中央に有するインナーケーシング1とこの外周を隙間4を介して覆うリング状のバレルケーシング2とからなる。この隙間4の形成によりインナーケーシング1の肉厚部には圧力が殆ど作用しない。
これにより、高圧ガス製造設備に適用出来るルーツブロワーを製造することが出来る。
【選択図】図1
図1
図2
図3