(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組合せが、オキシラニル基を有する化合物とオキセタニル基を有する化合物の組合せ、オキシラニル基を有する化合物とカルボン酸の環状無水物類の組合せ、オキシラニル基を有する化合物とオキセタニル基を有する化合物とカルボン酸の環状無水物類の組合せ、オキシラニル基を有する化合物とオキセタニル基を有する化合物とラクトン類の組合せの何れかである請求項1に記載の導電性インク組成物。
溶剤成分(C)が、アルコール類、炭化水素類、エステル類、ケトン類、及びグリコールエーテル類から選択される1種以上である請求項1又は2に記載の導電性インク組成物。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器類において、基材上に電極や配線を形成させる方法として、金属めっき法や導電性インク組成物を用いる方法が広く知られている。導電性インク組成物を用いる場合、塗布方法として吐出法または印刷法が用いられる。中でも、安価で大量生産可能な方法として印刷法が多く用いられ、一般的ものとしてはスクリーン印刷法が挙げられる。
スクリーン印刷法には、フォトリソグラフィを使用する方法と使用しない方法がある。フォトリソグラフィを用いる場合、塗布設備のみでなく露光、エッチング、洗浄などの各種設備が必要となり、製造工程プロセスが複雑なるため、製造コストが高くなる。また、大量に溶剤を使用するため、環境負荷が大きい。
【0003】
基材上への回路パターン形成に用いる導電性インク組成物としては、加熱処理により導電性成分を基材上に残存させる焼成タイプと、熱硬化により導電性成分とバインダー成分を基板上の残存させる熱硬化タイプがある。前者のタイプは、導電性インク組成物を基材上に塗布後、加熱処理により溶剤およびバインダー成分を除去すると同時に導電性成分を焼結、または接触させることにより導電性を得る硬化機構である。後者のタイプは、導電性インク組成物中のバインダー成分として熱硬化性樹脂を用いることで、導電性成分を硬化物中に留め、導電性成分を接触させることにより導電性を得る硬化機構である。
前者のタイプは、基材上から導電性成分以外の成分の除去と導電性成分の焼結とを同時に達成しなければならず、一般に200℃以上の高温処理が必要となるため、基材として、耐熱性が低いポリマーフィルム基材などに使用することができない。後者のタイプは、バインダー成分(熱硬化性樹脂)が硬化する温度(例えば、150℃程度)であれば、耐熱性を有するポリマーフィルム基材へ回路パターンを形成することが可能である。
【0004】
しかしながら、耐熱性を有するポリマーフィルム基材は高価なため、基材として汎用のポリマーフィルム基材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などに用いることが可能な導電性インク組成物の研究が盛ん行われている。PET基材は耐熱性が100〜120℃であり、回路パターン形成用の熱硬化型導電性インク組成物として100℃程度で硬化するものが用いられている。また、PET基材表面にITOなどの透明導電膜で処理されたものを用いる際、アモルファスITOが用いられる事が多い。これは、100〜150℃程度で結晶化が進行し屈折率が変化することから、基材との屈折率の差が大きくなる為にITO回路が浮き出てしまい、結果として基材の透明性が失われてしまう。この問題を解決するために、より低温(80℃以下)で硬化し、導電性、及び基材との密着性を有する導電性インク組成物の開発が求められている。
【0005】
100℃以下の熱処理に用いることができる導電性インク組成物として、室温(25℃付近)の熱処理を行う室温硬化型導電性インク組成物(特許文献1)を例示することができる。しかしながら、室温硬化型の導電性インク組成物に含まれる溶剤は、室温で揮発するため、回路パターン形成時に導電性インク組成物の粘度変化を生じる。上記の点から、導電性インク組成物は、室温では硬化反応が進行せず粘度が安定し、室温以上の温度で加熱することで、重合反応が起こり不可逆性の硬化物となる熱硬化性樹脂をバインダー成分として用いることが好ましい。
【0006】
また、特許文献2には、フレーク状の銀とガラス転移点温度0〜40℃のポリエステル樹脂と変性ポリエステル樹脂を含む100℃以下で硬化可能な導電性インク組成物が例示されている。しかしながら、基材としてPETフィルムまたはプラスチック合成紙を用いており、ITOやハードコートといった表面エネルギーが低い基材に対するインク組成物の密着性、並びに長期信頼性に関する記載はない。
【0007】
ITOをはじめとする低表面エネルギー基材への密着に関するものとして、特許文献3がある。特許文献3には、エポキシ樹脂を用いることで基材との密着性を確保し、熱感受性のアダクト系、マイクロカプセル系潜在性硬化剤を用いることで保存安定性を有する導電性インク組成物が記載されており、90℃×30分の硬化反応に付することでITO基材との良好な密着が得られる導電性インク組成物を例示している。しかしながら、長期信頼性については充分なものとは言えない。
【0008】
特許文献4には、低表面エネルギー基材への密着性、長期信頼性に関するものが記載されており、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用い、金属キレートを配合することによって、レオロジー特性を付与する導電性インク組成物が記載されている。しかしながら、硬化温度が150℃であり、100℃以下の温度では実用的なものとは言えない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[導電性インク組成物]
本発明の導電性インク組成物は、熱硬化性を有するバインダー成分(A)、導電性粒子成分(B)、溶剤成分(C)を含有する組成物である。
具体的には、熱硬化性を有するバインダー成分(A)、導電性粒子成分(B)、溶剤成分(C)を含有する導電性インク組成物であって、
バインダー成分(A)が、(平均)官能基当量300〜3,000g/eqの環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)と、数平均分子量(Mn)35,000以下であり、且つガラス転移温度80℃以下のポリマー(a−2)と、硬化促進剤(a−3)を含み、
導電性粒子成分(B)が、メジアン径10μm以下の導電性粒子、
溶剤成分(C)が、25℃における蒸気圧が1Pa以上1kPa以下である有機溶媒であり、
導電性粒子成分(B)がバインダー成分(A)中の化合物(a−1)100重量部に対して、1,000〜1,500重量部であることを特徴とする導電性インク組成物である。
【0016】
〔バインダー成分(A)〕
本発明に用いるバインダー成分(A)は、(平均)官能基当量300〜3,000g/eqの環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)と、数平均分子量(Mn)35,000以下であり、且つガラス転移温度80℃以下のポリマー(a−2)と、硬化促進剤(a−3)を含むものである。
【0017】
[化合物(a−1)]
本発明のバインダー成分(A)に用いる化合物(a−1)は、(平均)官能基当量300〜3,000g/eqの環状エーテル構造、または環状エステル構造を有するものであって、硬化促進剤(a−3)存在下で加熱することで熱硬化性樹脂となるものであればよい。なお、本願において官能基当量における官能基とは、環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する官能基のことである。
【0018】
本発明のバインダー成分(A)に用いる化合物(a−1)は、官能基当量300〜3,000g/eqの環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)を用いればよく、2種以上の環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)を組み合わせて用いる場合は、2種以上の化合物(a−1)の平均の官能基当量として300〜3,000g/eqとなる環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)を組合せて用いてもよい。なお、本願において「(平均)官能基当量」とは、1種の化合物を用いた場合には、該化合物の官能基当量を示し、2種以上の化合物(a−1)を用いた場合には、用いた化合物の官能基当量と、用いた化合物の使用量を乗じた値を各々計算し、その和を化合物の総量で割ることにより算出される平均の官能基当量を表す。
【0019】
2種以上の環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)を用いた場合計算方法を以下具体的に例示する。
化合物(a−1)を2種組み合わせる(化合物(P)と化合物(R)の組合せ)場合の化合物(a−1)の(平均)官能基当量は、化合物(P)の官能基当量をp、その使用量をqグラム、化合物(R)の官能基当量をr、その使用量をsグラムとして、(平均)官能基当量が式(1)より求めることができる。
(平均)官能基当量=(p×q+r×s)/(q+s)・・・式(1)
上記の2種の化合物(a−1)に、更に化合物(a−1)(T)も含む3種を組み合わせる場合、化合物(T)の官能基当量をt、その使用量をuグラムとして、(平均)官能基当量が式(2)より求めることができる。
(平均)官能基当量=(p×q+r×s+t×u)/(q+s+u)・・・式(2)
【0020】
本発明のバインダー成分(A)に用いる化合物(a−1)は、(平均)官能基当量300〜3,000g/eqの環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)であることが好ましく、(平均)官能基当量310〜2,900g/eqの環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)であることがより好ましい。なお、(平均)官能基当量が300g/eq未満の化合物を用いた場合、熱硬化した際の重合体の架橋点が多くなるため、基材であるフィルムに対して追従性を有する回路パターンが得られず、クラックなどの亀裂が生ずる。また、化合物(a−1)の(平均)官能基当量が3,000g/eqを越えると、化合物(a−1)が流動性を失い、これを配合した導電性インク組成物は、回路パターン形成時のハンドリング性に乏しくなる。また、加熱処理を行っても導電粒子間に化合物(a−1)が介在したままとなり、導電粒子同士の接触を妨げ、十分な導電性が得られない。
【0021】
本発明のバインダー成分(A)に用いる化合物(a−1)としては、上記(平均)官能基当量の範囲内であり、分子内に環状エーテル構造、または環状エステル構造を有する化合物(a−1)であって、80℃以下の熱処理で開環重合をするものを用いることができる。環状エーテル構造を有する化合物(a−1)としては、オキシラニル基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物などを例示することができ、環状エステル構造を有する化合物としては、カルボン酸の環状無水物類、ラクトン類などを例示することができる。
【0022】
オキシラニル基を有する化合物としては、上記範囲の(平均)官能基当量を有する各種エポキシ化合物、エポキシ樹脂を特に限定することなく使用でき、中でも導電性インク組成物の可撓性付与に寄与する点で、更にフェニル基を有する化合物であることが好ましい。具体的には、フェノキシ樹脂、グリシジル(4−メトキシフェニル)エーテル、フェニル−2−メチルグリシジルエーテル、4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパン重縮合物、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、1,4−ポリブタジエン変性ビスフェノールFグリシジルエーテル、2,2'−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等の重縮合物及びこれらを変性したエポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ、レゾルシノールジグリシジルエーテルのフェニルジグリシジルエーテル、ナフトールアラルキルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテルなどを例示することができる。
【0023】
オキセタニル基を有する化合物として、具体的には、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、3−エチルヘキシルオキセタン、オキセタニルトリエトキシキシシラン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼンジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを例示することができる。
【0024】
カルボン酸の環状無水物類として、具体的には、3−ドデセニル無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水メチルナジック酸、ヘットアンハイドライド、3−(ドデセニル)ジヒドロ−2,5−フランジオンなどを例示することができる。
【0025】
ラクトン類として、具体的には、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、L−ラクチド、双環性ビスラクトン、3,4−ジヒドロクマリン、3,4−ジヒドロイソクマリン、ベンゾビピランジオン、ジチオカーボナートなどを例示することができる。
【0026】
本発明のバインダー成分(A)に用いる化合物(a−1)としては、反応性および基材密着性の点でオキシラニル基およびオキセタニル基を有する化合物が好ましく、反応性の調節が可能な点でオキシラニル基を有する化合物がより好ましい。
【0027】
本発明のバインダー成分(A)に用いる化合物(a−1)としては、2種以上の化合物を用いる際の組合せとしては、(平均)官能基当量が上記範囲内となるようにすれば、特に制限されないが、例えば、オキシラニル基を有する化合物とオキセタニル基を有する化合物の組合せ、オキシラニル基を有する化合物とカルボン酸の環状無水物類の組合せ、オキシラニル基を有する化合物とオキセタニル基を有する化合物とカルボン酸の環状無水物類の組合せ、オキシラニル基を有する化合物とオキセタニル基を有する化合物とラクトン類の組合せなどを例示することができる。
【0028】
本発明の化合物(a−1)の含有量は、基材との密着性の点で、導電性インク組成物の全重量中において5重量%以上含有していることが好ましい。なお、5重量%未満の場合には、導電性インク組成物を硬化させた際の導電性インク硬化物と基材との密着性の点で、著しく劣る。
【0029】
[ポリマー(a−2)]
本発明のバインダー成分(A)に用いるポリマー(a−2)は、数平均分子量(Mn)35,000以下であり、且つガラス転移温度80℃以下のポリマーであればよく、曳糸性がなく、化合物(a−1)や溶剤成分(C)と相溶するものが好ましい。具体的なポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、飽和ポリエステル、ポリアセタール、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタンなどを例示することができる。また、ポリウレタンにおいては、末端にイソシアネート基を有さないウレタンエラストマーが好ましい。
【0030】
本発明のポリマー(a−2)の数平均分子量(Mn)は、35,000以下であればよく、32,000以下であることが好ましい。なお、数平均分子量(Mn)が35,000を超えると、配合した導電性インク組成物の流動性が低下し、回路パターン形成時のハンドリング性に乏しくなる。さらに、加熱処理を行っても導電性粒子間にポリマーが介在したままとなり、導電性粒子同士の接触を妨げ、十分な導電性が得られない。また、数平均分子量の下限は特に限定されないが、5,000以上であることが好ましい。数平均分子量が5,000未満のポリマーを用いた場合、導電性インク組成物に展延性が無くなり、印刷時に回路パターンにかすれや断線が生じる。なお、本発明における数平均分子量(Mn)の測定方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。例えば、東ソー社製HLC−8121GPCにて、テトラヒドロフランを溶媒として用い、流量1ml/分、適切なカラム温度の測定条件でポリスチレン換算により求めることができる。
【0031】
本発明のポリマー(a−2)のガラス転移温度は、80℃以下であることが必須である。これは、硬化条件が80℃以下の場合、ミクロブラウン運動を生じて自由体積が増加することで、見かけ上の粘度が低下して導電性インク組成物の流動性が向上し、銀接触を助長する効果が得られる。なお、ポリマーのガラス転移温度が80℃を越えた場合、上記の効果は得られず、所定の回路導電性が得られない。また、ガラス転移温度が25℃未満の場合、曳糸性が強くなり、導電性インク組成物のハンドリング性が損なわれる。従って、ポリマー(a−2)は、ガラス転移温度25℃以上のものを用いることが好ましい。本発明におけるガラス転移温度の測定方法としては、示差走査熱量計(DSC)が挙げられる。例えば、SII社製DSC220にて、昇温速度10℃/分で室温から200℃まで昇温させたときのDSC曲線におけるベースラインのシフトが生じる温度を読み取ることにより求めることができる。
【0032】
本発明のポリマー(a−2)の含有量は、化合物(a−1)100重量部に対して、10〜20重量部含有することが好ましく、12〜18重量部含有することがより好ましい。なお、10重量部未満の場合、導電性インク組成物に展延性が得られず、印刷時に印刷した回路パターンにかすれや断線が生じる。また、20重量部を越える場合、導電性インク組成物の流動性が低下して回路パターン形成時のハンドリング性に乏しくなる。
【0033】
[硬化促進剤(a−3)]
本発明のバインダー成分(A)に用いる硬化促進剤(a−3)は、化合物(a−1)の80℃における重合開始と重合促進をさせる目的で配合するもので、化合物(a−1)や溶剤成分(C)と相溶するものが好ましい。
具体的な硬化促進剤(a−3)としては、イミダゾール類、フェノール類、アミン類、有機金属化合物、オニウム塩などを例示することができる。上記硬化促進剤を単独又は2種以上組み合わせても良い。
【0034】
イミダゾール類としては、具体的にはイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−アリルイミダゾールなどを例示することができる。
【0035】
フェノール類としては、具体的にはフェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、ノニルフェノールなどを例示することができる。
【0036】
アミン類としては、具体的にはメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アニリン、ジベンジルアミン、エチレンアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などを例示することができる。
【0037】
有機金属化合物としては、具体的には有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、アルコキシチタン化合物などを例示することができる。
【0038】
オニウム塩としては、具体的にはフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートなどのジアゾニウム塩、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのヨードニウム塩、1−ナフチルメチルメチルp−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、6−フッ化アンチモンスルホニウム塩などのスルホニウム塩、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェートなどのピリジニウム塩、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアンモニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのホスホニウム塩などを例示することができる。
【0039】
本発明のバインダー成分(A)に用いる硬化促進剤(a−3)としては、イミダゾール類、アミン類、オニウム塩が好ましい。
【0040】
本発明の硬化促進剤(a−3)の含有量は、化合物(a−1)100重量部に対して5〜70重量部の範囲であることが好ましく、5〜60重量部の範囲であることがより好ましい。なお、5重量部未満の場合には、硬化反応が十分に進行せず、基材との十分な密着性が得られない。また、70重量部を越える場合には、配合した導電性インク組成物が室温で硬化活性を有するようになり、長期の保存安定性に乏しくなる。さらに、回路パターンの印刷作業中に硬化反応が開始する可能性がある。
【0041】
〔導電性粒子成分(B)〕
本発明の導電性粒子成分(B)は、メジアン径10μm以下の導電性粒子であれば特に限定することなく使用することができる。メジアン径の下限は特に限定しないが、導電性粒子の接点を多く取ることができる点で、0.1μm以上であることが好ましい。なお、メジアン径の0.1μm未満では所定の回路導電性が得られない。また、本発明において、導電性粒子成分(B)のメジアン径が上記範囲内となるようにすれば、メジアン径が上記範囲以外の導電性粒子成分を組合せて用いてもよい。本発明においてメジアン径とは、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径のことであり、50%平均粒径とも言われる。メジアン径の測定方法は、一般的にレーザー回折・散乱法(日機装(株)製マイクロトラック法など)によって測定することができる。
【0042】
導電性粒子成分(B)の形状は、目的とする導電性が得られるものであれば、特に限定されないが、例えば、球状、棒状、フレーク状などを例示することができ、これら複数の形状のものを混合して用いることができる。
【0043】
導電性粒子成分(B)の種類は、特に制限なく用いることができる。例えば、金、銀、銅、白金族金属などの貴金属、又は亜鉛、ニッケル、アルミニウムなど導電性の高い単体の金属粒子、又はこれらの合金の金属粒子を例示することができる。導電性の点で金、銀、銅、白金族金属又はその合金の金属粒子が好ましく、銀、又はその合金の金属粒子がより好ましい。導電性粒子成分(B)は、市販品、又は公知の方法で製造したもののいずれを用いることができる。
【0044】
本発明の導電性粒子成分(B)の含有量は、バインダー成分(A)中の化合物(a−1)100重量部に対して、1,000〜1,500重量部の範囲であることが好ましく、1,100〜1,400重量部の範囲であることがより好ましい。なお、1,000重量部未満の場合、十分な回路導電性が得られない。また、1,500重量部を越える場合には、導電性粒子成分(B)を配合した導電性インク組成物の流動性が低下して回路パターン形成時のハンドリング性に乏しくなる。
【0045】
〔溶剤成分(C)〕
本発明の溶剤成分(C)は、25℃における蒸気圧が1Pa以上1kPa以下である有機溶媒を用いることができ、25℃における蒸気圧が1Pa以上0.8kPa以下である有機溶剤が好ましく、25℃における蒸気圧が1Pa以上、0.65KPa以下である有機溶剤がより好ましい。
溶剤成分(C)の常圧下25℃における蒸気圧が1Pa未満の場合、熱硬化条件下において溶剤成分(C)の揮発性が不十分となり、硬化物中に溶剤が残存してしまい、回路導電性や長期信頼性に悪影響を与える。また、常圧下25℃における蒸気圧が1kPaを超える場合、室温での印刷作業環境下において溶剤成分(C)の揮発によりインクの粘度変化が生じ、回路パターン形成時のハンドリング性だけでなく、印刷した回路パターンにかすれや断線が生じる原因となるため好ましくない。
【0046】
本発明の溶剤成分(C)は、蒸気圧が上記範囲のものであり、且つバインダー成分(A)と相溶するものであれば、特に制限無く用いることができる。例えば、アルコール類、炭化水素類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類などを例示することができる。
【0047】
アルコール類としては、具体的にはn−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ターピネオールなどを例示することができる。
【0048】
炭化水素類としては、具体的にはデカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、o−キシレン、スチレン、ピネン、リモネン、ミネラルスピリットなどを例示することができる。
【0049】
エステル類としては、具体的にはエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、イソ酪酸3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンチルなどを例示することができる。
【0050】
ケトン類としては、具体的にはジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロンなどを例示することができる。
【0051】
グリコールエーテル類としては、具体的にはエチレングリコールターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを例示することができる。
【0052】
本発明の溶剤成分(C)としては、バインダー成分(A)との相溶性の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、イソホロンなどが好ましい。また、バインダー成分(A)や導電性粒子成分(B)の分散性、および導電性インク組成物の印刷性を向上させる目的で必要に応じて、常圧下25℃における蒸気圧が上記範囲内となるようにすれば、上記範囲外の蒸気圧を有する有機溶剤を混合して用いることも可能である。
【0053】
本発明の溶剤成分(C)の含有量は、バインダー成分(A)中の化合物(a−1)100重量部に対して10〜500重量部の範囲であることが好ましく、30〜300重量部の範囲であることがより好ましい。また、上記範囲内の含有量とすることにより、導電性インク組成物の粘度が10〜50Pa・s(回転粘度計10rpm、25℃環境)の範囲に収まるよう調整することができる。導電性インク組成物の粘度は、10〜30Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0054】
[その他添加剤]
本発明の導電性インク組成物には、必要に応じて本発明の効果に影響を与えない範囲で、粘度調整剤、チキソ剤、導電助剤、チョーキング防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、乾燥防止剤、密着付与剤、カップリング剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0055】
本発明に用いる粘度調整剤としては、高粘度化が必要な場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂など各種ポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類、パルミチン酸デキストリンなどの糖脂肪酸エステル、オクチル酸亜鉛などの金属石鹸、スメクタイトなどの膨潤性粘土鉱物、スパイクラベンダーオイル、石油を蒸留した鉱物性のペトロールなどを用いることができる。また、粘度調整剤として高分子量のもの、又は多量に使用する場合、乾燥温度では十分な揮発が見込めないため、分子量に応じて、添加量を極力少量に抑える必要がある。そのため、導電性インク組成物中における粘度調整剤の添加量は、溶剤成分(C)100重量部に対して、7重量部以下であればよく、5重量部以下であることが好ましい。
【0056】
本発明の導電性インク組成物の各成分の混合方法は、各成分が導電性インク組成物中で均一に分散・混合でき、混合中に硬化するなどの問題を生じなければ特に制限なく用いることができる。分散・混合に用いる具体的な混合機としては、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、超音波分散機、遊星ミル、ボールミル、3本ロールなどを例示することができる。
混合の際は、導電性粒子成分(B)の凝集解砕と、硬化促進剤(a−3)配合による混合中の導電性インク組成物の硬化を防止する目的で、化合物(a−1)、ポリマー(a−2)、導電性粒子成分(B)、および溶剤成分(C)を先行して混合することが好ましい。さらに、混合方法は導電性粒子成分(B)に強いせん断力がかかる3本ロールを用いることが好ましい。また、硬化促進剤(a−3)は、上記成分とは別に後で添加することが好ましい。なお、硬化促進剤(a−3)を添加した後の混合は、遊星ミルなどの簡便な方法で行うことができる。
【0057】
〔導電性インク組成物の硬化方法〕
本発明の導電性インク組成物は80℃以下20分以上、好ましくは30分以上の加熱に付することにより、過不足なく重合した硬化物を形成することができる。なお、硬化温度を低くした場合、硬化反応に必要な熱量が不足するため、硬化時間を長くすることが必要となる。例えば60℃での硬化温度では2時間以上、40℃での硬化温度では12時間以上、25℃での硬化温度では48時間程度の硬化時間を与えることで目的の硬化物を得ることができる。
【0058】
〔導電性回路パターンが形成されてなる基板〕
本発明の導電性インク組成物は、特別な回路形成用基材・技術を用いることなく、一般的な汎用機を用いることで、回路形成用基材上で熱硬化させることにより、導電性回路パターンが形成されてなる基板を得ることができる。以下、導電性インク組成物を用いて導電性回路パターンが形成されてなる基板の製造方法について記載する。
【0059】
本発明の導電性インク組成物を用いる導電性回路パターンが形成される回路形成用基材としては、通常、導電性回路パターンの基材として使用されるものを用いることができるが、本発明の導電性インク組成物は80℃以下の温度で硬化させることができるため、耐熱性が低いポリマーフィルム基材、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのポリマーフィルム基材へ適用が可能である。また、基材表面は、用途に応じて部分的に異なる材料で形成されていてもよい。例えば、銅やアルミニウムなどの金属膜、酸化インジウムスズ(ITO)などの無機物膜、ハードコートなどの有機物膜(80℃以下で熱変形や構造変化しないものが好ましい)などを例示することができる。
【0060】
本発明の導電性インク組成物を用いて導電性回路パターンが形成されてなる基板の製造方法については、基材上に導電性回路パターンが形成される方法であれば、その製造方法は特に限定されないが、本発明の導電性回路パターンが形成されてなる基材の製造方法は、導電性インク組成物を調製する工程(調製工程)、回路形成用基材に所定の領域上に前記導電性インク組成物を塗布する工程(塗布工程)と、前記基材上の導電性インク組成物を熱硬化して導電性回路パターンを形成する(硬化工程)を含む製造方法を例示することができる。
【0061】
調製工程については、本発明の導電性インク組成物について、上述したバインダー成分(A)、導電性粒子成分(B)、溶剤成分(C)、必要に応じて、その他添加物を加えて、上述した混合方法により調製することができる。
【0062】
塗布工程においては、上記工程で調製した導電性インク組成物を、種々の印刷法によって、回路形成用基材上に導電性の塗膜を印刷することができ、最も好ましい印刷方法はスクリーン印刷法である。このほか、レベリング剤などの配合により導電性インク組成物を低粘度化すれば、インクジェット法、ディスペンス法などの吐出法を用いることができ、チキソ剤などの配合により導電性インク組成物の粘度やチキソ性を調整すれば、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷などの印刷法を用いることができる。
【0063】
硬化工程においては、上記工程で基材上に塗布した導電性インク組成物を、熱硬化に付することにより、導電性回路パターンを形成させる。硬化条件は基材として、耐熱性が低いポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのポリマーフィルム基材、又はこれらの基材に銅やアルミニウムなどの金属膜、ITOなどの無機物膜、ハードコートなどの有機物膜を表面処理した基材を用いた場合、80℃以下、例えば25℃〜80℃で熱硬化させることができる。
【0064】
上記の導電性回路パターンが形成された基板は、基材上に形成した導電性回路パターンが優れた導電性を示し、導電性回路パターンと基材が強固に密着しているために、印刷パターンの位置ずれの影響が大きい用途、例えば、フレキシブル回路基板、タッチパネル用基板、表示装置用基板に有用に用いることができ、種々の電気機器に使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
以下に、実施例及び比較例に用いた化合物を示す。
〔バインダー成分(A)〕
〔化合物(a−1)〕
化合物1:三菱化学社製フェノキシ樹脂:jER1256(官能基当量8,000g/eq)
化合物2:三菱化学社製フェノキシ樹脂:jER1007(官能基当量2,000g/eq)
化合物3:プリンテック社製4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパン重縮合物の混合物:EPOX−MK R151HF、(官能基当量480g/eq)
化合物4:東亞合成社製1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン:OXT−121(官能基当量225g/eq)
化合物5:ADEKA社製2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン:EP−4100HF(官能基当量180g/eq)
化合物6:日立化成工業社製メチルテトラヒドロ無水フタル酸:HM2000(官能基当量166g/eq)
化合物7:三菱化学社製γ-ブチロラクトン(官能基当量86g/eq)
【0067】
〔ポリマー(a−2)〕
ポリマー1:日信化学工業社製 塩化ビニル酢酸ビニル共重合体:ソルバインC(数平均分子量(Mn)30,000、ガラス転移温度70℃)
ポリマー2:T&K TOKA社製 脂肪酸系ポリアミド:PA−100(数平均分子量(Mn)36,000、ガラス転移温度40℃)
ポリマー3:積水化学工業社製 ポリビニルアセタール樹脂:エスレックKS−1(数平均分子量(Mn)27,000、ガラス転移温度107℃)
【0068】
〔硬化促進剤(a−3)〕
硬化促進剤1:日本合成化学工業社製 イミダゾール:1−メチルイミダゾール
硬化促進剤2:サンアプロ社製 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7:DBU
硬化促進剤3:三新化学工業社製 6−フッ化アンチモンスルホニウム塩:サンエイドSI−60
【0069】
〔導電性粒子成分(B)〕
導電性粒子1:福田金属箔粉工業社製 フレーク状銀粉:AgC−201Z(メジアン径2.7μm)
導電性粒子2:福田金属箔粉工業社製 フレーク状銀:AgC−221A(メジアン径7.5μm)
導電性粒子3:福田金属箔粉工業社製 フレーク状銀:AgC−129(メジアン径13.5μm)
【0070】
〔溶剤成分(C)〕
溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(蒸気圧:0.52kPa、25℃)
溶剤2:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(蒸気圧:1.3Pa、25℃)
溶剤3:メチルエチルケトン(蒸気圧:12.6kPa、25℃)
溶剤4:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(蒸気圧:0.001Pa、25℃)
【0071】
上記記載した各成分を表1、3に示す配合量に基づいて、導電性インク組成物を調製した。調製方法は、化合物(a−1)、ポリマー(a−2)、導電性粒子成分(B)、および溶剤成分(C)の混合物を室温下で井上製作所社製3本ロールHHC−121×254にて4パス処理し、その後、硬化促進剤(a−3)を加えて室温下でクラボウ社製マゼルスターKK−250Sで自公転ともに1,000rpm、2分間撹拌することにより作製した。
【0072】
(粘度測定)
作製した導電性インク組成物を、E型粘度計BROOKFIELD社製VISCOMETER DV−II+Pro(CPE−52コーン使用)にて、25℃環境下、10rpmにおける粘度測定した。結果を表2、表4に示す。
【0073】
(印刷性評価)
印刷性評価をおこなうために、表面にITOスパッタリング処理したPETフィルム(帝人化成社製 HK188G−AB500H)と、表面易接着処理PETフィルム(帝人化成製 HPE−50)の2種類を用いた。基材サイズは100×100mmとした。テトロン紗のスクリーン版(300メッシュ、開口部のライン幅/スペース幅=100μm/100μm、ライン幅10本、ライン長さ50mm)、硬度80度のウレタンスキージを用いて、導電性インク組成物を印刷し、80℃×30分乾燥後の硬化物の厚みが10±2μmとなるサンプルを作製した。これをテスターにて導通判定するとともに、光学顕微鏡にて外観チェックした。判定基準は以下のように定めた。結果を表2、表4に示す。
○:ライン10本とも導通OK。
△:ライン10本とも導通OK、ただし外観上かすれているラインがある。
×:ライン1本以上導通NGあり。
【0074】
(信頼性評価サンプルの作製)
信頼性評価サンプルとして、表面にITOスパッタリング処理したPETフィルム(帝人化成社製 HK188G−AB500H)と、表面易接着処理PETフィルム(帝人化成製 HPE−50)の2種類を用いた。基材サイズは100×100mmとした。テトロン紗のスクリーン版(300メッシュ、開口部80mm×50mm)、硬度80度のウレタンスキージを用いて、インクを印刷し、80℃×30分乾燥後の硬化物厚みが10±2μmとなる信頼性評価サンプルを作製した。
【0075】
(密着性評価)
信頼性評価サンプル(PET面印刷物、ITO面印刷物)をJIS K5600により試験し、ニチバン製セロハンテープCT405AP−24を引き剥がした際に剥離せず残存したマス数から判定した。判定基準は以下のように定めた。結果を表2、表4に示す。
○:23/25以上
×:22/25以下
【0076】
(回路導電性評価)
信頼性評価サンプル(PET面印刷物のみ)に四端子導電率計(三菱化学アナリテック製 ロレスターAX MCR−T370)を当てて、JIS K7194により比抵抗を測定した。判定基準は以下のように定めた。結果を表2、表4に示す。
○:5×10
−5Ω・cm未満
×:5×10
−5Ω・cm以上
【0077】
(長期信頼性評価)
信頼性評価サンプル(PET面印刷物のみ)の比抵抗を測定した後、60℃90%RHの恒温恒湿オーブン内へサンプルを放置し、100時間後と200時間後に取り出して上記方法にて比抵抗を測定し、その変化を評価した。判定基準は以下のように定めた。結果を表2、表4に示す。
○:比抵抗上昇10%未満
×:比抵抗上昇10%以上
【0078】
表1に実施例を示す。表中の単位は重量部である。
【0079】
【0080】
表3に比較例を示す。表中の単位は重量部である。
【0081】
【0082】
比較例1は、化合物(a−1)の(平均)官能基当量が3,000g/eqを超えているため、導電粒子間に存在する架橋剤成分が流動しづらく、導電粒子同士の接触を阻害する結果、十分な回路導電性が得られなかった。
比較例2は、化合物(a−1)の(平均)官能基当量が300g/eqに満たないため、高架橋密度硬化物となり、200時間での長期の信頼性試験で回路パターンにクラックが生じた結果、比抵抗が10%以上上昇した。
比較例3は、ポリマー(a−2)の数平均分子量(Mn)が35,000を超えているため、導電粒子間に存在する架橋剤成分が流動しづらく、導電粒子同士の接触を阻害する結果、十分な回路導電性が得られなかった。また、長期の信頼性試験での結果も良好ではなかった。
比較例4は、ポリマー(a−2)のガラス転移温度が80℃を越えているため、インク流動性に乏しく、所定の回路導電性が得られなかった。
比較例5は、導電性粒子成分(B)のメジアン径が10μmを越えているため印刷版からのインク版抜け性が悪化し、印刷した回路パターンにかすれや断線が生じる。結果、十分な回路導電性が得られなかった。また、長期の信頼性試験での結果も良好ではなかった。
比較例6は、溶剤成分(C)の蒸気圧が高く、25℃において1kPaを超えているため、印刷作業中に溶剤揮発によるインク粘度変化が生じ、印刷した回路パターンにかすれや断線が生じる。結果、十分な回路導電性が得られなかった。また、長期の信頼性試験での結果も良好ではなかった。
比較例7は、溶剤成分(C)の蒸気圧が低く、常圧下25℃において1Pa未満のため、硬化条件下においても溶剤揮発が不完全のままインクが硬化してしまい、溶剤が硬化物中に残存している。結果、回路導電性の長期信頼性評価中に比抵抗上昇を引き起こした。