【実施例1】
【0018】
上り回線(端末から基地局へ向う方向の回線)でIDMA伝送を行う移動通信システムにおいて、各ユーザ(ユーザ数はK)の無線端末装置はN
T本(N
Tは正の整数)の送信アンテナを有し、それら無線端末装置は同時に同一周波数チャネルを用いて基地局装置に無線信号を送信する。基地局装置は、N
R本(N
Rは正の整数)の受信アンテナを有し、N
R本の受信アンテナを用いてそれら無線端末装置から送信された無線信号を受信する。なお、基地局装置において各ユーザからの受信タイミング偏差は無いと想定する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る第kユーザ(0≦k≦K−1)の無線端末装置1の概略構成図である。
図1には、無線端末装置1が有する機能のうち、IDMA送信機の機能を示している。
【0020】
図1において、無線端末装置1は、送信信号生成部101により送信信号系列を生成する。送信信号系列は、直並列変換部102により、空間多重されるストリームに分割される。各ストリームは、さらにM個のIDMストリームに分割される。空間多重ストリーム数、およびIDMストリーム数は、多重数・符号化・インタリーバ・送信電力設定部108により制御される。各ストリームに分割された送信信号系列は、誤り訂正符号器(符号化部)103により低符号化率の誤り訂正符号を用いて符号化される。符号化されたビット系列は、ユーザ毎、且つストリーム毎に異なるインタリーバ処理部104により並び替えられ、変調信号生成部105により変調信号にマッピングされ、送信電力増幅部106により送信電力が制御された上で送信アンテナ107から送信される。
【0021】
なお、送信時に用いるインタリーブパタンは、送信毎に切り替えて使用しても良い。これにより、前回送信時とのダイバーシチゲインを最大化することができる。
【0022】
また、
図1の無線端末装置1では、時間領域のIDMA信号として無線送信される構成としているが、変調信号をサブキャリアにマッピングし、逆フーリエ変換(IFFT)により時間信号に変換され、ガード・インターバル(GI)が挿入された後に無線送信される、OFDM−IDMAの構成としても良い。
【0023】
また、
図1の無線端末装置1では、空間多重ストリームが異なる送信アンテナから送信される構成としているが、各空間多重ストリームに異なるプリコーディング処理を施し、各空間多重ストリームを全送信アンテナから送信する構成であっても良い。
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係る基地局装置2の概略構成図である。
図2には、基地局装置2が有する機能のうち、IDMA受信機の機能を示している。
【0025】
図2において、受信アンテナ201は、無線端末装置1から送信された信号を受信する。受信電力増幅部202は、N
R本の受信アンテナ201で受信された各受信信号の電力を増幅する。受信アンテナ201での受信信号には、複数のユーザ、または複数のレイヤの信号が多重されており、初送パケットまたは再送パケットが含まれる。
【0026】
以下では、
図2に示す基地局装置2のIDMA受信機の機能における繰り返しマルチユーザ干渉除去処理の動作を説明する。一回の受信処理に対して、N回(Nは任意に設定可能なパラメータ)繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うものとする。
【0027】
[チャネル推定部]
(初回のマルチユーザ干渉除去処理時)
チャネル推定部219は、初回のマルチユーザ干渉除去処理においては、データ復調用のチャネル推定処理(以下、単にチャネル推定と称する)の対象となる受信信号が初送パケットである場合には、受信電力増幅部202から入力された受信信号から、既知のパイロット信号を用いて、チャネル推定を行う。一方、チャネル推定の対象となる受信信号が再送パケットである場合には、チャネル推定部219は、受信電力増幅部202から入力された受信信号から、既知のパイロット信号と、ビット毎の対数尤度比(Log Likelihood Ratio:LLR)用のインタリーバ処理部(ビットLLR用インタリーバ処理部)214から入力されたビット毎のLLR(ビットLLR)とを用いて、チャネル推定を行う。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、チャネル推定の対象となる再送パケットに関して前回の受信時(初送時または再送時)に復号され、ビットLLR記憶部210に格納されたものである。既知のパイロット信号と、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRとの両方を用いてチャネル推定を行うことにより、チャネル推定精度の向上が期待できる。なお、チャネル推定の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、既知のパイロット信号のみを用いてチャネル推定を行っても良い。
【0028】
(2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理時)
チャネル推定部219は、2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理においては、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRを用いて、初回のマルチユーザ干渉除去処理時のチャネル推定結果を更新する。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、チャネル推定の対象となる再送パケットに関して復号器(復号部)で復号されたものである。なお、2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理において、初回のマルチユーザ干渉除去処理時のチャネル推定結果を更新せず、そのまま初回のマルチユーザ干渉除去処理時のチャネル推定結果を用いても良い。
【0029】
[マルチユーザ干渉除去部]
マルチユーザ干渉除去部203は、複数の無線端末装置間で発生する電波干渉の結果である干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から干渉レプリカ信号を除去する。
【0030】
(初回のマルチユーザ干渉除去処理時)
マルチユーザ干渉除去部203は、初回のマルチユーザ干渉除去処理においては、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合には、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から干渉レプリカ信号を除去する。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる再送パケットに関して前回の受信時(初送時または再送時)に復号され、ビットLLR記憶部210に格納されたものである。これにより、複数の無線端末装置からの受信信号に再送パケットが含まれている場合には、初回のマルチユーザ干渉除去処理であっても、再送パケットによる干渉信号を一部でも除去することができるので、受信SINRを改善する効果が得られる。さらに、複数の無線端末装置からの受信信号に初送パケットと再送パケットが混在している場合には、初回のマルチユーザ干渉除去処理であっても、再送パケットによる干渉信号を一部でも除去することができるので、初送パケットに係る受信SINRも改善する効果が得られる。
【0031】
一方、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が初送パケットである場合には、まだ復号されていないので、干渉レプリカ信号を生成することができない。
【0032】
なお、ビットLLR記憶部210に格納されるビットLLRの情報を用いて、有意な干渉除去ができる干渉レプリカ信号を生成できるか否かを判定し、有意な干渉除去ができる干渉レプリカ信号を生成できる場合にのみ干渉レプリカ信号を生成するようにしても良い。これにより、演算量の削減を図ることができる。その判定の指標としては、ビットLLRの絶対値の平均値を用いることができる。また、推定したチャネルのノルムを用いて、有意な干渉除去ができる干渉レプリカ信号を生成できるか否かを判定しても良い。
【0033】
(2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理時)
マルチユーザ干渉除去部203は、2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理においては、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から干渉レプリカ信号を除去する。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる再送パケットに関して復号器(復号部)で復号されたものである。
【0034】
[デインタリーバ処理部]
デインタリーバ処理部205は、マルチユーザ干渉除去部203により干渉レプリカ信号が除去された信号を、ユーザ毎のインタリーブパタンを用いてデインタリーブ処理を行う。ユーザ毎のインタリーブパタンは、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から設定される。
【0035】
[ビットLLR加算部]
ビットLLR加算部206は、復号対象のパケットが再送パケットである場合には、デインタリーバ処理部205から入力されたビットLLRと、ビットLLR記憶部210に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRとを加算する。ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRは、切替部212を介して、ビットLLR加算部206に入力される。切替部212は、復号対象のパケットが再送パケットである場合にのみ、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRをビットLLR加算部206に出力する。
【0036】
ビットLLR加算部206におけるビットLLR加算方法としては、以下の二通りの方法A−1,A−2が挙げられる。
(方法A−1)毎回のマルチユーザ干渉除去処理において、デインタリーバ処理部205から入力されたビットLLRと、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRとを加算する。
(方法A−2)初回のマルチユーザ干渉除去処理においてのみ、デインタリーバ処理部205から入力されたビットLLRと、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRとを加算する。
【0037】
[復号部]
復号部207は、ビットLLR加算部206から入力されたビットLLRと、復号対象ユーザが用いる符号化の情報とを用いて誤り訂正復号を行う。復号対象ユーザが用いる符号化の情報は、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から入力される。復号部207は、誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを、ビットLLR用インタリーバ処理部214へ入力する。復号部207から出力されたビットLLRは、切替部212を介して、ビットLLR用インタリーバ処理部214へ入力される。切替部212は、ビットLLR用インタリーバ処理部214に対して、復号部207から出力されたビットLLRを入力するか、又は、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRを入力するかを切り替える。
【0038】
[ビットLLR用インタリーバ処理部]
ビットLLR用インタリーバ処理部214は、ユーザ毎のインタリーブパタンに従って、ビットLLRの順序を入れ替える。ユーザ毎のインタリーブパタンは、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から入力される。
【0039】
以上が、繰り返し(N回繰り返し)マルチユーザ干渉除去処理の動作の説明である。
【0040】
次に、マルチユーザ干渉除去処理の繰り返し回数が規定回数(N回)に達した後の動作を説明する。
【0041】
[並直列変換部]
並直列変換部209は、多重数に基づいて、復号部207で生成された受信ビット系列を並直列変換する。復号部207は、誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRから受信ビット系列を生成する。
【0042】
[誤り検出部]
誤り検出部215は、並直列変換部209から出力された復号データに対して誤り検出を行う。このとき、誤りが検出された場合には、復号部207により当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRをビットLLR記憶部210に格納する。さらに、制御信号生成部216に対して再送要求信号の生成を要求する。これにより、再送要求信号が、制御信号生成部216により生成され、該当する無線端末装置1に送信される。
【0043】
一方、復号データの誤り検出において誤りが検出されなかった場合には、ビットLLR記憶部210に格納されている該当のビットLLRを削除する。
【0044】
なお、上述の実施例では、ビットLLR記憶部210にビットLLRを格納したが、ビットLLR記憶部210に格納する情報は実質的にビットLLRを示すビットLLR情報であればよい。ビットLLRに変換可能な情報として、例えば、受信信号の期待値(tanh(LLR/2)))をビットLLR記憶部210に格納してもよい。