特許第5995203号(P5995203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995203
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】無線受信装置および無線受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20160908BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20160908BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20160908BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20160908BHJP
   H03M 13/27 20060101ALI20160908BHJP
   H03M 13/29 20060101ALI20160908BHJP
   H03M 13/45 20060101ALI20160908BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20160908BHJP
   H04L 1/16 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04J11/00 Z
   H04B1/10 L
   H04W16/28 130
   H03M13/27
   H03M13/29
   H03M13/45
   H04B7/04
   !H04L1/16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-232236(P2012-232236)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-86783(P2014-86783A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】松本 知子
(72)【発明者】
【氏名】小西 聡
(72)【発明者】
【氏名】畑川 養幸
(72)【発明者】
【氏名】須山 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博
(72)【発明者】
【氏名】府川 和彦
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/104683(WO,A1)
【文献】 特開2006−203875(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0154435(US,A1)
【文献】 式田 潤 他,MIMO-OFDM IDMAにおけるマルチユーザ検出とチャネル推定の繰り返し結合処理,電子情報通信学会技術研究報告,2009年 7月 9日,Vol.109, No.130,pp.95-100,RCS2009-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H03M 13/27
H03M 13/29
H03M 13/45
H04B 1/10
H04B 7/04
H04J 11/00
H04W 16/28
H04L 1/16
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線送信装置との間でインタリーブ分割多元接続を行う無線受信装置において、
一回の受信処理に対して、複数回繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うマルチユーザ干渉除去部と、
前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRに対して誤り訂正復号を行う復号部と、
前記複数回のマルチユーザ干渉除去処理後に前記誤り訂正復号された復号データに誤りが検出された場合に、当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを格納するビットLLR記憶部と、を備え、
前記マルチユーザ干渉除去部は、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から当該干渉レプリカ信号を除去する、無線受信装置であり、
復号対象のパケットが再送パケットである場合には、前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRと、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRとを加算するビットLLR加算部をさらに備え、
前記復号部の後段に前記ビットLLR加算部を設け、受信データビットに対するビットLLRを前記ビットLLR記憶部に格納する、
ことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
複数の無線送信装置との間でインタリーブ分割多元接続を行う無線受信装置において、
一回の受信処理に対して、複数回繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うマルチユーザ干渉除去部と、
前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRに対して誤り訂正復号を行う復号部と、
前記複数回のマルチユーザ干渉除去処理後に前記誤り訂正復号された復号データに誤りが検出された場合に、当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを格納するビットLLR記憶部と、を備え、
前記マルチユーザ干渉除去部は、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から当該干渉レプリカ信号を除去する、無線受信装置であり、
初回のマルチユーザ干渉除去処理において、データ復調用のチャネル推定処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて、チャネル推定を行うチャネル推定部をさらに備えた、
ことを特徴とする無線受信装置。
【請求項3】
複数の無線送信装置との間でインタリーブ分割多元接続を行う無線受信方法であって、
一回の受信処理に対して、複数回繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うマルチユーザ干渉除去ステップと、
前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRに対して誤り訂正復号を行う復号ステップと、
前記複数回のマルチユーザ干渉除去処理後に前記誤り訂正復号された復号データに誤りが検出された場合に、当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを記憶手段に格納するビットLLR記憶ステップと、含み、
前記マルチユーザ干渉除去ステップにおいては、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記記憶手段に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から当該干渉レプリカ信号を除去する、無線受信方法であり、
復号対象のパケットが再送パケットである場合には、前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRと、前記記憶手段に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRとを加算するビットLLR加算ステップをさらに含み、
前記復号ステップの後段に前記ビットLLR加算ステップを設け、受信データビットに対するビットLLRを前記記憶手段に格納する、
ことを特徴とする無線受信方法。
【請求項4】
複数の無線送信装置との間でインタリーブ分割多元接続を行う無線受信方法であって、
一回の受信処理に対して、複数回繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うマルチユーザ干渉除去ステップと、
前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRに対して誤り訂正復号を行う復号ステップと、
前記複数回のマルチユーザ干渉除去処理後に前記誤り訂正復号された復号データに誤りが検出された場合に、当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを記憶手段に格納するビットLLR記憶ステップと、含み、
前記マルチユーザ干渉除去ステップにおいては、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記記憶手段に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から当該干渉レプリカ信号を除去する、無線受信方法であり、
初回のマルチユーザ干渉除去処理において、データ復調用のチャネル推定処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記記憶手段に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて、チャネル推定を行うチャネル推定ステップをさらに含む、
ことを特徴とする無線受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタリーブ分割多元接続(Interleave-Division Multiple Access:IDMA)を行う無線受信装置および無線受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信の技術分野においては、限られた周波数資源を複数のユーザ間で効率的に利用するために、高度な多元接続技術が研究されている。従来の周波数分割多元接続(Frequency-Division Multiple Access:FDMA)、時間分割多元接続(Time-Division Multiple Access:TDMA)及び符号分割多元接続方式(Code-Division Multiple Access:CDMA)の他に、最近では時間及び周波数領域を効率的に利用するマルチキャリア(Multi Carrier:MC)−CDMA、直交周波数分割多元接続(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access:OFDMA)、また空間的な処理により効率化を行う空間分割多元接続(Spatial-Division Multiple Access:SDMA)などが研究されている。
【0003】
又、近年、直交性を有する信号波形でユーザ分離を行うのではなく、低符号化率誤り訂正符号とユーザごとに異なるインタリーブの縦続接続で行うインタリーブ分割多元接続(IDMA)が検討されている。IDMAは、ユーザ間の直接的な直交性はないが、伝搬特性のランダム化、ユーザ識別用インタリーブ、低符号化率誤り訂正符号、及びそれらの相乗的な擬似直交性を引き出す繰り返し受信により、各ユーザ信号を効率良く分離できる。
【0004】
又、複数の送受信アンテナを用いて信号ストリームを空間多重するMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送に対してIDMAを拡張したMIMO−IDMAも検討されている。従来のMIMO−IDMAに関する検討では、受信機において空間多重されたストリームの分離と遅延波成分の分離抽出を同時に行うため、周波数選択性フェージング環境では、収容できるユーザ数が減少するという問題があった。この問題を解決するために、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)とIDMAを組み合わせたOFDM−IDMAが検討されており、周波数利用効率が高く、マルチパス環境においてもシステム容量を維持できる。さらに、OFDM−IDMAをMIMOへ拡張した“MIMO−OFDM IDMA”も検討されている。“MIMO−OFDM IDMA”は、周波数と空間の両方においてダイバーシチ効果を得ることができ、最も優れた伝送特性を実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C. Novac, F. Hlawatsch, and G. Matz, “MIMO-IDMA: uplink multiuser MIMO communications using interleave-division multiple access and low-complexity iterative receivers,” IEEE ICASSP, vol. 3, pp. III225-228, Apr. 2007.
【非特許文献2】式田潤、須山聡、鈴木博、府川和彦,“MIMO-OFDM IDMAにおける繰り返しマルチユーザ検出”,信学技報,RCS2009-42,2009年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のIDMA技術では、以下に示す課題がある。
【0007】
IDMAにより無線端末装置から基地局装置にパケットを送信し、基地局装置が復調処理を行った際に、誤りが検出された場合には、基地局装置は、NACK信号を無線端末装置に返し、再送を要求する。無線端末装置は、NACK信号を受信すると、パケットを再送する。このとき、IDMAではユーザ間で非直交周波数を用いるので、無線端末装置から再送されたパケットは、初送時と同様に電波干渉の影響により、基地局装置で受信できない可能性がある。
【0008】
もしも基地局装置が無線端末装置から再送されたパケットを受信できないと、再送処理が再び行われるため、他ユーザが新しいパケットを送信する場合にはユーザ間の電波干渉が増加し、伝送品質が劣化する。あるいは、伝送品質を維持するために、他ユーザが新しいパケットを送信しない場合には、再送パケットの影響で伝送効率が低下する。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、再送時のパケット受信成功確率を向上させることで伝送品質を維持し、高いスループットを実現できる無線受信装置および無線受信方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線受信装置は、複数の無線送信装置との間でインタリーブ分割多元接続を行う無線受信装置において、一回の受信処理に対して、複数回繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うマルチユーザ干渉除去部と、前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRに対して誤り訂正復号を行う復号部と、前記複数回のマルチユーザ干渉除去処理後に前記誤り訂正復号された復号データに誤りが検出された場合に、当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを格納するビットLLR記憶部と、を備え、前記マルチユーザ干渉除去部は、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から当該干渉レプリカ信号を除去する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る無線受信装置において、復号対象のパケットが再送パケットである場合には、前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRと、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRとを加算するビットLLR加算部を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る無線受信装置において、前記復号部の後段に前記ビットLLR加算部を設け、受信データビットに対するビットLLRを前記ビットLLR記憶部に格納することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る無線受信装置においては、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、データ復調用のチャネル推定処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記ビットLLR記憶部に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて、チャネル推定を行うチャネル推定部を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る無線受信方法は、複数の無線送信装置との間でインタリーブ分割多元接続を行う無線受信方法であって、一回の受信処理に対して、複数回繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うマルチユーザ干渉除去ステップと、前記マルチユーザ干渉除去処理後の受信信号のビットLLRに対して誤り訂正復号を行う復号ステップと、前記複数回のマルチユーザ干渉除去処理後に前記誤り訂正復号された復号データに誤りが検出された場合に、当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを記憶手段に格納するビットLLR記憶ステップと、含み、前記マルチユーザ干渉除去ステップにおいては、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、前記記憶手段に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から当該干渉レプリカ信号を除去する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、初回のマルチユーザ干渉除去処理であっても、再送パケットによる干渉信号を一部でも除去することができるので、受信SINRを改善することができる。これにより、再送時のパケット受信成功確率を向上させることで伝送品質を維持し、高いスループットを実現できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る無線端末装置1の概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る基地局装置2の概略構成図である。
図3】本発明の実施例2に係る基地局装置2の概略構成図である。
図4】本発明の実施例3に係る基地局装置2の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
上り回線(端末から基地局へ向う方向の回線)でIDMA伝送を行う移動通信システムにおいて、各ユーザ(ユーザ数はK)の無線端末装置はN本(Nは正の整数)の送信アンテナを有し、それら無線端末装置は同時に同一周波数チャネルを用いて基地局装置に無線信号を送信する。基地局装置は、N本(Nは正の整数)の受信アンテナを有し、N本の受信アンテナを用いてそれら無線端末装置から送信された無線信号を受信する。なお、基地局装置において各ユーザからの受信タイミング偏差は無いと想定する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る第kユーザ(0≦k≦K−1)の無線端末装置1の概略構成図である。図1には、無線端末装置1が有する機能のうち、IDMA送信機の機能を示している。
【0020】
図1において、無線端末装置1は、送信信号生成部101により送信信号系列を生成する。送信信号系列は、直並列変換部102により、空間多重されるストリームに分割される。各ストリームは、さらにM個のIDMストリームに分割される。空間多重ストリーム数、およびIDMストリーム数は、多重数・符号化・インタリーバ・送信電力設定部108により制御される。各ストリームに分割された送信信号系列は、誤り訂正符号器(符号化部)103により低符号化率の誤り訂正符号を用いて符号化される。符号化されたビット系列は、ユーザ毎、且つストリーム毎に異なるインタリーバ処理部104により並び替えられ、変調信号生成部105により変調信号にマッピングされ、送信電力増幅部106により送信電力が制御された上で送信アンテナ107から送信される。
【0021】
なお、送信時に用いるインタリーブパタンは、送信毎に切り替えて使用しても良い。これにより、前回送信時とのダイバーシチゲインを最大化することができる。
【0022】
また、図1の無線端末装置1では、時間領域のIDMA信号として無線送信される構成としているが、変調信号をサブキャリアにマッピングし、逆フーリエ変換(IFFT)により時間信号に変換され、ガード・インターバル(GI)が挿入された後に無線送信される、OFDM−IDMAの構成としても良い。
【0023】
また、図1の無線端末装置1では、空間多重ストリームが異なる送信アンテナから送信される構成としているが、各空間多重ストリームに異なるプリコーディング処理を施し、各空間多重ストリームを全送信アンテナから送信する構成であっても良い。
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係る基地局装置2の概略構成図である。図2には、基地局装置2が有する機能のうち、IDMA受信機の機能を示している。
【0025】
図2において、受信アンテナ201は、無線端末装置1から送信された信号を受信する。受信電力増幅部202は、N本の受信アンテナ201で受信された各受信信号の電力を増幅する。受信アンテナ201での受信信号には、複数のユーザ、または複数のレイヤの信号が多重されており、初送パケットまたは再送パケットが含まれる。
【0026】
以下では、図2に示す基地局装置2のIDMA受信機の機能における繰り返しマルチユーザ干渉除去処理の動作を説明する。一回の受信処理に対して、N回(Nは任意に設定可能なパラメータ)繰り返してマルチユーザ干渉除去処理を行うものとする。
【0027】
[チャネル推定部]
(初回のマルチユーザ干渉除去処理時)
チャネル推定部219は、初回のマルチユーザ干渉除去処理においては、データ復調用のチャネル推定処理(以下、単にチャネル推定と称する)の対象となる受信信号が初送パケットである場合には、受信電力増幅部202から入力された受信信号から、既知のパイロット信号を用いて、チャネル推定を行う。一方、チャネル推定の対象となる受信信号が再送パケットである場合には、チャネル推定部219は、受信電力増幅部202から入力された受信信号から、既知のパイロット信号と、ビット毎の対数尤度比(Log Likelihood Ratio:LLR)用のインタリーバ処理部(ビットLLR用インタリーバ処理部)214から入力されたビット毎のLLR(ビットLLR)とを用いて、チャネル推定を行う。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、チャネル推定の対象となる再送パケットに関して前回の受信時(初送時または再送時)に復号され、ビットLLR記憶部210に格納されたものである。既知のパイロット信号と、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRとの両方を用いてチャネル推定を行うことにより、チャネル推定精度の向上が期待できる。なお、チャネル推定の対象となる受信信号が再送パケットである場合に、既知のパイロット信号のみを用いてチャネル推定を行っても良い。
【0028】
(2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理時)
チャネル推定部219は、2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理においては、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRを用いて、初回のマルチユーザ干渉除去処理時のチャネル推定結果を更新する。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、チャネル推定の対象となる再送パケットに関して復号器(復号部)で復号されたものである。なお、2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理において、初回のマルチユーザ干渉除去処理時のチャネル推定結果を更新せず、そのまま初回のマルチユーザ干渉除去処理時のチャネル推定結果を用いても良い。
【0029】
[マルチユーザ干渉除去部]
マルチユーザ干渉除去部203は、複数の無線端末装置間で発生する電波干渉の結果である干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から干渉レプリカ信号を除去する。
【0030】
(初回のマルチユーザ干渉除去処理時)
マルチユーザ干渉除去部203は、初回のマルチユーザ干渉除去処理においては、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が再送パケットである場合には、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から干渉レプリカ信号を除去する。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる再送パケットに関して前回の受信時(初送時または再送時)に復号され、ビットLLR記憶部210に格納されたものである。これにより、複数の無線端末装置からの受信信号に再送パケットが含まれている場合には、初回のマルチユーザ干渉除去処理であっても、再送パケットによる干渉信号を一部でも除去することができるので、受信SINRを改善する効果が得られる。さらに、複数の無線端末装置からの受信信号に初送パケットと再送パケットが混在している場合には、初回のマルチユーザ干渉除去処理であっても、再送パケットによる干渉信号を一部でも除去することができるので、初送パケットに係る受信SINRも改善する効果が得られる。
【0031】
一方、初回のマルチユーザ干渉除去処理において、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる受信信号が初送パケットである場合には、まだ復号されていないので、干渉レプリカ信号を生成することができない。
【0032】
なお、ビットLLR記憶部210に格納されるビットLLRの情報を用いて、有意な干渉除去ができる干渉レプリカ信号を生成できるか否かを判定し、有意な干渉除去ができる干渉レプリカ信号を生成できる場合にのみ干渉レプリカ信号を生成するようにしても良い。これにより、演算量の削減を図ることができる。その判定の指標としては、ビットLLRの絶対値の平均値を用いることができる。また、推定したチャネルのノルムを用いて、有意な干渉除去ができる干渉レプリカ信号を生成できるか否かを判定しても良い。
【0033】
(2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理時)
マルチユーザ干渉除去部203は、2回目以降のマルチユーザ干渉除去処理においては、ビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRを用いて干渉レプリカ信号を生成し、受信信号から干渉レプリカ信号を除去する。このビットLLR用インタリーバ処理部214から入力されたビットLLRは、マルチユーザ干渉除去処理の対象となる再送パケットに関して復号器(復号部)で復号されたものである。
【0034】
[デインタリーバ処理部]
デインタリーバ処理部205は、マルチユーザ干渉除去部203により干渉レプリカ信号が除去された信号を、ユーザ毎のインタリーブパタンを用いてデインタリーブ処理を行う。ユーザ毎のインタリーブパタンは、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から設定される。
【0035】
[ビットLLR加算部]
ビットLLR加算部206は、復号対象のパケットが再送パケットである場合には、デインタリーバ処理部205から入力されたビットLLRと、ビットLLR記憶部210に格納されている当該再送パケットに対応するビットLLRとを加算する。ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRは、切替部212を介して、ビットLLR加算部206に入力される。切替部212は、復号対象のパケットが再送パケットである場合にのみ、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRをビットLLR加算部206に出力する。
【0036】
ビットLLR加算部206におけるビットLLR加算方法としては、以下の二通りの方法A−1,A−2が挙げられる。
(方法A−1)毎回のマルチユーザ干渉除去処理において、デインタリーバ処理部205から入力されたビットLLRと、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRとを加算する。
(方法A−2)初回のマルチユーザ干渉除去処理においてのみ、デインタリーバ処理部205から入力されたビットLLRと、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRとを加算する。
【0037】
[復号部]
復号部207は、ビットLLR加算部206から入力されたビットLLRと、復号対象ユーザが用いる符号化の情報とを用いて誤り訂正復号を行う。復号対象ユーザが用いる符号化の情報は、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から入力される。復号部207は、誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRを、ビットLLR用インタリーバ処理部214へ入力する。復号部207から出力されたビットLLRは、切替部212を介して、ビットLLR用インタリーバ処理部214へ入力される。切替部212は、ビットLLR用インタリーバ処理部214に対して、復号部207から出力されたビットLLRを入力するか、又は、ビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRを入力するかを切り替える。
【0038】
[ビットLLR用インタリーバ処理部]
ビットLLR用インタリーバ処理部214は、ユーザ毎のインタリーブパタンに従って、ビットLLRの順序を入れ替える。ユーザ毎のインタリーブパタンは、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から入力される。
【0039】
以上が、繰り返し(N回繰り返し)マルチユーザ干渉除去処理の動作の説明である。
【0040】
次に、マルチユーザ干渉除去処理の繰り返し回数が規定回数(N回)に達した後の動作を説明する。
【0041】
[並直列変換部]
並直列変換部209は、多重数に基づいて、復号部207で生成された受信ビット系列を並直列変換する。復号部207は、誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRから受信ビット系列を生成する。
【0042】
[誤り検出部]
誤り検出部215は、並直列変換部209から出力された復号データに対して誤り検出を行う。このとき、誤りが検出された場合には、復号部207により当該誤り訂正復号の結果として得られたビットLLRをビットLLR記憶部210に格納する。さらに、制御信号生成部216に対して再送要求信号の生成を要求する。これにより、再送要求信号が、制御信号生成部216により生成され、該当する無線端末装置1に送信される。
【0043】
一方、復号データの誤り検出において誤りが検出されなかった場合には、ビットLLR記憶部210に格納されている該当のビットLLRを削除する。
【0044】
なお、上述の実施例では、ビットLLR記憶部210にビットLLRを格納したが、ビットLLR記憶部210に格納する情報は実質的にビットLLRを示すビットLLR情報であればよい。ビットLLRに変換可能な情報として、例えば、受信信号の期待値(tanh(LLR/2)))をビットLLR記憶部210に格納してもよい。
【実施例2】
【0045】
図3は、本発明の実施例2に係る基地局装置2の概略構成図である。図3には、基地局装置2が有する機能のうち、IDMA受信機の部分的な機能を示している。図3において図2の各部に対応する部分には同一の符号を付している。
【0046】
本実施例2では、復号部207で受信データビットに対するビットLLRを算出した後で、ビットLLR加算部206によりビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRと加算している。ビットLLR加算部206から出力されたビットLLRは、符号化部220に入力される。符号化部220は、符号化情報に基づいて符号化を行う。符号化情報は、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から入力される。符号化されたビットLLRは、ビットLLR用インタリーバ処理部214に入力される。また、復号データに誤りが検出された場合には、ビットLLR加算部206の出力であるビットLLRをビットLLR記憶部210に格納する。
【0047】
本実施例2では、受信データビットに対するビットLLRをビットLLR記憶部210に格納する。このため、例えば、パケットの初送時と再送時で使用する符号の種類又は符号化率が異なる場合においても適用できる。また、本実施例2においては、ビットLLR記憶部210に格納されるビット数は、データビット数に一致するので、特に符号化率の低い符号を使用する場合には、ビットLLR記憶部210のメモリ使用量の削減、および干渉レプリカ信号の生成にかかる演算量の削減が期待できる。
【実施例3】
【0048】
図4は、本発明の実施例3に係る基地局装置2の概略構成図である。図4には、基地局装置2が有する機能のうち、IDMA受信機の部分的な機能を示している。図4において図2の各部に対応する部分には同一の符号を付している。
【0049】
本実施例3では、誤り訂正符号として直列連接符号を用いる。又、本実施例3では、直列連接符号において、外符号として畳込み符号、内符号として繰り返し符号を用いている。このような誤り訂正符号の構成は、例えば、IDMAなどにおいて、符号化率の低い誤り訂正符号を生成する目的で使用される。
【0050】
図4において、内符号復号部207aで受信データビットに対するビットLLRを算出した後で、ビットLLR加算部206によりビットLLR記憶部210に格納されているビットLLRと加算し、この後、外符号復号部207bで受信ビット系列を生成する。また、ビットLLR加算部206から出力されるビットLLRは、内符号化部220aに入力される。内符号化部220aは、符号化情報に基づいて符号化を行う。符号化情報は、多重数・符号化・インタリーバ設定部208から入力される。符号化されたビットLLRは、ビットLLR用インタリーバ処理部214に入力される。また、復号データに誤りが検出された場合には、ビットLLR加算部206の出力であるビットLLRをビットLLR記憶部210に格納する。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…無線端末装置、2…基地局装置、201…受信アンテナ、202…受信電力増幅部、203…マルチユーザ干渉除去部、204…ユーザ復号部、205…デインタリーバ処理部、206…ビットLLR加算部、207…復号部、207a…内符号復号部、207b…外符号復号部、208…多重数・符号化・インタリーバ設定部、209…並直列変換部、210…ビットLLR記憶部、211…ユーザ切替部、212…切替部、213…ユーザビットLLR用インタリーバ処理部、214…ビットLLR用インタリーバ処理部、215…誤り検出部、216…制御信号生成部、217…送信電力増幅部、218…送信アンテナ、219…チャネル推定部、220…符号化部、220a…内符号符号化部
図1
図2
図3
図4