(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995231
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】ナースコール子機
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20160908BHJP
H04M 9/00 20060101ALI20160908BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
A61G12/00 E
H04M9/00 Z
H04M1/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-17459(P2012-17459)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-153992(P2013-153992A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(72)【発明者】
【氏名】矢部 剛生
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−110347(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3028851(JP,U)
【文献】
特開平05−251131(JP,A)
【文献】
特開2001−353190(JP,A)
【文献】
実開昭52−103013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
H04M 1/02
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上の患者が医療従事者を呼び出す際に使用する筐体と、壁面に設けたウォールユニットとをコードによって接続して構成されるナースコール子機であって、
前記筐体は、この筐体内に前記コードを出し入れ自在に収納する第一のコード収納部を備え、前記ウォールユニットは、前記壁面内に前記コードを出し入れ自在に収納する第二のコード収納部とを備え、前記コードは、前記筐体から最も引き出された状態で、前記ベッドの前記患者が寝る平面上の対角線の長さと略同じ長さとなる位置に、前記コードを前記ベッドの柵に結んで固定するために設けられ、前記コードの色味と異ならせたり、前記コードの手触りと異ならせたりしたベッド固定部を形成したことを特徴とするナースコール子機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者が呼び出しの操作を行うことによって、医療従事者を呼び出すことができるナースコールシステムに用いられるナースコール子機に関し、特に、壁面に設けたウォールユニットと患者の手元に置かれる呼び出し操作用の筐体とをコードにて接続したナースコール子機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、病院などでは、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院内の患者が医師または看護師のサポートを必要とする際に、患者が呼び出しの操作を行うことによって医者や看護師(以下、これらをまとめて医療従事者と記載する)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
多くのナースコールシステムは、病室内のベッド近傍に設置されるナースコール子機と、医療従事者が常駐するナースステーションに設置されるナースコール親機と、病室の出入口付近の廊下側に設置される廊下灯と、通話やデータの送受信に関する制御を行う制御機とを備えて構成されている。また、上述した構成に加えて、医療従事者が携帯するPHS(Personal Handy phone System)端末などの携帯端末とPBX(Private Branch Exchange:電話交換機)とを備えたナースコールシステムも提供されている。
【0004】
ところで、ナースコール子機とナースコール親機とが建物の壁内に埋め込まれたケーブルによって有線にて接続されている場合には、ナースコール子機は、壁面に設けたウォールユニットと患者の手元に置かれ、呼び出しを行うための呼出操作部を備えた筐体とをコードで接続して構成されることが多い。そのため、コードが長過ぎるとコードが床に接触し、そのコードに患者が触れると衛生面などの問題を生じてしまうという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、ナースコール子機の筐体内にコードの一部を巻き取って収納する技術が知られている(例えば、特許文献1など)。また、特許文献1に記載の技術を応用すると、壁面に設けたウォールユニットにコードの一部を巻き取って収納する技術も考えられる。
【0006】
ところで、ナースコール子機の筐体を患者の手元に置く場合に、筐体がベッド下に落ちてしまった場合に、コードが長過ぎると、筐体とウォールユニットとがコードで接続されているだけなので、筐体がベッドから遠く離れた場所に落ちて、患者や医療従事者が筐体を拾うことが困難になってしまうことがあった。そのため、コードを所定の位置でベッド柵などに巻き付けたり、コードの所定の位置をベッド柵などに設けた溝やベッド柵などに取り付けたハンガーに設けた溝に嵌め込んだりして、コードをベッドに固定することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−110347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、ナースコール子機の筐体がコードを巻き取って収納する場合には、コードを所定の位置でベッドに固定して、患者の手元の位置が変わっても、コードの巻き取り具合を調節してコードの長さを調整することは可能である。しかしながら、ベッドを移動する場合には、ウォールユニットがコードを巻き取り収納できないため、ウォールユニットからベッドのコードを固定した位置までのコードの長さを調節することができなくなり、コードが長過ぎるとコードが床に接触してしまうという問題があった。また、コードが短過ぎるとコードが引っ張られて、コードが断線したりコードがウォールユニットから脱落したりしてしまうという問題があった。そのため、ベッドを移動する際には、医療従事者はコードのベッドへの固定を解除してから作業を行う必要があった。
【0009】
一方、ナースコール子機のウォールユニットがコードを巻き取って収納する場合には、コードを所定の位置でベッドに固定して、ベッドが移動しても、コードの巻き取り具合を調節してコードの長さを調整することは可能である。しかしながら、患者の手元の位置が変わった場合には、筐体がコードを巻き取り収納できないため、患者の手元からベッドのコードを固定した位置までのコードの長さを調節することができなくなり、コードが長過ぎるとコードが床に接触してしまうという問題があった。また、コードが短過ぎると患者の手元に筐体を置くことができなくなってしまうという問題があった。そのため、患者の手元の位置が変わる際には、医療従事者はコードのベッドへの固定をやり直す必要があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、コードを所定の位置でベッドに固定した状態でも、コードが床に接触したり断線/脱落したりせずに、ベッドを移動させたり筐体を移動させたりすることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明では、ベッド上の患者が医療従事者を呼び出す際に使用する筐体と壁面に設けたウォールユニットとをコードによって接続し、筐体内にコードを出し入れ自在に収納する第一のコード収納部を設け、ウォールユニットにもコードを出し入れ自在に収納する第二のコード収納部を設けて、コードは、筐体から最も引き出された状態で、ベッドの患者が寝る平面上の対角線の長さと略同じ長さとなる位置に、コードをベッドの柵に結んで固定するために設けられ、コードの
色味と異ならせたり、前記コードの手触りと異ならせたりしたベッド固定部を形成するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、筐体とウォールユニットとを接続するコードはベッド固定部にてベッドに固定され、コードが筐体およびウォールユニットのどちらに対しても出し入れ自在に収納されるので、ベッド固定部から筐体までのコードの長さ、および、ベッド固定部からウォールユニットまでのコードの長さの両方を調整することができるようになる。従って、ベッド固定部にてコードをベッドに固定した状態でも、コードが床に接触したり断線/脱落したりせずに、ベッドを移動させたり筐体を移動させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態によるナースコール子機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるナースコール子機の構成例を示す図である。ナースコール子機は、各病室のベッド近傍に設置されており、患者によって使用される。ここで、
図1に示すように、ナースコール子機は、筐体1、ウォールユニット2、コード3を備えて構成されている。また、筐体1は、呼出操作部4、第一のコード収納部5、第一の巻き取り操作部6、第一のロックボタン7を備えて構成されている。また、ウォールユニット2は、コード用開口部9、第二のコード収納部10、第二の巻き取り操作部11、第二のロックボタン12を備えて構成されている。また、コード3はベッド固定部8を備えている。
【0015】
筐体1は、略直方体の形状であり、内部に基板(図示せず)などを内蔵している。また、筐体1の
図1中正面の最も面積の広い長方形の面には、呼出操作部4が形成されている。患者がこの呼出操作部4を操作すると、ナースコール子機は内部の基板の電気回路(図示せず)にて呼出信号を生成し、コード3およびウォールユニット2を介して、ナースコール親機(図示せず)へ出力する。ナースコール親機は、ナースコール子機から呼出信号を入力すると報知を行う。ここで、呼出信号には各ナースコール子機を識別するための識別情報が含まれている。これにより、患者は医療従事者を呼び出すことができる。
【0016】
また、筐体1は、最も面積の広い二つの長方形に挟まれている長手側の二つの側面およびその他の二つの側面を有し、その他の側面の一方に開口を形成している。この開口は、第一のコード収納部5に繋がっており、コード3の先端部分は、筐体1内の基板と電気的に接続されている。また、コード3は、上述した開口から筐体1の外部へ出し入れ自在となる。また、第一のコード収納部5は筐体1に内蔵されている。
【0017】
ここで、第一の巻き取り操作部6に設けた第一の凹部6aに指を掛けて、第一の巻き取り操作部6を反時計回りに回すことで、コード3は第一のコード収納部5へ収納される。一方、コード3を引っ張ることで、コード3は第一のコード収納部5から引き出される。また、コード3が引っ張られることで、コード3が第一のコード収納部5から容易に引き出されてしまうため、筐体1に対するコード3の出し入れの状態をロックする第一のロックボタン7が筐体1の長手側の側面の一方に設けられている。第一のロックボタン7を一度押下するとコード3がロックされ、第一のロックボタン7を再度押下するとコード3のロックが解除される。
【0018】
コード3は、ウォールユニット2に対してベッドを移動する範囲を考慮した十分な長さを有している。すなわち、コード3の長さは、病室内でウォールユニット2からベッドを最も離れた位置に移動させた場合でも、コード3が伸びきらないような長さである。
【0019】
ベッド固定部8は、コード3をベッド柵に固定するためのものである。また、ベッド固定部8は、コード3に設けられており、筐体1からコード3を最も引き出した場合に、筐体1からベッドの長さと略同じ長さとなる位置に設けられている。ここで、ベッドの長さとは、ベッド上の丈の長さであっても良いし、ベッド上の幅の長さであっても良いし、ベッド上の対角線の長さであっても良い。すなわち、ベッドの長さは、筐体1の位置が変わる範囲に応じて決まる。
【0020】
医療従事者は、ベッド固定部8をベッド柵に結びつけたり、ベッド柵に設けられた溝やベッド柵に取り付けられたハンガーに設けられた溝にベッド固定部8を嵌め込んだりして、コード3をベッド柵に固定する。このハンガーは、ナースコール子機の筐体を把持したり、小物などを入れた袋を把持したりするためのものである。
【0021】
また、ベッド固定部8をコード3と明確に区別することができるように、ベッド固定部8の色味をコード3の色味と異ならせたり、ベッド固定部8の手触りをコード3の手触りと異ならせたりすることが好ましい。なお、本実施形態では、ベッド固定部8をベッド柵に取り付けるようにしているが、これに限定されない。例えば、ベッド固定部8をベッド柵以外の部分に取り付けるようにしても良い。
【0022】
ウォールユニット2は、壁面に取り付けられており、内部に基板などを収容している。また、ウォールユニット2には、突出したコード用開口部9が形成されており、コード用開口部9の
図1中下方には、開口が形成されている。この開口は、第二のコード収納部10に繋がっており、コード3の他端部分は、ウォールユニット2内の基板と電気的に接続されている。また、コード3は、上述した開口からウォールユニット2の外部へ出し入れ自在となる。また、第二のコード収納部10はウォールユニット2に内蔵されている。
【0023】
ここで、第二の巻き取り操作部11に設けた第二の凹部11aに指を掛けて、第二の巻き取り操作部11を時計回りに回すことで、コード3は第二のコード収納部10へ収納される。一方、コード3を引っ張ることで、コード3は第二のコード収納部10から引き出される。また、コード3が引っ張られることで、コード3が第二のコード収納部10から容易に引き出されてしまうため、ウォールユニット2に対するコード3の出し入れの状態をロックする第二のロックボタン12がウォールユニット2に設けられている。第二のロックボタン12を一度押下するとコード3がロックされ、第二のロックボタン12を再度押下するとコード3のロックが解除される。
【0024】
このように構成されたナースコール子機1をベッド上に設置する場合、まず、筐体1に設けた第一のロックボタン7およびウォールユニット2に設けた第二のロックボタン12によるコード3のロックを解除した状態で、ベッド固定部8をベッド柵に固定する。このとき、ウォールユニット2からベッド柵までの距離に対して、ウォールユニット2から引き出されているコード3の長さが不足している場合には、コード3を引っ張ってウォールユニット2から引き出す必要がある。一方、ウォールユニット2からベッド柵までの距離に対して、ウォールユニット2から引き出されているコード3の長さが長過ぎる場合には、第二の巻き取り操作部11を時計回りに回して、コード3を第二のコード収納部10へ収納させる。
【0025】
また、ベッド上に筐体1を置く場合に、コード3の長さが不足している場合には、コード3を引っ張って筐体1から引き出す必要がある。一方、筐体1から引き出されているコード3の長さが長過ぎる場合には、第一の巻き取り操作部6を反時計回りに回して、コード3を第一のコード収納部5へ収納させる。
【0026】
そして、筐体1およびウォールユニット2から引き出されているコード3の長さがちょうど良くなった場合には、筐体1に設けられた第一のロックボタン7を押下するとともに、ウォールユニット2に設けられた第二のロックボタン12を押下することで、コード3が容易に出し入れされることを防止する。
【0027】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、ベッド上の患者が医療従事者を呼び出す際に使用する筐体1と壁面に設けたウォールユニット2とをコード3によって接続し、筐体1内にコード3を出し入れ自在に収納する第一のコード収納部5を設け、ウォールユニット2にもコード3を出し入れ自在に収納する第二のコード収納部10を設け、コード3は、筐体1から最も引き出された状態で、筐体1からベッドの長さと略同じ長さとなる位置に、コード3をベッドに固定するためのベッド固定部8を形成するようにしている。
【0028】
これにより、筐体1とウォールユニット2とを接続するコード3がベッド固定部8にてベッドに固定され、コード3が筐体1およびウォールユニット2のどちらに対しても出し入れ自在に収納されるので、ベッド固定部8から筐体1までのコードの長さ、および、ベッド固定部8からウォールユニット2までのコード3の長さの両方を調整することができるようになる。従って、ベッド固定部8にてコード3をベッドに固定した状態でも、コード3が床に接触したり断線/脱落したりせずに、ベッドを移動させたり筐体1を移動させたりすることができる。
【0029】
なお、前述した実施形態では、第一の巻き取り操作部6を呼出操作部4と同一の面に設け、反時計回りに第一の巻き取り操作部6を回すことでコード3を巻き取るようにしているが、これに限定されない。例えば、第一の巻き取り操作部6を呼出操作部4と反対側の面に設けるようにしても良いし、時計回りに第一の巻き取り操作部6を回すことでコード3を巻き取るようにしても良い。
【0030】
同様に、第二の巻き取り操作部11をコード用開口部9の右側に設け、時計回りに第二の巻き取り操作部11を回すことでコード3を巻き取るようにしているが、これに限定されない。例えば、第二の巻き取り操作部11をコード用開口部9の左側に設け、反時計回りに第二の巻き取り操作部11を回すことでコード3を巻き取るようにしても良い。
【0031】
また、前述した実施形態では、第一の巻き取り操作部6を筐体1に設け、第二の巻き取り操作部11をウォールユニット2に設けるようにしているが、これに限定されない。例えば、その他の周知のコード収納機構を用いるようにしても良い。具体的には、筐体1やウォールユニット2に設けたコード巻き取りボタンを操作することで、コード3を一挙に第一のコード収納部5や第二のコード収納部10へ収納させる周知の方法を用いるようにしても良い。すなわち、第一の巻き取り操作部6や第二の巻き取り操作部11は必須の構成要素ではない。
【0032】
また、前述した実施形態では、第一のロックボタン7を筐体1に設け、第二のロックボタン12をウォールユニット2に設けるようにしているが、これに限定されない。例えば、第一のロックボタン7や第二のロックボタン12を設けないようにしても良い。
【0033】
また、前述した実施形態では、ナースコール子機は、呼び出しを行うためだけに用いられているが、これに限定されない。例えば、ナースコール子機にマイクおよびスピーカーを設けるようにしても良い。これにより、患者がナースコール子機により呼び出しを行った後に、患者は、ナースコール子機に設けたマイクおよびスピーカーを用いて、医療従事者と会話することができるようになる。
【0034】
また、前述した実施形態では、コード3を筐体1から最も引き出した状態で、筐体1からベッド固定部8までの長さがベッドの長さと略同一となるようにベッド固定部8を設けているが、これに限定されない。例えば、その長さをベッドの長さよりもベッドの高さ分だけ長くするようにしても良い。
【0035】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 筐体
2 ウォールユニット
3 コード
4 呼出操作部
5 第一のコード収納部
6 第一の巻き取り操作部
7 第一のロックボタン
8 ベッド固定部
9 コード用開口部
10 第二のコード収納部
11 第二の巻き取り操作部
12 第二のロックボタン