(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合補強材の製造方法であって、補強用スレッド又は各補強用スレッドが個別的に、又はいくつか補強用スレッドが集団的に、ガラス転移温度がプラスである少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、ガラス転移温度がマイナスである不飽和熱可塑性スチレンエラストマー、及びポリ(p-フェニレンエーテル)を含む熱可塑性ポリマー組成物の層で被覆されることを特徴とする、前記方法。
【背景技術】
【0002】
金属補強材を熱可塑性材料、例えばポリアミド又はポリエステルでシーズ処理することは、特にこの補強材を酸化又は摩耗のようないろいろなタイプの外部攻撃から保護するため、或いはスレッド又はコードのようなスレッドアセンブリのいろいろなグループを一緒に結合させるので、そのバックリング抵抗を特に増加させることにより構造的に剛性化するため、非常に長い間知られている。
そのような複合補強材は、空気入りタイヤのようなゴム製品におけるその使用と共に、多くの特許文献に記載されてきた。
特許出願の欧州特許第0 962 562号明細書には、例えば、摩耗抵抗を改善するために、ポリエステル又はポリアミドのような熱可塑性材料によってシーズされた鋼又はアラミド織物でできている補強材が記載されている。
特許出願の仏国特許発明第2 601 293号明細書には、空気入りタイヤビードにおけるビードワイヤとして用いるようにポリアミドでメタルコードをシーズ処理し、このシーズ処理が有利にはこのビードワイヤの形状を構造及び補強する空気入りタイヤのビードの動作状態に適応することを可能にしていることが記載されている。
特許文献の仏国特許発明第2 576 247号明細書及び米国特許第4 754 794号明細書には、また、空気入りタイヤビードにおけるビードワイヤとして使用し得るメタルコード又はスレッドであって、これらのスレッド又はコードが、空気入りタイヤビードにおけるビードワイヤとしてこれらを用いるために、一方では、これらのスレッド又はコード間の距離を制御し、もう一方では、摩擦又は腐食による摩耗のリスクを排除する目的で、異なる溶融温度を有する2つ又はそれぞれ3つの異なる熱可塑性材料(例えばポリアミド)によって二重にシーズされるか又は三重にさえもシーズされている、前記メタルコード又はスレッドが記載されている。
【0003】
ポリエステル又はポリアミド材料でこのようにしてシーズされたこれらの補強材は、耐腐食性、摩耗抵抗及び構造剛性の上述した利点とは別に、接着剤が織物繊維、例えばポリエステル又はポリアミドの繊維とジエンゴムの間に良好な接着を与えることが知られている、少なくとも1つのジエンエラストマー、例えば天然ゴムを含むRFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)接着剤と呼ばれる簡単な織物接着剤を用いてジエンゴムマトリックスに引き続き結合することができるという重要な利点を有する。
従って、接着剤金属層、例えば黄銅で被覆されていない金属補強材、更に、知られているように時間が経つにつれて接着性を維持するのに必要であるが、一方では、ゴムマトリックス自体のコスト、もう一方では、その酸化及び老化の感受性を著しく増加させる、金属塩、例えばコバルト塩を含有しない包囲しているゴムマトリックスを用いることが有利であり得る(例えば特許出願の国際公開第2005/113666号パンフレットを参照のこと)。
しかしながら、上記のRFL接着剤は、欠点がある: 特に、主物質としてホルムアルデヒド(又はメタナール)、更にこのタイプの製品に関して欧州規制の変更が最近あったために接着剤組成物から長期にわたって排除することが望ましいレゾルシノールを含有する。
従って、ジエンゴム製品の設計者、特に空気入りタイヤ製造業者は、現在、前述の欠点の全部又は一部を改善することを可能にする新規な接着剤系又は新規な補強材を探究している。
最近公開された特許出願の国際公開第2010/105975号パンフレット及び同第2010/136389号パンフレットには、上記の目的を満たす自己接着性タイプの、特に金属コアを有する、複合補強材が開示されている。しかしながら、従来のRFL接着剤で達成されたものと容易に競合するゴムに対する接着レベルを有するこれらの補強材は、その製造プロセスが2つの連続したシーズ処理又は被覆工程を行う欠点を有し、最初にポリアミドのような熱可塑性ポリマーの第1の層の付着、次に不飽和熱可塑性エラストマーの第2の層の付着が必要とされ、異なる温度で行われる2つの付着もまた、水で冷却し(第1の層の固化のために)、次に乾燥する中間工程によって分けられている。
これらの連続した処理は、工業観点から幾分有害であり且つ高生産速度を探究することに矛盾している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本説明において、特に明確に断らない限り、示されるパーセント(%)は全て質量パーセントである。
更にまた、語句「aとbの間」が示す値の任意の間隔はaよりも大きい値からbよりも小さい値までの範囲を表す(即ち、aとbの限度を除く)が、語句「aからbまで」はa値からb値までの範囲を意味する(即ち、厳密な限度aとbを含む)。
それ故、キュアリング(硬化)によって不飽和ゴム組成物に直接付着することができ且つ特にジエンゴム製品、例えば空気入りタイヤを補強するために使用し得る本発明の複合補強材は、以下を含む本質的特徴を有する:
- 少なくとも1つの補強用スレッド(即ち1つ以上の補強用スレッド);
- 前記スレッド又は各スレッドを個別的に又はいくつかのスレッドを集団的に被覆する、ガラス転移温度がプラスである(即ち0℃よりも高い)(以後Tg
1で示される)熱可塑性ポリマー、ガラス転移温度がマイナスである(即ち0℃よりも低い)不飽和熱可塑性スチレンエラストマー(以後Tg
2で示される)、及びポリ(p-フェニレンエーテル)を含む熱可塑性ポリマー組成物の層。
言い換えれば、本発明の複合補強材は、単一の補強用スレッド又はいくつかの補強用すレッドを含み、前記スレッド又は各スレッドが個別的に又はいくつかのスレッドが集団的に上述の熱可塑性ポリマー組成物の層(単層)又はシーズ(鞘)によって被覆されている。本発明の補強材の構造を以下に詳述する。
【0008】
本出願において、用語「補強用スレッド」は、一般に、この断面の形状が、例えば円形、長円形、矩形、正方形、又は平坦でさえあっても、その断面に対してかなりの長さの任意の延びた要素を意味すると理解され、このスレッドがまっすぐなこと又はまっすぐでない、例えば撚り合わせたか又は波形であることが可能である。
この補強用スレッドは、既知の任意の形をとることができる。例えば、直径の大きい(例えば、好ましくは50μm以上)の個別のモノフィラメント、個別のリボン、マルチフィラメント繊維(直径の小さい、典型的には30μm未満の複数の個別のフィラメントからなる)、一緒に撚り合わせたいくつかの繊維から形成された織物合撚糸、ケーブル被覆された又は一緒に撚り合わせたいくつかの繊維又はモノフィラメントから形成された織物又は金属コード、或いはアセンブリ、グループ又は列のスレッド、例えば、まっすぐでもまっすぐでなくても、例えば主方向に沿って整列した、これらのモノフィラメント、繊維、合撚糸又は一緒にグループ化されたコードのいくつかを含むバンド又はストリップであり得る。
その又は各々の補強用スレッドは、好ましくは5mmより小さい、特に0.1から2mmまでの範囲にある直径を有する。
好ましくは、補強用スレッドは、金属補強用スレッド、特にタイヤ用のスチールコードに用いられるような炭素鋼ワイヤである。しかしながら、補強用スレッドは、勿論、他のタイプの鋼、例えばステンレス鋼を用いることも可能である。炭素鋼が用いられるときの炭素分は、好ましくは0.4%と1.2%の間、特に0.5%と1.1%の間にある。本発明は、特に、標準強度又はNT(「正常な張力」)強度、高強度又はHT(「高張力」)強度、超高強度又はSHT(「超高張力」)強度又は超高強度又はUHT(「極超高張力」)強度を有するスチールコードタイプの任意の鋼にあてはまる。
【0009】
鋼は、接着剤層、例えば黄銅又は亜鉛の層で被覆され得る。しかしながら、有利には、ブライト鋼、即ち、被覆されていない鋼が用いられてもよい。更に、本発明によって、本発明の金属補強材が補強することを意図したゴム組成物には、コバルト塩のような金属塩のその配合物において使用がもはや必要とされない。
上記の層又はシーズを構成する熱可塑性ポリマー組成物は、第1に、定義上、プラスのTgを有する(Tg
1で示される)、好ましくは+20℃よりも高い、より好ましくは+30℃よりも高い熱可塑性ポリマーを含む。更に、この熱可塑性ポリマーの溶融温度(Tmで示される)は、好ましくは100℃よりも高い、より好ましくは150℃よりも高く、特に200℃よりも高い。
この熱可塑性ポリマーは、好ましくはポリアミド、ポリエステル及びポリイミド、より詳しくは脂肪族ポリアミド及びポリエステルからなる群より選ばれる。ポリエステルの中で、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)及びPPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。脂肪族ポリアミドの中で、特にポリアミドPA-4,6、PA-6、PA-6,6、PA-11又はPA-12を挙げることができる。この熱可塑性ポリマーは、好ましくは脂肪族ポリアミド、より好ましくはポリアミド6又はポリアミド11である。
熱可塑性ポリマー組成物の第2の本質的成分は、定義上、マイナスのTgを有する(Tg
2又は第1のTg又は最も低いTg)、好ましくは−20℃よりも低い、より好ましくは−30℃よりも低い不飽和熱可塑性スチレンエラストマーである。
従って、本発明の好ましい実施態様によれば、熱可塑性ポリマーと不飽和TPSエラストマーとのガラス転移温度の差(Tg
1 − Tg
2)は、40℃よりも高く、より好ましくは60℃よりも高い。
【0010】
ここで、TPS(熱可塑性スチレン)エラストマーがスチレン系ブロックコポリマーの形態の熱可塑性エラストマーであることが思い出される。熱可塑性ポリマーとエラストマーの中間構造を有するこれらの熱可塑性エラストマーは、知られているように、エラストマーソフト配列、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリ(エチレン/ブチレン)配列が結合したポリスチレンハード配列から調製される。
このことは、知られているように、TPSコポリマーが、一般的に、2つのガラス転移ピーク、TPSコポリマーのエラストマー配列に関する第1の(最も低い、マイナスの温度、Tg
2に対応する)ピークとTPSコポリマーの熱可塑性部分(スチレンブロック)に関する第2の(最も高い、プラスの温度、典型的には約80℃以上)ピークの存在に特徴を有する理由である。
これらのTPSエラストマーは、しばしば、ソフトセグメントが結合した2つのハードセグメントを有するトリブロックエラストマーである。ハードセグメントとソフトセグメントは、線状型で、又は星型又は枝分れ構成で配置され得る。これらのTPSエラストマーは、また、ソフトセグメントに結合した単一のハードセグメントを有するジブロックエラストマーであり得る。典型的には、これらのセグメント又はブロックの各々は、5よりも大きい、一般的には10よりも大きい基本単位(例えばスチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーの場合にはスチレン単位とイソプレン単位)の最小限を含有する。勿論、その点では、よく知られているように、熱可塑性特性を有しない統計的ジエンコポリマーエラストマー、例えば、SIRゴム(スチレン-イソプレンコポリマー)又はSBRゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)と混同してはならない。
【0011】
確認として、本発明の複合補強材に用いられるTPSエラストマーの本質的特徴は、それが不飽和であるという事実である。語句「不飽和TPSエラストマー」は、定義上、よく知られているように、エチレン系不飽和基を含有するTPSエラストマーを意味すると理解される。即ち、不飽和TPSエラストマーは炭素-炭素二重結合(共役されていてもいなくても)を含有する。逆にいえば、飽和TPSエラストマーは、勿論、そのような二重結合を含有しないTPSエラストマーである。
好ましくは、不飽和エラストマーは、基本単位として、スチレン(即ちポリスチレン)ブロック及びジエン(即ちポリジエン)ブロック、特にイソプレン(ポリイソプレン)又はブタジエン(ポリブタジエン)ブロックを含むコポリマーである。そのようなエラストマーは、特に、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)のブロックコポリマー及びこれらのコポリマーのブレンドからなる群より選ばれる。
より好ましくは、この不飽和エラストマーは、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)のブロックコポリマー及びこれらのコポリマーのブレンドからなる群より選ばれるトリブロックタイプのコポリマーであり; より詳しくは、この不飽和エラストマーは、SBS又はSIS、特にSBSである。
【0012】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、不飽和TPSエラストマー中のスチレン含量は、5%と50%の間にある。指示された範囲外では、意図した技術的影響のリスクがある。即ち、一方では、熱可塑性ポリマーの層について、もう一方では、補強材が更に意図するジエンエラストマーについて接着が妥協し、もはや最適でない。これらの理由により、スチレン含量は、より好ましくは10%と40%の間にある。
TPSエラストマーの数平均分子量(Mnで示される)は、好ましくは5000と500 000 g/モルの間、より好ましくは7000と450 000の間にある。
不飽和TPSエラストマー、例えばSB、SBS、SBBS、SIS又はSBISは、よく知られており、例えば名称「Kraton D」(例えばSB、SIS及びSBSエラストマーの例として製品D1116、D1118、D1155、D1161、D1163)でKratonから、名称「Calprene」(例えばSBSエラストマーの例として製品C405、C411、C412)でDynasolから或いは名称「Tuftec」(例えばSBBSエラストマーの例として製品P1500)でAsahiから市販されている。
熱可塑性ポリマー組成物は、上記の熱可塑性ポリマーと不飽和TPSエラストマーと組み合わせて、少なくとも1つのポリ(p-フェニレンエーテル)(又はポリ(1,4-フェニレンエーテル))ポリマー(略号「PPE」で示される)を含む他の本質的特徴を有する。
PPE熱可塑性ポリマーは当業者によく知られており、周囲温度(20℃)において固体である樹脂である。ここで用いられるPPEは、好ましくは150℃よりも高い、より好ましくは180℃よりも高いガラス転移温度(以後Tg
3で示される)を有する。その数平均分子量(Mn)に関しては、好ましくは5000と100 000 g/モルの間にある。
【0013】
本発明の複合補強材に使用し得るPPEポリマーの限定されない例として、特に、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-コ-2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ-(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ-(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジラウリル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメトキシ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(1,6-ジエトキシ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メトキシ-6-エトキシ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-ステアリルオキシ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エトキシ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(3-ブロモ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、これらのそれぞれのコポリマー及びこれらのホモポリマー又はコポリマーのブレンドからなる群より選ばれるものを挙げることができる。
具体的な及び好ましい一実施態様によれば、用いられるPPEは、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテルであり、しばしば、ポリフェニレンオキシド(又は略してPPO)として知られる。そのような市販のPPE又はPPOポリマーは、例えば、Asahi Kasei社から「Xyron S202」と呼ばれているPPE又はSabic社から「Noryl SA120」と呼ばれているPPEである。
【0014】
好ましくは、本発明の複合補強材の熱可塑性ポリマー組成物において、PPEポリマーの量はPPEの質量含量が、TPSエラストマー自体に存在するスチレンの質量含量の0.05倍と5倍の間、より好ましくは0.1倍と2倍の間にあるような方法で調整される。推奨された最小限よりも少ないと、ゴムに対する複合補強材の接着が減少することになり、指示された最大限よりも多いと、層を脆化するリスクがある。
これらのすべての理由により、PPEの質量含量は、TPSエラストマーのスチレンの質量含量のより好ましくは0.2倍と1.5倍の間にある。
上記の熱可塑性ポリマー(Tg
1、Tg
2及びTg
3)のTgは、DSC(示差走査熱量測定)によって、例えば、本出願において特に明確に断らない限り、1999年のASTM D3418規格に従って知られているようにして測定される。
数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって知られているようにして定量される。最初に試料を約1 g/lの濃度でテトラヒドロフランに溶解し、次にその溶液を0.45μmの多孔性を有するフィルタによってろ過した後に注入する。用いられる装置は、WATERS Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、システムの温度は35℃であり、分析時間は90分である。「Styragel」商品名(「HMW7」、「HMW6E」及び2つの「HT6E」)を有する一組の連続した4つのWatersカラムが用いられる。ポリマー試料の溶液の注入容積は、100μlである。検出器はWATERS 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するためのその関連ソフトウェアはWATERS MILLENIUMシステムである。計算された平均分子量は、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線に相対する。
【0015】
上記の3つの成分(熱可塑性ポリマー、不飽和TPSエラストマー及びPPE)がそれらだけで本発明の複合補強材に天然ゴムのような不飽和ゴムに対する接着の非常に高い特性を与えるのに充分であるが、必要により、着色剤、充填剤、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤又は他の安定剤のようなある種の慣用の添加剤、硫黄及び促進剤のような架橋系又は加硫系が以前に記載された熱可塑性ポリマー組成物に添加されてもよい。
本明細書に添付された
図1は、本発明の複合補強材の第1の例を非常に概略的に示す(一定の比率で描かれていない)断面図である。R-1によって示されるこの複合補強材は、例えばポリアミド又はポリエステルからできているプラスのTg(Tg
1)を有する熱可塑性ポリマー、PPOのようなPPE及びマイナスのTg(Tg
2)を有する不飽和TPSエラストマー、例えばSB、SBS、SBBS、SIS又はSBISを含む層(11)で被覆されている、例えば炭素鋼からできている、直径が比較的大きい(例えば0.10と0.50mmの間)ユニタリフィラメント又はモノフィラメントからなる補強用スレッド(10)からなり; この層の最小厚さは、この
図1においてE
mで示されている。
図2は、本発明の複合補強材の第2の例を概略的に示す断面図である。R-2によって示されるこの複合補強材は、実際には、例えば炭素鋼でできている一緒に撚り合わせた又はケーブル被覆された直径が比較的大きい(例えば0.10と0.50mmの間の)2つのユニタリフィラメント又はモノフィラメント(20a、20b)からなる補強用スレッド(20)からなる。補強用スレッド(20)は、最小厚さE
mで、例えばポリアミド又はポリエステルでできている、プラスのTg(Tg
1)を有する熱可塑性ポリマー、PPOのようなPPE及びマイナスのTg(Tg
2)を有する不飽和TPSエラストマー、例えばSB、SBS、SBBS、SIS又はSBISを含む層(21)で被覆されている。
【0016】
図3は、本発明の複合補強材の他の例を概略的に示す断面図である。R-3で示されるこの複合補強材は、各々が例えば炭素鋼でできている、一緒に撚り合せた又はケーブル被覆された直径が比較的大きい(例えば0.10と0.50mmの間の)2つのモノフィラメント(30a、30b)からなる3つの補強用スレッド(30)からなる。3つの例えば整列された補強用スレッド(30)によって形成されたアセンブリは、例えばポリアミド又はポリエステルでできている、プラスのTg(Tg
1)を有する熱可塑性ポリマー、PPOのようなPPE及びマイナスのTg(Tg
2)を有する不飽和TPSエラストマー、例えばSB、SBS、SBBS、SIS又はSBISを含む層(31)で被覆されている。
図4は、また、本発明の複合補強材の他の例を概略的に示す断面図である。この複合補強材R-4は、中央ワイヤ又はコアワイヤ(41a)と中央ワイヤの周りにらせん状に一緒に巻き付けられている直径が同じ6つのフィラメント(41b)によって、1+6構成のスチールコードからなる補強用スレッド(40)を含んでいる。この補強用スレッド又はコード(40)は、ポリアミド、PPOのようなPPE及びSBSエラストマーを含むポリマー組成物の層(42)で被覆されている。
本発明の複合補強材、例えば上述した
図1〜4に概略的に示されるものにおいて、1つ以上の補強用スレッドを包囲しているシーズの最小厚さE
mは、本発明の特定の製造状態によっては非常に広く変動し得る。最小厚さは、好ましくは1μmと2mmの間、より好ましくは10μmと1mmの間にある。
いくつかの補強用スレッド(特にいくつかのコード)が用いられる場合には、コーティング層又はシーズは、例えば上で解説した
図1、2及び4において図示されるように、補強用スレッドの各々に(特にコードの各々に)(確認として、これらの補強用スレッドは、一体的であってなくてもよい)個別に付着されてもよく、又は例えば
図3に図示されるように、適切に配置された、例えば主方向に沿って整列された、いくつかの補強用スレッドに(特にいくつかのコードに)集団的に付着されてもよい。
【0017】
本発明の複合補強材は、少なくとも以下の工程を含む特定の方法によって調製され、少なくとも1つの(即ち、1つ以上の)補強用スレッドが、プラスのTg(Tg
1)を有する熱可塑性ポリマー、マイナスのTg(Tg
2)を有する不飽和熱可塑性スチレンエラストマー及び好ましくは150℃よりも高いTg(Tg
3)を有するPPEを含む上記の熱可塑性ポリマー組成物の層でシーズ処理するために、好ましくは押出ヘッドを通過させることによって、シーズ処理操作に供される。
上記のシーズ処理工程は、連続して一列に並んで当業者に知られている方法で行われる。例えば、シーズ処理工程は、簡単には、補強用スレッドを適切な温度に加熱された押出ヘッドにおいて適切な直径のダイを通過させることからなる。
好しい実施態様によれば、1つ以上の補強用スレッドは、例えば誘導加熱か又はIR放射線によって予熱された後、押出ヘッドに移される。押出ヘッドを出る際に、このようにしてシーズされた1つ以上の補強用スレッドは、次に、ポリマー層が充分に冷却されて固化され、例えば空気又は他の冷ガスを用いるか、又はスレッドが水浴を通過した後に乾燥工程が続くことによる。
押出した直後又は引き続き冷却した後、このようにして得られる本発明の複合補強材は、必要により熱処理を受けてもよい。
一例として、約1mmの全直径を有するシーズされた補強用スレッドを得るために、約0.6mmの直径を有する補強用スレッド、例えば、簡単には、一緒に撚り合わせた0.3mmの直径の2つの個別のモノフィラメントからなるメタルコード(例えば、
図2に示されている)が、2つのダイを含み、第1のダイ(カウンタダイ又は上流ダイ)が約0.65mmに等しい直径を有し、第2のダイ(又は下流ダイ)が約0.95mmに等しい直径を有し、いずれのダイも約230℃に加熱された押出ヘッド内に配置されている押出/シーズ処理ライン上で、約0.4mmに等しい最大厚みを有する、ポリアミド、SBS又はSBエラストマー及びPPEの組成物の層で被覆される。従って、押出機において210℃の温度で融解するポリアミド、TPS及びPPEの混合物が典型的には数十g/分の押出しポンプ速度に対して典型的には数十メートル/分に等しいスレッド実験速度でシーズ処理ヘッドを通過させるときにコードを被覆する。ポリアミド、TPS及びPPEの混合は、押出ヘッド自体においてその場で行われ、その場合3つの成分が、例えば3つの異なる供給ホッパーを介して導入され; 他の考えられる例示的実施態様によれば、ポリアミド、TPS及びPPEが、前に製造された混合物の形態で、例えば顆粒の形態で用いられてもよく、その場合単一の供給ホッパーが充分である。このシーズ処理ダイを出るときに、コードは、冷却のために冷水で充填されたタンクに浸漬されてもよく、その後巻取りリールが乾燥のために炉に移される。
【0018】
上記のシーズ処理工程について、コード(補強用スレッド)が、有利には、例えば高周波発生器又は加熱トンネルを通過することによって予熱された後、押出ヘッドに移される。
このシーズ処理操作後、即ち、シーズ処理ヘッドを離れるとすぐに、複合補強材が、例えば、トンネル炉を、例えば長さ数メートルを通過して、その中で空気の熱処理を受ける。この処理温度は、例えば150℃と300℃の間で、場合によっては数秒から数分までの処理時間(例えば10秒と10分の間)であり、処理時間が短くなるほど温度が高くなること、また、熱処理によって必ずしも用いられる熱可塑性材料が再融解又は過度に軟化さえもしなければならないというわけではないことが理解される。このようにして完了した本発明の複合補強材は、有利には、最終の巻取リール上に巻付けられつつ望ましくない固着問題を回避するように、例えば空気中で冷却される。
適切な場合には、当業者は、本発明の特定の操作条件に従って、特に製造される複合補強材の正確な種類に従って、特に処理が個別に用いたモノフィラメント上か、いくつかのモノフィラメントからなるコード上か、そのようなモノフィラメント又はコードのグループ、例えばストリップ上であるかに従って上記の選択できる熱処理の温度及び時間をどのように調整するかを知っている。特に、当業者は、逐次比較によって、本発明の各々の具体的な実施態様に対して最良の接着結果を与える動作条件を見つけるように処理温度と処理時間を変動させるという利点をもつであろう。
上で記載された本発明の方法の工程は、有利には、特にこの複合補強材が最終的に比較的高温で、典型的には100℃よりも高い温度で用いることを意図する場合には、そのシーズの固有凝集を更に増加させるために、補強材を三次元的に架橋するための最終処理で補充され得る。
【0019】
この架橋は、知られている任意の手段によって、例えばイオン又は電子衝撃のような物理的架橋手段によって、又は化学架橋手段によって、例えば、架橋剤(例えばアマニ油)を熱可塑性ポリマー組成物に、例えばそれが押出されつつ組み入れることによって、或いは加硫系(即ち硫黄ベースの架橋系)をこの組成物に組み入れることによって行われ得る。
架橋は、また、本発明の複合補強材が、そのようなタイヤ(又は製品)を製造するとともに本発明の複合補強材と接触させるために用いられるジエンゴム組成物に存在する固有架橋系によって、補強することを意図する空気入りタイヤ(又はより一般的にはゴム製品)のキュアリングの間に行われ得る。
本発明の複合補強材は、直接使用し得る。即ち、ジエンゴムマトリックスのための補強要素として、例えば空気入りタイヤにおいて、追加の接着剤系を必要としない。有利には、本発明の複合補強材は、全てのタイプの車両、特に乗用車又は大型車のような産業車両用の空気入りタイヤを補強するために用いられ得る。
一例として、本明細書に添付された
図5は、乗用車用の本発明の空気入りタイヤによる半径方向の断面を概略的に示す(一定の比率で描かれていない)図である。
この空気入りタイヤ1は、クラウン補強部又はベルト6、2つのサイドウォール3及び2つのビード4によって補強されたクラウン2を含み、これらのビード4の各々は、ビードワイヤ5で補強されている。クラウン2の上にこの概略図には図示されていないトレッドが載っている。カーカス補強部7は、各ビード4における2つのビードワイヤ5の周りに巻付けられ、この補強部7の上向き部8が、例えばタイヤ1の外側に向かって横たわり、ここではそのリム9上に取り付けられて示されている。カーカス補強部7は、それ自体で知られるように、「ラジアル」で補強された少なくとも1つのプライ、例えば織物又は金属、コードから構成されている。即ち、これらのコードは実際に相互に平行に位置決めされ、円周中央平面(2つのビード4の間の中間に位置し且つクラウン補強部6の中央を通過するタイヤの回転の軸に対して垂直な平面)と80°と90°の間の角度をなすように一方のビードからもう一方のビードまで伸びている。
本発明のこの空気入りタイヤ1は、例えば、クラウン又はそのカーカス補強部の少なくとも1つが本発明の複合補強材を含む本質的特徴を有する。本発明の他の可能な実施態様によれば、例えば、本発明の複合補強材から作られ得るビードワイヤ5である。
【0020】
本発明の例示的実施態様
試験1 - 複合補強材の製造
最初に、本発明の複合補強材を下記の方法で製造した。出発補強用スレッドは、10mmのらせんピッチで一緒に撚り合わせた直径が0.30mmの2つの個別のスレッド又はモノフィラメントからなる1×2構成の空気入りタイヤ用のスチールコード(0.7質量%の炭素分を有する標準鋼でできている)であった。コードの直径は、0.6mmであった。
このコードを、230℃の温度に加熱し且つ2つのダイ、直径が0.63mmの上流ダイと直径が0.92mmの下流ダイを備えている押出ヘッドに通過させることによって押出/シーズ処理ラインにより、ポリアミド11(Arkema社製のRilsan BESNO P40TL; Tmは約180℃)、SBS又はSB(いずれも試験した、それぞれKraton社製のD1155及びD1118)及び最後にPPE(Asahi Kasei社製のXyron S202)の混合物で被覆した。ポリアミド11(約48g/分のポンプ速度)、SBS又はSB(約8.6g/分のポンプ速度)及びPPE(約3.4g/分のポンプ速度)からなる熱可塑性混合物(80/14/6のポリアミド/SB又はSBS/PPE質量比による)を210℃の温度に加熱したので、60m/分の速度で動作しているスレッド(高周波発生器に通過させることによって約174℃に予熱した)を被覆した。シーズ処理ヘッドを離れるときに、得られた複合補強材をその熱可塑性シーズを冷却するために5℃の水で充填した冷却タンクに連続して浸漬し、次に空気ノズルを用いて乾燥した。
上で用いられる3つのタイプのポリマーのガラス転移温度Tg
1、Tg
2及びTg
3は、それぞれ+45℃、−95℃及び+215℃前後に等しい(例えば、以下の手順に従って測定した: Mettler Toledo製の822-2 DSC機器; ヘリウム雰囲気; 試料を周囲温度(20℃)から100℃(20℃/分)まで予熱し、次に−140℃に急速に冷却した後、最後に20℃/分で−140℃から+300℃までのDSC曲線を記録した)。
このシーズ処理操作の後、これらの実施例において、アセンブリは、270℃の温度に加熱された周囲大気(空気)において3m/分でトンネル炉に通過させることによって、約100秒の時間熱処理を受けた。これにより、熱可塑性ポリマー(ポリアミド、PPE及びSBS又はSBエラストマー)組成物のその層でシーズされた最初のスチールコードからなる本発明の複合補強材(
図2において概略的に示した補強材R-2)を生じ、その接着性は最適である。
上記の試験における熱処理に最良の操作条件を決定するために、160℃から280℃までの温度範囲を、4つの処理時間(50秒、100秒、200秒及び400秒)について前もって調べた。
【0021】
試験2 - 接着試験
次に、ゴムと上で製造した複合補強材の間の結合の質を、加硫物とも呼ばれる加硫ゴム組成物からその補強材を引き抜くのに要する力を測定する試験によって評価した。このゴム組成物は、天然ゴム、カーボンブラック及び標準添加剤をベースとする金属タイヤベルトプライをカレンダー加工するのに用いられる慣用の組成物であった。
加硫物は、キュアリングの前に相互に適用した、200mm×4.5mmで厚さ3.5mmの大きさの2枚のシートからなるゴムブロックであった(得られたブロックの厚さは、その場合、7mmであった)。このブロックの製造の間に、複合補強材(合計で15のストランド)を2枚のゴムシートの間にキュアされていない状態で、等距離離して、各複合補強材の一端がこれらのシートの両側に次の引張試験に充分な量を突き出して閉じ込めた。次に、補強材を含有するブロックを適切なモールドに入れ、次に圧力下でキュアした。当業者の裁量に任されたキュア温度及びキュア時間を、意図した試験条件に適応させた。例えば、この場合は、ブロックを16バールの圧力下に160℃で15分間キュアした。
キュアした後に、このようにして加硫されたブロック及び15の補強材からなる試料を適切な引張試験機の顎部の間に配置して、所定の引張速度及び所定の温度で(例えば、本例においてはそれぞれ50mm/分及び100℃で)個別に各補強材をゴムから引っ張った。接着レベルは、試料から補強材を引抜くための引抜き力(F
maxで示される)を測定することによって特性決定した(これは15回の引張試験に対する平均である)。
本発明の複合補強材が、ポリアミド11によって簡単にシーズされ且つ従来のRFL接着剤を用いて結合した対照複合補強材で測定した対照引抜き力と比較して約25%(SBエラストマー)又は35%(SBSエラストマー)さえも増加したので、RFL接着剤(又は他の任意の接着剤)を含有しないという事実にもかかわらず、特に高い予想外の引抜き力F
maxを有することがわかった。
同じ条件下で、ポリアミド11(TPSエラストマー又はPPEを含まない)で簡単にシーズしたがRFL接着剤(又は他の任意の接着剤)を含有しない対照複合補強材は、ゴムに対する接着を示さなかった(実際にはゼロ引抜き力)。
結論として、本発明の複合補強材は、その自己接着特性により、特に高温(100℃以上)で、非常に高い接着レベルが得られるために、知られているように、続いてゴムに付着することを確実にするRFL接着剤の使用を必要とするポリアミド又はポリエステルのような熱可塑性材料でシーズされた先行技術の複合補強材に対して、特に有用な代替物を構成する。