(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
環境試験装置の一つに、特許文献1,2等に開示された様な冷熱衝撃試験装置や、冷熱サイクル試験装置がある。これらの環境試験装置は、温度調整された空気を試験室に導入して試験を実施する。
特許文献1に開示されている冷熱衝撃試験装置では、高温に調整された気体を試験室に導入して高温雰囲気下に被試験物を晒す高温晒しモードによる運転と、低温に調整された気体を試験室に導入して低温雰囲気下に被試験物を晒す低温晒しモードによる運転とを順次実施する冷熱サイクル動作を繰り返し実施し、被試験物に熱衝撃を与える。
【0003】
この種の環境試験装置では、試験室の他に、高温側温調室と、低温側温調室とを有している。
前記した高温側温調室内にはヒータと送風機とが設けられており、送風機で内部の空気を循環しつつ、ヒータで高温側温調室内を昇温する。
低温側温調室内には冷却装置と送風機とが設けられており、送風機で内部の空気を循環しつつ、冷却装置で低温側温調室内の温度を低下させる。
【0004】
また試験室と高温側温調室の間には、一連の高温側空気循環路が形成されており、当該高温側空気循環路には、高温側ダンパーが設けられている。
同様に試験室と低温側温調室の間にも、一連の低温側空気循環路が形成されており、当該低温側空気循環路には、低温側ダンパーが設けられている。
【0005】
そして高温晒しモードによる運転を実施する場合には、高温側空気循環路に設けられた高温側ダンパーを開いて高温側温調室から試験室内に高温の空気を導入する。
このとき、低温側空気循環路に設けられた低温側ダンパーは閉じられており、低温側温調室内だけで空気を循環させて低温側温調室の温度を低温に保つ。即ち次の低温晒しモードの実施に備えて、低温側温調室に低温の空気を準備しておく。
【0006】
逆に低温晒しモードによる運転を実施する場合には、低温側空気循環路に設けられた低温側ダンパーを開いて低温側温調室から試験室内に低温の空気を導入する。
このとき、高温側空気循環路に設けられた高温側ダンパーは閉じられ、高温側温調室内だけで空気を循環させて高温側温調室の温度を高温に保つ。即ち次の高温晒しモードの実施に備えて、高温側温調室に高温の空気を準備しておく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで冷熱衝撃試験を行う場合、高温晒しモードにおける試験室の設定温度を、摂氏300度程度とする場合があり、この場合、低温晒しモードが実行されている際には次の高温晒しモードに備えて高温側温調室に摂氏350度程度の高温の空気が準備される。
即ち低温晒しモードが実行されている際には、高温側ダンパーが閉じられて試験室と高温側温調室との間が遮断され、高温側温調室内ではヒータに通電されると共に送風機が駆動され、高温側温調室を高温の空気が循環している。
この様に低温晒しモードが実行されている際には、高温側ダンパーが閉じられていて試験室側に高温の空気が漏れることを防止している。
しかしながら、高温側ダンパーには350度程度の高温の空気が接している。かつ送風機によって空気が循環されているので、高温側ダンパーにはある程度の動圧が掛かる。
【0009】
周知の通り、ダンパー自身、又はダンパーの当接面にはパッキン部材が設けられ、パッキン部材によって気密性が確保される。しかしながら摂氏300度を超える様な高温領域で使用可能なパッキン部材は、種類が限られる。
即ち樹脂やゴムを素材とするパッキン部材は、シール性能が高いが、高温で軟化したり、早期に劣化してしまうという問題がある。
パッキン部材が劣化して気密性がなくなると、低温晒しモードの際に試験室内に高温の空気が流れ込み、試験室内の温度を所望の低温にすることが困難となる。
【0010】
金属パッキンは、高温に耐えるが、金属パッキンは一般に硬く他の部材との馴染みが悪いので、シール性能が劣る。
そのため金属パッキンを使用すると、低温晒しモードの際に試験室内に高温の空気が流れ込みやすく、試験室内の温度を低下させることの妨げとなる。
【0011】
また試験室の扉についても同様であり、高温環境で試験を行う場合には、相当の高温にさらされる。そして扉から外気が進入したり、内部の空気が漏れると、試験室内を高温に維持する妨げとなる。
【0012】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、高温に耐え、且つシール性能が高い封止構造を提案するものであり、試験室内を所望の温度に維持しやすい環境試験装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、被試験物を配置する試験室を有し、試験室内を高温環境とすることが可能な環境試験装置であって、開口と、当該開口を開閉する開閉部材を有する環境試験装置において、突端部が延びる押圧部材と、押圧部材よりも幅が広く且つ凹変可能及び/又は厚さ方向に変形可能なパッキン部材とを有し、前記開口の周囲または前記開口周囲に対応する開閉部材の部位のうち、一方に前記パッキン部材が設けられ、他方に前記押圧部材が設けられ、前記開口を閉鎖した状態の際に押圧部材の突端部がパッキン部材と接する
ものであり、前記パッキン部材は、長尺物が環状に接続されたものであって押圧部材側に対向する環状面を有し、前記パッキン部材の平面形状は角の部位に丸みを帯びた略四角形であり、前記押圧部材は、突端部を備えた4本の押圧部材片によって構成され、前記複数の押圧部材片が他の部材に固定された状態で各押圧部材片の突端部によってパッキン部材の環状面と接する環状突端部が形成されており、対向する2本の押圧部材片の内側に他の2本の押圧部材片があり、前記内側の2本の押圧部材片は、前記対向する2本の押圧部材片の間にあって位置調節可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、被試験物を配置する試験室を有し、試験室内を高温環境とすることが可能な環境試験装置であって、開口と、当該開口を開閉する開閉部材を有する環境試験装置において、突端部が延びる押圧部材と、押圧部材よりも幅が広く且つ凹変可能及び/又は厚さ方向に変形可能なパッキン部材とを有し、前記開口の周囲または前記開口周囲に対応する開閉部材の部位のうち、一方に前記パッキン部材が設けられ、他方に前記押圧部材が設けられ、前記開口を閉鎖した状態の際に押圧部材の突端部がパッキン部材と接するものであり、前記パッキン部材は、長尺物が環状に接続されたものであって押圧部材側に対向する環状面を有し、前記パッキン部材の平面形状は角の部位に丸みを帯びた略四角形であり、前記押圧部材は、突端部を備えた複数の押圧部材片によって構成され、前記複数の押圧部材片が他の部材に固定された状態で各押圧部材片の突端部によってパッキン部材の環状面と接する環状突端部が形成されており、いずれかの押圧部材片は、他の押圧部材片に対して位置調節可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0015】
本発明の環境試験装置では、開口がパッキン部材と押圧部材によって封止されている。ここでパッキン部材は、例えばステンレスパッキンであり、ある程度の幅があり、且つ凹変可能であるか、厚さ方向に変形可能である。ここで「凹変」「変形」は、塑性変形と弾性変形を含む意味である。
一方、押圧部材は、突端部の幅がパッキン部材よりも狭く、突端部が延びる。そのため押圧部材のパッキン部材に対する接触面積が小さく、接触圧力が高い。そのため押圧部材の突端部はパッキン部材の表面に密接し、高いシール性能を発揮する。
【0016】
パッキン部材としては、布状物又は網状物で繊維を覆った構造を有し、前記布状物及び網状物は金属製の線材又は繊維で作られたものであるが望ましい。
請求項3に記載の発明は、空気を昇温する昇温部を有し、昇温部内にはヒータと送風機とが設けられており、ヒータで昇温部内を昇温するものであり、前記昇温部と試験室を繋ぐ連通路に前記開口及び開閉部材があり、前記開閉部材は動力によって動作され、前記パッキン部材は、布状物又は網状物で繊維を覆った構造を有し、前記布状物及び網状物は金属製の線材又は繊維で作られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0017】
前記した請求項1,2に記載の発明では、パッキン部材は、長尺物が環状に接続されたものであって押圧部材側に対向する環状面を有し、押圧部材は、突端部を備えた複数の押圧部材片によって構成され、前記複数の押圧部材片が他の部材に固定された状態で各押圧部材片の突端部によってパッキン部材の環状面と接する環状突端部が形成されている。
【0018】
本発明の環境試験装置では、パッキン部材は、長尺物が環状に接続されたものであって押圧部材側に対向する環状面を有するものが採用されている。
本発明で採用するパッキン部材は、押圧部材と接する面が、略連続していて漏れる部位が無い。
しかしながらその一方で、長尺物を環状に接続すると、角の部分が丸くなりがちである。また角の部分は波うったり厚さが不均一となりがちである。
そこで本発明では、押圧部材を複数の押圧部材片に分け、複数の押圧部材片を他の部材に固定した状態で各押圧部材片の突端部によってパッキン部材の環状面と接する環状突端部を形成させることとした。本発明によると、パッキン部材の平面形状に合わせて押圧部材片を配置することができ、完成された押圧部材によってパッキン部材を有効に押圧することができる。
【0019】
前記した請求項3に記載の発明は、空気を昇温する昇温部を有し、当該昇温部と試験室を繋ぐ連通路に前記開口及び開閉部材があり、前記開閉部材は動力によって動作されることを特徴と
している。
【0020】
本発明は、冷熱衝撃試験装置等の高温側ダンパー等に適用した態様である。
【0021】
請求項
4に記載の発明は、前記開口は、試験室に被試験物を出し入れするための出入り開口であり、前記開閉部材は出入り開口を開閉する扉部材であることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか記載の環境試験装置である。
【0022】
本発明は、環境試験装置の出入り開口に適用した態様である。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記突端部は垂直壁部の頂部が折り返されたものであり、丸みを帯びていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環境試験装置は、高温気体が漏れ出ることが少なく、試験室内を所望の高温環境や低温環境にするための障害が少ない。
そのため本発明の環境試験装置は、無駄な電力消費が少ない。また本発明の環境試験装置は、所望の環境に至らせるまでに要する時間も短い。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、さらに本発明の実施形態の環境試験装置について説明する。なお、以下の説明において上下左右や奥行き、高さ等の位置関係は、特に断りのない限り
図1に示す通常の設置状態を基準として説明する。
【0027】
本実施形態の環境試験装置1は、冷熱衝撃試験装置であり、高温晒しモードによる運転と、低温晒しモードによる運転を交互に繰り返すことができる。即ち本実施形態の環境試験装置は、従来技術と同様、試験室2の他に、高温側温調室(温調部)5と、低温側温調室(温調部)6とを有している(
図3,4,5)。
【0028】
また試験室2と高温側温調室5の間には、
図4の様に一連の高温側空気循環路7が形成可能であり、当該高温側空気循環路7には、高温導入側ダンパー8と、高温排出側ダンパー10が設けられている。
同様に試験室2と低温側温調室6の間にも、
図5の様に一連の低温側空気循環路11が形成可能であり、当該低温側空気循環路11には、低温導入側ダンパー15と、低温排出側ダンパー16が設けられている。
【0029】
そして高温晒しモードによる運転を実施する場合には、高温側空気循環路7に設けられた高温導入側ダンパー8と、高温排出側ダンパー10を開いて高温側温調室5内の高温の空気を試験室2内に導入する。
このとき、低温側空気循環路11に設けられた低温導入側ダンパー15と、低温排出側ダンパー16は閉じられており、低温側温調室6内だけで空気を循環させて低温側温調室6の温度を低温に保つ。即ち次の低温晒しモードの実施に備えて、低温側温調室6内に低温の空気を準備しておく。
【0030】
逆に低温晒しモードによる運転を実施する場合には、低温側空気循環路11に設けられた低温導入側ダンパー15と、低温排出側ダンパー16を開いて試験室2内に低温の空気を導入する。
このとき、高温側空気循環路7に設けられた高温導入側ダンパー8と、高温排出側ダンパー10は閉じられ、高温側温調室5内だけで空気を循環させて高温側温調室5の温度を高温に保つ。即ち次の高温晒しモードの実施に備えて、高温側温調室5に高温の空気を準備しておく。
【0031】
次に、本実施形態の環境試験装置の具体的構成について説明する。
図1に示すように、環境試験装置1は、筐体3を有している。筐体3は、直方体状の形状を有するものであり、断熱性を有する外壁によって外周が囲まれている。筐体3の正面には、扉17があり、扉17によって試験室2の出入り開口13が開閉される。なお出入り開口13は、試験室2に被試験物を出し入れするための開口であり、高温の空気が接することがある。
【0032】
環境試験装置1は、
図3に示すように、筐体3の内部に、試験室2と高温側温調室5及び低温側温調室6を有している。高温側温調室5は、試験室2に対して上方にある。また低温側温調室6は、試験室2に対して下方に配されている。
前記した試験室2、高温側温調室5及び低温側温調室6は、いずれも断熱壁21によって囲まれている。また試験室2と、高温側温調室5及び低温側温調室6との間は、それぞれ断熱仕切り壁22,23で仕切られている。
【0033】
高温側温調室5の内部は、ほぼ水平に配された仕切25を介して、加熱部26と内部循環ダクト27とに分かれている。加熱部26には、ヒータ28や、送風機30が設けられている。また、
図3,4,5に示すように、内部循環ダクト27には、高温側内部ダンパー31が設けられている。さらに、高温側温調室5と試験室2との間には、高温導入開口33と、高温排出開口35が設けられている。そして高温導入開口33には、前記した高温導入側ダンパー8が設けられている。
高温導入側ダンパー8は、平面視が略長方形であり、その一辺側に設けられたヒンジ34を中心として揺動する。なお高温排出側ダンパー10、低温導入側ダンパー15と、低温排出側ダンパー16についても同様であり、平面視が略長方形であり、その一辺側に設けられたヒンジを中心として揺動する。
また高温排出開口35には、高温排出側ダンパー10が設けられている。
なお本実施形態では、高温導入側ダンパー8及び高温排出側ダンパー10の中央部に突出部12があり、高温導入開口33等を塞いだ際に前記した突出部12が高温導入開口33等の中に入り込む。
【0034】
ヒータ28は、流入した空気を加熱することができる。送風機30は、ヒータ28に対して隣接する位置にあり、ヒータ28で加熱された空気を吸い込み、所定の風速で吹き出すことができる。送風機30は、試験室2の高温導入開口33が設けられた部分の上方に位置しており、送風機30の送風口29は、高温導入開口33に向かって開いている。
そのため、高温導入側ダンパー8及び高温排出側ダンパー10を開いた状態で送風機30を作動させると、ヒータ28で加熱された空気が、送風機30の送風口29から高温導入側ダンパー8に至る領域を経て試験室2に向けて送風される。このとき、高温の空気は、高温導入開口33と接する。
また、試験室2に送風された空気は、試験室2に充満すると共に高温排出開口35を通過し、高温側温調室5に戻る。高温側温調室5に流入した空気は、再びヒータ28に戻る。このようにして、ヒータ28で加熱された空気は、高温側温調室5と試験室2との間で循環する。
【0035】
一方、高温導入側ダンパー8及び高温排出側ダンパー10を閉じ、内部ダンパー31を開いた状態で送風機30を作動させることにより、ヒータ28により空気を適宜加熱しつつ、ヒータ28と内部循環ダクト27との間で空気を循環させることができる。このときも高温導入開口33及び高温導入側ダンパー8に高温の空気が当たる。
【0036】
なお本実施形態では、高温導入側ダンパー8と高温側内部ダンパー31は、リンク機構36によって連結され、両者は連動する。即ち高温導入側ダンパー8が閉じられると、リンク機構36によって高温側内部ダンパー31が開く。逆に高温導入側ダンパー8を開くと、これに連動して高温側内部ダンパー31が閉じる。各ダンパー8,10,31は、図示しないモータによって開閉される。
【0037】
低温側温調室6は、前記した高温側温調室5と同様の流路構成をもっている。ただし、前記した高温側温調室5は、ヒータ28を有していたのに対し、低温側温調室6には、冷却装置37と、補助加熱装置38が内蔵されている。
即ち低温側温調室6の内部も、仕切42を介して、冷却部40と内部循環ダクト43とに分かれている。冷却部40には、冷却装置37と、補助加熱装置38及び送風機68が設けられている。また、
図3,4,5に示すように、内部循環ダクト43には、低温側内部ダンパー41が設けられている。さらに、低温側温調室6と試験室2の間には、低温導入開口45と、低温排出開口46が設けられている。そして低温導入開口45には、低温導入側ダンパー15が設けられている。また低温排出開口46には、低温排出側ダンパー16が設けられている。各ダンパー15,16,41は、図示しないモータによって開閉される。
【0038】
低温導入側ダンパー15及び低温排出側ダンパー16を開いた状態で送風機68を作動させると、冷却装置37で温度降下した空気が、送風機68の送風口から試験室2に向けて送風される。また、試験室2に送風された空気は、試験室2に充満すると共に低温排出開口46に設けられた低温排出側ダンパー16を通過し、低温側温調室6に戻る。低温側温調室6に流入した空気は、再び冷却装置37に戻る。このようにして、冷却装置37で冷却された空気は、低温側温調室6と試験室2との間で循環する。
一方、低温側温調室6は、低温導入側ダンパー15及び低温排出側ダンパー16を閉じ、低温側内部ダンパー41を開いた状態で送風機68を作動させることにより、冷却装置37により空気を冷却しつつ、冷却装置37と内部循環ダクト43との間で空気を循環させることができる。
【0039】
なお本実施形態では、低温導入側ダンパー15と低温側内部ダンパー41は、リンク機構47によって連結され、両者は連動する。
【0040】
次に本実施形態の環境試験装置1の特徴的構成について説明する。本実施形態の環境試験装置1は、筐体3の正面に設けられた扉17の封止構造及び高温導入側ダンパー8の封止構造に特有の工夫が施されている。
【0041】
以下、高温導入側ダンパー8の封止構造を例に説明する。
高温導入側ダンパー8は、高温側空気循環路7に取り付けられたものであり、高温導入開口33を開閉する開閉部材である。
開閉部材たる高温導入側ダンパー8と、高温導入開口33は、パッキン部材50と、押圧部材51とによって封止されている。
本実施形態では、高温導入開口33の周囲にパッキン部材50が設けられ、押圧部材51は高温導入側ダンパー8側に設けられている。
【0042】
パッキン部材50は、ステンレスパッキンと称されるものであり、
図6の様にセラミック繊維等の耐熱性を有する繊維52を金属の布状物53で覆ったものである。
【0043】
布状物は、ステンレス等の金属線によって構成された布状物53であり、可撓性を有している。
布状物53の組成は、網状であっても織物状であってもよい。
【0044】
パッキン部材50は、布状物53でセラミック繊維等の繊維52を取り巻いたものである。パッキン部材50の断面形状を見ると、
図6の様に、一枚の布状物53で覆われた部位と、布状物53が重なった部位とがある。
またパッキン部材50は、長尺状であるが、本実施形態では、
図6,7,8の様に環状に接続されている。
従ってパッキン部材50の平面形状は、
図6,7,8の様に略長方形である。ただし、角の部位Aは、やや丸みを帯びている。要するにパッキン部材50の平面形状は、高温導入開口33の開口形状に合わせたものであればよい。
【0045】
パッキン部材50は、強く押すと、全体が圧縮されて縮む。また部分的に押圧すると押圧部分が凹む。
【0046】
本実施形態では、パッキン部材50は、図示しない締結要素によって高温導入開口33の周囲に取り付けられている。ここで、パッキン部材50の布状物53が重なった部位は、高温導入開口33側と接し、一枚の布状物53で覆われた部位が露出している。
【0047】
押圧部材51は、
図8,9の様に4個の押圧部材片55,56,57,58が組み合わされて作られたものである。
各押圧部材片55,56,57,58は、長さだけが異なり、断面形状その他は同一であるから、押圧部材片56を例に説明する。
【0048】
押圧部材片56は、
図10の様に、一枚の金属板を折り曲げて作られたものである。なお押圧部材片56の材質は、ステンレス等の錆びにくい金属であることが望ましい。
押圧部材片56は、断面形状が概ね「L」字状である。即ち押圧部材片56は、取り付け座部60と、取り付け座部60に対して垂直に折り立てられた垂直壁部61を有している。取り付け座部60には、取り付け用の長孔67が設けられている。
垂直壁部61の頂部は、補強のために折り返されている。
従って、押圧部材片56の突端部62は、やや丸みを帯びている。また押圧部材片56の突端部62の幅wは、前記したパッキン部材50の幅Wに比べて著しく小さい。
また垂直壁部61の高さは一定であり、押圧部材片56の突端部62は、線状に延びている。より具体的には、押圧部材片56の突端部62は、幅が狭く、直線状に延びている。
【0049】
4本の押圧部材片55,56,57,58の内、2本の押圧部材片55,57は全長が長く、残る押圧部材片56,58は、全長が短い。
【0050】
4本の押圧部材片55,56,57,58は、いずれもネジ63で、開閉部材たる高温導入側ダンパー8に取り付けられている。
ここで、押圧部材片55,56,57,58の組付け作業について言及すると、4本の押圧部材片55,56,57,58を高温導入側ダンパー8に取り付ける際に、押圧部材片55,56,57,58の位置合わせが行われる。
【0051】
即ち、押圧部材片56の取り付け孔を長孔67とし、4本の押圧部材片55,56,57,58を組み合わせる際に、パッキン部材50の表面を環状に押圧することができる様に、押圧部材片55,56,57,58の位置を微調整する。
例えば、
図8に示す様に、押圧部材片56,58を押圧部材片55,57の両端よりもやや内側に入れた状態で、押圧部材片55,56,57,58を取り付け、パッキン部材50を環状に押圧できる様に調節する。
【0052】
4本の押圧部材片55,56,57,58が組み合わされた後の状態は、
図6、
図8の様であり、各押圧部材片55,56,57,58の突端部62によってパッキン部材50の環状面65(
図7)と接する環状突端部66(
図8)が形成される。
【0053】
高温導入側ダンパー8を、高温導入開口33に押し当てた際のパッキン部材50と、押圧部材51との様子は、
図11の通りである。即ち押圧部材51は、圧縮変形したり座屈することなく、垂直壁部61が直立姿勢を維持し、突端部62がパッキン部材50の表面を押圧する。パッキン部材50は、押圧面がやや凹んで突端部62と密接する。その結果、両者の間はシール性が確保され、気体が漏れることはない。
本実施形態の環境試験装置1のレイアウトでは、高温導入側ダンパー8の真上の位置に送風機30があり、送風機30の送風口29は高温導入側ダンパー8側に向いている。そのため送風の動圧が高温導入側ダンパー8に掛かる。しかしながら、パッキン部材50は押圧部材51によって強く押圧され、両者の間の気密性は高い。そのため送風機30の回転数を高くしても高温の空気が、試験室2側に漏れることを抑制することができる。
【0054】
筐体3の正面に設けられた扉17部分の封止構造も、高温導入側ダンパー8に準じた構造であり、パッキン部材50’と、押圧部材51’とによって封止されている。
【0055】
以上説明した実施形態では、開口側にパッキン部材50,50’を設け、開閉部材側に押圧部材51,51’を設けたが、開口側に押圧部材51,51’を設け、開閉部材側にパッキン部材50,50’を設けてもよい。
【0056】
上記した実施形態で採用した押圧部材片56は、突端部62が直線状に延びるものを採用したが、突端部62が平面的に見て曲線を描くものであってもよい。
また本実施形態では、高温導入側ダンパー8及び高温排出側ダンパー10の中央部に突出部12があり、高温導入開口33等を塞いだ際に前記した突出部が高温導入開口33等の中に入り込む。この構成は、パッキン部材50,50’に高温の空気が接する機会を減少する効果があり、推奨されるものであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0057】
上記した実施形態では、高温導入側ダンパー8に、パッキン部材50と押圧部材51による封止構造を採用したが、高温排出側ダンパー10に、この封止構造を採用してもよい。
また上記した実施形態では、高温導入側ダンパー8と扉17部分に、パッキン部材50と押圧部材51による封止構造を採用したが、いずれか一方にのみこれを採用してもよい。
また上記した実施形態では、パッキン部材50は、長尺状のものを一定の寸法に切断し、この両端を接続して環状に成形したものであり、継ぎ目が一か所であるが、複数の継ぎ目を有するものであってもよい。例えば、長辺側用の2本と、短辺用の2本を作り、これを環状に繋いでもよい。さらに、複数の直線状又は曲線状のパッキン部材を単に開口等の回りに配置したものであってもよい。即ちパッキン部材50は、複数のパーツを単に環状に配置したものであってもよい。
【0058】
押圧部材51を構成する押圧部材片55,56,57,58についても、個数や形状は任意である。
例えば、2個の押圧部材片によって押圧部材51を構成してもよい。この場合には、押圧部材51の平面形状は、「L」状となる。逆に5個以上の押圧部材片によって押圧部材51を構成してもよい。もちろん、押圧部材51が分離不能な一個の部材であってもよい。
また上記した実施形態では、押圧部材片55,56,57,58の断面形状が同一であると説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、異なる断面形状を持つものであってもよい。
また上記した実施形態では、短い側の押圧部材片56,58の位置を変化させて位置調節する旨を説明したが、長い側の押圧部材片55,57の位置を変化させて位置調節をしてもよい。
【0059】
上記した実施形態は、本発明を熱衝撃試験装置に適用したものであるが、他の環境試験装置に本発明を採用してもよい。
例えば恒温恒湿装置には、高温導入側ダンパー8に相当する部材を持たない場合があるが、その場合には、筐体の正面に設けられる扉部分の封止構造に、本発明を適用することとなる。