(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の例以外に、例えば、シリンダヘッドガスケットにおいて、シリンダボア回りの環状シール部と、冷却媒体(不凍液)の流通ボア回りの環状シール部と、さらにはエンジンオイルの流通ボア回りの環状シール部とを連結部で連結して1個のガスケットを構成する例もみられる。このように複数の環状シール部を1個のガスケットとして構成すれば、部品管理がし易く、組付け効率も向上するので、需要者から強く望まれるところであった。ところで、複数のシール対象部位毎の複数の環状シール部を連結部で連結したガスケットを、例えばゴム材料によって一体に成型する場合、最も高品質が求められる部位(例えば、この例ではシリンダボア回り)に適したゴム材料で全体を成型する必要がある。そのため、他の部位では過剰品質となり、シール対象部位毎に適したゴム材料で個々にガスケットを調製するよりも、むしろコスト高になることもある。
【0005】
特許文献1に開示されたシールリングにおける複数の環状部は、ロッカーカバーにおける各気筒をシールするものであり、各気筒に求められる環状部の品質は同一であるので、同材質のゴム材料で一体に成型しても、前記のような過剰品質な部分が生じることはない。また、特許文献2で開示されたガスケットにおける複数のガスケット本体も、同条件の環境下に設置されるものを想定していると考えられ、従って、特許文献1と同様に、同材質のゴム材料で一体に成型しても、過剰品質な部分が生じることはない。さらに、特許文献3に開示された複数のOリングは、それぞれ、ハウジングにおける冷却水の入口及び出口、オイルの入口及び出口をシールするものである。従って、シール対象媒体としてのオイル及び冷却水に対してそれぞれに適したゴム材料の品質に差がある場合、高品質が求められるシール対象媒体に適したゴム材料で全体を一体成型すると、他方のシール対象媒体に対しては過剰品質となる。そのため、前記と同様にむしろコスト高になるなどの問題点が生じることになるが、特許文献3には、このような問題点の提起はなく、またその解決手段も示唆されていない。特許文献4に開示されたガスケットは、2種の環状シール部(外周シール部及びプラグシール部)がそれぞれ連結片を備え、この連結片同士を連結させた状態でシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの接合部に介装されるものである。この2種の環状シール部は個別に作製されるものであるが、特許文献4では、この2種の環状シール部のそれぞれに求められる品質に差がある場合については、特に言及していない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、簡単な構成でありながら、要求品質の異なる複数の環状シール部を、それぞれに適した材料で構成し、且つ、これらを一括して組付けの便宜を図ったガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスケットは、
2部材の一方の部材に形成された溝に収納された状態で当該2部材間に介装されて、該2部材間の密封を行うガスケットにおいて、複数の環状シール部と、当該環状シール部同士を連結する連結部とを含み、
前記溝は、前記複数の環状シール部をそれぞれ収納する環状凹溝と、当該環状凹溝間に通じ前記連結部を収納する連結凹溝とを有し、前記複数の環状シール部のうち、少なくとも1つの環状シール部とこれに連結される環状シール部とが異なる材料によって構成され、前記異なる材料によって構成された環状シール部同士を連結する連結部に
当該環状シール部を構成する前記異なる材料
を接合する接合部を有していることを特徴とする。
【0008】
複数の環状シール部同士が連結部によって連結されているから、複数のガスケットを個々にシール対象部位に組み付ける場合に比べて、組付け時の取扱い性が良く、組付け作業を効率的に行うことができる。また、複数のシール対象部位に適用される複数の環状シール部を一括する1個のガスケットとして効率的に製造することができ、シール対象部位毎にガスケットを製造する場合に比べて、製品の管理がし易く搬送性も向上する。そして、前記複数の環状シール部のうち、少なくとも1つの環状シール部とこれに連結される環状シール部とが異なる材料によって構成されるから、シール対象媒体毎に適した材料を選択することができ、シール対象部位によっては、過剰品質とならず、低コスト化を図ることができる。この場合、前記異なる材料によって構成された環状シール部同士を連結する連結部には、異なる材料の接合部が存在するが、連結部はシール機能に影響のない部分に設けられるので、長期のシール機能にも影響しない。
【0009】
本発明のガスケットにおいて、前記異なる材料によって構成された環状シール部は、外観色が互いに異なるようにしても良い。
これによれば、対応するシール対象媒体毎に環状シール部の色を異ならせることにより、組付け時の対応位置を容易に確認でき、これにより組付け時の取扱い性が良くなり、組付けの作業効率が一層向上する。
【0010】
本発明のガスケットにおいて、前記異なる材料によって構成された環状シール部同士を連結する前記連結部は、当該環状シール部のそれぞれから延出された一対の連結部片と、該一対の連結部片同士を接合する前記接合部とからなるものとしても良い。
これによれば、前記一対の連結部片はそれぞれの環状シール部から延出されるから、成型等により各環状シール部と一体且つ同材質の材料で構成することができる。そして、これら異なる材料からなる連結部片同士が接合されて接合部を構成するが、この接合部はシール機能に影響のない部分、即ち、それぞれの環状シールから離れた位置に設けられるから、接合部によるシール機能への影響も生じる懸念がない。
【0011】
本発明のガスケットにおいて、前記接合部が、前記一対の連結部片とは異なる材料からなるものとしても良い。
これによれば、接合部はシール機能に関与しない部位に設けられるから、シール性を考慮することなく接合強度が強い材料を接合部に適用させることによって、シール性の低下を来すことなく、接合部の強度を強化することができる。
【0012】
本発明のガスケットにおいて、前記一対の連結部片は、前記接合部において、当該連結部片の断面積よりも大きな面積を以って接合されているものとしても良い。
これによれば、例えば、前記異なる材料によって構成される隣接関係の環状シール部を同時成型によって成型する場合、接合部における接合面積が大きいことにより、接合強度がより強化される。
【0013】
本発明のガスケットにおいて、前記一対の連結部片は、前記接合部直近の互いに対向する片側に、くびれ部を有しているものとしても良い。
これによれば、接合部直近の互いに対向する片側にくびれ部を設けることにより、連結部にかかる応力がくびれ部に集中し、接合部に加わる応力を緩和させることができるので、結果として接合部の耐性を向上させることができる。
【0014】
本発明のガスケットにおいて、前記接合部は、前記一対の連結部片の断面積より大きな断面積の拡大部からなるものとしても良い。
これによれば、拡大部によって接合面積が増大すると共に、前記同時成型の際に、前記双方の材料の流入強度を緩和し、一方の環状シール部の材料が他方の環状シール部側に侵入することが抑制される。
【0015】
本発明のガスケットにおいて、前記一対の連結部片は、前記拡大部の対向する周辺部直近において、前記それぞれの環状シール部からの延出方向が互いに行き違い状に向くよう形成されているものとしても良い。
これによれば、拡大部の直近において、前記それぞれの環状シール部からの延出方向が互いに行き違い状に向くよう形成されていることにより、前記同時成型の際に、前記双方の材料が、対向位置から同方向に渦流状態で流入して混合し合い、実質的に大きな接合面積で接合し、接合強度がより強化される。また、同方向に渦流状態で流入して混合し合うことにより、前記双方の材料の流入強度がより緩和され、一方の環状シール部の材料が他方の環状シール部側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明のガスケットにおいて、前記接合部を有する連結部により連結された環状シール部は、同一の架橋剤を含む異なるゴム材料からなるものとしても良い。
これによれば、接合部の強度がより強化され、保管、搬送及び組付け時等において、環状シール部同士が分断し難くなり、取扱い性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガスケットによれば、要求品質の異なる複数の環状シール部を、それぞれに適した材料で一体に構成することができ、過剰品質となる環状シール部が生じず、全体としてコスト高となるこのとのない極めて有用なガスケットを提供することができる。また、複数の環状シール部が、連結部で連結されていることにより、環状シール部を個々に組み付ける場合に比べて、組付けの作業効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2は本発明の第1の実施形態に係るガスケットを示し、
図3及び
図4はその変形例を示している。本実施形態のガスケット1は、2部材2,3間に介装されて、該2部材2,3間の密封を行うガスケットである。図例の前記2部材2,3は、エンジンのシリンダブロック2とこれに締結によって合体されるオイルクーラ3とからなることを示している。しかし、これに限定されず、複数のシール対象部位を有し、両者の間にガスケットが介装され、当該ガスケットによって両者の間が密封されるよう構成されるものであれば、他の形態の2部材であっても良い。前記ガスケット1は、複数(図例では3個)の環状シール部4,5,6と、当該環状シール部4,5同士、及び、環状シール部4,6同士をそれぞれ連結する連結部7,8とを含む。前記複数の環状シール部4,5,6のうち、1つの環状シール部4とこれに隣接する2つの環状シール部5,6とが互いに異なる材料によって構成され、前記連結部7,8に前記異なる材料の接合部9,10を有している。これら環状シール部4,5,6及び連結部7,8を含む本実施形態のガスケット1は、後記するようなゴム材料による一体成型体によって構成される。
【0020】
前記シリンダブロック2には、冷却水(不凍液)流通用ボア2a及び2個のオイル流通用ボア2b(1個は不図示)が形成されている。一方、オイルクーラ3には、これらシリンダブロック2の各ボアに対応する位置に、冷却水流通用ボア3a、オイル流通用ボア3b,3cが形成されている。そして、オイルクーラ3側の各ボア3a,3b,3cの回りのシリンダブロック2側の面には、前記環状シール部4,5,6が嵌め込まれる環状凹溝3d,3e,3fが形成されている。また環状凹溝3d,3e間には、両環状凹溝3d,3eに通じる直状の連結凹溝3gが、環状凹溝3d,3f間には、両環状凹溝3d,3fに通じる直状の連結凹溝3hが、それぞれ形成されている。連結凹溝3g,3hの溝深さは、前記環状凹溝3d,3e,3fの溝深さより浅く形成されている。前記連結部7は、環状シール部4から延出された連結部片7aと、環状シール部5から延出された連結部片7bと、この一対の連結部片7a,7b同士を接合する前記接合部9とからなる。また、前記連結部8は、環状シール部4から延出された連結部片8aと、環状シール部6から延出された連結部片8bと、この一対の連結部片8a,8b同士を接合する前記接合部10とからなる。
【0021】
前記環状シール部4は、オイルクーラ3の前記冷却水流通用ボア3aの回りに形成される環状凹溝3dに嵌め込まれる。また、前記環状シール部5は、オイルクーラ3の前記オイル流通用ボア3b回りに形成される環状凹溝3eに嵌め込まれる。さらに、前記環状シール部6は、オイルクーラ3のオイル流通用ボア3c回りに形成される環状凹溝3fに嵌め込まれる。環状シール部4は、前記冷却水に晒されるため、冷却水に耐性のあるEPDM,HNBR,FKM等のゴム材料によって構成されることが望ましい。また、環状シール部5,6は、オイルに晒されるため、オイルに耐性のあるNBR,ACM,FKM,HNBR、さらには、CSM,CPE等のゴム材料によって構成されることが望ましい。
なお、高温の燃焼ガス(ガソリンを含む)に晒される部位に用いられる環状シール部の場合、高温の燃焼ガスに耐性のあるFKM,HNBR,FVMQ等のゴム材料によって構成されることが望ましい。
【0022】
前記ガスケット1は、環状シール部4,5(6)毎に適した2種のゴム材料を同時成型することによって得られる。具体的には、所定のガスケット形状のキャビティを備えた金型の、各環状シール部4,5,6に対応するキャビティの端部側(隣接する環状シール部に対して遠い側)より、未加硫の前記2種のゴム材料を同時に注入し、加硫硬化させることにより一体に成型される。このとき、各注入口から注入された2種のゴム材料は、金型における環状シール部4,5,6に対応する部位のキャビティに充填されながら、前記連結部7,8に相当する部位のキャビティに流入する。この前記連結部7,8に相当する部位のキャビティに流入したそれぞれ2種のゴム材料は、互いに向き合うように合体する。このように、環状シール部4,5,6に対応する部位のキャビティ毎に充填された2種のゴム材料は、加硫硬化され、これによって、それぞれ環状シール部4,5,6が形成される。また、連結部7,8に相当する部位のキャビティ毎に流入して合体したそれぞれ2種のゴム材料は、合体した状態で加硫硬化される。これによって、環状シール部4,5,6から延出される連結部片7a,7b,8a,8b及びこれら連結部片7a,7b,8a,8b同士が前記のように接合する接合部9,10を備える連結部7,8が形成される。
【0023】
前記環状シール部4,5,6を構成するゴム材料をそれぞれ異ならせると共に、これらの着色剤を異ならせて外観色が対応するシール対象媒体毎に色を異ならせるようにすれば、組付け時に各環状シール部4,5,6毎の対応位置を容易に確認することができる。これにより、後記する組付け時の取扱い性が良くなり、組付けの作業効率が一層向上する。また、前記の異なる材料によって構成される連結関係の環状シール部4,5及び環状シール部4,6は、それぞれ同一の架橋剤を含む異なるゴム材料から成型することが望ましい。例えば、HNBRとEPDMとの組み合わせにおいては、架橋剤として過酸化物を用い、ACMとHNBRとの組み合わせにおいては架橋剤としてジアミン化合物を用いることが望ましい。このような架橋剤の使用によって、前記接合部9,10での未加硫の異なるゴム材料同士が馴染み易く、加硫硬化の際に極めて強固に接合する。
【0024】
前記のように作製されたガスケット1は、前記シリンダブロック2とオイルクーラ3との間に介装されて、シリンダブロック2とオイルクーラ3との間を密封するよう用いられる。即ち、オイルクーラ3の前記環状凹溝3d,3e,3fに、環状シール部4,5,6がそれぞれ嵌め込まれ、連結凹溝3g,3hに連結部7,8がそれぞれ嵌め込まれる。そして、シリンダブロック2とこのようにガスケット1が嵌め込みによって組み付けられたオイルクーラ3とを合体させて、シリンダブロック2とオイルクーラ3とが相互にボルト(不図示)等で締結される。図例の環状シール部4,5,6は、断面が楕円形状とされ、その長径が前記締結方向に向くよう形成される。そして、前記締結において、シリンダブロック2の上面と、各環状凹溝3d,3e,3fの底部との間で圧縮されるよう、環状シール部4,5,6の各長径の寸法が設定される。また、環状シール部4,5,6の短径の寸法は、各環状凹溝3d,3e,3fの溝幅寸法より小さく設定される。
図1は、シリンダブロック2とオイルクーラ3とが所定の締結状態とされたことを示している。
図1における2点鎖線は、環状シール部4,5,6の原形状を示しており、この締結状態では、環状シール部4,5,6は圧縮されて、実線のように各環状凹溝3d,3e,3fを満たすように弾性変形した状態とされる。また、連結部7,8の幅寸法は、前記連結凹溝3g,3hの溝幅寸法より小さく、且つ、厚みは、前記所定の締結状態で、シリンダブロック2の上面と連結凹溝3g、3hの底面との間で圧縮されない寸法に設定される。
【0025】
前記のようなシリンダブロック2とオイルクーラ3との締結状態では、環状シール部4,5,6が、シール対象部位としての前記各ボア回りに圧縮状態で介在されるから、これらシール対象部位が密封される。そして、これらシール対象部位のシール対象媒体に適したゴム材料によって、各環状シール部4,5,6が構成されるから、過剰品質となる環状シール部が存在せず、ガスケット1のコストが高くなる懸念がない。また、連結部7,8はガスケット1のシール機能に関与せず、しかも、前記締結状態で圧縮されないように構成されているから、各環状シール部4,5,6の圧縮によるシール機能の発揮に影響せず、ガスケット1の長期のシール機能が良好に維持される。さらに、3個の環状シール部4,5,6が連結部7,8によって連結されて一体とされているから、これらを個々に作製する場合に比べて、保管性、輸送性に優れ、且つ、前記シリンダブロック2及びオイルクーラ3に対する組み付け作業が効率的になされる。
【0026】
図3(a)(b)は、
図2のB部における接合部9及びその近傍部の変形例を模式的に示す拡大図である。
図3(a)(b)は、環状シール部4,5を構成するゴム材料とは異なる材料で接合部9が構成される2つの具体例を示している。(a)図の例は、環状シール部4(連結部片7a)を構成するゴム材料と、環状シール部5(連結部片7b)を構成するゴム材料との混合物を、前記同時成型の際に、金型の接合部9に対応する部位に事前に配置しておき、前記各ゴム材料を同時に注入・加硫することによって、接合部9を形成したことを示している。また、(b)図の例は、環状シール部4(連結部片7a)を構成するゴム材料と、環状シール部5(連結部片7b)を構成するゴム材料とは異なる別のゴム材料を、前記同時成型の際に、金型の接合部9に対応する部位に事前に配置しておき、前記各ゴム材料を同時に注入・加硫することによって、接合部9を形成したことを示している。(a)図の例の場合、環状シール部4,5を構成するゴム材料の混合物により接合部9が形成されるから、環状シール部4,5から延出される連結部片7a,7bとの馴染み性がよく、両連結部片7a,7bが接合部9を介して強固に接合される。(b)図の例の場合、環状シール部4,5を構成するゴム材料とは異なる第3のゴム材料によって、接合部9が形成されるから、環状シール部4,5を構成するゴム材料の双方に馴染み性の良い第3のゴム材料
を選択することにより、連結部片7a,7bを接合部9を介して強固に接合させることができる。接合部9は、環状シール部4,5のシール機能に関与しない部位に設けられるから、シール性を考慮することなく接合強度が強い材料を接合部9に適用させることによって、シール性の低下を来すことなく、接合部9の強度を強化することができる。
図2に示す接合部10も、同様に構成することにより、連結部片8a,8bの接合を強固に行うことができる。
なお、
図3(a)(b)における接合部9を構成する材料を、環状シール部4,5を構成するゴム材料による同時成型の際に、第3の材料として同時に注入して、接合部9を構成しても良い。
【0027】
図4(a)(b)(c)は、
図2のB部における接合部9及びその近傍部の別の変形例を模式的に示す拡大図である。
図4(a)(b)(c)は、一対の連結部片7a,7bが、前記接合部9において、当該連結部片7a,7bの断面積よりも大きな面積を以って接合される3つの具体例を示している。(a)図の例は、連結部片7a,7bが互いに滑り込むような状態で接合されて接合部9が形成されている。また、(b)図の例は一方の連結部片7bが他方の連結部片7aに食い込むような状態で接合されて接合部9が形成されている。(c)図の例は、前記一対の連結部片7a,7bが、前記接合部9の直近の互いに対向する片側に、くびれ部7aa,7baを有した形状とされている。このようなくびれ部7aa,7baは前記同時成型に用いる金型のキャビティの形状によって形成される。この同時成型の際に、環状シール部4,5を構成するゴム材料の流入圧が互いに行き違い状に作用し、結果として図に示すように連結部片7a,7bが互いに滑り込むような状態で接合された接合部9が形成されている。
【0028】
図4(a)(b)(c)に示すような接合態様によって、当該連結部片7a,7bが、実質的にそれぞれの断面積よりも大きな面積を以って接合されている。より具体的には、前記接合部9の接合界面9aの面積が、連結部片7a,7bの横断線a,bに沿った断面積(図例では両者は同じ)より大きくなるよう連結部片7a,7bが接合されている。このように、連結部片7a,7bが、大きな面積を以って接合されていると、接合強度がより強化される。また、(c)図の例では、前記くびれ部7aa,7baを設けることにより、連結部7にかかる応力がくびれ部7aa,7baに集中し、接合部9に加わる応力を緩和させることができる。結果として接合部9の耐性を向上させることができる。
図2に示す接合部10も、同様に構成することにより、連結部片8a,8bの接合を強固に行うことができる。
【0029】
図5は本発明の第2の実施形態に係るガスケットを示し、
図6及び
図7はその変形例を示している。本実施形態のガスケット1Aも、環状シール部4,5,6と、当該環状シール部4,5同士、及び、環状シール部4,6同士をそれぞれ連結する連結部7,8とを含む。前記複数の環状シール部4,5,6のうち、1つの環状シール部4とこれに連結される2つの環状シール部5,6とが互いに異なる材料によって構成され、前記連結部7,8に前記異なる材料の接合部9,10を有している。そして、前記接合部9及び接合部10が、それぞれ前記各一対の連結部片7a,7b及び連結部片8a,8bの断面積より大きな断面積の拡大部9A,10Aからなる。
【0030】
このガスケット1Aも、第1の実施形態のガスケット1と同様に、環状シール部4,5(6)毎に適した2種のゴム材料を同時成型することによって得られる。
図5に示す拡大部9A,10Aは平面形状が略円形であり、前記同時成型の際に、金型におけるこの拡大部9A,10Aに相当する部位のキャビティで、異なるゴム材料同士が互いに向き合うように合体して一部が混合する。このとき、双方のゴム材料同士は、当該キャビティにおいて、大きな対向面を以って合体するから、加硫硬化後の接合面積が増大し、接合が強固になされる。また、前記同時成型の際に、前記双方のゴム材料の流入強度が前記キャビティの広がりによって緩和され、一方のゴム材料が他方のゴム材料側に侵入することが抑制される。
【0031】
前記のように構成されるガスケット1Aも、
図5に示すように、オイルクーラ3の各環状凹溝3d、3e,3f及び連結凹溝3g,3hに嵌め込まれ、シリンダブロック2(
図2参照)とオイルクーラ3とが合体され締結される。そして、ガスケット1Aは、シリンダブロック2とオイルクーラ3との間に、前記と同様に圧縮状態で介装され、これによって、シリンダブロック2とオイルクーラ3とが密封される。前記連結凹溝3g,3hには、前記拡大部9A,10Aを受け入れ可能な略円形の幅広部3ga、3haが形成されている。
【0032】
図6(a)(b)(c)は、第2の実施形態のガスケット1Aの変形例であって、
図5のC部に対応する部分を模式的に示す拡大図である。(a)図の例は、拡大部9Aの形状が連結部7の長手方向に長辺が沿う略長方形状であり、
図5に示す例と同様の効果を奏する。(b)図の例は、拡大部9Aの形状が
図5に示す例と同様に略円形状とされているが、前記一対の連結部片7a,7bは、前記拡大部9Aの対向する周辺部直近において、前記それぞれの環状シール部4,5からの延出方向が、円形の拡大部9Aの接線方向に沿い、互いに行き違い状で略平行関係となるよう形成されている。このような連結部片7a,7bと拡大部9Aとの形状的特性により、前記のように異なるゴム材料を同時成型してガスケット1Aを成型する際、双方のゴム材料は、金型の拡大部9Aに相当する部位のキャビティに対し、(b)図の2点鎖線のような動線を描いて流入する。その結果、前記異なるゴム材料は当該キャビティに同方向に渦流状態で流入して混合し合い、加硫硬化後は極めて強固に接合した接合部9が得られる。
【0033】
図6(c)の例は、拡大部9Aの形状が(a)図に示す例と同様に略方形状とされているが、前記一対の連結部片7a,7bは、前記拡大部9Aの対向する周辺部直近において、前記それぞれの環状シール部4,5からの延出方向が、長方形の拡大部9Aの長辺方向に沿い、互いに行き違い状で略平行関係となるよう形成されている。この場合も、(b)図の例と同様に、同時成型時に、異なるゴム材料が、金型の拡大部9Aに相当する部位のキャビティに同方向に渦流状態で流入して混合し合い、加硫硬化後は極めて強固に接合した接合部9が得られる。
図6(b)(c)の例は、
図5の例或いは
図6(a)の例における作用効果に加え、さらに前記の作用効果(渦流状態での混合)を奏するものであり、望ましく採用される。また、
図6(a)(b)(c)に示す例を、
図5に示す接合部10においても同様に構成することにより、連結部片8a,8bの接合を強固に行うことができる。
【0034】
図7(a)(b)は、第2の実施形態のガスケット1Aの別の変形例であって、
図5のC部に対応する部分を模式的に示す拡大図である。この2つの例は、いずれも接合部が波形状の拡大部9Aからなり、この波形の頂部間において、実質的に接合部9が幅広となって拡大部9Aが構成される。また、この波形の拡大部9Aの形成に伴い、
図4(c)の例と同様に、一対の連結部片7a,7bが、前記接合部9の直近の互いに対向する片側に、くびれ部7aa,7baを有した形状とされている。このような拡大部9Aの波形の形状と、くびれ部7aa,7baを有した形状とにより、前記一対の連結部片7a,7bは、前記拡大部9Aの対向する周辺部直近において、前記それぞれの環状シール部4,5からの延出方向が、互いに行き違い状に形成されている。
【0035】
従って、
図6(b)(c)の例と同様に、前記のように異なるゴム材料を同時成型してガスケット1Aを成型する際、双方のゴム材料は、金型の拡大部9Aに相当する部位のキャビティに対し、図の2点鎖線のような動線を描いて流入する。その結果、前記異なるゴム材料は互いに対向位置から当該キャビティに同方向に渦流状態で流入して混合し合い、加硫硬化後は極めて強固に接合した接合部9が得られる。さらに、くびれ部7aa,7baの存在により、
図4(c)の例と同様に、連結部7にかかる応力がくびれ部7aa,7baに集中し、接合部9に加わる応力を緩和させることができる。結果として接合部9の耐性を向上させることができる。
図7(a)(b)の例も、
図5の例或いは
図6(a)の例における作用効果に加え、さらに前記の作用効果を奏するものであり、望ましく採用される。また、
図7(a)(b)に示す例を、
図5に示す接合部10においても同様に構成することにより、連結部片8a,8bの接合を強固に行うことができる。
【0036】
図8(a)〜(d)は、本発明のガスケットの
図1に対応する断面形状の他の形態の例を示す図である。これらは、環状シール部の断面形状の種々の形態と、環状シール部に対する連結部の延出位置の種々の態様を示しており、前記第1及び第2の実施形態のいずれにも適用されるものである。(a)図に示す例は、環状シール部4,5の断面形状が略円形状で、連結部7を構成する連結部片7a,7bが、環状シール部4,5の前記シリンダブロック2とオイルクーラ3との前記締結方向の略中間位置から延出されている。また、(b)(c)(d)図に示す例は、環状シール部4,5の断面形状が略長方形であり、その長辺が前記締結方向に向くよう形成されている。そして、(b)図に示す例では、前記連結部片7a,7bが、環状シール部4,5の前記締結方向の略中間位置から延出されている。また、(c)図に示す例では、前記連結部片7a,7bが、環状シール部4,5の前記締結方向の上部位置(前記各環状凹溝3d〜3fの底部側位置)から延出されている。さらに、(d)図に示す例では、前記連結部片7a,7bが、環状シール部4,5の前記締結方向の下部位置(前記各環状凹溝3d〜3fの開口部側位置)から延出されている。
これらの種々の形態は、製品仕様や成型のし易さ等を勘案して適宜選択採用される。また、
図2及び
図5に示す環状シール部4,6及び連結部8における断面形状においても同様に適用し得ることは言うまでもない。さらに、環状シール部の断面形状は、これらの例に限らず、例えば、上下又は左右非対称な形状であっても良い。
【0037】
図9(a)(b)は本発明のガスケットの外形状の他の例を示す平面図であり、前記第1及び第2の実施形態のいずれにも適用されるものである。これらは、前記シール対象の2部材におけるシール対象部位の形状やその配置関係に応じて本発明のガスケットの形状が定められることを示している。従って、図示の形状に限らず、他の形状も可能であり、また環状シール部の個数も、3個に限らず、2個或いは4個以上であっても良い。ここでは、前記実施形態と共通部分に同一の符号を付し、個々の説明を省略する。
【0038】
図10は、発明のガスケットの外形状のさらに他の例を示す平面図であり、この例も前記第1及び第2の実施形態のいずれにも適用されるものである。この例のガスケット1は、大きな環状シール部4と、該環状シール部4の環内に配置された小さな環状シール部5とにより構成される。この2個の環状シール部4,5は、前記と同様に異なるゴム材料からなり、それぞれの連結部片7a,7bが接合部9を介して接合された連結部7によって連結されている。このような、ガスケット1においても、前記と同様の効果が得られる。
【0039】
図11(a)〜(e)は、
図2におけるD−D線矢視部の種々の形状を示す断面図であり、前記第1及び第2の実施形態のいずれにも適用されるものである。これらの例は、各連結部における連結部片の断面形状の取り得る形状の例を示している。連結部は、本発明のガスケットのシール機能に関与しない部分であるから、シール性よりも連結強度や、成型のし易さ、或いは取扱い性等を勘案してこれらの形状が適宜選択される。
【0040】
なお、前記各実施形態では、環状シール部4,5,6がいずれも異なるゴム材料からなる例について述べたが、求められる品質が共通する連結関係の環状シール部を含む場合は、この連結関係の環状シール部を、同じゴム材料からなるものとしても良い。また、2部材として、シリンダブロック2及びオイルクーラ3を例に採って述べたが、これに限定されず、複数のシール対象部位を有し、これらの部位におけるシール対象媒体に求められるガスケット材料の品質が異なる場合は、本発明のガスケットが好ましく適用される。さらに、図示の接合部では、便宜上異なるゴム材料同士が明確な境界面で接合しているように表しているが、実際には、接合部はある程度幅のあるもので、このような明確な境界面を有するものではない。さらにまた、ガスケットを構成する材料がゴム材料である例について述べたが、軟質の合成樹脂等を含む各種エラストマーであっても良い。