(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明のガイドワイヤの第1の態様に用いられるコイル体の表面を模式的に示した正面図である。
図2は、巻回してコイル体とする前の撚線の状態を模式的に示した正面図である。
図3は、
図2で示した撚線の横断面図である。
【0015】
本発明のガイドワイヤの第1の態様に用いられるコイル体1は、複数の素線を撚り合わせた撚線11を螺旋状に巻回してなる。
【0016】
上記撚線11は、複数の素線を撚り合わせてなる。撚線11を構成する素線の数は、好ましい下限は3本であり、好ましい上限は8本、より好ましい上限は6本である。
図1、
図2及び
図3では、撚線11は5本の素線111、112、113、114及び115から構成されており、その中心部には芯線は存在せず、第1の空隙116を有している。また、撚線を構成する素線の数は、
図4に示すように4本であるのが最も好ましい。
図4では、撚線21は、4本の素線211、212、213及び214から構成されており、その中心部には芯線は存在せず、第1の空隙215を有している。
【0017】
さらに、
図7のように、異なる直径を有する素線から撚線を構成してもよい。
図7では、撚線31は、略同じ直径を有する第1の素線311、312、313及び314を有し、さらに、第1の素線の間に、第1の素線よりも小さい直径を有する第2の素線315、316、317及び318を有しており、その中心部には芯線は存在せず、第1の空隙319を有している。このような撚線31は、第1の素線311、312、313及び314の間の隙間が第2の素線315、316、317及び318で埋められているので、撚線31を螺旋状に巻回してコイル体とした後に、コイル体を接合するためにロウ材や接着剤などを使用する場合や、コイル体をコーティング材で被覆する場合であっても、ロウ材、接着剤、コーティング材等が第1の素線311、312、313及び314間の隙間を通って、撚線31の中心部の第1の空隙319に侵入し難くなる。
図7のように、異なる直径を有する素線から撚線を構成する場合、第1の素線の数は、好ましい下限は3本であり、好ましい上限は8本、より好ましい上限は6本であり、4本であるのが最も好ましい。第2の素線の数は、第1の素線間に対応する数とするのが好ましい。
【0018】
上記範囲内の本数の素線を用いることで、得られる撚線11、21、31の中心部に第1の空隙116、215、319が確実に形成されるとともに、撚線11、21、31の形状保持性にも優れたものとなる。また、撚線11、21、31は螺旋状に巻回してコイル体とされるが、撚線11、21、31をコイル体とした際、コイル体の表面に生じる凹凸が少なく、このようなコイル体を用いて得られるガイドワイヤの先端部を血管などの管壁に沿って滑らかに摺動させ易くなる。
【0019】
撚線11、21、31は、複数の素線を撚り合わせることで形成されている。その撚り合わせ方等は、得られる撚線11、21、31が中心部に第1の空隙116、215、319を有する中空状とされていれば、特に限定されないが、撚線11、21、31の形状保持性、形状の均一性、得られる撚線の表面の平滑性等が向上するので、複数の素線を同じピッチで、同じ方向の螺旋状に撚り合わせられているのが好ましく、隣り合う素線をみた場合に、撚り合わせる方向にある素線の上に、もう一方の素線をかぶせるようにして撚り合わせるのが好ましい。
【0020】
図2を用いてより詳細に説明する。
図2に示しているように、撚線11は、5本の素線111、112、113、114及び115から構成され、5本の素線が、同じ方向、
図2であれば図示左側に向かって左回りに螺旋状に撚り合わされてなる。より詳しくは、ある任意の点で、5本の素線は図示左側に向かって左回りに素線111、112、113、114及び115の順に円状に並んでおり、任意の1本の素線を、左回り方向(撚り合わせる方向)に隣り合う素線の上にかぶせるように撚り合わされている。要するに、ある任意の点で、素線114の左回り方向には素線115が位置しているが、素線115の上に素線114を撚り合わせ、次に素線114の上に素線113を撚り合わせ、さらに素線113の上に素線112を撚り合わせ、素線112の上に素線111を撚り合わせ、また、素線111の上に素線115を撚り合わせるということを繰り返すことで、中心に芯線がなく、中心部に第1の空隙116を有する中空状の撚線11が得られる。
【0021】
上記では5本の素線を撚り合わせる場合について説明したが、
図4のように4本の素線を撚り合わせる場合や、3本或いは6本以上の素線を撚り合わせる場合、又は
図7に示すように、直径が異なる素線を撚り合わせる場合でも同様である。
【0022】
素線を構成する材料としては、ステンレス鋼、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が挙げられる。複数の素線は、同じ材料から構成されていてもよいし、異なる材料から構成された素線を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
素線の断面形状としては、円形、楕円形、正方形や長方形などの多角形等が挙げられるが、撚り合わせ易く、得られる撚線の形状保持性や、得られる撚線表面の平滑性に優れているので、円形であるのが好ましい。
【0024】
素線の断面形状が円形である場合、
図3及び
図4に示すように、複数の素線の直径は略同じであるのが好ましい。この場合、素線の直径の、好ましい上限は0.05mm、好ましい下限は0.01mmである。また、
図7のように、異なる直径を有する素線から撚線を構成してもよく、その場合、第1の素線311〜314の直径の、好ましい上限は0.05mm、好ましい下限は0.01mmである。
【0025】
上記撚線11、21、31は、その中心に芯線がなく、中心部に第1の空隙116、215、319を有しているので、撚線11、21、31を構成する複数の素線の相対的な位置関係が、撚線11、21、31に加えられた力に応じてずれることが可能である。例えば、撚線11、21、31を螺旋状に巻回する際、直線状或いは曲線状であった撚線11、21、31を螺旋状に変形することとなるが、素線の相対的な位置関係が変形にともなって若干ずれることが可能である。それにより、撚線11、21、31を螺旋状に巻回し易くなるとともに、螺旋状に巻回して得られるコイル体の表面に凹凸が生じ難くなる。また、撚線11、21、31を螺旋状に巻回して得られたコイル体を用いてガイドワイヤとした後も、屈曲した血管内でガイドワイヤを進める場合などはコイル体が若干変形することになるが、その場合も、撚線11、21、31を構成する複数の素線の相対的な位置関係がコイル体の変形にともなって若干ずれ、コイル体の変形に反発する力が抑制される。それにより、コイル体には優れた柔軟性、血管などへの追従性等が発現される。
【0026】
図4、
図5及び
図6は、4本の素線211、212、213及び214からなる撚線21の、相対的な位置関係を説明するための模式的な断面図である。
図4に示した状態にある撚線21が若干変形すると、
図5のように素線211、212、213及び214の相対的な位置関係が、撚線21の変形に応じて若干ずれる。撚線21がさらに変形すると、
図6のように、素線211、212、213及び214の相対的な位置関係がさらにずれる。このように、素線211、212、213及び214の相対的な位置関係が撚線21の変形に応じて若干ずれることで、変形に反発する力が少なくなる。
【0027】
一方、素線211、212、213及び214同士は撚り合わされているので、素線211、212、213及び214の相対的な位置関係が若干ずれても素線211、212、213及び214がほどけて分離されることはなく、撚線21及び撚線21を螺旋状に巻回してなるコイル体2の形状が崩れることはない。
【0028】
上記のように、中心部に第1の空隙116、215、319を有する撚線11、21、31は変形に対する柔軟性に優れているので、このような撚線11、21、31を螺旋状に巻回してなるコイル体は、表面に凹凸が少なく、摺動させ易く、さらに、柔軟性に優れるとともに、血管などへの追従性にも優れている。
【0029】
上記撚線は、螺旋状に巻回されてコイル体とされる。
図1及び
図9に示すように、巻回する撚線11、21同士の間は、撚線11、21同士が密に接触するように巻回される。後述する
図10のように、螺旋状に巻回された撚線21同士が密に接触しておらず、撚線21間に第2の空隙22を有する構成も好ましい。コイル体2を構成する撚線21間に第2の空隙22を有することで、得られるガイドワイヤの先端部の柔軟性、血管などへの追従性等がさらに向上するとともに、ガイドワイヤの先端部が血管などの壁面や狭窄部に接触した際にコイル体2に生じる微細な振動を手技者の手元まで伝える伝達性がより向上する。
【0030】
また、撚線11、21を構成する素線の撚り合わせ方向と、コイル体1、2を構成する撚線11、21の巻回方向との関係は特に限定されない。左回りに撚り合わされた撚線11、21を螺旋状に巻回してコイル体1、2を形成する場合、コイル体1、2は右回り或いは左回りのいずれの螺旋状であってもよく、また、右回りに撚り合わされた撚線11、21を螺旋状に巻回してコイル体1、2を形成する場合も、コイル体は右回り或いは左回りのいずれの螺旋状であってもよい。
【0031】
図8は、本発明のガイドワイヤの第1の態様を模式的に示した断面図である。図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が手技者によって操作される基端側(近位側)である。
【0032】
ガイドワイヤ4は、コアシャフト5と、コアシャフト5の先端部51を覆うコイル体2とを備えている。コイル体2は、上記撚線21を螺旋状に巻回したものである。
ガイドワイヤ4は、可撓性を有する長尺体であり、その長さ及び径は使用範囲に応じて適宜設定される。長さの一般的な上限は4000mm、好ましい上限は2500mmであり、長さの一般的な下限は500mm、好ましい下限は1000mmである。第1の態様においては、ガイドワイヤ4の長さは約1800mmとされている。また、ガイドワイヤ4の横断面における最大径は、一般的には0.05mm以上、0.5mm以下である。
【0033】
上記コアシャフト5は、可撓性を有する長尺体であり、ガイドワイヤ4の長さ及び最大径に応じた長さ及び最大径を有している。コアシャフト5の横断面の形状は、円形、楕円形、正方形や長方形などの多角形等のいずれでもよいが、円形が一般的であり、好ましい。
【0034】
コアシャフト5は、治療、検査等の際に体内に挿入される先端側に位置する先端部51、及び先端部51の基端側に位置する本体部52からなる。
【0035】
先端部5
1は、先端側に向かって縮径され、先端に向かって柔軟性が高められている部分であり、ガイドワイヤ4が心臓の血管の治療に用いられるガイドワイヤである場合は、一般的には、ガイドワイヤ4の最先端から、基端側の軸方向に400mmまでの範囲に先端部51が設けられる。例えば、先端部51は、先端側に向かって縮径するテーパー部511を有することにより、先端に向かって徐々に細径化されている。テーパー部511の先端側には、軸方向に略同じ径で延びる細径部512を有している。細径部512の最先端は、コイル体2の最先端と接合手段を介して接合されている。接合手段は、ガイドワイヤ4の最先端が血管等の壁面を傷つけないように、滑らかな形状を有するものであれば特には限定されず、従来公知の接合方法が用いられる。一般的には、
図8に示すように、滑らかな先端面を有する先端チップ61を介して接合されている。
なお、コアシャフトのテーパー部は、上記のように1つに限定されるものではなく、複数形成されていてもよい。
【0036】
上記先端チップ61は、血管等を傷つけないように、半球状などの曲面からなる滑らかな先端面を有しており、コアシャフト5の最先端及びコイル体2の最先端を接合するものであれば、その形成方法は特には限定されない。例えば、コアシャフト5、コイル体2等の部材を組み合わせた後、最先端にロウ材を供給して、コアシャフト5の最先端及びコイル体2の最先端をロウ付けにより接合し、用いたロウ材により先端チップ61を形成させるのが好ましい。
【0037】
図8のガイドワイヤ4においては、コアシャフト5の先端部51の最先端は先端チップ61に接合されているが、先端部51の最先端を先端チップ61から離間させ、接合しない構成としてもよい。その場合は、安全ワイヤ等で、コアシャフト5と先端チップ61とを接続しておくことが好ましい。また、コアシャフト5の先端部51の最先端と先端チップ61とを接合する場合であっても、さらに安全ワイヤ等でコアシャフト5と先端チップ61とを接続してもよい。
【0038】
コアシャフト5の本体部52は、先端部51の基端から、軸方向に略同じ径で延びる部分であり、コアシャフト5の先端部51以外の部分である。本体部52の中の先端側は、治療や検査の際に先端部51に続いて体内に挿入されるが、基端側は体外に露出したままとされる。
【0039】
コアシャフト5を構成する材料としては、従来公知の材料が使用され、ステンレス鋼、Ni−Ti合金などの超弾性合金、ピアノ線等が挙げられる。中でも、ステンレス鋼が好ましい。コアシャフト5は、全体が同じ材料で構成されていてもよいし、部分的に構成材料が異なっていてもよい。
【0040】
コイル体としては、4本の素線から構成され、中心部に第1の空隙215を有する上記撚線21を螺旋状に巻回したコイル体2を用いているが、上記撚線11から構成されたコイル体1を用いることもできる。コイル体2は、その最先端は先端チップ61に接合され、その基端は、コアシャフト5の先端部51の基端付近で、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合方法によりコアシャフト5に接合されている。
【0041】
コイル体2は、
図8に示すように、コアシャフト5の先端部51の外周を覆うように設けられている。コイル体2は、全てが撚線21から形成されていてもよく、一部が撚線21から形成されていてもよい。コイル体2の一部を撚線21で形成する場合は、少なくともコイル体2の最先端領域、好ましくは少なくとも最先端から20mmまでの範囲、より好ましくは少なくとも最先端から30mmまでの範囲は撚線21から形成されているのが好ましい。尚、コイル体2の一部を撚線21から形成する場合、その他の部分には従来公知のコイル体が適宜用いられる。
【0042】
図9は、
図8のA部の拡大図である。コアシャフト5の先端部51の外周にコイル体2が配置されている。コイル体2は、撚線21が螺旋状に巻回されてなる。撚線21は、4本の素線211、212、213及び214が撚り合わされてなり、その中心部に第1の空隙215を有している。
撚線21は、隣り合う撚線21同士が接触するように、密に螺旋状に巻回されているが、
図10に示すように、隣り合う撚線21同士が接触せず、撚線21の間に第2の空隙22が形成されている構成も好ましい。
【0043】
上記ガイドワイヤ4の製造方法は、特には限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、複数の素線211、212、213及び214を撚り合わせて撚線21を形成し、得られた撚線21を所望の径を有する芯材に螺旋状に巻回した後、芯材を抜くことでコイル体2を作製する。その後、コイル体2の中に、所望の形状に成形したコアシャフト5を挿通させる。コイル体2とコアシャフト5との位置を合わせ、コイル体2の基端とコアシャフト5の外周とを、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合方法により接合し、その後、コイル体2の先端とコアシャフト5の先端とを、ロウ材等で接合する。コイル体2の先端とコアシャフト5の先端とをロウ材等で接合する際に、先端チップ61を形成する。
【0044】
図11は、本発明のガイドワイヤの第2の態様を模式的に示した断面図である。図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が手技者によって操作される基端側(近位側)である。
ガイドワイヤ7は、心臓の血管の治療等に用いられるものであり、コアシャフト8と、コアシャフト8の先端部81を覆う第1のコイル体91と、コアシャフト8の先端部81を覆い、かつ、第1のコイル体91の基端に接続された第2のコイル体92と、第1のコイル体91と第2のコイル体92との内部に配置され、コアシャフト8の先端部81を覆う第3のコイル体93とを備えている。
【0045】
上記コアシャフト8は、第1の態様の上記コアシャフト5と同様のものが使用され、コアシャフト5と同様に、治療、検査等の際に体内に挿入される先端側に位置する先端部81、及び先端部81の基端側に位置する本体部82からなる。
【0046】
図11のガイドワイヤ7においては、先端部81は、基端側から順に、先端側に向かって縮径する第1のテーパー部811、軸方向に略同じ径で延びる第1の細径部812、先端側に向かって縮径する第2のテーパー部813及び軸方向に略同じ径で延び、先端チップ62に接合された第2の細径部814を有しているが、上記コアシャフト5と同様に、このような構成に限定されるものではない。
【0047】
また、先端部81の最先端は先端チップ62に接合されているが、第1の態様と同様に、先端部81の最先端を先端チップ62から離間させ、先端部81と先端チップ62とが接合していない構成としてもよい。その場合は、安全ワイヤ等で、コアシャフト8と先端チップ62とを接続しておくことが好ましい。
【0048】
上記第1のコイル体91は、コアシャフト8の先端部81のうち、最先端を含む先端側の外周を覆っており、複数の素線を撚り合わせた撚線911を螺旋状に巻回してなる。
【0049】
第1のコイル体91は、その先端は先端チップ62に接合され、その基端は、境界部63にて、第2のコイル体92の先端及び第3のコイル体93の中間部に接合されている。先端チップ62は、第1の態様の上記先端チップ61と同様の構成を有しており、第1のコイル体91と先端チップ62との接合については、第1の態様のコイル体2と先端チップ61との接合と同様である。境界部63における接合は、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合方法が用いられる。
【0050】
上記撚線911としては、第1の態様の撚線21と同様のものが使用される。要するに、第1のコイル体91は、第1の態様のコイル体2と同様の構成を有している。
図11では、撚線911を構成する素線は4本の場合を示しているが、第1の態様と同様に、これに限定されるものではない。
【0051】
第1のコイル体91は、コアシャフト8の先端部81のうち、最先端を含む先端側の外周を覆っており、ガイドワイヤ7の最先端から基端側の軸方向に、好ましくは少なくとも20mmまでの範囲、より好ましくは少なくとも30mmまでの範囲を覆っているのが好ましい。
【0052】
上記第2のコイル体92は、第1のコイル体91の基端に連続して設けられ、第2のコイル体92の外径は、第1のコイル体91の基端の外径と略同じとなるように構成されている。第2のコイル体92は、コアシャフト8の先端部81のうち、第1のコイル体91が覆っていない部分の外周を覆っている。第2のコイル体92の先端は、境界部63を介して第1のコイル体91の基端及び第3のコイル体93の中間部に接合されており、第2のコイル体92の基端は、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合手段により、コアシャフト8の先端部81の基端付近に接合されている。
【0053】
第2のコイル体92は、第1のコイル体91と同様のコイル体から形成されていてもよいが、ガイドワイヤ7の使用範囲などに応じて、従来公知の他のコイル体から適宜選択して用いるのが好ましい。従来公知の他のコイル体としては、素線を螺旋状に巻回したコイル体、複数の素線からなり、芯線を有する撚線を螺旋状に巻回したコイル体等が挙げられる。
【0054】
第2のコイル体92に用いられる素線を構成する材料としては、ステンレス鋼、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が挙げられる。
【0055】
上記第3のコイル体93は、第1のコイル体91及び第2のコイル体92の内部に配置され、コアシャフト8の先端部81のうち、最先端を含む先端側の外周を覆っている。第3のコイル体93の最先端は、先端チップ62に接合され、基端は、境界部63と第2のコイル体92の基端との間の位置で、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合方法によりコアシャフト8に接合されている。第3のコイル体93と先端チップ62との接合は、第1の態様のコイル体2と先端チップ61との接合と同様である。
【0056】
第3のコイル体93は、第1のコイル体91及び第2のコイル体92の内部に位置しており、いわゆるインナーコイルとして従来から用いられているものである。第3のコイル体93は、第1のコイル体91と同様のコイル体から形成されていてもよいが、ガイドワイヤ7の使用範囲などに応じて、従来公知のインナーコイルから適宜選択して用いるのが好ましい。従来公知のインナーコイルとしては、複数の素線からなり、芯線を有する撚線を螺旋状に巻回したコイル体、素線を螺旋状に巻回したコイル体等が挙げられる。
【0057】
第3のコイル体93に用いられる素線を構成する材料としては、ステンレス鋼、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が挙げられる。
【0058】
上記境界部63は、第1のコイル体91の基端、第2のコイル体92の先端及び第3のコイル体93の中間を接合しており、コアシャフト8には接合されていない。このように、第1〜3のコイル体91、92及び93のみを境界部63を介して接合することで、境界部63により、第1〜3のコイル体91、92及び93の柔軟性が損なわれることがなく、かつ、第1〜3のコイル体91、92及び93同士は接合されているので、ガイドワイヤ7は剛性、回転トルク伝達性等に優れている。
【0059】
第2の態様のガイドワイヤ7は、コアシャフト8の最先端を含む先端部81の外周が第1のコイル体91で覆われているので、ガイドワイヤ7の先端部は非常に優れた柔軟性及び血管などへの追従性を有するとともに、ガイドワイヤ7の先端部が血管などの壁面や狭窄部に接触した際に第1のコイル体91に生じる微細な振動を手技者の手元まで伝える伝達性に優れている。また、第1のコイル体91の基端に第2のコイル体92が接続されているので、第2のコイル体92を使用範囲や所望の物性に応じて適宜選択することで、柔軟性、血管などへの追従性、回転トルク追従性、剛性等を適宜調整し易い。また、第3のコイル体93が第1のコイル体91及び第2のコイル体92の内部に配置されているので、第3のコイル体93を使用範囲や所望の物性に応じて適宜選択することで、優れた回転トルク追従性を保持しつつ、先端部の柔軟性を向上させ易い。さらに、境界部63は、第1のコイル体91の基端、第2のコイル体92の先端及び第3のコイル体93の中間のみを接合し、コアシャフト8は接合されていないので、境界部63により、柔軟性、回転トルク追従性等が損なわれることがない。
【0060】
上記ガイドワイヤ7の製造方法は、特には限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、複数の素線を撚り合わせて、中心部に第1の空隙を有する撚線911を形成し、得られた撚線911を所望の径を有する芯材に螺旋状に巻回した後、芯材を抜くことで第1のコイル体91を作製する。また、同様の方法により、別途素線又は撚線を螺旋状に巻回して第2のコイル体92及び第3のコイル体93を作製する。次に、第3のコイル体93の中に、所望の形状に成形したコアシャフト8を挿通させ、第3のコイル体93とコアシャフト8の位置を合わせた後、第3のコイル体93の基端とコアシャフト8とを、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合方法により接合する。その後、第2のコイル体92の中に、第3のコイル体93及びコアシャフト8を挿通させ、第2のコイル体92とコアシャフト8との位置を合わせた後、第2のコイル体92の基端とコアシャフト8とを、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の整合方法により接合する。さらに、第1のコイル体91の中に、第3のコイル体93及びコアシャフト8を挿通させ、第2のコイル体92の先端と第1のコイル体91の基端との位置を合わせ、第1のコイル体91の基端、第2のコイル体92の先端及び第3のコイル体93の中間部を、ロウ付け、はんだ付け、接着剤による接着等の従来公知の接合方法により接合し、境界部63を形成する。最後に、第1のコイル体91の最先端と第3のコイル体93の最先端とコアシャフト8の最先端とをロウ材で接合する。この時、ロウ材からなる先端チップ62が形成される。
【0061】
次に、第1の態様のガイドワイヤ4及び第2の態様のガイドワイヤ7を、治療又は検査に用いる方法について、心臓の冠状動脈に形成された狭窄部に対して使用する場合を例に用いて説明する。
【0062】
ガイドワイヤ4、7は、大腿部等から動脈に挿入され、大動脈弓を通過し、治療目的部位である冠状動脈に形成された狭窄部に向かって進められる。この時、医師等の手技者から、ガイドワイヤ4、7に押し込み力や回転力が加えられる。ガイドワイヤ4、7は、先端部の柔軟性、血管への追従性等に優れているので、複雑に湾曲する血管であっても、血管壁を傷つけることなく滑らかに血管に追従させることができ、スムーズに狭窄部に向けて進行させることができる。また、ガイドワイヤ7は、第1のコイル体91、第2のコイル体92及び第3のコイル体93を有しているので、このような押し込み力が加えられた際の挿入性や、回転力が加えられた際の回転トルク伝達性等を、第2のコイル体92及び第3のコイル体93を適宜選択することにより調整し易い。さらに、ガイドワイヤ4、7は、先端部が血管などの壁面に接触して摺動する際の抵抗、先端部が狭窄部に突き当たった際の抵抗等の微細な情報の伝達性に優れているので、先端部に加わる抵抗を手技者が感知しつつガイドワイヤを進めることができる。
【0063】
ガイドワイヤ4、7が治療目的部位に到達した後、例えば、バルーンカテーテル、治療部材を導入するためのカテーテル等の治療用カテーテルをガイドワイヤ4、7に沿って体内に挿入することで、狭窄部を拡張する等の治療が行われる。
【0064】
図12は、比較のために、中心部に空隙を有さない撚線、即ち中心に芯線を有する従来公知の撚線から形成したコイル体の表面を模式的に示した正面図である。
コイル体10は、撚線101が螺旋状に巻回されてなる。
【0065】
撚線101は、ステンレス鋼からなり、断面形状が直径約0.03mmの円形である素線4本と、ステンレス鋼からなり、断面形状が直径約0.015mmの円形である芯線(素線)1本を用い、芯線の周りに他の4本の素線を螺旋状に撚り合わせてなる。芯線を用いている以外は、上記実施の態様1及び2と同様に撚り合わせられた撚線である。
中心に芯線を有する撚線101から形成されたコイル体10の表面は
図12の通りであり、
図1に示したような、本発明で用いるコイル体の表面と比較して、表面に凹凸が多く生じている。