【実施例1】
【0042】
実施例1では、隙間縮減手段がテーパ面とされるステータコア保持手段20を、
図1から
図7を参照して説明する。
図1はステータコア保持手段20の構成を説明する断面図、
図2はステータコア保持手段を含んだコイル挿入装置1の全体構成を説明する側面図、
図3はステータコア90の斜視図、
図4はステータコアをブレード軸11に装嵌させる工程を説明する工程図、
図5は遊んだ隙間81が縮減された状態のステータコア保持手段の構成を説明する断面図、
図6は隙間縮減手段50の構成を説明する断面図、
図7は遊んだ隙間81が縮減される工程を説明する工程図である。
【0043】
まず、
図2を参照して、コイル挿入装置1の全体構成を説明する。コイル挿入装置1は、ステータコアにコイル束とウェッジとを挿入させるコイル挿入装置本体10と、ステータコアを保持するステータコア保持手段20とから構成されている。ステータコア保持手段20は、隙間縮減手段50が備えられる点以外については従来と同じ構成とされている。
【0044】
コイル挿入装置本体10は、環状に配列されたブレード軸11と、その外周に接するように配列されたウェッジガイド軸12と、ブレード軸に沿って摺動されるストリッパ14と、ストリッパと係合してストリッパをステータ軸方向に延伸させる延伸軸15と、ウェッジガイド軸に沿って摺動されるウェッジプッシャー16とから構成されている(
図1参照)。延伸軸15とウェッジプッシャーの駆動手段は図上省略している。
【0045】
次に、
図3を参照して、ステータコア90について説明する。
図3は、スロット絶縁紙97が装着された状態のステータコアの一例を示している。ここでは、理解を容易にするため1か所のスロット99にのみウェッジ96を挿入した状態を示している。
【0046】
ステータコア90は、薄い電磁鋼板91が積層されて構成されるため、同一の規格寸法とされるステータコアであっても、その積層厚さには寸法誤差が発生する。この寸法誤差がステータコアの積層厚さの個体差とされ、積層厚さの最大値と最小値との差がステータコアの公差とされる。スロット絶縁紙97は、両端部に襟状に折り返されたカフス部98を備えている。
【0047】
次に、
図1、
図5及び
図6を参照して、ステータコア保持手段20及び隙間縮減手段50の構成を説明する。
図1では理解を容易にするため、ストリッパ14を一部切欠断面図で示すと共に、図中左側のスロットにのみウェッジ96が挿入される位置を破線で示している。
図6では、下方の保持板40、ステータコア90、ブレード軸11及びウェッジガイド軸12を一点鎖線で示している。
図1はステータコア保持手段の構成を説明する説明図、
図5は遊んだ隙間が縮減された状態を説明する説明図、
図6(A)図は隙間縮減手段の構成を説明する平面図、
図6(B)図は
図6(A)図のA−A位置断面を示し、
図6(C)図は
図6(A)図のB−B位置断面を示している。
【0048】
隙間縮減手段50は、上下に対向するように重ねられる被押付テーパ面70を有する被押付部材71と押付テーパ面60を有する押付部材61とを含んだ押圧手段51とされている。各テーパ面の傾斜角度は15度とされているが、緩やかな角度であればよい。被押付テーパ面70と押付テーパ面60は、一対の保持板30,40の間に形成され、ステータコア90の軸芯を挟んで対向するように配置された二組のテーパ面とされている。押付テーパ面60がコイル挿入方向と交差する方向に移動して被押付テーパ面70を押し付けるように、各々のテーパ面はステータコアの軸芯に向かって傾斜されている。押付テーパ面の移動手段は、延伸軸63とエアシリンダー62と、図示していないコンプレッサーを含んでいる。
【0049】
被押付テーパ面70は、上方の保持板30に装着される被押付部材71の外周に外方に向けて拡開するように形成されている。被押付部材71は、コイル挿入作業と干渉しないように、ステータコアの外周縁近傍のみを押圧できるように、中空の円盤形状に形成され、上方の保持板30とステータコア90との間に配置されている(
図6(A)図、
図6(B)図参照)。被押付部材71は、上下方向に摺動可能な可動軸32を介して、上方の保持板の天面に付設された連結部材31と連結され、可動軸32が上下方向に摺動されることにより軸方向に移動可能とされている(
図6(C)図参照)。
【0050】
押付テーパ面60が、被押付テーパ面70に沿って、コイル挿入方向と交差する方向からステータコアの軸芯に向かって移動されることにより、被押付テーパ面70がステータコアの軸方向に沿って下方に押し付けられる。そして、被押付部材71がステータコアの上面に向かって下方に移動し、被押付部材71とステータコアの上面93が接して遊んだ隙間81(
図1参照)が縮減される(
図5参照)。
【0051】
ステータコアの上面93が、隙間縮減手段50によって押し付けられているため、ステータコア90にコイル束95の挿入に伴う大きな摩擦力が作用したとしても、ステータコア90が上方に浮き上がるように移動されることがない。これにより、ウェッジガイド軸の先端13とステータコアの下面94との間に隙間が発生することがなく、コイル線の一部が隙間に滑り込んでスロット絶縁紙97の外側に外れることがない。
【0052】
また、ステータコアの上面93が被押圧部材71によって、その外周縁に沿って均等に押圧されているため、コイル束の挿入に伴う大きな摩擦力が狭い面積の範囲に集中することがない。これにより、積層厚さが薄く変形しやすい小型電動機用のステータコアであっても、電磁鋼板が反るように変形されることがない。
【0053】
下方の保持板40には、ステータコア90の外径よりも大きい外径のステータコア受台41が備えられ、ステータコアが、窪み部42に、水平方向に僅かに位置調整されるように遊嵌された状態で載置される。ステータコア90が窪み部42に載置される際には、側部にある平坦面92(
図3参照)を基準として、その向きが合わせられる。また、ステータコアの下面94と接するようにカフサー44が備えられ(
図6参照)、スロット絶縁紙の下方のカフス部98の損傷を防止している(
図3参照)。
【0054】
次に、
図4を参照して、ステータコア90がブレード軸11に装嵌される工程を説明する。ここでは、理解を容易にするため、ステータコアを破線で示すと共に、ブレード軸11及びウェッジガイド軸12について各2本のみを記載し、他を省略している。
図4(A)図はステータコア90が下方の保持板40に載置された状態を示し、
図4(B)図はステータコア90が一対の保持板に挟まれて保持された状態を示し、
図4(C)図はステータコアをブレード軸に案内するコアガイド21が降下された状態を示し、
図4(D)図はステータコアがブレード軸に装嵌された状態を示している。
【0055】
まず、ステータコア90を下方の保持板40に載置させる(
図4(A)図)。次に、下方の保持板40が所定距離持ち上げられ、上方の保持板30とステータコア90との間に遊んだ隙間があく状態で、ステータコアが一対の保持板30,40に挟まれて保持される(
図4(B)図)。次に、下方の保持板40よりも先行するように、コアガイド21が降下される(
図4(C)図)。次に、遊んだ隙間を維持しながらステータコアが一対の保持板に挟まれた状態で一体に降下される。そして、コアガイド21がステータコア90に先行して、環状に配列されたブレード軸の内方17に装嵌される。最後に、ステータコア90がコアガイド21に案内されて、ブレード軸11に装着される(
図4(D)図)。
【0056】
一連のステータコア装着工程において、ステータコア90は遊んだ隙間81により垂直方向の遊び、窪み部42における水平方向の遊びによって、いずれの方向にも僅かに移動できるように遊嵌された状態で、一対の保持板30,40に保持されている(
図1参照)。そのため、一対の保持板に保持された状態のステータコア90が、ブレード軸が競り合わないように装嵌され、ブレード軸が撓むように変形することが抑止される。
【0057】
次に、
図7を参照して、遊んだ隙間が縮減される工程について説明する。
図7(A)図はステータコアがブレード軸に装嵌された状態を示し、
図7(B)図は押付部材61が延伸されている状態を示し、
図7(C)図は遊んだ隙間81が縮減された状態を示している。
【0058】
まず、上方の保持板30に備えられる被押付部材71の下面と、ステータコアの上面93との間に、遊んだ隙間81があいた状態のまま、ステータコア90がブレード軸11に装嵌される(
図7(A)図)。次に、エアシリンダー62により延伸軸63が延伸され、押付部材61が上方の保持板30の下面に沿って延伸される(
図7(B)図)。そして押付テーパ面60が被押付テーパ面70に沿って移動され、被押付テーパ面70がウェッジガイド軸の先端に向かって押し付けられる。それに伴って被押付部材71が、ステータコアの上面に向かって下方に移動して、遊んだ隙間81が縮減される(
図7(C)図)。
【実施例2】
【0059】
実施例2では、
図8を参照して、隙間縮減手段52が回転楔53からなるステータコア保持手段23を説明する。回転楔とは、軸芯の周りに回転されて押付テーパ面が被押付テーパ面を押し付ける楔をいう。
図8では、軸芯76を一点鎖線で示している。
図8(A)図は遊んだ隙間が縮減される前の状態を示し、
図8(B)図は、回転楔が回転され、遊んだ隙間が縮減された状態を示し、
図8(C)図は、
図8(B)図のA−A位置断面の見上げ図を示している。
【0060】
回転楔53は、被押付部材73と押付部材65とからなっている。被押付部材73には軸芯を挟んで、向かい合う位置に軸芯76の周りに回転される一対の被押付テーパ面72,72が備えられる。押付部材65にも軸芯76を挟んで、向かい合う位置に軸芯76の周りに回転される一対の押付テーパ面64,64が備えられる。押付テーパ面64と被押付テーパ面72は、向かい合うように傾斜され、押付部材73が、一方向に回転された際に、向かい合うテーパ面同士64,72が摺れ合って押付部材65と被押付部材73の距離が変化するようにされている。
【0061】
図8において、押付テーパ面64を上方から看て反時計回りに回転させると、押付テーパ面64は被押付テーパ面72を押し付けて、被押付部材73がステータコアの上面93を押付け、遊んだ隙間81を縮減させる(
図8(B)図参照)。軸芯76の周りに回転される押付部材65は、その周囲に歯部66が備えられ、押付部材の外周位置に設けられた円形歯車67に噛み合うようにされている。円形歯車67は、図示していない駆動手段により回転される。駆動手段は公知の電動機等であればよい。円形歯車67を、筋状に延びる歯車としてもよいことは勿論のことである。ここでは、向かい合う2組のテーパ面により押し付けあうようにしたが、テーパ面の数は限定されない。
【0062】
(その他)
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。