特許第5995406号(P5995406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5995406流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995406
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/02 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   F15B15/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-76996(P2011-76996)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-211625(P2012-211625A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004724
【氏名又は名称】ユニキャリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100000
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 基之
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−299817(JP,A)
【文献】 特開2008−087399(JP,A)
【文献】 米国特許第05037235(US,A)
【文献】 実開昭58−165311(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00−15/28
F16B 7/02 ;7/04
F16B 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブから出退されるピストンロッド先端部に、ブッシュを取り付ける流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置であって、
前記ブッシュに、ピストンロッドの先端部が嵌合される連結穴部を形成するとともに、外周面に雄ねじ部が形成された締結内筒部を設け、
外周面にピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径される受圧テーパ面が形成された3個以上の楔部材をそれぞれ独立して設け、
前記楔部材のピストンロッド先端側より薄肉部に形成された前記締結内筒部の連結穴部の開口部周囲に、前記楔部材のピストンロッド先端側が半径方向から嵌合離脱可能で、前記各楔部材をそれぞれ位置決めして変位を防止する係止穴部を形成し、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部が上部内周面に形成されるとともに、ピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径されて前記楔部材のテーパ面に摺接される加圧テーパ面が下部内周面に形成された締結外筒を設けた
ことを特徴とする流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置。
【請求項2】
シリンダチューブから出退されるピストンロッド先端部に、ブッシュを取り付ける流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置であって、
前記ブッシュに、ピストンロッドの先端部が嵌合される連結穴部を形成するとともに、外周面に雄ねじ部が形成された締結内筒部を設け、
外周面にピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径される受圧テーパ面が形成された3個以上の楔部材をそれぞれ独立して設け、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部が上部内周面に形成されるとともに、ピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径されて前記楔部材のテーパ面に摺接される加圧テーパ面が下部内周面に形成された締結外筒を設け、
前記楔部材のピストンロッド先端側に、周方向両側に突出する凸部を形成し、
前記締結内筒部の連結穴部の開口部周囲に、前記各楔部材のピストンロッド先端側および前記凸部が半径方向から嵌合離脱可能で、前記各楔部材をそれぞれ位置決めして変位を防止する係止穴部を形成した
ことを特徴とする流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置。
【請求項3】
係止穴部は、締結内筒部の表面から裏面側に貫通成形される
ことを特徴とする請求項1または2記載の流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダにより出退されるピストンロッドに対して、ブッシュを取り付けるための取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば油圧シリンダにより出退されるピストンロッドの先端部にブッシュを取り付ける場合、特許文献1のように、ロッド先端部に雄ねじを形成し、ブッシュに形成した雌ねじ穴に嵌合して締め付け、さらにナットを締め付ける二重ナットによる固定式がある。また、たとえばフォークリフトなどのリフトシリンダでは、図5に示すように、ピストンロッド51の先端部に連結ピン53を有するブッシュ52を取り付ける場合、底面にピストンロッドの先端部を嵌合させるロッド嵌合穴52aを形成するとともに、天面にロッド嵌合穴52aの軸心部に連通する締結穴52bを形成する。そしてピストンロッド51の先端面に雌ねじ穴51aを形成しておき、ピストンロッド51の先端部をロッド嵌合穴52aに嵌合させた後、締結ボルト54を、締結穴52bから雌ねじ穴51aに嵌合させて、締め付けることにより、ピストンロッド51とブッシュ52とを締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−74792号(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図5に示す構造では、振動や衝撃荷重、金属疲労などにより締結ボルト54が折損するおそれがあった。また引用文献1では、大型のシリンダの場合、長尺かつ大径で高精度に仕上げられたピストンロッドの先端部周囲に、雄ねじ加工する作業に時間とコストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、十分な強度が得られ、ピストンロッドに対する加工も不要な流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
シリンダチューブから出退されるピストンロッド先端部に、ブッシュを取り付ける流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置であって、
前記ブッシュに、ピストンロッドの先端部が嵌合される連結穴部を形成するとともに、外周面に雄ねじ部が形成された締結内筒部を設け、
外周面にピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径される受圧テーパ面が形成された3個以上の楔部材をそれぞれ独立して設け、
前記楔部材のピストンロッド先端側より薄肉部に形成された前記締結内筒部の連結穴部の開口部周囲に、前記楔部材のピストンロッド先端側が半径方向から嵌合離脱可能で、前記各楔部材をそれぞれ位置決めして変位を防止する係止穴部を形成し、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部が上部内周面に形成されるとともに、ピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径されて前記楔部材のテーパ面に摺接される加圧テーパ面が下部内周面に形成された締結外筒を設けたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、
シリンダチューブから出退されるピストンロッド先端部に、ブッシュを取り付ける流体圧シリンダのピストンロッドへのブッシュ取付装置であって、
前記ブッシュに、ピストンロッドの先端部が嵌合される連結穴部を形成するとともに、外周面に雄ねじ部が形成された締結内筒部を設け、
外周面にピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径される受圧テーパ面が形成された3個以上の楔部材をそれぞれ独立して設け、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部が上部内周面に形成されるとともに、ピストンロッド基端側から先端側に漸次拡径されて前記楔部材のテーパ面に摺接される加圧テーパ面が下部内周面に形成された締結外筒を設け、
前記楔部材のピストンロッド先端側に、周方向両側に突出する凸部を形成し、
前記締結内筒部の連結穴部の開口部周囲に、前記各楔部材のピストンロッド先端側および前記凸部が半径方向から嵌合離脱可能で、前記各楔部材をそれぞれ位置決めして変位を防止する係止穴部を形成したものである。
請求項3記載の発明は、
係止穴部は、締結内筒部の表面から裏面側に貫通成形されるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ブッシュの締結内筒部の連結穴部に、ピストンロッドの先端部を嵌合し、予めピストンロッドに外嵌された締結外筒を、締結内筒部の下部で楔部材に外嵌させた状態で、雌ねじ部を締結内筒部の雄ねじ部に螺合させ、締結外筒を締め付けることにより、加圧テーパ面と受圧テーパ面の作用で楔部材を縮径させ、この締め付け力により、ピストンロッドとブッシュとを強固に締結することができる。そしてこの楔作用により十分に大きい強度が得られ、またピストンロッドへの加工も不要になり、大型の流体圧シリンダのピストンロッドに容易に適用することができる。また、締結内筒部の係止穴部に、楔部材のピストンロッド先端側を嵌合配置しておくことにより、楔部材を位置決めして係止することができるので、組立時に締結外筒を回転させても楔部材が変位することが無く、ピストンロッドとブッシュとの組立を容易に精度よく行うことができる。
【0009】
請求項2記載の構成によれば、予め締結内筒部の係止穴部に、楔部材のピストンロッド先端側と凸部を嵌合配置しておくことにより、楔部材を位置決めして係止することができるので、組立時に締結外筒を回転させても楔部材が変位することが無く、ピストンロッドとブッシュとの組立を容易に精度よく行うことができる。
請求項3記載の構成によれば、楔部材の裏面をピストンロッドの外周面に密接させることができ、さらに安定して係止穴部に楔部材を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るピストンロッドへのブッシュ取付装置の実施例1を示す分解斜視図である。
図2】ブッシュ取付装置の縦断面図である。
図3】本発明に係るピストンロッドへのブッシュ取付装置の実施例2における部分側面図である。
図4】楔部材を示す斜視図である。
図5】従来のブッシュ取付装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
以下、本発明に係るブッシュ取付装置の実施例1を図1および図2に基づいて説明する。
【0012】
図1および図2において、11はシリンダチューブ10から出退駆動されるピストンロッド、21は一対の連結ピン23が突設されたブッシュで、締結外筒41により3個以上で、12個以下(図面では4個)の楔部材31を介してピストンロッド11の先端部に取り付けられる。
【0013】
ブッシュ21の本体部22に、ピストンロッド11の軸心Oに直交する方向に一対の連結ピン(凸部)23が突設されている。また本体部22のロッド基端側に締結内筒部24が突設され、この締結内筒部24にピストンロッド11の先端部が嵌合される連結穴部25が形成されている。そしてこの締結内筒部24の外周面に雄ねじ部26が形成される。
【0014】
4個の楔部材31は、正面、背面視が縦長の矩形状で、背面がピストンロッド11の外周面に沿う円弧状の裏面33に形成されている。そして、正面にロッド基端側から先端側に漸次拡径される(厚みが大きく形成された)受圧テーパ面34が形成されている。また楔部材31のロッド先端側には、周方向両側に突設された一対の係止ピン(凸部)32を有し、正面視がT字形に形成されている。さらに、楔部材31のロッド先端側の厚みが、締結内筒部24より厚肉に形成され、前記係止穴部27に嵌め込まれた状態で締結内筒部24の雄ねじ部26より外周側に突出される。
【0015】
締結内筒部24の連結穴部25の開口部周囲には、楔部材31がそれぞれ嵌合される4個の係止穴部27が周方向に90°ごとに形成されて、表面から裏面側に(雄ねじ部26から連結穴部25に)貫通成形されている。これら係止穴部27は、連結穴部25の開口端側で楔部材31の厚肉部分が嵌合される楔収容部27aと、楔収容部27aの奥側(ロッド先端側)で一対の係止ピン32を収容する係止収容部27bとで正面視T形に形成され、締結内筒部24の外周側から楔部材31を半径方向にそれぞれ係止穴部27に嵌合離脱させることができる。これら係止穴部27により、楔部材31を位置決めして組立時の変位を防止することができ、締結外筒41が回転されても楔部材31が一定位置に保持される。
【0016】
締結外筒41は、中央部から上端部にわたって内周面に雄ねじ部26に螺合される雌ねじ部42が形成され、下側内周面にロッド基端側から先端側に漸次拡径されて楔部材31の受圧テーパ面34を摺接加圧する逆円錐台形の加圧テーパ面43が形成されている。なお、締結外筒41の外周面は、レンチや工具により回転しやすいように、一対の対向平面部を形成してもよいし、ローレット加工や正六角形、正八角形などに形成することもできる。
【0017】
上記構成において、ピストンロッド11とブッシュ21とを締結する手順を説明する。
1)予めピストンロッド11に締結外筒41を外嵌させておく。
2)ブッシュ21の連結穴部25にピストンロッド11の先端部を嵌合させる。
【0018】
3)締結内筒部24の各係止穴部27にそれぞれ楔部材31を嵌め込む。
4)締結外筒41を締結内筒部24に外嵌させて雌ねじ部42を雄ねじ部26に螺合させ、締め込む。
【0019】
5)これにより、締結外筒41の加圧テーパ面43が楔部材31の受圧テーパ面34に摺接され、テーパ面43,34の楔作用で、各楔部材31がそれぞれ縮径されてピストンロッド11の外周面を加圧し、大きい摩擦力が生じてピストンロッド11とブッシュ21とが強固に連結固定される。
【0020】
なお、締結外筒41の緩み止めとして、雄ねじ部26に予めナット部材51を嵌合しておき、締結外筒41が締め込まれた後、ナット部材51を締結外筒41に締め付けて二重ナットによる固定式を追加してもよい。
【0021】
上記実施例1によれば、締結内筒部24の連結穴部25に、ピストンロッド11の先端部を嵌合し、予めピストンロッド11に外嵌された締結外筒41を、締結内筒部24の下部で楔部材31の外周部に外嵌させて、雌ねじ部42を締結内筒部24の雄ねじ部26に螺合させ、締結外筒41を締め付けることにより、加圧テーパ面43と受圧テーパ面34の作用で楔部材41を縮径加圧してピストンロッド11を締め付けることができる。この締め付け力により、ピストンロッド11とブッシュ21とを強固に締結することができ、十分に大きい強度が得られるとともに、ピストンロッド11への加工も不要になり、大型の流体圧シリンダのピストンロッド11に容易に適用することができる。
【0022】
また、締結内筒部24に複数の係止穴部27を周方向に形成し、これら係止穴部27に、楔部材31のロッド先端側と係止ピン32を嵌合することにより、楔部材31を位置決め保持することができるとともに、組立時に締結外筒を回転させても楔部材31が変位することが無く、ピストンロッド11とブッシュ21との締結を容易に、かつ精度よく行うことができる。
【0023】
次に、他の楔部材を有するブッシュ取付装置の実施例2を、図3および図4を参照して説明する。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
この楔部材35は、係止ピン32に替えて、受圧テーパ面34を有する楔本体36に、ロッド先端側から両側にそれぞれ三角形の凸部37を一体に突設したものである。これら凸部37に対応して、係止穴部27の係止収容部27cは三角形断面に形成される。
【0024】
上記実施例2によれば、楔部材35を一体に形成することができ、係止ピン32を取り付けた実施例1に比較して安価に製造することができる。また凸部37が締結内筒部24の係止収容部27cに嵌合されることにより、係止ピンに比較して楔部材35の裏面33をピストンロッド11の外周面に密接させることができ、さらに安定して係止穴27に楔部材35を保持することができる。
【符号の説明】
【0025】
O 軸心
11 ピストンロッド
21 ブッシュ
22 本体部
23 連結ピン
24 締結内筒部
25 連結穴部
26 雄ねじ部
27 係止穴部
27a 楔収容部
27b 係止収容部
31 楔部材
32 係止ピン(凸部)
33 裏面
34 受圧テーパ面
41 締結外筒
42 雌ねじ部
43 加圧テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5