(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995458
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】医療用表示ラベル及び医療用表示ラベルを有する医療器具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
A61M5/14
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-34728(P2012-34728)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-169316(P2013-169316A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 一葉
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3151078(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3159515(JP,U)
【文献】
特開2000−132104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の医療器具に接続することによって、内部に貯留した薬剤を注入する医療器具に使用される長尺状の医療用表示ラベルであって、
前記長尺状の医療用表示ラベルの短手方向に複数の区分に切り離すための切り取り線を有し、通液確認の文字が記載された区分と、接続可能の表記がされ、前記医療器具に取り付けるための領域を有する区分と、を備えた表示シートと、
前記表示シートの裏面に設けられた粘着層と、
前記粘着層に対して剥離性を有する剥離シートと、
を備えた医療用表示ラベル。
【請求項2】
前記通液確認の文字が記載された区分を複数有し、この複数の区分に対し、異なる彩色が施されている
請求項1に記載の医療用表示ラベル。
【請求項3】
前記通液確認の文字が記載された複数の区分には、他の区分と異なる数字が記載されている
請求項2に記載の医療用表示ラベル。
【請求項4】
他の医療器具に接続することによって、内部に貯留した薬剤を注入する医療器具であって、
長尺状であって、短手方向に複数の区分に切り離すための切り取り線を有し、通液確認の文字が記載された区分と、接続可能の表記がされ、前記医療器具に取り付けるための領域を有する区分と、備えた表示シートと、前記表示シートの裏面に設けられた粘着層と、前記粘着層に対して剥離性を有する剥離シートと、を備えた
医療用表示ラベルを有する医療器具。
【請求項5】
前記医療器具は、前記他の医療器具に接続するためのコネクターを有するものであって、前記医療用表示ラベルは、前記コネクターの近傍に取り付けられている
請求項4に記載の医療用表示ラベルを有する医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用表示ラベル及び医療用表示ラベルが使用される医療器具であって、特に、他の医療器具に接続して内部に貯留した薬剤を注入する処方を行う医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルなどの他の医療器具に接続して、内部に貯留した薬剤(薬液)を持続的に注入する医療器具が知られている(特許文献1)。
このような医療器具を使用する場合には、医療従業者が、薬剤の貯留部に連結している接続部から薬剤が出ていることを確認する作業をした後に、接続部を他の医療器具に接続するのが一般的である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−288158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医療従業者が上記の確認作業を終えた後に、チューブやフィルタなどに薬剤が詰まり、接続部から薬剤が出てこなくなる場合がある。また、医療従業者の勘違いなどにより、接続部から薬剤が出ていない状態であるにも関わらず、薬剤が出ていると認識されてしまう場合がある。このような状態で、接続部を他の医療器具に接続してしまうと、薬剤が他の医療器具に注入されないという不具合が発生する。
【0005】
本発明は、このような状況を考慮してなされたものであり、他の医療器具に接続して内部に貯留された薬剤を注入する医療器具を使用する際に、医療従業者に対して注意を喚起し、薬剤を他の医療器具へ注入する処方が確実に行われることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用表示ラベルは、複数の区分に切り離すための切り取り線を有し、区分ごとに医療器具の使用方法に関する情報が記載された表示シートと、表示シートの裏面に設けられた粘着層と、粘着層に対して剥離性を有する剥離シートを備えている。
【0007】
本発明の医療用表示ラベルを有する医療器具は、複数の区分に切り離すための切り取り線を有し、区分ごとに医療器具の使用方法に関する情報が記載された表示シートと、表示シートの裏面に設けられた粘着層と、粘着層に対して剥離性を有する剥離シートを備えた医療用表示ラベルを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用表示ラベル及び医療用表示ラベルを有する医療器具によれば、内部に貯留した薬剤を他の医療器具へ注入する処方を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本実施の形態における医療用表示ラベルの正面図である。
図1Bは、本実施の形態における医療用表示ラベルの裏面図である。
【
図2】本実施の形態における医療用表示ラベルが取り付けられた医療器具の全体図である。
【
図3】本実施の形態における医療用表示ラベルの使用方法を説明する図である。
【
図4】本実施の形態における医療用表示ラベルの使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の医療用表示ラベル1及び医療用表示ラベル1を用いた医療器具10を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
図1Aは、本実施の形態における医療用表示ラベル1の正面図であり、
図1Bは、本実施の形態における医療用表示ラベル1の裏面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態の医療用表示ラベル1(以下、単にラベルと言う。)は、医療器具の使用方法に関する情報が記載された表示シート2と、表示シートの裏面に設けられた粘着層6と、粘着層に貼り付けられた剥離シート7とで構成されている。
【0012】
図1Aに示すように、ラベル1の表面は、表示シート2により構成されている。表示シート2は、矩形状に形成されており、本実施の形態の表示シート2の大きさは、縦が約1cm、横が約11cmである。なお、表示シートの形状や大きさは、ラベルが取り付けられる医療器具の大きさに応じて適宜変更する。表示シート2の材質は、特に限定されず、紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアミド系などの公知の合成樹脂製延伸フィルム、発泡樹脂シート、不織布、和紙などの1層、又はこれら2層以上の積層体などを用いることができる。
【0013】
表示シート2には、表示シート2の一部を切り離すための切り取り線としてのミシン目線3が形成されている。本実施の形態のミシン目線3は、縦方向に2カ所形成されている。これにより、表示シート2は、2回に分けて切り離すことができる。なお、本実施の形態では、ミシン目線を2カ所に形成したが、必要に応じて3カ所に形成してもよいし、1カ所のみに形成するだけでもよい。
【0014】
表示シート2は、2カ所のミシン目線3によって、3つのシート領域2a、2b、2cに区分されている。シート領域2aは、赤色の色彩が施され、“通液確認1”の文字が白字で記載されている。シート領域2bは、黄色の色彩が施され、“通液確認2”の文字が黒字で記載されている。シート領域2cは、緑色の色彩が施され、“接続OK”の文字が白字で記載されるとともに、良好の意味を表すシンボルマークが記載されている。なお、色彩や文字の内容は、本実施の形態のものに限られず、必要に応じて適宜変更することができる。
【0015】
シート領域2cには、医療器具にラベル1を取り付けるための取付領域4が形成されている。取付領域4は、ミシン目線3が設けられている側と反対側の領域に形成されており、医療器具に取り付けた際に、領域2cの記載内容が見えなくならない程度の大きさで形成されている。
【0016】
図1Bに示すように、ラベル1の裏面は、剥離シート7により構成されている。
剥離シート7は、表示シート2の裏面に設けられた粘着層6を介して、表示シート2に貼り付けられている。剥離シート7は、粘着層6に対して剥離性を有する材料で構成されている。剥離シートとしては、例えば、上質紙、再生紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などが使用される。また、粘着層を形成するための粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が使用される。
【0017】
剥離シート7は、表示シート2の形状、大きさに合わせて形成されている。剥離シート7は、表示シート2のミシン目線3に対応する位置に設けられた切り込み線8によって、3つのシート領域7a、7b、7cに区分されている。また、シート領域7a、7b、7cには、予め、領域7a、7b、7cの一部を粘着層6から剥離して形成した引きはがし部9が設けられている。これにより、医療従業者は、引きはがし部9を引っ張ることで、剥離シート7を粘着層6から剥離させることができる。
【0018】
図2は、本発明の医療用表示ラベル1が取り付けられた医療器具の全体図である。
本実施の形態では、医療器具として、バルーンの収縮力を利用した薬剤注入具10を使用する。
【0019】
薬剤注入具10は、薬剤を内部に貯留する貯留部19と、他の医療器具と接続して貯留部19に貯留した薬剤を持続的に注入するコネクター11と、貯留部19とコネクター11を連結するチューブ12を備えている。
【0020】
貯留部19は、ハードケース13と、ハードケース13の中に設けられたバルーン14を有している。バルーン14は、薬液充填口18から充填された薬剤を内部に貯留して、伸縮力によって薬剤を搬送する。薬剤は、チューブ12を通ってコネクター11に搬送される。なお、チューブ12には、薬剤中に含まれる空気を抜くためのフィルター15が設けられている。
【0021】
コネクター11は、搬送されてきた薬剤を他の医療器具に注入するオスルアー16と、フィルターなどを用いて薬剤の注入量を調整する流量制御部17を備えている。また、薬剤充填口18とオスルアー16には、それぞれ汚染防止キャップ20とオスルアーキャップ21が設けられている。なお、コネクター11が接続される他の医療器具としては、例えば、患者に留置してあるカテーテル、ヒューバー針や留置針などの翼状針がある。
【0022】
ラベル1は、コネクター11に取り付けられている。このように、薬剤を注入するオスルアー16の近傍に設けることで、オスルアー16から薬剤がでているかどうかの注意を喚起することができる。なお、本実施の形態では、ラベル1をコネクター11に取り付けたが、チューブ12に取り付けるようにしてもよい。
【0023】
次に、本実施の形態の医療用表示ラベル1の使用方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態における医療用表示ラベルの使用方法を説明する図である。
ここでは、便宜上、医療従業者を、薬剤部従業者と看護部従業者に大別して説明する。薬剤部従業者とは、主に薬剤注入具10に薬剤を注入する者であり、看護部従業者とは、薬剤注入具10を他の医療器具に接続する者をいう。
【0024】
まず、薬剤部従業者が、薬剤を薬剤充填口18からバルーン14に充填し、充填が終了すると汚染防止キャップ20を閉める。次に、オスルアーキャップ21を取り外し、薬剤がオスルアー16の先端から出てくるかどうかの確認作業を行う。薬剤が出てくることが確認できた場合には、オスルアーキャップ21を閉めるとともに、ラベル1のシート領域2a部分をミシン目線3に沿って切り離す。次に、切り離したシート領域2aの裏側にあるシート領域7aを剥がして、医療カルテ等に切り離したシート領域2aを貼り付ける。これらの作業を行うことにより、薬剤部従業者が、オスルアー16から薬剤が出ていない状態であるにも関わらず、薬剤が出ていると誤認することを予防できる。
【0025】
看護部従業者は、薬剤部従業者から引き渡された薬剤注入具10を他の医療器具に接続する際に、オスルアーキャップ21を取り外し、薬剤がオスルアー16の先端から出てくるか確認作業を行う。なお、薬剤部従業者から看護部従業者に引き渡された時点の薬剤注入具10に取り付けられたラベル1の状態は、
図3Aに示すように、シート領域2aが切り離され、シート領域2b、2cが残された状態である。この状態を確認することにより、看護部従業者は、薬剤部従業者がオスルアー16から薬剤がでていることの確認作業を行ったことを認識することができる。
【0026】
なお、上述したように、シート領域2a及びシート領域2bには、使用方法に関する同一の情報(“通液確認”)と、他の領域と異なる数字(“1”、“2”)が記載されている。これにより、医療従業者は、自分が行う作業内容と、自分の行う作業の順番を確認することができる。
【0027】
看護部従業者は、オスルアー16の先端から薬剤が出てくることが確認できた場合には、オスルアー16を他の医療器具の接続部に接続するとともに、ラベル1のシート領域2b部分をミシン目線3に沿って切り離す。薬剤が出てくることが確認できた場合には、オスルアー16を他の医療器具の接続部に接続する。そして、切り離したシート領域2bの裏側にあるシート領域7bを剥がして、医療カルテ等に切り離したシート領域2bを貼り付ける。これらの作業を行うことにより、看護部従業者が、チューブ内で薬剤が詰まりオスルアー16から薬剤が出ない状態であるにも関わらず、オスルアー16から薬剤が出ると誤認してしまうことを防ぐことができる。
【0028】
看護部従業者が、オスルアー16の先端から薬剤がでてくることの確認作業を終え、オスルアー16が他の医療器具に接続された状態におけるラベル1の状態は、
図3Bに示すように、シート領域2a、2bが切り取られ、シート領域2cのみが残された状態である。すなわち、患者を診断する医師や看護婦などの医療従業者は、薬剤部従業者と看護部従業者による確認作業が終了した上で、薬剤注入具10が接続されていることを一目で判断することができる。
【0029】
図4は、確認作業を終えた薬剤部従業者によって貼り付けられたシート領域2aと、確認作業をおけた看護部従業者によって貼り付けられたシート領域2bが貼り付けられたカルテ30を示す。
図4に示すように、シート領域2a及びシート領域2bは、カルテ30の予め決められた場所に貼り付けられる。カルテ30を見た医師などの医療従業者は、薬剤部従業者と看護部従業者によって、オスルアー16から薬剤がでていることについての確認作業が行われたことを一目で判断することができる。
【0030】
以上、説明したように、本実施形態の医療用表示ラベル1及び医療用表示ラベル1を有する薬剤注入具10によれば、内部に貯留した薬剤を他の医療器具へ注入する処方を確実に行うことができる。
【0031】
なお、本発明の医療用表示ラベル及び医療用表示ラベルを有する医療器具は、上述の形態に限定されるものではなく、ラベルの形状、ラベルの記載内容、その他材料、構成等において本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。また、本実施の形態の医療器具は、バルーンの収縮力を利用して薬剤を搬送するものを用いたが、電動で薬剤を搬送するシリンジポンプや、ハウジング内のばねでガスケットを摺動させて薬剤を搬送する薬液ポンプなどを使用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1・・・医療用表示ラベル、2・・・表示シート2a、2b、2c・・・表示シート領域、3・・・ミシン目線、4・・・取付領域、6・・・粘着層、7・・・剥離シート、7a、7b、7c・・・剥離シート領域、8・・・切り込み線、9・・・引きはがし部 、10・・・薬剤注入具、11・・・コネクター、12・・・チューブ、13・・・ハードケース、14・・・バルーン、16・・・オスルアー、17・・・流量制御部、19・・・貯留部、20・・・汚染防止キャップ、21・・・オスルアーキャップ、30・・・カルテ