特許第5995488号(P5995488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995488
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】折り曲げ加工機における板厚測定装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   B21D5/02 P
   B21D5/02 S
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-83537(P2012-83537)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-212515(P2013-212515A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 明
(72)【発明者】
【氏名】雪田 知宏
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−205339(JP,A)
【文献】 特開平02−030327(JP,A)
【文献】 特開2001−001051(JP,A)
【文献】 特開2006−088183(JP,A)
【文献】 特開2001−300640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ加工機で折り曲げる対象となるワークの厚さを測定する板厚測定装置において、
前記折り曲げ加工機のダイに設けられ、前記ダイの上面と同一高さ、或いは上面に対して所望の高さとなる基準位置設定部材と、
前記折り曲げ加工機に設けられたパンチの上下位置を検出する位置センサと、
前記パンチに加えられる圧力を検出する圧力センサと、
前記パンチの昇降を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記パンチを下降させて、該パンチの先端部を前記基準位置設定部材の上面に接触させ、接触したときのパンチの上下位置を基準位置として記憶し、且つ、パンチに加えられる所定の圧力を記憶し、
その後、前記基準位置設定部材を取り除いて前記ダイの上にワークを設置した状態で、前記パンチを再度下降させて、該パンチの先端部を前記所定の圧力で前記ワークの上面に接触させ、且つ、このときのパンチの上下位置を測定して測定位置とし、
前記基準位置と前記測定位置との差分に基づいて、前記ワークの板厚を算出すること
を特徴とする折り曲げ加工機における板厚測定装置。
【請求項2】
前記基準位置設定部材は、前記ダイの内部に挿入され、その上面がダイの上面と同一高さとなるブロック部材であることを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ加工機における板厚測定装置。
【請求項3】
前記基準位置設定部材は、前記ダイ上に載置され、その上面がダイの上面から所定の高さとなる基準板材であることを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ加工機における板厚測定装置。
【請求項4】
折り曲げ加工機で折り曲げる対象となるワークの厚さを測定する板厚測定装置において、
前記折り曲げ加工機のダイの内部に挿入され、その上面がダイの上面と同一高さとなるブロック部材と、
前記折り曲げ加工機に設けられるパンチを下降させて、該パンチの先端部を前記ブロック部材の上面に接触させこの高さを基準位置とし、その後、前記ブロック部材を取り除いて前記ダイの上にワークを載置した状態で、前記パンチを再度下降させて、該パンチの先端部を前記ワークの上面に接触させこの高さを測定位置とし、前記基準位置と測定位置の差分に基づいて、前記板材の板厚を測定する測定手段と、
を備えたことを特徴とする折り曲げ加工機における板厚測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げ加工機で加工する板材の厚さを測定する板厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板材を折り曲げ加工する折り曲げ加工機は、断面がV形状とされたダイの上に板材(以下、ワークという)を載置し、パンチを下降させてワークをダイ側に押し付けてワークを折り曲げ加工する。このような折り曲げ加工機では、加工対象となるワークの厚さを正確に認識する必要がある。即ち、例えばワークの厚さが3.2[mm]とされている場合であっても、実際にはワーク全体が正確にこの厚さではなく、数十ミクロン程度の厚さのムラが生じている場合が多々あり得る。そして、厚さが異なる場合には、折り曲げ加工したときの折り曲げ角度が正確な角度にならないことがあり、折り曲げ加工の精度が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に開示された板厚検出装置が提案されている。該特許文献1では、ダイにワークを載置した状態で、該ワークの上面を検知し、更に、ワークを取り除いた状態でダイ上面を検知し、これらの差分にに基づいてワークの厚さを測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−300640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された板厚の測定方法では、ダイの上面を基準位置としてワークの厚さを測定しており、ダイの上面が摩耗や研磨などにより正確でない場合には、測定精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ワークの厚さを高精度に検出することが可能な折り曲げ加工機における板厚測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、折り曲げ加工機で折り曲げる対象となるワークの厚さを測定する板厚測定装置において、前記折り曲げ加工機のダイに設けられ、前記ダイの上面と同一高さ、或いは上面に対して所望の高さとなる基準位置設定部材と、前記折り曲げ加工機に設けられたパンチの上下位置を検出する位置センサと、前記パンチに加えられる圧力を検出する圧力センサと、前記パンチの昇降を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記パンチを下降させて、該パンチの先端部を前記基準位置設定部材の上面に接触させ、接触したときのパンチの上下位置を基準位置として記憶し、且つ、パンチに加えられる所定の圧力を記憶し、その後、前記基準位置設定部材を取り除いて前記ダイの上にワークを設置した状態で、前記パンチを再度下降させて、該パンチの先端部を前記所定の圧力で前記ワークの上面に接触させ、且つ、このときのパンチの上下位置を測定して測定位置とし、前記基準位置と前記測定位置との差分に基づいて、前記ワークの板厚を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る板厚測定装置では、ダイの上に基準位置設定部材を載置して基準位置及び所定の圧力を求め、その後、ダイの上にワークを載置した状態でワークの上面を測定位置として求め、且つ圧力を求め、前記基準位置と測定位置、及び圧力の関係から、ワークの厚さを測定する。この際、基準位置設定部材は、摩耗や研磨が生じた際には即時に新たなものに取り替えて使用することができるので、従来のように、ダイ上面の摩耗や研磨等に起因した測定誤差の発生を防止でき、高精度な板厚の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る板厚測定装置が搭載される折り曲げ加工機の構成を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る板厚測定装置の処理手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態に係る板厚測定装置による板厚の測定手順を示す説明図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る板厚測定装置の処理手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る板厚測定装置による板厚の測定手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る板厚測定装置が搭載される折り曲げ加工機の加工部近傍の構成を模式的に示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、この折り曲げ加工機は、下部テーブル11に設けられるダイ12と、上部テーブル13に設けられるパンチ14と、上部テーブル13を昇降させるシリンダ15と、シリンダ15を作動させるアクチュエータ16を備えている。
【0012】
更に、パンチ14の上下方向位置を検出する位置センサ18と、パンチ14に加えられる圧力を検出する圧力センサ19を備えている。また、アクチュエータ16、位置センサ18、及び圧力センサ19は制御部17に接続されている。
【0013】
そして、該制御部17の制御により上部テーブル13を下降させてダイ12の上部に載置されたワークWを折り曲げ加工することができる。
【0014】
また、本実施形態では、ワークWを折り曲げ加工する際に、ワークWの板厚を測定し、この測定結果に基づいて、折り曲げ加工時におけるパンチ14の圧力を調整する。
【0015】
以下、ワークWの板厚測定処理の手順を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS11において、ダイ12のV字形状の溝内に板厚測定用のブロック(基準位置設定部材、ブロック部材)21を載置する。ブロック21は、図3(a)に示すように、断面が逆三角形状をなしており、ダイ12のV字形状の溝内に挿入した際に該ブロック21の上面とダイ12の上面が一致するように、その大きさが設定されている。従って、ブロック21をダイ12に挿入した際に、ブロック21の上面L1とダイ12の上面L2が同一の高さとなる。
【0016】
ステップS12において、制御部17は、上部テーブル13を下降させ、更に、ステップS13において、上部テーブル13に設けられているパンチ14がブロック21と接触して所定の圧力に達したか否かを判定する。
【0017】
パンチ14がブロック21と接触した場合には、ステップS14において、制御部17は、位置センサ18で検出されるパンチ14の高さ、及び圧力センサ19で検出されるパンチ14の圧力を検出し、これらの検出結果を図示省略のメモリ等に記憶する。
【0018】
ステップS15において、制御部17は、上部テーブル13を上昇させる。その後、ステップS16において、ブロック21を取り除き、ステップS17において、ダイ12の上にワークWを載置する。
【0019】
ステップS18において、制御部17は、上部テーブル13を下降させ、更に、ステップS19において、パンチ14がワークWと接触して所定の圧力に達したか否かを判定する(図3(b)参照)。
【0020】
パンチ14がワークWに接触した場合には、ステップS20において、制御部17は、位置センサ18で検出されるパンチ14の高さL3、及び圧力センサ19で検出されるパンチ14の圧力を検出し、これらの検出結果をメモリ等に記憶する。
【0021】
ステップS21において、制御部17は、上部テーブル13を上昇させる。その後、ステップS22において、制御部17は、ブロック21を載置したときの位置センサ18による検出データと、ワークWを載置したときの位置センサ18による検出データに基づいて、ワークWの板厚を算出する。即ち、ブロック21の上面L1はダイ12の上面L2と高さが一致しているので、ワークWの上面の高さ(図3(b)のL3)から、ブロック21の上面の高さ(図3(a)のL1)を減算することにより、ワークWの厚さt1を求めることができる。
【0022】
その後、ステップS23において、制御部17は、ステップS22の処理で求めたワークWの板厚情報を曲げ計算に取り込む。即ち、ワークWの板厚に基づいて、実際にワークWを折り曲げ加工する際の、圧力を微調整してワークWの加工精度が向上するように制御することができる。
【0023】
このようにして、本発明の第1実施形態に係る板厚測定装置では、ダイ12の内部にブロック21を挿入し、この状態でブロック21の上面にパンチ14を接触させてブロック21の上面の高さL1を求め、その後、ダイ12の上にワークWを載置した状態で該ワークWの上面にパンチ14を接触させてワークWの上面高さL3を求める。そして、ワークWの上面の高さL3からブロック21の上面の高さL1を減算することにより、ワークWの板厚を測定している。
【0024】
この際、ブロック21として、精度が高く設計されたものを用いることができ、ブロック21の表面に摩耗や研磨が生じた場合でも、これを新たなものに取り替えることができるので、従来と比較して板厚の測定精度を向上させることができる。その結果、折り曲げ加工をより高精度に実施することが可能となる。
【0025】
また、第1実施形態では、パンチ14がブロック21の上面に接触したときの圧力と、パンチ14がワークWの上面に接触したときの圧力が同一となるように制御して、ワークWの板厚を測定しているので、板厚の測定精度をより一層向上させることができる。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る板厚測定装置の構成は、前述した第1実施形態で示した図1と同様であるので、構成説明を省略する。
【0027】
次に、第2実施形態に係る板厚測定装置の処置手順を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0028】
初めに、ステップS31において、ダイ12の上に基準板材31を載置する。基準板材31は、図5(a)に示すように所定の厚さt0を有しており、その上面がダイ12の上面から所定の高さとなるように設定されている。従って、基準板材31をダイ12の上面に載置した際に、基準板材31の上面L11は、ダイ12の上面から一定の高さt0となる。
【0029】
ステップS32において、制御部17は、上部テーブル13を下降させ、更に、ステップS33において、上部テーブル13に設けられているパンチ14が基準板材31と接触して所定の圧力に達したか否かを判定する。
【0030】
パンチ14が基準板材31と接触した場合には、ステップS34において、制御部17は、位置センサ18で検出されるパンチ14の高さ、及び圧力センサ19で検出されるパンチ14の圧力を検出し、これらの検出結果を図示省略のメモリ等に記憶する。
【0031】
ステップS35において、制御部17は、上部テーブル13を上昇させる。その後、ステップS36において、基準板材31を取り除き、ステップS37において、ダイ12の上にワークWを載置する。
【0032】
ステップS38において、制御部17は、上部テーブル13を下降させ、更に、ステップS39において、パンチ14がワークWと接触して所定の圧力に達したか否かを判定する(図5(b)参照)。
【0033】
パンチ14がワークWに接触した場合には、ステップS40において、制御部17は、位置センサ18で検出されるパンチ14の高さ、及び圧力センサ19で検出されるパンチ14の圧力を検出し、これらの検出結果をメモリ等に記憶する。
【0034】
ステップS41において、制御部17は、上部テーブル13を上昇させる。その後、ステップS42において、制御部17は、基準板材31を載置したときの位置センサ18による検出データと、ワークWを載置したときの位置センサ18による検出データに基づいて、ワークWの板厚を算出する。即ち、図5(a)に示す基準板材31の上面L11はダイ12の上面から所定の距離(t0)にあるので、ワークWの上面の高さL12と基準板材31の高さを比較することにより、ワークWの厚さt1(図5(b)参照)を求めることができる。
【0035】
その後、ステップS43において、制御部17は、ステップS42の処理で求めたワークWの板厚情報を曲げ計算に取り込む。即ち、ワークWの板厚に基づいて、実際にワークWを折り曲げ加工する際の、圧力を微調整してワークWの加工精度が向上するように制御することができる。
【0036】
このようにして、本発明の第2実施形態に係る板厚測定装置では、ダイ12の上面に基準板材31を載置し、この状態で基準板材31の上面にパンチ14を接触させて基準板材31の上面の高さL11を求め、その後、ダイ12の上にワークWを載置した状態で該ワークWの上面にパンチ14を接触させてワークWの上面高さL12を求める。そして、ワークWの上面の高さL12と基準板材31の上面の高さL11、及び基準板材31の板厚t0に基づいて、ワークWの板厚t1を測定している。
【0037】
この際、基準板材31として、精度が高く設計されたものを用いることができ、基準板材31の表面に摩耗や研磨が生じた場合でも、これを新たなものに取り替えることができるので、従来と比較して板厚の測定精度を向上させることができる。その結果、折り曲げ加工をより高精度に実施することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の板厚測定装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、折り曲げ加工の対象となるワークの板厚を高精度に測定することに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
11 下部テーブル
12 ダイ
13 上部テーブル
14 パンチ
15 シリンダ
16 アクチュエータ
17 制御部
18 位置センサ
19 圧力センサ
21 ブロック(ブロック部材、基準位置設定部材)
31 基準板材(基準位置設定部材)
図1
図2
図3
図4
図5