特許第5995509号(P5995509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5995509-コンデンサマイクロホン 図000002
  • 特許5995509-コンデンサマイクロホン 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995509
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20160908BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R19/04
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-105392(P2012-105392)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-236125(P2013-236125A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−191323(JP,A)
【文献】 特開平10−155234(JP,A)
【文献】 特開2002−044779(JP,A)
【文献】 特開2007−274292(JP,A)
【文献】 特開平11−289689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号出力先となる外部装置が備える外部電源と内蔵電源とを切り替えて使用するコンデンサマイクロホンであって、
上記内蔵電源からマイクロホン回路に至る内蔵電源供給回路と、
上記外部電源からマイクロホン回路への外部電源供給の有無を検知する検知手段と、
上記検知手段が上記外部電源供給を検知しているとき上記内蔵電源からの電源供給を遮断するスイッチ手段と、を備え、
上記検知手段はフォト−MOSリレーが備える発光ダイオードで構成されていて上記外部電源と上記マイクロホン回路の間に直列に接続され、
上記スイッチ手段は上記フォト−MOSリレーが備えているMOSFETで構成されていて上記内蔵電源と上記マイクロホン回路との間に直列に接続され、
上記マイクロホン回路からの音声信号を上記信号出力側に通過させるバイパスコンデンサが上記発光ダイオードに並列に接続され、
上記MOSFETは、上記発光ダイオードの点滅によって、上記内蔵電源供給回路と上記マイクロホン回路との接続と切り離しを切り替えるコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
フォト−MOSリレーの発光ダイオードは上記外部電源から電源が供給されることによって発光し、フォト−MOSリレーのMOSFETは上記発光ダイオードの発光によって上記内蔵電源をマイクロホン回路から切断する請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
上記内蔵電源供給回路は、負荷抵抗を介してマイクロホン回路に至る請求項1または2に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
フォト−MOSリレーの発光ダイオードは上記外部電源から電源が供給されることによって発光し、フォト−MOSリレーのMOSFETは上記発光ダイオードの発光によって上記負荷抵抗をマイクロホン回路から切断する請求項3記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
上記外部電源からマイクロホン回路への外部電源供給は、上記マイクロホン回路の信号線を介して行われる請求項1乃至4のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサマイクロホンに関するものであって、詳しくは、外部電源供給と内蔵電源供給との切り換え回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンは、電気音響変換器であるコンデンサマイクロホンユニットのインピーダンスが高いことから、FET(電界効果型トランジスタ、以下同じ)などを用いたインピーダンス変換器を必要とする。このインピーダンス変換器を動作させるには電源が必要である。電源の供給には複数の型が知られている。例えば、コンデンサマイクロホン本体に電源を搭載する内蔵電池型と、コンデンサマイクロホンを装着する外部機器(例えば、録音機器等)からの電源供給を受ける外部供給型である。このうち、外部供給型による電源供給方式は「プラグインパワー方式」と呼ばれる。
【0003】
外部供給型と内蔵電池型を併用するコンデンサマイクロホンも知られている。このようなコンデンサマイクロホンにおいては、外部電源からの電源供給と内蔵電池からの電源供給を同時に行うときに、外部電源から内蔵電池に電流が流れ込むことがあるため、内蔵電池の発熱や液漏れなど不具合の原因となることが知られている。これを防ぐために、内蔵電池からコンデンサマイクロホンへ電源を供給する回路に、外部電源から内蔵電池への電流の流入を阻止するダイオードスイッチを備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)
【0004】
特許文献1のダイオードスイッチによれば、内蔵電池に直列に接続されたダイオードによって、外部電源から内蔵電池への電流の流入を阻止することができる。これによって内蔵電池は外部電源から保護される。しかし、ダイオードは順方向に電流が流れる場合であっても、端子間に一定の電圧(順方向電圧)がかかる。したがって、内蔵電池からコンデンサマイクロホンに電源を供給するときは、内蔵電池に直列接続されたダイオードの順方向電圧の分だけ供給電圧が低下することになる。この低下した電圧がコンデンサマイクロホンの動作電圧になると、最大出力電圧が低下することになる。かかる不具合を軽減するためには、できるだけ順方向電圧が低いダイオードであることが望ましく、そのためには、ショットキーダイオードを用いるとよい。しかしながら、ショットキーダイオードも、順方向電圧は0.4Vである。
【0005】
例えば、内蔵電池の電圧が1.5Vであるとすると、上記のダイオードスイッチにショットキーダイオードを用いても、コンデンサマイクロホンに供給される電源電圧は1.1Vに低下する。すなわち、1.5Vから約27%低下することになる。これを最大出力レベルにすると約2.7dbの低下に相当する。最大音圧レベルが低下すると、コンデンサマイクロホンに大きな音圧が入力されたときに、出力信号が歪むことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−155234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、プラグインパワー方式と内蔵電池型との併用が可能なコンデンサマイクロホンにおいて、外部電源を使用しているときには内蔵電池の保護をし、かつ、内蔵電池を使用するときに、不要な電源電圧降下が生じることのないものが望ましい。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解消するためになされたもので、外部から供給される電源と内蔵電源とを切り換えて使用するコンデンサマイクロホンにおいて、マイクロホン回路に内蔵電源から電源を供給しているとき、電源電圧の降下が軽微で、内蔵電源の電圧値に近い電圧をマイクロホン回路に供給することができ、マイクロホンの出力レベルの低下を軽減することができるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
本発明はまた、外部電源が供給されているときは自動的に内蔵電源からの電源供給回路を遮断して、外部電源が内蔵電源に流入する不具合を防止することができるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、信号出力先となる外部装置が備える外部電源と内蔵電源とを切り替えて使用するコンデンサマイクロホンであって、内蔵電源からマイクロホン回路に至る内蔵電源供給回路と、外部電源からマイクロホン回路への外部電源供給の有無を検知する検知手段と、検知手段が外部電源供給を検知しているとき内蔵電源からの電源供給を遮断するスイッチ手段と、を備え、検知手段はフォト−MOSリレーが備える発光ダイオードで構成されていて外部電源とマイクロホン回路の間に直列に接続され、スイッチ手段はフォト−MOSリレーが備えているMOSFETで構成されていて内蔵電源と上記マイクロホン回路との間に直列に接続され、上記マイクロホン回路からの音声信号を上記信号出力側に通過させるバイパスコンデンサが上記発光ダイオードに並列に接続され、MOSFETは、発光ダイオードの点滅によって、内蔵電源供給回路とマイクロホン回路との接続と切り離しを切り替えることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部電源が供給されているときには内蔵電源の供給路を遮断するので、外部電源から内蔵電源への電流の流れ込みを防止して、内蔵電源を保護することができる。内蔵電源を遮断するスイッチは、電圧降下のない、あるいは電圧降下があっても電圧降下が少ないものを用いるから、内蔵電源からマイクロホン回路に供給される電源電圧を内蔵電源電圧に近い電圧にすることができ、内蔵電池使用時であっても、最大許容入力音圧レベルを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るコンデンサマイクロホンに外部電源を取り付けた状態の実施形態を示す回路図である。
図2】上記コンデンサマイクロホンから外部電源を取り外した状態の実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施形態について図を用いて説明をする。図1は、コンデンサマイクロホン1を外部装置2に取り付けた状態の例を示す回路図である。図2は、コンデンサマイクロホン1を外部装置2から取り外した状態の例を示す回路図である。図1及び図2において、符号10に示すコンデンサマイクロホンユニットは、電気音響変換部とインピーダンス変換器からなり、インピーダンス変換器を構成するFETのソース端子は接地されていて、ドレイン端子には動作電源が供給されるように構成されている。
【0013】
動作電源は、内蔵電池11か、または、外部装置2が備える外部電源21のいずれかから供給される。コンデンサマイクロホン1を外部装置2に取り付けると、負荷抵抗22を介して外部電源21から動作電源が供給される。このとき、コンデンサマイクロホンユニット10への電源供給は、フォト−MOSリレー13が備える発光ダイオード(LED)131を介して行われる。
【0014】
外部電源21からコンデンサマイクロホン1への電源供給は、コンデンサマイクロホンユニット10の信号線を介して供給される。すなわち、コンデンサマイクロホン1は、信号線と電源供給ラインとを共通の線で構成されている。
【0015】
フォト−MOSリレー13は、LED131と、LED131の発光状態に応じて開閉するスイッチ132と、を備えている。スイッチ132はLED131が点灯しているときには接点が開放され、消灯しているときには接点が閉じられる。
【0016】
図1に示すように、コンデンサマイクロホン1が外部装置2に取り付けられたときは、負荷抵抗22を介して外部電源21から供給される電流がフォト−MOSリレー13のLED131に流れる。これによって、LED131は点灯し、かつ、コンデンサマイクロホンユニット10へ動作電源の供給がされる。
LED131が点灯すると、スイッチ132の接点は開放される。そうすると、内蔵電池11はコンデンサマイクロホンユニット10への電源供給回路から切り離される。つまり、外部電源21からの電源供給がされる状態になると、スイッチ132が開放されて内蔵電池11には外部電源22からの電流が流れ込むことはない。このように、内蔵電池11に外部電源21からの電流が流入することによる内蔵電池11の発熱や液漏れを防ぐことができる。
【0017】
また、スイッチ132が開放されることで、負荷抵抗12はコンデンサマイクロホンユニット10の負荷にならなくなる。コンデンサマイクロホン10に負荷抵抗12と負荷抵抗22が同時に接続されると出力信号に歪みを生じさせるになるが、本実施形態では、係る不具合は生じない。
【0018】
コンデンサマイクロホン1が外部装置2に取り付けられて、外部電源21から動作電源が供給されると、コンデンサマイクロホンユニット10からの出力信号は、直流成分をカットするバイパスコンデンサ14を介して出力される
【0019】
一方、図2に示すように、コンデンサマイクロホン1の信号出力先となる外部装置からプラグインパワー方式の電源供給がないときは、フォト−MOSリレー13のLED131には電流が流れず消灯状態となる。そうすると、スイッチ132は接点を閉じた状態になる。スイッチ132の接点が閉じると、内蔵電池11から負荷抵抗12を介してコンデンサマイクロホンユニット10に動作電源が供給される。このとき、外部電源21からの電源供給に用いられる負荷抵抗22は、マイクロホンユニット10の信号線に接続していないから、コンデンサマイクロホンユニット10の負荷が大きすぎて出力信号の歪みの原因となることはない。
【0020】
また、内蔵電池11から供給される電源は、コンデンサマイクロホンユニット10に供給されるまでの間に、不要な電圧降下を生じさせることがないから、内蔵電池11によってマイクロホンユニット10を動作させても、コンデンサマイクロホン1の最大許容入力音圧レベルを大きくすることができる。
【0021】
外部装置2が取り外されて、外部電源21からプラグインパワー方式での動作電源が供給されない状態になっても、コンデンサマイクロホンユニット10からの出力信号は、直流成分をカットするバイパスコンデンサ14を介して出力される。
【符号の説明】
【0022】
1 コンデンサマイクロホン
10 コンデンサマイクロホンユニット
11 内蔵電池
12 負荷抵抗
13 フォト−MOSリレー
14 バイパスコンデンサ
21 外部電源
22 負荷抵抗
図1
図2