(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995532
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20160908BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R19/04
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-125239(P2012-125239)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-251746(P2013-251746A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−010046(JP,A)
【文献】
特開2008−005439(JP,A)
【文献】
特開平05−291877(JP,A)
【文献】
特開2010−273195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力信号が互いに逆位相の第1、第2のコンデンサマイクロホンユニットと、
第1可変抵抗器と第2可変抵抗器を有する2連の可変抵抗器と、を備え、
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力端子は、上記第1可変抵抗器の一方の端子、上記第2可変抵抗器の他方の端子、及び、平衡出力の一方に接続され、
上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力端子は、上記第1可変抵抗器の他方の端子、上記第2可変抵抗器の一方の端子、及び、平衡出力の他方に接続され、
上記第1可変抵抗器の摺動子は上記第1コンデンサマイクロホンユニットの振動板側に接続され、
上記第2可変抵抗器の摺動子は上記第2コンデンサマイクロホンユニットの固定極側に接続されている
コンデンサマイクロホン。
【請求項2】
上記第1コンデンサマイクロホンユニットは固定極出力であり、
上記第2コンデンサマイクロホンユニットは振動板出力である
請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号と上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号は、
上記第1可変抵抗器の上記摺動子の位置に応じて合成されて第1の合成信号が生成され、該第1の合成信号が上記第1コンデンサマイクロホンユニットの上記振動板に加えられ、
上記第2可変抵抗器の上記摺動子の位置に応じて合成されて第2の合成信号が生成され、該第2の合成信号が上記第2コンデンサマイクロホンユニットの上記固定極に加えられる
請求項1または2に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの上記振動板に加えられる上記第1の合成信号が上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号を増加させる信号となる位置に上記第1可変抵抗器の摺動子があるとき、
上記第2可変抵抗器の摺動子は、上記第2コンデンサマイクロホンユニットの上記固定極に加えられる上記第2の合成信号が上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号を増加させる信号となる位置にある
請求項3に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの上記振動板に加えられる上記第1の合成信号が上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号を減少させる信号となる位置に上記第1可変抵抗器の摺動子があるとき、
上記第2可変抵抗器の摺動子は、上記第2コンデンサマイクロホンユニットの固定極に加えられる上記第2の合成信号が上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号を減少させる信号となる位置にある
請求項3または4に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項6】
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第1可変抵抗器の抵抗値が最小となる位置に上記第1可変抵抗器の上記摺動子があるとき、上記第2可変抵抗器の上記摺動子は、上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第2可変抵抗器の抵抗値が最大となる位置にあり、
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第1可変抵抗器の抵抗値が最大となる位置に上記第1可変抵抗器の上記摺動子があるとき、上記第2可変抵抗器の上記摺動子は、上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第2可変抵抗器の抵抗値が最小となる位置にある請求項1乃至5のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項7】
上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第1可変抵抗器の抵抗値が最大となる位置に上記第1可変抵抗器の上記摺動子があるとき、上記第2可変抵抗器の上記摺動子は、上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第2可変抵抗器の抵抗値が最小となる位置にあり、
上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第1可変抵抗器の抵抗値が最小となる位置に上記第1可変抵抗器の上記摺動子があるとき、上記第2可変抵抗器の上記摺動子は、上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力信号に対する上記第2可変抵抗器の抵抗値が最大となる位置にある請求項1乃至6のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項8】
上記第1コンデンサマイクロホンユニットの出力端は平衡出力のHOT側端子に接続され、上記第2コンデンサマイクロホンユニットの出力端は平衡出力のCOLD側端子に接続されている請求項1乃至7のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサマイクロホンに関するものであって、詳しくは、信号対雑音比を劣化させずに、インピーダンス変換器への入力レベルの調整により出力信号の歪みを防ぐコンデンサマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンは、電気音響変換器であるコンデンサマイクロホンユニットのインピーダンスが高く、FET(電界効果型トランジスタ、以下同じ)などによるインピーダンス変換器を必要とする。インピーダンス変換器には、動作電源が必要である。この動作電源の電圧によって、コンデンサマイクロホンの最大出力レベルは制限されるので、コンデンサマイクロホンユニットに入力される音波の大きさが、最大出力レベルを超えるような大きさであると、出力信号が歪むことになる。
【0003】
このような出力信号の歪みを防止するため、インピーダンス変換器への入力レベルを減衰させる「PAD」が用いられる。PADは、コンデンサマイクロホンユニットに並列接続されるコンデンサからなり、インピーダンス変換器の入力信号レベルを、コンデンサマイクロホンユニットとの静電容量の比に応じて減衰させる。これによってインピーダンス変換器への過大入力を防ぐことができる。
【0004】
一方、インピーダンス変換器は固有の雑音を発生させるが、この雑音レベルは入力信号のレベルと関係なく一定である。つまり、PADを用いることでインピーダンス変換器への入力レベルを減衰させて過大入力による歪みを防止すると、コンデンサマイクロホンの信号対雑音比を低下させることになる。
【0005】
従来のコンデンサマイクロホンにおいて、信号対雑音比の低下を改善するために、不平衡であるインピーダンス変換器の出力を平衡にし、インピーダンス変換器から出力される音声信号の歪みを低減させるコンデンサマイクロホンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−101302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のコンデンサマイクロホンは、インピーダンス変換器の2次歪みを相殺して、出力ひずみを低減することができる。しかし、最大出力レベルを超えるような過大入力への対処にPADは必要であるから、PADによる信号対雑音比の低下が生じる。
【0008】
また、従来のコンデンサマイクロホンにおいて、入力レベルの大きさに応じてPADの動作を選択することができるものが知られている。
図9には、従来のコンデンサマイクロホンの例を示す。
図9に示すコンデンサマイクロホン100は、コンデンサマイクロホンユニット21および22と、インピーダンス変換器31および32と、PAD40と、を有してなる。
【0009】
コンデンサマイクロホンユニット21の固定極212はインピーダンス変換器31の入力端子に接続され、第1PAD用コンデンサ41はスイッチ43を介してコンデンサマイクロホンユニット21に並列に接続される。また、コンデンサマイクロホンユニット22の振動板221はインピーダンス変換器32の入力端子に接続され、第2PAD用コンデンサ42はスイッチ43を介してコンデンサマイクロホンユニット22に並列に接続される。コンデンサマイクロホンユニット21の振動板211とコンデンサマイクロホンユニット22の固定極222はともに接地されている。
【0010】
PAD40を構成する第1PAD用コンデンサ41と、第2PAD用コンデンサ42の接続オン・オフは、スイッチ43により切り替えることができる。コンデンサマイクロホン100に入力される音波のレベルが小さいときは、スイッチ43を開放してPAD40の動作をオフにし、入力される音波のレベルが大きいとスイッチ43を閉じてPAD40の動作をオンにする。PAD40のオン・オフは利用者がスイッチ43を操作することで適宜切り替わる。
【0011】
また、PAD40の構成を、静電容量が異なる複数のコンデンサをスイッチにより切り替える構成にすることで、インピーダンス変換器への入力信号レベルの減衰量を多段階に可変させることができる。しかし、減衰量を連続的に可変させることはできず、また、インピーダンス変換器への入力レベルが小さくても増幅させることはできないので、信号対雑音比を一定に保つことはできない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、信号対雑音比を変化させることなく、入力レベルを連続的に減少させることができて過大入力に対してはPADとして機能し、入力レベルが小さいときに入力レベルを連続的に増加させることができるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、出力信号が互いに逆位相の第1、第2のコンデンサマイクロホンユニットと、
第1可変抵抗器と第2可変抵抗器を有する2連の可変抵抗器と、を備え、第1コンデンサマイクロホンユニットの出力
端子は、第1可変抵抗器の一方の端子、第2可変抵抗器の他方の端子、及び、平衡出力の一方に接続され、第2コンデンサマイクロホンユニットの出力端子は、第1可変抵抗器の他方の端子、第2可変抵抗器の一方の端子、及び、平衡出力の他方に接続され、第1可変抵抗器の摺動子は第1コンデンサマイクロホンユニットの振動板側に接続され、第2可変抵抗器の摺動子は第2コンデンサマイクロホンユニットの固定極側に接続されている、ことを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インピーダンス変換器への入力レベルを減衰させても信号対雑音比を変化させることなく、連続的に減衰量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施例を示す回路図である。
【
図2】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子を一方の端子側に移動させたときの例を示す回路図である。
【
図3】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子を一方の端子側に移動させたときの別の例を示す回路図である。
【
図4】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子を他方の端子側に移動させたときの例を示す回路図である。
【
図5】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子を他方の端子側に移動させたときの別の例を示す回路図である。
【
図6】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子が中点にあるときの周波数応答特線図である。
【
図7】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子がプラス側にあるときの周波数応答特線図である。
【
図8】実施例におけるコンデンサマイクロホンが備える可変抵抗の摺動子がマイナス側にあるときの周波数応答特線図である。
【
図9】従来のコンデンサマイクロホンの例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施例について図を用いて説明をする。
図1は、本発明に係るコンデンサマイクロホン10の実施例を示す回路図である。
図1に示すようにコンデンサマイクロホン10は、第1コンデンサマイクロホンユニット11と、第2コンデンサマイクロホンユニット12と、第1インピーダンス変換器13と、第2インピーダンス変換器14と、2連の可変抵抗器15と、を有してなる。
【0017】
第1コンデンサマイクロホンユニット11は、振動板111と、固定極112と、を有し、振動板111と固定極112は図示しないスペーサを介して所定の隙間を形成した状態で、図示しないマイクロホンケースの内部に配置される。第2コンデンサマイクロホンユニット12は、振動板121と、固定極122と、を有し、振動板121と固定極122は図示しないスペーサを介して所定の隙間を形成した状態で、図示しないマイクロホンケースの内部に配置される。
【0018】
第1インピーダンス変換器13と第2インピーダンス変換器14はともにFETを有するインピーダンス変換回路である。第1コンデンサマイクロホンユニット11は固定極出力であって、出力端である固定極112が第1インピーダンス変換器13の入力端(FETのゲート端子)に接続されている。第2コンデンサマイクロホンユニット12は振動板出力であって、出力端である振動板121が第2インピーダンス変換器14の入力端(FETのゲート端子)に接続されている。
【0019】
第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号は、第1インピーダンス変換器13の出力端(FETのドレイン端子)から出力され、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号は、第2インピーダンス変換器14の出力端(FETのドレイン端子)から出力される。第1コンデンサマイクロホンユニット11は固定極出力であり、第2コンデンサマイクロホンユニット12は振動板出力であるから、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号は互いに逆位相の信号であり、コンデンサマイクロホン10の出力は平衡出力である。
図1に示すように、第1インピーダンス変換器13の出力端を平衡出力のHOT端子とし、第2インピーダンス変換器14の出力端を平衡出力のCOLD端子とする。
【0020】
第1インピーダンス変換器13の出力端と第2インピーダンス変換器14の出力端の間には可変抵抗器15が接続されている。可変抵抗器15は第1可変抵抗151と第2可変抵抗152とを有してなる2連の可変抵抗であって、第1可変抵抗151の第1摺動子153と、第2可変抵抗152の第2摺動子154は連動する。
【0021】
第1可変抵抗151は、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力端子である第1インピーダンス変換器13の出力端と、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力端子である第2インピーダンス変換器14の出力端を接続するように配置されている。第2可変抵抗152は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力端子である第2インピーダンス変換器14の出力端と、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力端子である第1インピーダンス変換器13の出力端を接続するように配置されている。
【0022】
以下の説明において、第1可変抵抗151の第1インピーダンス変換器13側の端子を「第1端子21」、第1可変抵抗151の第2インピーダンス変換器14側の端子を「第2端子22」、第2可変抵抗152の第2インピーダンス変換器14側の端子を「第3端子23」、第2可変抵抗152の第1インピーダンス変換器13側の端子を「第4端子24」、という。また、以下の説明において、第1端子21と第3端子23をそれぞれ「プラス側」といい、第2端子22と第4端子24をそれぞれ「マイナス側」という。
【0023】
第1可変抵抗151の第1端子21と第2可変抵抗152の第4端子24が接続され、第1可変抵抗151の第2端子22と第2可変抵抗152の第3端子23が接続されている。
【0024】
ここで、第1摺動子153と第2摺動子154の「連動」について説明をする。第1摺動子153を第1端子21側に移動させると第2摺動子154は第3端子23側に移動し、第1摺動子153を第2端子22側に移動させると第2摺動子154は第4端子24側に移動する。当然ながら、第2摺動子154を第3端子23側に移動させると第1摺動子153は第1端子21側に移動し、第2摺動子154を第4端子24側に移動させると第1摺動子153は第2端子22側に移動する。このように、第1摺動子153または第2摺動子154のいずれか一方の摺動子を移動させることで他方の摺動子は所定の方向に移動する。
【0025】
第1摺動子153は、第1コンデンサマイクロホンユニット11の振動板111に接続されている。また、第2摺動子154は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の固定極122に接続されている。
【0026】
第1コンデンサマイクロホンユニット11の振動板111には、第1摺動子153を介して、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号と、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号との合成信号が加えられる。ここで、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号と第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号は逆位相である。また、それぞれの出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値は、第1摺動子153の位置に応じて決定される。この各出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値の割合によって、互いに逆位相の出力信号が合成される。
【0027】
同様に、第2コンデンサマイクロホンユニット12の固定極122には、第2摺動子154を介して、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号と、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号との合成信号が加えられる。前述のとおり、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号と第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号は逆位相である。また、それぞれの出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値は、第2摺動子154の位置に応じて決定される。この各出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値の割合によって、互いに逆位相の出力信号が合成される。
【0028】
図1に示すように、第1摺動子153と第2摺動子154がそれぞれ、第1可変抵抗151と第2可変抵抗152の中点にあるときは、第1コンデンサマイクロホンユニット11からの出力信号と第2コンデンサマイクロホンユニット12からの出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値は同じになるから、第1コンデンサマイクロホンユニット11からの出力信号と第2コンデンサマイクロホンユニット12からの出力信号は互いに相殺される。よって、第1摺動子153には合成信号は流れず、振動板111には第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号と同相の信号も逆位相の信号も加わらない。
【0029】
同様に、第2コンデンサマイクロホンユニット12からの出力信号と第1コンデンサマイクロホンユニット11からの出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値は同じになるから、第2コンデンサマイクロホンユニット12からの出力信号と第1コンデンサマイクロホンユニット11からの出力信号は互いに相殺される。よって、第2摺動子154には合成信号は流れず、固定極122には第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号と同相の信号も逆位相の信号も加えられない。
【0030】
このように、第1摺動子153と第2摺動子154がそれぞれ第1可変抵抗151と第2可変抵抗152の中点にあるときは、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12からの出力信号は増加や減少することなく、第1インピーダンス変換器13と第2インピーダンス変換器14に入力され、HOT端子とCOLD端子から平衡出力される。
【0031】
図6は、第1摺動子153および第2摺動子154がそれぞれ第1可変抵抗151と第2可変抵抗152の中点にあるときの、コンデンサマイクロホン10の周波数応答特性の例を示している。
【0032】
次に、第1摺動子153と第2摺動子154を中点から移動させたときのコンデンサマイクロホン10の出力信号について説明する。
図2および
図3は、第1摺動子153と第2摺動子154をそれぞれプラス側に移動させたときのコンデンサマイクロホン10の例を示している。
【0033】
第1摺動子153を介して振動板111に加えられる合成信号161は、第1可変抵抗151の抵抗値に応じて低下した第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号16と第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号17が合成された信号である。
図2に示すように、第1摺動子153をプラス側に移動させたときは、出力信号16に対する第1可変抵抗151の抵抗値は最小であって、出力信号17に対する第1可変抵抗151の抵抗値は最大である。よって、第1摺動子153から振動板111に加えられる合成信号161は、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号16と同相の信号成分が最大割合の信号である。これによって、第1コンデンサマイクロホンユニット11の固定極112からの出力レベルは増加する。
【0034】
第2摺動子154を介して固定極122に加えられる合成信号171は、第2可変抵抗152の抵抗値に応じて低下した第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号17と第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号16が合成された信号である。
図3に示すように、第2摺動子154をプラス側に移動させたときは、出力信号16に対する第2可変抵抗152の抵抗値は最大であって、出力信号17に対する第2可変抵抗152の抵抗値は最小である。よって、第2摺動子154から固定極122に加えられる合成信号171は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号17と同相の信号成分が最大割合の信号である。これによって、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121からの出力レベルは増加する。
【0035】
このように、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値が小さくなるように、第1摺動子153をプラス側に移動させると、第2摺動子154もプラス側に移動する。これによって、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値が大きくなり、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値が大きくなり、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値は小さくなる。つまり、2連の可変抵抗器15の抵抗値を変化させることで、第1インピーダンス変換器13への入力信号と第2インピーダンス変換器14への入力信号のレベルを連続的に増加させることができる。
【0036】
図7は、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号を増加させる状態にあるときの、コンデンサマイクロホン10の周波数応答特性の例を示している。同図は、第1摺動子153および第2摺動子154が中間位置にあるときの周波数応答特性(
図6)に比べて出力レベルが約6dB増加していることを示している。
【0037】
図4および
図5は、第1摺動子153と第2摺動子154をそれぞれマイナス側に移動させたときのコンデンサマイクロホン10の例を示している。
図4に示すように、第1摺動子153をマイナス側に移動させたときは、出力信号16に対する第1可変抵抗151の抵抗値は最大であって、出力信号17に対する第1可変抵抗151の抵抗値は最小である。よって、第1摺動子153から振動板111に加えられる合成信号162は、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号16と逆位相の信号が最大の割合で合成されている信号である。これによって、第1コンデンサマイクロホンユニット11の固定極112からの出力レベルは低下する。
【0038】
また、
図5に示すように、第2摺動子154をマイナス側に移動させたときは、出力信号16に対する第2可変抵抗152の抵抗値は最小であって、出力信号17に対する第2可変抵抗152の抵抗値は最大である。よって、第2摺動子154から固定極122に加えられる合成信号172は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号17と逆位相の信号が最大の割合で合成されている信号である。これによって、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121からの出力レベルは低下する。
【0039】
このように、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値が大きくなるように、第1摺動子153をマイナス側に移動させると、第2摺動子154もマイナス側に移動する。これによって、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号に対する第1可変抵抗151の抵抗値は小さくなり、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値は小さく、第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号に対する第2可変抵抗152の抵抗値は大きくなる。つまり、2連の可変抵抗器15の抵抗値を変化させることで、第1インピーダンス変換器13への入力信号と第2インピーダンス変換器14への入力信号のレベルを連続的に減少させることができる。
【0040】
図8は、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12の出力信号を減少させる状態にあるときの、コンデンサマイクロホン10の周波数応答特性の例を示している。同図は第1摺動子153および第2摺動子154が中間位置にあるときの周波数応答特性(
図6)に比べて出力レベルが約6dB減少していることを示している。
【0041】
以上のように、コンデンサマイクロホン10へ入力される音波のレベルが小さいときは、可変抵抗器15の第1摺動子153と第2摺動子154をともに、プラス側に移動させることで、インピーダンス変換器への入力信号のレベルが大きくなる。その結果、HOT端子とCOLD端子から出力される平衡出力信号のレベルは大きくなり、また、インピーダンス変換器への入力信号レベルが大きくなってもインピーダンス変換器固有の雑音レベルは変化しないから、信号対雑音比を悪化させることなく、好適な出力レベルを得ることができる。
【0042】
また、可変抵抗器15によって、従来のPADと同様の効果を得ることができる。可変抵抗器15によって第1インピーダンス変換器13と第2インピーダンス変換器14への入力レベルを減少させ、HOT端子とCOLD端子から出力される平衡出力信号の歪みを防ぎ、好適な出力信号を得ることができる。
【0043】
本実施例に係るコンデンサマイクロホン10によれば、可変抵抗器15によって、第1インピーダンス変換器13と第2インピーダンス変換器14への信号の入力レベルを−6dB〜+6dBの間で連続して変化させることができる。これによって、過大入力に対しては信号レベルを減衰させ、過少入力に対しては信号レベル増幅させることができ、かつ、信号対雑音比は変化させないコンデンサマイクロホンを得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 コンデンサマイクロホン
11 第1コンデンサマイクロホンユニット
12 第2コンデンサマイクロホンユニット
13 第1インピーダンス変換器
14 第2インピーダンス変換器
15 可変抵抗器
151 第1可変抵抗
152 第2可変抵抗
153 第1摺動子
154 第2摺動子