(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる内層と、該内層の外側に設けられたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる外層を有するタンク壁面部を有し、前記内層および外層を構成するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル樹脂が、それぞれ、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.3〜0.8dl/gである、樹脂製タンクであって、
前記内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(A)と前記外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(B)は、メルトボリュームレート(MVR)が300℃、荷重5kgの条件下で、樹脂成分(B)−樹脂成分(A)≧2cm3/10分を満たす、樹脂製タンク。
前記内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(A)、および、前記外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(B)が、それぞれ、ポリフェニレンエーテル樹脂40〜90重量%およびスチレン系樹脂60〜10重量%を含む、請求項1に記載の樹脂製タンク。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の樹脂製タンクは、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる内層と、該内層の外側に設けられたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる外層を有するタンク壁面部を有し、前記内層および外層を構成するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル樹脂が、それぞれ、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.3〜0.8dl/gであることを特徴とする。以下、図面に従って、本発明の好ましい実施形態を示す。本発明がこれらの実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0010】
図1は、本発明の樹脂製タンクを適用した貯湯タンク10であり、貯湯システムにおいて、ガスなどを用いる熱源によって沸かした湯水を貯めるために用いられる耐圧・耐熱容器である。貯湯タンク10は、脚部11を介して設置されている。タンク底部の入口部12には、図示しない熱源によって沸かした湯水をタンク内に導入する配管13が接続され、タンク頂部の出口部14には、貯溜した湯水を必要な箇所まで導出する配管15が接続されている。入口部12および出口部14は図示例の位置に限定されるものではなく、タンクの側壁など適宜の位置に設けることができる。貯湯タンク10の仕様は特に限定されるものではない。
【0011】
本発明で用いる樹脂製タンクの容量は、特に定めるものではないが、例えば、10〜150Lのタンクに適用できる。特に本発明の樹脂製タンクは、大型タンクに好ましく用いられ、例えば、50L以上の大型タンクに好ましく用いることができる。
本発明で用いる樹脂製タンクは、湯、すなわち、常温以上の水を貯蔵するのに用いられ、例えば、50〜95℃の水の貯蔵に適している。ここでの水には、水道水が例示される。その他の使用例については後述する。
さらに、本発明の樹脂製タンクは、金属製タンクと異なり、軽くすることが可能であり、例えば、80Lのタンクで7kg以下とすることができる。
【0012】
図2は、タンク壁面部16を示したものであり、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる内層31と、該内層の外側に設けられたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる外層32を有する。タンク壁面部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらに第3の層を、内層の内側、および/または、外層の外側に有していてもよいが、内層と外層の2層からなることが好ましい。また、本発明では、外層と内層のいずれもポリフェニレンエーテル系樹脂組成物から形成しているので密着性が高く接着層等の中間層がない。しかしながら、内層と外層の間に中間層を有する実施形態を本発明から排除するものではない。
タンク壁面部の厚さは、求められる性能等にもよるが、内層および外層、並びに必要に応じて設けられる層の合計厚みを、例えば、2〜10mmとすることができ、4〜7mmが好ましい。
上記のような構成とすることにより、本発明の樹脂製タンクは、例えば、タンク壁面部の厚さを4mmとし、80℃の水を2kg注水したときの耐圧力を0.7MPa以上のものとすることができる。また、例えば、タンク壁面部の厚さを5mmとし、80℃の水を2.5kg注水したときの耐圧力を0.9MPa以上のものとすることができる。
【0013】
<内層>
本発明における内層は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、樹脂成分(A)のみからなっていてもよいし、添加剤を含んでいてもよい。通常は、添加剤を含む。好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が添加剤を含み、かつ、該組成物の80重量%以上が樹脂成分(A)であることが好ましい。
内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(A)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む。本発明におけるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、ポリフェニレンエーテル樹脂のみであってもよいし、ポリフェニレンエーテル樹脂に他の樹脂を配合した複合樹脂であってもよい。本発明では、ポリフェニレンエーテル樹脂に対して、その流動性や耐衝撃性を改良するためにスチレン系樹脂を配合してなるポリフェニレンエーテル系樹脂であることが好ましい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の樹脂成分を含んでいてもよい。
本発明における樹脂成分(A)は、ポリフェニレンエーテル樹脂40〜90重量%およびスチレン系樹脂60〜10重量%を含むことが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂55〜90重量%およびスチレン系樹脂45〜10重量%を含むことがより好ましく、実質的にこれらの成分のみからなることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂を40重量%以上とすることにより、耐熱性および機械的強度が向上する傾向にある。また、ポリフェニレンエーテル樹脂を90重量%以下とすることにより、流動性が向上する傾向にある。
【0014】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位を主鎖に有する重合体であり、単独重合体又は共重合体の何れであっても良い。
【0015】
【化1】
(式中、2つのR
aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、又はハロ炭化水素オキシ基を表し、2つのR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、又はハロ炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのR
aがともに水素原子になることはない。)
ポリフェニレンエーテル樹脂の詳細については、特開2011−27399号公報の段落番号0033〜0041の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0016】
本発明におけるポリフェニレンエーテル系樹脂に用いられるスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の重合体、スチレン系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体及びスチレン系グラフト共重合体等が挙げられる。スチレン系樹脂の詳細については、特開2011−27399号公報の段落番号0042〜0046の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0017】
内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.3〜0.8dl/gであることが好ましく、0.4〜0.6dl/gであることがより好ましい。このような構成とすることにより、樹脂製タンクの強度を向上させることができる。
内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(A)は、メルトボリュームレート(MVR)が280℃、荷重5kgの条件下で6〜18cm
3/10分であることが好ましく、 8〜15cm
3/10分であることがより好ましい。このような構成とすることにより、樹脂製タンクの強度を向上させることができる。
【0018】
本発明の内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物には、その目的を損なわない範囲において、各種樹脂添加剤を含有していてもよい。含有し得る各種樹脂添加剤としては、例えば、相用化剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐侯性改良剤、核剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、補強剤、分散剤、導電剤、耐衝撃性改良剤などが挙げられる。特に、内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物には、熱安定剤、酸化防止剤を配合することが好ましい。
これらの添加剤の詳細については、特開2011−27399号公報の段落番号0054〜0093の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0019】
内層は耐温水性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなることが好ましい。具体的には、樹脂組成物を2mm厚さに成形した試験片を100℃で1000時間処理した後の、ISO179に従ったノッチ無シャルピー衝撃強度が17kJ/m
2以上となる樹脂組成物や、ISO527に従って測定した引っ張り強度が54MPa以上となる樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0020】
内層に用いるポリフェニレン系樹脂組成物は、三菱エンジニアリングプラスチック製、ユピエース(登録商標)を等を用いることができる。また、内層に用いるポリフェニレン系樹脂組成物は、食品衛生法・食品、添加物等の規格・基準(昭和34年厚生省規格370号)に適合するものが好ましい。
【0021】
内層の厚さは、例えば、1〜8mmとすることができ、2〜4mmが好ましい。
【0022】
<外層>
本発明における外層は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、樹脂成分(B)のみからなっていてもよいし、添加剤を含んでいてもよい。通常は、添加剤を含む。好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が添加剤を含み、かつ、該組成物の80重量%以上が樹脂成分(B)であることが好ましい。
外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(B)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む。本発明では、ポリフェニレンエーテル樹脂に対して、その流動性や耐衝撃性を改良するためにスチレン系樹脂を配合してなるポリフェニレンエーテル系樹脂であることが好ましい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の樹脂成分を含んでいてもよい。
本発明における樹脂成分(B)は、ポリフェニレンエーテル樹脂55〜90重量%およびスチレン系樹脂45〜10重量%を含むことが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂70〜90重量%およびスチレン系樹脂30〜10重量%を含むことがより好ましく、実質的にこれらの成分のみからなることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂を55重量%以上とすることにより、耐熱性および機械的強度が向上する傾向にある。また、ポリフェニレンエーテル樹脂を90重量%以下とすることにより、流動性が向上する傾向にある。
本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂およびスチレン系樹脂の詳細は、内層の記載を参酌できる。
【0023】
外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.3〜0.8dl/gであることが好ましく、0.4〜0.6dl/gであることがより好ましい。このような構成とすることにより、樹脂製タンクの強度を向上させることができる。
外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(B)は、メルトボリュームレート(MVR)が300℃、荷重5kgの条件下で4〜15cm
3/10分であることが好ましく、6〜13cm
3/10分であることがより好ましい。このような構成とすることにより、樹脂製タンクの強度を向上させることができる。
【0024】
本発明の外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物には、その目的を損なわない範囲において、各種樹脂添加剤を含有していてもよい。含有し得る各種樹脂添加剤としては、例えば、相用化剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐侯性改良剤、核剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、補強剤、分散剤、導電剤、耐衝撃性改良剤などが挙げられる。特に、外層の形成に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、通常、樹脂製タンクの最外側層を形成することから、染料、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防菌剤などを好ましく含む。
これらの添加剤の詳細については、特開2011−27399号公報の段落番号0054〜0093の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0025】
外層に用いるポリフェニレン系樹脂組成物は、三菱エンジニアリングプラスチック製、ユピエース(登録商標)を用いることができる。
【0026】
外層の厚さは、例えば、1〜8mmとすることができ、2〜6mmが好ましい。
【0027】
<内層と外層の関係>
内層と外層は、それぞれ、上述の中から要求される耐圧力、満足すべき断熱性能ないし保温性能に応じて適宜選択される。例えば、タンクの厚さは、内層:外層=1:4〜4:1が好ましく、1:3〜1:1がより好ましい。
前記内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(A)、および、前記外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(B)は、その組成の90重量%以上が共通することが好ましく、98重量%以上が共通することが好ましい。さらに、前記内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物と前記外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、その組成の90重量%以上が共通することが好ましく、98重量%以上が共通することが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂組成物の相溶性が高くなり、内層と外層の密着性が向上する傾向にある。さらに、前記内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物および/または前記外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、相溶化剤を含んでいてもよい。相溶化剤を含むと、内層と外層の密着性がより向上する傾向にある。
また、内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(A)と外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の樹脂成分(B)は、メルトボリュームレート(MVR)が300℃、荷重5kgの条件下で樹脂成分(B)−樹脂成分(A)≧2cm
3/10分を満たすことが好ましく、樹脂成分(B)−樹脂成分(A)≧3cm
3/10分を満たすことがより好ましい。このような構成とすることにより、耐圧力性がより向上する傾向にある。
【0028】
[製造方法]
内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物および、外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の製造にあたっては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂および必要に応じて配合される各種の添加剤が均一に混合される方法であればいかなる方法を採用することもできる。好ましくは溶融混練によるものであり、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練機を使用する方法が挙げられる。溶融混練機としては、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
【0029】
内層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物および、外層に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造する際の溶融混練温度と時間は、樹脂組成物を構成するポリフェニレンエーテル系樹脂の種類及び配合率や混練機の種類などによっても異なるが、混練温度は、通常、210〜350℃、好ましくは220〜320℃、さらに好ましくは220〜290℃である。この混練温度が高過ぎると、樹脂組成物の熱劣化が問題となり、機械的強度の低下を生じることがある。
【0030】
[貯湯タンクの製造方法]
上記構成の貯湯タンク10および貯湯タンク10aは、ブロー成形などの一般的な樹脂成形技術を適用して製造することができ、金属製タンクを製造する場合に必要であった溶接作業などが不要となり、量産化、製造の自動化を容易に図ることができ、さらに貯湯タンクの品質の均一化・安定化も容易に図ることができる。また、金属製のタンクに比べると、タンク形状を選択する上での自由度が大きく、軽量にでき、断熱性にも優れている。必要であれば断熱材をさらに設けることもできる。その場合において、樹脂材料は金属材料に比べて熱伝導率が低いことから、断熱材の使用量を軽減することができる。
【0031】
また、プラスチック製品の安全性を確保するために、「食品、添加物等の規格基準」(厚生省告示第370号)が定められており、この規格基準は逐次改正され、「合成樹脂製器具又は容器包装の規格基準」(厚生労働省告示第201号)として個別規格が定められている。本発明ではポリフェニレンエーテル系樹脂組成物として、上記の規格基準を満足するものを採用することが好ましい。このような樹脂を採用すると、本実施形態の貯湯タンク10および10aは、飲用にも適用する湯水を貯めるためのタンクとして好適に用いることができる。
【0032】
上記では、本発明の樹脂製タンクを貯湯タンク10、10aに適用した実施形態について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、貯湯以外の用途にも適用できる。本発明で用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物として、「食品、添加物等の規格基準」(厚生省告示第370号)ないし「合成樹脂製器具又は容器包装の規格基準」(厚生労働省告示第201号)の規格基準に適合するものを採用することにより、例えば、牛乳等の飲料の加工ラインや食品加工ラインに設置するタンクに適用することができる。また、液体を貯える場合に限られず、ゲル状の材料を貯えることもできる。また、本発明は、保温機能のみを有する樹脂製タンクに限られるものではなく、加熱器をさらに内蔵して保温・加熱機能を有する樹脂製タンクに適用することもできる。さらに、樹脂製タンクは、タンク形状を選択する上での自由度が大きいことから、タンク形状は図示した形状に限定されるものではなく、所望の形状を選択することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[貯湯タンクの形状と製造方法]
図3および
図4に記載の貯湯タンク110を製造した。
図3(A)、(B)は、貯湯タンク110の正面図および上面図である。
図4(A)は、貯湯タンク成形装置である多層ブロー成形機140を示し、
図4(B)は、成形装置の金型150を開いた状態を示し、
図4(C)は、金型150を閉じた状態を示している。また、
図4(A)のDが示す部分は、
図4(D)に相当する。
【0035】
<タンク110の形状>
図3に示す貯湯タンク110は、円筒形状を有し、寸法は、外径d=300mm、全長L=1600mmとした。胴部の両端に位置する上蓋部および下蓋部は半球形状とした。下蓋部に注水用ノズル111を3箇所、上蓋部に排水用ノズル112を3箇所、合計6箇所設けた。
タンク110は、内層と外層からなり、内層31および外層32は、それぞれ、以下に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−1およびポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−2を用いて形成した。
【0036】
<材料>
ポリフェニレンエーテル樹脂:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(ポリキシレノールシンガポール社製「PX100L」、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度0.47dl/g)
スチレン系樹脂−1:ハイインパクトポリスチレン(日本ポリスチレン社製「HT478」、重量平均分子量(Mw)200,000、MFR3.2g/10分(200℃、荷重5kgで測定))
スチレン系樹脂−2:スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下「SEBS」と略記する)(クラレ社製「セプトン8006」、スチレン含有量33重量%、数平均分子量200,000)
安定剤−1:ホスホナイト系熱安定剤(クラリアントジャパン社製「サンドスタブP−EPQ」
安定剤−2:フェノール系酸化防止剤(吉富製薬社製「ヨシノックスBHT」)
【0037】
<内層31に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−1の調製>
二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数300rpmの条件にて、ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン系樹脂−1、スチレン系樹脂−2、安定剤−1,2を高速回転ミキサーにて均一に混合し、押出機の上流部に投入して溶融混練させてペレット化した。各成分の配合量は、ポリフェニレンエーテル樹脂(60重量%)、スチレン系樹脂−1(35重量%)及びスチレン系樹脂−2(5%重量部)の合計100重量部に対し、安定剤−1(0.3重量部)、安定剤−2(0.3重量部)とした。樹脂成分のMVRは、10cm
3/10分であった。
【0038】
<外層32に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−2の調製>
二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数300rpmの条件にて、ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン系樹脂−1、安定剤−1,2を高速回転ミキサーにて均一に混合し、押出機の上流部に投入して溶融混練させてペレット化した。各成分の配合量は、ポリフェニレンエーテル樹脂(75重量%)、スチレン系樹脂−1(20重量%)及びスチレン系樹脂−2(5%重量部)の合計100重量部に対し、安定剤−1(0.3重量部)、安定剤−2(0.3)重量部とした。樹脂成分のMVRは、6.8cm
3/10分であった。
【0039】
<成形装置>
図4(A)〜(D)を参照して、タンク110の作製にはブロー成形法を適用した。専用の多層ブロー成形機140と、金型150とを含む成形装置を用いてタンク110を成形した。成形機140には樹脂ペレットを溶融するための4本のスクリュー141、142、143、144が設けられている。スクリュー141、142、143、144に連続して、溶融した樹脂をためるアキュームレータ、押し出し装置が設けられている。アキュームレータは5層に分かれており、それぞれ別種類の材料を4種5層の構成で押し出すことが可能である。本実施例では、スクリュー141を内層用とし、スクリュー142を外層用とした。
【0040】
<成形条件>
内層用のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−1を、φ90mmのスクリュー141によって220〜290℃にて溶融した。外層用のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−2を、別のφ90mmスクリュー142によって200〜270℃にて溶融した。ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−1の溶融樹脂は内層用のアキュームレータ内に、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物−2の溶融樹脂は外層用のアキュームレータ内に、200〜290℃にそれぞれ加熱されて溜められる。2層(内層、外層)の溶融樹脂を同時に垂直・真下に押し出し、2層となったパリソン151と呼ばれる円筒形樹脂を作成した。押し出した樹脂は外径φ150mmの円筒状で、長さは約2m、重量は7kgであった。容量は、約80Lであった。
【0041】
<成形方法>
押し出しと同時に、アキュームレータ下部の型締装置に取り付けた金型150を用いて樹脂を挟み込んだ。金型150に挟まれた樹脂の内部に圧力0.3〜1MPaの空気を送り込み、樹脂を金型150に押し付け、冷やし固めることによって、樹脂製タンクを成形した(
図4(B)(C)を参照)。金型150には30〜90℃の温水を通水することによって樹脂を冷却した。金型150は樹脂製タンク110の上述した形状を成形するために専用に製作したものを用いた。
タンク壁面部の厚さは、4mmとした。内層と外層の厚みの比率は、1:3であった。
得られたタンク(1)および(2)を用いて、以下に記載の耐熱・耐圧試験を行った。
【0042】
<耐熱・耐圧試験>
タンク110の上下のノズル各1ケ所ずつにネジ形状を後加工で作成し、またノズル中心にφ10〜15の穴をあけた。作成したネジ形状にジョイントを接続し、注水用のホース、排水用のホースをそれぞれ接続した。タンク110を直立した状態で設置した。給湯器の設定温度を一定にして、80℃に加熱した水道水を注水ホースから注水していき、タンク内をお湯で充填させた。その後、排水側のジョイントを閉塞し、注水側のジョイントの接続を水圧ポンプに切り替えた。タンクが破損するまで、水圧ポンプを用いて、タンク内に圧力を徐々に加えていき、破壊試験を行った。
【0043】
<耐熱・耐圧試験結果>
上記タンクでは、タンク排水部の水温が80℃で、ポンプ圧力計が1.0MPaでタンクの胴部側面が破裂した。