(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995561
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20160908BHJP
G01M 7/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
G05B13/02 D
G01M7/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-151411(P2012-151411)
(22)【出願日】2012年7月5日
(65)【公開番号】特開2014-13545(P2014-13545A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 輝雅
【審査官】
青山 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−079374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/00 − 13/04
G05D 19/00 − 19/02
G01M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験構造物に対して、外力を負荷して各種の試験を行うための試験装置であって、
デジタル制御器を用いて、1サンプル毎の入出力特性を計測して、得られた計測値からインパルス応答を計算し、
前記インパルス応答の計算結果を、制御対象である被試験構造物の同定値として、制御にフィードバックしてインパルス応答制御を行い、
前記デジタル制御器を用いて、下記式、すなわち、
Y(t)=H(t)・X(t)
ここで、X(t)は入力値、Y(t)は出力値、H(t)は、デジタル制御器の伝達関数である。
を用いて、伝達関数H(t)を求めて、
次の目標値Rに基づいて、下記式、すなわち、
R=H・Xから、次の入力値Xを、
X=R/Hから計算し、
次の出力値Yを、
Y=Rから計算してインパルス応答制御を行うことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記デジタル制御器が、
入力値を処理するインパルス応答計算処理部と、
前記インパルス応答計算処理部からの入力に基づいてデジタル処理を行うPID制御器とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記インパルス応答計算処理部が、入力値を補正する可変ウェイトと、インパルス応答計算処理器とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記PID制御器から出力された命令値によって、試験を行っている被試験構造物からのセンサー信号を、下記(1)〜(3)の3系統に分割、すなわち、
(1)前記PID制御器のフィードバックゲインへのフィードバック、
(2)前記インパルス応答計算処理器へのフィードバック、
(3)前記可変ウェイトへのフィードバック、
して行うように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の試験装置。
【請求項5】
次の制御サンプリングにおいて、1つ前の入力値をインパルス応答計算処理器へ入力するとともに、
前記インパルス応答計算処理器で計算した制御命令値を、PID制御器に入力する際に、前記被試験構造物からのセンサー信号の可変ウェイトへのフィードバックを、可変ウェイトでモニターリングして、制御命令値を補正して、PID制御器に入力するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車などの車輛のショックアブソーバ、橋梁、ビル、住宅などの建築物などの構造物などの被試験構造物に対して、外力を負荷して載荷試験などの各種の試験を行うための試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の試験装置として、被試験対象物、例えば、自動車などの車輛のショックアブソーバについて試験を行うため、
図6に示したような構造の試験装置100が提案されている。
【0003】
すなわち、
図6に示したように、従来の試験装置100は、試験を行うための試験装置本体102を備えている。この試験装置本体102は、この実施例では、試験の一例として、加振装置から構成されている。
【0004】
図6に示したように、試験装置本体102は、架台フレーム104を備えており、この架台フレーム104の下方にシリンダーからなるアクチュエータ106を備えている。このアクチュエータ106には、テストピースAを載荷するためのピストン108と、変位を検出するための変位検出器110とを備えている。
【0005】
また、架台フレーム104の上方には、上方フレーム118が立設されており、この上方フレーム118には、上方フレーム118と架台フレーム104との間に、ガイドロッド112が設けられている。
【0006】
そして、ガイドロッド112の下方と上方フレーム118との間には、ボールネジ114が設けられており、ボールネジ114により、ピストン108に対して、上下動可能なクロスヘッド116が設けられている。また、このクロスヘッド116には、ピストン108と対峙するように、荷重検出器120が設けられている。
【0007】
このように構成される試験装置100では、以下のように試験が行われる。
【0008】
すなわち、
図6に示したように、ピストン108の上面に、例えば、ショックアブソーバなどのテストピースAを載荷して、図示しない駆動機構によって、ボールネジ114により、ピストン108に対してクロスヘッド116を下降して、ピストン108の上面とクロスヘッド116の下面との間にテストピースAを挟持する。
【0009】
そして、図示しない制御装置に予め記憶されたプログラムに基づいて、試験条件などの設定、試験の実施、試験データの収集が行われるようになっている。
【0010】
すなわち、
図6に示したように、制御装置の制御によって、制御装置に接続された図示しないアクチュエータ動力源を所定の条件で駆動させる。これにより、アクチュエータ動力源に接続されたアクチュエータ106が所定の条件で駆動して、テストピースAに対して一定の振動を与えるようになっている。
【0011】
そして、アクチュエータ106に設けられた変位検出器110によって、テストピースAの変位が検出され、テストピースAの変位データが、制御装置に入力されるようになっている。一方、クロスヘッド116に設けられた荷重検出器120によって、テストピースAにかかる荷重が検出され、テストピースAにかかる荷重データが、制御装置に入力されるようになっている。
【0012】
また、これらの試験データに基づいて、制御装置のプログラムに基づいて、制御装置からアクチュエータ動力源に、フィードバック指令信号が出力され、アクチュエータ106を所定の条件で駆動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−173954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、従来、このような試験装置100において、振幅制御を行う場合には、1周期分のデータをメモリーに格納して、加振周期に達した時点でデータを解析して、次の振幅命令値を解析結果から計算して、その値を出力していた。
【0015】
すなわち、
図7に示したように、例えば、振幅制御を行う場合には、1周期分の振幅の最大値P1と最小値P2から、次の振幅命令値を計算していた。
【0016】
しかしながら、このような制御方法では、
図8に示したように、周期波形の試験において、予め設定された振幅P3に到達するには、加振周期、すなわち、1周期以上の時間を要することになる。
【0017】
その結果、例えば、ショックアブソーバなどの内部に充填したオイルなどの液体のように温度依存性を有する場合に、テストピースAに余分な負荷がかかることになり、この間の負荷によって、オイルなどの液体の粘性が変化して試験結果に影響を及ぼし、正確な試験、正確な解析を行うことができなかった。そのため、従来から設定振幅の到達時間を短くすることが求められている。
【0018】
また、例えば、地震波形再現試験において、制御波形生成過程では、従来の試験装置では、試験片またはダミー試験片を用いて、予備試験を行いデータを取得して、このデータに基づいて、制御波形を形成する必要がある。このため、1サンプル毎に制御を行うための予備試験が必要で、試験費用が高くつき、試験効率が悪く、資源の無駄遣いにもなっていた。
【0019】
本発明は、このような現状に鑑み、設定振幅の到達時間を短くすることができ、例えば、ショックアブソーバなどの内部に充填したオイルなどの液体のように温度依存性を有する場合にも、テストピースAに余分な負荷がかかることがなく、この間の負荷によって、オイルなどの液体の粘性が変化して試験結果に影響を及ぼすことがなく、正確な試験、正確な解析を行うことが可能な試験装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、1サンプル毎に制御を行うための予備試験が不要で、試験費用を低減することができ、試験効率が良く、資源を効率的に利用できる試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の試験装置は、
被試験構造物に対して、外力を負荷して各種の試験を行うための試験装置であって、
デジタル制御器を用いて、1サンプル毎の入出力特性を計測して、得られた計測値からインパルス応答を計算し、
前記インパルス応答の計算結果を、制御対象である被試験構造物の同定値として、制御にフィードバックしてインパルス応答制御を
行い、
前記デジタル制御器を用いて、下記式、すなわち、
Y(t)=H(t)・X(t)
ここで、X(t)は入力値、Y(t)は出力値、H(t)は、デジタル制御器の伝達関数である。
を用いて、伝達関数H(t)を求めて、
次の目標値Rに基づいて、下記式、すなわち、
R=H・Xから、次の入力値Xを、
X=R/Hから計算し、
次の出力値Yを、
Y=Rから計算してインパルス応答制御を行うことを特徴とする。
【0023】
このように構成することによって、デジタル制御器を用いて、1サンプル毎の入出力特性を計測して、得られた計測値からインパルス応答を計算している。そして、この計算結果を制御対象である被試験構造物の同定値として、制御にフィードバックしている。
【0024】
従って、加振周期分計測しなくても、任意の設定振幅に対する制御を実施することができる。
【0025】
これにより、設定振幅の到達時間を短くすることができ、例えば、ショックアブソーバなどの内部に充填したオイルなどの液体のように温度依存性を有する場合にも、テストピースAに余分な負荷がかかることがなく、この間の負荷によって、オイルなどの液体の粘性が変化して試験結果に影響を及ぼすことがなく、正確な試験、正確な解析を行うことが可能である。
【0026】
また、本発明は、1サンプル毎に制御を行うための予備試験が不要で、試験費用を低減することができ、試験効率が良く、資源を効率的に利用できる試験装置を提供することができる。
【0027】
さらに、低周波数の加振試験の振幅制御だけではなく、1サンプル毎に入出力特性を計測して、このサンプル毎に加振波形を目標波形に追従させることができるので、加振波形の歪率を改善することができ、正確な試験、正確な解析を行うことが可能である。
【0028】
また、本発明の試験装置は、
前記デジタル制御器が、
入力値を処理するインパルス応答計算処理部と、
前記インパルス応答計算処理部からの入力に基づいてデジタル処理を行うPID制御器とから構成されていることを特徴とする。
【0029】
このように、デジタル制御器が、入力値を処理するインパルス応答計算処理部と、インパルス応答計算処理部からの入力に基づいてデジタル処理を行うPID制御器とから構成されているのが望ましい。
【0030】
また、本発明の試験装置は、前記インパルス応答計算処理部が、入力値を補正する可変ウェイトと、インパルス応答計算処理器とから構成されていることを特徴とする。
【0031】
このように、インパルス応答計算処理部が、入力値を補正する可変ウェイトと、インパルス応答計算処理器とから構成されているのが望ましい。
【0032】
また、本発明の試験装置は、
前記PID制御器から出力された命令値によって、試験を行っている被試験構造物からのセンサー信号を、下記(1)〜(3)の3系統に分割、すなわち、
(1)前記PID制御器のフィードバックゲインへのフィードバック、
(2)前記インパルス応答計算処理器へのフィードバック、
(3)前記可変ウェイトへのフィードバック、
して行うように構成されていることを特徴とする。
【0033】
このように構成することによって、前述した作用効果を奏することができる。
【0034】
また、本発明の試験装置は、
次の制御サンプリングにおいて、1つ前の入力値をインパルス応答計算処理器へ入力するとともに、
前記ンパルス応答計算処理器で計算した制御命令値を、PID制御器に入力する際に、前記被試験構造物からのセンサー信号の可変ウェイトへのフィードバックを、可変ウェイトでモニターリングして、制御命令値を補正して、PID制御器に入力するように構成されていることを特徴とする。
【0035】
このように構成することによって、非線形要因による発散を防止し、高精度な目標追従を実現することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、デジタル制御器を用いて、1サンプル毎の入出力特性を計測して、得られた計測値からインパルス応答を計算している。そして、この計算結果を制御対象である被試験構造物の同定値として、制御にフィードバックしている。
【0037】
従って、加振周期分計測しなくても、任意の設定振幅に対する制御を実施することができる。
【0038】
これにより、設定振幅の到達時間を短くすることができ、例えば、ショックアブソーバなどの内部に充填したオイルなどの液体のように温度依存性を有する場合にも、テストピースAに余分な負荷がかかることがなく、この間の負荷によって、オイルなどの液体の粘性が変化して試験結果に影響を及ぼすことがなく、正確な試験、正確な解析を行うことが可能である。
【0039】
また、本発明は、1サンプル毎に制御を行うための予備試験が不要で、試験費用を低減することができ、試験効率が良く、資源を効率的に利用できる試験装置を提供することができる。
【0040】
さらに、低周波数の加振試験の振幅制御だけではなく、1サンプル毎に入出力特性を計測して、このサンプル毎に加振波形を目標波形に追従させることができるので、加振波形の歪率を改善することができ、正確な試験、正確な解析を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の試験装置を、試験の一例として、加振試験を行う加振試験装置に適用した実施例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の試験装置本体の使用状態を説明する正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の試験装置の制御方法を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の試験装置の制御方法を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の試験装置の制御方法を示すグラフである。
【
図6】
図6は、従来の試験装置100の正面図である。
【
図7】
図7は、従来の試験装置100の制御方法を示すグラフである。
【
図8】
図8は、従来の試験装置100の制御方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0043】
図1は、本発明の試験装置を、試験の一例として、加振試験を行う加振試験装置に適用した実施例を示す概略図、
図2は、
図1の試験装置本体の使用状態を説明する正面図、
図3は、本発明の試験装置の制御方法を示す概略図、
図4は、本発明の試験装置の制御方法を示すブロック図、
図5は、本発明の試験装置の制御方法を示すグラフである。
【0044】
図1において、符号10は、全体で本発明の試験装置を示している。
【0045】
図1〜
図2に示したように、本発明の試験装置10は、試験を行うための試験装置本体12を備えている。この試験装置本体12は、この実施例では、試験の一例として、加振試験を行う加振試験装置から構成されている。
【0046】
図1に示したように、試験装置本体12は、架台フレーム14を備えており、この架台フレーム14の下方にシリンダーからなるアクチュエータ16を備えている。このアクチュエータ16には、例えば、自動車などの車輛のショックアブソーバなどのテストピースAを載荷するためのピストン18と、変位を検出するための変位検出器20とを備えている。
【0047】
また、架台フレーム14の上方には、上方フレーム28が立設されており、この上方フレーム28には、上方フレーム28と架台フレーム14との間に、ガイドロッド22が設けられている。
【0048】
そして、ガイドロッド22の下方と上方フレーム28との間には、ボールネジ24が設けられており、ボールネジ24により、ピストン18に対して、上下動可能なクロスヘッド26が設けられている。また、このクロスヘッド26には、ピストン18と対峙するように、荷重検出器30が設けられている。
【0049】
また、
図1に示したように、本発明の試験装置10は、試験装置本体12に接続され、試験装置本体12に対して、試験条件などの設定、試験の実施、試験データの収集などを行うための試験制御装置として機能する制御装置32を備えている。
【0050】
この実施例では、制御装置32は、試験条件などの設定画面、試験データなどの表示を行うためのCRT34と、制御装置本体36と、キーボード38と、マウス40を備えている。従って、この制御装置32には、例えば、ハードディスクから構成される内部メモリーが内蔵されている。なお、制御装置本体36に、操作用のパソコンが接続されている場合がある。
【0051】
そして、試験装置本体12のアクチュエータ16の変位検出器20と、制御装置本体36が接続されるとともに、試験装置本体12の荷重検出器30と、制御装置本体36が接続されている。
【0052】
一方、本発明の試験装置10では、制御装置32の制御装置本体36に接続されるとともに、試験装置本体12のアクチュエータ16に接続されたアクチュエータ動力源44が設けられている。
【0053】
このように構成される本発明の試験装置10では、以下のように試験が行われる。
【0054】
すなわち、
図2に示したように、ピストン18の上面にテストピースAを載荷して、図示しない駆動機構によって、ボールネジ24により、ピストン18に対してクロスヘッド26を下降して、ピストン18の上面とクロスヘッド26の下面との間にテストピースAを挟持する。
【0055】
そして、制御装置32に予め記憶されたプログラムに基づいて、試験条件などの設定、試験の実施、試験データの収集が行われるようになっている。
【0056】
すなわち、
図1に示したように、制御装置32の制御によって、制御装置32に接続されたアクチュエータ動力源44を所定の条件で駆動させる。これにより、アクチュエータ動力源44に接続されたアクチュエータ16が所定の条件で駆動して、テストピースAに対して一定の振動を与えるようになっている。
【0057】
そして、アクチュエータ16に設けられた変位検出器20によって、テストピースAの変位が検出され、テストピースAの変位データが、制御装置32の制御装置本体36に入力されるようになっている。一方、クロスヘッド26に設けられた荷重検出器30によって、テストピースAにかかる荷重が検出され、テストピースAにかかる荷重データが、制御装置32の制御装置本体36に入力されるようになっている。
【0058】
また、これらの試験データに基づいて、制御装置32の制御装置本体36のプログラムに基づいて、制御装置32からアクチュエータ動力源44に、フィードバック指令信号が出力され、アクチュエータ動力源44を所定の条件で駆動させるようになっている。
【0059】
ところで、本発明の試験装置10では、制御装置32において、下記のような制御が行われるように構成されている。
【0060】
すなわち、本発明の試験装置10では、制御装置32の制御装置本体36内に、
図3に示したようなデジタル制御器50を備えている。
【0061】
このデジタル制御器50を用いて、1サンプル毎の入出力特性を計測して、得られた計測値からインパルス応答を計算している。そして、このインパルス応答の計算結果を、制御対象である被試験構造物の同定値として、制御にフィードバックしてインパルス応答制御を行うように構成されている。
【0062】
具体的には、
図5に示したグラフで説明する制御方法で制御が行われる。
【0063】
すなわち、
図3に示したように、デジタル制御器50を用いて、下記式、すなわち、
Y(t)=H(t)・X(t)
ここで、X(t)は入力値、Y(t)は出力値、H(t)は、デジタル制御器50の伝達関数である。
【0064】
この式を用いて、例えば、
図5のグラフのX(t1)、Y(t1)から、伝達関数H(t)を求める。
【0065】
そして、次の目標値Rに基づいて、下記式、すなわち、
R=H・Xから、次の入力値X(例えば、
図5のグラフのX(t2))を、
X=R/Hから計算し、
次の出力値Y(例えば、
図5のグラフのY(t2))を、
Y=Rから計算してインパルス応答制御を行うように構成されている。
【0066】
より具体的には、下記のように計算が実施される。
【0067】
すなわち、デジタル制御器50の入力がx(n)、出力がy(n)の場合に、Z変換すると、入力x(z)は、
x(z)=x
0+x
1z
−1+x
2z
−2+‥‥x
n−1z
−n+1
である。
【0068】
デジタル制御器50の伝達関数Hは、
H(z)=h
0+h
1z
−1+h
2z
−2+‥‥h
n−1z
−n+1
で表すことができる。従って、
Y(z)=H(z)・X(z)
となる。
【0069】
ここで、入力がX(z)、出力がY(z)、伝達関数がH(z)であるシステムの系となる。
【0070】
実際には、エラー信号が、この系に出力され足されることになるので、下記の式のようになる。
【0071】
y(n)=h(n)・x(n)+e(n)
e(n)=d(n)−y(n)
【0072】
ここで、d(n)は、目標(理想)とする信号である。
【0074】
このe(n)は、次式によって表すことができる。
【0077】
x(n)=[x(n),x(n-1)‥‥x(n-I+1)]
T
【0078】
ここで、エラーを最小にするデジタル制御器50の係数を求めれば良いので、Jを最適なフィルターの係数として、以後式を展開する。
【0079】
J=E[e
2(n)]
ここで、Eは、期待値演算子である。
【0080】
上記式(2)を用いると、
J=w
TAw−2w
Tb+c
【0081】
ここで、
A=E[x(n)x
T(n)]
b=E[x(n)d(x)]
c=E[d
2(n)]
【0084】
ここで、R
xxは、x(n)の自己相関関数である。
【0087】
上記式(1)を用いて、エラーの式を表すと、
【0089】
Jは、時間に対して不変であるとすると、
【0091】
さらに、信号が安定した(定常)信号と仮定すると、自己相関ならびに相関関数は、
R
xx(m)=E[x(n+m)x
T(n)]
R
xd(m)=E[d(n+m)x
T(n)]
R
dd(m)=E[x(n+m)d
T(n)]
【0092】
ここで、
R
Txx(m)=R
xx(−m)
W=[w
0w
1‥‥w
l−1]
T
R
xd=[R
xd(0)R
xd(1)‥‥R
xd(i−1)]
T
R
Txx=R
xx
とすると、上記式(3)は、
【0093】
E[e(n)e
T(n)]=w
TR
xxw−w
TR
xd−R
xdTw−R
dd(0)
【0096】
とすると、
R
xxw
opt=R
xd
ここで、w
optは、傾きが0で、エラーが最小であるところである。従って、
w
opt=R
xx−1・R
xd
となり、最適なデジタルシステムの系となる。これを用いて、
【0097】
D(z)=w
opt・x(z) ‥‥(4)
とすると入力信号が求まる。
【0098】
しかしながら、実際には、外乱などの影響から、この式(4)だけでは発散するおそれがある。従って、
C
1=D(z)−Y(z)
【0100】
任意のデータテーブルに基づく定数を、上記式(5)にある規則に従って、補正係数C
2を設定する。すなわち、
【0101】
Y(z)=H・X(Z)+C
2 ‥‥(6)
【0102】
ここで、Hは、w
optの他にコントローラーのパラメーターを加えたHである。
この式(6)により制御を行うように構成されている。
【0103】
より具体的には、本発明の試験装置10では、制御装置32の制御装置本体36内に、
図4に示したようなデジタル制御器50を備えている。
【0104】
図4のブロック図に示したように、デジタル制御器50は、入力値を処理するインパルス応答計算処理部52と、インパルス応答計算処理部52からの入力に基づいてデジタル処理を行うPID制御器54とから構成されている。また、インパルス応答計算処理部52は、入力値を補正する可変ウェイト56と、インパルス応答計算処理器58とから構成されている。
【0105】
このように構成されるデジタル制御器50では、下記のようにしてデジタル制御が行われる。
【0106】
先ず、入力60から入力信号が、インパルス応答計算処理部52の可変ウェイト56を介して、PID制御器54に入力される。そして、PID制御器54内の比例ゲインKp、積分ゲインKi、微分ゲインKdによってデジタル演算が行われ、出力信号Koutを介して、制御対象である試験装置本体12に、命令値が出力される。
【0107】
そして、試験装置本体12において、試験が行われ、供試体であるテストピースAからの変位検出器20、荷重検出器30からのセンサー信号を、下記(1)〜(3)の3系統に分割してフィードバックされるようになっている。
【0108】
すなわち、供試体であるテストピースAからのセンサー信号は、
(1)PID制御器54のフィードバックゲインKfbへフィードバックされる。
(2)インパルス応答計算処理部52のインパルス応答計算処理器58へフィードバックされる。
(3)インパルス応答計算処理部52の可変ウェイト56へフィードバックされる。
このようにして、センサー信号が、3系統に分割してフィードバックされるようになっている。
【0109】
そして、次の制御サンプリングにおいて、1つ前の入力値Z
−1をインパルス応答計算処理部52のインパルス応答計算処理器58へ入力される。
【0110】
また、インパルス応答計算処理器58で計算した制御命令値を、PID制御器54に入力する際に、被試験構造物であるテストピースAからのセンサー信号の可変ウェイト56へのフィードバックを、可変ウェイト56でモニターリングして、制御命令値を補正して、PID制御器54に入力するように構成されている。
【0111】
このように構成することによって、前述で説明したデジタル制御が行われる。また、非線形要因による発散を防止し、高精度な目標追従を実現することができる。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の試験装置10は、試験装置として、例えば、自動車部品(駆動系や足回りの金属部品やゴム部品、ショックアブソーバなど)などの機械部品について、これらの自動車完成品などの完成品について、さらに、土木関係(橋桁、橋梁や建物用の免震ゴムなど)の構造物について、材料試験、振動試験、疲労試験、特性試験などを行うための材料試験装置、振動試験装置、疲労試験装置など各種の試験装置に適用することが可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、例えば、自動車などの車輛のショックアブソーバ、橋梁、ビル、住宅などの建築物などの構造物などの被試験構造物に対して、外力を負荷して載荷試験などの各種の試験を行うための試験装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
10 試験装置
12 試験装置本体
14 架台フレーム
16 アクチュエータ
18 ピストン
20 変位検出器
22 ガイドロッド
24 ボールネジ
26 クロスヘッド
28 上方フレーム
30 荷重検出器
32 制御装置
36 制御装置本体
38 キーボード
40 マウス
44 アクチュエータ動力源
50 デジタル制御器
52 インパルス応答計算処理部
54 PID制御器
56 可変ウェイト
58 インパルス応答計算処理器
60 入力
100 試験装置
102 試験装置本体
104 架台フレーム
106 アクチュエータ
108 ピストン
110 変位検出器
112 ガイドロッド
114 ボールネジ
116 クロスヘッド
118 上方フレーム
120 荷重検出器
A テストピース(被試験構造物)