(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995566
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】オゾナイザ
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
C01B13/11 D
C01B13/11 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-155888(P2012-155888)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-15379(P2014-15379A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIシバウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】釜瀬 幸広
(72)【発明者】
【氏名】早矢仕 文男
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正浩
【審査官】
大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−149722(JP,U)
【文献】
特開平09−278410(JP,A)
【文献】
特開2002−029709(JP,A)
【文献】
特開平02−208202(JP,A)
【文献】
特開平11−011908(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/170817(US,A1)
【文献】
特開平08−067504(JP,A)
【文献】
特開平01−192704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/11
H01T 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側電極の外側に筒状の外側電極が配置され、前記外側電極の内面に同じく筒状の誘電体が設けられ、前記内側電極と前記外側電極との間の放電空間に原料ガスを供給しながら電圧を印加して放電を発生させることによってオゾンを生成するように構成される、オゾナイザであって、
前記内側電極は、複数本の金属線で構成されるとともに、前記内側電極の近傍に電界が集中するように配置され、
前記内側電極の内側に配置される芯部材を配置し、
前記芯部材は、ガラス素材からなる円柱状に形成され、前記筒状の外側電極および誘電体の内経よりも小さい外径であって、前記外側電極の内径の1/2よりも大きい直径を有し、
前記芯部材の軸心と前記外側電極の軸心とが一致するように、外側電極と誘電体の内側に芯部材が配置され、
前記芯部材の外周面外側で、前記誘電体の内周面内側において、前記内側電極が、内側電極における外側電極の一方の開口部側と、内側電極における外側電極の他方の開口部側とからそれぞれ引っ張られて、緊張状態で配置される
ことを特徴とするオゾナイザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾナイザの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素が含まれる原料ガスからオゾン(オゾンガス)を生成するオゾナイザ(オゾン生成装置)に関する技術は、種々知られている。
【0003】
前記オゾナイザには、二個の電極のうちいずれか一方に誘電体が設けられ、二個の電極間の放電空間に原料ガスを供給しながら電圧を印加して放電を発生させることによってオゾンを生成するように構成されるものが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。前記オゾナイザは、例えば、二個の電極のうち一方の電極が円筒状の外側電極(接地電極)とされ、二個の電極のうち他方の電極が金属線の内側電極(高電圧電極)とされ、一方の電極の内面(内周面)に誘電体が設けられ、誘電体の内側全体に放電空間が配置されて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記オゾナイザでは、誘電体の内側全体に放電空間が配置されるため、誘電体の内側全体に電界が分散する。このため、前記オゾナイザでは、放電空間において放電を発生させてオゾンを生成する動作を行うと、当該放電空間での電界強度が高くならず、高い濃度のオゾンを効率良く生成することができない、という問題があった。
【0006】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、高い濃度のオゾンを効率良く生成することができるオゾナイザを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、内側電極の外側に筒状の外側電極が配置され、前記外側電極の内面に
同じく筒状の誘電体が設けられ、前記内側電極と前記外側電極との間の放電空間に原料ガスを供給しながら電圧を印加して放電を発生させることによってオゾンを生成するように構成される、オゾナイザであって、
前記内側電極は、複数本の金属線で構成されるとともに、前記内側電極の近傍に電界が集中するように配置され、前記内側電極の内側に配置される芯部材を配置し、前記芯部材は、ガラス素材からなる円柱状に形成され、前記筒状の外側電極および誘電体の内経よりも小さい外径であって、前記外側電極の内径の1/2よりも大きい直径を有し、前記芯部材の軸心と前記外側電極の軸心とが一致するように、外側電極と誘電体の内側に芯部材が配置され、前記芯部材の外周面外側で、前記誘電体の内周面内側において、前記内側電極が、内側電極における外側電極の一方の開口部側と、内側電極における外側電極の他方の開口部側とからそれぞれ引っ張られて、緊張状態で配置されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
即ち、本発明によれば、高い濃度のオゾンを効率良く生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るオゾナイザの内部構造を示した正面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態に係るオゾナイザ1について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0013】
オゾナイザ1は、原料ガス[酸素が含まれるもの(例えば、酸素濃度99.9%以上の高純度酸素ガス)]からオゾン(オゾンガス)を生成するものである。オゾナイザ1は、
図1または
図2に示すように、外側電極2と、内側電極3と、誘電体4と、電源(交流電源)5と、放電空間6と、放電が発生しない空間7と、を備える。
【0014】
オゾナイザ1の外側電極2と内側電極3とは、金属電極であり、互いに間隔を空けるようにして配置される。オゾナイザ1の外側電極2は接地電極として構成され、内側電極3は高電圧電極として構成される。オゾナイザ1の誘電体4は、外側電極2に設けられる。オゾナイザ1の誘電体4は、外側電極2における内側電極3と対向する側の面に配置される。オゾナイザ1は、誘電体4の近傍における外側電極2と内側電極3との間(誘電体4と内側電極3との間)に電源5からの電圧(交流電圧)が印加されることによって、外側電極2と内側電極3との間の空間に放電するように構成される。オゾナイザ1の誘電体4の近傍における外側電極2と内側電極3との間(誘電体4と内側電極3との間)の空間は、放電空間6として構成される。オゾナイザ1の放電空間6は、誘電体4の近傍に配置される。
【0015】
このように構成されるオゾナイザ1は、原料ガスがオゾナイザ1内に供給され、当該オゾナイザ1内に供給された原料ガスが放電空間6に至った状態で、電源5からの電圧が印加されて放電空間6で放電されることによって、放電空間6内における原料ガス中の酸素分子から酸素原子が解離し、前記解離した酸素原子と酸素分子とが結合して、オゾン(O3)が生成され、当該生成されたオゾンがオゾナイザ1内から流出するように構成される。このようにして、オゾナイザ1は、外側電極2と内側電極3との間の放電空間6に、原料ガスを供給しながら電圧を印加して放電を発生させることによって、オゾンを生成するように構成される。またこのようにして、オゾナイザ1は、オゾナイザ1内において原料ガスまたはオゾンが流通するように構成される。
【0016】
オゾナイザ1の放電が発生しない空間7は、誘電体4の近傍に配置される。オゾナイザ1の放電が発生しない空間7とは、誘電体4の近傍で、前記電源5からの電圧が印加されることによって放電空間6に放電されたときにおいても、放電が発生しない空間7を示す。
【0017】
オゾナイザ1は、放電空間6において原料ガスを供給しながら電圧を印加して放電を発生させても、放電が発生しない空間7では、放電が発生しないように構成される。そして、オゾナイザ1は、誘電体4に沿って放電空間6と放電が発生しない空間7とが連続するように配置されて構成される。オゾナイザ1は、誘電体4に沿って放電空間6(放電する箇所)と放電が発生しない空間7とを備えて構成される。オゾナイザ1は、誘電体4の近傍における原料ガスまたはオゾンの流通経路の途中において、放電が発生しない空間7が配置されて構成される。
【0018】
次に、オゾナイザ1のより具体的な構成について説明する。オゾナイザ1の外側電極2は、筒状に構成される。オゾナイザ1の誘電体4は、例えば、ガラス素材からなる部材で構成される。オゾナイザ1の誘電体4は、外側電極2の内面(内周面)の全体に亘って設けられる。オゾナイザ1の内側電極3は、金属線で構成される。オゾナイザ1の内側電極3は、放電空間6が形成されるように、外側電極2(誘電体4)の内側に配置される。オゾナイザ1の内側電極3は、外側電極2の一方の開口部から他方の開口部に亘って配置される。オゾナイザ1の内側電極3は、外側電極2の軸心方向に沿うようにして配置される。オゾナイザ1の内側電極3は、外側電極2の一方の開口部から他方の開口部に亘るように配置される。このようにして、オゾナイザ1の内側電極3は、内側電極3の近傍に電界が集中するように配置される。オゾナイザ1の外側電極2(誘電体4)は、放電空間6が形成されるように、内側電極3の外側に配置される。
【0019】
図中白矢印は、原料ガスがオゾナイザ1内に供給されてオゾナイザ1内において生成されたオゾンがオゾナイザ1内から流出する、オゾナイザ1内における原料ガスまたはオゾンの流通方向を示す。オゾナイザ1は、外側電極2の軸心方向に沿って、原料ガスまたはオゾンが流通するように構成される。オゾナイザ1は、外側電極2における一方の開口部から原料ガスがオゾナイザ1内に供給されるように構成される。オゾナイザ1は、原料ガスがオゾナイザ1内に供給されて放電空間6に至った状態で、放電空間6で放電を発生させることによって、オゾナイザ1内においてオゾンを生成するように構成される。オゾナイザ1は、オゾナイザ1内において生成されたオゾンが外側電極2における他方の開口部から流出されるように構成される。オゾナイザ1は、例えば、外側電極2における一方の開口部または他方の開口部にファンが設けられて、当該ファンが駆動することによって原料ガスがオゾナイザ1内に供給され、または、オゾンがオゾナイザ1内から流出するように構成される。
【0020】
このように、オゾナイザ1では、その内側電極3は、金属線で構成されるとともに内側電極3の近傍に電界が集中するように配置される。つまり、オゾナイザ1では、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されず、誘電体4の内側全体に電界が分散しない。したがって、オゾナイザ1では、放電空間6において放電を発生させてオゾンを生成する動作を行ったときに、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されて構成されるものに比べて、当該放電空間6での電界強度を高くすることができ、高い濃度のオゾンを効率良く生成することができる。
【0021】
また、オゾナイザ1では、オゾンを生成する動作を行ったときにおいても、放電が発生しない空間7においては、放電が発生しないため放電の発生による温度上昇が起こらない。このため、オゾナイザ1では、放電が発生しない空間7での放電の発生による温度上昇が起こらないことに影響を受けて、オゾンを生成する動作を行ったときの放電空間6での温度上昇が抑制されることとなる。このようにして、オゾナイザ1では、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されて構成されるもの(誘電体4の近傍に放電が発生しない空間7を備えないもの)に比べて、オゾンを生成する動作を行ったときの放電空間6の温度上昇を抑制することができる。したがって、オゾナイザ1では、オゾンを生成する動作を行ったときに、生成されたオゾンが熱によって分解されること(酸素に還元されること)を抑制することができる。よって、オゾナイザ1によれば、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されて構成されるものに比べて、高い濃度のオゾンを効率良く生成することができる。また、オゾナイザ1によれば、オゾンを生成する動作を行ったときの放電空間6の温度上昇が抑制されるため、高温環境(例えば、60℃以上)に設置されている場合においても、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されて構成されるものに比べて、より高い濃度のオゾンを効率良く生成することができる。
【0022】
オゾナイザ1は、内側電極3(金属線)を複数本(本実施形態では二本)有して構成される。オゾナイザ1の複数本の内側電極3は、内側電極3の近傍において電界が分散しないように互いに所定の間隔を空けて配置される。このため、オゾナイザ1では、放電空間6において放電を発生させてオゾンを生成する動作を行ったときに、高い濃度のオゾンをより効率良く生成することができる。
【0023】
また、このように構成されるオゾナイザ1では、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されて構成されるものに比べて、オゾンを生成する動作を行ったときの放電空間6の温度上昇をより確実に抑制することができる。したがって、オゾナイザ1では、オゾンを生成する動作を行ったときに、生成されたオゾンが熱によって分解されることをより確実に抑制することができる。よって、オゾナイザ1によれば、誘電体4の内側全体に放電空間6が配置されて構成されるものに比べて、高い濃度のオゾンをより効率良く生成することができる。
【0024】
オゾナイザ1の内側電極3は、内側電極3における外側電極2の一方の開口部側と内側電極3における外側電極2の他方の開口部側とからそれぞれ引っ張られるようにして、緊張するように配置される。このように、オゾナイザ1では、内側電極3が緊張するように配置されるため、外側電極2内において内側電極3の位置がずれることが防止される。このため、オゾナイザ1では、内側電極3を外側電極2内に配置するとき、または、内側電極3を外側電極2内に配置したときに、例えば、内側電極3が金属線からなり、前記内側電極3が芯部材に巻き付けられて構成されるようなものに比べて、内側電極3・3間の間隔を所望の間隔に保持することができ、また、内側放電空間6および放電が発生しない空間7を所望の大きさまたは所望の位置に保持することができる。
【0025】
オゾナイザ1は、芯部材8を有して構成される。オゾナイザ1の芯部材8は、例えば、ガラス素材からなる円柱状に形成される部材である。オゾナイザ1の芯部材8は、外側電極2および誘電体4の内経よりも小さい外径を有して構成される。オゾナイザ1の芯部材8は、その軸心と外側電極2の軸心とが一致するように、外側電極2(誘電体4)の内側に配置される。オゾナイザ1の芯部材8は、芯部材8の外側(外周面外側)に内側電極3が位置するように配置される。
【0026】
以上のように、オゾナイザ1は、外側電極2の内側に配置される芯部材8を有して構成される。このため、オゾナイザ1では、オゾナイザ1内に供給された原料ガスが、芯部材8によって放電空間6側に寄せられるように流通することとなる。したがって、オゾナイザ1によれば、内側電極3が芯部材8を有さないものに比べて、多くの原料ガスを放電空間6に至らせて、効率良くオゾンガスを生成させることができる。
【0027】
また、オゾナイザ1の芯部材8は、外側電極2の内径の1/2よりも大きい直径を有して構成される。このように構成されるため、オゾナイザ1によれば、確実に多くの原料ガス放電空間6に至らせて、効率良くオゾンガスを生成させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 オゾナイザ
2 外側電極
3 内側電極
4 誘電体
5 電源
6 放電空間
7 放電が発生しない空間
8 芯部材