(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変位許容手段が、前記軸受の取付面を前記基礎部に対して傾斜させスライド可能に保持し、前記軸受を鉛直方向及び水平方向に変位可能とするスライド受台である請求項1に記載の振動抑制装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換して消費するだけに過ぎない。
本発明は、上記事実に鑑み、載置された機器類の移動等に伴い繰り返し発生する載置台の振動を抑制する振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る振動抑制装置は、所定の距離を置いて平行に配置された一対の軸部材と、基礎部に設けられ、前記軸部材を軸回りに回転自在に支持する軸受と、端部が前記軸部材に固定された状態でアーチ状となり、曲率を変えることで振動抑制対象物に当接する板ばねと、前記板ばねに貼着され、前記板ばねに引張力又は圧縮力を掛けるアクチュエータと、前記軸部材の鉛直方向及び水平方向への変位を許容する変位許容手段と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、板ばねに貼着したアクチュエータが、アーチ状とされた板ばねに引張力又は圧縮力を掛け、板バネの曲率が変化させられる。曲率が大きくなると、板バネが振動抑制対象物に当接し、曲率が小さくなると振動抑制対象物から離れる。これにより、板バネの曲率を振動抑制対象物の振動に対応させて変化させ、振動している振動抑制対象物への板ばねの当接を繰り返すことで、振動抑制対象物の振動を抑制することができる。
【0008】
このとき、板ばねの端部は、所定の距離を置いて配置された軸部材に固定され、軸部材は、基礎部に設けられた軸受に支持され、軸部材の軸回りに回転自在とされている。このため、板ばねの曲率を変化させても、板ばねの端部には曲げ力が発生しない。
また、板ばねの曲率を繰り返し変化させても、変位許容手段により、板ばね端部の軸部材の鉛直方向及び水平方向の変位が許容され、板ばねに残留変形が生じない。
この結果、振動抑制装置により、繰り返し発生する振動抑制対象物の振動を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動抑制装置において、前記変位許容手段が、前記軸受の取付面を前記基礎部に対して傾斜させスライド可能に保持し、前記軸受を鉛直方向及び水平方向に変位可能とするスライド受台であることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、板ばねの端部に作用する軸力により、スライド受台の軸受が基礎部に対して斜めにスライド可能とされている。これにより、板ばね端部の鉛直方向及び水平方向の変位が許容され、板ばねに残留変形が生じない。
この結果、振動抑制装置により、繰り返し発生する振動抑制対象物の振動を抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の振動抑制装置において、前記変位許容手段が、前記軸受の回転部と前記軸部材の外周面との間に配置された弾性部材であることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、板ばねの端部に作用する軸力により、弾性部材が弾性変形され、板ばね端部の鉛直方向及び水平方向の変位が許容され、板ばねに残留変形が生じない。
この結果、振動抑制装置により、繰り返し発生する振動抑制対象物の振動を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る振動抑制装置は、所定の距離を置いて平行に配置された一対の軸部材と、端部が前記軸部材に固定された状態でアーチ状となり、曲率を変えることで振動抑制対象物に当接する板ばねと、一対の軸部材にそれぞれ設けられ、前記軸部材を軸回りに回転自在に支持する軸受と、一方の前記軸受を基礎部に固定する固定手段と、前記板ばねと前記基礎部の間に設けられ、一端が他方の前記軸受に連結され、他端が前記基礎部に回転自在に支持され、前記板ばね端部の接線と軸線を一致させたとき前記軸部材の鉛直方向及び水平方向への変位を制限し、前記板ばね端部の接線と軸線に角度を持たせたとき前記軸部材の鉛直方向及び水平方向への変位を許容する変位調整板と、前記板ばねに貼着され、前記板ばねに引張力又は圧縮力を掛け、前記曲率を変化させたとき前記板ばね端部の接線と前記変位調整板の軸線を一致させ、前記板ばねに掛けた引張力又は圧縮力を終了させ、前記曲率を元に戻し前記板ばね端部の接線と前記変位調整板の軸線に角度を持たせるアクチュエータと、を有することを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、板ばねに貼着したアクチュエータが、アーチ状とされた板ばねに引張力又は圧縮力を掛け、板バネの曲率を変化させる。板バネの曲率が大きくなると振動抑制対象物に当接し、曲率が小さくなると振動抑制対象物から離れる。これにより、板バネの曲率を振動抑制対象物の振動に対応させて変化させ、振動している振動抑制対象物に板ばねを当接させることで、振動抑制対象物の振動を抑制することができる。
【0015】
このとき、板ばねの端部は、所定の距離を置いて配置された軸部材に固定され、軸部材の一方は、固定手段で基礎部に固定された軸受に支持されている。軸部材の他方は、変位調整板の一端に設けられた軸受で支持されている。ここに、変位調整板は、基礎部と板ばねの端部の間に設けられ、変位調整板の他端は基礎部に回転自在に支持されている。
【0016】
これにより、板ばね端部の接線と変位調整板の軸線を一致させたとき、軸部材の鉛直方向及び水平方向への変位が制限される。一方、板ばね端部の接線と変位調整板の軸線に角度を持たせたとき、軸部材の鉛直方向及び水平方向への変位が許容される。
この結果、振動抑制装置により、繰り返し発生する振動抑制対象物の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成としてあるので、載置された機器類の移動等に伴い繰り返し発生する載置台の振動を抑制する振動抑制装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
図1の側面図に示すように、第1の実施の形態に係る振動抑制装置10は、アクティブ除振台50の架台16に設けられている。振動抑制装置10は、架台16上部の載置台12を支持し、載置台12に載せられた精密機器類(図示せず)の移動等に伴い繰り返し発生する載置台12の振動を抑制する。
【0020】
先ず、アクティブ除振台50の基本構成について、
図1を用いて説明する。
架台16は平面視が矩形状に鋼材で形成され、四隅には4本の脚部44が設けられている。脚部44の上部側壁には、脚部44同士を連結する横部材46が連結されている。脚部44の上端部には上部フランジ44Uが、下端部には下部フランジ44Dが取り付けられ、下部フランジ44Dは、ボルト48で床面34に固定されている。脚部44は上面で載置台12を支持している。
【0021】
脚部44の上部フランジ44Uと載置台12との間には、ばね機能を有する空気ばね32が取り付けられている。空気ばね32には空気が充填され、4本の脚部44の上部にそれぞれ設けられ、載置台12を柔らかく支持する。これにより、床面34からの振動が空気ばね32で吸収され、載置台12への振動の伝播が抑制される。なお、空気ばね32を囲む4箇所には、鋼材製の補助変位調整板42が設けられ、アクティブ除振台50が稼働していないときには、載置台12を脚部44に固く固定する。
【0022】
振動抑制装置10は、横部材46の上面に配置され、空気ばね32と並列に載置台12を支持している。振動抑制装置10は、各横部材46の上面に2個ずつ(合計8個)設けられ、それぞれが独立して制御される構成である。横部材46の中央部であり振動抑制装置10と振動抑制装置10の間には、鋼材製の中央変位調整板40が設けられ、アクティブ除振台50が稼働していないときに、載置台12を横部材46に固定する。なお、振動抑制装置10の数量は、アクティブ除振台50の仕様により決定されるものであり、本実施の形態の数量に限定されるものではない。
【0023】
横部材46はH形鋼で形成され、横方向に配置された上下のフランジ46Fの間の空間には、空気ばね32や振動抑制装置10を制御するコントローラ36、及びそれらの電流を制御するレギュレータ38が設けられている。なお、配線類の記載は省略している。
【0024】
この構成とすることで、後述する振動抑制装置10をコントローラ36で制御することにより、空気バネ32で柔らかく支持され、載置された機器類の移動等に伴い繰り返し発生する載置台12の振動を抑制することができる。
【0025】
次に、振動抑制装置10の構成について
図2〜
図4を用いて説明する。
図2は、振動抑制装置10の全体構成を示す側面図であり、
図3は、振動抑制装置10を構成する上側板ばね20及び下側板ばね22の外観構成図であり、
図4は、上側板ばね20及び下側板ばね22の取付け構成を示す側面図である。
【0026】
振動抑制装置10は、載置台12に取り付けられ、載置台12と一体となって振動する固定板14を挟んで設けられている。固定板14は鋼板製とされ、側面視がカタカナのコ字状に形成されている。固定板14は、コ字状とされた中央部14Cを水平に配置し、両端部14Eを鉛直に向けて配置され、両端部14Eの端部に形成されたベース部80を載置台12の下面に当接させて、載置台12の下面にボルト81で固定されている。
【0027】
固定板14の中央部14Cの上方には上側板ばね20が、下方には下側板ばね22が配置されている。上側板ばね20と下側板ばね22は、いずれも同じ形状で同じ構造とされ、板ばねの側面視がアーチ状に形成されている。
【0028】
上側板ばね20は、アーチ部を下に向け、両端部が上側板ばね取付台18の下面に取り付けられている。上側板ばね取付台18は、鋼板製の平板で形成され、固定板14と載置台12の下部で囲まれた矩形状の空間に、固定板14の中央部14Cと平行な方向に挿入されている。
【0029】
上側板ばね取付台18の端部(四隅)は、取付台17の上面に固定された4本の支柱19でそれぞれ支持されている。ここに、取付台17は振動抑制装置10の基礎部であり、鋼板で平板状に形成され、横部材46の上面に固定されて上側板ばね20と下側板ばね22を、それぞれ支持している。
【0030】
上側板ばね取付台18、両端部の支柱19及び取付台17で囲まれた空間が、側面視において矩形状に区画されている。この矩形状に区画された空間内の取付台17の上には、下側板ばね22を支持するロック台58が固定されている。ロック台58は鋼板で平板状に形成され、ロック台58の上には、ロック台58に固定され下側板ばね22を支持する固定保持部86と、ロック台58にスライド可能に取り付けられたスライド部88が設けられている。
固定保持部86とスライド部88の上に、下側板ばね22の両端部がアーチ部を上に向けて配置されている。
【0031】
即ち、上側板ばね20はアーチ部を下に向け、両端部が、上側板ばね取付台18の下面に設けられた軸受82A、82Bに取り付けられ、下側板ばね22はアーチ部を上に向け、両端部が、ロック台の上面に設けられた軸受84A、84Bに取り付けられている。
また、上側板ばね20と下側板ばね22のアーチ部で、固定板14の中央部14Cが挟持される構成とされている。
【0032】
次に、上側板ばね20と下側板ばね22の、両端部の構造について説明する。
図3に示すように、上側板ばね20及び下側板ばね22の両端部には、一対のシャフト28、29が設けられている。シャフト28、29は、所定の距離を置いて平行に配置され、いずれも同じ径で、上側板ばね20及び下側板ばね22の幅より片側が長さL、両側で長さ2Lだけ長く形成されている。
【0033】
図4に示すように、下側板ばね22のシャフト28の両端部28Eは、2つの軸受84A、84A(奥側は図示せず)に挿入され、軸受84A、84Aで支持されている。また、シャフト29の両端部29Eは、2つの軸受84B、84B(奥側は図示せず)に挿入され、軸受84B、84Bで支持されている。
【0034】
ここに、軸受84A、84Aは固定保持部86に取り付けられ、軸受84B、84Bは、スライド部88に取り付けられている(
図2参照)。これにより、下側板ばね22のシャフト28、29が軸回りに、回転自在な状態で支持される。
なお、軸受84A、84Bは、広く市場で流通しているボールベアリング等の転がり軸受や、油軸受等の滑り軸受等であればよい。
【0035】
また、
図2に示すように、上側板ばね20のシャフト28の両端部28Eは、2つの軸受82B、82B(奥側は図示せず)に挿入され、シャフト29の両端部29Eは、2つの軸受82A、82A(奥側は図示せず)に挿入されている。
【0036】
ここに、4つの軸受82A、82A、84B、84Bは、上述した下側板ばね22と同じものであり、広く市場で流通しているボールベアリング等の転がり軸受や、油軸受等の滑り軸受等であればよい。4つの軸受82A、82A、84B、84Bは、いずれも上側板ばね取付台18の下面に取付けられている。
これにより、上側板ばね20のシャフト28、29が軸回りに、回転自在な状態で支持され、シャフトの回転が軸受82A、82A、84B、84Bで許容される。
【0037】
また、
図4に示すように、シャフト28の両端部の外周面と軸受84の内周面との間には、Oリング90が挿入されている。
Oリング90は例えばゴム材等の弾性部材で形成され、上側板ばね20及び下側板ばね22に作用する軸力により弾性変形される。Oリング90が弾性変形されることにより、上側板ばね20及び下側板ばね22端部の鉛直方向及び水平方向の変位が許容される。
【0038】
このとき、Oリング90の硬度が大きいほど、上側板ばね20及び下側板ばね22の鉛直剛性は大きくなる。一方、Oリング90の硬度が小さいほど、後述するアクチュエータによる曲げ板の鉛直変形性能は大きくなる。上側板ばね20及び下側板ばね22で発揮させたい鉛直剛性、及び鉛直変形性能を設定した後、Oリング90の硬度を適切に選定すればよい。
これにより、上側板ばね20と下側板ばね22の変形後の残留変形が抑制される。
【0039】
また、
図3、4に示すように、上側板ばね20と下側板ばね22のアーチ部の頂部には、アーチ部の全幅に渡り直状の受け材64が、外へ向けて突出して設けられている。受け材64は、鋼材製とされ、上側板ばね20と下側板ばね22の全幅に渡る長さで設けられている。
受け材64の先端部は、所定の隙間(数十μm程度)を開けて固定板14と対向し、アーチ部の変形により、受け材64の側壁と固定板14の側壁が当接する。
【0040】
受け材64は、アーチ部の頂部を覆う位置に架け渡されており、受け材64の下面とアーチ部の頂部は接していない。これにより、上側板ばね20と下側板ばね22が固定板14側に伸張しても、受け材64が固定板14と直接当接するため、アーチ部の頂部の損傷を防止することができる。
【0041】
次に、
図3を用いて、上側板ばね20及び下側板ばね22を変形させるアクチュエータ24について説明する。
上側板ばね20と下側板ばね22のアーチ部には、表面にアクチュエータ(膜型圧電素子)24が貼り付けられている。膜型圧電素子24には、電力を供給し作動(変形)を制御するコントローラ30が接続されている。膜型圧電素子24は、コントローラ30からの制御信号に従い、上側板ばね20と下側板ばね22を変形させる。
【0042】
即ち、膜型圧電素子24を制御して、膜型圧電素子24で上側板ばね20及び下側板ばね22のアーチ部の曲率を変化させ、固定板14への上側板ばね20及び下側板ばね22の当接を繰り返させて、固定板14の振動を抑制させる。
【0043】
膜型圧電素子24の詳細な図示は省略するが、膜状とされた繊維状の圧電セラミックの両側面に、電極が印刷されたポリイミドフィルムをエポキシ樹脂で接合した構成である。膜型圧電素子は、圧電セラミックの両側面にリード線26を介してコントローラ30から電圧を印加すれば、印加された電圧値に従った歪が圧電セラミックに生じ、膜型圧電素子が矢印Q1の方向に変形する(
図3参照)特性を備えている。更に、膜型圧電素子は、圧電セラミックが折り曲げられ歪が生じると、歪量に比例した電圧を発生する特性も有している。
【0044】
また、膜型圧電素子24が上側板ばね20及び下側板ばね22を変形させる力は、膜型圧電素子24の数を増やせば増大する。例えば、上側板ばね20及び下側板ばね22の表面のみでなく、裏面にも膜型圧電素子24を貼り付け、表面側の膜型圧電素子24を矢印Q1の方向に伸張させ、裏面側の膜型圧電素子24を矢印Q1と反対側の方向に収縮させれば、上側板ばね20及び下側板ばね22を変形させる力を大きくすることができる。
【0045】
次に、振動抑制装置10のロック機能について説明する。
図2に示すように、下側板ばね22の一方の端部は軸受84Aに支持され、他方の端部は下側軸受84Bに支持されている。
ここに、軸受84Aは固定保持部86の上部に取り付けられ、下側軸受84Bは、スライド部88の上部に設置されている。そして、固定保持部86の下部とスライド部88の下部は、いずれもロック台58の上面に配置されている。ロック台58は、横部材46の上面に設けられた取付台17に固定されている。
【0046】
固定保持部86はロック台58の一端に固定され、下側板ばね22の一方の下側軸受84を固定する。スライド部88は、ロック台58の他端に配置され、ロック台58に設けられたスライド溝(図示せず)に、下端部がスライド可能に挿入されている。即ち、スライド部88は、アーチ支持板23が折り曲げられる方向と平行(矢印Aで示す方向)にスライド可能とされている。これにより、膜型圧電素子24で、下側板ばね22のアーチ支持板23の曲率を小さくしたとき、スムーズにアーチ支持板23のアーチ部を上方に伸張させることができる。
【0047】
ロック台58の中央部であり、固定部48とスライド部49の間には、マグネット部52が取り付けられ、電磁マグネットの吸着部53をスライド部88に向けている。このとき、スライド部88が最も固定保持部86側にスライドした位置(アーチ部を上方に最も伸張させた位置)が、マグネット部52とスライド部88が最も近くなる状態とされている。
【0048】
この最も近い位置でマグネット部52に通電することで、スライド部88をマグネット部52に吸着させることができる。これにより、吸着状態は通電状態を維持することで継続され、アーチ支持板23が、アーチ部を上方に伸張させた状態で維持される。
【0049】
この結果、アクチュエータ24の変形による拘束力を上回る衝撃力が、載置台12から伝播されても、アーチ支持板23の形状を維持することができる。マグネット部52への通電を停止すると、マグネット部52との吸着状態は解除され、スライド部88はスライド可能となる。
【0050】
本構成とすることにより、上側板ばね20及び下側板ばね22の端部に軸力が作用してもOリング90が弾性変形されることにより、上側板ばね20及び下側板ばね22端部の鉛直方向及び水平方向の変位が許容される。また、シャフト28の回転が軸受84で許容される。
この結果、上側板ばね20及び下側板ばね22に残留変形が生じるのが抑制される。
【0051】
上述したように、本実施形態とすることにより、振動抑制装置10の上側板ばね20及び下側板ばね22が、固定板14を上下方向から挟持して、繰り返し発生する固定板14の振動を抑制する。この結果、載置台12の振動を抑制することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
図5、6を用いて、第2の実施形態に係る振動抑制装置60を説明する。
振動抑制装置60は、下側板ばね22の一方の端部が、傾斜したスライド受台62にスライド可能に取り付けられている点で、第1の実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0053】
下側板ばね22の一方の端部のシャフト28は、両端部が軸受84A、84A(奥側は図示せず)で支持されている。また、他方の端部のシャフト29は、両端部が軸受84B、84B(奥側は図示せず)で支持されている。
軸受84A、84Aは固定保持部86に取り付けられ、固定保持部86はロック台58に固定されている。軸受84B、84Bは、スライド受台62に取り付けられている。
【0054】
スライド受台62は、ロック台58に角度αで傾斜して固定されたレール70と、レール70を跨ぎ、レール70の上を滑動する滑り台66を有している(
図6参照)。滑り台66の上面に軸受84Bが取り付けられ、滑り台66と軸受84Bが一体としてスライド可能とされている。
なお、本実施形態では、シャフト28、29の両端部の外周面と、軸受84Bの内周面との間には、Oリングは挿入されていない。
【0055】
本構成とすることにより、下側板ばね22の端部に作用する軸力により、スライド受台62の軸受84Bが基礎部に対して斜め方向(矢印Rの方向)にスライド可能とされる。即ち、下側板ばね22の端部がレール70とレール上をスライドする滑り台66により、スムーズに滑動するので、下側板ばね22のアーチ部に、振動抑制に必要な変形を加えることができる。
【0056】
これにより、下側板ばね22の端部の鉛直方向及び水平方向の変位が、スライド受台62で許容され、シャフト28、29の回転が軸受84で許容される。この結果、下側板ばね22の残留変形が抑制される。
【0057】
このとき、レール70の傾斜角度αは、約40度〜約60度の範囲が望ましい。これは、下側板ばね22の鉛直剛性は、傾斜角度αの増大により増加し、下側板ばね22の端部とレール70を直交させたとき(傾斜角度αが約90度)が最大となり、膜型圧電素子24による下側板ばね22の鉛直変形性能は、角度αが小さいほど(傾斜角度αが約0度)大きくなる。下側板ばね22に発揮させたい鉛直剛性と鉛直変形性能から、最適な角度αを決定すればよい。
【0058】
これにより、繰り返し発生する固定板14の振動を、上側板ばね20と下側板ばね22で挟持して、載置台12の振動を抑制することができる。
他の構成は、第1の実施形態と同じであり説明は省略する。
【0059】
次に、
図7〜
図9を用いて、第1の実施形態及び第2の実施形態における残留変形確認実験について説明する。
確認実験は、
図7(a)に示す実験装置を用いて行った。即ち、下側板ばね92の両端部を3種類の異なる方法で支持した。それらは、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した方法、及び、後述するゴムシートで挟む方法である。なお、
図7(a)では、取付け部の詳細構造の図示は省略している。
【0060】
板ばね92はアーチ部を上方へ向けて取付けられ、膜型圧電素子24で下側板ばね92を所定の周期で変形させた。下側板ばね92のアーチ部に取り付けた受け材64の頂部を上方からレーザ変位計94で測定し、下側板ばね92の変形量とした。
実験結果の一例を
図9に示す。
図9の実験条件は、周波数が1Hz、電圧が0〜1200Vの矩形波を膜型圧電素子24に印加させたときの結果である。
【0061】
実験に使用した下側板ばね92の取付け部は、
図7(b)表のA、B及びC欄に示す3種類とした。ここに、構成Aは従来の取付け構造であり、構成Bは第1の実施形態の取付け構造であり、構成Cは第3の実施形態の取り付け構造である。
ここに、構成Aは、
図8(a)、(b)に示すように、下側板ばね92の両端部のシャフト28、29を、移動可能に固定部96で支持するために、シャフト28、29の外周部と固定部96の切欠き部との間に、ギャップを埋める弾性を有するゴムシート68を挟み込む構成である。簡便であり、従来製品で採用されている構成である。
【0062】
しかし、この構成Aでは、膜型圧電素子24を用いて下側板ばね92を変形させた際に、シャフト28がギャップ内を移動し、ゴムシート68とギャップとの相対位置が変化する。この結果、下側板ばね92の変形を元に戻した際に、シャフト28とゴムシート68との摩擦によってシャフト28、29が初期の位置に復元せず(
図8(c)参照)、下側板ばね92の鉛直方向の残留変形となってしまう。
【0063】
更に、下側板ばね92の鉛直方向に残留変形が生じることにより、繰り返し変形時に下側板ばね92と固定板14の中央部14Cが常時接触状態となる(
図8(d)参照)、下側板ばね92が許容限度以上に変形する等の問題も生じる。
【0064】
また、これらの問題の他に、ゴムシート68の挟み込み位置が作業者の目視により管理されていたため、作業の度、あるいは作業者が異なる度に、ゴムシート68の挟み込み位置に変化が生じ、下側板ばね92の変形時にゴムシートが脱落したり、膜型圧電素子24による下側板ばね92の変形性能が、互いに異なる現象が発生するという問題も生じていた。
【0065】
図9に残留変形確認実験の結果を示す。
図9(a)は従来の構成Aで支持した場合、
図9(b)は第1の実施形態で支持した場合であり、
図9(c)は、第2の実施形態で支持した場合の結果をそれぞれ示している。いずれの図も、横軸は繰り返し回数(サイクル数)の積算値(回)を示し、縦軸は鉛直変位(mm)を示している。
【0066】
図9(a)に示すように、変位特性Paは、基準位置(鉛直変位が0の位置)からの鉛直変位を示す残留変形W1と、鉛直変位の振幅で示される変形性能H1で示される。
残留変形W1は小さい方が望ましく、変形性能H1は大きい方が望ましい。
【0067】
図9(a)に示すように、従来方法(構成A)の変位特性Paは、残留変形W1が1サイクル目から一気に0.15mmまで上昇し、残留変形W1の値は0.15mm〜0.25mmへと徐々に上昇している。また、変形性能H1は約0.04mmの幅で、ほぼ一定幅で安定して変形している。
【0068】
これに対し、
図9(b)に示すように、第1の実施形態(構成B)の変位特性Pbは、残留変形W2がほとんど上昇することはなく、残留変形W2の値は0.01〜0.0mmの低い値で安定している。また、変形性能H2は約0.05mmの幅で、ほぼ一定幅で安定して変形している。
【0069】
また、
図9(c)に示すように、第2の実施形態(構成C)の変位特性Pcは、残留変形W3がほとんど上昇することはなく、残留変形W2の値は0.02〜0.01mmの低い値で安定している。また、変形性能H3は約0.08mmの幅で、ほぼ一定幅で安定して変形している。
【0070】
残留変形確認実験の結果から、従来方法(構成A)の残留変形W1に比べ、第1の実施形態(構成B)と第2の実施形態(構成C)は、いずれも残留変形W2、W3が低減され、残留変形70が少ない望ましい特性を示した。
また、従来方法(構成A)の変形性能H1に比べ、第1の実施形態(構成B)と第2の実施形態(構成C)は、いずれも変形性能H2、H3が増大され、変形性能が大きい望ましい特性を示した。
【0071】
(第3の実施形態)
図10を用いて第3の実施形態に係る振動抑制装置100を説明する。
振動抑制装置100は、下側板ばね98の一方の端部に変位調整板104が回転自在に設けられている点において、第1の実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0072】
振動抑制装置100の下側板ばね98は、両端部に、所定の距離を置いて平行に配置された一対のシャフト28、29が設けられている。下側板ばね98は、両端部にシャフト28、29が固定された状態でアーチ状となり、一方の側面に貼り付けられた膜型圧電素子24で曲率を変えることで、図示しない固定板14Cに当接する。
【0073】
一方のシャフト28の両端部には、シャフト28を軸回りに回転自在に支持する軸受84A、84A(奥側は図示せず)がそれぞれ設けられ、他方のシャフト29の両端部には、シャフト29を軸回りに回転自在に支持する軸受84B、84B(奥側は図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0074】
また、軸受84A、84Aは、ベース部102に固定された固定保持部86の上部に固定された台座108に取り付けられている。一方、軸受84B、軸受84Bは、変位調整板104の一方の端部に取り付けられている。
【0075】
変位調整板104は、鋼材で下側板ばね98の幅とほぼ等しい幅で平板状に形成され、他方の端部には軸受84C、84C(奥側は図示せず)が取り付けられている。軸受84C、84Cは、ベース部102に設けられたシャフト106に、矢印Kの方向へ回転自在に支持されている。
【0076】
これにより、例えば、下側板ばね98の端部の接線S1と、変位調整板104の軸線J1をシャフト29の中心で一致させたとき、シャフト29の鉛直方向及び水平方向への変位が、下側板ばね98で制限される(
図10の実線参照)。
一方、下側板ばね98の端部の接線S2と変位調整板104の軸線J2に角度を持たせたとき、シャフト29の鉛直方向及び水平方向への変位が許容される(
図10の一点鎖線参照)。
【0077】
この構成とすることにより、下側板ばね98に貼着した膜型圧電素子24が、アーチ状とされた下側板ばね98に引張力又は圧縮力を掛け、下側板ばね98の曲率を変化させる。下側板ばね98の曲率が大きくなると図示しない固定板に当接し、曲率が小さくなると固定板から離れる。
これにより、下側板ばね98の曲率を固定板14の振動に対応させて変化させ、振動している固定板に下側板ばね98を当接させることで、固定板の振動を抑制することができる。
【0078】
この結果、振動抑制装置100により、繰り返し発生する固定板の振動を、固定板を挟持して抑制し、載置台12の振動を抑制することができる。
他の構成は、第1の実施形態と同じであり説明は省略する。