特許第5995586号(P5995586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995586
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】運動装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/00 20060101AFI20160908BHJP
   A63B 22/02 20060101ALI20160908BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20160908BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   A63B23/00 Z
   A63B22/02
   A63B69/00 Z
   A61H1/02 N
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-167475(P2012-167475)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-23786(P2014-23786A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(73)【特許権者】
【識別番号】391010596
【氏名又は名称】昭和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤木 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 純治
(72)【発明者】
【氏名】有本 健
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雄三
(72)【発明者】
【氏名】布袋 智輝
(72)【発明者】
【氏名】足立 真也
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−500149(JP,A)
【文献】 特表2009−509693(JP,A)
【文献】 特開2002−360644(JP,A)
【文献】 米国特許第5133339(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0130809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00−26/00
A63B 69/00−69/40
A63B 71/00−71/16
A61H 1/00− 5/00
A61H 99/00
A61G 9/00−15/12
A61G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が出入可能な開口部を備えるチャンバと、前記チャンバの前記開口部を気密に閉じるシール部材と、前記チャンバ内を加圧する圧力調整装置と、前記チャンバに収容される運動器具とを備え、前記チャンバ内を所定圧力で加圧することで前記使用者の体重を所定量免荷する運動装置であって、
前記シール部材は、前記使用者の体格に応じてサイズを選択可能になっており、
前記圧力調整装置は、選択された前記シール部材のサイズ及び設定された免荷率又は免荷量から、前記シール部材のサイズ毎に予め定められている免荷率又は免荷量と圧力との相関関係に基づいて算出された圧力で前記チャンバ内を加圧する運動装置。
【請求項2】
前記相関関係は、
複数の使用者に対して、所定間隔毎に加圧した圧力と免荷率又は免荷量との関係を計測し、
前記シール部材のサイズ毎に、前記計測結果を平均し、
前記所定間隔毎の免荷率又は免荷量と圧力との関係の近似曲線を算出することにより求められる請求項1に記載の運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧差を利用した運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気圧差を利用した運動装置は、主として、トレーニング装置、あるいは、下肢部の筋力低下者や麻痺患者等に対する歩行訓練用のリハビリ装置として使用されてきた。このような運動装置は、特許文献1に示されるように、トレッドミル等の運動器具と、運動器具を覆い、使用者が出入可能な開口部を有するチャンバと、使用者とチャンバの開口部との間に配置され、チャンバ内を気密にするシール部材と、チャンバ内の圧力を調整する圧力調整装置とで構成されている。使用者は、開口部からチャンバ内に入り、チャンバの開口部に取り付けられたシール部材を腰部に装着することでチャンバ内を気密にした後、チャンバ内を高圧にする。これにより、チャンバ内外に圧力差が生じて、使用者の身体に上向きの力が働き、使用者の脚部に掛かる使用者自身の体重の負荷が軽減される。その結果、着地衝撃や床面蹴り出しに必要な力を適度に減少することができ、関節などへの負担を低減した歩行や走行トレーニングが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5133339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような運動装置では一般的に、運動装置を使用する度に、使用者に加える圧力と、加圧力により免荷される使用者の体重量(免荷量)との相関関係を導出している。すなわち、これから運動装置を使用する使用者が実際にチャンバ内に入った状態でチャンバ内を加圧していき、所定間隔毎に加圧した圧力とその時の使用者の体重とを計測し、使用者の加圧前の体重と所定圧力加圧後の体重との差を取って免荷量を算出することにより、使用者に応じた免荷量と圧力との相関関係を導出している。このように、使用者は、運動装置を使用する度に、前もって免荷量と圧力との相関関係を設定し、その上で所望の免荷量を運動装置に入力してトレーニングやリハビリを開始しなければならないため、トレーニングやリハビリを開始する前の免荷量の設定が煩雑である上、トレーニングやリハビリを即時に開始することができないという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡便な方法で免荷率又は免荷量を設定することができる運動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運動装置は、使用者が出入可能な開口部を備えるチャンバと、前記チャンバの前記開口部を気密に閉じるシール部材と、前記チャンバ内を加圧する圧力調整装置と、前記チャンバに収容される運動器具とを備え、前記チャンバ内を所定圧力で加圧することで前記使用者の体重を所定量免荷する運動装置であって、前記シール部材は、前記使用者の体格に応じてサイズを選択可能になっており、前記圧力調整装置は、選択された前記シール部材のサイズ及び設定された免荷率又は免荷量から、前記シール部材のサイズ毎に予め定められている免荷率又は免荷量と圧力との相関関係に基づいて算出された圧力で前記チャンバ内を加圧する。
【0007】
本発明では、シール部材のサイズを選択可能にするとともに、そのシール部材のサイズに応じた免荷率又は免荷量と圧力との相関関係が運動装置に予め定められている。よって、使用者が自身の体格に適したシール部材を選択し、そのシール部材のサイズ及び所望の免荷率又は免荷量を設定するだけで、そのシール部材のサイズに対して既に定められている免荷率又は免荷量と圧力との相関関係に基づいて圧力が算出される。この算出された圧力で、圧力調整装置によってチャンバ内が加圧されると、使用者は、自身が所望する免荷率又は免荷量の体重が免荷される。このように、本発明では、運動装置の使用に際して免荷率又は免荷量と圧力との相関関係を導出する操作が不要となり、使用者はシール部材のサイズを選択及び所望の免荷率又は免荷量の設定という簡便な操作で運動装置を使用することができる上、使用者は運動装置を即時に使用することができる。なお、免荷率は、シール部材のサイズ毎に予め定められている基準体重で免荷量を除算することにより求められる。この関係を用いると、シール部材のサイズに応じた基準体重を運動装置に予め定めておくことで、使用者が免荷率を設定した場合に、免荷率から免荷量を算出して、免荷量と圧力との相関関係に基づいて圧力を算出することもできるし、使用者が免荷量を設定した場合に、免荷量から免荷率を算出して、免荷率と圧力との相関関係に基づいて圧力を算出することもできる。
【0008】
上記運動装置において、上記相関関係は、複数の使用者に対して、所定間隔毎に加圧した圧力と免荷率又は免荷量との関係を計測し、シール部材のサイズ毎に、その計測結果を平均し、所定間隔毎の免荷率又は免荷量と圧力との関係の近似曲線を算出することにより求められている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る運動装置によれば、簡便な方法で免荷率又は免荷量を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の運動装置の一実施形態を示す部分断面側面図である。
図2図1の運動装置の側面図である。
図3図1の運動装置のチャンバを縮めた時の側面図である。
図4図1の運動装置のシール部材付近の拡大図である。
図5図1の運動装置のシール部材の斜視図である。
図6図1の運動装置における免荷量と圧力との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る運動装置の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1に示すように、運動装置1は、トレッドミルなどの運動器具2、チャンバ10、シール部材20、圧力調整装置30から構成されている。以下では、運動器具2を使用する使用者40が向く方向を前方向として、前後左右方向を定義する。
【0012】
運動器具2には、一般に市販されている種々のトレッドミルを使用可能である他、エアロバイクなどの様々な運動器具を使用可能である。なお、陸上競技トレーニングに使用するためには、相応の速度が出せるものが好ましい。この運動器具2は、台座3上に配置されている。台座3は、運動器具2を配置するのに十分な大きさを有しており、運動器具2上で使用者40がトレーニングを行った場合でも耐え得るように形成されている。台座3には、伸縮可能な脚4及びキャスター5が取り付けられても良い。これにより、運動装置1を使用するときには、脚4を伸ばして台座3が動かないように固定することができ、運動装置1を移動させたい場合は、脚4を縮めることで、キャスター5を使用して任意の場所に移動させることができる。
【0013】
次に、図2及び図3を併せて参照して、チャンバ10について説明する。チャンバ10は、気密性を有するシートで形成され、端部が台座3の外周端に取り付けられ、袋状に形成されている。シートには、透明なシート、又は不透明なシートを使用することができる。また、不透明シートを使用する場合には、前後左右の一部に透明シートで形成された透明窓11を設けることが好ましい。これにより、外部からトレーナーが使用者40のトレーニング状態を把握することができる。
【0014】
チャンバ10の上端部には、使用者40の下半身部が出入可能な大きさの円形状の開口部12が形成されている。図4に示すように、この開口部12の内周端には、後述するシール部材20のスカート22に取り付けられるチューブ24が係脱自在に係合可能な所定の幅を有した係合リング13が取り付けられている。この係合リング13は、内径が開口部12より小さく且つ外径が開口部12より大きいサイズで形成されている。また、係合リング13は、シール部材20と密接してチャンバ10を気密に閉じることができるように、剛性の高い材料で形成されている。係合リング13の内周端には、下方よりに、スカート22を保護する断面略円形状の保護リング14が取り付けられており、係合リング13の外周側には、チャンバ10の内部に突出するストッパー15が取り付けられている。ストッパー15は、開口部12を覆う所定の位置にスカート22を保持するために設けられるもので、係合リング13の外周の全周にわたって取り付けられても良く、又、係合リング13の周方向の一部分にのみ取り付けられても良い。
【0015】
また、チャンバ10の開口部12の左右両側には、図2に示すように、チャンバ10を上下に伸縮させるための一対のレバー16,16が取り付けられている。各レバー16は、台座3の左右両側部に取り付けられた一対のスライドバー6,6に上下動可能に支持されており、スライドバー6,6に沿って上下に移動し、任意の高さでスライドバー6,6上に保持される。これにより、使用者40の身長にかかわらず、使用者40の腰部あたりにチャンバ10の上端を位置させることができる。また、使用者40が運動装置1を使用する際には、図3に示すように、レバー16,16をスライドバー6,6の下端付近まで下げてチャンバ10を下方に圧縮することができ、これにより、使用者40は、容易に開口部12を介してチャンバ10内に入ることができる。一対のスライドバー6,6は、チャンバ10の後部に設けられることが好ましい。これにより、スライドバー6,6で使用者40の前方の視界を遮ることがなくなり、使用者40がトレーニングに専念しやすくなる。
【0016】
また、チャンバ10の前側には、使用者40が運動装置1を使用するための使用者用操作パネル50が取り付けられている。
【0017】
次に、図4及び図5を参照して、シール部材20について説明する。シール部材20は、チャンバ10と別個に設けられ、使用者40に着用されるスパッツ21及びスパッツ21が着脱自在に取り付けられるスカート22を備える。これにより、運動装置1の使用に際して、使用者40は、チャンバ10の外部で容易に、腰部にシール部材20を着脱することができる。その上でチャンバ10内に出入するため、チャンバ10内の出入の際にシール部材20を装着する必要がなく、チャンバ10内への出入が容易になる。また、スパッツ21がスカート22から取り外せることで、使用者40に直接着用されて汗が付着するスパッツ21を容易に洗濯することができるし、各使用者40が専用のスパッツ21を保有すると、使用者40の肌に密着するスパッツ21を他人と共有することによる不快感もなくなる。
【0018】
スパッツ21は、使用者40の腹部及び腰部から大腿部までを覆う衣類で、通気性を有する素材により形成されている。特に、水着素材が好ましく、とりわけ、ナイロンとポリウレタンとを混合した素材が好ましい。このように、スパッツ21に通気性の良い素材を用いることで、スパッツ21が着用される使用者40の腹部、腰部、臀部、大腿部などが蒸れることを防止でき、使用者40の発汗量を減らすことができる。
【0019】
スカート22には、使用者40がスパッツ21の上から着用するパンツ23が一体に設けられており、使用者40がパンツ23を穿いたときに使用者40の腰部の周囲にスカート22が装着されるようになっている。スカート22は、係合リング13の内径より大きく且つストッパー15の取り付け位置よりも小さいサイズのドーナツ状で形成されている。スカート22は、気密性のある素材でできた生地を使用して、例えば、生地を複数枚重ねたり、表裏の生地の間にクロロプレンゴム等を挟んだりして形成されている。後述するように、運動装置1を使用する際にチャンバ10内を高圧にするが、このように生地を重ねてスカート22を形成しているため、チャンバ10内が高圧となってもスカート22が膨らむことが抑えられる。その結果、スカート22の膨らみにより、スカート22が係合リング13から抜け出ることが防止される。パンツ23は、使用者40の腹部及び腰部から大腿部近位までを覆う衣類で、伸縮性や弾性に優れた素材が使用されている。着用時のフィット感を高めるためには、ウエットスーツ等に用いられるクロロプレンゴム等の合成ゴムからなる素材が使用されるのが好ましい。また、パンツ23及びスパッツ21には、使用者40が着用した際に互いに対応する位置に面テープが取り付けられており、スパッツ21の面テープとパンツ23の面テープとを貼り合わせることで、スパッツ21とパンツ23との間の気密性を保ちつつスカート22をスパッツ21に装着できるようになっている。
【0020】
スカート22の外周端には、チューブ24が取り付けられている。このチューブ24は、ポリウレタン等の弾性のある素材で形成される環状のものであり、スカート22の下面の外周端に全周にわたって取り付けられている。
【0021】
このシール部材20は、体格が異なる使用者40全てが共通の運動装置1を使用することができるように、スカート22の中央開口22aのサイズ及びパンツ23のサイズを変えた複数のサイズが準備されている。これにより、使用者40は、自身の体格(ウエスト(胴囲)、ヒップ(臀囲)、フトモモ(大腿囲)等)に合わせてシール部材20を選択できる。このように、シール部材20のサイズを複数種類準備しておくことで、シール部材20のサイズが小さすぎて使用者40が窮屈な思いをすることや、シール部材20のサイズが大きすぎて使用者40と開口部12との間に隙間が生じ、チャンバ10内の気密性が損なわれることを防止することができる。シール部材20のサイズは、例えば、3S、SS、S及びMの4パターンを準備することができる。
【0022】
再度、図1を参照すると、チャンバ10には、前方に送風口17、後方に排気口18が備えられている。排気口18は、チャンバ10の外部と貫通するように備えられており、チャンバ10から常時一定の空気が排出されるようになっている。一方、送風口17には、圧力調整装置30が取り付けられている。この圧力調整装置30には、例えば、ブロア等の送風機が使用でき、チャンバ10の外部の空気を吸気して、送風口17を介してチャンバ10内に空気を供給している。そして、圧力調整装置30によって、排出口18から排出される空気よりも多くの空気を供給することで、チャンバ10内の圧力を高めている。一方、圧力調整装置30によって、排出口18から排出される空気よりも少ない空気を供給することで、チャンバ10内の圧力を下げている。このようにして、圧力調整装置30によってチャンバ10内の圧力が調整されている。
【0023】
また、チャンバ10内には、特に運動器具2の前方に設けられるカバー内に、送風機31が配置されている。この送風機31は、チャンバ10内の空気を吸気し、使用者40に対して前方から風を当てることができる。この風は、特に使用者40の脚部に直接当るため、使用者40の下半身部、特に脚部を冷却することができる。また、送風機31によってチャンバ10内の空気が吸引されて、その空気が送風機31から排出されることにより、チャンバ10内を循環する空気の流れが発生する。運動装置1によるトレーニングの際には、チャンバ10内がシール部材20により気密になっているため、使用者40の走行等の運動に伴う発汗によりチャンバ10内の湿度が上昇し、チャンバ10内が蒸れることがしばしばある。しかしながら、チャンバ10に送風機31を設け、チャンバ10内の空気を循環させることで、チャンバ10内の湿度の上昇及び蒸れによる不快感を解消することができる。
【0024】
次に、運動装置1に、免荷率又は免荷量と圧力との相関関係を予め定める方法について説明する。まず、様々な体格・体重の複数の使用者40が一人ずつ実際に複数種あるシール部材20の中から自分の体格にあったサイズのシール部材20を選んで装着した後、チャンバ10内に入りチャンバ10内を所定間隔毎に加圧して、加圧した圧力とその時の使用者40の体重を計測する。そして、使用者40毎に、加圧前の体重と所定圧力加圧後の体重との差を取って免荷量を算出する。これにより、様々な体格・体重の複数の使用者40に対して、所定間隔毎の圧力とその圧力での免荷量との関係が算出される。
【0025】
この複数の使用者40について算出された所定間隔毎の圧力とその圧力での免荷量との関係を、各使用者40が使用したシール部材20のサイズ毎に分類し、シール部材20のサイズ毎に、所定間隔毎の圧力に対する免荷量の平均を算出する。これにより、シール部材20の各サイズに対して、所定間隔毎の圧力とその圧力での免荷量との関係が算出される。また、シール部材20の各サイズに対して、そのシール部材20のサイズの基準体重で免荷量を除算して免荷率を算出することで、所定間隔毎の圧力とその圧力での免荷率との関係が算出される。なお、基準体重は、シール部材20のサイズ毎に、そのシール部材20のサイズの規格(ウエスト、ヒップ、フトモモ)から推定される適用体重の平均を取って算出される。
【0026】
このシール部材20の各サイズについて算出された所定間隔毎の圧力とその圧力での免荷率又は免荷量との関係の近似曲線を算出することにより、シール部材20の各サイズに応じた免荷率又は免荷量と圧力との相関関係を導出する。なお、近似曲線は、種々の公知の方法により算出することができ、例えば、線形近似、対数近似、累乗近似、指数近似、多項式近似、移動平均等が利用可能である。一例として、線形近似によって算出された近似曲線で表された免荷量と圧力との相関関係を図6に示す。このようにして導出された免荷率又は免荷量と圧力との相関関係を、例えば圧力制御装置30を制御する制御部、使用者用操作パネル50への入力情報(選択したシール部材20のサイズ、設定した免荷量等)を処理する処理部等の運動装置1の任意の場所に記憶させておき、運動装置1を使用する度に呼び出せるようにしておく。このとき、シール部材20のサイズ毎の基準体重についても、圧力制御装置30の制御部、使用者用操作パネル50の処理部等の運動装置1の任意の場所に記憶させておき、運動装置1を使用する度に呼び出せるようにしておくこともできる。
【0027】
次に、運動装置1の使用方法について説明する。本実施形態では、使用者40が免荷率を設定し、運動装置1に予め定められているシール部材20のサイズ毎の免荷量と圧力との相関関係及び基準体重に基づいて、チャンバ10内を加圧する圧力を算出する。
【0028】
まず、使用者40は、スパッツ21を穿き、スカート22の中央開口22aから両脚を挿入してスパッツ21の上からパンツ23を穿く。そして、スパッツ21及びパンツ23に取り付けられている面テープを互いに貼り合わせることで、スカート22を使用者40の腰部に装着する。
【0029】
そして、図3に示すように、レバー16を下げ、チャンバ10の上端を台座3付近まで下げる。その後、使用者40は開口部12を介してチャンバ10内に入り、レバー16を上昇させてチャンバ10の上端を腰部まで上げて固定する。その状態で、使用者40はチューブ24を撓めて縮径させることで、開口部12を通過させてチャンバ10内にスカート22を入れる。このとき、チューブ24の弾性による復元力によりスカート22がチャンバ10内に広げられる。係合リング13にはストッパー15が設けられているため、チューブ24はストッパー15に当る位置に留められて、ストッパー15の内方でスカート22が位置決めされる。そして、スカート22の外径は係合リング13の内径より大きいため、スカート22の下面の外周端に取り付けられたチューブ24が係合リング13と係合することで、スカート22の外周端が係合リング13と密接する。これにより、スカート22が開口部12を覆う所定の位置に保持され、スカート22が一方へ偏ることにより、スカート22が係合リング13から抜け出ることが防止されている。
【0030】
その後、使用者40は、手元の使用者用操作パネル50を操作して、免荷率を設定する。具体的には、使用者用操作パネル50の画面上で、自身が選択したシール部材20のサイズを選択するとともに、所望の免荷率を入力する。運動装置1には、例えば圧力制御装置30の制御部、使用者用操作パネル50の処理部等の任意の場所に、シール部材20のサイズに応じた免荷量と圧力との相関関係及び基準体重が予め定められているため、選択されたシール部材20のサイズに応じた基準体重を、入力された所望の免荷率に乗算することで所望の免荷量が自動的に算出される。そして、この算出された免荷量及び選択されたシール部材20のサイズに応じた免荷量と圧力との相関関係に基づいて、入力された所望の免荷率が得られる圧力が自動的に算出される。そして、圧力調整装置30によって、算出された圧力でチャンバ10内が加圧される。
【0031】
チャンバ10内の圧力が高まると、チャンバ10の内部とチャンバ10の外部とで圧力差が生じ、図4の矢印Aに示すように、スカート22に内圧が掛かる。この内圧によりスカート22が膨らみ、係合リング13に押し付けられると同時に、スカート22は、保護リング14とぴったりとくっつき、これにより、スカート22と係合リング13及び保護リング14とが密接して、開口部12が気密に閉じられる。このとき、係合リング13の内周端に取り付けられた保護リング14により、係合リング13の内周端がスカート22の生地に接触してスカート22が傷つくことが防止されている。また、スカート22に内圧が掛かると、開口部12が気密に閉じられるとともに、スカート22に上向きの力が働く。このスカート22に働く上向きの力が、スカート22と一体に設けられるパンツ23、パンツ23に装着されるスパッツ21へと伝搬し、この力によってスパッツ21を着用する使用者40の身体が持ち上げられる。
【0032】
このようにして運動装置1を使用することで、使用者40が激しい運動を行って、シール部材20が使用者40と共に動いたとしても、内圧によりスカート22と係合リング13及び保護リング14との密着性は保たれるため、チャンバ10内を十分に気密に保つことができる。一方で、チャンバ10とシール部材20とが別部材であるため、シール部材20のみが使用者40の動き追従し、チャンバ10が使用者40にまとわり付くことがない。さらに、スカート22に掛かる内圧により、使用者40の身体が持ち上げられるため、使用者40は、自身の体重が免荷された状態で運動装置1を使用することができる。このとき、スカート22にパンツ23を一体に設けることで、使用者の身体を持ち上げる力が、パンツ23の股部を介して使用者40に確実に伝搬され、使用者40は、チャンバ10内の加圧量に応じた体重の免荷を確実に受けることができる。また、使用者40が丈の長いスパッツ21を着用した上にパンツ23を装着することで、スパッツ21と使用者40の身体との接触面が広くなり、この接触面に使用者40の身体を持ち上げる力が分散されるため、使用者40は体に痛みを伴わず快適に運動装置1を使用することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、運動装置1に、シール部材20のサイズに応じた免荷量と圧力との相関関係及び基準体重が予め定められている。そして、運動装置1の使用時には、使用者40が、使用者用操作パネル50を用いて自身が選択したシール部材20のサイズと所望の免荷率とを設定するのみで、予め定められている免荷量と圧力との相関関係及び基準体重が呼び出され、その相関関係及び基準体重に基づいて所望の免荷率が得られる圧力が算出される。これにより、運動装置1の使用前に免荷量と圧力との相関関係を導出する操作が不要となり、使用者40は簡便な操作でチャンバ10内を所望の免荷率だけ体重が免荷される状態にでき、運動装置1によりトレーニング又はリハビリを行うことができる。また、使用前に免荷量と圧力との相関関係を導出する必要がないため、使用者40は即時にトレーニング又はリハビリを開始することができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、シール部材20のサイズを3S、SS、S及びMの4パターン準備しているが、このサイズのみに限らず、L、LL等のさらに大きいサイズのシール部材20を準備しても良いし、さらに細かくサイズを分類しても良い。免荷率又は免荷量と圧力との相関関係は、使用者40の体格により変化するものであるため、シール部材20のサイズを多数種準備することで、同サイズのシール部材20を使用する使用者40の体格がより近くなる。これにより、シール部材20のサイズ毎に免荷率又は免荷量と圧力との相関関係を定めておくだけで、使用者40個人に合わせて免荷率又は免荷量と圧力との相関関係を算出しなくても、使用者40が所望する免荷率又は免荷量と実際に使用者40が受けている免荷率又は免荷量とにズレが生じにくくなる。
【0035】
また、上記実施形態では、使用者40が免荷率を入力し、運動装置1内に予め定められているシール部材20のサイズ毎の免荷量と圧力との相関関係及び基準体重に基づいて、チャンバ10内を加圧する圧力を算出したが、チャンバ10内を加圧する圧力を算出する方法は必ずしもこの方法に限られるものではない。例えば、使用者40が免荷量を入力し、運動装置1内に予め定められているシール部材20のサイズ毎の免荷率と圧力との相関関係及び基準体重に基づき、選択されたシール部材20のサイズの基準体重で入力された免荷量を除算して免荷率を算出した上で、チャンバ10内を加圧する圧力を算出してもよい。また、使用者40が免荷率を入力し、運動装置1内に予め定められているシール部材20のサイズ毎の免荷率と圧力との相関関係に基づいて、チャンバ10内を加圧する圧力を算出してもよいし、使用者40が免荷量を入力し、運動装置1内に予め定められているシール部材20のサイズ毎の免荷量と圧力との相関関係に基づいて、チャンバ10内を加圧する圧力を算出してもよい。この場合には、シール部材20のサイズ毎の基準体重を運動装置1に予め定めておく必要がなくなるとともに、免荷率と免荷量とを換算する必要もなくなる。さらには、チャンバ10内が加圧されて実際に得られる免荷率又は免荷量を、より所望の免荷率又は免荷量に近づけるために、使用者40の身長又は性別を入力するようにしてもよい。このとき、使用者40の身長を直接入力するのではなく、使用者40が自身の腰部に固定した際のチャンバ10の上端の位置を読み取って身長を算出することもできる。
【0036】
また、上記実施形態では、スカート22にパンツ23を一体に設けているが、スカート22の内周端に面テープを取り付けてスカート22を直接スパッツ21に装着しても良い。また、スカート22の内周端にゴム等を取り付け、ゴム等により使用者40の腰部に保持できるようにしても良い。このようにしてスカート22をスパッツ21に装着することで、特にパンツ23を設けなくてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、係合リング13の内周端に保護リング14を設けているが、スカート22と係合リング13とで開口部12の気密性が十分に保たれ且つスカート22が係合リング13により傷つけられる恐れがない場合には、特に保護リング14を設ける必要はない。また、係合リング13の内周端を剛性の低い材料で覆うことで、スカート22を保護することもできる。
【0038】
また、上記実施形態では、開口部12及びスカート22の形状を、円形状としているが、開口部12及びスカート22の形状は、円形状に限られず、楕円形状、矩形状、多角形状等の種々の形状とすることができる。このとき、係合リング13は、開口部12と相似の形状に形成され、保護リング14及びストッパー15、並びに、チューブ24は、それぞれ係合リング13及びスカート22の形状に沿うように設けられる。また、必ずしも開口部12とスカート22とは相似形状である必要もなく、スカート22が開口部12の内周端に取り付けられる係合リング13と密接できるように形成され、開口部12の十分な気密性を保てるものであればよい。
【0039】
また、上記実施形態では、チャンバ10を上下に伸縮させるために、一対のレバー16,16をチャンバ10の開口部12の左右両側に設けたが、例えば、チャンバ10の開口部12の前方又は後方に、一本の棒状のレバーを設けても良い。このレバーの左右両端は、一対のスライドバー6,6に、それぞれ上下可能に支持されている。このようにレバーを設けることで、チャンバ10の伸縮に際して左右のレバー16,16を同時に操作する必要はなく、一本のレバーを操作するだけで、容易にチャンバ10を伸縮させることができる。
【0040】
また、上記実施形態では、外部に設けた圧力調整装置30により、チャンバ10内の圧力を調整し、送風機31により、チャンバ10内の空気を循環させているが、必ずしも、図1の実施形態には限られない。例えば、圧力調整装置30を、台座3の内部に設け、台座3の側面から外気を吸気し、台座3の上面からチャンバ10内に空気を挿入してもよい。これにより、運動装置1をよりコンパクトにすることができる。さらに、送風機31は、必ずしも設ける必要はなく、圧力調整装置30が送風機31の機能を兼ね備えても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 運動装置
2 運動器具
10 チャンバ
12 開口部
20 シール部材
30 圧力調整装置
40 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6