(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995654
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】フロート式液面レベルセンサ
(51)【国際特許分類】
G01F 23/76 20060101AFI20160908BHJP
G01F 23/62 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
G01F23/76 Z
G01F23/62 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-232021(P2012-232021)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-85144(P2014-85144A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−60651(JP,A)
【文献】
特開2004−77246(JP,A)
【文献】
特開2006−284347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が固定されたフロートと、前記フロートが遊嵌され、液面に追従する前記フロートの昇降を案内する案内部材と、前記案内部材の上部及び下部に配置された磁気センサとを有するフロート式液面レベルセンサであって、
前記フロートが、所定の内径、外径及び高さを有して液面と接触する円板部と、前記円板部の内径と連通する同一寸法の内径及び前記円板部より小さな外径を有し、前記円板部上に一体形成された円筒部と、からなる凸型フロートであり、
前記円板部の貫通孔及び前記円筒部の貫通孔に前記案内部材が通されており、
前記永久磁石が、前記凸型フロートの前記円板部の上面かつ外周近傍に固定されている
ことを特徴とするフロート式液面レベルセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のフロート式液面レベルセンサにおいて、
前記円筒部が前記円板部の上方に位置する
ことを特徴とするフロート式液面レベルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロート式液面レベルセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロート式液面レベルセンサの一例として、永久磁石が固定されたフロートと、前記フロートが遊嵌され前記フロートの昇降を案内する案内部材と、前記案内部材の上部及び下部に配置された磁気センサとを有し、フロートと共に昇降する永久磁石の磁束密度を磁気センサが検知することにより液面レベルを検出する方式のものがある。
【0003】
図2は、従来のフロート式液面レベルセンサの構成例を示し、(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。液面レベル検出装置1は、自動車のエンジンオイルタンク内に設置され、エンジンオイルの液面レベルを検出するものである。液面レベル検出装置1は、液面(エンジンオイル面)Fに追従して昇降するフロート3を有する。このフロート3は、発泡NBR(ニトリルゴム)、発泡PA66(ポリアミド)等からなり、外径約25mm、内径約12mm、鉛直方向の長さ(高さ)約15mmの略円筒状である。フロート3の内周面3nの上方には、内周面3nの全周にわたって凹んだ凹溝3hが形成されている。
【0004】
そして、この凹溝3h内には、略リング状の永久磁石5が、フロート3の内周面3nと永久磁石5の内周面5nとが略面一となるように、はめ込まれ固着されている。この永久磁石5は、希土類磁石(ネオジム磁石)からなり、外径は約18mm、内径は約12mm、鉛直方向の長さ(高さ)は約10mmである。また、磁力が約150mTで、内周面5n側がN極、外周面5g側がS極に一様に着磁されている。従って、永久磁石5の周りには、
図2中に破線と矢印で示すような磁力線が生じる。
【0005】
また、液面レベル検出装置1は、フロート3の昇降を案内する案内部材11を有する。この案内部材11は、鉛直方向に延設されると共に、フロート3の孔に遊挿された直径約8mm、鉛直方向の長さ(高さ)約30mmの略円筒状のステム部13を有する。なお、このステム部13は、PA66(ポリアミド)等の材質からなる。また、このステム部13の上端及び下端には、フロート3の内径よりも大きく外径よりも小さい直径約20mmの略円盤状の上端円盤部15と下端円盤部17が固着されている。従って、フロート3は、ステム部13に沿って鉛直方向に自由に動くことができる一方、上端円盤部15及び下端円盤部17によりステム部13(案内部材11)からの抜けが防止されている。
【0006】
案内部材11のステム部13内には、水平方向の長さが約7mm、鉛直方向の長さが28mm、厚さが約1mmの略矩形板状の基板19が挿入され固着されている。この基板19の一表面には、磁気センサである2つのホール素子(第1ホール素子21及び第2ホール素子23)が鉛直方向にそれぞれ離間して固着されている。第1ホール素子21と第2ホール素子23は、約8mmの間隔を開けて、第1ホール素子21が上方に第2ホール素子23が下方に固着されている。これら第1,第2ホール素子21,23は、同様の特性を有する。即ち、第1,第2ホール素子21,23に駆動電圧を印加すると、液面に追従するフロート3に配置された永久磁石5の昇降位置に応じて変化する磁束密度を検知して、その磁束密度に対応する電気信号、より具体的には、その磁束密度にほぼ直線的に対応する電圧を出力する。なお、この出力電圧は、駆動電圧に比例する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−277308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記の従来の液面レベル検出装置では、フロート内部の永久磁石が磁気センサに極端に近づいたとき、特にタンク内容物の低液面レベルを測定する場合に、磁気センサが検知する磁力の向きが逆になり、正確な液面レベルの測定ができなくなる。さらに、フロートが案内部材に遊嵌されているため、フロートががたついて永久磁石の上下の位置が変わり、磁気センサの検出出力に誤差を生じることがある。
【0009】
そこで、本発明は、従来に比して液面レベルを高精度に測定できるフロート式液面レベルセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、永久磁石(31)が固定されたフロート(32)と、前記フロート(32)が遊嵌され、液面に追従する前記フロート(32)の昇降を案内する案内部材(33)と、前記案内部材(33)の上部及び下部に配置された磁気センサ(34,35)とを有するフロート式液面レベルセンサであって、前記フロート(32)が、所定の内径、外径及び高さを有して液面と接触する円板部(321)と、前記円板部(321)の内径と連通する同一寸法の内径及び前記円板部(321)より小さな外径を有し、前記円板部(321)上に一体形成された円筒部(322)と、からなる凸型フロートであ
り、前記円板部(321)の貫通孔(321a)及び前記円筒部(322)の貫通孔(322a)に前記案内部材(33)が通されており、前記永久磁石(31)が、前記凸型フロートの前記円板部(321)の上面かつ外周近傍に固定されていることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決するための請求項2記載の発明は、請求項1記載のフロート式液面レベルセンサにおいて、
前記円筒部(322)が前記円板部(321)の上方に位置することを特徴とする。
【0012】
なお、上述の課題を解決するための手段の説明におけるかっこ書きの参照符号は、以下の、発明を実施するための形態の説明における構成要素の参照符号に対応しているが、これらは、特許請求の範囲の解釈を限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、凸型フロートの出っ張り部分(円筒部)があるため、案内部材に対するフロートの傾き(がたつき)を従来より抑えることができ、液面レベルを高精度に測定することができる。また、凸型フロートの出っ張り部分(円筒部)の長さを調節することで、液面レベルの測定可能領域の上限を設定することができる。
また、永久磁石が凸型フロートの円板部の上面かつ外周付近に固定されているため、磁気センサと永久磁石の距離を確保でき、低い液面レベルも高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るフロート式液面レベルセンサの一実施形態の構成例を示す縦断面図である。
【
図2】従来のフロート式液面レベルセンサの構成例を示し、(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係るフロート式液面レベルセンサの一実施形態の構成例を示す縦断面図である。本発明のフロート式液面レベルセンサ30は、永久磁石31が固定されたフロート32と、フロート32が遊嵌され、液面に追従するフロート32の昇降を案内する案内部材33と、案内部材33の上部及び下部に配置された磁気センサ34及び35とを有する。このフロート式液面レベルセンサ30は、液面レベルを測定すべき液体が入ったタンク40の内部に、磁気センサ34が上方かつ磁気センサ35が下方になるように配置される。
【0017】
フロート32は、円板部321と、円板部321上に一体形成された円筒部322とからなり、断面凸型の形状になっている凸型フロートである。円板部321は、中央に貫通孔321aが形成されていると共に、所定の内径、外径及び高さを有し、その下部が液体に浸る。円筒部322は、円板部321の貫通孔321aの内径と同一寸法の内径を有する貫通孔322aが形成されていると共に、円板部321より小さな外径と、円板部321より高い高さとを有する。
【0018】
永久磁石31は環状磁石であり、フロートの円板部321の上面かつ外周近傍に固定されている。
【0019】
案内部材33は、例えば樹脂製の円筒状の部材であり、フロート32が遊嵌される外径を有する。案内部材33には、その上端から下端にわたって回路基板36が内蔵されている。回路基板36の上端及び下端付近には、それぞれ、磁気センサ34及び35が実装されている。
【0020】
上記の構成を有する本発明のフロート式液面レベルセンサの使用時、液面レベルに追従してフロート32と共に永久磁石31が昇降する。磁気センサ34,35は、永久磁石31の昇降に応じて変化する磁束密度を検知し、その磁束密度に対応する検出電圧を出力する。磁気センサ34,35からの検出電圧は、図示しない検出回路に入力され、液面レベルに対応した電圧に変換されて外部に出力され、例えば、自動車の室内に設置されたメータ等に液面レベルが表示される。
【0021】
以上説明した本発明のフロート式液面レベルセンサによれば、より低液面レベルにおける液面レベルの変動でも、凸型フロートによって検出することができる。フロートの円板部の厚み以下の液面レベルでも、永久磁石とフロートの重量に対するフロートの体積を増やすなどの方法による喫水率の調整によって、フロートを液面に浮かばせることができ、液面レベルの測定ができる。永久磁石がフロートの円板部の上面かつ外周付近に固定されているため、低液面レベルの時でも下部の磁気センサと永久磁石との距離を確保でき、また、上記と同様に、高液面レベルの時でも上部の磁気センサと永久磁石との距離を確保でき、従来構成のように永久磁石が磁気センサに近づきすぎて磁気センサが検知する磁力の向きが逆になることが防止されるため、高精度な液面レベルの測定ができる。また、凸型フロートの出っ張り部分(円筒部)があるため、液面の揺らぎやフロートの昇降によって生じる案内部材に対する凸型フロートの傾き(がたつき)が従来構造のフロートよりも抑制されるので、液面レベルをより高精度に測定することができる。さらに、凸型フロートの出っ張り部分(円筒部)の長さを調節することで(例えば、
図1ではタンク内部の高さの20%に調節されている。)、液面レベルの測定可能領域の上限を設定することができる。
【0022】
以上の通り、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0023】
例えば、上述の実施形態では、永久磁石31は環状磁石であるが、環状に限らず他の形状でもよい。
【0024】
また、本願発明は、凸型フロートの円筒部322の追加によリフロート32の傾き(ガタ付き)が抑制されるが、例えば、案内部材33とフロート32の隙間の寸法と、フロート32上の永久磁石31と案内部材33の中心軸との間の距離と、凸型フロートの全体高さ(円板部321の高さと円筒部322の高さの合計高さ)との関係を、フロート32が最大に傾いてフロート32の上下の内周が案内部材33の上下の外周に接した時の検出誤差が液面レベルの測定上の許容誤差範囲内に入るように設定してもよい。
【0025】
また、フロート32は、発泡ニトリルゴムなどの発泡樹脂材料で作製し、その内部に永久磁石を埋め込んでも良い。
【符号の説明】
【0026】
30 フロート式液面レベルセンサ
31 永久磁石
32 フロート
321 円板部
321a 貫通孔
322 円筒部
322a 貫通孔
33 案内部材
34 磁気センサ
35 磁気センサ
36 回路基板
40 タンク