(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材、インク受容層、パターン状のめっき下地層、前記めっき下地層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜の順で積層されためっき物において、パターン状のめっき下地層は、50μm以下の幅であり、かつ、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子膜を設けた複合粒子と、バインダーとを含み、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmであることを特徴とするパターン化されためっき物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパターン化されためっき物は、基材、インク受容層、パターン状のめっき下地層、前記めっき下地層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜の順で積層されためっき物において、パターン状のめっき下地層は、50μm以下の幅であり、かつ、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子とバインダーとを含み、前記高分子粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmであることを特徴とする。
【0010】
[基材]
本発明の基材は、後述するめっき下地塗料中の溶剤が浸透し難い基材であり、例えばガラス、ポリイミド系樹脂フィルム、延伸されたポリエステル系樹脂フィルムが挙げられる。
そして、ここでいう「浸透し難い基材」とは、後述するめっき下地塗料を用いて、基材上に50μm以下の細線印刷した場合、基材に該下地塗料中の溶剤が浸透せず、水平方向に滲んでしまい、所定の印刷幅を超えてしまう基材を指す。
【0011】
[インク受容層]
本発明のインク受容層は、後述するめっき下地塗料中の溶剤が浸透し易い層であり、すなわち、後述するめっき下地塗料を用いて、インク受容層上に50μm以下の細線印刷した場合、インク受容層に該下地塗料中の溶剤が浸透し、水平方向に滲むのを防ぎ、所定の印刷幅を超えないようにするための層である。
【0012】
インク受容層としては、後述するめっき下地塗料を用いて、50μm以下のパターン印刷した印刷幅を保つ層であれば特に限定されるものではなく、例えば合成樹脂からなる層、或いは無機多孔質層が挙げられる。
【0013】
前記合成樹脂からなるインク受容層としては、例えばポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂等が挙げられ、これら樹脂を単独、或いは混合して用いてもよい。また、これら合成樹脂は、未架橋体でも架橋体でもよく、熱や光などのエネルギーを加えることにより架橋反応を起こさせるものであってもよい。そして、架橋反応のタイミングは、後述するめっき下地塗料をインク受容層上へ塗布する前後、或いは塗布と同時のいずれのタイミングでもよい。
また、これら合成樹脂に無機系粒子を加えてもよく、例えばシリカ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ、タルク、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン等が挙げられる。
そして、これら合成樹脂からなるインク受容層の場合、乾燥厚みが1〜100μmとなるように形成すればよい。
【0014】
また、無機多孔質層からなるインク受容層としては、セラミックや金属などの多孔質膜が挙げられる。セラミックとしては、シリカ、チタニア、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物、アモルファス炭素、黒鉛などの炭素が挙げられる。
そして、これら無機多孔質層からなるインク受容層の場合、乾燥厚みが0.05〜20μm、好ましくは0.1〜5.0μmとなるように形成すればよい。
【0015】
[パターン状のめっき下地層]
本発明のパターン状のめっき下地層は、50μm以下の幅であり、かつ、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子とバインダーとを含み、前記高分子粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmである。
そして、前記高分子粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2μm未満の場合、めっき下地塗料中の溶剤と共に高分子粒子がインク受容層内へ拡散し、パターン状のめっき下地層表面において高分子粒子の量が少なくなり、後述する触媒金属を吸着し難くなる。結果、その後、金属めっき膜を無電解めっき法により形成するが、金属めっき膜の未析出部分が出来、優れた導電膜を得ることができない。
一方で、前記高分子粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が3μmを超えた場合、パターン状のめっき下地層表面において、後述する触媒金属が島状で吸着し、金属めっきの析出も島状となるため、連続した金属めっき膜が得られず、優れた導電膜を得ることができない。
【0016】
(高分子粒子)
本発明の高分子粒子としては、触媒金属を吸着させることができると共に、その平均粒子径が0.2〜3μmであればよく、例えば還元性の高分子粒子であり、かつ平均粒子径が0.2〜3μmのものが好ましく使用される。また、高分子粒子は1次粒子(単一粒子)、或いは2次粒子(凝集粒子)の状態であってもよい。なお、還元性の高分子粒子は、触媒金属のイオンを還元して吸着することにより、結果的に導電性の高分子粒子となる。
【0017】
また、前記還元性の高分子粒子としては、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有する高分子粒子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロール粒子が挙げられる。
還元性高分子粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性の高分子粒子を使用することもできる。
【0018】
また、還元性の高分子粒子としては、触媒金属を吸着していない導電性の高分子粒子を脱ドープ処理することにより得ることもできる。例えば、本発明のインク受容層上に、平均粒子径が0.2〜3μmの触媒金属を吸着していない導電性の高分子粒子とバインダーとを含む塗料を50μm以下の幅でパターン状に印刷し、その後、脱ドープ処理を行って、還元性の高分子粒子を得ることができる。
そして、この触媒金属を吸着していない導電性の高分子粒子としては、導電性を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロール粒子が挙げられる。
導電性高分子粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子粒子を使用することもできる。
【0019】
(脱ドープ処理)
前記脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液で処理して還元する方法、又は、アルカリ性溶液で処理する方法が挙げられる。
操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で処理するのが好ましい。例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。
【0020】
また、本発明の平均粒子径が0.2〜3μmの高分子粒子の製造方法は、例えば乳化重合により溶媒中に高分子粒子が分散した分散体として得る方法、或いは水中で重合反応させて出来た高分子粒子を濾別し、乾燥させ粉体を得る方法がある。なお、粉体を得る方法では、平均粒子径を調整するために、得られた粉体を物理的に粉砕してもよい。
【0021】
(バインダー)
本発明のバインダーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン酸系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリ(N−ビニルカルバゾール) 系樹脂、炭化水素系樹脂、ケトン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチルセルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ABS系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられる。
使用するバインダー量は、高分子粒子1質量部に対して0.1質量部以上使用することができ、具体的には、高分子粒子1質量部に対して0.1質量部ないし60質量部の範囲である。バインダーが60質量部を超えると金属めっき膜が析出し難くなる場合があり、バインダーが0.1質量部未満であると、インク受容層との密着性が得られ難い。
【0022】
本発明のめっき下地層は、めっき下地塗料を用いて、インク受容層上に50μm以下の幅となるようにパターン状に印刷し、その後、塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬することにより得ることができる。
【0023】
(めっき下地塗料)
めっき下地塗料には、少なくとも還元性または導電性の高分子粒子、バインダー、溶媒を含んでなる。なお、還元性または導電性の高分子粒子、バインダーは上述で説明しているものを使用できる。
【0024】
(溶媒)
めっき下地塗料の溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等の多価アルコール誘導体溶媒、ミネラルスピリット等の炭化水素溶媒、ジヒドロターピネオール、D−リモネン等のテルペン類に分類される溶媒を用いることもできる。
【0025】
更に、めっき下地塗料は用途や印刷対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、顔料、染料、インキバインダ等の樹脂を加えてもよい。
【0026】
また、めっき下地塗料を用いて、インク受容層上に50μm以下の幅となるようにパターン印刷する方法としては、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、グラビアオフセット印刷、パッド印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0027】
(触媒液)
また、触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウムが特に好ましい。好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
【0028】
[金属めっき膜]
本発明の金属めっき膜は、パターン状のめっき下地層上に、無電解めっき法により形成した金属めっき膜である。そして、無電解めっき法は、通常知られた方法に従って行うことができる。即ち、基材、インク受容層、パターン状のめっき下地層の順で積層されたものを、無電解めっき浴に浸漬することにより、パターン状のめっき下地層上に金属めっき膜を設けることができる。
【0029】
(無電解めっき浴)
前記無電解めっき浴としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
【0030】
また、無電解めっき法により形成された金属めっき膜上に、電解めっきにより、同一又は異なる金属を更にめっきすることもできる。また、金属めっき膜は、基材の両面に形成されてもよい。
【0031】
次に、本発明の第2の態様について、説明する。
本発明のパターン化されためっき物は、基材、インク受容層、パターン状のめっき下地層、前記めっき下地層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜の順で積層されためっき物において、パターン状のめっき下地層は、50μm以下の幅であり、かつ、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子を設けた複合粒子と、バインダーとを含み、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmであることを特徴とする。
なお、めっき下地層を構成する複合粒子以外は、上述の説明と同じであるため説明を省略する。
【0032】
(複合粒子)
めっき下地層における複合粒子は、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子を設けた粒子であり、かつ、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmである。なお、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の粒子は、1次粒子(単一粒子)、或いは2次粒子(凝集粒子)の状態であってもよい。
そして、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2μm未満の場合、めっき下地塗料中の溶剤と共に粒子がインク受容層内へ拡散し、その後、金属めっき膜を無電解めっき法により形成するが、金属めっき膜の未析出部分が出来、優れた導電膜を得ることができない。
一方で、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が3μmを超える場合、パターン状のめっき下地層表面において、触媒金属が島状で吸着し、金属めっきの析出も島状となるため、連続しためっき膜が得られず、優れた導電膜を得ることができない。
【0033】
(無機系粒子)
前記無機系粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン、カーボンブラックが挙げられる。また、無機系粒子の平均粒子径は、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmとなるように調整されたものであればよい。
【0034】
(有機系粒子)
前記有機系粒子としては、アクリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子が挙げられる。また、有機系粒子の平均粒子径は、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmとなるように調整されたものであればよい。
【0035】
(高分子粒子)
また、無機系粒子または有機系粒子の外周面に設ける高分子粒子としては、触媒金属を吸着させることができるものであればよく、例えば還元性の高分子粒子が好ましく使用される。前記還元性の高分子粒子としては、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有する高分子粒子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロール粒子が挙げられる。
還元性高分子粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性の高分子粒子を使用することもできる。
【0036】
また、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子を設けた複合粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば還元性の高分子微粒子とバインダーとを分散させた分散液中に、無機系粒子または有機系粒子を添加し、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、還元性の高分子微粒子とバインダーとを付着させ、その後、塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬することにより、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子を設けた複合粒子を得ることができる。
別の方法としては、導電性の高分子微粒子とバインダーとを分散させた分散液中に、無機系粒子または有機系粒子を添加し、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、導電性の高分子微粒子とバインダーとを付着させ、その後、脱ドープ処理を行って、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、還元性の高分子微粒子とバインダーとを付着させたものを得、続いて、塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬することにより、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子を設けた複合粒子を得ることができる。
或いは、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、還元性の高分子微粒子とバインダーとを付着させた粒子と、バインダー、溶媒を含んでなる塗料をインク受容層に塗布し、その後、塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬することにより、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子粒子を設けた複合粒子を得ることができる。
【0037】
次に、本発明の第3の態様について、説明する。
本発明のパターン化されためっき物は、基材、インク受容層、パターン状のめっき下地層、前記めっき下地層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜の順で積層されためっき物において、パターン状のめっき下地層は、50μm以下の幅であり、かつ、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子膜を設けた複合粒子と、バインダーとを含み、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmであることを特徴とする。
なお、めっき下地層を構成する複合粒子以外は、上述の説明と同じであるため説明を省略する。
【0038】
(複合粒子)
めっき下地層における複合粒子は、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子膜を設けた粒子であり、かつ、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2〜3μmである。なお、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の粒子は、1次粒子(単一粒子)、或いは2次粒子(凝集粒子)の状態であってもよい。
そして、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が0.2μm未満の場合、めっき下地塗料中の溶剤と共に粒子がインク受容層内へ拡散し、その後、金属めっき膜を無電解めっき法により形成するが、金属めっき膜の未析出部分が出来、優れた導電膜を得ることができない。
一方で、前記複合粒子における触媒金属を吸着させる前の平均粒子径が3μmを超える場合、パターン状のめっき下地層表面において、触媒金属が島状で吸着し、金属めっきの析出も島状となるため、連続しためっき膜が得られず、優れた導電膜を得ることができない。
【0039】
(高分子膜)
無機系粒子または有機系粒子の外周面に設ける前記高分子膜としては、触媒金属を吸着させることができるものであればよく、例えば、還元性の高分子膜が好ましく使用される。還元性の高分子膜としては、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有する高分子膜であれば特に限定されない。
また、π−共役二重結合を有するモノマーを重合させた高分子膜としては、例えばポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロール等が挙げられ、高分子膜の厚みは0.02〜0.5μmが好ましい。
なお、還元性の高分子膜に触媒金属を吸着させることにより、結果的に導電性の高分子膜となる。
【0040】
無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる高分子膜を設けた複合粒子の製造方法は、特に限定されない。例えば、水中に無機系粒子または有機系粒子を分散させ、続いてπ−共役二重結合を有するモノマーと酸化剤を加えて重合反応させ、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、π−共役二重結合を有するモノマーを重合させた高分子膜を形成させ、続いて脱ドープ処理を行い、その後、塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬することにより、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子膜を設けた複合粒子を得ることができる。
また、酸化剤として触媒金属となり得るものを使用することが可能であり、この場合、脱ドープ処理、及び触媒液の浸漬する工程を省略することができる。
或いは、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、π−共役二重結合を有するモノマーを重合させた高分子膜を形成させた粒子と、バインダー、溶媒を含んでなる塗料をインク受容層に塗布し、その後、塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬することにより、無機系粒子または有機系粒子の外周面に、触媒金属を吸着させてなる導電性の高分子膜を設けた複合粒子を得ることができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0042】
[ポリピロール粒子の製造]
先ず、1Lビーカーに、0.2Mピロールモノマー水溶液950mlと、1.2Mの塩
化第二鉄水溶液50Lとを加え、60分攪拌しながら重合反応させ、平均粒子径が5〜1
0μmのポリピロール粒子を得た。
次に、得られたポリピロール粒子を濾別、乾燥させた後、ビーズミルなどの粉砕機にて
粉砕し、平均粒子径が0.1μm、0.2μm、0.5μm、3μm、3.5μmのポリ
ピロール粒子をそれぞれ得た。
なお、平均粒子径が0.2μmのポリピロール粒子は
、参考例1のめっき下地塗料に用
い、平均粒子径が3μmのポリピロール粒子は
、参考例2のめっき下地塗料に用い、平均
粒子径が0.5μmのポリピロール粒子は
、参考例3のめっき下地塗料に用い、平均粒子
径が0.1μmのポリピロール粒子は、比較例1のめっき下地塗料に用い、平均粒子径が
3.5μmのポリピロール粒子は、比較例2のめっき下地塗料にそれぞれ用いた。
また、ポリピロール粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、5
0個のポリピロール粒子の長尺長さを平均したもので算出した。
【0043】
[めっき下地塗料の製造]
次に、得られたポリピロール粒子と、バインダー(東洋紡社製のバイロン200:ポリエステル系樹脂)とを、固形分比で1:2.3となるように混合し、プレ攪拌後、3本ロールミルで分散させ、めっき下地塗料を得た。
【0044】
(参考例1)
[インク受容層]
次に、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製のコスモシャイ
ンA4100)を用い、その基材上にポリエステル系樹脂(東洋紡績社製のバイロン27
0)を乾燥厚みが5μmとなるよう塗布し、基材上にインク受容層を設けた。
【0045】
[めっき下地層]
続いて、インク受容層上に、上記めっき下地塗料(ポリピロール粒子の平均粒子径が0.2μm)をL/P=50/300μmの格子パターンとなるようにスクリーン印刷し、パターン状の塗膜層を設けた。
続いて、塗膜層が設けられた基材を、1M 水酸化ナトリウム水溶液中に35℃で5分間浸漬し、還元性のポリピロール粒子とバインダーとからなる塗膜層を得た。
続いて、還元性のポリピロール粒子とバインダーとからなる塗膜層が設けられた基材を、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬し、触媒金属であるパラジウムを吸着させてなる導電性のポリピロール粒子とバインダーとからなるめっき下地層を得た。
【0046】
[金属めっき膜]
続いて、該基材を無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬することにより、パターン状のめっき下地層上にのみ銅めっきが設けられためっき物を得た。
【0047】
(参考例2)
めっき下地塗料(ポリピロール粒子の平均粒子径が3μm)を用いた以外は
、参考例1
と同様の方法にてめっき物を得た。
【0048】
(参考例3)
[インク受容層]
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製のコスモシャインA4
100)を用い、その基材上に光硬化型のアクリル−ウレタン樹脂(根上工業社製のアー
トレジンUN9200A)を乾燥厚みが5μmとなるよう塗布し、基材上にインク受容層
を設けた。
【0049】
[めっき下地層]
続いて、インク受容層上に、上記めっき下地塗料(ポリピロール粒子の平均粒子径が0.5μm)をL/P=50/300μmの格子パターンとなるようにスクリーン印刷し、パターン状の塗膜層を設けた。
続いて、塗膜層が設けられた基材を、1M 水酸化ナトリウム水溶液中に35℃で5分間浸漬し、還元性のポリピロール粒子とバインダーとからなる塗膜層を得た。
続いて、高圧水銀ランプを用いて紫外線光を400mJ/cm2照射し、インク受容層の光硬化型のアクリル−ウレタン樹脂を反応硬化させた。
続いて、還元性のポリピロール粒子とバインダーとからなる塗膜層が設けられた基材を、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬し、触媒金属であるパラジウムを吸着させてなる導電性のポリピロール粒子とバインダーとからなるめっき下地層を得た。
【0050】
[金属めっき膜]
続いて、該基材を無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬することにより、パターン状のめっき下地層上にのみ銅めっきが設けられためっき物を得た。
【0051】
(実施例4)
5Lの丸底フラスコに1000gのシリカ粒子(平均粒子径0.6μm)を入れ、0.2Mの塩化第二鉄水溶液2Lを加えて撹拌してシリカ粒子を分散させ、温度が2〜3℃になるまで冷却した。次いで同温度にて30分間撹拌を続けた後、0.2Mピロールモノマー水溶液400mlを加え、更に2〜3℃に保持して1時間激しく撹拌した。この分散液を濾過して蒸溜水で充分洗浄した後、50℃で乾燥し、シリカ粒子の外周面に厚みが0.05μmのポリピロール重合体からなる膜を設けた。結果、シリカ粒子の外周面にポリピロール重合膜を設けた粒子は、平均粒子径が0.7μmであった。
また、シリカ粒子の外周面にポリピロール重合膜を設けた粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、50個の粒子の長尺長さを平均したもので算出した。
【0052】
続いて、得られたシリカ粒子の外周面にポリピロール重合膜を設けた粒子(平均粒子径が0.7μm)と、バインダー(東洋紡社製のバイロン200:ポリエステル系樹脂)とを、固形分比で1:2.3となるように混合し、プレ攪拌後、3本ロールミルで分散させ、めっき下地塗料を得た。
【0053】
[インク受容層]
続いて、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製のコスモシャインA4100)を用い、その基材上にポリエステル系樹脂(東洋紡績社製のバイロン270)を乾燥厚みが5μmとなるよう塗布し、基材上にインク受容層を設けた。
【0054】
[めっき下地層]
続いて、インク受容層上に、得られためっき下地塗料をL/P=50/300μmの格子パターンとなるようにスクリーン印刷し、パターン状の塗膜層を設けた。
続いて、塗膜層が設けられた基材を、1M 水酸化ナトリウム水溶液中に35℃で5分間浸漬し、シリカ粒子の外周面に還元性のポリピロール重合膜を有する粒子と、バインダーとからなる塗膜層を得た。
続いて、シリカ粒子の外周面に還元性のポリピロール重合膜を有する粒子と、バインダーとからなる塗膜層が設けられた基材を、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬し、触媒金属であるパラジウムを吸着させてなる複合粒子と、バインダーとからなるめっき下地層を得た。
なお、還元性のポリピロール重合膜はパラジウムを吸着されているので、結果的に導電性のポリピロール重合膜となる。
【0055】
[金属めっき膜]
続いて、該基材を無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬することにより、パターン状のめっき下地層上にのみ銅めっきが設けられためっき物を得た。
【0056】
(実施例5)
シリカ粒子の代わりにアクリル粒子(平均粒子径が1.4μm)を用いて、アクリル粒子の外周面にポリピロール重合膜を設けた粒子(平均粒子径が1.5μm)を用いた以外は、実施例4と同じ方法にてめっき物を得た。
また、アクリル粒子の外周面にポリピロール重合膜を設けた粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、50個の粒子の長尺長さを平均したもので算出した。
【0057】
(比較例1)
上記めっき下地塗料(ポリピロール粒子の平均粒子径が0.1μm)を用いた以外は
、参考例1と同様の方法にてめっき物を得た。
【0058】
(比較例2)
上記めっき下地塗料(ポリピロール粒子の平均粒子径が3.5μm)を用いた以外は
、参考例1と同様の方法にてめっき物を得た。
【0059】
試験例1
上記で製造し
た参考例1〜3、実施例4〜5、及び比較例1〜2のめっき物において、各種の評価試験を行い、その結果を表1に纏めた。
尚、評価試験項目、及びその評価方法・評価基準は以下の通りである。
【0060】
(析出性)
金属めっき膜の状態を目視で観察して評価した。
○:めっき下地塗料を印刷した面積に対して、金属めっき膜が70%以上析出
×:めっき下地塗料を印刷した面積に対して、金属めっき膜が70%未満の析出
【0061】
(導通性)
めっき物における金属めっき膜上の表面抵抗値を抵抗率試験器(三菱化学株式会社製のLoresta GP)を用いて測定した。
○:表面抵抗値が1×10
4Ω/□以下
×:表面抵抗値が1×10
4Ω/□を超える
【0062】
【表1】