(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995663
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】吊り下げ型伝熱器およびそれを備えたボイラ装置
(51)【国際特許分類】
F22B 37/20 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
F22B37/20 B
F22B37/20 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-245519(P2012-245519)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-95483(P2014-95483A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 文夫
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−025105(JP,U)
【文献】
特開2000−227202(JP,A)
【文献】
特開2006−084112(JP,A)
【文献】
特開昭63−197891(JP,A)
【文献】
米国特許第04825943(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管を並行に整列して、ボイラ火炉内の上方に吊り下げられる吊り下げ型伝熱器において、
隣り合う第1の伝熱管と第2の伝熱管を有し、前記第1の伝熱管の外周面の前記第2の伝熱管と対向する位置に1個の第1のプロテクタの基端部を溶接固定し、前記第1のプロテクタの基端部に連設されて幅方向両側に向かって出張った翼状の係合片部が、前記第2の伝熱管の外周面に当接されており、
前記第1のプロテクタを挟むように2個の第2のプロテクタが配置され、前記2個の第2のプロテクタの基端部を前記第2の伝熱管の外周面にそれぞれ溶接固定し、前記第2のプロテクタの基端部に連設された係合突出部が前記第1のプロテクタの係合片部と係合することにより、前記第1の伝熱管と前記第2の伝熱管は管軸方向にスライド可能な第1の管列と第2の管列をそれぞれ構成し、
前記第1の管列の幅方向外側の伝熱管を2本、途中から前記第1の管列の幅方向に折り曲げて、前記2本の伝熱管のうちの一方の伝熱管を前記第1の管列の前側に沿って延ばし、前記2本の伝熱管のうちの他方の伝熱管を前記第1の管列の後側に沿って延ばすことにより、前記第1の管列を前後で挟んで自縛管とし、
前記第1の管列と第2の管列の間の伝熱管の無い空間部で前記自縛管を交差させて縛り、さらに前記第2の管列の幅方向に延ばして、前記第2の管列を前後で挟み、最終的には前記第2の管列の外側に配管し、
前記第2のプロテクタの前記自縛管と対向する外側部分は、前記第1の伝熱管と前記第2の伝熱管の外周面どうしを結ぶ仮想直線から前記自縛管側に出張っており、
前記自縛管の外周面で前記第2のプロテクタと対向する位置にスぺーサ部材が、前記第2のプロテクタの所定個数おきに溶接固定されて、
前記第2のプロテクタと前記スぺーサ部材は隙間をおいて設置されていることを特徴とする吊り下げ型伝熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り下げ型伝熱器において、
前記第1のプロテクタの係合片部の外側角部と、その外側角部と係合する前記第2のプロテクタの係合突出部の内側角部に、それぞれ丸みが付けられていることを特徴とする吊り下げ型伝熱器。
【請求項3】
請求項1に記載の吊り下げ型伝熱器において、
前記第1のプロテクタの前記係合片部の前記第2の伝熱管の外周面と対向する面に、前記第2の伝熱管の外周面に沿うように凹状に湾曲した湾曲面が形成されていることを特徴とする吊り下げ型伝熱器。
【請求項4】
請求項1に記載の吊り下げ型伝熱器において、
前記スぺーサ部材が前記第2のプロテクタに対して1個おきに設置されていることを特徴とする吊り下げ型伝熱器。
【請求項5】
請求項1に記載の吊り下げ型伝熱器において、
前記第2のプロテクタの係合突出部が前記第1の伝熱管の外周面と接触しておらず、隙間が設けられていることを特徴とする吊り下げ型伝熱器。
【請求項6】
バーナが設けられたボイラ火炉と、そのボイラ火炉内の上部に吊り下げられた吊り下げ型伝熱器を備えたボイラ装置において、
前記吊り下げ型伝熱器が請求項1ないし5のいずれか1項に記載の吊り下げ型伝熱器であることを特徴とするボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ装置に備えられる吊り下げ型伝熱器に係り、特に自縛管を用いて伝熱管列を幅方向に押さえ込む構造の吊り下げ型伝熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り下げ型伝熱器において、伝熱管どうしの軸方向の相対的な移動は拘束せずに、他の方向の移動および回転などを拘束するようにした管列調整間隔片が、例えば実開平5−25105号公報(特許文献1)などによって提案されている。
【0003】
図6はこの実開平5−25105号公報(特許文献1)の記載に基づいて作成した伝熱器の管列の正面図、
図7は
図6のA部の伝熱管どうしを前記管列調整間隔片で連結した状態を示す拡大断面図である。
【0004】
図6に示すように、各伝熱管101、102が互いに隣接されて、全体として縦長のパネル状の管列103を構成している。このパネル状の管列103の上段と下段が、それぞれ管列調整間隔片104によって連結されている。
【0005】
管列調整間隔片104は
図7に示すように、1個の第1の間隔片105と、2個(一対)の第2の間隔片106a,106bとから構成されている。
図7に示すように、第1の間隔片105の平面形状は略T字型をしており、それの基端部107は、伝熱管102の伝熱管101と対向する側の外周面に管軸方向に沿って溶接108されている。この基端部107と一体に製作され幅方向両側に向かって出張った翼状接合片部109は、伝熱管101の伝熱管102と対向する側の外周面に当接されている。
【0006】
前記第2の間隔片106aと106bは同じ形状をしており、第1の間隔片105の両側に、第1の間隔片105を挟むようにして配置されている。第2の間隔片106a,106bの基端部110は、伝熱管101の伝熱管102と対向する側の外周面に管軸方向に沿って溶接111されている。
【0007】
第2の間隔片106a,106bの中間部には、前記第1の間隔片105の翼状接合片部109と係合する係合突出部112が設けられており、さらに第2の間隔片106a,106bの先端部には、伝熱管102の外周面に当接する当接部113が設けられている。
【0008】
この管列調整間隔片104(第1の間隔片105、第2の間隔片106a,106b)は
図6に示すように、伝熱管101と伝熱管102の隙間部114内に収容されており、
図7に示すように、伝熱管101と伝熱管102の外周面どうしを結ぶ仮想直線115から外側に出張らないように、隙間部114の内側にある。
【0009】
管列調整間隔片104が仮想直線115よりも外側に出張っていると、燃焼排ガスの流れに偏流が生じ、燃焼排ガス中に含まれているダストまたは溶融ダストにより、局部的にスラグの堆積があり、伝熱効率を低下したり、あるいは伝熱管の特定部位に摩耗が生じたりするため、管列調整間隔片104は仮想直線115から外側に出張らない構造になっている。
【0010】
しかし、この従来例のように第1の間隔片105を伝熱管102に溶接して固定し、第2の間隔片106を伝熱管101に溶接して固定して、第1の間隔片105と第2の間隔片106を係合して拘束するだけの構造では、伝熱管102と溶接部、あるいは(および)伝熱管101と溶接部の熱伸び差により、前記溶接部に割れが生じ、間隔片105、106が管列から脱落した場合には、他に拘束するものが無いため管列が乱れることになる。この管列の乱れによって、燃焼排ガスの流れに大きな偏流が生じ、スラグの堆積や伝熱管の特定部位の摩耗などが生じる。
【0011】
近年の蒸気温度の高温化に伴い、ボイラ火炉内の燃焼温度および伝熱器内を流れる蒸気の温度も高温化が進んでおり、伝熱器を構成している伝熱管の管列は、従来の比較的低い蒸気温度での管列ピッチに対して、近年では伝熱管の狭ピッチ化が進んでいる。
【0012】
しかし、
図7に示す構造では1個の第1の間隔片105と2個の第2の間隔片106を、仮想直線115から外側に出張らないように伝熱管101と伝熱管102の隙間部104内に収容する構造になっているから、伝熱管の狭ピッチ化に対応しずらいという問題がある。
【0013】
また
図7に示す構造では、間隔片106に当接部113を設け、その当接部113を伝熱管102の外周面に当接する構造になっているから、伝熱管101と伝熱管102が管軸方向に相対的にずれるときに当接部113によって伝熱管102の外周面が損傷するという問題もある。
【0014】
図8ないし
図10は本発明者らが先に検討した吊り下げ型伝熱器の構造を説明するための図で、
図8は伝熱器の正面図、
図9は伝熱器の平面図、
図10は伝熱器の側面図である。
【0015】
図8ならびに
図9に示すように、吊り下げ型伝熱器201は多数本の伝熱管202を並行に整列して2個の管列203a,203bを構成している。一方の管列203aの幅方向外側の伝熱管202を2本、途中から吊り下げ型伝熱器202の幅方向に折り曲げて、一方の伝熱管202を管列203aの前側に沿って延ばし、他方の伝熱管202を管列203aの後側に沿って延ばすことにより、管列203aを前後で挟んで自縛管204としている(
図9参照)。
【0016】
伝熱器201の中央部の伝熱管202の無い空間部205で自縛管204を交差させて縛り、さらに管列203bの幅方向に延ばして、管列203bを前後で挟み、最終的には管列203bの外側に配管している。
図9に示す符号206は、管列203aならびに管列203bの内側に設けられたストッパー部材である。
【0017】
これにより空間部205の左右にある管列203a、203b(貫通管207群)を自縛管204で幅方向に押さえ込むことができ、貫通管207の管軸からの跳び出しを防止することができる。
【0018】
図11は、その伝熱器の一部拡大平面図である。
図11に示すように、各貫通管207の自縛管204と対向する外周面には円弧状をした貫通管側プロテクタ208が溶接209によって取り付けられている。また、自縛管204の各貫通管207と対向する外周面には円弧状をした自縛管側プロテクタ210が溶接211によって取り付けられている。
【0019】
そして貫通管側プロテクタ208と自縛管側プロテクタ210が点接触で当接することで、各貫通管207と自縛管204の間の隙間寸法を一定に維持するとともに、貫通管207の熱伸びによる貫通管207と自縛管204との摩擦による摩耗を防止している。
【0020】
また、貫通管207どうしには、貫通管207のピッチが狭ピッチであることから、一方の貫通管207の外周面に例えば5〜10mm厚さの整列用兼摩耗防止用プロテクタ212が溶接213によって取り付けられている。
【0021】
そして、隣接する他方の貫通管207の外周面には溶接金属を数mm高さで積層した溶接層214を形成し、この溶接層214と整列用兼摩耗防止用プロテクタ212が線接触で当接することで、貫通管207どうしの隙間寸法を一定に維持するとともに、貫通管207の熱伸びによる貫通管207どうしの摩擦による摩耗を防止している。
【0022】
貫通管207と自縛管204との隙間寸法の維持と、貫通管207どうしの隙間寸法の維持は、ボイラ装置の起動、停止毎に生じる貫通管207の熱伸び、縮みの繰り返しに対応して、変形やそれに伴う損傷を予防するために不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】実開平5−25105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、先に検討した
図11に示す管列整列構造では、1本の貫通管207に対して、2個の貫通管側プロテクタ208と1個の整列用兼摩耗防止用プロテクタ212を溶接するとともに、溶接層214も形成する必要がある。また、自縛管204については、各貫通管207の全数に亘って自縛管側プロテクタ210を溶接する必要があるなど、溶接個所ならびに部品点数が多く、取り付けに長時間の作業を要する。
【0025】
また、貫通管207どうしは拘束されておらず、整列用兼摩耗防止用プロテクタ212と溶接層214とで貫通管207どうしの隙間寸法を保っており、経年使用で摩耗により管軸からの逸脱が生じ、局部摩耗や損傷などの原因となる。
【0026】
さらに、プロテクタ208、212は貫通管207とは溶接で接続されており、貫通管207とプロテクタ208、212との熱伸び差により溶接部の割れが進展して、プロテクタ208、212の脱落が生じることもあり、その場合にはさらに管軸からの逸脱、局部摩耗や損傷などの原因となる。
【0027】
さらにまた、貫通管207どうしの一方にプロテクタ212を取り付ける際、プロテクタ212は鋼鈑または鋼管の一部を分割したものを貫通管207の外周面に合わせて加工して製作するが、取り付け後の貫通管207とは面接触であり、燃焼排ガスからの過熱による変形、損傷防止を考慮してある程度の厚さ(例えば5mm以上)が必要である。
【0028】
この場合、貫通管207どうしは狭ピッチのため、対応する貫通管207の外周面には、プロテクタ212は使用できず、前述のように溶接層214の積層となる。しかし、これが摩耗した場合には、補修溶接を行うことになり、補修した溶接層214の品質検査が必要であり、長時間の作業を要する。
【0029】
本発明の目的は、伝熱管の熱伸び差を吸収することができ、また狭ピッチ化に対応可能で、溶接個所ならびに部品点数の大幅な削減ができ、貫通管(伝熱管)と自縛管の摩擦による摩耗防止が図れる吊り下げ型伝熱器およびそれを備えたボイラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
伝熱管を並行に整列して、ボイラ火炉内の上方に吊り下げられる吊り下げ型伝熱器において、
隣り合う第1の伝熱管と第2の伝熱管を有し、前記第1の伝熱管の外周面の前記第2の伝熱管と対向する位置に1個の第1のプロテクタの基端部を溶接固定し、前記第1のプロテクタの基端部に連設されて幅方向両側に向かって出張った翼状の係合片部が、前記第2の伝熱管の外周面に当接されており、
前記第1のプロテクタを挟むように2個の第2のプロテクタが配置され、前記2個の第2のプロテクタの基端部を前記第2の伝熱管の外周面にそれぞれ溶接固定し、前記第2のプロテクタの基端部に連設された係合突出部が前記第1のプロテクタの係合片部と係合することにより、前記第1の伝熱管と前記第2の伝熱管は管軸方向にスライド可能な第1の管列と第2の管列をそれぞれ構成し、
前記第1の管列の幅方向外側の伝熱管を2本、途中から前記第1の管列の幅方向に折り曲げて、前記2本の伝熱管のうちの一方の伝熱管を前記第1の管列の前側に沿って延ばし、前記2本の伝熱管のうちの他方の伝熱管を前記第1の管列の後側に沿って延ばすことにより、前記第1の管列を前後で挟んで自縛管とし、
前記第1の管列と第2の管列の間の伝熱管の無い空間部で前記自縛管を交差させて縛り、さらに前記第2の管列の幅方向に延ばして、前記第2の管列を前後で挟み、最終的には前記第2の管列の外側に配管し、
前記第2のプロテクタの前記自縛管と対向する外側部分は、前記第1の伝熱管と前記第2の伝熱管の外周面どうしを結ぶ仮想直線から前記自縛管側に出張っており、
前記自縛管の外周面で前記第2のプロテクタと対向する位置にスぺーサ部材が、前記第2のプロテクタの所定個数おきに溶接固定されて、
前記第2のプロテクタと前記スぺーサ部材は隙間をおいて設置されていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記第1のプロテクタの係合片部の外側角部と、その外側角部と係合する前記第2のプロテクタの係合突出部の内側角部に、それぞれ丸みが付けられていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第3の手段は前記第1の手段において、
前記第1のプロテクタの前記係合片部の前記第2の伝熱管の外周面と対向する面に、前記第2の伝熱管の外周面に沿うように凹状に湾曲した湾曲面が形成されていることを特徴とするものである。
【0033】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、
前記スぺーサ部材が前記第2のプロテクタに対して1個おきに設置されていることを特徴とするものである。
【0034】
本発明の第5の手段は前記第1の手段において、
前記第2のプロテクタの係合突出部が前記第1の伝熱管の外周面と接触しておらず、隙間が設けられていることを特徴とするものである。
【0035】
本発明の第6の手段は、
バーナが設けられたボイラ火炉と、そのボイラ火炉内の上部に吊り下げられた吊り下げ型伝熱器を備えたボイラ装置において、
前記吊り下げ型伝熱器が前記第1ないし第5のいずれかの手段の吊り下げ型伝熱器であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明は前述のような構成になっており、伝熱管の熱伸び差を吸収することができ、また狭ピッチ化に対応可能で、溶接個所ならびに部品点数の大幅な削減ができ、貫通管(伝熱管)と自縛管の摩擦による摩耗防止が図れる吊り下げ型伝熱器およびそれを備えたボイラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施例に係る吊り下げ型伝熱器を備えたボイラ装置の概略構成図である。
【
図3】その吊り下げ型伝熱器の一部拡大平面図である。
【
図4】自縛管を取り除いて貫通管の管列を示す一部拡大正面図である。
【
図5】貫通管の管列のさらなる一部拡大平面図である。
【
図6】特許文献1の記載に基づいて作成した伝熱器の管列の正面図である。
【
図7】
図6のA部の伝熱管どうしを管列調整間隔片で連結した状態を示す拡大断面図である。
【
図8】本発明者らが先に検討した吊り下げ型伝熱器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は本発明の実施例に係る吊り下げ型伝熱器を備えたボイラ装置の概略構成図、
図2はその吊り下げ型伝熱器の正面図である。
【0039】
図1に示すように、バーナ1が設けられたボイラ火炉2内の上部には、過熱器や再熱器などの吊り下げ型伝熱器3が設置されている。
【0040】
前述のように近年の蒸気温度の高温化に伴い、ボイラ火炉内の燃焼温度および伝熱器3内を流れる蒸気の温度も高温化が進んでおり、伝熱器3を構成している伝熱管4(
図2参照)の管列は、従来の比較的低い蒸気温度での管列ピッチに対して、近年では伝熱管4の狭ピッチ化が進んでいる。
【0041】
伝熱器3の管列に凹凸があると、燃焼排ガスの流れに対して偏流が起こり、燃焼排ガス中に含まれているダストまたは溶融ダストにより局部的なダストの堆積や、伝熱管4の摩耗を引き起こす原因となることから、前記管列を整列させるための対策が必要である。
【0042】
そのために本発明の実施例においても、
図2に示すように、吊り下げ型伝熱器3の高さ方向にわたって複数個所自縛管5により伝熱器3の幅方向を拘束する構造を採用している。
【0043】
この自縛管5による管列の縛り構造は、
図8〜
図10に示した構造と略同じである(ただし、プロテクタの構成などは異なる)。
すなわち、吊り下げ型伝熱器3は多数本の伝熱管4を並行に整列して2個の管列(第1の管列、第2の管列)を構成している。第1の管列の幅方向外側の伝熱管4を2本、途中から吊り下げ型伝熱器3の幅方向に折り曲げて、一方の伝熱管4を第1の管列の前側に沿って延ばし、他方の伝熱管4を第1の管列の後側に沿って延ばすことにより、第1の管列を前後で挟んで自縛管5としている。
【0044】
伝熱器3の中央部の伝熱管4の無い空間部で自縛管5を交差させて縛り、さらに第2の管列の幅方向に延ばして、第2の管列を前後で挟み、最終的には第2の管列の外側に配管している。
【0045】
これにより空間部の左右にある第1の管列と第2の管列を自縛管5で幅方向に押さえ込むことができ、貫通管6の管軸からの跳び出しを防止することができる。
【0046】
図3〜
図5は本発明の実施例に係る各プロテクタならびにスぺーサ部材を説明するための図であり、
図3は吊り下げ型伝熱器3の一部拡大平面図、
図4は自縛管5を取り除いて貫通管6の管列を示す一部拡大正面図、
図5は貫通管6の管列のさらなる一部拡大平面図である。
【0047】
一方の貫通管6aとそれの隣の貫通管6bとの隙間7(
図4参照)は、1個の第1のプロテクタ8と、2個(一対)の第2のプロテクタ9a,9bとによって一定に維持されている。
【0048】
第1のプロテクタ8の平面形状は略T字型をしており、それの基端部10は、
貫通管6aの隣の貫通管6bと対向する側の外周面に管軸方向に沿って溶接11されている。この第1のプロテクタ8は
図3ならびに
図5に示すように、
貫通管6の管列方向の管軸中心部線18上に接続、固定されている。
【0049】
前記基端部10と一体に連設され幅方向両側に向かって出張った翼状の係合片部12は、貫通管6bの外周面に当接されている。この係合片部12の中央部には、貫通管6bの外周面に沿うように略同じ曲率で凹状に湾曲した湾曲面13が形成されている。
【0050】
湾曲面13形成部分の厚さは、例えば5〜10mm程度とするが、貫通管6のピッチにより適宜選択される。貫通管6と第1のプロテクタ8は、第1のプロテクタ8の過熱損傷を防止するためには、完全突き合わせ溶接とすることが望ましく、その場合、第1のプロテクタ8と貫通管6の外周面にV字型開先を形成しておく。
【0051】
前記第2のプロテクタ9a,9bは同じ形状(平面形状が略L字型)をしており、第1のプロテクタ8の両側に、第1のプロテクタ8を挟むようにして配置されている。第2のプロテクタ9a,9bの基端部14は、貫通管6bの外周面に管軸方向に沿って溶接15されている。
【0052】
この第2のプロテクタ9a,9bの基端部14と貫通管6bの外周面における溶接15部の開先角度は、90度以上に設定されている(共に
図3,
図5参照)。このように開先角度を90度以上にすることにより、溶接部の強度を十分に確保することができ、第2のプロテクタ9a,9bの脱落の危険性を回避することができる。
【0053】
第2のプロテクタ9a,9bの長さL(
図4参照)は、貫通管6の熱伸び差以上とし、例えば40〜60mmとする。
【0054】
第2のプロテクタ9a,9bの先端部には、前記第1のプロテクタ8の翼状係合片部12と係合する係合突出部16が設けられており、係合突出部16は隣の貫通管6aとは当接しておらず、両者の間には隙間17(
図5参照)が形成されている。
【0055】
図5に示されているように、第1のプロテクタ8の係合片部12と第2のプロテクタ9a,9bの係合突出部16とが係合した状態で、管軸方向にスムーズにスライドできるように、係合片部12の外側角部ならびに係合突出部16の内側角部には、それぞれR加工(丸み加工)19a,19bが施こされている。
【0056】
第1のプロテクタ8と第2のプロテクタ9a,9bの組み合わせにより、貫通管6の全体を一体化するように、それの前後方向ならびに左右方向を拘束している。また第1のプロテクタ8と第2のプロテクタ9a,9bの組み合わせにより、貫通管6どうしの隙間寸法を一定にすると共に、貫通管6の熱伸びによる貫通管6どうしの摩擦による摩耗防止を、第1のプロテクタ8(係合片部12)の外周面と第2のプロテクタ9a,9b(係合突出部16)の内周面との面接触で行っている。
【0057】
第2のプロテクタ9a,9bの自縛管5と対向する外側部分は、
図5に示すように、貫通管6aと貫通管6bの外周面どうしを結ぶ仮想直線20から若干外側(自縛管5側)に出張っている。第2のプロテクタ9a,9bが仮想直線20から外側に出張るように配置されるから、貫通管6どうしの狭ピッチ化が可能となる。
【0058】
そして
図3に示されているように、自縛管5の外周面にスぺーサ部材21が溶接22により取り付けられているが、本実施例では第2のプロテクタ9a,9bに対して1個おきに取り付けられて、第2のプロテクタ9a,9bと対向している。スぺーサ部材21は第2のプロテクタ9a,9bに対して2個おき、あるいは3個おきに取り付けても構わない。
【0059】
第2のプロテクタ9a,9bとスぺーサ部材21は隙間23をおいて設置されているから、両者の摩擦による摩耗が防止でき、第2のプロテクタ9a,9bとスぺーサ部材21が直接接触しても貫通管6と自縛管5が接触することはなく、そのため貫通管6ならびに自縛管5の摩擦による摩耗防止が確実にできる。
【0060】
貫通管6と自縛管5の隙間寸法の維持と、貫通管6どうしの隙間寸法の維持は、ボイラ装置の起動、停止ごとに生じる貫通管6の熱伸び、縮みの繰り返しに対応して、変形やそれに伴う損傷を予防するために不可欠である。
【符号の説明】
【0061】
1:バーナ、
2:ボイラ火炉、
3:吊り下げ型伝熱器、
4:伝熱管、
5:自縛管、
6:貫通管、
7:隙間、
8:第1のプロテクタ、
9a,9b:第2のプロテクタ、
10:基端部、
11:溶接、
12:係合片部、
13:湾曲面、
14:基端部、
15:溶接、
16:係合突出部、
17:隙間、
18:管軸中心部線、
19a,19b:R加工(丸み加工)、
20:仮想直線、
21:スぺーサ部材、
22:溶接、
23:隙間。