(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンバータトランスの一次側巻線に接続された第1スイッチング素子、および該第1スイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路を含む一次側入力回路と、
前記コンバータトランスの二次側巻線に接続された主整流平滑回路を含み、前記主整流平滑回路から主直流出力電圧を生成して出力する主二次側出力回路と、
前記コンバータトランスの二次側巻線に接続された従整流平滑回路を含み、前記従整流平滑回路から前記主直流出力電圧よりも低い従直流出力電圧を生成して出力する従二次側出力回路と、
前記従二次側出力回路の電源出力ラインに挿入された第2スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子の制御端子と前記主二次側出力回路の電源出力ラインとの間に挿入された逆流防止ダイオードとを含み、かつ、前記主二次側出力回路の出力および出力停止の動作に連動して、前記第2スイッチング素子を導通および非導通として、前記従二次側出力回路を出力状態および出力停止状態に切り換える連動切換回路と、
発光素子と受光素子を含み、前記受光素子が動作したときに前記スイッチング制御回路による前記第1スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるフォトカプラと、前記主二次側出力回路と前記従二次側出力回路との差電圧が規定値以上になったときに導通する定電圧ダイオードと、この定電圧ダイオードの導通に伴って動作して前記フォトカプラの発光素子に動作指令信号を出力する第3スイッチング素子とを含み、前記フォトカプラおよび前記スイッチング制御回路を介して前記第1スイッチング素子のスイッチング動作を動作停止状態に制御する減電圧・過電圧検出回路と、
を備えたことを特徴とする多出力型スイッチング電源装置。
前記連動切換回路の前記第2スイッチング素子は、前記従二次側出力回路の前記整流平滑回路の出力側の電源出力ラインに、ソース・ドレインが接続された電界効果トランジスタからなり、前記電界効果トランジスタは、そのゲートに、前記逆流防止ダイオードと該逆流防止ダイオードに直列に接続された第1抵抗とを介して、前記主二次側出力回路の出力および出力停止の状態を示す信号が印加されることにより、それぞれ、導通状態および非導通状態になって、前記従二次側出力回路を出力状態および出力停止状態に切り換える請求項1に記載の多出力型スイッチング電源装置。
前記減電圧・過電圧検出回路は、前記トランジスタのエミッタ・ベース間に接続された前記第2抵抗にコンデンサが並列接続されている、請求項3に記載の多出力型スイッチング電源装置。
前記一次側入力回路を、2つ設け、前記コンバータトランスを前記各一次側入力回路に個別に対応して2つ設けると共に、それらの一次側巻線を前記各一次側入力回路に接続する一方、前記各コンバータトランスそれぞれの二次側巻線を前記主二次側出力回路と従二次側出力回路に個別に接続した、請求項1に記載の多出力型スイッチング電源装置。
前記一次側入力回路を、1つ備え、前記一次側入力回路を前記コンバータトランスの一次側巻線に接続すると共に、該コンバータトランスに2つの二次側巻線を設け、これら二次側巻線それぞれに前記主二次側出力回路と従二次側出力回路を個別に接続した、請求項1に記載の多出力型スイッチング電源装置。
【背景技術】
【0002】
多出力型スイッチング電源装置においては、前記2つの二次側出力回路のうちの一方を主二次側出力回路とし、また、他方を従二次側出力回路とし、主二次側出力回路の出力および出力停止の切り換えに連動して従二次側出力回路を出力状態および出力停止状態に切り換える連動切換回路を備えたものがある。
【0003】
図4を参照して従来の多出力型スイッチング電源装置Dを説明する。この多出力型スイッチング電源装置Dは、コンバータトランスT1,T2と、直流入力電圧が印加される入力端子E1,E2間に並列接続された一次側入力回路11,12と、出力端子OUT1,OUT2間に高直流出力電圧(例えば24V)を出力する主二次側出力回路21と、出力端子OUT3,OUT4間に低直流出力電圧(例えば5V)を出力する従二次側出力回路22とを備える。
【0004】
一次側入力回路11,12は、それぞれ、コンバータトランスT1,T2の一次側巻線に直列に接続されたスイッチング素子Q1,Q2と、これらスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路13,14とを備える。
【0005】
主二次側出力回路21は、コンバータトランスT1の二次側巻線に接続された、コンデンサC1およびダイオードD1からなる主整流平滑回路23を備える。
【0006】
従二次側出力回路22は、コンバータトランスT2の二次側巻線に接続されたコンデンサC2およびダイオードD2からなる従整流平滑回路24を備える。
【0007】
主二次側出力回路21と従二次側出力回路22との間には、連動切換回路25が設けられる。従二次側出力回路22の電源出力ラインには、発熱保護部品26が挿入接続される。連動切換回路25は、MOSFET(電界効果トランジスタ)からなるスイッチング素子Q3と、抵抗R1と、コンデンサC3、抵抗R
2と、ダイオードD3とを含む。
【0008】
一次側入力回路11のスイッチング素子Q1がスイッチング制御回路13の制御によりスイッチング動作すると、コンバータトランスT1の一次側巻線から二次側巻線に交流電圧が誘起され、さらに、主二次側出力回路21の主整流平滑回路23で高直流出力電圧が生成されて、図示略の負荷回路に出力される。
【0009】
また、一次側入力回路12のスイッチング素子Q2がスイッチング制御回路14の制御によりスイッチング動作すると、コンバータトランスT2の一次側巻線から二次側巻線に交流電圧が誘起され、さらに、従二次側出力回路22の従整流平滑回路24で低直流出力電圧が生成され、図示略の別の負荷回路に出力される。
【0010】
以上の構成において、連動切換回路25は、主二次側出力回路21が出力状態に制御されているときは、それに連動して、主二次側回路21の電源出力ラインの高直流出力電圧によりスイッチング素子Q3が導通して、従二次側出力回路22を出力状態(従整流平滑回路24の出力を出力端子OUT3,OUT4間に出力する状態)に切換制御し、主二次側出力回路21が出力停止状態に制御されているときは、それに連動して、スイッチング素子Q3が非導通になって、従二次側出力回路22を出力停止状態(従整流平滑回路24の出力を出力端子OUT3,OUT4間に出力できなくする状態)に切換制御する機能を有し、前記のように、主二次側出力回路21の出力および出力停止の切り換えに連動して従二次側出力回路22を出力状態および出力停止状態とさせて、消費電力を低減させる。
【0011】
従二次側出力回路22の電源出力ラインに接続された発熱保護部品26は、連動切換回路25のスイッチング素子Q3の不測の発熱に対する安全を担保するために挿入されている。しかし、前記スイッチング素子Q3は、そのドレイン‐ゲート間が不測の短絡を起こすことがある。このような短絡が発生すると、スイッチング素子Q3のソース電位が低下し(減電圧)、結果としてドレイン‐ソース間に電圧降下が発生して、その部分に電流が流れ、電圧降下分×電流の電力相当の発熱がスイッチング素子Q3で起こる。
【0012】
発熱保護部品26は、温度ヒューズやサーマルスイッチなどで構成され、スイッチング素子Q3が前記発熱で温度上昇し、その上昇温度が規定温度に達すると動作して、従二次側出力回路22の電源出力ラインを遮断する。これにより、スイッチング素子Q3の過剰発熱を抑制し、安全性を確保する。
【0013】
なお、多出力型スイッチング電源装置の例として特許文献1,2を挙げる。これら特許文献には、主従応答用のスイッチング素子の構成、連動切換回路の構成、および従二次側出力回路の電源出力ラインに発熱保護部品を挿入した構成は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記多出力型スイッチング電源装置Dにあっては、スイッチング素子Q3の過剰発熱を抑制するために従二次側出力回路22に温度ヒューズやサーマルスイッチなどの発熱保護部品26を挿入している。しかしながら、発熱保護部品26は、スイッチング電源装置D内で比較的大きなスペースを占有し、製造コストの増加を招き、そのうえ、回路構造の複雑化を招くなどの課題がある。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、従二次側出力回路内に設けたスイッチング素子の過剰発熱防止のための発熱保護部品を不要化して省スペース化、製造コスト低減化、回路構造の簡素化を達成し、また、発熱保護部品を不要としても、前記スイッチング素子の故障に際しては、当該装置の運転を停止して前記スイッチング素子の過剰発熱を事前に防止可能としたスイッチング電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による多出力型スイッチング電源装置は、コンバータトランスの一次側巻線に接続された第1スイッチング素子、および該第1スイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路を含む一次側入力回路と、前記コンバータトランスの二次側巻線に接続された主整流平滑回路を含み、前記主整流平滑回路から主直流出力電圧を生成して出力する主二次側出力回路と、前記コンバータトランスの二次側巻線に接続された従整流平滑回路を含み、前記従整流平滑回路から前記主直流出力電圧よりも低い従直流出力電圧を生成して出力する従二次側出力回路と、前記従二次側出力回路の電源出力ラインに
挿入された第2スイッチング素子
と、前記第2スイッチング素子の制御端子と前記主二次側出力回路の電源出力ラインとの間に挿入された逆流防止ダイオードとを含み、かつ、前記主二次側出力回路の出力および出力停止の動作に連動して、前記第2スイッチング素子を導通および非導通として、前記従二次側出力回路を出力状態および出力停止状態に切り換える連動切換回路と、
発光素子と受光素子を含み、前記受光素子が動作したときに前記スイッチング制御回路による前記第1スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるフォトカプラと、前記主二次側出力回路と前記従二次側出力回路との差電
圧が規定値以上になったときに
導通する定電圧ダイオードと、この定電圧ダイオードの導通に伴って動作して前記フォトカプラの発光素子に動作指令信号を出力する第3スイッチング素子とを含み、前記フォトカプラおよび前記スイッチング制御回路
を介して前記第1スイッチング素子のスイッチング動作を動作停止状態に制御する減電圧・過電圧検出回路と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
なお、前記コンバータトランスは、その個数に限定されない。
【0019】
なお、前記一次側入力回路は、その個数に限定されない。
【0020】
好ましくは、前記連動切換回路の前記第2スイッチング素子は、前記従二次側出力回路の前記整流平滑回路の出力側の電源出力ラインに、ソース・ドレインが接続された電界効果トランジスタからなり、前記電界効果トランジスタは、そのゲートに、前
記逆流防止ダイオードと該逆流防止ダイオードに直列に接続された第1抵抗とを介して、前記主二次側出力回路の出力および出力停止の状態を示す信号が印加されることにより、それぞれ、導通状態および非導通状態になって、前記従二次側出力回路を出力状態および出力停止状態に切り換える。
【0021】
より好ましくは、前記減電圧・過電圧検出回路
において、前記定電圧ダイオードが前記従二次側出力回路の電源出力ライン
から分岐して接続されるとともに、第2抵抗に直列に導通接続され、前記第3スイッチング素子はエミッタ・ベース間に前記第2抵抗が接続されかつ前記エミッタが前記逆流防止ダイオードと前記第1抵抗との接続部に接続されたPNP型のトランジスタ
であり、前記トランジスタのコレクタに
前記発光素子が接続されると共に前記受光素子が前記一次側入力回路のスイッチング制御回路に接続され
ている。
【0022】
より好ましくは、前記減電圧・過電圧検出回路は、前記トランジスタのエミッタ・ベース間に接続された前記第2抵抗にコンデンサが並列接続されている。
【0023】
好ましくは、前記一次側入力回路を、2つ設け、前記コンバータトランスを前記各一次側入力回路に個別に対応して2つ設けると共に、それらの一次側巻線を前記各一次側入力回路に接続する一方、前記各コンバータトランスそれぞれの二次側巻線を前記主二次側出力回路と従二次側出力回路に個別に接続する。
【0024】
好ましくは、前記一次側入力回路を、1つとし、その一次側入力回路を前記コンバータトランスの一次側巻線に接続すると共に、該コンバータトランスに2つの二次側巻線を設け、これら二次側巻線それぞれに前記主二次側出力回路と従二次側出力回路を個別に接続する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、
連動切換回路の構成要素であって従二次側出力回路の電源出力ラインに挿入された第2スイッチング素子にそのスイッチング素子の発熱の原因となり得る短絡現象が発生したとしても、これに応答して生じる従二次側出力回路の電源出力ラインの減電圧によって主二次側出力回路と従二次側出力回路との差電圧が規定値以上となって、それまで非導通状態にあった減電圧・過電圧検出回路における定電圧ダイオードを導通させ、さらに第3スイッチング素子を動作させて動作指令信号を出力し、フォトカプラおよびスイッチング制御回路を介してスイッチング動作を停止状態とする。これによって、第2スイッチング素子の過剰発熱を防止することができる。したがって、第2スイッチング素子の過剰発熱防止のための発熱保護部品が不要で、省スペース化、製造コスト低減化、回路構造の簡素化を達成できる。
さらに、主二次側出力回路の電源出力ラインに異常が発生して主二次側出力回路の電源出力ラインに過電圧が発生した場合において、この過電圧のために主二次側出力回路と従二次側出力回路との差電圧が規定値以上となって、それまで非導通状態にあった減電圧・過電圧検出回路における定電圧ダイオードを導通させ、さらに第3スイッチング素子を動作させて動作指令信号を出力し、フォトカプラおよびスイッチング制御回路を介してスイッチング動作を停止状態とする。これによって、過電圧発生に伴うトラブルを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る多出力型スイッチング電源装置を説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る多出力型スイッチング電源装置の回路図である。多出力型スイッチング電源装置Aは、コンバータトランスT1,T2と、入力端子E1,E2に並列接続された一次側入力回路11,12と、二次側出力回路21,22と、を備える。一次側入力回路11,12は、それぞれ、図示しないが、その前段部に、商用交流電源を入力しダイオードブリッジと平滑コンデンサでの全波整流および平滑化により生成した直流電圧が直流電源端子E1,E2間に印加されるようになっている。一次側入力回路11は、入力端子E1に一端側が接続されたコンバータトランスT1の一次側巻線と、入力端子E2との間にソース・ドレインが接続されたスイッチング素子Q1と、このスイッチング素子Q1をそのゲートにスイッチング電圧を印加してスイッチング動作させるスイッチング制御回路13と、を有する。一次側入力回路12は、入力端子E1に一端側が接続されたコンバータトランスT2の一次側巻線、この一次側巻線の他端側と入力端子E2との間にソース・ドレインが接続されたスイッチング素子Q2と、このスイッチング素子Q
2をそのゲートにスイッチング電圧を印加してスイッチング動作させるスイッチング制御回路14と、を有する。
【0029】
主二次側出力回路21は、コンバータトランスT1の二次側巻線と、整流ダイオードD1と、平滑コンデンサC1とを備える。整流ダイオードD1と、平滑コンデンサC1とにより主整流平滑回路23を構成する。従二次側出力回路22は、コンバータトランスT2の二次側巻線と、整流ダイオードD2と、平滑コンデンサC2と、を備える。整流ダイオードD2と、平滑コンデンサC2とにより従整流平滑回路24を構成する。
【0030】
一次側入力回路11のスイッチング素子Q1がスイッチング動作すると、コンバータトランスT1の一次側巻線から二次側巻線に交流電圧が誘起され、さらに、主二次側出力回路21の主整流平滑回路23で高直流出力電圧が生成されて、図示略の負荷回路に出力される。一次側入力回路12のスイッチング素子Q2がスイッチング動作すると、コンバータトランスT2の一次側巻線から二次側巻線に交流電圧が誘起され、さらに、従二次側出力回路22の従整流平滑回路24で低直流出力電圧が生成され、図示略の別の負荷回路に出力される。
【0031】
以上の構成において、第1実施形態は、連動切換回路25と、減電圧・過電圧検出回路27と、を備える。連動切換回路25は、スイッチング素子Q3と、抵抗R1と、コンデンサC3と、抵抗R2と、
逆流防止ダイオードD3とにより、構成される。また、減電圧・過電圧検出回路27は、スイッチング素子Q4と、抵抗R3,R4と、定電圧ダイオードZD1と、フォトカプラPCとにより、構成される。
【0032】
連動切換回路25を説明すると、スイッチング素子Q3は、主二次側出力回路21の出力および出力停止の切り換えに応じて従二次側出力回路22を出力および出力停止とするためのものであり、従二次側出力回路22の電源出力ラインに挿入されている。スイッチング素子Q3は、NMOS型の電界効果トランジスタ(FET)であり、そのドレインが従整流平滑回路24に接続され、そのソースが出力端子OUT3に接続されている。スイッチング素子Q3のゲートとソースとの間には抵抗R1とコンデンサC3の並列回路が接続されている。さらに、スイッチング素子Q3のゲートに抵抗R2と逆流防止ダイオードD3の直列回路が接続されている。逆流防止ダイオードD3は、そのアノードが主二次側出力回路21の電源出力ラインに接続され、カソードが抵抗R2に接続されている。
【0033】
主二次側出力回路21が出力状態に制御されていて、主二次側出力回路21の電源出力ラインが“H”レベルとなっているときは、連動切換回路25における逆流防止ダイオードD3が導通状態であり、抵抗R2を介してスイッチング素子Q3(NMOS型)のゲートに“H”レベル電圧の信号が印加されるため、スイッチング素子Q3が導通し、従二次側出力回路22は出力状態に制御される。
【0034】
一方、主二次側出力回路21が出力停止状態に制御されていて、主二次側出力回路21の電源出力ラインが“L”レベルとなったときには、逆流防止ダイオードD3が非導通となり、スイッチング素子Q3(NMOS型)のゲートに“L”レベル電圧の信号が印加されることにより、スイッチング素子Q3が非導通となり、従二次側出力回路22は出力停止状態に制御されることになる。
【0035】
すなわち、従二次側出力回路22から電力を供給される負荷回路は、主二次側出力回路21から電力を供給される負荷回路が動作状態にあるときに限って動作状態とされ、かつ主二次側出力回路21側の負荷回路が不動作状態となったときには、それに応答して不動作状態に切り換えられる。よって、無駄な電力消費が回避される。
【0036】
次に、減電圧・過電圧検出回路27について説明する。なお、
図4の先行技術における発熱保護部品2
6は、本発明の実施例では設けられていない。
【0037】
減電圧・過電圧検出回路27において、スイッチング素子Q4はPNP型のバイポーラトランジスタで構成され、そのエミッタが連動切換回路25における逆流防止ダイオードD3のカソードに接続され、そのエミッタ‐ベース間に抵抗R3が接続され、さらにそのベースに抵抗R4を介して定電圧ダイオードZD1のカソードが接続され、定電圧ダイオードZD1のアノードが従二次側出力回路22の電源出力ライン(スイッチング素子Q3のソース)に接続されている。また、スイッチング素子Q4のコレクタは、フォトカプラPCの発光素子であるフォトダイオードのアノードに接続されている。フォトダイオードのカソードは、平滑コンデンサC2の負極端子に接続されている。そして、フォトカプラPCの受光素子であるフォトトランジスタのエミッタが一次側入力回路11,12それぞれのスイッチング制御回路13,14の各制御入力端子に接続されている。フォトトランジスタのコレクタはスイッチング制御回路13,14における電源部に接続されている。スイッチング制御回路13,14は、フォトトランジスタが導通すると、動作停止するようになっている。
【0038】
なお、減電圧・過電圧検出回路27から一次側のスイッチング制御回路13,14に帰還をかけるのにフォトカプラPC(電気的絶縁状態での光結合)を用いているのは、コンバータトランスT1,T2を介して一次側と二次側を電気的絶縁状態で電磁的に結合していることと符合している。
【0040】
(1)連動切換回路25の動作
いま、多出力型スイッチング電源装置Aが通常動作状態にあるとする。
【0041】
すなわち、一次側入力回路11,12の各スイッチング制御回路13,14が動作してスイッチング素子Q1,Q2をON/OFFにスイッチング制御している。これにより、コンバータトランスT1,T2の一次側巻線から二次側巻線に交流電圧が誘起され、その交流電圧がそれぞれ主と従の整流平滑回路23,24により整流平滑化される。
【0042】
主二次側出力回路21にあっては、高直流出力電圧が負荷回路に供給される。従二次側出力回路22にあっては、主二次側出力回路21の電源出力ラインのレベルが“H”レベルとなったことに伴い、連動切換回路25を介して、そのスイッチング素子Q3が前述の動作原理に従って導通する。このスイッチング素子Q3の導通開始に伴うノイズは抵抗R1とコンデンサC3とで減衰され、レベルの安定したより低直流出力電圧が別の負荷回路に供給される。
【0043】
すなわち、主二次側出力回路21が出力状態にあれば、その電源出力ラインの“H”レベル状態を連動切換回路25で検出し、スイッチング素子Q3を導通させることにより、従二次側出力回路22も出力状態にできる。主二次側出力回路21側の負荷回路が活性状態にあれば、従二次側出力回路22側の負荷回路も活性状態にできる。
【0044】
次に、任意の操作によりあるいは何らかの条件の発現に応答して、主二次側出力回路21側の負荷回路が非活性状態に切り換えられたとする。すると、主二次側出力回路21の電源出力ラインが“H”レベルから“L”レベルへ変化する。その結果、連動切換回路25において、逆流防止ダイオードD3が非導通となり、スイッチング素子Q3のゲートに印加される電圧の信号が“H”レベルから“L”レベルへ反転し、このスイッチング素子Q3が非導通状態に切り換わる。その結果として、従二次側出力回路22の出力が停止し、従二次側出力回路22側の負荷回路も非活性状態に切り換えられる。
【0045】
以上のように、連動切換回路25は、主二次側出力回路21の出力および出力停止の切り換えに連動して従二次側出力回路22を出力状態および出力停止状態にさせる。主二次側出力回路21側の負荷回路が不動作状態あるいは待機状態にあるときは、これに連動して従二次側出力回路22も不動作状態あるいは待機状態に自動制御されるため、無駄な電力消費を抑制することが可能となっている。
【0046】
(2)減電圧・過電圧検出回路27の動作
何らかの原因で従二次側出力回路22におけるスイッチング素子Q3のドレイン‐ゲート間に短絡現象が発生したとする。ここで、発熱対策をなんらしていないものと仮定して、スイッチング素子Q3のゲート、ドレイン、ソースの電位変化の例をみてみる。正常動作時において、ゲート電位が24V、ドレイン電位が5V、ソース電位も5Vであったとする。この状態からドレイン‐ゲート間に短絡が発生し、ゲート電位が5Vに降下したとする。ソースとゲートとの間に抵抗R1とコンデンサC3の並列回路が介在することから、ソース電位が5Vから2.5Vへ降下したとすれば、ドレイン‐ソース間の電位差は5V−2.5V=2.5Vとなる。ドレイン電流が3Aとすると、2.5V×3A=7.5W相当の電力消費が発生し、これがスイッチング素子Q3における発熱の原因となる。
【0047】
本実施例の多出力型スイッチング電源装置Aにあっては、このような事態となる前に減電圧・過電圧検出回路27の機能が発動される。
【0048】
まず、正常動作時での減電圧・過電圧検出回路27の動作をみておく。主二次側出力回路21の電源出力ラインの電圧と従二次側出力回路22の電源出力ラインの電圧との差分の差電圧ΔV(すなわち、逆流防止ダイオードD3のアノードと定電圧ダイオードZD1のアノードとの間の電位差)が規定範囲内にあるとする。
【0049】
このとき、定電圧ダイオードZD1は降伏導通しておらず、ベースに対して主二次側出力回路21から逆流防止ダイオードD3および抵抗R3によって“H”レベルを印加されるPNP型のスイッチング素子Q4は非導通状態にある。その結果、フォトカプラPCは不動作状態であり、出力遮断信号は各スイッチング制御回路13,14に送出されることはなく、各スイッチング制御回路13,14は通常通りスイッチング素子Q1,Q2をスイッチング制御している。結果、主二次側出力回路21も従二次側出力回路22も出力状態を維持することになる。
【0050】
(2−1)減電圧発生時
次に、減電圧・過電圧検出回路27の活性動作を説明する。スイッチング素子Q3におけるドレイン‐ゲート間の短絡現象が生じれば、上の例でみたようにソースの電位が降下する。すなわち、従二次側出力回路22の電源出力ラインに減電圧が生じる。すると、定電圧ダイオードZD1のアノード電位が降下し、主二次側出力回路21と従二次側出力回路22の差電圧ΔVが増加し、この差電圧ΔVが規定値以上となったときに定電圧ダイオードZD1が降伏し、逆流防止ダイオードD3、抵抗R3、抵抗R4、定電圧ダイオードZD1の経路で電流が流れる。すると、PNP型のスイッチング素子Q4のベース電位が“L”レベルに反転して、スイッチング素子Q4が導通状態に切り換わる。その結果、主二次側出力回路21の電源出力ラインから逆流防止ダイオードD3、PNP型のスイッチング素子Q4を通ってフォトカプラPCの発光素子に電流が流れ、発光素子の光を受けた受光素子が両スイッチング制御回路13,14に出力遮断信号を送出する。
【0051】
出力遮断信号を受け取った一次側入力回路11,12における各スイッチング制御回路13,14は、スイッチング素子Q1,Q2に対するスイッチング制御を停止し、コンバータトランスT1,T2での交流電力誘起がなくなるため、主二次側出力回路21および従二次側出力回路22はともに出力停止状態へ遷移する。これにより、スイッチング素子Q3の過剰発熱を未然に防止することができる。
【0052】
(2−2) 過電圧発生時
主二次側出力回路21側の負荷回路においてなんらかの要因により異常が発生し、それに起因して主二次側出力回路21の電源出力ラインに過電圧が発生したとする。このとき、従二次側出力回路22側の負荷回路では異常がなくその電源出力ラインの電圧は正常時と変わらないとすると、前述の主二次側出力回路21と従二次側出力回路22の差電圧ΔVが上昇することになる。差電圧ΔVが規定値以上になると、上記同様にPNP型のスイッチング素子Q4が導通し、出力遮断信号がフォトカプラPCを介して両スイッチング制御回路13,14に送出される。その結果として、主二次側出力回路21および従二次側出力回路22はともに出力停止状態へ遷移し、過電圧に伴うトラブルを未然に防止することができる。
【0053】
本実施例の減電圧・過電圧検出回路27は、先行技術の場合の温度ヒューズやサーマルスイッチなどの発熱保護部品2
6に比べると、製造コストを大幅に低減することが可能である。減電圧・過電圧検出回路27の回路構成が比較的簡単で、部品点数も少なく、実装のスペース面でも充分有利な展開を期待することができる。
【0054】
(3)減電圧・過電圧の具体例
主二次側出力回路21による出力電圧を24V、従二次側出力回路22による出力電圧を5Vとする。また、PNP型のスイッチング素子Q4のオン電圧を1.2V、逆流防止ダイオードD3の順方向電圧を0.6Vとし、定電圧ダイオードZD1の降伏電圧を20Vとする。
【0055】
定電圧ダイオードZD1のカソード電位は、
24−0.6−1.2=22.2(V)
正常時の定電圧ダイオードZD1のアノード電位は5Vであり、定電圧ダイオードZD1に対する逆バイアス電圧は、
22.2−5=17.2(V)
である。これは、定電圧ダイオードZD1の降伏電圧20Vを下回っているので、定電圧ダイオードZD1は降伏せず、したがって、PNP型のスイッチング素子Q4も導通しない。この場合に、定電圧ダイオードZD1の耐圧には、
20−17.2=2.8(V)
の余裕がある。
【0056】
次に、従二次側出力回路22による出力電圧が5Vから上記の余裕分の2.8V以上降下して2.2V未満(例えば1.5V)になったとする。
【0057】
主二次側出力回路21による出力電圧は正常時と同じ24Vのままとする。このとき、定電圧ダイオードZD1に対する逆バイアス電圧は、
22.2−1.5=20.7(V)
である。これは、定電圧ダイオードZD1の降伏電圧20Vに達しており、定電圧ダイオードZD1は降伏する。したがって、PNP型のスイッチング素子Q4は導通し、フォトカプラPCからの出力遮断信号で一次側入力回路11,12のスイッチング制御回路13,14はスイッチング動作を停止することにより、主二次側出力回路21も従二次側出力回路22もともに出力停止状態となる。
【0058】
次に、従二次側出力回路22による出力電圧が24Vから上記の余裕分の2.8V以上上昇して26.8V超(例えば27.5V)になったとする。
【0059】
従二次側出力回路22による出力電圧は正常時と同じ5Vのままとする。このとき、定電圧ダイオードZD1のカソード電位は、
27.5−0.6−1.2=25.7(V)
定電圧ダイオードZD1に対する逆バイアス電圧は、
25.7−5=20.7(V)
である。この場合も定電圧ダイオードZD1の降伏電圧20Vに達しており、定電圧ダイオードZD1は降伏する。したがって、PNP型のスイッチング素子Q4は導通し、フォトカプラPCからの出力遮断信号で一次側入力回路11,12のスイッチング制御回路13,14はスイッチング動作を停止され、主二次側出力回路21も従二次側出力回路22もともに出力停止状態となる。
【0060】
なお、減電圧・過電圧検出回路27は、フォトカプラPC、定電圧ダイオードZD1、スイッチング素子Q4、抵抗R3,R4で構成し、減電圧の検出と過電圧の検出とを兼用すると共に、主二次側出力回路21による出力電圧と従二次側出力回路22による出力電圧との差電圧ΔVを検出しており、部品点数が少なく、簡単な回路構成となっている。
【0061】
(第2実施形態)
図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る多出力型スイッチング電源装置Bを説明する。多出力型スイッチング電源装置Bでは、多出力型スイッチング電源装置Aとは異なり、一次側入力回路11,12と、主二次側出力回路21および従二次側出力回路22との電磁的結合に用いるコンバータトランスはコンバータトランスT1の1つのみである。主二次側出力回路21の高直流出力電圧と従二次側出力回路22の低直流出力電圧との差異は、平滑コンデンサC1と平滑コンデンサC2の容量差によって作られる。この点は第1実施形態でも同様である。
【0062】
第2実施形態においては、減電圧・過電圧検出回路27におけるフォトカプラPCの受光素子の接続先は、単一の一次側入力回路11におけるスイッチング制御回路13のみとなっている。
【0063】
従二次側出力回路22での減電圧の発生あるいは主二次側出力回路21での過電圧の発生によってスイッチング素子Q4が導通し、その結果としてフォトカプラPCから出力遮断信号が送出され、一次側入力回路11のスイッチング制御回路12がスイッチング素子Q1に対するスイッチング制御を停止すれば、コンバータトランスT1での交流電力誘起がなくなり、主二次側出力回路21も従二次側出力回路22もともに出力停止状態へ遷移する。
【0064】
その他の構成ならびに作用効果については、第1実施形態と同様である。
【0065】
(第3実施形態)
図3を参照して本発明の第3実施形態の多出力型スイッチング電源装置Cを説明する。多出力型スイッチング電源装置Cは、クロスレギュレーション対策も加味した多出力型スイッチング電源装置になっている。
【0066】
ここで、クロスレギュレーションというのは、複数の負荷回路において、ある負荷回路での負荷電流が変動したときに別の負荷回路での印加電圧が変動し、動作が不安定になる現象のことである。特に、従二次側出力回路22側の負荷回路が高負荷でありかつ主二次側出力回路21側の負荷回路が低負荷の場合に問題となりやすい。
【0067】
多出力型スイッチング電源装置Cにおいては、クロスレギュレーション対策のために、
図3に示すように、減電圧・過電圧検出回路27におけるPNP型のスイッチング素子Q4のエミッタ‐ベース間の抵抗R3に対して動作遅延のためのコンデンサC4を並列に接続している。
【0068】
いま、主二次側出力回路21と従二次側出力回路22とがともに出力状態にあってそれぞれの負荷回路を駆動しているとして、主二次側出力回路21側の負荷回路が低負荷、従二次側出力回路22側の負荷回路が高負荷に変動したとする。
【0069】
このとき、並列のコンデンサC4がないと、減電圧・過電圧検出回路27において、逆流防止ダイオードD3、抵抗R3、抵抗R4、定電圧ダイオードZD1の経路に急激に大きな電流が流れることがある。
【0070】
すると、抵抗R3での電圧降下のためにPNP型のスイッチング素子Q4のベース電位が“L”レベルに反転し、スイッチング素子Q4が不測に導通状態に切り換わり、フォトカプラPCを介して一次側入力回路11,12のスイッチング制御回路13,14に出力遮断信号が出力されてしまう可能性が生じる。
【0071】
しかし、負荷変動は瞬間的なものであって、直後に正常状態に復帰する可能性も高い。そのような瞬間的な負荷変動であるにもかかわらず、主二次側出力回路21および従二次側出力回路22を出力停止状態に強制遷移させることは好ましいことではない。
【0072】
そこで、多出力型スイッチング電源装置Cでは、スイッチング素子Q4のエミッタ‐ベース間の抵抗R3に対して並列にコンデンサC4を設け、このコンデンサC4への充電によって生じる遅延動作により、抵抗R3での電圧降下を遅らせ、負荷変動に伴うスイッチング素子Q4の急峻なターンオン動作を抑制する。
【0073】
したがって、瞬間的な負荷変動時に、不用意に主二次側出力回路21および従二次側出力回路22を出力停止状態に強制遷移させるといった不都合は生じない。そのような負荷変動が一定時間継続したときは、スイッチング素子Q4を反転導通させて主二次側出力回路21および従二次側出力回路22を出力停止し、安全性を確保する。