(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995705
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】溶鋼温度調節用冷材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C21C 7/04 20060101AFI20160908BHJP
C21C 7/10 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
C21C7/04 B
C21C7/10 Q
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-281474(P2012-281474)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125647(P2014-125647A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】越川 達也
(72)【発明者】
【氏名】深井 徹
(72)【発明者】
【氏名】成島 晋一郎
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−033913(JP,A)
【文献】
特開2005−313296(JP,A)
【文献】
実開昭58−004646(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00
C21C 5/28− 5/50
C21C 7/00− 7/10
B23D 15/00−19/08
B23D 23/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延後の薄鋼板をサイドトリマにより切断する工程で発生した、長手方向に反っている複数の薄板トリム屑が三次元的に互いに絡み合って塊となった薄板トリム屑集合体に振動を与えることにより、絡み合った薄板トリム屑をばらし、ばらされた複数の前記薄板トリム屑を略一方向に整列させ、整列された前記複数の薄板トリム屑を切断装置に搬送し、搬送された薄板トリム屑を所定の長さに切断することにより、板厚が1.2〜6.3mmであり、長さが30〜60mmであるとともに幅が10〜20mmである薄板トリム材からなる溶鋼温度調節用冷材を製造するに際し、
前記薄板トリム屑集合体を収容して前記薄板トリム屑に振動を与えてばらすための篩と、該篩の下方に配置されて該篩を通過して落下した前記薄板トリム屑に振動を与えて該薄板トリム屑を搬送する搬送路とを有する篩付き振動コンベアであるばらし装置によって、前記絡み合った薄板トリム屑をばらすこと
を特徴とする溶鋼温度調節用冷材の製造方法。
【請求項2】
圧延後の薄鋼板をサイドトリマにより切断する工程で発生した、長手方向に反っている複数の薄板トリム屑が三次元的に互いに絡み合って塊となった薄板トリム屑集合体をばらすためのばらし装置と、該ばらし装置の下方に配置されて該ばらし装置によってばらされた前記複数の薄板トリム屑を略一方向に整列させる整列装置と、該整列装置によって整列された前記薄板トリム屑を所定の長さに切断する切断装置とを備えること、および、前記ばらし装置は、前記薄板トリム屑集合体を収容して前記薄板トリム屑に振動を与えてばらすための篩と、該篩の下方に配置されて該篩を通過して落下した前記薄板トリム屑に振動を与えて該薄板トリム屑を搬送する搬送路とを有する篩付き振動コンベアであることを特徴とする、板厚が1.2〜6.3mmであり、長さが30〜60mmであるとともに幅が10〜20mmである薄板トリム材からなる溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項3】
前記篩の格子の角度および間隔は、前記搬送路への前記薄板トリム屑の落下状態が前記搬送路の搬送方向と直交する方向について略一様になるように、設定される請求項2に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項4】
前記整列装置は、前記ばらし装置の下方に配置され、搬送方向へ延設される一列または複数列の溝型断面の搬送レーンを有するとともに前記薄板トリム屑に振動を与えることによって該薄板トリム屑を略一方向に整列させながら搬送する、搬送レーン付き振動コンベアである請求項2または請求項3に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項5】
前記溝型断面の搬送レーンの適宜位置に配置されて、搬送される前記薄板トリム屑に接触することにより該薄板トリム屑を前記略一方向を指向させて前記搬送レーンに供給する整列用部材を有することを特徴とする請求項4に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項6】
前記切断装置は、搬送される前記薄板トリム屑を所定の位置で停止する停止機構と、所定の位置で停止した前記薄板トリム屑を所定の時間間隔で切断する切断刃とを有する請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項7】
前記整列装置と前記切断装置との間に配置され、前記時間間隔に適合させて前記薄板トリム屑を複数層重ね合わせて供給するためのスライド式コンベアを備えることを特徴とする請求項6に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項8】
前記整列装置による前記薄板トリム屑の搬送方向は、前記ばらし装置による前記薄板トリム屑の搬送方向とは相違する請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【請求項9】
前記搬送路の先端の排出口は、前記薄板トリム屑が前記整列装置の幅方向に均等に供給されるように、前記薄板トリム屑の搬送方向に対して所定の角度で傾斜して、設けられる請求項2から請求項8までのいずれか1項に記載された溶鋼温度調節用冷材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RH真空脱ガス処理時等に溶鋼の温度調節のために添加される冷材
の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高清浄度鋼を溶製するために、一般に二次精錬が採用される。この二次精錬では、転炉から出鋼した溶鋼を保持した取鍋をRH真空脱ガス槽にセットし、減圧下で溶鋼に成分調整用の合金鉄を添加して、溶鋼を取鍋とRH真空脱ガス槽との間で環流させた後に、温度調節用の冷材を添加して溶鋼の温度を所定の温度に調節してから、連続鋳造鋳型への鋳込みが行われることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、RH真空脱ガス装置で処理中の溶鋼に温度調節用の冷材を添加して溶鋼温度を調節する際に、冷材を溶鋼に添加した後、さらに、特定の二つの必要延長時間のうちでどちらか長いほうの必要延長時間以上にわたって溶鋼を環流する方法が開示されている。
【0004】
このRH真空脱ガス装置を用いた二次精錬等において、溶鋼の温度調節のために用いられる冷材(スクラップ)は、転炉や電気炉等の原料として用いるスクラップと比べて、その添加口が狭いために個々のサイズを小さく揃えておく必要があると共に、精錬の最終段階で溶鋼に添加するために、溶けやすく、かつ、不純物の混入が少ないことが必要である。
【0005】
したがって、これまでは、厚鋼板の熱間圧延後のシャーによる切断工程で発生する長冊状のトリム屑(長さ約1200mm,幅約70mm,板厚約20mm,重量約10〜15kg/本)を切断して得られる短冊状の厚板切断材(板厚約20mm,長さ約50mm,幅約70mm)が使用されてきた。
【0006】
具体的に説明すると、作業者が、まず、厚鋼板の熱間圧延後のシャーによる切断工程で発生して集められた長冊状の上記のトリム屑をその寸法に応じて選別し、次に、選別したトリム屑を切断装置に投入して上記の目標の長さ(約50mm)に切断することによって、上記短冊状の厚板切断材を、RH真空脱ガス装置を用いた二次精錬等における温度調節用の冷材として製造してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−111164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、厚板切断材を、RH真空脱ガス装置を用いた二次精錬等において溶鋼温度調節用冷材として用いることには、以下に列記の課題a〜cがある。
【0009】
(a)作業者が、熱間圧延後のシャーによる切断工程で発生した長冊状のトリム屑(長さ約1200mm,幅約70mm,板厚約20mm,重量約10〜15kg/本)をその寸法に応じて選別し、さらに、選別したトリム屑を所定の長さ(板厚約20mm,長さ約50mm,幅70mm)に切断する必要があり、冷材の製造に多数の工数を要する。
【0010】
(b)長冊状のトリム屑の重量は約10〜15kg/本と重く、作業者によるハンドリングは危険を伴う難作業である。
【0011】
(c)上述のように短冊状の厚板切断材の素材となるトリム屑の板厚は約20mmと大きいとともに、重量も約10〜15kg/本と大きいため、この厚板切断材からなる冷材を、RH真空脱ガス装置で処理中の溶鋼に温度調節用として添加しても、冷材が完全に溶けずに残ってしまい、溶鋼の温度を所望の温度に調整することが容易でないとともに温度調節に長時間を要する。
【0012】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、その製造に要する工数が少なく、RH真空脱ガス装置等で処理中の溶鋼に温度調節用として添加しても冷材の溶け残りに起因した、溶鋼の温度調整不良や処理時間の長時間化を生じることがないRH真空脱ガス処理時等の温度調節用冷材
の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記の知見A〜Gを得た。
【0014】
(A)製鉄所で入手が容易かつ確実なトリム屑としては、前述の厚板切断材の他にも、薄鋼板の圧延後のサイドトリマによる切断工程で発生する薄板トリム屑(100〜200mmの長さと、10〜20mmの幅と、1.2〜6.3mmの板厚と、10〜200g/本の重量)もある。しかし、厚板切断材を上記冷材として用いてきた理由は、薄板トリム屑は切断により長手方向に反っているために集められた薄板トリム屑は互いに絡み合って塊となっており、作業者は薄板トリム屑を切断装置に投入する前に、絡み合って塊となっている薄板トリム屑を一本一本引き離す作業を行わなければならないという煩雑さがあったためである。このため、これまでにRH真空脱ガス処理時等の温度調節用冷材として薄板トリム材を用いることは全く検討されなかった。
【0015】
図1は、本発明に係る製造方法を概念的に示す説明図である。以降の説明は、
図1を参照しながら行う。
【0016】
(B)本発明者らは、これまでの常識にとらわれることなく、冷材として、これまで使用することが全く検討されてこなかった、薄鋼板の圧延後のサイドトリマによる切断工程で発生する薄板トリム屑1(100〜200mmの長さと、10〜20mmの幅と、1.2〜6.3mmの板厚と、10〜200g/本の重量)を用いれば、上記課題bを解決できることに想到した。
【0017】
(C)絡み合った薄板トリム屑1を搬送しながら1本1本引き離す作業を行うほぐし装置2と、ほぐされた薄板トリム屑1を搬送しながら略一方向に整列させる整列搬送装置3と、整列させた薄板トリム屑1を搬送しながら重ね合わせながら整列させて切断装置5へ搬送する整列供給装置4と、重ね合わされて供給された薄板トリム屑1を所定の寸法に切断する切断装置5とを用いれば、作業者によるほぐし作業、及び切断装置への供給作業を廃することができ、上述の、薄板トリム屑を用いる際の課題を解決できる。なお、重ね供給装置4は必ず必要であるものではなく、生産性等を勘案して必要に応じて適宜用いればよい。
【0018】
(D)絡み合った薄板トリム屑1をほぐして離す作業を行うためのほぐし装置2としては、絡み合った薄板トリム屑の集合体に振動を与えて分離することができる篩付きの振動コンベア2を用いればよい。
【0019】
(E)ほぐされた薄板トリム屑1を略一方向に整列させる整列装置3としては、搬送方向へ延設される一列または複数列の搬送路を有し、薄板トリム屑1に振動を与えながら薄板トリム屑1を略一方向に搬送する、搬送路付きの振動コンベア3を用いればよい。搬送路の数は、多いほど重ね量を増やすことができるが、切断装置5の切断に適した重ね量となる数とすればよい。また、搬送路の排出口の先端は、整列供給装置4の上部に十分に重ね、整列供給装置4の全幅にわたって均等に薄板トリム屑1を分配するよう、排出口の先端を所定の角度θで傾斜させて構成することが望ましい。
(F)整列供給装置4は搬送レーンの適宜位置に、搬送される薄板トリム屑1に接触することにより薄板トリム屑を上記略一方向に回転させて搬送レーンに供給する整列用部材を、少なくとも薄板トリム屑1の長さより長い間隔で装着することが望ましい。
【0020】
(G)切断装置5は特定の型式のものには限定されないが、既存の切断装置、例えば、所定の時間間隔で昇降するシャーを備え、薄板トリム屑1を所定の時間間隔で切断する切断装置5を用いることが例示される。
【0021】
(H)上記シャーを備える切断装置5を用いる場合には、この切断装置5の切断の時間間隔に合わせて薄板トリム屑を複数層に重ね合わせてまとめて供給するためのスライド式コンベア6を、切断装置5と、整列供給装置4との間に配置することが好ましい。
【0022】
本発明は、これらの知見A〜Hに基づくものである
。
【0023】
本発明は、
圧延後の薄鋼板
をサイドトリマによ
り切断
する工程で発生した
、長手方向に反っている複数の薄板トリム屑が
三次元的に互いに絡み合っ
て塊となった薄板トリム屑集合体に振動を与えることにより、絡み合った薄板トリム屑をばらし、ばらされた複数の薄板トリム屑を略一方向に整列させ、整列された複数の薄板トリム屑を切断装置に搬送し、搬送された薄板トリム屑を所定の長さに切断することにより、
板厚が1.2〜6.3mmであり、長さが30〜60mmであるとともに幅が10〜20mmである薄板トリム材からなる溶鋼温度調節用冷材を製造するに際し、
薄板トリム屑集合体を収容して薄板トリム屑に振動を与えてばらすための篩と、篩の下方に配置されて篩を通過して落下した薄板トリム屑に振動を与えて薄板トリム屑を搬送する搬送路とを有する篩付き振動コンベアであるばらし装置によって、絡み合った薄板トリム屑をばらすことを特徴とする溶鋼温度調節用冷材の製造方法である。
【0024】
別の観点からは、本発明は、薄鋼板
をサイドトリマによ
り切断
する工程で発生した
、長手方向に反っている複数の薄板トリム屑が
三次元的に互いに絡み合っ
て塊となった薄板トリム屑集合体をばらすためのばらし装置と、
このばらし装置の下方に配置されてこのばらし装置によってばらされた複数の薄板トリム屑を略一方向に整列させる整列装置と、整列装置によって整列された薄板トリム屑を所定の長さに切断する切断装置とを備えること
、および、ばらし装置は、薄板トリム屑集合体を収容して薄板トリム屑に振動を与えてばらすための篩と、この篩の下方に配置されてこの篩を通過して落下した薄板トリム屑に振動を与えて薄板トリム屑を搬送する搬送路とを有する篩付き振動コンベアであることを特徴とする
、板厚が1.2〜6.3mmであり、長さが30〜60mmであるとともに幅が10〜20mmである薄板トリム材からなる溶鋼温度調節用冷材の製造装置である。
【0025】
これらの本発明では、
篩の格子の角度および間隔は、篩付き搬送コンベアにおける搬送路への薄板トリム屑の落下状態がこの搬送路の搬送方向と直交する方向について略一様になるように、設定されることが望ましい。
【0026】
これらの本発明では、整列搬送装置が、ばらし装置の下方に配置され、搬送方向へ延設される一列または複数列の溝型断面の搬送路を有するとともに薄板トリム屑に振動を与えることによって薄板トリム屑を略一方向に搬送する、搬送路付き振動コンベアであることが例示される。搬送路の数は、多いほど重ね量を増やすことができるが、切断装置の切断に適した重ね量となる数とすればよい。また、搬送路の先端は、整列供給装置の上部に十分に交差させ、整列供給装置の全幅にわたって均等に薄板トリム屑を分配するように、所定の角度θで傾斜して構成することが望ましい。
【0027】
整列供給装置は、搬送レーンの適宜位置に、搬送される薄板トリム屑に接触することにより薄板トリム屑を上記略一方向に回転させて搬送レーンに供給する整列用部材を、少なくとも薄板トリム屑の長さより長い間隔で装着することが望ましい。
【0028】
さらに、これらの本発明では、切断装置が、搬送される薄板トリム屑を所定の位置で停止する停止機構と、所定の位置で停止した薄板トリム屑を所定の時間間隔で切断する切断刃とを有することが例示される。この場合に、整列装置と切断装置との間に配置され、切断装置の切断の時間間隔に適合させて薄板トリム屑を複数層重ね合わせて供給するためのスライド式コンベアを備えることが望ましい。
【0029】
これらの本発明では、本発明に係るRH真空脱ガス処理時等の溶鋼温度調節用冷材の板厚が1.2〜6.3mmであり、長さが30〜60mmであるとともに幅が10〜20mmであることが例示される。
【0030】
また、これらの本発明におけるトリム屑は、100〜200mmの長さと、10〜20mmの幅と、1.2〜6.3mmの板厚と、10〜200g/本の重量とを有することが例示される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、作業者によるハンドリングの際の危険を伴うことなくその製造に要する工数が少なく、RH真空脱ガス装置等で処理中の溶鋼に温度調節用として添加しても冷材の溶け残りに起因した、溶鋼の温度調整不良や処理時間の長時間化を生じることがない溶鋼温度調節用冷材
の製造方法及び製造装置とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明に係る製造方法を概念的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る製造装置の主要部の構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る製造装置の全体構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2は、本発明に係る製造装置10の主要部の構成を示す説明図であり、
図3は、製造装置10の全体構成を示す正面図である。本発明を実施するための形態を、
図2,3を参照しながら説明する。
【0034】
本発明に係る製造装置10は、ばらし装置20と、整列装置30と、スライド式コンベア40と、切断装置50とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。なお、
図2,3における黒太矢印は、薄板トリム屑11の搬送方向を示す。
【0035】
[ばらし装置20]
薄鋼板の圧延後のサイドトリマ(図示しない)による切断工程で発生した複数の薄板トリム屑11は、切断により下方に落下し、排出箱に収容される。薄板トリム屑11は、100〜200mmの長さと、10〜20mmの幅と、1.2〜6.3mmの板厚と、10〜200g/本の重量とを有しており、板厚が薄く、かつ幅に対して長さが長いことから、サイドトリマによる切断により、長手方向に反っている。
【0036】
このため、集められた薄板トリム屑11は互いに絡み合って塊となっており、多数の薄板トリム屑11が三次元的に絡み合った薄板トリム屑集合体12として、製造装置10のヤードまで搬送されて、一旦保管される。
【0037】
ヤードに保管された薄板トリム屑集合体12は、磁力を利用したリフマグ13により、例えば1.1トン/バッチの量で釣り上げられ、ばらし装置20に搬送される。
【0038】
ばらし装置20は、篩21と搬送路22とを有する篩付き振動コンベア23である。
篩21は、薄板トリム屑11が三次元に絡み合ってなる薄板トリム屑集合体12を収容するとともに、この薄板トリム屑集合体12に振動を与えて分離するためのものである。篩21は、搬送路22を構成する振動コンベアトラフに適宜手段により固定される。
【0039】
篩21の格子21aの角度および間隔は、搬送路22への薄板トリム屑11の落下状態がこの搬送路21の搬送方向と直交する方向(
図2中の左中段の拡大図中における左右方向)について略一様になるように考慮されて、設定されることが望ましい。
【0040】
搬送路22は、篩21の下方に配置される。搬送路22は、篩21を通過して落下した薄板トリム屑11に振動を与えて薄板トリム屑11を、後述する整列装置30へ搬送するものである。
【0041】
搬送路22は、その先端側が下向きになるように配置され、搬送路22上にある薄板トリム屑11に振動を与えることにより、少しずつ薄板トリム屑11を整列装置30へ向けて搬送する。
【0042】
なお、整列装置30に薄板トリム屑11を重ねて供給するために、搬送路22は、複数列を有し、その列数は、後述する切断装置50の切断に最適の重ね量となる列数であることが望ましく、その先端に位置する2つの排出口22b,22bは薄板トリム屑11が整列装置30の幅方向に均等に供給されるように、薄板トリム屑11の搬送方向に対して所定の角度θで傾斜して構成されることが望ましい。
【0043】
篩21および搬送路22を振動させる機構等は、この種の振動コンベアとして慣用されるものと同じでよく、当業者にとっては周知であるので、この機構等の説明は省略する。
【0044】
このように、ばらし装置20は、薄鋼板の圧延後のサイドトリマによる切断工程で発生した複数の薄板トリム屑11が絡み合った薄板トリム屑集合体20をほぐしながらばらして、薄板トリム屑11を分散させて整列装置30へ搬送するための装置である。
【0045】
[整列装置30]
整列装置30は、ばらし装置20の下方に配置される。整列装置30は、薄板トリム屑11の搬送方向へ延設される一列または複数列の溝型断面の搬送レーン31を有する。レーンの列数は、後述するシャーを有する切断装置50の受入れ列数と同じであることが望ましい。各搬送レーン31は、整列装置30の本体32の内部底部(整列装置30トラフ部分)に例えばL型鋼材33を適宜手段(例えば溶接)により固定することにより、設けられる。
【0046】
各L型鋼材33の頂部には整列用部材34が配置される。整列用部材34は、略突起状に固定配置された部材であって、
図2右中段の拡大図に示すように、整列装置30による薄板トリム屑11の整列方向とは交差する方向を指向して搬送される薄板トリム屑11が衝突することにより薄板トリム屑11に接触し、これにより薄板トリム屑11を旋回させて所望の方向を指向させて搬送レーン31に供給する。整列用部材34はレーンの長手方向に少なくとも薄板トリム屑11の長さより長い間隔で配設されることが望ましい。
【0047】
整列装置30の本体32は、その先端側が下向きになるように配置され、本体32に形成された搬送レーン32上にある薄板トリム屑11に振動を与えることによって、薄板トリム屑11を略一方向を指向させて整列させながら少しずつ薄板トリム屑11を、後述するスライド式コンベア40へ向けて搬送する、搬送レーン32付きの振動コンベアである。
【0048】
このように、整列装置30は、ばらし装置20によってばらされた複数の薄板トリム屑11を搬送しながら略一方向に整列させるための装置である。
【0049】
[スライド式コンベア40]
スライド式コンベア40は、必ずしも用いる必要はないが、後述するシャーを有する切断装置50を用いる場合には、用いることが望ましい。
【0050】
スライド式コンベア40は、整列装置30と後述する切断装置40との間に配置される。スライド式コンベア40は、薄板トリム屑11の搬送方向(
図3における左右方向)に所定のサイクルで往復移動することにより、搭載する薄板トリム屑11を、複数層重ね合わせて、切断装置50の切断の時間間隔に適合する所定の時間間隔で、切断装置50に供給するためのコンベアである。
【0051】
スライド式コンベア40は、この種のスライド式コンベアとして慣用されるものでよく、当業者にとっては周知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0052】
[切断装置50]
切断装置50は、停止機構51とシャー52とを有する。
【0053】
停止機構51は、スライド式コンベア40によって、複数層重ね合わされて切断装置50の切断の時間間隔に適合する所定の時間間隔で搬送される複数枚の薄板トリム屑11を、所定の位置で停止するものである。また、シャー52は、昇降自在に配置され、所定の位置で上述のように停止した薄板トリム屑11を所定の時間間隔で切断する。
【0054】
このように、切断装置50は、整列装置30によって整列された後にスライド式コンベア40によって切断装置50の切断の時間間隔に適合させて複数層重ね合わされて供給される薄板トリム屑11を、所定の長さに切断する。
【0055】
本発明に係る製造装置10は以上のように構成される。次に、この製造装置10により本発明に係るRH真空脱ガス処理時等の溶鋼温度調節用冷材が製造される状況を説明する。
【0056】
はじめに、ばらし装置20は、搬送された薄板トリム屑集合体12に振動を与えることにより、絡み合った薄板トリム屑11をばらし、ばらされた薄板トリム屑11を整列装置30に搬送する。
【0057】
次に、整列装置30は、ばらされた複数の薄板トリム屑11を略一方向に整列させて、スライド式コンベア40に搬送する。
【0058】
次に、スライド式コンベア40は、所定の時間間隔で、整列された複数の薄板トリム屑11を切断装置に搬送する。
【0059】
最後に、切断装置50は、搬送された薄板トリム屑11を所定の長さに切断することにより、
RH真空脱ガス処理時等の溶鋼温度調節用冷材を製造する。
【0060】
RH真空脱ガス処理時等の溶鋼温度調節用冷材は、薄鋼板の圧延後のサイドトリマによる切断工程で発生したトリム屑を所定の長さに切断して得られる薄板トリム材からなる。
【0061】
この溶鋼温度調節用冷材の板厚は1.2〜6.3mmであり、長さは30〜60mmであるとともに幅は10〜20mmである。
【0062】
さらに、この溶鋼温度調節用冷材の素材であるトリム屑は、100〜200mmの長さと、10〜20mmの幅と、1.2〜6.3mmの板厚と、10〜200g/本の重量とを有する。
【0063】
RH真空脱ガス処理時等の温度調節用冷材は、製造装置1を操作する一人のオペレータにより大量に製造されるために、その製造に要する工数が顕著に少なくて済む。
【0064】
また、
RH真空脱ガス処理時等の溶鋼温度調節用冷材は、薄鋼板の圧延後のサイドトリマによる切断工程で発生したトリム屑を所定の長さに切断して得られる薄板トリム材からなるため、その板厚は1.2〜6.3mmであり、長さは30〜60mmであるとともに幅は10〜20mmであるため、RH真空脱ガス装置等で処理中の溶鋼に温度調節用として添加しても冷材の溶け残りに起因した、溶鋼の温度調整の不良を生じることがない。
【0065】
冷材は、RH真空脱ガス装置で処理中の溶鋼の温度調整用に最も適しているが、その用途に限られず、そのサイズが小さく揃えられていること及び不純物の混入が少ないことという特性を必要とする他の溶鋼の二次精錬処理、例えば、LF,VOD,タンク脱ガス、パウダーインジェクション、およびArバブリング処理等にも有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 製造装置
11 複数の薄板トリム屑
12 薄板トリム屑集合体
20 ばらし装置
30 整列装置
40 スライド式コンベア
50 切断装置