(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の一側面に該基板を貫通する深さの吐出溝を複数配列したアクチュエータプレートと、複数の前記吐出溝に連通する液体供給室を有して前記アクチュエータプレートの一側面に設置されるカバープレートと、前記吐出溝の長手方向中央に連通するノズル孔を複数配列して前記アクチュエータプレートの他側面に設置されるノズルプレートと、を備えたヘッドチップにおいて、
前記カバープレートが、複数の前記ノズル孔の少なくとも一つと前記吐出溝を介して対向する位置に、あるいは前記ノズルプレートにおける複数の前記ノズル孔の何れかに隣接する隣接孔と前記アクチュエータプレートに形成された貫通部を介して対向する位置に、前記ノズルプレートの位置合わせ基準を有し、
前記位置合わせ基準が、前記ノズル孔及び前記吐出溝を通じて、あるいは前記隣接孔及び前記貫通部を通じて、前記ノズルプレート側から検出可能とされることを特徴とするヘッドチップ。
前記位置合わせ基準が、前記ノズルプレートにおける、複数の前記ノズル孔を含むノズル列の両端側に配置された前記ノズル孔あるいは前記隣接孔と対向する位置に設けられることを特徴とする請求項1又は2の記載のヘッドチップ。
前記位置合わせ基準が、複数の前記ノズル孔あるいは前記隣接孔に跨って対向するように設けられることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のヘッドチップ。
基板の一側面に該基板を貫通する深さの吐出溝を複数配列したアクチュエータプレートと、複数の前記吐出溝に連通する液体供給室を有して前記アクチュエータプレートの一側面に設置されるカバープレートと、前記吐出溝の長手方向中央に連通するノズル孔を複数配列して前記アクチュエータプレートの他側面に設置されるノズルプレートと、を備えたヘッドチップの製造方法において、
複数の前記ノズル孔の少なくとも一つと前記吐出溝とを通じて、あるいは前記ノズルプレートにおける複数の前記ノズル孔の何れかに隣接する隣接孔と前記アクチュエータプレートに形成された貫通部とを通じて、前記カバープレートに設けられた位置合わせ基準を検出し、前記ノズルプレートの位置合わせを行う位置合わせ工程を有することを特徴とするヘッドチップの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の構成では、ノズル孔から離れた位置でアクチュエータプレートとノズルプレートとの位置合わせを行うことから、位置決め基準とノズル孔との間の寸法公差が加わり、ノズル孔の位置合わせ精度に影響するという問題がある。また、ノズルプレートが薄肉の樹脂板等である場合、ノズルプレートの熱変形によるズレも加わり、さらに前記位置合わせ精度に影響するという問題がある。
【0006】
特に、吐出溝の長手方向中間部にノズル孔を連通させるサイドシュートタイプのヘッドチップでは、ノズル孔を吐出溝の長手方向中央に配置することが好ましい。つまり、吐出溝を駆動する駆動壁や、駆動壁によって生じる圧力波が伝わる吐出溝の形状を、吐出溝の長手方向中央に関して対称に形成し、その中央(換言すれば、アクチュエータプレートのポンプ駆動部の中央)にノズル孔を設置することで、液滴が効率よく安定して吐出される。
しかし、ノズル孔と比べて大幅に長い吐出溝に対して、その長手方向中央にノズル孔を正確に位置合わせしようとしても、上記従来の構成では間接的な位置合わせになり、かつノズルプレートを重ねると吐出溝の長手方向中央が不明になり、実際にノズル孔が所望の位置に配置されたかは不明である。
したがって、アクチュエータプレートとノズルプレートとを位置合わせする際に、ノズル孔を吐出溝の長手方向中央に正確かつ確実に位置合わせできる構造が望まれる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、アクチュエータプレート、カバープレート及びノズルプレートを備えるヘッドチップ及びその製造方法において、ノズル孔を正確かつ確実に位置合わせ可能とし、かつ前記ヘッドチップを用いた液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決手段として、本発明は、基板の一側面に該基板を貫通する深さの吐出溝を複数配列したアクチュエータプレートと、複数の前記吐出溝に連通する液体供給室を有して前記アクチュエータプレートの一側面に設置されるカバープレートと、前記吐出溝の長手方向中央に連通するノズル孔を複数配列して前記アクチュエータプレートの他側面に設置されるノズルプレートと、を備えたヘッドチップにおいて、前記カバープレートが、複数の前記ノズル孔の少なくとも一つと前記吐出溝を介して対向する位置に、あるいは前記ノズルプレートにおける複数の前記ノズル孔の何れかに隣接する隣接孔と前記アクチュエータプレートに形成された貫通部を介して対向する位置に、前記ノズルプレートの位置合わせ基準を有し、前記位置合わせ基準が、前記ノズル孔及び前記吐出溝を通じて、あるいは前記隣接孔及び前記貫通部を通じて、前記ノズルプレート側から検出可能とされることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記位置合わせ基準が、前記カバープレートに複数設けられる構成であってもよい。
このとき、前記位置合わせ基準が、前記ノズルプレートにおける、複数の前記ノズル孔を含むノズル列の両端側に配置された前記ノズル孔あるいは前記隣接孔と対向する位置に設けられる構成であってもよい。
【0010】
本発明は、前記位置合わせ基準が、前記カバープレートに設置された貫通孔であってもよく、あるいは前記カバープレートに設置された光反射部であってもよく、あるいは前記カバープレートに設置された光透過部であってもよい。
また、前記位置合わせ基準が、前記カバープレートに設置された凸部であってもよく、あるいは前記カバープレートに設置された凹部であってもよい。
さらに、前記位置合わせ基準が、複数の前記ノズル孔あるいは前記隣接孔に跨って対向するように設けられる構成であってもよい。
【0011】
また、本発明は、基板の一側面に該基板を貫通する深さの吐出溝を複数配列したアクチュエータプレートと、複数の前記吐出溝に連通する液体供給室を有して前記アクチュエータプレートの一側面に設置されるカバープレートと、前記吐出溝の長手方向中央に連通するノズル孔を複数配列して前記アクチュエータプレートの他側面に設置されるノズルプレートと、を備えたヘッドチップの製造方法において、複数の前記ノズル孔の少なくとも一つと前記吐出溝とを通じて、あるいは前記ノズルプレートにおける複数の前記ノズル孔の何れかに隣接する隣接孔と前記アクチュエータプレートに形成された貫通部とを通じて、前記カバープレートに設けられた位置合わせ基準を検出し、前記ノズルプレートの位置合わせを行う位置合わせ工程を有することを特徴とするものでもある。
本発明は、前記カバープレートに設けられた前記位置合わせ基準としての貫通孔を閉塞する孔閉塞工程を有する構成であってもよい。
また、本発明は、上記何れかのヘッドチップと、前記吐出溝に液体を給排する液体給排手段と、前記吐出溝の側壁に形成された駆動電極に駆動電圧を印加する制御手段と、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドを提供する。
また、本発明は、上記液体噴射ヘッドと、被記録媒体を予め決められた搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、前記被記録媒体に対して前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と直交する方向で走査させる走査手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノズル孔又はノズル孔に隣接する隣接孔を通じてカバープレートの位置合わせ基準を検出し、この検出によりノズル孔の位置合わせを行う手法によって、ノズル孔を直接又は直接的に位置合わせすることができる。このため、ノズル孔から離間した位置合わせ基準を利用してノズル孔の位置合わせを行う場合と比べて、ノズル孔の位置合わせ精度を高め、ヘッドチップの吐出特性を良好に確保できる。特に、吐出溝の長手方向中央にノズル孔を連通させるサイドシュートタイプのヘッドチップにおいては、アクチュエータプレート及びカバープレートで構成されるポンプの中央にノズル孔を配置することが吐出特性を管理する上で重要であり、本願発明の効果が高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、液体としてインクを噴射する液体噴射ヘッド及びそのヘッドチップ、並びにこの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置を例示する。
【0015】
図1に示すように、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段(被記録媒体搬送部)2,3と、被記録媒体Sにインクを噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給するインク供給手段(液体供給部)5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(以下、Y方向と記す。)と直交する方向(被記録媒体Sの幅方向、以下、X方向と記す。)に走査させる走査手段6と、を備える。図中Z方向はX方向及びY方向と直交する高さ方向を示す。
【0016】
搬送手段2は、X方向に延設されたグリッドローラ20と、グリッドローラ20に平行して延設されたピンチローラ20aと、グリッドローラ20を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備える。同様に、搬送手段3は、X方向に延設されたグリッドローラ30と、グリッドローラ30に平行して延設されたピンチローラ30aと、グリッドローラ30を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備える。
【0017】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク50と、インクタンク50と液体噴射ヘッド4とを接続するインク配管51と、を備える。インクタンク50として、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクのインクタンク50Y,50M,50C,50BがY方向に並んで設けられる。インク配管51は、液体噴射ヘッド4を支持するキャリッジ62の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0018】
走査手段6は、X方向に延設された一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジ62と、キャリッジ62をX方向に移動させる駆動機構63と、を備える。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67と、を備える。
【0019】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設される。無端ベルト66は、一対のガイドレール60,61間に配設され、この無端ベルトにキャリッジ62が連結される。キャリッジ62には、複数の液体噴射ヘッド4として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクの液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4BがX方向に並んで搭載される。
【0020】
液体噴射ヘッド4は、キャリッジ62に固定されるベース上に、一又は複数のヘッドチップ41(
図2,3等参照)を支持すると共に、ヘッドチップ41の吐出溝に液体を給排する液体給排部、フィルタ部及び配線基板等(何れも不図示)を支持する。前記配線基板には、ヘッドチップ41を駆動制御する制御回路が形成される。液体噴射ヘッド4は、不図示の制御装置が出力した駆動信号に応じて、前記制御回路から前記吐出溝の側壁に形成された駆動電極に駆動電圧を印加し、各色のインクを所望のボリュームで吐出する。この液体噴射ヘッド4が走査手段6によりX方向に移動することで、被記録媒体SにおけるY方向で所定幅の範囲に記録がなされ、かつこの走査を搬送手段2,3により被記録媒体SをY方向で搬送しつつ繰り返し行うことで、被記録媒体S全体に記録がなされる。
【0021】
図2、
図3に示すように、ヘッドチップ41は、X方向に所定幅を有してY方向に延びる帯板状に設けられる。ヘッドチップ41は、前記液体給排部との間でインクを給排する液体循環型とされる。ヘッドチップ41は、Y方向に沿って直線状に並ぶ複数のノズル孔13を含むノズル列19からインクを吐出する。ヘッドチップ41は、後述する液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に臨むノズル孔13からインクを吐出するいわゆるサイドシュートタイプである。
【0022】
ヘッドチップ41は、互いに平行に並ぶ複数のチャネル(溝)12を含むチャネル群11を有するアクチュエータプレート15と、アクチュエータプレート15の上面(一側面)に設置されるカバープレート16と、アクチュエータプレート15の下面(他側面)に設置されるノズルプレート14と、を一体的に備えた積層構造とされる。図示都合上、
図2ではノズルプレート14を鎖線で示す。
【0023】
アクチュエータプレート15は、例えば垂直方向に分極処理が施されたPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックスで形成される。カバープレート16は、アクチュエータプレート15と同じPZTセラミックスで形成され、アクチュエータプレート15と熱膨張を等しくして温度変化に対する反りや変形を抑える。カバープレート16は、アクチュエータプレート15と異なる材料でもよいが、熱膨張係数がPZTセラミックスと近似する材料であることが好ましい。ノズルプレート14は、光透過性のポリイミド膜で形成される。
【0024】
各チャネル12は、アクチュエータプレート15の上面側から、後述するダイシングブレード71(
図7参照)による切削によって、直線状かつ等間隔に形成される。各チャネル12は、その長手方向(X方向)の両側におけるダイシングブレード71の外周形状に沿う円弧状底面72が形成された部位を除き、アクチュエータプレート15の上面側から下面側へ貫通して形成される。隣り合うチャネル12間には、断面矩形状でX方向に延びる圧電体17が形成される。
【0025】
各チャネル12は、インク滴を噴射させる液体噴射チャネル(吐出溝)12Aと、インク滴を噴射させないダミーチャネル(非吐出溝)12Bとに大別される。液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bは、Y方向で交互に並んでそれぞれ複数形成される。
【0026】
図4、
図5に示すように、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12BのX方向一側(図中左側)は、アクチュエータプレート15のX方向一側の外側端よりも内側に比較的小さく入り込んだ位置で、ダイシングブレード71による円弧状底面72を消失させるように形成される。
一方、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12BのX方向他側(図中右側)は、アクチュエータプレート15のX方向他側の外側端よりも内側に比較的大きく入り込んだ位置で、円弧状底面72を消失させるように形成される。
【0027】
液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bは、X方向で互いに同一の範囲に渡って、アクチュエータプレート15を上下に貫通する。
ダミーチャネル12Bにおいては、X方向他側の円弧状底面72よりもX方向他側に、Z方向の深さを浅くした浅溝12Cを連設する。浅溝12Cは、アクチュエータプレート15のX方向他側の外側端に至るまで形成される。
【0028】
液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの底面側は、アクチュエータプレート15の下面に取り付けられたノズルプレート14により閉塞される。
図2、
図3を併せて参照し、ノズルプレート14は、例えばアクチュエータプレート15とX方向幅及びY方向長さを同一にして設けられる。ノズルプレート14には、各液体噴射チャネル12AのY方向中央の下方に位置して各液体噴射チャネル12Aに連通するノズル孔13が複数形成される。
【0029】
複数のノズル孔13は、Y方向に沿って並ぶことで、直線状のノズル列19を形成する。ノズルプレート14は、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの底面側(アクチュエータプレート15の下面側)を覆うように、アクチュエータプレート15の下面に接着剤等により接合される。液体噴射チャネル12Aの下部開口73Aは、ノズルプレート14により閉塞されるが、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央(X方向中央)の下方にはノズル孔13が配置される。ダミーチャネル12Bの下部開口73Bは、ノズルプレート14における隣り合うノズル孔13間の部位により閉塞される。ノズル孔13を液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に位置合わせする手法については後述する。
【0030】
アクチュエータプレート15の下面において交互に並ぶ液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの下部開口73A,73Bは、互いに同形状とされるが、これらが互いに異形状であってもよい。ダミーチャネル12Bが浅溝12Cを連設せず、液体噴射チャネル12Aと同様に終端してもよい。ダミーチャネル12Bがアクチュエータプレート15の下面に開口しなくてもよい。
【0031】
図4を参照し、液体噴射チャネル12Aの両内側面には、液体噴射チャネル12Aの底面(ノズルプレート14の上面)から上方に離間したコモン電極74Aが形成される。コモン電極74Aは、X方向に延びる帯状をなし、そのX方向他側は、アクチュエータプレート15のX方向他側の上面に形成したコモン端子75Aに電気的に接続される。
【0032】
図5を参照し、ダミーチャネル12Bの両内側面には、ダミーチャネル12Bの底面(ノズルプレート14の上面)から上方に離間したアクティブ電極74Bが形成される。アクティブ電極74Bは、X方向に延びる帯状をなし、そのX方向他側は、アクチュエータプレート15のX方向他側の上面に形成されたアクティブ端子75Bに電気的に接続される。
【0033】
一つのダミーチャネル12B内で対向する一対のアクティブ電極74Bは、互いに電気的に分離される。アクティブ電極74Bは、浅溝12Cの底面よりも上方に位置し、浅溝12Cの内側面にも連続して形成される。液体噴射チャネル12Aを挟む一対の圧電体17にそれぞれ形成されたアクティブ電極74Bは、互いに電気的に接続される。
【0034】
この構成において、液体噴射チャネル12Aを挟む一対の圧電体17のアクティブ電極74Bに電圧を印加すると、前記一対の圧電体17が変形し、これらの間の液体噴射チャネル12A内に充填されたインクに圧力変動を生じさる。このインクがノズル孔13より吐出され、被記録媒体Sに文字や図形を記録する。アクチュエータプレート15のX方向他側には、コモン端子75A及びアクティブ端子75Bを外部に接続するためのフレキシブル基板(不図示)が実装される。
【0035】
カバープレート16は、X方向でアクチュエータプレート15よりも狭いが、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの全量よりも広い幅を有して、アクチュエータプレート15と同様にY方向に延びる帯板状とされる。カバープレート16は、X方向他側(図中右側)の上面側に液体供給室76を形成すると共に、X方向一側(図中左側)の上面側に液体排出室77を形成する。液体供給室76の底部(下部)には、液体噴射チャネル12AのX方向他側に連通する第一スリット76aが形成され、液体排出室77の底部には、液体噴射チャネル12AのX方向一側に連通する第二スリット77aが形成される。
【0036】
カバープレート16は、そのX方向一側(図中左側)では、外側端をアクチュエータプレート15のX方向一側の外側端に合わせて、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bを覆うと共に、X方向他側(図中右側)では、コモン端子75A及びアクティブ端子75Bを露出させるように設置される。カバープレート16の第一スリット76aは、液体噴射チャネル12AのX方向他側の上部開口78Aに連通し、カバープレート16の第二スリット77aは、液体噴射チャネル12AのX方向一側の上部開口78Aに連通する。ダミーチャネル12Bの上部開口78Bは、各スリット76a,77a等と連通せず、カバープレート16の下面により閉塞される。
【0037】
カバープレート16の厚さは0.3mm〜1.0mm、ノズルプレート14の厚さは0.01mm〜0.1mmとするのが好ましい。カバープレート16を0.3mmより薄くすると強度が低下し、1.0mmより厚くすると液体供給室76及び液体排出室77並びに各スリット76a,77aの加工に時間を要し、かつ材料が増量してコスト高となる。ノズルプレート14を0.01mmよりも薄くすると強度が低下し、0.1mmより厚くすると隣接するノズル孔13に振動が加わってクロストークが発生し易くなる。
【0038】
PZTセラミックスはヤング率が58.48GPaであり、ポリイミドはヤング率が3.4GPaである。つまり、アクチュエータプレート15の上面を覆うカバープレート16の方が、アクチュエータプレート15の下面を覆うノズルプレート14よりも剛性が高い。カバープレート16の材質はヤング率が40GPaを下回らないことが好ましく、ノズルプレート14の材質はヤング率が1.5GPa〜30GPaの範囲が好ましい。ノズルプレート14において、ヤング率が1.5GPaを下回ると、被記録媒体Sに接触したときに傷がつきやすく信頼性が低下する。ノズルプレート14において、ヤング率が30GPaを超えると、隣接するノズル孔13に振動が加わってクロストークが発生し易くなる。
【0039】
液体噴射ヘッド4の駆動時には、まず、インク供給手段5から液体供給室76に供給されたインクが、第一スリット76aを介して液体噴射チャネル12Aに流入し、さらに液体噴射チャネル12Aから第二スリット77aを介して液体排出室77に流出する。このように、液体噴射チャネル12Aにインクが給排される状態で、アクティブ電極74Bに駆動信号が印加されると、液体噴射チャネル12Aを挟む両圧電体17に厚みすべり変形が生じ、液体噴射チャネル12Aに充填されたインクに圧力波を発生させる。この圧力波により、ノズル孔13からインクが吐出され、被記録媒体Sに文字や図形が記録される。コモン電極74A及びアクティブ電極74Bは、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの底面すなわちノズルプレート14の上面から離間することで、インクに誘起される圧力波を安定させ、インク滴を安定して吐出可能とする。本実施形態ではコモン端子75A及びアクティブ端子75B側に液体供給室76、その反対側に液体排出室77を配置したが、これらの配置を逆にしてもよい。
【0040】
図6は、本実施形態におけるヘッドチップ41の製造方法の主な工程を示すフローチャートである。本方法は、アクチュエータプレート15を形成する圧電体基板81の一側面(図中上面)に感光性の樹脂膜82を形成する樹脂膜形成工程S1と、露光、現像により樹脂膜82のパターンを形成するパターン形成工程S2と、圧電体基板81の一側面に複数の溝83を形成する溝形成工程S3と、圧電体基板81の一側面にその法線方向に対して溝83の長手方向と直交する方向に傾斜した方向から導電体84を蒸着する導電体堆積工程S4と、導電体84をパターニングしてコモン電極74A及びアクティブ電極74Bを形成する電極形成工程S5と、圧電体基板81の一側面にカバープレート16を設置するカバープレート設置工程S6と、圧電体基板81の他側面を研削する基板研削工程S7と、研削後の圧電体基板81の他側面にノズルプレート14を設置するノズルプレート設置工程S8と、後述する位置合わせ基準87としての貫通孔を閉塞する孔閉塞工程S9と、を含む。
【0041】
樹脂膜形成工程S1において、圧電体基板81の上面には、感光性の樹脂膜82(
図7参照)が形成される。圧電体基板81は、PZTセラミックスで形成され、樹脂膜82は、圧電体基板81にレジスト膜を塗布して形成される。樹脂膜82は、感光性樹脂フィルムで形成してもよい。
【0042】
パターン形成工程S2において、まず、露光、現像によって樹脂膜82のパターンを形成する。その後、コモン端子75A及びアクティブ端子75Bを形成する領域では、樹脂膜82を除去し、コモン端子75A及びアクティブ端子75Bを形成しない領域では、樹脂膜82を残す。これは、後にリフトオフ法によりコモン端子75A及びアクティブ端子75Bのパターニングを行うためである。
【0043】
図7〜
図10を参照し、溝形成工程S3において、圧電体基板81には、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの基となる複数の溝83が、ダイシングブレード71により形成される。ダイシングブレード71は、水平に配置された圧電体基板81の上方から、圧電体基板81の上面における溝83のX方向一側の端部となる位置に降下し、当該位置を所定深さまで研削する。所定深さとは、基板研削工程S7で形成される液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの最終的な深さを示す鎖線Zよりも深く、かつ圧電体基板81の下面に達しない深さである。
【0044】
その後、ダイシングブレード71は、X方向他側へ圧電体基板81の上面に沿って水平に移動しながら、前記所定深さの溝83を形成する。ダイシングブレード71は、溝83のX方向他側の端部となる位置に達した後、圧電体基板81から退避するべくその上方まで上昇する。ダイシングブレード71は、Y方向で変位しつつ溝83の形成を繰り返し、平行に並ぶ複数の溝83を形成する(
図11参照)。
【0045】
図9を参照し、ダイシングブレード71は、ダミーチャネル12Bの基となる溝83のX方向他側では、浅溝12Cの基となる浅溝83aを、圧電体基板81のX方向他側の外側端に至るまで形成する。圧電体基板81の上面には、パターニングされた樹脂膜82が形成されている。
【0046】
ダイシングブレード71は、圧電体基板81の上面側を液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの最終的な深さである鎖線Zよりも深く研削することで、圧電体基板81の上面側を鎖線Zまで研削するのみの場合と比べて、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの円弧状底面72のX方向幅W(
図8参照)が短縮される。これにより、液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの有効なX方向幅を確保し易くなり、圧電体基板81の小型化を図って圧電体ウエハーから取得する際の歩留まりを向上させる。
【0047】
図11を参照し、導電体堆積工程S4において、圧電体基板81の一側面の法線Hに対して、溝83の長手方向(X方向)と直交する方向に角度+θ,−θで傾斜した二方向から、圧電体基板81の表面に導電体84を蒸着する。本実施形態では、溝83間における圧電体17の基となる壁85の上面から鎖線Zまでの深さdの略1/2の深さ(d/2)まで導電体84を堆積するように設定される。
【0048】
導電体84の下端縁は、浅溝83aの底面よりも上方に位置し、浅溝83aの底面には導電体84が堆積されない。これに対し、液体噴射チャネル12Aとなる溝83のX方向他側の円弧状底面72の上部には、深さd/2よりも浅い領域に導電体84が堆積される(
図13参照)。
【0049】
導電体84は、鎖線Zよりも浅い範囲であれば、深さd/2よりも深い領域まで形成してもよい。すなわち、斜め蒸着法により形成する導電体84からなるコモン電極74A及びアクティブ電極74Bの下端縁は、鎖線Zよりも浅く深さd/2よりも深い範囲に形成されてもよい。コモン電極74A及びアクティブ電極74Bは、溝83からなる液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bの底面(本例ではノズルプレート14の上面)から離間することで、前述の如く液滴の吐出を安定させる。
【0050】
図12を参照し、電極形成工程S5においては、導電体84をパターニングしてコモン電極74A及びアクティブ電極74Bを形成する。つまり、樹脂膜82を除去するリフトオフ法により、樹脂膜82と共にその上面に堆積した導電体84を除去する。これにより、溝83間の壁85の両側面に堆積した導電体84が互いに分離し、コモン電極74A及びアクティブ電極74Bが形成される。
【0051】
電極形成工程S5では、コモン電極74A及びアクティブ電極74Bの形成と同時に、コモン端子75A及びアクティブ端子75Bを形成する(
図13、
図14参照)。このとき、液体噴射チャネル12Aの両内側面に形成されたコモン電極74Aは、液体噴射チャネル12Aの内部に位置する電極同士がそれぞれ全て電気的に接続され、ダミーチャネル12Bの両内側面に形成されたアクティブ電極74Bは、ダミーチャネル12Bの内部に位置する電極同士がそれぞれ全て電気的に分離される。ただし、液体噴射チャネル12Aを挟む一組のアクティブ電極74Bはそれぞれ電気的に接続されている。これによって、液体噴射チャネル12Aを形成する壁85(圧電体17)を同時に駆動することができる。
【0052】
図13、
図14を参照し、カバープレート設置工程S6においては、電極形成工程S5後の圧電体基板81の上面に、カバープレート16が接着剤等により接合される。これにより、圧電体基板81の溝83間の壁85の上端が、カバープレート16を介して一体的に連結される。
【0053】
図15、
図16を参照し、基板研削工程S7においては、圧電体基板81の下面側を鎖線Zまで研削する。これにより、圧電体基板81の上面から下面まで各溝83が貫通し、かつ各溝83が前記深さdの液体噴射チャネル12A及びダミーチャネル12Bとなる。このとき、溝83間の壁85の下端は分離するが、壁85の上端がカバープレート16への接合により連結され、かつ溝83のX方向両側の端部は圧電体基板81が残されて連結されるため、基板研削工程S7で圧電体基板81が解体することはない。以下、アクチュエータプレート15及びカバープレート16の接合体をプレート接合体86という。
【0054】
図17を参照し、ノズルプレート設置工程S8において、プレート接合体86に対するノズルプレート14の接合位置は、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央にノズル孔13が位置するようにして決定される。液体循環型のヘッドチップ41では、アクチュエータプレート15及びカバープレート16の接着部分(液体噴射チャネル12Aのポンプ領域に相当)も含め、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に関して対称に形成される。この液体噴射チャネル12Aの長手方向中央にノズル孔13を配置することが、液滴の吐出特性を安定させる点で好ましい。
【0055】
本実施形態では、ノズル列19の両端をカメラCで下方から撮像し、その撮像データに基づく画像認識により、プレート接合体86及びノズルプレート14のアライメントを行う。ノズル孔13の位置合わせは、ノズル列19両端のノズル孔13を下方から見たときに、該ノズル孔13及びその上方の液体噴射チャネル12Aを通じて、カバープレート16に形成された位置合わせ基準87を検出(視認)することでなされる。
【0056】
位置合わせ基準87は、カバープレート16におけるノズル列19両端のノズル孔13とその軸方向で対向する位置、すなわち対応する液体噴射チャネル12Aの長手方向中央の直上となる位置に設けられる。この位置合わせ基準87がノズル孔13を通じて下方から視認されたときに、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央の下方にノズル孔13が位置していると判定される。ノズルプレート設置工程S8は、プレート接合体86に対するノズルプレート14の位置合わせを行う位置合わせ工程S81を含んでいる。
【0057】
図17に示す位置合わせ基準87は、カバープレート16を上下に貫通する貫通孔であり、ノズル孔13から見たときにバックライトBの光を視認可能とすることで、暗い作業環境でも位置合わせ基準87を検出し易くする。本例では、ノズルプレート設置工程S8後に前記貫通孔を埋めて閉塞する孔閉塞工程S9を実施する。
【0058】
位置合わせ基準87は、貫通孔に限らず、例えば金属蒸着等による光反射部、透明化又は薄肉化等による光透過部、凸部及び凹部等、様々な形態が有り得る。光反射部及び光透過部の場合、貫通孔と同様に検出し易く、かつ孔閉塞工程S9が不要となる。凸部及び凹部等の形状の場合、位置合わせ基準87の形成が比較的容易である。
【0059】
位置合わせ基準87は、ノズル孔13と同サイズ又はノズル孔13よりも小さいサイズに形成される。位置合わせ基準87のY方向位置は、ノズル列19両端のノズル孔13及びチャネル群11両端の液体噴射チャネル12Aと同一である(
図18参照)。なお、
図18において、複数のチャネル12の左右の最端に液体噴射チャネル12Aを配置して記載したが、これに限られず、ダミーチャネル12Bを配置することも可能である。
位置合わせ基準87は、少なくとも液体噴射チャネル12Aの長手方向(X方向)では、ノズル孔13と同サイズ又はノズル孔13よりも小さいサイズであることが、ノズル孔13を液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に配置する点で好ましいが、液体噴射チャネル12Aと直交する方向(Y方向)では、例えば複数のノズル孔13に跨って対向するサイズとする等、比較的サイズの自由度がある。具体的には、位置合わせ基準87のX方向の幅はノズル孔13のX方向の直径よりも小さい幅とし、位置合わせ基準87のY方向の幅はY方向に長い形状として、位置合わせ基準87を長溝とすることが可能である。
【0060】
位置合わせ基準87は、単体のカバープレート16に予め設けられるか、カバープレート設置工程S6後のカバープレート16に設けられる。前者はカバープレート16に位置合わせ基準87を設け易く、後者は液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に位置合わせ基準87を設け易い。
【0061】
上記した位置合わせ基準87を用いて、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央にノズル孔13を直接的に位置合わせした状態で、ノズルプレート14をプレート接合体86に接合することで、ノズル孔13と位置合わせ基準87との間の公差の影響を無くし、かつノズルプレート14の熱変形の影響も抑えた上で、ノズル孔13をより正確に液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に配置できる。
【0062】
液体噴射チャネル12Aにおいて、該液体噴射チャネル12A内に充填されたインクは、液体噴射チャネル12A両側の圧電体17の変形により圧力波が生じると、ノズル孔13から液滴として吐出される。液体噴射チャネル12Aは、その長手方向の中央に関して対称に形成され、この中央にノズル孔13を配置することで、液滴を効率よく安定して吐出することができる。
【0063】
ノズルプレート設置工程S8において、プレート接合体86の支持治具88及びノズルプレート14の支持治具89の少なくとも一方は、位置合わせ基準87をノズル孔13及び液体噴射チャネル12Aを通じてカメラCで検出するべく、プレート接合体86及びノズルプレート14の相対的なアライメントを実施する。
【0064】
プレート接合体86及びノズルプレート14のアライメントは、X方向及びY方向でなされるが、複数のノズル孔13を用いてノズルプレート14を位置合わせする場合は、Z方向に沿う軸回りの回転方向でもアライメントを行うことが可能である。
【0065】
支持治具88,89の相対移動により、カメラCがノズル列19の両端で位置合わせ基準87を検出した時点で、ノズル孔13が液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に配置されたことが直接的に認識され、プレート接合体86及びノズルプレート14の面沿い方向での位置合わせが完了する。
この状態で、プレート接合体86及びノズルプレート14を面直方向(Z方向)で近接させて互いに接合することで、ノズル孔13が液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に正確に配置された組み立体が完成する。
【0066】
このように、ノズル列19両端のノズル孔13を液体噴射チャネル12Aの長手方向中央に直接的に位置合わせすることで、ノズル孔13及び位置合わせ基準87間の公差の位置合わせ精度への影響を無くし、かつ環境温度が変化する場合や可塑性材料からなるノズルプレート14を使用する場合等でもノズルプレート14の熱変形の位置合わせ精度への影響を抑えて、ノズル列19全体を液体噴射チャネル12Aの中央位置に容易かつ確実に配置することができる。
なお、位置合わせ基準87は、液体供給室76と液体排出室77とを形成した後に形成する。電極74に電位差を掛けた場合、液体噴射チャネル12Aの圧電体17が駆動する部分は、液体噴射チャネル12Aをカバープレート16で閉塞している範囲と略同一である。よって、圧電体17が駆動する部分の中心位置の精度を出すために、液体供給室76と液体排出室77とを形成した後に、液体供給室76及び液体排出室77が形成されていない範囲の中心に位置合わせ基準87を形成する。
【0067】
本実施形態の変形例として、
図19に示すように、ノズル列19のノズル孔13間でダミーチャネル12Bの長手方向中央の直下となる位置において、ノズルプレート14にダミーノズル(隣接孔)91を形成し、カバープレート16には、ダミーノズル91と対向する位置に位置合わせ基準87を形成し、この位置合わせ基準87が、ダミーノズル91及びダミーチャネル(貫通部)12Bを通じて下方から検出されたときに、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央にノズル孔13が配置されたものと判定してもよい。ダミーチャネル12Bはアクチュエータプレート15を上下に貫通するものとし、かつ位置合わせ基準87は液体噴射チャネル12Aの長手方向中央と同一のX方向位置にあるものとする。ダミーチャネル12Bはインクが入らないので、これに対向する位置合わせ基準87の形成自由度が高くなる。
これに対し、
図18に示すように、液体噴射チャネル12Aに貫通孔としての位置合わせ基準87を形成した場合、前述したように、ノズルプレート設置工程S8後に孔閉塞工程S9を実施する。これは、例えばカバープレート16上に液体供給室76及び液体排出室77に対応するマニホールドを貼り付ける際、この貼り付けに用いる接着剤によって孔を塞ぐ。なお、別途封止材を用いる等、種々の方法を用いてもよい。
【0068】
本実施形態の他の変形例として、
図20に示すように、ノズル列19両端の外側方でノズル孔13間のピッチと同程度の距離だけ離間した位置において、ノズルプレート14にダミーノズル(隣接孔)91’を形成し、アクチュエータプレート15には、ダミーノズル91’と対向する位置を含む窓孔(貫通部)92を形成し、カバープレート16には、ダミーノズル91’と対向する位置に位置合わせ基準87を形成し、この位置合わせ基準87が、ダミーノズル91’及び窓孔92を通じて下方から検出されたときに、液体噴射チャネル12Aの長手方向中央にノズル孔13が配置されたものと判定してもよい。位置合わせ基準87は液体噴射チャネル12Aの長手方向中央と同一のX方向位置にあるものとする。
ダミーノズル91’は、ノズル列19のY方向端の外側方でノズル孔13間のピッチ以下の距離だけ離間した位置に形成することが好ましい。
図20左側に示すように、チャネル群11のY方向端がダミーチャネル12Bであれば、このダミーチャネル12Bに形成した切り欠きや拡幅部を窓孔92としてもよい。
【0069】
以上説明したように、上記実施形態におけるヘッドチップ41は、カバープレート16が、複数のノズル孔13の少なくとも一つと液体噴射チャネル12Aを介して対向する位置に、あるいはノズルプレート14における複数のノズル孔13の何れかに隣接する隣接孔(ダミーノズル91,91’)とアクチュエータプレート15に形成された貫通部(ダミーチャネル12B、窓孔92)を介して対向する位置に、位置合わせ基準87を有し、この位置合わせ基準87が、ノズル孔13及び液体噴射チャネル12Aを通じて、あるいは前記隣接孔及び貫通部を通じて、ノズルプレート14側から検出可能とされるものである。
【0070】
この構成によれば、ノズル孔13又はノズル孔13に隣接する隣接孔を通じてカバープレート16の位置合わせ基準87を検出し、この検出によりノズル孔13の位置合わせを行う手法によって、ノズル孔13を直接又は直接的に位置決めすることができる。このため、ノズル孔13から離間した位置合わせ基準を利用してノズル孔13の位置合わせを行う場合と比べて、ノズル孔13の位置合わせ精度を高め、ヘッドチップ41の吐出特性を良好に確保できる。特に、液体噴射チャネル12Aの長手方向中間部にノズル孔13を連通させるサイドシュートタイプのヘッドチップ41においては、アクチュエータプレート15及びカバープレート16で構成されるポンプの中央にノズル孔13を配置することが吐出特性を管理する上で重要であり、本願発明の効果が高い。
【0071】
上記実施形態におけるヘッドチップ41の製造方法は、複数のノズル孔13の少なくとも一つと該ノズル孔13に対向する液体噴射チャネル12Aとを通じて、あるいはノズルプレート14における複数のノズル孔13の何れかに隣接する隣接孔(ダミーノズル91,91’)とアクチュエータプレート15に形成された貫通部(ダミーチャネル12B、窓孔92)とを通じて、カバープレート16に設置された位置合わせ基準87を検出し、ノズルプレート14の位置合わせを行う位置合わせ工程S81を有する。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、位置合わせ基準87をノズル列19の中間部に設けてもよい。単一の位置合わせ基準87でノズルプレート14の位置合わせを行ってもよい。位置合わせ基準87を三以上設けてもよい。
カメラC等の撮像手段を用いず、目視により位置合わせ基準87を視認してもよい。支持治具88,89によるアライメントは自動及び手動の何れで行ってもよい。
【0073】
圧電体基板81は、少なくとも隣り合うチャネル間を仕切る壁の部分に圧電体を使用し、その他の領域は非圧電体からなる絶縁体とすることができる。ノズルプレート14は単層又は複数の薄膜層で形成することができる。各電極及び各端子は、リフトオフ法によるパターニングではなく、例えば導電体堆積工程で斜め蒸着法により導電体を形成した後、フォトリソグラフィ及びエッチング法により各電極及び各端子のパターンを形成してもよい。
【0074】
ヘッドチップ41は、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録するインクジェット方式の液体噴射ヘッド4に限らず、素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成する液体噴射ヘッドに適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。