特許第5995804号(P5995804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5995804蓄電システムの管理装置及び制御目標値決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995804
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】蓄電システムの管理装置及び制御目標値決定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20160908BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20160908BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J7/35 K
   H02J7/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-166402(P2013-166402)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-35912(P2015-35912A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/162025(WO,A1)
【文献】 特開2012−244665(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/027272(WO,A1)
【文献】 特開2012−130161(JP,A)
【文献】 特開2012−130126(JP,A)
【文献】 特開2003−244840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H02J 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置、負荷、及び商用系統に接続された送電線に接続され、蓄電池を充電又は放電させる蓄電システムの管理装置であって、
前記商用系統から供給される電力のピーク値に対する削減目標が入力される入力手段と、
前記負荷の消費電力と前記発電装置による発電電力との差である負荷不足電力を算出する負荷不足電力算出手段と、
前記削減目標と現在から所定時間前における前記負荷不足電力の最大値とに基づいて、前記蓄電池からの放電量の制御目標値となりえる候補値を導出する候補値導出手段と、
現在から所定時間前における前記商用系統から供給される電力のピーク値を導出する供給電力ピーク導出手段と、
前記候補値が前記ピーク値を超える場合、前記候補値を前記制御目標値に決定し、前記候補値が前記ピーク値以下の場合、前記ピーク値を前記制御目標値として決定する決定手段と、
を備える蓄電システムの管理装置。
【請求項2】
前記負荷不足電力が前記制御目標値を超える場合に、前記蓄電池を放電させる放電モードとし、前記負荷不足電力が前記制御目標値以下の場合に、前記商用系統から供給される電力を前記蓄電池に充電させる充電モードとすることで前記蓄電システムの運転モードを選択する選択手段を備える請求項1記載の蓄電システムの管理装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記蓄電池を充電又は放電させない場合に、前記蓄電池のインバータを待機状態又は該インバータへの電力の供給を停止する停止モードを選択する請求項2記載の蓄電システムの管理装置。
【請求項4】
発電装置、負荷、及び商用系統に接続された送電線に接続され、蓄電池を充電又は放電させる蓄電システムの制御目標値決定方法であって、
前記負荷の消費電力と前記発電装置による発電電力との差である負荷不足電力を算出する第1工程と、
前記商用系統から供給される電力のピーク値に対する削減目標と現在から所定時間前における前記負荷不足電力の最大値とに基づいて、前記蓄電池からの放電量の制御目標値となりえる候補値を導出し、現在から所定時間前における前記商用系統から供給される電力のピーク値を導出する第2工程と、
前記候補値が前記ピーク値を超える場合、前記候補値を前記制御目標値に決定し、前記候補値が前記ピーク値以下の場合、前記ピーク値を前記制御目標値として決定する第3工程と、
を含む制御目標値決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムの管理装置及び制御目標値決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需要に応じて安定した電力を供給する電力管理(以下「エネルギーマネジメント」という。)に関する技術が開発されている。この一例として、家屋、ビル、及び街中に配置された自然エネルギー発電設備、自家発電設備、及び蓄電システム等がネットワーク化され、電力需要に応じて制御される。
【0003】
エネルギーマネジメントの目的のひとつに、例えば夜間に発電された電力をより消費量の多い昼間に使用する負荷平準化(以下「ピークシフト」という。)がある。ピークシフトを行うことにより、自然エネルギー発電の電力変動による系統への影響低減や契約電力の使用量が下がることによる電気料金の低減が見込まれる。
【0004】
特許文献1には、専門的な知識を持たないユーザーであっても、ピークカットを適切に行うことができるエネルギーマネジメントシステムが開示されている。
具体的には、特許文献1に記載のエネルギーマネジメントシステムは、管理サーバが、エネルギー需要のピーク抑制を要請するピークカット要求を需要家のそれぞれに送信する。そして、需要家のそれぞれに設けられたエネルギーマネジメント部が、管理サーバからピークカット要求を受信した場合、ピーク削減目標を満たすように、機器の使用電力、インバータ部の交流出力動作、及び充放電部による充放電動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−244665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のエネルギーマネジメントシステムでは、負荷平準化の目標となる情報であるピークカット要求を電力会社から受信し、その値に基づいて制御を行う。
しかしながら、エネルギーマネジメントシステムは、その日の電力需要のピーク値を事前に知ることはできないため、ピーク削減目標の達成に必要な蓄電池の放電に関する制御目標値を定める必要がある。従来は、管理者がそれまでの経験則等に基づいて、蓄電池の放電に関する制御目標値を決定し、エネルギーマネジメントシステムに入力していた。しかしながら、このような制御目標値の決定方法では、管理者によって入力される制御目標値が異なる場合もあり、必ずしも適正ではない場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、商用系統から供給される電力のピーク削減目標を達成するために必要とされる、蓄電池の放電に関する制御目標値を適正に決定できる、蓄電システムの管理装置及び制御目標値決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の蓄電システムの管理装置及び制御目標値決定方法は以下の手段を採用する。
【0009】
本発明の第一態様に係る蓄電システムの管理装置は、発電装置、負荷、及び商用系統に接続された送電線に接続され、蓄電池を充電又は放電させる蓄電システムの管理装置であって、前記商用系統から供給される電力のピーク値に対する削減目標が入力される入力手段と、前記負荷の消費電力と前記発電装置による発電電力との差である負荷不足電力を算出する負荷不足電力算出手段と、前記削減目標と現在から所定時間前における前記負荷不足電力の最大値とに基づいて、前記蓄電池からの放電量の制御目標値となりえる候補値を導出する候補値導出手段と、現在から所定時間前における前記商用系統から供給される電力のピーク値を導出する供給電力ピーク導出手段と、前記候補値が前記ピーク値を超える場合、前記候補値を前記制御目標値に決定し、前記候補値が前記ピーク値以下の場合、前記ピーク値を前記制御目標値として決定する決定手段と、を備える。
【0010】
本構成によれば、蓄電システムは、発電装置、負荷、及び商用系統に接続された送電線に接続され、蓄電池を充電又は放電させる。
【0011】
発電装置による発電電力と負荷の消費電力との差である負荷不足電力が生じる場合、商用系統からの電力の供給が行われる。そして、蓄電池の放電は、商用系統から供給される電力のピーク値に対する削減を目的として行われる。このため、商用系統から供給される電力のピーク値に対する削減目標が、入力手段に入力される。具体的には、入力手段は、例えば、より上位のシステムから削減目標の入力を受け付ける。
【0012】
蓄電池システムは、制御目標値に基づいて蓄電池からの放電を行う。制御目標値は、削減目標に基づいて決定されるものである。
このために、削減目標と現在から所定時間前における負荷不足電力の最大値とに基づいて、制御目標値となりえる候補値が、候補値導出手段によって算出される。また、現在から所定時間前における商用系統から供給される電力のピーク値が、供給電力ピーク導出手段によって導出される。現在から所定時間前とは、例えば現在から24時間前である。
【0013】
そして、決定手段によって、候補値がピーク値を超える場合、候補値が蓄電池の制御目標値として決定され、候補値がピーク値以下の場合、ピーク値が蓄電池の制御目標値として決定される。すなわち、蓄電池の制御目標値は、供給電力ピーク導出手段によって導出されたピーク値を下限とする。
【0014】
候補値がピーク値以下の場合に、ピーク値が制御目標値として決定される理由は、以下の理由のためである。商用系統から供給される電力のピーク値は、既に商用系統からの供給が認められた値(例えば、契約電力の値)である。このため、既に供給が認められたピーク値をより小さくするように蓄電池を放電させても、実質的なピーク削減とはならない。そればかりか、蓄電池の充電率が不要に下がり、必要なときに蓄電池が放電できない可能性がある。すなわち、既に供給が認められたピーク値をより小さくするための蓄電池の放電は適正ではない。
【0015】
以上説明したように、本構成によれば、商用系統から供給される電力のピーク削減目標の達成に必要とされる、蓄電池の放電に関する制御目標値を適正に決定できる。
【0016】
上記第一態様では、前記負荷不足電力が前記制御目標値を超える場合に、前記蓄電池を放電させる放電モードとし、前記負荷不足電力が前記制御目標値以下の場合に、前記商用系統から供給される電力を前記蓄電池に充電させる充電モードとすることで前記蓄電システムの運転モードを選択する選択手段を備えることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、蓄電システムの運転モードを適切に選択できる。
【0018】
上記第一態様では、前記選択手段が、前記蓄電池を充電又は放電させない場合に、前記蓄電池のインバータを待機状態又は該インバータへの電力の供給を停止する停止モードを選択することが好ましい。
【0019】
本構成によれば、蓄電池を備えることで生じる電力損失を削減できる。
【0020】
本発明の第二態様に係る制御目標値決定方法は、発電装置、負荷、及び商用系統に接続された送電線に接続され、蓄電池を充電又は放電させる蓄電システムの制御目標値決定方法であって、前記負荷の消費電力と前記発電装置による発電電力との差である負荷不足電力を算出する第1工程と、前記商用系統から供給される電力のピーク値に対する削減目標と現在から所定時間前における前記負荷不足電力の最大値とに基づいて、前記蓄電池からの放電量の制御目標値となりえる候補値を導出し、現在から所定時間前における前記商用系統から供給される電力のピーク値を導出する第2工程と、前記候補値が前記ピーク値を超える場合、前記候補値を前記制御目標値に決定し、前記候補値が前記ピーク値以下の場合、前記ピーク値を前記制御目標値として決定する第3工程と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、商用系統から供給される電力のピーク削減目標を達成するために必要とされる、蓄電池の放電に関する制御目標値を適正に決定できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る電力系統の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る余剰電力充電モードを示すグラフである。
図3】本発明の実施形態に係る放電モードを示すグラフである。
図4】本発明の実施形態に係る充電モードを示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る停止モードを示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係る候補目標値の一例を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る買電電力ピーク値の一例を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態に係る制御目標値決定処理の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る運転モード選択処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る蓄電システムの管理装置及び制御目標値決定方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る蓄電システム10を含む電力系統12の構成図である。
【0025】
蓄電システム10は、発電装置14、負荷16、及び商用系統18に接続された送電線20に接続され、インバータ22を介して蓄電池24を充電又は放電させる。なお、蓄電システム10は、発電装置14及び負荷16に比べて商用系統18側に接続されている。
【0026】
発電装置14及び負荷16は、タウン(街)やビル等に設けられている。発電装置14は、例えば、自然エネルギーを利用した発電装置(太陽電池装置や風力発電装置等)又は燃料電池等である。負荷16は、例えば街灯やビルの空調及び電灯等、電力で動作する各種電気機器である。
【0027】
電力系統12には、負荷16の消費電力と発電装置14による発電電力との差である負荷不足電力が生じる場合がある。この場合、負荷不足電力を賄うために、蓄電池24からの放電、商用系統18からの電力供給(以下「買電電力」という。)が行われる。
【0028】
蓄電池24は、複数のセルが直列又は並列に接続され、発電装置14の発電電力や商用系統18からの買電電力を蓄電する。
【0029】
インバータ22は、蓄電池24の直流電力と商用系統18の交流電力を変換する。
【0030】
また、蓄電システム10は、蓄電システム制御装置26を備える。
蓄電システム制御装置26は、蓄電池24の状態の管理や、蓄電池24の充電又は放電に係る指令のインバータ22への出力、運転モードの切り替え等、蓄電システム10の全体の制御を司る。蓄電池24の運転状態は、例えば、蓄電池24の充電率(State of Charge:SOC)、蓄電池24の温度、蓄電池24が充電又は放電した回数等である。
【0031】
また、送電線20と商用系統18との接続点付近には、送電線20を流れる電力(電流)を検出する電力検出部28A,28B,28Cが備えられる。
電力検出部28Aは、送電線20へ供給される買電電力、及び送電線20から商用系統18へ供給される電力を検出する。
電力検出部28Bは、蓄電システム10から送電線20へ供給される電力(放電電力)、及び送電線20から蓄電システム10へ供給される電力(充電電力)を検出する。
電力検出部28Cは、発電装置14から商用系統18又は蓄電システム10へ供給される電力、及び商用系統18又は蓄電システム10から負荷16へ供給される電力を検出する。
【0032】
蓄電システム10は、エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System、以下「EMS」という。)30によってその動作が管理される。
【0033】
EMS30は、蓄電池24の運転状態を運転状態情報として蓄電システム制御装置26から受信する。また、EMS30は、負荷16が消費する電力量を示す消費電力情報、発電装置14で発電した電力量を示す発電電力情報、及び電力検出部28A,28B,28Cによる検出結果である電力検出情報を受信する。
【0034】
EMS30は、受信した各種情報を時系列でデータベース32に記憶し、各種情報に基づいて蓄電システム10の運転モードを示す運転モード指令を生成し、蓄電システム制御装置26へ送信する。
また、EMS30は、商用系統18から供給される電力である買電電力のピーク値に対する削減目標(以下「ピーク削減目標値」という。)が入力される。ピーク削減目標値は、商用系統18を管理する上位管理システム34から入力される。しかし、これに限らず、ピーク削減目標値は、例えば、管理者によってEMS30に入力されてもよい。
ピーク削減目標値は、換言すると負荷16で消費される買電電力の平準化目標値である。
【0035】
そして、EMS30は、蓄電池24からの放電量の制御目標値を生成する。制御目標値は、ピーク削減目標値に基づいて決定されるものである。決定された制御目標値は、蓄電システム制御装置26へ出力される。
【0036】
ここで、蓄電システム10の運転モードについて図2から図5を参照して説明する。
本実施形態に係る運転モードは、余剰電力充電モード、放電モード、充電モード、及び停止モードである。
なお、蓄電システム制御装置26が、後述するEMS30からの運転モード指令を受信すると、運転モード指令に応じて運転モードが切り替えられる。
【0037】
余剰電力充電モードは、図2に示されるように、負荷16で消費されなかった発電装置14による発電電力である余剰電力を、蓄電池24へ充電させる。
【0038】
以下に説明する放電モード及び充電モードでは、制御目標値に基づいて蓄電池24の放電及び充電が蓄電池システム制御装置26によって制御される。
【0039】
放電モードは、図3に示されるように、負荷不足電力を賄うための買電電力が減少するように蓄電池24を放電させる。すなわち、ピーク削減目標を達成させるために、蓄電池24が放電される。具体的には、放電モードは、負荷不足電力が制御目標値を超える場合に、負荷不足電力と制御目標値との差分を蓄電池24から放電し、買電電力のピーク値を削減させる。
【0040】
充電モードは、負荷不足電力が制御目標値以下の場合に、買電電力を蓄電池24に充電させる。なお、本実施形態に係る充電モードは、図4に示されるように、負荷不足電力が制御目標値以下であり、かつ電気料金が安い時間帯、例えば夜間等(例えば午前12時から午前5時まで)に蓄電池24を充電させる。
【0041】
停止モードは、図5に示されるように、蓄電池24が充電又は放電を行わない場合に、蓄電システム10を停止させる。
蓄電池24の充電を行わない場合とは、負荷不足電力が制御目標値以下であっても、電気料金が安い時間帯でない場合や、蓄電池24を放電させてもピーク削減とはならない場合である。すなわち、運転モードとして余剰電力充電モード、放電モード、及び充電モードの何れも選択されない場合である。
【0042】
なお、蓄電システム10の停止とは、インバータ22を待機状態又はインバータ22への電力の供給を停止することである。これにより、停止モードは、蓄電池24を備えることで生じる電力損失を削減できる。
【0043】
ここで、EMS30による制御目標値の生成について説明する。
【0044】
図6は、制御目標値の生成に係るEMS30の電気的構成を示す機能ブロック図である。なお、EMS30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random
Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
【0045】
EMS30は、入力部40、負荷不足電力算出部42、候補目標値導出部44、買電電力ピーク導出部46、制御目標値決定部48、及び運転モード選択部50を備える。
【0046】
入力部40は、上位管理システム34からのピーク削減目標値の入力を受け付ける。入力されたピーク削減目標値は、候補目標値導出部44へ出力される
【0047】
負荷不足電力算出部42は、EMS30に入力される負荷16の消費電力の値から発電装置14の発電電力の値を減算することで、負荷不足電力の値を算出する。
負荷不足電力は、所定時間間隔毎に算出され、時系列でデータベース32に記憶される。
【0048】
候補目標値導出部44は、ピーク削減目標値と現在から所定時間前における負荷不足電力の最大値とに基づいて、制御目標値となりえる候補値(以下「候補目標値」という。)を導出する。現在から所定時間前とは、例えば現在から24時間前である。現在から所定時間前における負荷不足電力は、データベース32から読み出される。
候補目標値導出部44は、例えば、ピーク削減目標値が50%であり、負荷不足電力の最大値が300kWの場合、候補目標値を150kWと算出する。
【0049】
導出された候補目標値は、制御目標値決定部48へ出力される。
【0050】
図7は、候補目標値の一例を示すグラフである。
図7は、負荷不足電力の最大値が常に現在時刻である場合の一例であり、このような場合は、時刻と共に候補目標値が変化する。
【0051】
買電電力ピーク導出部46は、現在から所定時間前における買電電力のピーク値(以下「買電電力ピーク値」という。)を導出する。現在から所定時間前とは、例えば現在から24時間前である。現在から所定時間前における買電電力は、データベース32から読み出される。
【0052】
導出された買電電力ピーク値は、制御目標値決定部48へ出力される。
【0053】
図8は、買電電力ピーク値の一例を示すグラフである。
【0054】
制御目標値決定部48は、候補目標値が買電電力ピーク値を超える場合、候補目標値を制御目標値に決定し、候補目標値が買電電力ピーク値以下の場合、買電電力ピーク値を制御目標値として決定する。すなわち、蓄電池24の制御目標値は、買電電力ピーク値を下限とする。
【0055】
候補目標値が買電電力ピーク値以下の場合に、買電電力ピーク値が制御目標値として決定される理由は、以下の理由のためである。
買電電力ピーク値は、既に商用系統18からの供給が認められた値(例えば、契約電力の値)である。このため、既に供給が認められた買電電力ピーク値をより小さくするように蓄電池24を放電させても、実質的なピーク削減とはならない。そればかりか、蓄電池24の充電率が不要に下がり、必要なときに蓄電池24が放電できない可能性がある。すなわち、既に供給が認められた買電電力ピーク値をより小さくするための蓄電池24の放電は適正ではない。
【0056】
制御目標値決定部48によって決定された制御目標値は、運転モード選択部50に出力される。
【0057】
図9は、候補目標値導出部44、買電電力ピーク導出部46、及び制御目標値決定部48によって実行される制御目標値を決定する処理(以下「制御目標値決定処理」という。)の流れを示すフローチャートである。制御目標値決定処理は、例えば負荷不足電力が算出される毎に実行される。
【0058】
まず、ステップ100では、現在から所定時間前における、負荷不足電力の値及び買電電力の値等の情報をデータベース32から読み出す。
【0059】
次のステップ102では、データベース32から読み出した情報に基づいて、候補目標値及び買電電力ピーク値を導出する。
【0060】
次のステップ104では、候補目標値が買電電力ピーク値を超えるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。
【0061】
ステップ106では、候補目標値を制御目標値として決定し、制御目標値決定処理を終了する。
【0062】
ステップ108では、買電電力ピーク値を制御目標値として決定し、制御目標値決定処理を終了する。
【0063】
EMS30は、制御目標値を決定した後に、蓄電システム10の運転モードを選択する処理(以下「運転モード選択処理」という。)を運転モード選択部50によって実行する。
【0064】
図10は、運転モード選択処理の流れを示すフローチャートである。なお、運転モード選択処理は、運転モード選択部50に制御目標値が入力される毎に実行される。
【0065】
まず、ステップ200では、現在の発電装置14の発電電力が現在の負荷16の消費電力よりも大きいか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ202へ移行し、否定判定の場合はステップ206へ移行する。
【0066】
ステップ202では、蓄電池24が充電可能な状態か否かを判定し、肯定判定の場合はステップ204へ移行して運転モードとして余剰電力充電モードを選択する。一方、否定判定の場合はステップ218へ移行して運転モードとして停止モードを選択する。なお、蓄電池24が充電不可能な場合とは、例えば蓄電池24の充電率が充電可能な充電率以上の場合である。
【0067】
ステップ206では、現在の制御目標値が現在の負荷不足電力よりも小さいか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ208へ移行し、否定判定の場合はステップ212へ移行する。
【0068】
ステップ208では、蓄電池24が放電可能な状態か否かを判定し、肯定判定の場合はステップ210へ移行して運転モードとして放電モードを選択する。一方、否定判定の場合はステップ218へ移行して運転モードとして停止モードを選択する。なお、蓄電池24が放電不可能な場合とは、例えば蓄電池24の充電率が放電可能な充電率以下の場合である。
【0069】
ステップ212では、現在の時刻が買電電力を蓄電池24で充電可能な時間帯であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ214へ移行する。一方、否定判定の場合はステップ218へ移行して運転モードとして停止モードを選択する。
【0070】
ステップ214では、蓄電池24が充電可能な状態か否かを判定し、肯定判定の場合はステップ216へ移行して運転モードとして充電モードを選択する。一方、否定判定の場合はステップ218へ移行して運転モードとして停止モードを選択する。
【0071】
選択された運転モードは、運転モード指令としてEMS30から蓄電システム制御装置26へ出力される。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係るEMS30は、負荷16の消費電力と発電装置14による発電電力との差である負荷不足電力を算出する。そして、EMS30は、買電電力ピーク値に対する削減目標と現在から所定時間前における負荷不足電力の最大値とに基づいて、蓄電池24からの放電量の制御目標値となりえる候補目標値を導出し、現在から所定時間前における買電電力ピーク値を導出する。その後、EMS30は、候補目標値が買電電力ピーク値を超える場合、候補目標値を制御目標値に決定し、候補目標値が買電電力ピーク値以下の場合、買電電力ピーク値を制御目標値として決定する。
【0073】
これにより、EMS30、商用系統18から供給される電力のピーク削減目標の達成に必要とされる、蓄電池24の放電に関する制御目標値を適正に決定できる。
【0074】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0075】
また、上記実施形態で説明した各種処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 蓄電システム
30 EMS
40 入力部
42 負荷不足電力算出部
44 候補目標値導出部
46 買電電力ピーク導出部
48 制御目標値決定部
50 運転モード選択部
図1
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図10