(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物を圧延する第一の工程と、第一の工程で圧延されたたばこ原料組成物からなる薄板状の層の上面と下面の両面に水溶性可食フィルムを貼合ローラにより貼合する第二の工程と、第二の工程で得られるたばこ原料組成物と水溶性可食フィルムの積層体を切断または裁断する第三の工程を含む、スヌース製品用の口腔用たばこの原料チップの製造方法。
たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物を圧延する第一の工程と、第一の工程で圧延されたたばこ原料組成物からなる薄板状の層の上面と下面の両面に水溶性可食フィルムを貼合ローラにより貼合する第二の工程と、第二の工程で得られるたばこ原料組成物と水溶性可食フィルムの積層体を切断または裁断して口腔用たばこの原料チップを得る第三の工程と、第三の工程で得られた薄板状の口腔用たばこの原料チップを包装材に充填する第四の工程を含む、スヌース製品用の口腔用たばこの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、無煙タバコである口腔用たばことして、たばこ粉粒体を直接口腔に含んで香味を楽しむスナッフ(Snuff)が知られていた。しかし近年では、使用者の扱い易さを向上させた口腔用たばことして、スヌースと呼ばれる製品が広く知られている。スヌースは、たばこ粉粒体と水等を含む組成物を口腔用たばこ原料とし、これを不織布などを材料とする包装材に入れたパウチを一つの単位としている。そして複数のパウチを容器に入れたものがスヌースの製品として販売されている。
スヌースの単位を構成する、たばこ粉粒体と水等を含む組成物からなる口腔用たばこ原料(以下、単に口腔用たばこ原料ともいう)は、使用者の製品の使用性を考慮して、比較的高い含有量で水を含有する。これにより、口腔用たばこ原料の流動性が悪くなり、スヌースの製造工程において該口腔用たばこ原料が扱いにくいという難点があった。
【0003】
これを解決するために、口腔用たばこの製造方法に着目する試みとして、これまで大きく2方向の技術検討がなされてきている。
一つ目の方向は、水を高い含有率で含む口腔用たばこ原料を安定的に送出するための機構の検討である(例えば、特許文献1、2及び3参照)。これらの特許文献は、主に一定容積の、例えば、円筒形状等の空隙(枡)に口腔用たばこ原料を落とし込み、その後、圧空や突き棒で口腔用たばこ原料を送り出す機構およびその利用方法を開示している。特許文献4及び5は、口腔用たばこ原料を搬送するためのドラム上で口腔用たばこ原料の吸いつけと吹き飛ばしを行う機構およびその機構部周辺をフラッシングする方法を開示している。
一方、二つ目の方向は、水を高い含有率で含む口腔用たばこ原料自体の性状を改善するための検討である。特許文献6及び7は、口腔用たばこ原料を圧縮ドラムあるいは圧縮ベルトで押し固めて送り出す機構を開示している。
特許文献8は、口腔用たばこ原料を板状に成形して型で打ち抜く方法を開示している。
【0004】
また、スヌースの単位を構成する上記口腔用たばこ原料中の水の含有量が高いことに起因して、不織布に上記口腔用たばこ原料の水が染み出すことで、パウチの外観が損なわれるという問題もあった。
これについて、特許文献9は、たばこ粉粒体と水を含有する組成物を、包装材に入れてシールする前に0℃以下に冷却する工程を含むパウチの製造方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2及び3に記載の方式は、実質的に水分が20〜30重量%前後の口腔用たばこ原料への利用は可能であるが、水分が50重量%前後のものについては、これをパウチ製造装置の口腔用たばこ原料を投入するための空隙に落とし込む際に、その量が安定せず、送り出された後は、下流の搬送用チューブなどの経路で口腔用タバコ原料が詰まりやすい問題がある。
特許文献4及び5に記載の方法は、前記の方法と比較して、高含有量で水を含む口腔用たばこ原料への利用も可能であるが、パウチ製造装置において、口腔用たばこ原料が吸引される吸い付け部の詰りやドラム内部への入り込みのおそれがあり、装置の構造が複雑で保守を含めると高コストとなる。
特許文献6及び7に記載の方法は、1パウチ分の口腔用たばこ原料からなる成形片を得ることを目的としており、口腔用たばこ原料の扱いやすさは改善されるものの、この方法で得られた口腔用たばこ組成物を含むパウチは、スヌースの使用者に成形片の塊としての違和感を与える。また、特許文献6に記載の方法では、口腔用たばこ原料を圧縮するための機構と、排出するための機構をドラム内部に備える必要があるため複雑で高価となり、構成部品も必然的に増加するため、清掃容易性すなわち清浄性が低下するおそれがある。特許文献7に記載の方法では、口腔用タバコを搬送するためのベルトの形状によって成形片の裁断サイズが決まるため、成形片のサイズを変更する場合には上記ベルトおよび該ベルトを走行させるプーリーなどを交換しなければならない問題もある。
特許文献8に記載の方法は、多糖類などを口腔用たばこ原料に混ぜて固まりやすくし、厚さ5mm、直径12mm程度に打ち抜いた後に乾燥して固定するため、特許文献6や7に記載の成形片と同様に、使用者に成形片の塊としての違和感を与える。
特許文献9に記載の方法では、口腔用たばこ原料を、包装材でシールする前に冷却する工程が必要となるため、パウチの製造において更なる一工程が必要になる。
【0007】
これらのことから、口腔用たばこの製造時の取扱いが容易であり、パウチとして包装された際に包装材に染みが生じず、使用者がパウチを口腔内に入れて使用する際に塊感を起こさせず、素早く香味が立ち上がる口腔用たばこ原料が求められており、そのような口腔用たばこ原料を製造する方法と、その口腔用たばこ原料を用いて、口腔用たばこを低コストで安定して得るための方法が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、口腔用たばこの製造時の取扱いが容易であり、パウチとして包装された際に包装材に染みが生じず、使用者が該パウチを口腔内に入れて使用する際に使用者に塊感を起こさせず、素早く香味が立ち上がる口腔用たばこ原料と、そのような口腔用たばこ原料を製造する方法と、その口腔用たばこ原料を用いて、口腔用たばこを低コストで安定して得るための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が鋭意検討した結果、たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物と水溶性可食フィルムとが積層されてなる口腔用たばこの原料チップであって、該口腔用たばこの原料チップの外面は、前記たばこ原料組成物からなる面と、前記フィルムからなる面とから構成されていることを特徴とする、口腔用たばこの原料チップが、上記課題を解決できることがわかり本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物と水溶性可食フィルムとが積層されてなる口腔用たばこの原料チップであって、該口腔用たばこの原料チップの外面は、前記たばこ原料組成物からなる面と、前記フィルムからなる面とから構成されていることを特徴とする、口腔用たばこの原料チップ。
[2] 前記たばこ原料組成物からなる層の平均厚さが1〜5mmであることを特徴とする、[1]に記載の口腔用たばこの原料チップ。
[3] 前記水溶性可食フィルムの厚さが、前記たばこ原料組成物からなる層の平均厚さに対して1/20〜1/100であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の口腔用たばこの原料チップ。
[4] 前記水溶性可食フィルムが、プルラン、グアーガム、大豆、寒天、セルロース、アルギン酸、カラギーナン、ペクチン、アミロース、アミロペクチン、ゼラチン及びカゼインからなる群から選ばれる1以上を含むフィルム原料からなるフィルムであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の口腔用たばこの原料チップ。
[5] 前記フィルム原料が、さらに香料を含むことを特徴とする、[4]に記載の口腔用たばこの原料チップ。
[6] 前記香料が、たばこの微粉末及びたばこの抽出物の一方または両方を含むことを特徴とする、[5]に記載の口腔用たばこの原料チップ。
[7] 形状が四角柱または円筒形であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の口腔用たばこの原料チップ。
[8] 前記添加剤として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される1以上を含むことを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の口腔用たばこの原料チップ。
[9] たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物を圧搾する第一の工程と、第一の工程で圧搾されたたばこ原料組成物にフィルムを積層する第二の工程と、第二の工程で得られるたばこ原料組成物とフィルムの積層体を切断または裁断する第三の工程を含む、口腔用たばこの原料チップの製造方法。
[10] 前記第一の工程の圧搾の圧力が2MPa以上であることを特徴とする、[9]に記載の製造方法。
[11] たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物を圧搾する第一の工程と、第一の工程で圧搾されたたばこ原料組成物にフィルムを積層する第二の工程と、第二の工程で得られるたばこ原料組成物とフィルムの積層体を切断または裁断して口腔用たばこの原料チップを得る第三の工程と、第三の工程で得られた口腔用たばこの原料チップを包装材に充填する第四の工程を含む、口腔用たばこの製造方法。
[12] 前記第一の工程の圧搾の圧力が2MPa以上であることを特徴とする、[11]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、口腔用たばこの製造時の取扱いが容易であり、パウチとして包装された際に包装材に染みが生じず、使用者が該パウチを口腔内に入れて使用する際に使用者に塊感を起こさせず、素早く香味が立ち上がる口腔用たばこ原料と、そのような口腔用たばこ原料を製造する方法と、その口腔用たばこ原料を用いて、口腔用たばこを低コストで安定して得るための方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0014】
本発明の口腔用たばこの原料チップ(以下、単に原料チップともいう)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の口腔用たばこの原料チップは、たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物1と水溶性可食フィルム2とが積層されてなり、該口腔用たばこの原料チップの外面は、前記たばこ原料組成物からなる面と、前記水溶性可食フィルム(以下、単にフィルムともいう)からなる面とから構成されている。このような構成を有することにより、原料チップが包装されたパウチを使用者が口腔内に入れた場合、香味感の立ち上がりが良好となる。
また、口腔用たばこの製造時において、その原料チップの流動性が良好であることにより取り扱いが容易となるため、口腔用たばこの製造工程で使用する装置に複雑な機構等を必要とせず、装置等の取扱いや清掃が容易になり、トラブルが生じにくくなる。
【0015】
本願発明でいう原料チップの外面には、フィルムの切断または裁断面は含まれない。
図1を参照した場合、
図1−(a)は、原料チップの外面のうち、側面はたばこ原料組成物1からなる面からなり、外面のうち上面と下面がフィルム2からなる態様を示す。一方、
図1−(b)の場合は、原料チップの外面は、フィルム2からなる円筒の側面と、たばこ原料組成物1が露出している円形の断面からなる態様を示す。
本発明の原料チップの外面において、たばこ原料組成物からなる面(たばこ原料組成物が露出している面)の面積は、原料チップの総外面積に対して0.1〜0.8の割合であることが好ましく、0.2〜0.5の割合であることが特に好ましい。このような割合でたばこ原料組成物からなる面が存在することで、原料チップの流動性と、パウチの使用時におけるたばこの香味の立ち上がりが良好なものとなる。この面積の割合については、後述する原料チップの製造工程において、原料チップの形状、大きさを変更することで調整可能である。
【0016】
原料チップの形状としては、後述する口腔用たばこの原料チップの製造方法において、圧搾手段として
図2に記載のような圧搾ローラ4を用いることにより、得られるたばこ原料組成物の成形物が薄板状のものである場合、以下のようなものが挙げられる。
たばこ原料組成物とフィルムが積層してなる積層体を切断または裁断する工程で、その切断または裁断手段を適宜変更することで、様々な形状を得ることができ、例えば、上記積層体を切断する手段として、縦方向のスリットと横方向のスリットを加える手段を用いた場合には、
図1−(a)で示されるような四角柱の形状が一態様として挙げられる。
この態様において、フィルムの面は長方形であっても正方形であってもよく、台形のような形状であってもよい。
また、上記裁断する手段として、打ち抜きプレスのような手段を用いた場合には、フィルム面を所望の形状で打ち抜くことで、得られる原料チップの形状を、フィルム面側から見て、円形(略円形も含む)、多角形、曲線と直線で囲まれた形状など、適宜変更することもできる。
一方、後述する口腔用たばこの原料チップの製造方法において、圧搾手段として押出し成形機のような手段を用いることにより、得られるたばこ原料組成物の成形物が円筒状などのものである場合、円筒状に成形されたたばこ原料組成物にフィルムが積層されてなる積層体を切断するスリットの角度を適宜変更することで、該積層体の断面が
図1−(b)のような円形(略円形も含む)や楕円形のものを得ることができ、得られる原料チップの形状としては、底面が平行でないものを含む円筒形のものが得られる。
押出し成形機の吐出口の形状を適宜変更すれば、断面が円形状のものだけでなく、多角形のものや、曲線と直線で囲まれた形状のものなども得られる。
【0017】
原料チップにおいて、たばこ原料組成物からなる層の平均厚さは、1〜5mmであることが好ましい。1mm未満であると、均一な厚さでシート成形することが難しくなる傾向があり、5mmを超えると、成形物がひび割れなどを起こしやすくなる。さらに、その平均厚さは1〜3mmであることがより好ましい。たばこ原料組成物からなる層の平均厚さがこの範囲にあることで、原料チップの強度が好適に保たれるほか、香味の立ち上がりを良好に保つことができる。
なお、本発明でいうたばこ原料組成物からなる層の平均厚さは、
図1−(a)のようなたばこ原料組成物からなる層が薄板状である場合、このたばこ原料組成物からなる層の平均厚さをいう。一方、
図1−(b)のようなたばこ原料組成物からなる層が円筒状のものであり、たばこ原料組成物からなる層(断面)が円形(略円形)である場合は、円相当径の直径の平均値をいい、これが楕円形である場合は、短径の平均値をいう。断面が円形乃至楕円形でない場合、断面の投影面積円相当径の直径の平均値を平均厚さとする。
断面が側面と垂直でない場合には、円柱の側面と垂直に切断した場合の断面に基づき厚さを決定する。ここでいう平均とは算術平均をいう。
【0018】
原料チップの大きさは、その取扱いやすさの観点から、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であるとより好ましい。なお、本発明でいう原料チップの大きさとは、
図1−(a)のようにフィルム面が正方形乃至長方形のものである場合は、その一辺乃至長辺の長さをいい、
図1−(b)のような円筒形状のものである場合には、その2つの切断面間の最大長さをいう。
薄板状のたばこ原料組成物にフィルムが積層された積層体を打ち抜き等により、原料チップを作製する場合には、フィルム面上における最大長さを原料チップの大きさとする。
【0019】
本発明の口腔用たばこの原料チップは、上記のとおりたばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物とフィルムとが積層されてなるものである。
上記のたばこ原料組成物に含まれるたばこ粉粒体は、たばこ原料組成物全量に対して20〜60重量%含まれることが好ましく、30〜50重量%含まれることが特に好ましい。ここでのたばこ粉粒体の重量は乾燥重量であるが、製造時には、組成物における最終的な水の含有量が以下の範囲を満たすように調整すれば、予め水分を含むたばこ粉粒体を用いることができる。
たばこ原料組成物に含まれる水は、たばこ原料組成物全量に対して20〜60重量%含まれることが好ましく、25〜55重量%含まれることが特に好ましい。
そして、たばこ原料組成物に含まれる添加剤は、たばこ原料組成物全量に対して、0.5〜5重量%含まれることが好ましく、1〜3重量%含まれることが特に好ましい。そして、たばこ粉粒体の乾燥重量に対して、1〜6重量%含まれることが好ましく、2〜5.5重量%含まれることが特に好ましい。
たばこ原料組成物における各材料が上記のような重量範囲で配合されていることにより、たばこ原料組成物を積層する際の成形性に優れ、また、作製される原料チップを内包するパウチを使用者が使用した際に、良好な香味を使用者に付与することができる。
また、たばこ原料組成物には、当該技術分野で通常用いられている香料を含有させてもよく、その含有量は、たばこ原料組成物全量に対して0.5〜3重量%含ませることが好ましい。そして、たばこ粉粒体の乾燥重量に対して、1〜5重量%含ませることが好ましい。
さらに、たばこ原料組成物には、当該技術分野で通常用いられている保湿剤を含有させてもよく、その含有量は、たばこ原料組成物全量に対して、3〜10重量%含ませることが好ましい。そして、たばこ粉粒体の乾燥重量に対して、5〜15重量%含ませることが好ましい。
【0020】
本発明でいうたばこ粉粒体は、葉たばこを裁断等の加工を行って得られるラミナとステムとを、それぞれ粉砕して得られる粉粒体からなるものであり、その粒子サイズとして、ラミナは1.2mmのメッシュを通過してものであることが好ましく、1.0mmのメッシュを通過したものであることがより好ましい。一方、ステムにおいては粒子サイズが0.8mmのメッシュを通過したものであることが好ましく、0.6mmのメッシュを通過してものであることがより好ましい。
たばこ粉粒体に含まれるラミナとステムの粒子サイズが上記のものであることで、たばこ粉粒体を含む組成物からなる層の成形性がより改善される。さらに、粒子サイズが大きい粉粒体よりも小さい粉粒体であるほうが、これを含む口腔用タバコの使用時に、口中でのなじみもよく、使用感が向上する。
一方、これらの粒子サイズを大きくした場合、たばこ粉粒体同士の凝集性が低下するため、たばこ粉粒体を含む組成物からなる層の成形後にもろくなる傾向にある。
【0021】
たばこ粉粒体含まれるラミナの粉粒体とステムの粉粒体は、ラミナの重量を1とした場合、1:0.5〜1:2の割合であることが香味のバランスを良好に保つ観点から好ましく、1:0.8〜1:1.2であることが特に好ましい。
たばこの種類については特に限定されるものではないが、バーレー種、黄色種、オリエント種、在来種等が好ましく用いられる。これらの粉粒体をブレンドしたものも好ましく用いられる。
【0022】
たばこ原料組成物に積層されるフィルムの厚さは、たばこ原料組成物からなる層の平均厚さに対して1/20〜1/100であることが好ましい。具体的な厚さとしては、10〜150μmであることが好ましい。
フィルムの厚さが、たばこ原料組成物からなる層の平均厚さに対して1/100よりも薄くなると、口腔用たばこの使用中におけるフィルムの溶解性は向上するため、たばこ等の香味の放出は良好となるものの、後述する積層工程でのフィルムやその原料の扱いに高度な慎重さが要求されたり、積層した後のたばこ原料組成物とフィルムの積層体の強度が低下するため、積層工程中で崩壊しやすくなるおそれがある。
一方、フィルムの厚さが、たばこ原料組成物からなる層の平均厚さに対して1/20を超えて厚くなると、後述の積層工程でのフィルムの繰り出しやすさや積層した後のたばこ原料組成物とフィルムの積層体の強度は向上するが、口腔用たばこの使用中におけるフィルムの溶解性が低下するため、たばこ香味の放出に遅延を招いたり、口中での違和感の原因となるおそれがある。
フィルムの厚さは、たばこ原料組成物からなる層の平均厚さに対して1/25〜1/75であることがより好ましい。具体的な厚さとしては、15〜80μmであることがより好ましい。このような範囲にあることで、口腔用たばこの使用時における香味の立ち上がりや使用感と、製造工程において必要とされる上記積層体の強度を適切なものにすることができる。
【0023】
本発明でいう水溶性可食フィルムは、口腔用たばこの原料チップの製造時には脆くなったり破れたりはせず、原料チップが内包されたパウチを使用者が口に入れた際に溶解するものである。
本発明で用いることのできる水溶性可食フィルムには、多糖類系のプルラン、グアーガム、大豆多糖、寒天、セルロース、アルギン酸、カラギーナン、ペクチンなどを原料とするフィルム、デンプン系のアミロース、アミロペクチンなどを原料とするフィルム、タンパク質系のゼラチン、カゼインなどから選ばれる1以上を含む原料からなるフィルムを選択することができる。
この中でも、多糖類系のプルランフィルムなどはしなやかで良好な被覆としての強度を有し、一方で、これを用いた原料チップが内包されたパウチを使用者が口に入れた際には、溶解性を得ることができる。
【0024】
また、上記水溶性可食フィルムには、予め香料などの香味成分を分散混合させておいてもよく、その場合、一般的な香料の他に、たばこの微粉末及びたばこの抽出物の一方または両方などを使用することもできる。例えば、加工処理されたたばこを粒子サイズが約10μmとなるように調製して得られる微粉末を、フィルムに対して1〜2重量%分散混合させたフィルムを使用した場合、これを用いた原料チップを内包するパウチの使用初期に、原料チップのたばこ露出面(たばこ原料組成物からなる層)から放出される香味に加えて、フィルムからもたばこ香味が放出されるようになるため、使用者がより良好な香味を味わうことができる。
【0025】
たばこ原料組成物に加える添加剤には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびこれらの混合物などの食品用添加物を使用することができる。
また、たばこ粉粒体にはたばこ原料組成物からなる層の成形後の形状保持性を向上させるためにたばこ粉粒体の乾燥重量に対して0.5〜5重量%程度の結着剤を加えてもよい。
結着剤を多量に加えた場合には成形性は改善するものの、しなやかさが低下するとともに使用中に口腔内でなじみにくい傾向となる。結着剤には、セルロース、セルロース塩、アルギン酸塩、あるいはペクチン、プルラン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガムおよびこれらの加工物、またはこれらのいずれかの混合物などの食品用増粘剤が使用できる。
【0026】
本発明の口腔用たばこの原料チップの製造方法は、たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物を圧搾する第一の工程と、第一の工程で圧搾されたたばこ原料組成物にフィルムを積層する第二の工程と、第二の工程で得られるたばこ原料組成物とフィルムの積層体を切断または裁断する第三の工程を含む。
ここで、本発明の口腔用たばこの原料チップの製造方法で用いられるたばこ原料組成物及びフィルムについては、前述した本発明の口腔用たばこの原料チップで用いられるものと同じものを用いることができる。
【0027】
図2を参照して説明すると、第一の工程では、たばこ原料組成物を供給するための供給機3(パイプフィーダ式供給機)から、たばこ原料組成物が圧搾ローラ4に供給され、これが圧搾されて薄板状の成形物(層)が成形される。なお、本発明において、「圧搾」には圧延や押出しの概念も含まれる。
圧搾ローラでは、約2MPa以上の圧力をたばこ原料組成物に加えることが好ましい。本発明で好ましく用いられている、粒子サイズが1.2mm以下のたばこ粉粒体と、水を組成物全量に対して50重量%程度含むたばこ原料組成物を用いた場合、これよりも低い圧力で圧搾した場合には成形性が低下してもろくなるため、後述するフィルムの積層工程に送られたときに断片状(不連続)となり、均一な製品が得られにくくなる。圧力の上限については特に制限されないが、たばこ原料組成物の層の成形性を考慮して適宜設定できる。
また、当然のごとく、組成物の水の含有量が組成物全量に対して50重量%よりも低い場合にもたばこ原料組成物の成形性は低下する傾向にあるため、この場合には圧搾圧力を高める調整が必要になる。
図示していないが、
図1−(b)のような形状の原料チップを得る場合には、前記の圧搾ローラに替えて、押出し成形機を使用することもできる。この場合においても、たばこ原料組成物を薄板状に押出すこともできるし、円筒状を初め、その他の形状に押出すこともできる。
【0028】
第一の工程で圧搾されたたばこ原料組成物に、第二の工程でフィルムが積層される。第二の工程において、フィルムの積層は、
図2に示されるような機構を用い、貼合ローラ8によりフィルムをたばこ原料組成物に貼合することで行うことができる。このような態様において、
図2に示されるように、たばこ原料組成物からなる層の上面と下面の両面にフィルムが貼合される態様が好ましい。たばこ原料組成物の上面と下面の両面にフィルムが貼合されることで、作製される原料チップを不織布等の包装材に充填した際に、染み出しによる汚染を好適に防ぐことができる。
貼合ローラ8は、たばこ原料組成物の成形物の性状および貼合するフィルムの種類や厚さに対応して、貼合圧力や温度を調節可能な構造としてもよい。さらに、フィルムの経路に調湿槽や温調槽を設置し、予めフィルムの柔軟性や貼り付き性を調節してもよい。貼合した後に、フィルム表面に収縮や剥離が起こらない程度に軽い加熱を加えて、送りベルト10との分離性などを改善することもできる。
一方、第一の工程で圧搾ローラを用いず、押出し成形機等を用いてたばこ原料組成物の成形物(層)を成形する場合には、フィルムを溶液の状態でたばこ原料組成物の成形物の外周に同軸で押出し、フィルム溶液が迅速に固定する程度に乾燥させて、積層させることもできる。
特に図示していないが、圧搾ローラ4や貼合ローラ8にはスクレッパーやガイド等を設置して材料の剥離性や連続性を改善することができる。また、材料に応じて生産性や品質をより適切に調節するために、ローラの温度を調節可能な構造としてもよい。
【0029】
第二の工程で、たばこ原料組成物とフィルムが積層されて得られる積層体を第三の工程で切断または裁断する。この第三の工程(スリット工程ともいう)では、
図1で例示されるように、丸型回転刃などによる縦方向スリットのあと、上下に往復する裁断刃による横方向スリットを加えるが、円周上に複数の長刃を配した円筒型回転刃に置き換えてスリットすることもできる。さらに、複数の丸型回転刃を横方向に往復させてスリットすることもできる。これらの刃はその間隙を調整することによって、原料チップの大きさを所望のものにすることができる。
さらに、それぞれのスリットは直線状以外の例えば波型などの形状とすることができ、横方向スリットは縦方向スリットに直交する配置あるいは直交しない配置とすることができる。
また、スリットではなく、打ち抜き手段によって、積層体を所望の形状で打ち抜いて裁断することで、原料チップを得ることもできる。
また、切断または裁断後の材料の離脱性を改善するために、スクレッパーなどのかき取り機構を設けることもできる。
押出し成形機等を用いて成形されたたばこ原料組成物の外周にフィルムを形成した成形物の場合には回転刃や往復刃で原料チップに切断することができる。
【0030】
前記の工程では、複雑で微細な可動機構等を有しない、単純な構成を選択することができ、清掃の容易性即ち清浄性の維持も容易となる。
【0031】
本発明の口腔用たばこの製造方法は、たばこ粉粒体、水及び添加剤を含むたばこ原料組成物を圧搾する第一の工程と、第一の工程で圧搾されたたばこ原料組成物にフィルムを積層する第二の工程と、第二の工程で得られるたばこ原料組成物とフィルムの積層体を切断または裁断して口腔用たばこの原料チップを得る第三の工程と、第三の工程で得られた口腔用たばこの原料チップを包装材に充填する第四の工程を含む。
上記の第一の工程、第二の工程、第三の工程は、口腔用たばこの原料チップの製造方法と同様である。
また、本発明の口腔用たばこの製造方法で用いられるたばこ原料組成物及びフィルムについては、前述した本発明の口腔用たばこの原料チップで用いられるものと同じものを用いることができる。
上記の第四の工程は、図示していないが、例えばパイプフィーダー式自動計量機を介して、原料チップを包装材に充填する工程である。この際、原料チップの供給量を調整して、パウチに充填する原料チップの量を調整できる。包装材に原料チップが充填された後、ヒートシールなどの手段によりシールしてパウチを得る。
包装材としては特段の限定なく用いることができるが、セルロース系の不織布などが好ましく用いられる。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例によって、さらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0033】
図1で一例として示したように、口腔用たばこの原料チップの製造には、まず、たばこ粉粒体を含むたばこ原料組成物が層となるように成形する工程として、たばこ原料組成物を薄板状に成形するための第一の工程(圧搾工程)を使用することができる。次に、たばこ原料組成物の成形物の表裏にフィルムを積層するための第二の工程(積層工程)、次いで、フィルムが積層された積層物を切断または裁断するための第三の工程(スリット工程)を使用することができる。また、口腔用たばこであるパウチを製造するために、第三の工程で得られた切断または裁断された積層物(原料チップ)をパウチに充填するための第四の工程を使用することがきる。これらの工程を使用した実施例を説明する。
【0034】
黄色種たばこのラミナおよびバーレー種たばこのラミナを、それぞれ粒子サイズが1.2mm以下となるように粉砕して1:2の重量割合でブレンドしたものと、黄色種たばこのステムおよびバーレー種たばこのステムを、それぞれ粒子サイズが0.8mm以下となるように粉砕して1:2の重量割合でブレンドしたものとを、1:1の重量割合で混合して混合物1を得た。
次いで、以下の方法により混合物2を得た。混合物1に水、塩化ナトリウムを混合物1の乾燥重量に対して5重量%、添加剤として炭酸ナトリウムを混合物1の乾燥重量に対して4重量%となるように添加し、水の含有量が混合物2の全量に対して約33重量%になるように調製した。
次いで、以下の方法によりたばこ原料組成物を得た。100℃のオートクレーブで3時間以上加熱し、常温まで冷却して得られた混合物2に水、混合物1の乾燥重量に対して12重量%の保湿剤、結着剤として混合物1の乾燥重量に対して1重量%のグアーガム、混合物1の乾燥重量に対して3重量%の香料を加えて水分がたばこ原料組成物全量に対して約50重量%になるように調製し、たばこ原料組成物を得た。なお、このたばこ原料組成物には、たばこ原料組成物全量に対してたばこ粉粒体(混合物1)が40重量%含有されており、添加剤がたばこ原料組成物全量に対して1.6重量%含有されている。
【0035】
このたばこ原料組成物をパイプフィーダー式供給機により2本の圧搾ローラ上に供給し、ローラ間の押し付け圧力を約4MPaに制御しながら、たばこ原料組成物の平均厚さが約1.1mmになるように圧搾成形した。
次いで、たばこ原料組成物の成形物の表面および裏面に、たばこ原料組成物からなる層の厚さの1/44の厚さ(25μm)を有するプルランを原料とする水溶性可食フィルムを貼合により積層して坪量約1,200g/m
2の積層体を得た。
次いで、この積層体を長さ5mm、幅5mm程度にスリットして、プルランの面がほぼ正方形状で、しなやかな感触を有する口腔用たばこの原料チップを得た。このときの原料チップの総外面積に対するたばこ原料組成物からなる面の面積の比は約0.3であった。
次いで、得られた原料チップのベタツキや流動性の違いを調べるために、得られた原料チップ約300gと、原料チップにしていないたばこ原料組成物約300gをそれぞれビーカーに入れて30分程度放置し、その後、ビーカーを傾けてその排出状態を観察した。たばこ原料組成物は均一に排出し難く凝集している様子が見られたが、原料チップは比較的均一に流出し、原料チップ同士の凝集は見られなかった。
次に、得られた原料チップをパイプフィーダー式自動計量機を介してパウチ包装機に供給し(包装材として不織布を使用)、1パウチあたり約0.6gの原料チップを充填したスヌース(SNUS)パウチを得た。パウチの外観には染みなどの汚染は見られなかった。
次に、得られたパウチを口腔に入れて使用したところ、塊感のような特別な違和感はなく、フィルムが溶解するに伴って良好なたばこ香味の染み出しを得た。
【0036】
本発明の口腔用たばこの原料チップの一定量を、不織布などからなる包装材に入れて、パウチとしたSNUS製品を作製し、使用者が使用すると、原料チップのたばこの露出面から香味が迅速に放出されるとともに、口中でなじんでフィルムが溶解し、原料チップが崩壊しながら更に香味を放出する。
パウチの使用中、最終的にはフィルムが完全に溶解して原料チップは一体化する。したがって、1パウチ分のたばこ原料組成物をブロック状に加工したもの等に比較して、塊感のような違和感がなく、口腔内でなじみ易く、香味の立ち上がりや使用感にも優れる。
また、口腔用たばこの製造の際に、パウチの包装サイズやパウチへの原料チップの充填量を変更する場合、原料チップの供給量を変更するだけでよく、成形ドラムの成形サイズを調整したり、成形ベルトを交換したりする必要がない。また、装置が複雑化せず、機械的なトラブルが生じにくくなり、清掃も容易になる。