特許第5995855号(P5995855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995855
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】塩基修飾オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160908BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20160908BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20160908BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20160908BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N15/00 G
   A61K31/7115
   A61K31/7125
   A61K48/00
【請求項の数】18
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-537906(P2013-537906)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-503192(P2014-503192A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011059588
(87)【国際公開番号】WO2012061810
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】61/410,672
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511268694
【氏名又は名称】ミラゲン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイグル,カート
(72)【発明者】
【氏名】ダルビー,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,ウィリアム エス.
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−304889(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0184209(US,A1)
【文献】 特表2010−533503(JP,A)
【文献】 特表2009−519339(JP,A)
【文献】 Mol Ther, 2006, vol.13, no. 3, p.494-505
【文献】 Nucleic Acids Res, 2003, vol.31, no.10, p.2514-2523
【文献】 J Intern Med, 2004, vol.255, no.2, p.188-205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2’修飾と、
b)ピリミジン塩基のC−5位におけるアミノカルボニル塩基修飾と、
の両方を有するヌクレオチドを少なくとも1つ含む、塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドであって、
前記オリゴヌクレオチドが約6〜約22ヌクレオチド長であって、1つまたは複数のホスホロチオエートリンケージを含み、
前記2’修飾が2’−OMeであり、前記アミノカルボニル修飾されたピリミジン塩基が以下の構造:
【化1】


(ここで、Rは、以下の
【化2】

からなる群から選択されるメンバーの少なくとも1つである)
を有する、塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドがヒトmicroRNAに高い親和性でハイブリダイズする、請求項1に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが約10〜約18ヌクレオチド長である、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記2’修飾と、前記アミノカルボニル修飾塩基との両方を有するヌクレオチドを2つ以上含む、請求項1に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記2’修飾と前記アミノカルボニル修飾塩基との両方を有するヌクレオチドを2〜約10有する、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが1つまたは複数の2’デオキシヌクレオチドを有する、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
5’および/または3’キャップ構造を有する、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチド配列が、miR−208a、miR−208b、miR−15b、またはmiR−21の完全長配列に実質的に相補的である、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチド配列が、表1に列記されたヒトmiRNAの完全長配列に実質的に相補的である、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
a)有効量の、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドと
b)薬学的に許容可能な担体または希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【請求項11】
細胞に接触させる、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記細胞内でmicroRNA活性を低減または阻害するための医薬組成物
【請求項12】
microRNAの発現に関連するかまたはそれにより媒介される対象の病状を予防または治療するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが完全ホスホロチオエート連結される、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記アミノカルボニル塩基修飾が、ウラシル塩基またはチミン塩基のC−5位におけるアミノカルボニル修飾である、請求項に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
前記アミノカルボニル塩基修飾が、ウラシル塩基のC−5位におけるアミノカルボニル修飾である、請求項1に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
Rが:

である、請求項1に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
Rが:

である、請求項1に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
Rが:

である、請求項1に記載の塩基修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年11月5日に出願された米国仮出願第61/410,672号(その全体を参照により本明細書に援用する)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、相補的ポリヌクレオチドに対する高い結合親和性を有する修飾オリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0003】
microRNA(miR)は、心臓機能の制御および維持を含む多くの生物学的プロセスに関与している(Van Rooij et al., ”MicroRNAs: Powerful New Regulators of Heart Disease and Proactive Therapeutic Targets,” J. Clin. Invest. 117(9):2369-2376 (2007)、Chien KR, ”Molecular Medicine: MicroRNAs and the Tell-tale Heart,” Nature 447:389-390 (2007))。したがって、miRは、とりわけ、心臓肥大、心筋梗塞、心不全、血管傷害、および病的心臓線維症(phatologic cardiac fibrosis)などの病状についての比較的新しいクラスの治療標的である。miRは、約18〜約25ヌクレオチドの長さの小さな、タンパク質をコードしない(non-ptotein coding)RNAであり、配列が完全に相補的である場合には分解を促進することにより、または配列がミスマッチを含む場合には翻訳を阻害することにより、標的mRNAのリプレッサーとして働く。その機序は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中への成熟miRNA鎖の導入(incorporation)を含み、ここで、塩基対の相補性によって標的RNAと会合する。
【0004】
miRNA機能は、アンチセンスポリヌクレオチドまたはmiRNA機能を模倣するポリヌクレオチド(「miRNAミメティック(mimetic)」)によって治療的に標的化され得る。しかしながら、オリゴヌクレオチド系作用剤によるmiRNAの治療的標的化は、RNA結合親和性および特異性、細胞内取込みの効率、ならびにヌクレアーゼ耐性を含むいくつかの難題を呈する。たとえば、ポリヌクレオチドを無傷の細胞に導入したとき、ヌクレアーゼによる攻撃および分解を受けて、活性が失われる。その分解を2’置換等によって回避しようとしてポリヌクレオチド類似体が調製されているが(Sproat et al., Nucleic Acids Research 17:3373-3386 (1989))、この修飾は、意図する生物学的作用に関するポリヌクレオチドの効力に影響を与えることが多い。そのような効力低下は、いずれの場合も、修飾ポリヌクレオチドが標的RNAと安定な二本鎖を形成できないことおよび/または細胞機構との相互作用が失われることに起因し得る。他の修飾は、RNA結合親和性(Veedu et al., ”Locked Nucleic Acid as a Novel Class of Therapeutic Agent,” RNA Biology 6:3, 321-323 (2009))を向上させる可能性を有するロックド核酸(locked nucleic acid)の使用を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
miRNA阻害剤のオリゴヌクレオチドの化学様式(chemistry pattern)またはモチーフは、阻害剤の送達、安定性、効力、特異性、および/または毒性プロフィールを改善する可能性を有しているので、治療場面においてmiRNA機能を効果的に標的化するのに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドとアミノカルボニル修飾塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドとを含むオリゴヌクレオチド、さらにはこの修飾オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物ならびにこのオリゴヌクレオチドの使用方法および合成方法に関する。
【0007】
一態様において、本発明は、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドとアミノカルボニル修飾塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドとを含むオリゴヌクレオチドを提供する。種々の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、二本鎖結合親和性の利点、特に、RNAノックダウン効率などの利点を提供する。いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、ヒトmiRNAのヌクレオチド配列に少なくとも実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、miRNA以外の哺乳動物転写物に少なくとも実質的に相補的であり、したがって、遺伝子発現のアンチセンス阻害に有用である。さらに他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、ヒトmiRNAの配列を含み、それにより、miRNA機能を模倣する。さらに他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、任意の従来のプラットフォームを用いたサンプル中の核酸のin vitro検出または定量のための検出プローブである。
【0008】
塩基修飾は、カルボキサミノ基、カルバモイル基、またはカルバミド基などのアミノカルボニルである。種々の実施形態において、修飾は、ピリミジン塩基のC−5位またはプリン塩基のC−8位である。本オリゴヌクレオチドの修飾アミノカルボニル基は、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および−(CH−NR〔式中、nは1〜6の整数であり、かつRおよびRは、独立して、HまたはC〜Cアルキルである〕であり得る基または置換基を含有するが、これらに限定されるものではない。例示的な部分は、ピペリジン、ピペラジン、モルホリノ、またはイミダゾールを含み、それぞれ、置換されていても非置換であってもよい。他の実施形態において、置換基は、C〜C20アルキルもしくはアルケニル、フェニル、またはアミンである。
【0009】
本オリゴヌクレオチドは、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態において、2’修飾は、C1〜6アルキル、2’O−アルキル(C1〜C6)、F、Cl、NH、CN、またはSHから独立して選択してもよい。他の可能な2’修飾は、本明細書の他の箇所に記載されている。例示的な2’修飾は、2’O−Meであり、これは、塩基修飾と一緒になって、オリゴヌクレオチドのTの相乗的上昇を提供し得る。さらに他の実施形態において、少なくとも1つのヌクレオチドは、糖をC3エンド配置にロックする2’−4’架橋である2’修飾を有する。非修飾2’位は、水素であり得る。
【0010】
修飾塩基を有するヌクレオチドの数は、さまざまであり得るが、特定の実施形態において、ヌクレオチドの少なくとも25%、またはヌクレオチドの少なくとも50%、またはヌクレオチドの少なくとも75%、またはヌクレオチドの100%である。いくつかの実施形態において、Tの上昇は、ヌクレオチドの50%未満またはヌクレオチドの25%未満などの比較的わずかな塩基修飾ヌクレオチドを用いて達成できる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、わずか1、2、3、または4つの塩基修飾ヌクレオチドを含有する。これらの実施形態における塩基修飾ヌクレオチドは、ウリジンやチミンなどのピリミジン塩基であってもよく、および/または2’O’Meなどの修飾を含んでいてもよい。すなわち、オリゴヌクレオチド(たとえば、約16ヌクレオチド)は、塩基修飾と2’OMe修飾とを有するヌクレオチドの単一導入を有し、非修飾2’位は、水素であり、あるいはLNAから独立して選択される。
【0011】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、キャップ(cap)修飾およびホスホロチオエートリンケージなどの骨格化学構造をさらに含む。
【0012】
本発明は、新規な塩基修飾2’−O−Meピリミジンがアンチセンスオリゴヌクレオチドに導入されたときにその相補的配列との二本鎖結合親和性の向上を示すという発見を含む。あるいは、ホスホロチオエート骨格修飾を有するこのピリミジン塩基修飾2’−OMeヌクレオチドは、トランスフェクション試薬を用いないときでさえも、細胞培養でそのmicroRNA標的配列に対する生物学的活性を示す。in vivo活性もまた、心臓組織で標的miRNAのノックダウンを示すモデルin vivo系を用いて、本明細書で実証される。
【0013】
他の態様において、本発明は、細胞でのRNAの発現または活性を低減または阻害する方法、RNAまたはその発現に関連するまたはそれにより媒介される対象の病状を予防または治療する方法、本明細書に記載の塩基修飾オリゴヌクレオチドを使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2’−OMe−ウリジンオリゴヌクレオチドの種々の塩基修飾についてT上昇量を示す表である。塩基修飾は、C5位のカルボキサミドリンケージであった。
図2】オリゴヌクレオチドに導入するための修飾単量体ヌクレオシドおよび対応するホスホロアミダイトの合成を示す。
図3図2のスキームを介して合成される親水性および疎水性のヌクレオシド修飾を例示しており、かつオリゴヌクレオチドでのいくつかの導入様式例を示す。
図4】LNA/DNA、2’−OMeホスホロチオエート(phoshorothioate)、およびDNAオリゴヌクレオチドに対するいくつかの塩基修飾についてT測定値を比較している。塩基修飾様式を示す。
図5】非修飾miR−208aRNAと二本鎖を形成したときの修飾抗miR−208aのT実験測定値の表である。オリゴヌクレオチドはすべて、ホスホロチオエートリンケージを含有し、+Uは、2’OMeを有する塩基修飾ヌクレオチドを表し、mは、2’OMeを表し、yUは、C18塩基修飾および2’OMeリボースを表し、lは、LNA修飾を表し、dは、DNAを表す。
図6】脂質トランスフェクション試薬を用いないラット一次新生仔心筋細胞での修飾抗miR−208aによるmiR−208aノックダウンを示している。
図7】bMHCレベルに追加された図6のmiR−208aノックダウンデータを示している。
図8】C57BL/6マウスにおける塩基修飾オリゴヌクレオチドのin vivo有効性のプロットである。プロットは、いくつかの修飾オリゴヌクレオチドについて生理食塩水注入を基準にした倍率変化を示している。
図9】ホスフェート骨格およびホスホロチオエート骨格の両方を用いた塩基修飾および糖修飾の蓄積効果を示している。
図10】塩基修飾および2’修飾の数に対するΔTのグラフであり、相乗効果を示している。
図11】修飾の数および骨格化学構造に基づく所定の塩基修飾のT効果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドとアミノカルボニル修飾塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドとを含むオリゴヌクレオチドに関する。本発明はさらに、このオリゴヌクレオチドの使用方法および合成方法に関する。
【0016】
ヌクレオシド塩基修飾に関する研究は、主に、遺伝子発現に及ぼす影響を調べることに限定されている。ある種の核酸塩基誘導体、特に、C−5プロピニル化ピリミジンは、DNA/RNA二本鎖(Znosko et al., J. Am. Chem. Soc.,125(20):6090-6097 2003))の親和性/二本鎖安定性の中程度の増加を呈するにすぎなかった。より複雑なペンダント官能基(既知のインターカレーターに関するもの以外)は、疎水性または立体効果の競合効果の可能性を考慮すると、オリゴヌクレオチド親和性を増大する可能性が低いと考えられる(Hashimoto et al., J. Am.Chem.Soc, 115( 16): 7128-7134 (1993))。糖改変と同様に、塩基修飾は、修飾を有するオリゴヌクレオチドに特有な疎水性および水素結合を全体的に変化させる可能性があり得、配列特異的RNA阻害に望ましくない作用である非カノニカル塩基対相互作用さえも引き起こす場合がある(Vaught et al., J, Am. Chem. Soc, 132(12):4141-4151 (2010))。
【0017】
一態様において、本発明は、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドとアミノカルボニル修飾塩基を有する少なくとも1つのヌクレオチドとを含むオリゴヌクレオチドを提供する。種々の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、二本鎖結合親和性の利点、特に、RNAノックダウン効率などの利点を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドはヒトmiRNAに少なくとも実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、miRNA以外の哺乳動物転写物に実質的に相補的または完全に相補的であり、したがって、遺伝子発現のアンチセンス阻害に有用である。さらに他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、miRNA機能を模倣するのに十分なヒトmiRNAの配列を含む。他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、マイクロアレイや他のハイブリダイゼーション系プラットフォームなどの任意の従来のプラットフォームを用いた、サンプル中の核酸のin vitro検出または定量のための検出プローブである。
【0019】
いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、約6〜約22ヌクレオチド長である。塩基、糖、および/または骨格修飾のうちの1つまたは複数を有する本明細書に開示されたオリゴヌクレオチドは、たとえば、8〜18ヌクレオチド長または12〜16ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、約8ヌクレオチド長、約9ヌクレオチド長、約10ヌクレオチド長、約11ヌクレオチド長、約12ヌクレオチド長、約13ヌクレオチド長、約14ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長、または約16ヌクレオチド長である。たとえば、本オリゴヌクレオチドがmiR−208aを標的化する場合、本オリゴヌクレオチドは、配列CTTTTTGCTCGTCTTA(配列番号64)を有し得る。
【0020】
塩基修飾は、一般的には、カルボキサミノ基、カルバモイル基、またはカルバミド基などのアミノカルボニルである。種々の実施形態における修飾は、1つもしくは複数のピリミジン塩基のC−5位および/または1つもしくは複数のプリン塩基のC−8位のものである。本オリゴヌクレオチドの修飾アミノカルボニル基は、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および−(CH−NR、〔式中、nは1〜6の整数であり、かつRおよびRは、独立して、HまたはC〜Cアルキルである〕であり得る基または置換基を含有するが、これらに限定されるものではない。
【0021】
たとえば、いくつかの実施形態において、基または置換基は、たとえば、ピペリジン、ピペラジン、モルホリノ、またはイミダゾールなどの窒素含有ヘテロ環であり、それぞれ、1、2、もしくは3つのアルキルもしくはアルケニル置換基(たとえば、C1〜8もしくはC1〜4)を有する置換または非置換であり得る。例としては、2−エチル、1−メチル−イミダゾール、3−プロピルイミダゾール、およびプロピルモルホリノが含まれ、それらは、図1に示される。他の実施形態において、基または置換基は、シクロアルキル(たとえば、C5〜C8)やフェニルなどの炭素環式基であり、任意に、1つまたは複数(たとえば、1、2、または3つ)のアルキルまたはアルケニル置換基(たとえば、C1〜8またはC1〜4)で置換されていてもよい。例としては、図6に示されるベンジルが含まれる。さらに他の実施形態において、基または置換基は、第二級または第三級アミンであり、たとえば、1または2つのアルキルまたはアルケニル置換基(たとえば、C1〜8またはC1〜4)を有するものである。例としては、図1に示されるプロピルジメチルアミノおよびエチルジメチルアミノが含まれる。いくつかの実施形態において、修飾アミノカルボニル基は、親油性または親水性置換基を含有し、いくつかの実施形態において、置換基は、カチオン性である。例としては、図1に示されるC6およびC18アルキルが含まれる。いくつかの実施形態において、基または置換基は、カルボキサミノリンケージを介してピリミジン塩基のC5位に結合され、任意に、1〜4炭素単位の連結基を有していてもよい。基または置換基は、本明細書の他の箇所に記載されるとおりであり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、塩基修飾は、正に荷電した基を含有し、任意に、ピペラジンのように生理学的条件下で複数の正電荷を有していてもよい。第一級、第二級、および第四級アミンもまた、好適な塩基修飾として使用できる。種々の実施形態において、塩基修飾は、より毒性の低い核酸塩基に代謝される可能性がより高いペプチドリンケージを含有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、塩基修飾ヌクレオチドは、配列の中間に導入される。たとえば、いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、5’および3’末端上の最後の1、2、または3ヌクレオチドには導入されない。生理学的条件下でカチオン性の部分は、Tの実質的上昇を提供できる。特に、6.5〜7.5の範囲内にpKaを有するイミダゾール誘導体およびモルホリン誘導体は、実質的な結合活性および生物学的活性を提供する。トリアルキルアミンもまた、有効であることが本明細書に示される。対象となる他のカチオン種は、グアニジン型の誘導体およびヒドラジン型またはヒドロキシルアミン型の誘導体を含む。類似のpKaに起因してモルホリンと同様に薬理学的に作用することが多いが、2つのカチオン中心を有する部分である置換ピペラジンもまた、注目に値する。また、ベンジル部分やアルキル部分などの疎水性置換は、Tを上昇させ、ヌクレアーゼ耐性を提供し、かつ/またはサイトゾル送達を支援できる。
【0024】
本発明によれば、生物学的活性およびT上昇は、部分的には、エンタルピー結合の増大に起因し、したがって、修飾オリゴヌクレオチドは、ミスマッチ識別を向上させる可能性を有するので、診断用途のプローブとして有用である。
【0025】
本オリゴヌクレオチドは、2’修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む。本明細書で用いられる場合、「2’修飾」という用語は、HやOH以外の任意の2’基を含む。たとえば、2’修飾は、C1〜6アルキル、2’O−アルキル(C1〜C6)、F、Cl、NH、CN、またはSHから独立して選択してもよい。他の可能な2’修飾は、本明細書の他の箇所に記載されている。例示的な2’修飾は、2’O−Meであり、これは、塩基修飾(たとえば、同一のヌクレオチドに導入された場合)と一緒になって、オリゴヌクレオチドのTの相乗的上昇を提供し得る。さらに他の実施形態において、少なくとも1つのヌクレオチドは、糖をC3エンド配置にロックする2’−4’架橋である2’修飾を有する。
【0026】
これらのまたは他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルコキシアルキルから選択される2’修飾を含有する。ただし、アルキル(アルコキシのアルキル部分を含む)、アルケニル、およびアルキニルは、置換されていても非置換であってもよい。アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、C1、C2、またはC3などのC1〜C10アルキル、アルケニル、またはアルキニルであってもよい。炭化水素置換基は、N、O、および/またはSから独立して選択され得る1または2または3つの非炭素原子を含んでいてもよい。2’修飾は、O−アルキル、O−アルケニル、およびO−アルキニルとして、アルキル、アルケニル、およびアルキニルをさらに含んでいてもよい。
【0027】
本発明による他の例示的な2’修飾には、2’−O−アルキル(C1〜3アルキル、たとえば、2’OMeもしくは2’OEt)、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)、または2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)置換が含まれる。
【0028】
本オリゴヌクレオチドは、記載の塩基修飾を有するいくつかのヌクレオチド、たとえば、1〜約10または約2〜約9ヌクレオチドを有していてもよい。いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、修飾塩基を有する(正確に)1、2、または3ヌクレオチドを含有する。本オリゴヌクレオチドはまた、2’位で修飾されたいくつかのヌクレオチドを独立して有していてもよい。すなわち、塩基修飾ヌクレオチドはまた、2’OMe修飾などの記載の2’修飾をも含有していてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1または2ヌクレオチドは、それぞれ上述の修飾塩基および修飾2’位の両方を有する。特定の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、2’OMe修飾と一緒になって、図1に示される塩基修飾を有する1ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、正確に1、2、または3つのそのような修飾ヌクレオチドを有する。
【0029】
2’修飾が2’−4’架橋である場合、2’修飾は、ロックド核酸(LNA)であり得る。LNAは、たとえば、米国仮出願第61/495,224号、米国特許第6,268,490号、米国特許第6,316,198号、米国特許第6,403,566号、米国特許第6,770,748号、米国特許第6,998,484号、米国特許第6,670,461号、および米国特許第7,034,133号に記載され、これらを全て全体を参照により本明細書に援用する。LNAは、「ロックされた(locked)」コンフォメーションおよび/または二環式構造をもたらすリボース糖部分の2’および4’炭素間の追加の架橋を含む、修飾されたヌクレオチドまたはリボヌクレオチドである。一実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、以下の構造Aにより示される構造を有する1つまたは複数のLNAを含む。あるいは、またはさらに、本オリゴヌクレオチドは、以下の構造Bにより示される構造を有する1つまたは複数のLNAを含んでいてもよい。代わりに、またはさらに、本オリゴヌクレオチドは、以下の構造Cにより示される構造を有する1つまたは複数のLNAを含む。
【化1】
【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドに導入できる他の好適なロックドヌクレオチドは、米国特許第6,403,566号および米国特許第6,833,361号に記載されるものが含まれ、これらの両方をその全体を参照により本明細書に援用する。
【0031】
本オリゴヌクレオチドは、少なくとも3、少なくとも5、または少なくとも7つのロックドヌクレオチドを含んでいてもよく、種々の実施形態において、完全にはロックドヌクレオチドで構成されない。いくつかの実施形態において、ロックドヌクレオチドの数および位置は、第61/495,224号(参照により本明細書に援用する)に、特に、miR−208ファミリー阻害剤に関して、記載されるとおりであってもよい。
【0032】
本オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の2’−デオキシヌクレオチドを有していてもよく、いくつかの実施形態において、2〜約10の2’−デオキシヌクレオチドを含み、いくつかの実施形態において、少なくとも1つまたはすべての塩基修飾ヌクレオチドは、2’デオキシである。
【0033】
修飾塩基を有するヌクレオチドの数は、さまざまであり得るが、特定の実施形態において、ヌクレオチドの少なくとも25%、またはヌクレオチドの少なくとも50%、またはヌクレオチドの少なくとも75%、またはヌクレオチドの100%である。本明細書に示されるようにいくつかの実施形態において、Tの上昇は、ヌクレオチドの50%未満またはヌクレオチドの25%未満などの比較的わずかな塩基修飾ヌクレオチドを用いて達成できる。しかしながら、ある実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、わずか1、2、3、または4つの塩基修飾ヌクレオチドを含み(たとえば、図1に示されるとおり)、そのような塩基修飾ヌクレオチドは、2’OMeなどの2’修飾をも含んでいてもよい。これらの実施形態において、塩基修飾ヌクレオチドは、いくつかの実施形態において、ウリジンやチミンなどのピリミジン塩基であってもよい。いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、2’OMeを有する塩基修飾オリゴヌクレオチドの単一導入を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、2’−OMeを有する少なくとも6つまたは少なくとも9つのヌクレオチドを含む。あるいは、すべてのヌクレオチド(またはいくつかの実施形態において、すべてのプリンまたはすべてのピリミジン)は、2’O−Meであってもよい。
【0035】
カチオンクラスのC−5修飾塩基は、2’−OMe−ウリジンのC−5位へのいくつかの親油性向上に加えて、実質的なT上昇を呈した(本明細書に示されるとおり)。対象のmiRNAへの単純なワトソン・クリック塩基対以外に、親油性部分およびカチオン性部分の両方を含む修飾混合物は、miRNAの活性を制御する細胞内の酵素およびタンパク質とすでに会合しているmiRNAに、より大きい効果を有し得る。このキメラヌクレオチドは、その相補的標的配列と会合し得るだけでなく、miRNAに関連するタンパク質の疎水性または親水性の領域とも相互作用し得る。
【0036】
特定の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの末端修飾または「キャップ」をさらに含む。キャップは、5’および/または3’キャップ構造であってもよい。「キャップ」または「末端キャップ」という用語は、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端における化学修飾(末端リボヌクレオチドに関して)が含まれ、5’末端の最後の2つのヌクレオチドおよび3’末端の最後の2つのヌクレオチドの間のリンケージにおける修飾が含まれる。本明細書に記載のキャップ構造は、RNA標的または細胞機構との分子相互作用を弱めることなく、エキソヌクレアーゼに対するオリゴヌクレオチドの抵抗性を増加することができる。そのような修飾は、in vitroまたはin vivoでの増加した効力に基づいて選択することができる。キャップは、5’末端(5’キャップ)または3’末端(3’キャップ)に存在してもよいし、あるいは両端に存在してもよい。特定の実施形態において、5’および/または3’キャップは、ホスホロチオエートモノホスフェート、脱塩基(abasic)残基(部分)、ホスホロチオエートリンケージ、4’−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、ホスホロジチオエートリンケージ、逆方向(inverted)ヌクレオチドまたは逆方向脱塩基部分(2’−3’または3’−3’)、ホスホロジチオエートモノホスフェート、およびメチルホスホネート部分から独立して選択される。ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートリンケージは、キャップ構造の一部である場合、5’末端の2つの末端ヌクレオチドおよび3’末端の2つの末端ヌクレオチドの間に通常位置する。
【0037】
特定の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの末端ホスホロチオエートモノホスフェートを有する。ホスホロチオエートモノホスフェートは、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’末端にあってもよい。ホスホロチオエートモノホスフェートは、以下の構造によって定義され、ここで、Bは塩基であり、Rは上記の2’修飾である。
【化2】
【0038】
ホスホロチオエートリンケージは、いくつかの実施形態において、たとえば(キャップ構造の一部などとして)5’および3’末端の最後の2つのヌクレオチド間に存在してもよいし、あるいはホスホジエステルリンケージで代替されてもよい。これらの実施形態または他の実施形態において、本ポリヌクレオチドは、5’および3’末端のいずれかまたは両端で少なくとも1つの末端脱塩基残基を含むことができる。脱塩基部分は、アデノシン、グアニン、シトシン、ウラシル、またはチミンなどの一般的に認知されるプリンまたはピリミジンヌクレオチド塩基を含まない。したがって、そのような脱塩基部分は、ヌクレオチド塩基を欠くか、または他の非ヌクレオチド塩基化学基を1’位に有する。たとえば、脱塩基ヌクレオチドは、逆脱塩基ヌクレオチドであってもよく、たとえば逆脱塩基ホスホロアミダイトが(3’アミダイトの代わりに)5’アミダイトを介して結合し、5’−5’リン酸結合となる。ポリヌクレオチドの5’および3’末端の逆脱塩基ヌクレオシドの構造を以下に示す。
【化3】
【0039】
本オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のホスホロチオエートリンケージを含んでいてもよい。ホスホロチオエートリンケージは、ヌクレアーゼ切断に対するポリヌクレオチドの耐性をより高めるために使用されている。たとえば、本ポリヌクレオチドは、部分的にホスホロチオエートリンケージしてもよく、たとえば、ホスホロチオエートリンケージは、ホスホジエステルリンケージで代替されてもよい。しかしながら、特定の実施形態において、本ポリヌクレオチドは、完全にホスホロチオエート連結される。他の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、1〜5つまたは1〜3つのホスフェートリンケージを有する。
【0040】
固相合成による修飾ポリヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの合成は、周知であり、Caruthers et al., ”New Chemical Methods for Synthesizing Polynucleotides,” Nucleic Acids Symp. Ser., (7):215-23 (1980)(その全体を参照により本明細書に援用する)に概説されている。
【0041】
本発明は、新規な塩基修飾2’−O−Meピリミジンが2’−OMeヌクレオチドに導入されたときにその相補的配列との二本鎖結合親和性の向上を示すという発見を含む(図1参照)。あるいは、ホスホロチオエート骨格修飾を有するこのピリミジン塩基修飾2’−OMeヌクレオチドは、トランスフェクション試薬を用いないときでさえも、細胞培養でそのmicroRNA標的配列に対する生物学的活性を示す。非接合2’−OMeホスホロチオエートヌクレオチドは、特別な3’および5’コンジュゲート(conjugate)を用いなければ、この特徴を呈しない。さらに、本明細書に示されるように、ホスホロチオエート骨格修飾を有するピリミジン塩基修飾2’−OMeヌクレオチドは、生理食塩水の注入後、心臓組織で標的miRNAのノックダウンを呈する(図8)。
【0042】
塩基のC−5位のペンダント修飾が疎水性または親水性のいずれかである一連のモデル化合物を合成した。構造は、図1〜3に含まれる。2’−OMe−ウリジンヌクレオシドのすべてがC−5疎水性修飾のみを含む抗miRNAオリゴヌクレオチドは、非修飾2’−OMe−ウリジンを有するヌクレオチドと比較して、二本鎖のTを中程度に上昇させる。これらのヌクレオチドは、脂質トランスフェクション試薬を用いたときと用いなかったときの両方で、細胞培養実験でmiRNA阻害に関して実質的な利点を提供しなかった(図6および7)。これとは対照的に、ウリジンのすべてがC−5上に親水性アミン(カチオン性)含有ペンダント基を単独で含む抗miRNAヌクレオチドは、Tの大きい上昇を示した(図4〜6)。さらに、これらの修飾を含むヌクレオチドを用いた細胞培養実験では、脂質トランスフェクション試薬やコンジュゲートの不在下でさえも、miRNA標的を阻害する能力などの特有の生物学的性質が示される。また、疎水性およびカチオン性の塩基修飾の組合せを有するいくつかのヌクレオチドは、良好な抗miRNA活性を呈したことにも注目されたい。
【0043】
理論に束縛されるものではないが、これらのピリミジン塩基修飾は、得られるRNA二本鎖の極性主溝(major groove)との相互作用を介して結合親和性を向上させると考えられる。本明細書に記載のヌクレオシドは、たとえば、ピリミジン塩基にクロスコンジュゲートされたカルボキサミド修飾を介して、修飾され、他の核酸塩基または極性主溝のいずれかへの追加の水素結合部位を提供する。これは、架橋ヌクレオシドや2’修飾などの一般に用いられる糖修飾とは異なる二本鎖安定化形態であり、RNAへの結合を増強する核酸塩基のA型配座に有利である。したがって、これらのC−5カルボキサミド修飾核酸塩基は、糖修飾により提供された結合増強に少なくとも追加的に作用すると考えられる。2’−4’架橋糖をも含むC−5カルボキサミド修飾ヌクレオシドはまた、以下に示される架橋構造を含めて、標的への本オリゴヌクレオチドの結合増強を達成すべく利用することができる。2’−CBBNヌクレオシドを導入したオリゴヌクレオチドは、米国仮出願第61/532,738号に記載されており、参照により本明細書に援用する。以下の構造に示されるように、Rは、本明細書に記載のカルボキサミド修飾を表し、R’およびR’’は、5’および3’末端を表す。
【化4】
【0044】
ウリジンのC−5位のカルボキサミド修飾ならびに化学特性および安定化特性は、シチジン塩基に拡張することができる。類似の修飾は、本明細書に記載のカルボキサミド型修飾を介してプリン塩基に利用することができる。
【0045】
本明細書に記載の修飾核酸塩基を導入したヌクレオチドは、その相補的ヌクレオチドへの高い結合親和性を呈する。Tの上昇を測定したところ、5℃/導入程度と高く(図5)、これまでのところ最も有効で広く用いられる親和性増強修飾であることが確認されてきた二環式LNA単量体に匹敵する。Tの上昇は、より高い活性および効力のmicroRNA阻害剤を形成するのに特に有効であり得る。加えて、これらの新しい核酸塩基修飾のいくつかは、カチオン性部分の場合、負荷電ホスフェートの一部をマスキングすることによるか、または親油性修飾の場合、ヌクレアーゼから骨格を遮蔽し両親媒性ヌクレオチド(図6、7および8)を形成することによるか、のいずれかで、細胞内取込みを増強する可能性がある。
【0046】
修飾は、miRNA配列を模倣するように設計されたオリゴヌクレオチドで使用してもよく、以下の表1の成熟miRNA配列のいずれか1つを含んでいてもよい。そのようなアンチセンスおよびセンス配列は、shRNAまたはステム部分やループ部分などを含む他のRNA構造に導入してもよい。そのような配列は、特に、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(たとえば、鬱血性心不全)、血管傷害、および/または病的心臓線維症の治療または治癒のためにmiRNA機能を模倣または標的化するのに特に有用である。例示的なmiRNA治療の有用性は、以下の表1に列記した米国特許および国際公開公報の参照文献に開示され、その各々をその全体を参照により本明細書に援用する。miRNAの成熟型およびプレプロセシング(pre-processed)型は、以下に列記した特許参照文献に開示され、そのような記載もまた、参照により本明細書に援用する。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、miR−208ファミリーのmiRNA、たとえば、miR−208aまたはmiR−208b、あるいはmiR−15bまたはmiR−21を標的化する。いくつかの実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、図5に示される配列および構造を有する。「m」は、2’OMe修飾を意味し、「+」は、2’OMeを有する塩基修飾ヌクレオチドを意味する。略記の説明は、図1および図5に見いだされる。
【0053】
本オリゴヌクレオチドは、種々の高分子集合体または組成物内に導入してもよい。そのような送達のための複合体には、患者への送達のために製剤化される種々のリポソーム、ナノ粒子、およびミセルが含まれてもよい。複合体は、細胞膜浸透を開始するために1つまたは複数の融合性または親油性分子を含んでいてもよい。そのような分子は、たとえば、米国特許第7,404,969号および米国特許第7,202,227号に記載され、これらはその全体を参照により本明細書に援用する。あるいは、本オリゴヌクレオチド(oligonucelotide)は、国際公開第2010/129672号(参照により本明細書に援用する)に記載されるように、細胞内送達を支援するためにペンダント親油性基をさらに含んでいてもよい。
【0054】
他の態様において、本発明は、有効量の本発明のオリゴヌクレオチドまたはその薬学的に許容可能なものと、薬学的に許容可能な担体または希釈剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0055】
本組成物または製剤は、本明細書に記載のものを少なくとも1つ含む、複数の治療用オリゴヌクレオチドを利用してもよい。たとえば、本組成物または製剤は、本明細書に記載の少なくとも2、3、4、または5つのmiRNA阻害剤を利用してもよい。
【0056】
本発明のオリゴヌクレオチドは、種々の医薬組成物として製剤化することができる。医薬組成物は、意図する用途に適切な形態で調製されるであろう。一般に、これは、発熱原およびヒトまたは動物に有害となり得る他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することを包含する。例示的な送達/製剤系は、コロイド分散系、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、脂質ベース系、たとえば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む。本発明の核酸を心筋組織および骨格筋組織に送達するのに好適な市販の脂肪エマルジョンとしては、Intralipid(登録商標)、Liposyn(登録商標)、Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、Nutrilipid、および他の類似の脂質エマルジョンが含まれる。in vivoの送達媒体として使用するのに好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち人工膜小胞)である。そのような系の調製および使用は、当業界において周知である。また、例示的な製剤は、米国特許第5,981,505号、米国特許第6,217,900号、米国特許第6,383,512号、米国特許第5,783,565号、米国特許第7,202,227号、米国特許第6,379,965号、米国特許第6,127,170号、米国特許第5,837,533号、米国特許第6,747,014号、および国際公開第03/093449号に開示され、これらはその全体を参照により本明細書に援用する。
【0057】
本医薬組成物および製剤では、送達運搬体を安定にし、標的細胞による取込みを可能とするための適切な塩および緩衝剤を利用してもよい。本発明の水性組成物は、薬学的に許容可能な担体または水性媒体に溶解または分散された、阻害剤オリゴヌクレオチド(たとえばリポソームまたは他の複合体)を含む送達運搬体を有効量含む。「薬学的に許容可能な」または「薬理学的に許容可能な」という表現は、動物またはヒトに投与したときに、有害反応、アレルギー性反応、または他の不利な反応を引き起こさない分子体および組成物を意味する。本明細書で用いられる場合、「製薬上許容される担体」には、医薬、たとえばヒトへの投与に好適な医薬の製剤化での使用が許容される1つまたは複数の溶媒、緩衝剤、溶液剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗菌類剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質用のそのような媒体および作用剤の使用は、当業界で周知である。補充活性成分もまた、組成物に導入することができる。
【0058】
本発明の医薬組成物の投与または送達は、その経路によって標的組織が利用可能である限り、任意の経路とすることができる。たとえば、投与は、皮内、皮下、筋内、腹腔内、もしくは静脈内注入であってもよいし、または標的組織(たとえば心臓組織)への直接注入によるものであってもよい。本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドの安定性および/または効力は、皮下、皮内、および筋内を含めて、便利な投与経路を可能にする。miRNA阻害剤を含む医薬組成物はまた、カテーテルシステムまたは心臓に治療剤を送達するために冠循環を分離するシステムにより投与することもできる。心臓および冠血管系に治療剤を送達するための種々のカテーテルシステムは、当業界で公知である。本発明で使用するのに好適なカテーテルに基づく送達法または冠分離法のいくつかの例(これらに限定されるものではない)は、米国特許第6,416,510号、米国特許第6,716,196号、米国特許第6,953,466号、国際公開第2005/082440号、国際公開第2006/089340号、米国特許出願公開第2007/0203445号、米国特許出願公開第2006/0148742号、および米国特許出願公開第2007/0060907号に開示され、これらはすべてその全体を参照により本明細書に援用する。
【0059】
本組成物または製剤はまた、非経口投与してもよいし、または腹腔内投与してもよい。例示のため、遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩としてのコンジュゲートの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合される水中で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油に導入して、ディスパージョン剤を調製することもできる。通常の貯蔵条件下および使用条件下では、こうした調製物は、微生物の増殖を防止するために一般的には保存剤を含有する。
【0060】
注入またはカテーテル送達に使用するのに好適な医薬製剤としては、たとえば、無菌の注入用の溶液または分散液を即時調製するための無菌の水性の溶液剤またはディスパージョン剤および無菌の粉末剤が含まれる。一般的には、これらの製剤は、無菌であり、容易な注入が行える程度に流動性である。製剤は、製造条件下および貯蔵条件下で安定でなければならず、かつ細菌や菌類などの微生物の汚染作用を受けないように貯蔵されなければならない。適切な溶媒または分散媒体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含有することができる。適正な流動性は、たとえば、レシチンなどのようなコーティング剤を用いることにより、ディスパージョン剤の場合には所要の粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤を用いることにより、維持することができる。微生物の活動の防止は、種々の抗細菌剤および抗菌類剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより行うことが可能である。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖または塩化ナトリウムを組み込むことが好ましいであろう。吸収を遅らせる作用剤、たとえば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを組成物で使用することにより、注入用組成物を長期間にわたり吸収させるようにすることが可能である。
【0061】
滅菌注射用溶液剤は、適切な量のコンジュゲートを、必要に応じて任意の他の成分(たとえば、以上に列記したもの)と共に、溶媒中に導入することにより、調製することができる。一般的には、ディスパージョン剤は、基剤としての分散媒と所望の他の成分(たとえば、以上に列挙したもの)とを含有する滅菌媒体中に種々の無菌の活性成分を導入することにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末剤の場合、好ましい調製方法は、活性成分と任意の追加の所望の成分とよりなる粉末を事前に滅菌濾過されたその溶液から生成する真空乾燥技術および凍結乾燥技術を含む。
【0062】
製剤化後、溶液剤は、好ましくは、投与処方に適合し得る形でかつ治療上有効な量で投与される。製剤は、注入用溶液剤、薬剤放出カプセル剤などのようなさまざまな剤形で容易に投与することができる。たとえば水溶液の状態で非経口投与に供する場合、一般的には、溶液を適切に緩衝化し、かつたとえば十分な生理食塩水またはグルコースを用いて最初に液体希釈液を等張化する。そのような水性溶液は、たとえば、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内への投与に使用することができる。好ましくは、当業者に公知のように、特定的には本開示に照らして、無菌の水性媒体が利用される。例として、1回の投与量を1mlの等張NaCl溶液中に溶解させて、1000mlの皮下注入液に添加するかまたは提案された注入部位に注入することが可能である(たとえば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。治療される対象の病状に依存して投与量のいくらかの変更を生じることは避けられないであろう。いずれにせよ、投与の責任者が個々の対象に対して適切な用量を決定するであろう。さらに、ヒトに投与する場合、調製物は、食品医薬品局生物製剤部(FDA Office of Biologics)基準に規定された、無菌性、発熱原性、ならびに一般的安全性および純度の基準を満たさなければならない。
【0063】
他の態様において、本発明は、細胞内でのRNA発現または活性を低減または阻害する方法を提供する。そのような実施形態において、本方法は、本明細書に記載の化学様式を有する修飾オリゴヌクレオチド(またはその医薬組成物)に細胞を接触させることを含む。そこで、オリゴヌクレオチドは、細胞により発現されたRNA転写物にハイブリダイズする(たとえば、少なくともそれに実質的に相補的である)。いくつかの実施形態において、RNAはmiRNAである。
【0064】
他の態様において、本発明は、RNAまたはその発現に関連するまたはそれに媒介される対象の病状を予防または治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、RNAはmiRNAである。本発明による予防または治療の方法は、有効量の塩基修飾オリゴヌクレオチドまたはその薬学的に許容可能な組成物を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0065】
本発明は、修飾オリゴヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達する方法(たとえば、本明細書に記載の組成物または製剤の一部として)、および哺乳動物患者の病状の進行を治療、寛解、または予防する方法を提供する。本オリゴヌクレオチドまたは医薬組成物はin vitroまたはin vivoで標的細胞(たとえば、哺乳動物細胞)に接触させることができる。細胞は、心臓細胞であり得る。
【0066】
本方法は、一般的には、本オリゴヌクレオチドまたはそれを含む組成物を哺乳動物患者または標的細胞の集団に投与することを含む。本オリゴヌクレオチドは、すでに記載したように、miRNA阻害剤であり得る(たとえば、miRNAの発現または活性を阻害するように設計されたヌクレオチド配列を有する)。たとえば、miRNA阻害剤がmiR−208ファミリーのmiRNAの阻害剤である場合、患者は、miR−208ファミリーの発現に関連するか、それにより媒介されるか、またはそれから生じる病状を有し得る。そのような病状としては、たとえば、表1に列記された特許公報に記載の障害を含めて、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(たとえば、鬱血性心不全)、血管傷害、再狭窄症、もしくは病的心臓線維症、癌、または他のmiRNA関連障害が含まれる。したがって、本発明は、そのような病状を治療するための、およびそのような治療のための医薬を調製するための、本発明の修飾オリゴヌクレオチドおよび組成物の使用を提供する。
【0067】
特定の実施形態において、患者(たとえば、ヒト患者)は、たとえば、長期持続性コントロール不良高血圧、非根治弁膜疾患、慢性アンギナ、亜急性心筋梗塞、鬱血性心不全、心疾患先天的素因、および病的肥大を含む1つまたは複数のリスク因子を有する。あるいは、またはさらに、患者は、たとえば心臓肥大の遺伝的素因を有すると診断されていてもよいし、またはたとえば心臓肥大の家族歴を有していてもよい。
【0068】
この態様において、本発明は、心不全または心臓肥大の患者における、運動耐容能の向上、入院期間の短縮、生活の質の向上、罹患率の低減、および/または死亡率の低減を提供し得る。
【0069】
特定の実施形態において、心臓組織におけるまたは患者血清で決定されるmicoRNAの活性が低減または阻害される。
【0070】
種々の実施形態において、本医薬組成物は、心臓組織中への非経口投与によりまたは直接注入により、投与される。非経口投与は、静脈内、皮下、または筋内であり得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、経口投与、経皮投与、持続放出投与、制御放出投与、遅延放出投与、坐剤投与、カテーテル投与、または舌下投与により投与される。特定の実施形態において、本オリゴヌクレオチドは、25mg/kg以下の用量、10mg/kg以下の用量、または5mg/kg以下の用量で投与される。これらの実施形態において、本オリゴヌクレオチドまたは組成物は、筋内もしくは皮下注入によりまたは静脈内に投与することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療後のmiRNA阻害剤を捕捉または除去する(clearing)ことをさらに含む。たとえば、阻害剤の機能を減衰または停止するために、阻害剤に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを治療後に投与してもよい。
【0072】
本明細書で引用されるすべて参照文献を、表1のものを含めて、あらゆる目的で参照により本明細書に援用する。
【実施例】
【0073】
実施例1:5−位修飾2’−O−メチルウリジンヌクレオシドホスホロアミダイトの一般的調製手順
5−ヨード−2’−O−メチルウリジンは、公知の方法により容易に合成され、また、市販品として入手可能である。ヌクレオシドの5’−および3’−ヒドロキシル基は、それぞれ、標準的4,4’−ジメトキシトリチル化法およびアセチル化法により保護した。次いで、50mLボロシリケートボストン丸瓶中で無水THFおよびN,N−ジメチルアセトアミドの1:1混合物にヌクレオシドを溶解させることにより、この二重保護ヌクレオシドをカルボキサミド化に付した。混合物に5当量のTEAおよび3当量の第一級アミンまたはアミン塩酸塩を添加し、続いて、0.1当量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を添加した。密封可能な入口および圧力ゲージを備えた300mL Parrボンベ内に瓶を配置した。一酸化炭素で60psiまで充填することにより、装置を一酸化炭素でフラッシングし、次いで、圧力を10psiまで解放し、これを2回繰り返した。次いで、装置を60psiまで充填し、密封し、70℃の油浴中に17時間配置した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeOH中に再溶解させ、Zemplen条件下または類似の条件下、55℃で脱アセチル化した。得られたヌクレオシドをモノクロリダイト方法によりヌクレオシドホスホロアミダイトに変換した。
【0074】
2’−デオキシリボヌクレオシドは、Vaught et al., J. Am. Chem. Soc., 132(12):4141-4151 (2010)(その全体を参照により本明細書に援用する)に記載のものと同様な方法で合成することができる。
【0075】
実施例2:5’−O−DMTr−3’−O−Ac−5−(2−(N4−メチルピペラジニルエチル)カルバモイル)−2’−O−メチルウリジン(2c)の調製
50mLボストン丸瓶中、5’−O−DMTr−3’−O−Ac−5−ヨードウリジン(1g、1.373mmol)をTHF(体積:10ml)およびDMA(体積:10ml)に加えて無色溶液を得た。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.159g、0.137mmol)を秤取し、瓶に添加し、続いて、トリエチルアミン(0.694g、6.86mmol)および2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)エタンアミン(0.413g、2.88mmol)を添加した。瓶を250mL Parrボンベ中に配置し、これを密封し、ニードルバルブを介して排気した。次いで、ボンベを一酸化炭素で60psiに加圧する。次いで、ボンベを高真空下で排気し、一酸化炭素(60psi)で再充填する。ボンベを再密封し、70℃に加熱された油浴中に17時間配置する。ボンベを室温に冷却し、圧力を徐々に解放する。瓶をボンベから取り出し、減圧下で溶媒を除去する(Vaught et al., J. Am. Chem. Soc., 132(12):4141 -4151 (2010)(その全体を参照により本明細書に援用する))。
【0076】
乾燥生成物をMeOH(10mL)中に再溶解し、1ペレットのNaOH(約40mg)を小型攪拌子と共に添加する。瓶にセプタムを取り付け、混合物を50℃で一晩撹拌する。TLC(ヘキサン中3%TEA処理プレート、DCM中5%MeOH展開溶媒、UV可視化、およびHannessians染色、炭化併用)により、単一のトリチル含有生成物であることが明らかにする。反応混合物を濃縮乾固させ、DCMおよび1%TEAと平衡化された80gISCOシリカカートリッジに適用する。DCM(1%TEA)中0〜10%MeOH溶媒グラジエントを用いて、60ml/分で2Lにわたりカラムから生成物を溶出させる。純粋画分を捕集し、合わせ、そして濃縮乾固し、白色フォームとして5’−O−DMTr−3’−O−Ac−5−(2−(N4メチルピペラジニルエチル)カルボキサミドウリジン(0.93g、1.274mmol、収率93%))を得た。1H NMR. δ 2.33 (s, 3H), 2.50-2.65 (m, 10H); 3.44-3.52 (m, 4H); 3.54 (s, 3H); 3.79 (s, 6H); 3.87-3.92 (m, 1H); 4.00-4.08 (m, 1H); 4.10-4.17 (m, 1H); 5.90 (d, j=3.2 Hz, 1H); 6.85 (dd, J=9.0, 1.3 Hz, 4H); 7.27-7.49 (m, 9H); 8.52 (s, 1H); 8.77 (t, J=5.4 Hz, 1H)。MS (ESI) M+1=730, 計算値, 729。
【0077】
以下は、図2に示される選択された5−カルボキサミド塩基修飾の実験の詳細である。適切な第一級アミンを用いて同一の方法で各化合物を合成した。化合物はすべて、収率60〜95%を与えた。
【0078】
化合物2a、プロピル−イミダゾール誘導体
第一級アミンとして3当量の1−(3−アミノプロピル)イミダゾールを用いて、灰白色フォームとして64%の収率で所望の生成物を得た。1H NMR (300 MHz) δ 2.00-2.10 (m, 2H); 3.21-3.37 (m, 2H), 3.46 (d, J=4.2Hz, 2H), 3.57 (s, 3H), 3.78 (s, 6H), 3.92 (dd, J=5.6, 3.2Hz, 1H), 3.95-4.10 (m, 4H), 4.15-4.22 (m, 1H), 5.92 (d, J=3.2Hz, 1H), 6.08 (bs, 1H), 6.84 (dd, J=9.0. 1.4Hz, 4H), 6.93-7.50 (m, 10H), 7.63 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 8.58 (s, 1H), 8.74 (t, J=6.0Hz, 1H)。MS (ESI+) 計算値 711.76, 実測値 712.6。
【0079】
化合物2b、プロピル−モルホリン誘導体
第一級アミンとして3当量の3−モルホリノプロピルアミンを用いて、白色フォームとして64%の収率での所望の生成物を得た。1HNMR (300MHz) δ 1.76 (quin, J=7.0Hz, 2H), 2.41-2.50 (m, 4H), 3.40-3.47 (m, 4H), 3.53 (s, 3H), 3.70-3.75 (m, 8H), 3.79 (s, 6H), 3.89 (dd, J=5.7, 3.2Hz, 1H), 3.98-4.15 (m, 2H), 5.90 (d, J=3.2Hz, 1H), 6.84 (dd, J=9.0, 0.9Hz, 4H), 7.15-7.48 (m, 9H), 8.48 (s, 1 H), 8.75(t, J=5.8Hz, 1H)。MS (ESI+) 計算値 730.8, 実測値 731.5。
【0080】
化合物2e、ベンジル誘導体
第一級アミンとして3当量のベンジルアミンを用いて、白色フォームとして87%の収率で所望の生成物を得た。1HNMR (300MHz) δ 3.45-3.49 (m, 2H), 3.56 (s, 3H), 3.78 (s, 6H), 3.89 (dd, J=5.6, 3.1Hz, H), 4.03-4.17 (m, 2H), 4.58 (dd, J=5.7, 4.6Hz, 2H), 5.90 (d, J=3.1Hz, 1H), 6.85 (dd, J=9.0, 1.3Hz, 4H), 7.15-7.60 (m, 15 H), 8.59 (s, 1H), 8.87 (t, J=5.9Hz, 1H)。
【0081】
化合物2h、2−エチル−N,N−ジメチルアミン誘導体
第一級アミンとして3当量のN,N−ジメチルエチレンジアミンを用いて、白色フォームとして91%の収率で所望の生成物を得た。1HNMR (300MHz) δ 2.31 (s, 6H), 2.54 (t, J=6.5Hz, 2H), 3.40-3.50 (m, 3H), 3.52 (s, 3H), 3.79 (s, 6H), 3.88 (dd, J=5.6, 3.1Hz), 3.95-4.10 (m, 4H), 5.86 (d, J=3.1Hz, 1H), 6.84 (dd, J=9.0, 1.4Hz, 4H), 7.17-7.49 (m, 9H), 8.46 (s, 1H), 8.79 (t, J=5.61Hz, 1H)。
【0082】
実施例3:5’−O−DMTr−5−((2−(N4−メチルピペラジニルエチル)カルバモイル)−2’−O−メチルウリジンアミダイト(3c)の調製
100mL丸底フラスコ中で、DIEA(0.364ml、2.084mmol)および5−(3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロパン−1−カルボキサミド)−5’−O−DMTr−3’−O−Ac−2’−O−Me−ウリジン(1.55g、2.084mmol)をDCM(体積:15ml)中に溶解して、無色溶液を得た。フラスコをアルゴンでフラッシングして、撹拌を開始する。3−(クロロ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィン)(オキシ)プロパンニトリル(または「モノクロリダイト」)(0.451g、2.084mmol)を滴下して、反応混合物を3時間撹拌させた。
【0083】
TLCにより、反応が完了したことを明らかにした。反応混合物をNaHCO(100mL)で希釈し、水性相をDCM(3×50mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブライン洗浄(1×50mL)およびNaSOの添加により脱水した。有機相を濾過し、濃縮した。
【0084】
ヘキサン中3%TEAで前処理された40gシリカカートリッジを用いてカラムクロマトグラフィーにより、精製を行った。DCM中0〜5%MeOHを用いて生成物を溶出させた(40mL/分で1Lにわたり)。純粋画分を合わせて濃縮し、白色アモルファスフォームを得た。生成物をDCM(3×30mL)と共に共蒸発させ、高真空下で一晩乾燥させ、その後、自動化オリゴヌクレオチド合成を行った。5’−O−DMTr−5−((2−(N4−メチルピペラジニルエチル)カルバモイル)−2’−O−メチルウリジンアミダイト(1.47g、1.557mmol、74.7%収率)。1H NMR δ 1.15-1.25 (m, 12H); 2.31 (s, 3H); 2.36 (t, J=6.5 Hz, 2H); 2.41-2.69 (m, 12H); 3.34-3.72 (m, 9H); 3.76-4.06 (m, 8H); 4.18-4.36 (m, 1H); 5.90 (dd, J=5.4, 5.0 Hz, 1H); 6.80-6.92 (m, J=9.0, 4H); 7.15-7.51 (m, 9H); 8.51 (ds, 1H); 8.78-8.90 (m, 1H)。MS (ESI) M+1=931, 計算値, 930。
【0085】
図2における選択5−カルボキサミド塩基修飾の実験の詳細。1.00当量の3−(((ジイソプロピルアミノ)(メチル)ホスフィノ)オキシ)プロパンニトリルを用いて同一の方法で各化合物を合成した。化合物はすべて、収率75〜95%を与えた。
【0086】
化合物3b、プロピル−モルホリン誘導体のホスホロアミダイト
カラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/TEA)の後、82%の収率で得られた白色フォーム。ジアステレオマーの1:1混合物(H NMRにより決定された)をNMRにより測定した。分解されたプロトンを記述し、その後、結果を列記し、そしてアステリスクを付記した。31P NMR(121.5MHz)δ150.15、150.89。プロトンスペクトルでは、混合物は、次の分解されたジアステレオマーピークを与える。2’−O−メチル基の3Hに対応する3.45ppmおよび3.47ppmの一重線、トリチル上のメトキシ基の6Hに対応する3.80ppmおよび3.81ppmの2つの一重線、それぞれ5.0Hzおよび5.4Hzの結合定数を有し、C1’位の1Hに対応する、5.92ppmおよび5.96ppmの2つの二重線、塩基のC−6位の1Hに対応する8.49ppmおよび8.56ppmの2つの一重線。ピークの残りは、次のとおりである。1H-NMR (300MHz) δ 1.04-1.22 (m, 12H), 1.69-1.82 (m, 2H), 2.41-2.49 (m, 6H), 2,58-2.67 (m, 2H), 3.33-3.44 (m, 4H), 3.51-3.65 (m, 3H), 3.70-3.76 (m, 4H), 3.83-3.95 (m, 1H), 3.95-4.07 (m, 1H), 4.17-4.36 (m, 2H), 6.82-6.89 (m, 4H), 7.15-7.51 (m, 9H), 8.63-8.76 (m, 1H)。MS (ESI+) 計算値 931.0, 実測値 931.8。
【0087】
化合物3a、プロピル−イミダゾール誘導体のホスホロアミダイト
カラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/TEA)の後、80%の収率で得られた白色アモルファスフォーム。ジアステレオマーの55:45混合物(H NMRにより決定された)をNMRにより測定した。分解されたプロトンを記述し、その後、結果を列記し、そしてアステリスクを付記した。31P NMR(121.5MHz)δ150.26、150.81。プロトンスペクトルでは、混合物は、次の分解されたジアステレオマーピークを与える。2Hに対応する2.63ppm(J=6.1,1.3Hz)の主ジアステレオマーおよび2.37(J=6.3,1.4Hz)の副シグナルの2つの三重線の二重線、2’−O−メチル基の3Hに対応する両方とも3.49ppmの2つの一重線、C1’位の1Hに対応する5.92ppm(副、J=4.5Hz)および5.99ppm(主、J=5.2Hz)の2つの二重線、塩基のC−6位の1Hに対応する8.55ppm(主)および8.63ppm(副)の2つの一重線。ピークの残りは、次のとおりである。1H-NMR (300MHz) δ 1.04-1.22 (m, 12H), 1.97-2.10 (m, 2H), 2.80-2.94 (m, 1H), 3.23-3.47 (m, 4H), 3.52-3.74 (m, 3H), 3.75-3.95 (m, 7H), 3.96-4.13 (m, 3H), 4.22-4.41 (m, 2H), 6.79-6.89 (m, 4H), 6.96 (s, 1H), 7.10 (s, 1H), 7.15-7.53 (m, 9H), 7.59 (s, 1H), 8.69-8.80 (m, 1H)。MS (ESI+) 計算値 912.0, found 912.3。
【0088】
化合物3h、2−エチル−N,N−ジメチルアミン誘導体のホスホロアミダイト
カラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/TEA)の後、87%の収率で得られた白色アモルファスフォーム。ジアステレオマーの55:45混合物(H NMRにより決定された)をNMRにより測定した。分解されたプロトンを記述し、その後、結果を列記し、そしてアステリスクを付記した。31P NMR(121.5MHz)δ150.12、150.71。プロトンスペクトルでは、混合物は、次の分解されたジアステレオマーピークを与える。C1’位の1Hに対応する、5.90ppm(副、J=(4.8Hz))および5.93ppm(主、J=(5.2Hz))の2つの二重線、塩基のC−6位の1Hに対応する8.46ppm(主)および8.53ppm(副)の2つの一重線。ピークの残りは、次のとおりである。1H-NMR (300MHz) δ 1.04-1.22 (m, 12H), 2.31 (s, 6H), 2.52-3.06 (m, 4H), 3.33-3.49 (m, 5H), 3.52-3.74 (m, 4H), 3.75-3.94 (m, 7H), 3.95-4.07 (m, 1H), 4.16-4.34 (m, 2H), 6.80-6.90 (m, 4H), 7.15-7.53 (m, 10H), 8.68-8.82 (m, 1H)。
【0089】
化合物3e、ベンジル誘導体のホスホロアミダイト
カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキス)の後、89%の収率で得られた白色アモルファスフォーム。ジアステレオマーの55:45混合物(H NMRにより決定された)をNMRにより測定した。分解されたプロトンを記述し、その後、結果を列記し、そしてアステリスクを付記した。31P NMR(121.5MHz)δ150.26、150.81。プロトンスペクトルでは、混合物は、次の分解されたジアステレオマーピークを与える。2Hに対応する2.64ppm(1=6.5,2.1Hz)の主ジアステレオマーおよび2.38(J=6.5,1.5Hz)の副シグナルの2つの三重線の二重線、C1’位の1Hに対応する5、93ppm(副、J=4.7Hz)および5.98ppm(主、J=5.3Hz)の2つの二重線、塩基のC−6位の1Hに対応する8.57ppm(主)および8.64ppm(副)の2つの一重線。ピークの残りは、次のとおりである。1H-NMR (300MHz) δ 1.04-1.22 (m, 12H), 3.36-3.46 (m, 2H), 3.50-3.76 (m, 4H), 3.77-3.93 (m, 7H), 3.95-4.10 (m, 1H), 4.17-4.36 (m, 2H), 4.45-4.67 (m, 2H), 6.82-6.90 (m, 4H), 7.15-7.54 (m, 14H), 8.83-8.95 (m, 1H)。MS (ES1+) 計算値 912.0, 実測値 912.3。
【0090】
実施例4:短縮ヌクレオチドの一般的合成方法
修飾のためのカルボキサミド置換基は、親水性基および疎水性基の両方から選択した。次の理由で、親水性基を優先的に選択した。他の核酸塩基と新しい水素結合相互作用を形成する能力、標準的オリゴヌクレオチド合成下で追加の保護基を必要とする交換性プロトンまたは感受性官能基の欠如、生理的pHでのこれらの基のカチオン性。疎水性基は、核酸塩基間のπスタッキング相互作用を活用すべくおよびヌクレオチドで新しい疎水性領域を形成するよう選択した。また、ヌクレオチド上で新しい疎水性領域およびカチオン性/親水性領域を形成すると、細胞透過性を増強する血清タンパク質への増強された結合も形成され得る。ペンダント疎水性基(たとえば、ステロールおよび直鎖脂質)さらには2’疎水性修飾(たとえば、アルキル、アリール、および2’−4’リンカー)を有するヌクレオチドは、血清リポタンパク質粒子との相互作用を増大させることにより、細胞内取込みを増強することができる。同様に、高荷電カチオン種で高アニオン性ヌクレオチド骨格の影響を打ち消すと、細胞内取込みが増強される。
【0091】
修飾ヌクレオシドを合成し、ヌクレオチド単量体になるように適切な反応性基で遊離の5’および3’−ヒドロキシル基をマスキングすれば、糖修飾および塩基修飾を有するオリゴヌクレオチドの短い鎖を調製することができる。オリゴヌクレオチド合成の最新技術は、ホスホロアミダイト化学を用いた自動固相合成であり、これは、特定的には、McBride et al., Tetrahedron Letters 24:245-248 (1983)およびSinha et al., Tetrahedron Letters 24:5843-5846 (1983)の開発に基づく。ホスホロアミダイト化学は、水素ホスホネート化学などの関連する方法と一緒になって、Beaucage et al., Tetrahedron 48:2223-2311 (1992)により、オリゴヌクレオチド化学におけるそれらの使用に関して広く概説されてきた。固相オリゴヌクレオチド合成では、一連のヌクレオチド単量体は、鎖の延長方向、成長オリゴヌクレオチド鎖の5’官能基または3’官能基に依存して、それらのホスホロアミダイト誘導体を介して、所定順序で逐次的に接続される。
【0092】
オリゴヌクレオチド鎖は、制御細孔ガラスまたはポリスチレン樹脂ビーズなどの不溶性部分に固定される。各単量体の接続方法は、一般的には、以下の工程1〜5で構成される。工程1は、反応性官能基の保護を含む。通常の反応性官能基は、末端ヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基である。この官能基は、通常、酸処理を介して除去可能な4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)部分で保護される。DMT部分の魅力的特徴の1つは、酸脱保護時に鮮橙色DMTカチオンを形成することである。このカチオンは、前のカップリング工程の完了を判断する目的で、波長480〜500nmで容易にモニター可能なレポーター基として効果的に役立つ。ほとんどの市販の自動合成装置は、放出されたDMTカチオンをモニターする能力を有する。このデータは、任意の所与の工程で合成が失敗したかどうかを即時に判定する指標をオペレーターに与える。工程2は、ホスホロアミダイト誘導体および活性化剤の添加によるカップリングを含む。ホスホロアミダイト誘導体は、通常、ヌクレオシドホスホロアミダイトであるが、異なる有機部分を用いて誘導体化されたホスホロアミダイトであってもよい。工程3は、未反応の末端官能基のキャッピングを含む。この工程は、不良配列へのさらなるカップリングを防止する不活性保護基を導入する。工程4は、新たに形成されたリンヌクレオチド骨格リンケージを三価ホスファイトから安定な五価状態に酸化することを含む。この酸化工程は、ホスフェートヌクレオチドをもたらす酸素系酸化剤またはホスホロチオエートヌクレオチドをもたらす硫化酸化剤のいずれかを用いて、行うことができる。工程5は、洗浄工程後のプロセスの繰返しを含む。
【0093】
ABI Expedite8909自動核酸合成システムを用いて、ヒトmiR−208aのヌクレオチド配列に相補的な短縮16ヌクレオチド配列をμmolスケールで合成した。当業者に公知の標準的な脱トリチル化溶液およびキャッピング溶液、各塩基あたり420秒間の単一カップリング、ならびに各カップリングサイクル後の0.2M PADS酸化溶液による酸化を用いて、合成装置を操作した。非修飾抗208aRNA配列に、9つの修飾核酸塩基で完全に置き換えられた9つのウリジン残基を導入する。ヌクレオチドの残りの部分は、2’−O−メチル−ヌクレオチドで構成した。1つの例外は、オレイルカルボキサミド誘導体の導入であり、この場合には、16のうちの塩基位置15に単一導入が存在し、各420秒間のダブルカップリングを介して、ヌクレオシドアミダイトを導入した。
【0094】
実施例5:オリゴヌクレオチドmiRNA阻害剤の調製
化合物10941(mCs;ppTs;ppTs;ppTs;ppTs;ppTs;mGs;mCs;ppTs;mCs;mGs;ppTs;mCs;ppTs;ppTs;mA)の調製。塩基修飾オリゴヌクレオチドの合成でホスホロアミダイト試薬(3c)を使用した。ABI Expedite(Model 8909)DNA/RNA合成装置を用いて、オリゴデオキシヌクレオチドを合成した。酸化溶液を1:1ピリジン/ACN中0.2M PADSと交換し、市販の合成試薬を利用して、DMT−ONモードで、製造業者の推奨基準に従って、合成を行った。適切なカップリングサイクル時にアセトニトリル中0.1M溶液としてホスホロアミダイト試薬を添加した。米国特許第5,750,672号(その全体を参照により本明細書に援用する)に記載の方法により、または40%水性メチルアミン溶液を用いてCPG結合オリゴヌクレオチドを55℃で30分間加熱することにより、担体からのオリゴヌクレオチドの切断を達成した。粗DMT−ONオリゴヌクレオチド溶液をWaters Sep−Pak(登録商標)Vac C18カートリッジ上に充填し、当業者に公知の標準的DMT−ONオリゴヌクレオチド脱塩手順を用いて溶出することにより、得られたオリゴヌクレオチド水性溶液をさらに精製した。マトリックスとして3−ヒドロキシピコリン酸および当業者に公知の標準的方法を利用して、MALDI−TOF質量分析により生成物の特性解析を行った。計算値6922.4、実測値6920.7。
【0095】
上述の方法とまったく同様に、ウリジン位置でアミダイト3eを用いて、化合物M−10708(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析により、生成物の特性解析を行った。計算値6597.6、実測値6599.1。
【0096】
上述の方法とまったく同様に、ウリジン位置でアミダイト3fを用いて、化合物M−10713(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析により、生成物の特性解析を行った。計算値6543.9、実測値6543.9。
【0097】
上述の方法とまったく同様に、ウリジン位置でアミダイト3aを用いて、化合物M−10711(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6759.8、実測値6759.6。
【0098】
上述の方法とまったく同様に、ウリジン位置でアミダイト3dを用いて、化合物M−10712(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6759.8、実測値6760.6。
【0099】
上述の方法とまったく同様に、アミダイト位置で2’−O−メチルウリジンおよび補助アミダイト位置でアミダイト3dを用いて、化合物M−10768(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6003.9、実測値6005.2。
【0100】
上述の方法とまったく同様に、ウリジン位置でアミダイト3iを用いて、化合物M−10772(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6552.8、実測値6553.4。
【0101】
上述の方法とまったく同様に、アミダイト位置で2’−O−メチルウリジンおよび補助アミダイト位置でアミダイト3iを用いて、化合物M−10774(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値5912.0、実測値5912.8。
【0102】
上述の方法とまったく同様に、ウリジン位置でアミダイト3bを用いて、化合物M−10876(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6931.2、実測値6931.9。
【0103】
ABI Expedite(Model 8909)DNA/RNA合成装置を用いて、ウリジン位置でアミダイト3bおよび補助アミダイト位置でアミダイト3gを用いて、化合物M−10877(図5)を合成した。最初にアミダイト3gを2’−O−Me−アデノシン官能基化CPGにカップリングさせたこと以外は、上述の方法とまったく同様に、オリゴヌクレオチドを取り扱った。3gの導入は図5に前駆体「y」により表される。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値7056.0、実測値7056.5。
【0104】
上述の方法とまったく同様に、アミダイト位置で2’−O−メチルウリジンおよび補助アミダイト位置でアミダイト3bを用いて、化合物M−10878(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6080.1、実測値6081。
【0105】
上述の方法とまったく同様に、アミダイト位置で2’−O−メチルウリジンおよび補助アミダイト位置でアミダイト3bを用いて、化合物M−10881(図5)を合成した。MeOHグラジエントの200mM HFIP/8.15mM TEA緩衝液中でWaters SQD質量検出器を用いてESI質量分析(ネガティブモード)により、生成物の特性解析を行った。計算値6250.3、実測値6251.5。
【0106】
実施例6:融解温度の決定
修飾鎖の融解温度と、ホスホロチオエートDNAヌクレオチドまたはホスホロチオエート2’−O−メチルRNAヌクレオチドのいずれかを利用した同一の配列の融解温度と、の差を決定することにより、導入1つあたりの融解温度(T)の上昇を決定した。
【0107】
たとえば、修飾抗208aオリゴヌクレオチドを、RNAヌクレオシドとリン酸骨格とで構成された22ヌクレオチド長の相補的配列にアニールした。相補的配列は、内因性miRNAと同一であった。熱変性温度(T)を融解曲線(A260対温度)の一次微分プロットの最大量として測定した。二本鎖は、0.9%NaCl緩衝液中1μMで構成した。温度を4℃/分で25℃から95℃まで上昇させ、260nmのODを毎分1回読み取った。T値は、少なくとも2回の測定の平均である。
【0108】
ヒトmiR−208aのヌクレオチド配列に相補的な16ヌクレオチド配列の種々の修飾についての二本鎖融解温度。修飾は、混合9LNA/7DNAホスホロチオエート、完全置換2’−Oメチルヌクレオチドホスホロチオエート、完全2’デオキシヌクレオチドホスホロチオエート、および5−カルボキサミド置換基を有する完全2’−O−メチル−ヌクレオチドの種々の置換様式を含んでいた。疎水性置換は、非修飾2’−O−メチル親化合物に対して親和性向上の実質的な利得を提供しなかったが、カチオン種はすべて、非修飾2’−OMeヌクレオチドよりも2〜3℃/修飾程度高い有意な二本鎖安定化を提供した。二本鎖は、0.9%NaCl中1μMで構成した。温度を4℃/分で25℃から95℃まで上昇させ、260nmのODをGary 100 Bio UV−可視分光光度計で毎分1回読み取った。図4および図5を参照されたい。
【0109】
実施例7:心筋細胞データ
一次新生仔ラット心筋細胞を用いて行った細胞培養実験から、5−カルボキサミド−塩基修飾オリゴヌクレオチドの多くは、miR−208aに結合するだけでなく、有効な細胞内miR−208a阻害剤であると予想されるようなbMHCの下流制御をも行うことが実証される。図6および7に示されるように、ヌクレオチドのLNA/DNAまたはLNA/2’−O−Me混合物を含有する2つの既知のポジティブコントロールは、miR−208a阻害およびbMHCの用量依存的制御の両方を示す。オリゴヌクレオチドはすべて、2%血清含有培地で細胞上に受動的に(トランスフェクション試薬を用いずに)置いた。37℃で72時間インキュベートした後、Cells to Ct(Ambion)緩衝液を用いて、細胞を溶解させた。Taqman系RT−PCR(Applied Biosystems)により、miR−208aおよびmRNA bMHCを解析した。実験はすべて、三重試験方式で行われ、平均±標準偏差として示される。7〜8の範囲にpKa値を有するペンダントカチオン種(生理学的pHでほとんどプロトン化される可能性が最も高いもの)を特徴とする塩基修飾は、miR−208a阻害とbMHCとの間に正の相関を示す可能性がより高かった。この相関は、miR−208a阻害が一次心筋細胞の溶解前に起こることを示唆する。ヌクレオチド置換様式もまた、同一配列を有する阻害剤の効力に影響を及ぼし得ることにも留意されたい。5−(2−(2−メチル−1H−イミダゾイル−1−イル)−エチルカルボキサミド)−2’−O−メチルウリジンヌクレオチド変異体は、全部で9つの天然ウリジンヌクレオチド位置のうちの4つまたは9つのいずれかが置換されて、16ヌクレオチド2’−O−メチルホスホロチオエート抗208aヌクレオチド配列に導入されたとき、miR−208aの阻害を示す。有効なbMHC mRNA制御を示すのは、4つの置換を有するオリゴヌクレオチドのみである。
【0110】
実施例8:in vivo試験
C57BL/6マウス(10941、10876、10711)において、3つの塩基修飾オリゴヌクレオチドをin vivoで試験した。各オリゴの比較可能な塩基を含有するコントロールも注入した(11091、11087、11086)。オリゴヌクレオチドは、1日目に皮下注入を介して25mg/kg送達することにより投与した。投与4日後に心臓組織を採取し、リアルタイムPCRによりmiR−208aのレベルを決定した。マウスからの採取後、注入部位反応も目に見える器官損傷もなかった。図8に見られるように、標的化オリゴはすべて、miR−208aのいくらかの阻害を示し、10711オリゴヌクレオチドは、生理食塩水と比較して、心臓組織で統計的に有意にmiR208aを阻害することが可能であった。コントロールはすべて、生理食塩水との統計的な差異はなかった。このことから、全身投与された塩基修飾オリゴヌクレオチドは、コンジュゲートや薬剤送達システムを用いることなく、心臓特異的miRNAの強力な阻害剤として作用し得ることが実証された。
【0111】
実施例9:2’−デオキシおよび2’−O−Meの塩基修飾間のT
最小修飾〜最大修飾のスケールで可視化したときの塩基修飾および糖修飾の両方のTm効果。塩基修飾は、単独では、リン酸骨格を有する2’デオキシリボヌクレオシドに中程度の影響を及ぼすにすぎないと予想され(たとえば、Ahmadian et al., Nucleic Acids Res., 1998, 26(13):3127-3135 (1998)、Znosko et al., J. Am. Chem. Soc., 125(20):6090-6097 (2003)(これらはその全体を参照により本明細書に援用する)を参照されたい)、C3超のアルキン置換基でさえも、DNA:DNA二本鎖安定性を不安定化する傾向がある。生理学的pH下でプロトン化される非カルボキサミド連結ヘキシルアミンを有するウリジン塩基ヌクレオシドの複数導入でさえも、正味のDNA:DNA二本鎖安定化を示さなかった(Hashimoto et al., J. Am. Chem. Soc., 115(16):7128-7134 (1993)(その全体を参照により本明細書に援用する)を参照されたい)。糖修飾(この場合、2’−O−メチル化リボヌクレオシド)は、本発明者らの手によって、miR−208aRNAとのこの特定の二本鎖を約1℃/修飾で安定化することが示されている。本発明で教示された塩基修飾を有する2’デオキシリボヌクレオシドは、ホスホロチオエート骨格を有する16mer抗208aオリゴヌクレオチドに完全に導入されたとき(ウリジンに関して9置換)、miR−208aRNAに対する増大された二本鎖安定化をほとんど示さない。図9参照。しかしながら、塩基修飾2’デオキシリボヌクレオシドが、ウリジンを除くすべての塩基に2’−O−メチル化ヌクレオシドをも含有するヌクレオチドに導入されたとき、塩基修飾の安定化が顕在化した。9未満の糖修飾が存在するときでさえも、二本鎖は、16の2’−O−メチル糖修飾を有するオリゴヌクレオチドと同一のTを有していた。5−カルボキサミド塩基修飾と2’−O−メチル糖修飾との両方を有するウリジン塩基ヌクレオシドで各ウリジンを置換した2’−O−メチル化抗208aは糖修飾のみを有するオリゴヌクレオチドよりも2℃/修飾を超える予想外なT上昇を示す。
【0112】
この高い親和性は、おそらく、3’−エンド糖パッカーを有するA型ヌクレオシドと組み合わせたときに最大である。この効果は、5−カルボキサミド修飾塩基を、顕著な3’−エンド糖パッカーを有するA型にリボースをロックする2’−4’架橋二環式ヌクレオシド糖と組み合わせたとき、より顕著になり得る。
【0113】
実施例10:ヌクレオチドにおける5−カルボキサミド−修飾と2’−O−メチル修飾との相乗効果。
図10は、糖修飾と塩基修飾との両方をカウントして、図9のデータをΔTm/修飾として表している。5−カルボキシアミド−2’−O−メチルウリジンヌクレオシドの複数導入は、予期せずして、塩基または糖のいずれかが単独のときよりも、糖および塩基の修飾1つあたりより大きい安定化を与える。この証拠から、ヌクレオシドの3’−エンド糖パッカーに有利な修飾と組み合わされた5−カルボキサミドは、相加性を上回ることが示唆される。それらは、相乗的に作用して、いずれか一方の修飾単独よりも大きい二本鎖安定性を与える。二本鎖安定性の増大は、限界があるが、おそらく、microRNA阻害剤などの特定のオリゴヌクレオチドに基づく治療に望ましいであろう。さらに、これらのタイプの修飾はまた、酵素分解からの保護、低減された静電荷に起因する細胞内送達の保護、ならびに向上した薬動学的および/または薬力学的性質の保護を行い得る。
【0114】
実施例11:オリゴヌクレオチドへの塩基修飾ヌクレオチドの複数導入の効果
カチオン性5−カルボキサミド修飾デオキシウリジンの複数導入(すなわち、合計16のうちの9)は、ホスホロチオエート骨格およびホスフェート骨格の16merオリゴヌクレオチドの両方について二本鎖安定性に対する最小の増強を与えるように思われる。図11参照。これは、置換基の塩基の水和または立体的嵩高さの撹乱に起因すると思われる。しかしながら、驚くべきことに、単一の導入は、ホスホロチオエート骨格またはホスフェート骨格のいずれかを有する16mer抗208aデオキシオリゴヌクレオチドと、その標的であるmiR−208aRNAとの二本鎖安定性を、それぞれ、10℃超および17℃超上昇させ得る。本発明に開示される修飾は、望ましい二本鎖形成性、二本鎖タンパク質結合性、または一緒に望ましい薬動学的および/もしくは薬力学的性質を有する、治療用オリゴヌクレオチドを得るために、単一導入もしくは複数導入として単独で、または単一導入もしくは複数導入として他の糖修飾と組み合わせて、使用できる。
【0115】
好ましい実施形態を採り上げて本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、種々の変更、追加、置換などを行い得ることは、関連技術の当業者には、明らかであろう。したがって、これらは、以下の請求項に規定される本発明の範囲内にあるとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]