(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態の人体装着型計測装置100の一例を示す外観斜視図であり、
図2は本実施の形態の人体装着型計測装置100の構成の一例を示す分解斜視図であり、
図3は本実施の形態の人体装着型計測装置100の人体への装着例を示す説明図である。
図1及び
図2に示すように、人体装着型計測装置100は、相互に嵌合して箱体をなす上ケース11及び下ケース12、下ケース12の一面側に取り付けられ、耳の形状に合わせて湾曲させた装着部としてのクリップ14、クリップ14の一端側を下ケース12との間で挟み込む背面カバー13、上ケース11及び下ケース12の内部に収容される、バッテリ20、回路基板50、測距センサ40及びUSBポート30などを備える。
【0015】
図3に示すように、人体装着型計測装置100は、クリップ14の他端側を耳の上部に掛け、嵌合した上ケース11及び下ケース12を耳(耳たぶ)の裏側に配置するようにして、人体に装着することができる。そして、人体装着型計測装置100を耳に装着した状態で、測距センサ40は、所定部位としての顎の動き、顎までの距離の変動を検出することができるように配置されている。
【0016】
装着部としてのクリップ14を、人体の装着箇所に応じて適宜の形状とすることができる。
図3の例では、耳の形に合わせた形状のクリップ14を装着部とすることができる。耳に掛ける構造とすることにより、人体装着型計測装置100の形状を小さくして、装着時に目立ちにくくすることができる。
【0017】
背面カバー13は、例えば、シリコーンなどの素材を用いることにより、人体装着型計測装置100を耳に装着した場合に、背面カバー13が耳の裏側の頭部に密着しやすくなるとともに、心地よい装着感を実現することができる。
【0018】
バッテリ20は、回路基板50、測距センサ40などの部品に所要の電圧を供給することができる。また、バッテリ20は、USBポート30を介して充電することができる。
【0019】
図4は本実施の形態の人体装着型計測装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、人体装着型計測装置100は、測距センサ40に加えて、装置全体を制御する制御部51、加速度センサ52、計測部53、決定部54、算出部55、通信部56、記憶部57などを備える。これらの各部は、回路基板50に実装されている。
【0020】
測距センサ40は、変動検出部としての機能を有する。測距センサ40は、人体の所定部位に非接触の状態で当該所定部位の動きを検出する。また、測距センサ40は、人体の所定部位との間の距離の変動を検出する。所定部位は、例えば、顎(より具体的には、下顎骨)とすることができる。
【0021】
測距センサ40は、赤外発光ダイオードなどの発光部、フォトトランジスタなどの受光部などを有し、発光部から光を発光させ、所定部位で反射した反射光を受光部で検出して、検出した反射光の強度に応じた電気信号(電圧又は電流)を所定のサンプリング周期(例えば、0.2秒)で出力する。所定部位が顎である場合、顎が動くことにより、測距センサ40と顎との間の距離が変動する。例えば、所定部位との距離が短くなれば、ピーク値の大きい電圧を出力し、所定部位との距離が長くなれば、ピーク値の小さい電圧を出力する。なお、本実施の形態では、測距センサ40が検出する所定部位の動き、あるいは所定部位との間の距離の変動とは、測距センサ40が出力する電圧を含むものとする。
【0022】
計測部53は、AD変換部を有し、測距センサ40で検出した動きに基づいて、所定動作としての咀嚼の回数を計測する。咀嚼を1回行うと、測距センサ40と所定部位との間の距離が最小となるタイミングが1回生じるので、測距センサ40が出力する電圧のピーク値が1回現れる。所定のサンプリング周期で取得した変動のピーク値を検出することにより、所定部位の動作回数(咀嚼回数)を計測することができる。
【0023】
上述のように、測距センサ40は、所定部位に非接触の状態にしてあるので、所定部位が所定動作に伴って動く場合でも、所定動作を妨げることがない。また、測距センサ40は、所定部位に非接触の状態にしてあるので、人体装着型計測装置100を装着した場合に、違和感や不快感が生じることもない。また、測距センサ40は、比較的安価であり、構造も簡単であり、筋電位計を用いる必要がないのでコストを抑えることができ、クリップ14を耳に掛けるという簡単な構造で所定動作としての咀嚼回数を計測することができる。
【0024】
また、計測部53は、所定動作として咀嚼の回数を計測する。これにより、咀嚼を妨げることなく安価で簡単な構成で咀嚼の回数を計測することができる。
【0025】
また、クリップ14に弾性を持たせておき、人体装着型計測装置100を使用しない場合には、クリップ14と背面カバー13とで衣服の襟などを挟み込むようにして人体装着型計測装置100を衣服に取り付けることができるので、簡単に携帯することができ、使用したいときに直ぐに使用することができ利便性が向上する。
【0026】
加速度センサ52は、人体動作検出部としての機能を有する。加速度センサ52は、所定部位が連動する人体動作を検出する。所定部位(例えば、顎など)が連動する人体動作は、例えば、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどとすることができる。すなわち、加速度センサ52は、人体動作として発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りの少なくとも1つを検出する。
【0027】
加速度センサ52は、例えば、ピエゾ抵抗型3軸加速度センサ、静電容量型3軸加速度センサ、圧電型3軸加速度センサなどを用いることができ、XYZ軸の3方向の加速度を測定することができる。なお、加速度センサ52は、3軸加速度センサに限定されるものではなく、2軸加速度センサでもよい。
【0028】
制御部51は、補正部としての機能を有し、加速度センサ52で検出した人体動作に基づいて、計測部53の計測結果を補正する。例えば、計測部53で咀嚼を1回計測して咀嚼回数を1回増やす場合に、加速度センサ52で人体動作を検出したときには、計測部53で計測した咀嚼は、人体動作に伴って所定部位が連動したものであるとして、例えば、咀嚼回数を計測しないようにする(計測した咀嚼回数から1回分だけ減算する補正を行う)。これにより、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどの人体動作による誤計測を防止して、所定動作(例えば、咀嚼回数など)を精度良く計測することができる。
【0029】
また、加速度センサ52は、姿勢検出部としての機能を有する。加速度センサ52は、人体装着型計測装置100をクリップ14により人体に装着した場合に、測距センサ40(又は人体装着型計測装置100自身でもよい)の姿勢を検出する。すなわち、加速度センサ52で地球の重力加速度を計測することにより、測距センサ40の姿勢(傾き)を検出することができる。例えば、予め装着時の測距センサ40の基準の姿勢(基準方向)と重力方向との関係を定めておき、重力方向と基準方向とのずれ(ずれ角度)に応じて、ユーザの身長、体重、年齢などに依存する装着時の個人差を特定することができる。
【0030】
決定部54は、加速度センサ52で検出した姿勢に応じて、所定動作としての咀嚼の回数を計数する際の閾値を決定する。かかる閾値を決定することにより、ユーザの個人差を考慮することができる。
【0031】
算出部55は、測距センサ40で変動を複数回検出し、検出した複数回の変動の統計値を算出する。統計値は、複数回検出した変動の最大値と最小値との間の中間値(中央値)でもよく、複数回検出した変動の平均値でもよい。
【0032】
通信部56は、例えば、外部のスマートフォン、携帯電話、タブレット、パーソナルコンピュータなどの表示画面を備える外部機器(表示装置)との通信を行う。
【0033】
記憶部57は、所定の情報を記憶する。なお、所定の情報は後述する。
【0034】
次に、本実施の形態の人体装着型計測装置100による咀嚼回数の計測の詳細について説明する。
図5及び
図6は本実施の形態の人体装着型計測装置100の咀嚼回数の計測の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下では、簡便のため処理の主体を制御部51として説明する。
【0035】
制御部51は、ユーザの情報に基づいて初期閾値C0を設定する(S11)。初期閾値C0は、咀嚼回数を計測する際に、咀嚼を行ったか否かを判定するための閾値の初期値である。ユーザの情報は、例えば、性別、年齢、身長、体重などとすることができる。ユーザの情報は、通信部56を介して外部機器(例えば、スマートフォン、タブレットなど)から入力するようにすればよい。入力された情報(個人情報)は、ユーザ毎に区分して記憶部57に記憶される。
【0036】
制御部51は、加速度センサ52を制御して、人体装着型計測装置100を耳に装着したときの人体装着型計測装置100(測距センサ40)の姿勢を検出する(S12)。例えば、予め装着時の測距センサ40の基準の姿勢(基準方向)と重力方向との関係を定めておき、重力方向と基準方向とのずれ(ずれ角度)を検出することができる。
【0037】
制御部51は、決定部54を制御して、検出した姿勢に基づいて、重み付け係数を用いて設定した初期閾値C0を補正して、閾値Cを決定する(S13)。
【0038】
図7は検出した姿勢と重み付け係数との関係を示す説明図である。前述のとおり、測距センサ40の姿勢は、測距センサ40の基準の姿勢(基準方向)と重力方向とのなす角度として表すことができる。人体装着型計測装置100を耳に装着したときの基準の姿勢を表す基準方向と重力方向とのなす角度を0とする。
図7に示すように、角度が0の場合には、重み付け係数を1とすることができる。この場合、初期閾値C0を補正することなく、そのまま決定した閾値Cとして用いることができる。
【0039】
また、ユーザの個人差により、人体装着型計測装置100を装着したときの重力方向と基準方向とがずれて、角度がθ1となったとする。この場合、重み付け係数をα1とすると、閾値Cは、α1×初期閾値C0で求めることができる。他の角度(姿勢)についても同様である。加速度センサ52で検出した姿勢に基づいて、閾値Cを変更することにより、ユーザの個人差を吸収して咀嚼回数を精度良く計測することができる。
【0040】
例えば、クリップ14で人体に装着した場合に、測距センサ40と所定部位との間の距離が長くなり、測距センサ40で検出した変動のピーク値が小さくなるときは、閾値Cを小さくする。また、クリップ14で人体に装着した場合に、測距センサ40と所定部位との間の距離が短くなり、測距センサ40で検出した変動のピーク値が大きくなるときは、閾値Cを大きくする。これにより、装着状態でのユーザの個人差を吸収して所定動作(咀嚼)の回数を精度良く計測することができる。
【0041】
制御部51は、咀嚼回数N=0に設定し(S14)、測距センサ40を制御して所定部位(顎、下顎骨)の変動を検出する(S15)。なお、以下の説明では、測距センサ40が、所定のサンプリング周期(例えば、0.2秒など)で出力する電圧(所定部位の動き、あるいは所定部位との間の距離の変動)を、A1、A2、A3、…、A(i−1)、Ai、A(i+1)、…と時系列で表す(iは整数)。
【0042】
制御部51は、検出した変動がピーク値であるか否かを判定する(S16)。ピーク値であるか否かの判定条件は、式(1)及び式(2)の両方が成立する場合、変動Aiはピーク値であると判定することができ、両方の式のいずれかが成立しない場合、変動Aiはピーク値でないと判定することができる。
【0044】
制御部51は、検出した変動がピーク値でない場合(S16でNO)、ステップS15以降の処理を続ける。検出した変動がピーク値である場合(S16でYES)、制御部51は、算出部55を制御して、所定時間の間に複数回検出した変動に基づいて変動の統計値を算出し(S17)、検出した変動が算出した統計値より大きいか否かを判定する(S18)。
【0045】
検出した変動をAiとする。所定時間は、例えば、変動Aiを基準時点とした場合、基準時点より5サンプリング周期前と、5サンプリング周期後との間の時間とすることができる。すなわち、Aiを除いてA(i−5)からA(i+5)までの10回分の変動を用いて統計値を算出する。変動の最大値Amaxは式(3)により算出することができ、変動の最小値Aminは式(4)により出することができ、統計値Adifは、式(5)により算出することができる。すなわち、統計値は、複数回検出した変動の最大値と最小値との間の中間値(中央値)とすることがきる。なお、中央値に代えて、複数回検出した変動の平均値でもよい。また、複数回は、基準時点の前後5回に限定されるものではなく、他の回数でもよく、基準時点の前後で回数を異なるようにしてもよい。
【0046】
検出した変動が算出した統計値より大きいか否かは、式(6)により判定することができる。
【0047】
制御部51は、検出した変動が統計値より大きくない場合(S18でNO)、検出した変動がノイズに起因するものと判定し、直ちに咀嚼回数を計数することなく、ステップ15以降の処理を続ける。
【0048】
検出した変動が統計値より大きい場合(S18でYES)、検出した変動は、ノイズに起因するものではないと判定し、咀嚼回数の計測を行うべく、後述のステップS19の処理を行う。
【0049】
図8は検出した変動と統計値との関係を示す模式図である。
図8において、検出した変動をAiとする。最大値Amaxは、Aiを除いてA(i−5)からA(i+5)までの10回分の変動のうちの最大値である。また、最小値Aminは、Aiを除いてA(i−5)からA(i+5)までの10回分の変動のうちの最小値である。統計値Adifは、最大値Amaxと最小値Aminとの間の中間値(中央値)である。
【0050】
図8Aに示すように、検出した変動Aiが統計値Adif以下である場合、変動Aiはノイズ等に起因するものと考えられ、咀嚼回数の計数に変動Aiを考慮しない。一方、
図8Bに示すように、検出した変動Aiが統計値Adifより大きい場合、変動Aiはノイズによるものではなく、咀嚼に起因するものとして考慮する。このように、検出した変動と統計値とを比較することにより、所定のサンプリング周期で取得した変動のピーク値を確実に検出することができ、ノイズ等によるピークが小さい変動に基づいて所定動作の回数を誤って計測することを防止することができる。
【0051】
制御部51は、検出した変動が決定した閾値Cより大きいか否かを判定する(S19)。
【0053】
ステップS19では、検出した変動Aidは、ステップS18での変動とは異なり、式(7)、式(8)及び式(9)で算出することができる。また、検出した変動Aidが決定した閾値Cより大きいか否かは、式(10)により判定することができる。すなわち、式(7)で示すように、基準時点での変動Ai及び基準時点前に5回検出した変動の最大値をAmaxとし、式(8)で示すように、基準時点での変動Ai及び基準時点前に5回検出した変動の最小値をAminとすると、変動Aidは、式(9)で示すように、最大値Amaxと最小値Aminとの差分である。なお、基準時点前の回数は5回に限定されるものではなく、他の回数でもよい。また、基準時点より後に検出した変動を考慮することもできる。
【0054】
制御部51は、検出した変動Aidが閾値Cより大きくない場合(S19でNO)、ステップS15以降の処理を続ける。検出した変動Aidが閾値Cより大きい場合(S19でYES)、制御部51は、咀嚼回数Nに1を加算した値を新たな咀嚼回数Nとする(S20)。すなわち、制御部51は、咀嚼回数Nを1つ増加させる。
【0055】
すなわち、計測部53は、測距センサ40で検出した変動Aidが決定部54で決定した閾値Cより大きい場合、咀嚼回数を計数する。
【0056】
所定動作(例えば、咀嚼)が行われた場合に測距センサ40で検出した変動と、人体動作(例えば、発話)が行われた場合に測距センサ40で検出した変動とを予め定量化して閾値Cを定めることにより、測距センサ40で検出した変動Aidが閾値Cより大きい場合には、咀嚼などの所定動作であり、変動Aidが閾値Cより小さい場合には、発話などの人体動作であると判定することができる。これにより、所定動作(咀嚼)と発話などの人体動作とを区別して所定動作を計測することができ、所定動作の回数を精度良く計測することができる。
【0057】
制御部51は、直近のカウント時点(咀嚼回数の計数時点)から今回のカウント時点までの時間差が所定経過時間(例えば、0.3秒)より短いか否かを判定し(S21)、時間差が所定経過時間より短い場合(S21でYES)、すなわち、0.3秒の間に2回も噛んで食事することはないから、ノイズの影響があると判定して、咀嚼回数Nから1を減算した値を新たな咀嚼回数Nとする(S22)。すなわち、制御部51は、咀嚼回数Nを1つ減少させる。なお、所定経過時間は、0.3秒に限定されるものではない。
【0058】
時間差が所定経過時間より短くない場合(S21でNO)、ノイズの影響がないと判定して、ステップS22の処理を行うことなく、後述のステップS23の処理を行う。ステップS21の処理を行うことにより、咀嚼回数の隣り合う計測時点間の時間差が所定経過時間より短いか否かを判定して、ノイズ除去を行うことができる。
【0059】
制御部51は、人体動作を検出したか否かを判定し(S23)、人体動作を検出した場合(S23でYES)、咀嚼回数Nから1を減算した値を新たな咀嚼回数Nとする(S24)。なお、人体動作を検出した場合に、咀嚼回数Nを1つ増加させていないときは、咀嚼回数Nから1を減算しなくてもよい。
【0060】
すなわち、加速度センサ52は、所定部位が連動する人体動作を検出する。所定部位(例えば、顎など)が連動する人体動作は、例えば、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどとすることができる。そして、計測部53は、加速度センサ52で人体動作を検出した場合、咀嚼回数を計数しない。例えば、計測部53で咀嚼を1回計測して咀嚼回数を1回増やす場合に、加速度センサ52で人体動作を検出したときには、計測部53で計測した咀嚼は、人体動作に伴って所定部位が連動したものであるとして、例えば、咀嚼回数を計測しないようにする(計測した咀嚼回数から1回分だけ減算する補正を行う)。これにより、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどの人体動作による誤計測を防止して、精度良く所定動作を計測することができる。
【0061】
人体動作を検出しない場合(S23でNO)、制御部51は、ステップS24の処理を行うことなく、後述のステップS25の処理を行う。
【0062】
制御部51は、処理を終了するか否かを判定し(S25)、処理を終了しない場合(S25でNO)、ステップS15以降の処理を続ける。処理を終了する場合(S25でYES)、制御部51は、咀嚼情報を生成し、通信部56を介して生成した咀嚼情報を外部機器(スマートフォン、携帯電話、タブレット、パーソナルコンピュータなど)へ出力し(S26)、処理を終了する。咀嚼情報の詳細は後述する。
【0063】
上述の実施の形態では、咀嚼が行われた場合に測距センサ40で検出した変動と、発話が行われた場合に測距センサ40で検出した変動とを予め定量化して閾値Cを定める構成であったが、発話以外の人体動作として、例えば、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどが行われた場合に測距センサ40で検出した変動を予め定量化して閾値Cを決定するようにしてもよい。これにより、咀嚼と、頷き、くしゃみ、飲み込み又は首振りなどの人体動作とを区別して咀嚼回数を精度良く計測することが可能となる。
【0064】
図9は本実施の形態の人体装着型計測装置100による咀嚼と発話との混合実験の結果の一例を示すタイムチャートである。
図9において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は測距センサ40が出力する電圧(変動)を示す。
図9は、試験者にサンドイッチを食べてもらい、2分間咀嚼し途中で40秒間会話した場合の結果を示す。
図5及び
図6に例示する処理を行うことにより、実際に咀嚼した回数は73回であるところ、人体装着型計測装置100による計測結果は、74回であった。このように、発話などの人体動作が行われる場合であっても、咀嚼回数を精度良く計測することができる。
【0065】
次に計測した咀嚼回数を含む咀嚼情報の表示態様について説明する。制御部51は、生成部としての機能を有し、咀嚼回数を含む咀嚼情報を生成し、通信部56を介して、生成した咀嚼情報を外部機器へ出力する。なお、生成した咀嚼情報は、記憶部57に記憶することができる。
【0066】
図10は咀嚼情報の表示態様の第1実施例を示す説明図である。
図10に示すように、咀嚼情報は、年、月、週、日ごとに、朝食、昼食、夕食毎の咀嚼回数、咀嚼時間などを含み、グラフで可視化することができる。これにより、食の総合ダイアリーとして活用することができる。
【0067】
図11及び
図12は咀嚼情報の表示態様の第2実施例を示す説明図である。
図11及び
図12に示すように、咀嚼情報は、咀嚼回数の目標値に対する達成度を含む。例えば、
図11に示すように、毎日の達成度を通知する場合に、目標値を上回った場合(
図11の例では達成度を得点で示している)には、端正で小顔の印象を与えるゴールデンレトリバーのキャラクター表示と、達成度を示すべく、例えば、「いい調子です!このまま続けて若々しいお顔を手に入れましょう!」等の文章を表示する。また、
図12に示すように、毎日の達成度を通知する場合に、目標値を下回った場合(
図12の例では達成度を得点で示している)には、頬の筋肉が垂れた印象を与えるブルドックのキャラクター表示と、達成度を高めるべく、例えば、「このままでは ほうれい線が目だってしまうでしょう。明日はもっと噛みましょう。」等の文章を表示する。これにより、目標に対する達成度を毎日通知して咀嚼を促すことができる。
【0068】
図13は咀嚼情報の表示態様の第3実施例を示す説明図である。
図13に示すように、咀嚼情報は、咀嚼回数、咀嚼速度を含む。
図13に示すように、咀嚼速度が速すぎる場合には、咀嚼速度を遅くするように文字、図表等で即座に表示する。これにより、理想の食べ方(咀嚼速度)をリアルタイムでコーチングすることができる。
【0069】
図14及び
図15は咀嚼情報の表示態様の第4実施例を示す説明図である。
図14に示すように、咀嚼情報は、生徒の給食における咀嚼回数と、給食の消費カロリーを含む。また、
図15に示すように、咀嚼情報は、クラス(学級)の生徒の咀嚼回数とクラスでの順位などグラフ化したものを含む。これにより、生徒の食を記録して可視化することができ、給食の新たな指標を提供することができる。
【0070】
図16は咀嚼情報の表示態様の第5実施例を示す説明図である。
図16に示すように、咀嚼情報は、咀嚼の反復動作の目標速度及び計測した咀嚼の回数を含む。
図16に示すように、咀嚼の反復動作の目標速度は、例えば、咀嚼のテンポを示すものであり、1回の咀嚼の速度を、例えば、メトロノームの如く表示することができる。なお、メトロノームの如く表示する方法に代えて、2色の色の切替で表示する方法、1色の点滅で表示する方法などを用いてもよい。これにより、計測した咀嚼のテンポが目標速度に比べて速いのか遅いのかが容易に判断することができ、例えば、介護施設などの入居者の健康管理ツールとして活用することができる。
【0071】
上述の実施の形態において、ユーザが咀嚼などの所定動作を行っていない場合には、加速度センサ52により、人体の運動などの活動量を計測するようにしてもよい。
【0072】
上述の実施の形態において、ユーザが簡単に操作することができる操作部(例えば、スイッチ、ボタン、タッチパネルなど)を設けてもよく、また、人体装着型計測装置100の動作状態を表示する表示部(例えば、LED、液晶パネルなど)を設けることもできる。
【0073】
上述の実施の形態において、ユーザの情報に基づいて初期閾値C0を設定する場合に、外部機器からユーザの情報を入力する構成に代えて、ユーザが人体装着型計測装置100を耳に装着して、実際に複数回咀嚼あるいは発話を行うことによりキャリブレーションして個人差を吸収すべく初期閾値C0を設定するようにしてもよい。
【0074】
上述の実施の形態において、測距センサ40は、顎などの所定部位に非接触の状態で保持される構成であったが、顎以外の所定部位によっては、測距センサ40を接触状態で保持される構成にすることもでき、また、測距センサ40以外のセンサ(サーモセンサ、画像センサ、臭気センサ、圧力センサ、マイクロ波ドップラセンサなど)を用いることもできる。また、首、手首、足首、腕、腰などの装着箇所に応じて装着部の形状又は構造を変えることもできる。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態では、クリップ14に代えて、腕に巻き付けることができるようなバンドを用いる。そして、測距センサ40により、腕の皮膚表面の動きを検出して、所定動作としての脈拍を計測するようにしてもよい。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態では、クリップ14に代えて、首に巻き付けることができるようなバンドを用いる。そして、測距センサ40により、首の表面の動きを検出して、所定動作としての睡眠の時間や呼吸などの睡眠時の体の状態を計測するようにしてもよい。この場合には、測距センサ40により得られた変動が、所定の範囲内にある場合には、ベッドやふとんの上で静かに睡眠していると考えられるので、検出した変動が所定の範囲内にある時間を計測することにより、睡眠時間を計測することができる。また、測距センサ40により得られた変動が、所定の閾値を超える場合には、呼吸をしていると判別することができるので、測距センサ40で検出した変動が閾値を超える回数を計測することにより、呼吸回数や無呼吸の状態を計測することができる。また、上記呼吸の計測に加えて、加速度センサ53により睡眠時の姿勢を同時に計測することにより、睡眠時の体の状態をより正確かつ詳細に計測することが可能となる。
【0077】
(第4実施形態)
第4実施形態では、クリップ14に代えて、胸に巻き付けることができるようなバンドを用いる。そして、測距センサ40により、胸の表面の動きを検出して、所定動作としての睡眠の時間や呼吸などの睡眠時の体の状態を計測するようにしてもよい。この場合には、測距センサ40により得られた変動が、所定の範囲内にある場合には、ベッドやふとんの上で静かに睡眠していると考えられるので、検出した変動が所定の範囲内にある時間を計測することにより、睡眠時間を計測することができる。また、第3実施形態と同様、測距センサ40により得られた変動が、所定の閾値を超える場合には、呼吸をしていると判別することができるので、測距センサ40で検出した変動が閾値を超える回数を計測することにより、呼吸回数や無呼吸の状態を計測することができる。また、上記呼吸の計測に加えて、加速度センサ53により睡眠時の姿勢を同時に計測することにより、睡眠時の体の状態をより正確かつ詳細に計測することが可能となる。
【0078】
本発明の上述の各実施例で記載されている技術特徴は、お互いに組み合わせて新しい技術方案を形成することができる。
【0079】
本実施の形態の人体装着型計測装置は、人体に装着するための装着部(14)と、人体の所定部位に非接触の状態で該所定部位の動きを検出する変動検出部(40)と、該変動検出部で検出した動きに基づいて、所定動作の回数又は動作時間を計測する計測部(53)とを備えることを特徴とする。
【0080】
本実施の形態にあっては、装着部(14)により人体に装着する。装着部は、人体の装着箇所に応じて適宜の形状とすることができる。例えば、耳にかける場合には、耳の形に合わせた形状のクリップを装着部とすることができる。これにより、装置の形状を小さくして、装着時に目立ちにくくすることができる。また、首、手首、足首、腕、腰などの装着箇所に応じて装着部の形状又は構造を変えることができる。変動検出部(40)は、人体の所定部位に非接触の状態で当該所定部位の動きを検出する。所定部位は、例えば、顎とすることができる。変動検出部は、例えば、測距センサを用いることができ、発光部から光を発光させ、所定部位で反射した反射光を受光部で検出して、所定部位までの距離を検出し、検出した距離に応じた電気信号(電圧又は電流)を所定のサンプリング周期で出力する。所定部位が顎である場合、顎が動くことにより、変動検出部と顎との間の距離が変動する。計測部(53)は、変動検出部で検出した動きに基づいて、所定動作の回数又は動作時間を計測する。所定動作は、例えば、咀嚼である。咀嚼を1回行うと、距離のピーク値が1回現れるので、所定のサンプリング周期で取得した変動のピーク値を検出することにより、所定部位の動作回数又は動作時間を計測することができる。
【0081】
変動検出部は、所定部位に非接触の状態にしてあるので、所定部位が所定動作に伴って動く場合でも、所定動作を妨げることがない。また、変動検出部は、所定部位に非接触の状態にしてあるので、装着時に違和感や不快感が生じることもない。また、筋電位計を用いる必要がないのでコストを抑えることができ、装着部を人体に装着するという簡単な構造で所定動作を計測することができる。
【0082】
本実施の形態の人体装着型計測装置は、前記所定部位が連動する人体動作を検出する人体動作検出部(52)と、該人体動作検出部で検出した人体動作に基づいて、前記計測部の計測結果を補正する補正部(51)とを備えることを特徴とする。
【0083】
本実施の形態にあっては、人体動作検出部(52)は、所定部位が連動する人体動作を検出する。所定部位(例えば、顎など)が連動する人体動作は、例えば、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどとすることができる。人体動作検出部は、例えば、加速度センサを用いることができる。補正部(51)は、人体動作検出部で検出した人体動作に基づいて、計測部の計測結果を補正する。例えば、計測部で咀嚼を1回計測して咀嚼回数を1回増やす場合に、人体動作検出部で人体動作を検出したときには、計測部で計測した咀嚼は、人体動作に伴って所定部位が連動したものであるとして、例えば、咀嚼回数を計測しないようにする(計測した咀嚼回数から1回分だけ減算する補正を行う)。これにより、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどの人体動作による誤計測を防止して、精度良く所定動作を計測することができる。
【0084】
本実施の形態の人体装着型計測装置は、前記所定部位は、顎であり、前記計測部は、前記所定動作として咀嚼の回数を計測するようにしてあることを特徴とする。
【0085】
本実施の形態にあっては、所定部位は、顎であり、計測部は、所定動作として咀嚼の回数を計測する。これにより、咀嚼を妨げることなく安価で簡単な構成で咀嚼の回数を計測することができる。
【0086】
本実施の形態の人体装着型計測装置は、前記人体動作検出部は、前記人体動作として発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りの少なくとも1つを検出するようにしてあることを特徴とする。
【0087】
本実施の形態にあっては、人体動作検出部は、人体動作として発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りの少なくとも1つを検出する。これにより、発話、頷き、くしゃみ、飲み込み、首振りなどの人体動作が行われた場合でも、所定動作(例えば、咀嚼回数など)を精度良く計測することができる。
【0088】
本実施の形態の人体装着型計測装置は、咀嚼の反復動作の目標速度及び前記計測部で計測した咀嚼の回数を外部の表示装置で表示するための情報を生成する生成部(51)を備えることを特徴とする。
【0089】
本実施の形態にあっては、生成部(51)は、咀嚼の反復動作の目標速度及び計測部で計測した咀嚼の回数を外部の表示装置で表示するための情報を生成する。咀嚼の反復動作の目標速度は、例えば、咀嚼のテンポを示すものであり、1回の咀嚼の速度を、例えば、メトロノームの如く表示する場合、2色の色の切替で表示する場合、1色の点滅で表示する場合などとすることができる。これにより、計測した咀嚼のテンポが目標速度に比べて速いのか遅いのかが容易に判断することができる。