(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】概略的に示される三次元物品を製造するための1つの方法論。
【0012】
[詳細な説明]
次に示す説明において、本明細書の説明の一部を形成する添付図面の組が参照されるが、これらは、複数の具体的な実施形態の例示により示される。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、他の実施形態が考慮され、実施され得ることを理解すべきである。したがって、次に示す発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0013】
特に断りがない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用する構造体の大きさ、量、及び物理特性を表す数字は全て、いずれの場合においても「約」という語によって修飾されているものと理解されるべきである。したがって、そうでないことを示さない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に示す数値パラメーターは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。終点による数の範囲の使用には、その範囲内(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が含まれる)の全ての数、並びにその範囲内のいずれかの範囲が含まれる。
【0014】
一態様において、フォトレジストと、フォトレジストに分散した光開始剤系と、フォトレジストに更に分散したポリマー連結ナノ粒子と、含む、組成物が提供される。フォトレジストは、ポジ型又はネガ型フォトレジストであり得る。ポジ型フォトレジストは、露光したフォトレジストの一部が、フォトレジスト現像液中で可溶になる、一種のフォトレジストである。ネガ型フォトレジストは、露光したフォトレジストの一部が、フォトレジスト現像液中で不溶になり、露光していない一部が、フォトレジスト現像液によって溶解される、一種のフォトレジストである。典型的には、フォトリソグラフィを用いる微細加工では、ネガ型フォトレジストが利用される。
【0015】
提供されるフォトレジストは、硬化性種と非硬化性種とを共に含む。硬化性種には、例えば、付加重合性モノマー及びオリゴマーと付加架橋性ポリマー(例えば、アクリレート、メタクリレート、及びスチレンなどの特定のビニル化合物を含む、フリーラジカル重合性又は架橋性のエチレン系不飽和性種)、更には、カチオン重合性モノマー及びオリゴマーとカチオン架橋性ポリマー(この種は、最も一般的には酸開始されており、また、この種には、例えば、エポキシ、ビニルエーテル、シアネートエステルなどが含まれる)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
好適なエチレン系不飽和性種は、例えば、米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されており、このエチレン系不飽和性種には、モノ−、ジ−、ポリ−アクリレート及びメタクリレート(例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート、分子量約200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレート及びビス−メタクリレート、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)に記載されているようなアクリレート化モノマーの共重合性混合物、及び米国特許第4,642,126号(Zadorら)に記載されているようなアクリレートオリゴマー);不飽和アミド(例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス−アクリルアミド、及びβ−メタクリルアミノエチルメタクリレート);ビニル化合物(例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジパート、及びジビニルフタレート)など;並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な反応性ポリマーには、例えば、ポリマー鎖ごとに1〜約50の(メタ)アクリレート基を有する、ペンダント(メタ)アクリレート基を有するポリマーが挙げられる。かかるポリマーの例には、Sartomerから入手可能なSARBOX樹脂(例えば、SARBOX 400、401、402、404、及び405)などの芳香族酸(メタ)アクリレート半エステル樹脂が挙げられる。フリーラジカル化学作用によって硬化可能な他の有用な反応性ポリマーには、米国特許第5,235,015号(Aliら)に記載されているような、反応性ポリマーに結合されたフリーラジカル重合可能な官能性を有したヒドロカルビル主鎖及びペンダントペプチド基を有するポリマーが挙げられる。2つ以上のモノマー、オリゴマー、及び/又は反応性ポリマーの混合物を、所望に応じて使用することができる。好ましいエチレン系不飽和性種には、アクリレート、芳香族酸(メタ)アクリレート半エステル樹脂、及びポリマーに結合されたフリーラジカル重合可能な官能性を有したヒドロカルビル主鎖とペンダントペプチド基とを有するポリマーが挙げられる。
【0017】
好適なカチオン反応種は、例えば、米国特許第5,998,495号及び同6,025,406号(共にOxmanら)に記載されており、このカチオン反応種にはエポキシ樹脂が含まれる。かかる物質は、概してエポキシドと呼ばれるものであり、この物質には、モノマー型のエポキシ化合物とポリマー型のエポキシドとが挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であり得る。これらの物質は一般に、平均して、分子1個あたり少なくとも1個(好ましくは少なくとも約1.5個、より好ましくは少なくとも約2個)の重合可能なエポキシ基を有する。ポリマーエポキシドには、末端エポキシ基を有する直鎖状重合体(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシドは、純粋化合物であるか、又は分子1個当たり1個、2個、若しくはそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であり得る。これらのエポキシ含有物質は、主鎖及び置換基の性質において、非常に多様であり得る。例えば、主鎖は、いずれかの種類とすることができ、その主鎖上の置換基は、カチオン硬化を室温で実質的に妨げない、いずれかの基とすることができる。許容し得る置換基の例には、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、リン酸基などが挙げられる。エポキシ含有物質の分子量は、約58から約100,000以上まで変更することができる。
【0018】
有用な他のエポキシ含有物質には、次に示す式のグリシジルエーテルモノマーが挙げられ、
【化1】
式中、R’は、アルキル又はアリールであり、nは、1〜8の整数である。例は、多価フェノールを、エピクロロヒドリン(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)−プロパンのジグリシジルエーテル)などの過剰のクロロヒドリンと反応させることにより得られる、多価フェノールのグリシジルエーテルである。この種類のエポキシド類の追加の例が、米国特許第3,018,262号(Shroeder)、及びHandbook of Epoxy Resins(Lee及びNeville)(McGraw−Hill Book Co.、New York(1967))に記載されている。
【0019】
多くの市販のエポキシモノマー又は樹脂を使用することができる。容易に入手可能なエポキシドには、オクタデシレンオキシド;エピクロロヒドリン;スチレンオキシド;ビニルシクロヘキセンオキシド;グリシドール;グリシジルメタクリレート;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Inc.(Columbus,OH)から「EPON 815C」、「EPON 813」、「EPON 828」、「EPON 1004F」、及び「EPON 1001F」として入手可能なもの);並びにビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Ciba Specialty Chemicals Holding Company(Basel,Switzerland)から「ARALDITE GY281」、及びHexion Specialty Chemicals,Inc.から「EPON 862」として入手可能なもの)が挙げられるが、これらに限定されない。他の芳香族エポキシ樹脂には、MicroChem Corp.(Newton,MA)から入手可能なSU−8樹脂が挙げられる。
【0020】
他の例示的なエポキシモノマーには、ビニルシクロヘキセンジオキシド(SPI Supplies(West Chester,PA)から入手可能);4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシド(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から入手可能);3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、Dow Chemical Co.(Midland,MI)から「CYRACURE UVR−6110」として入手可能なもの);3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、Dow Chemical Co.から「CYRACURE UVR−6128」として入手可能なもの);ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;及びジペンテンジオキシドが挙げられる。
【0021】
更に別の例示的なエポキシ樹脂には、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、Sartomer Co.,Inc.(Exton,PA)から「POLY BD 605E」として入手可能なもの);エポキシシラン(例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から市販されている、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン);難燃性エポキシモノマー(例えば、Dow Chemical Co.(Midland,MI)から「DER−542」として入手可能な臭化ビスフェノール型エポキシモノマー);1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Ciba Specialty Chemicalsから「ARALDITE RD−2」として入手可能なもの);水素化ビスフェノールA−エピクロロヒドリン系エポキシモノマー(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Inc.から「EPONEX 1510」として入手可能なもの);フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.から「DEN−431」及び「DEN−438」として入手可能なもの);並びにAtofina Chemicals(Philadelphia,PA)から「VIKOLOX」及び「VIKOFLEX」として入手可能なエポキシ化アマニ油及び大豆油などのエポキシ化植物油が挙げられる。
【0022】
更なる好適なエポキシ樹脂には、Hexion Specialty Chemicals,Inc.(Columbus,OH)から「HELOXY」として市販されているアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。例示的なモノマーには、「HELOXY MODIFIER 7」(C
8〜C
10アルキル(alky)グリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 8」(C
12〜C
14アルキルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 61」(ブチルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 62」(クレシルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 65」(p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 67」(1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル)、「HELOXY68」(ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 107」(シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 44」(トリメチロールエタントリグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 48」(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)、「HELOXY MODIFIER 84」(脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル)、及び「HELOXY MODIFIER 32」(ポリグリコールジエポキシド)が挙げられる。
【0023】
他の有用なエポキシ樹脂は、グリシドールのアクリル酸エステル(グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートなど)と、1つ以上の共重合性ビニル化合物とのコポリマーを含む。かかるコポリマーの例は、1:1のスチレン−グリシジルメタクリレート、及び1:1のメチルメタクリレート−グリシジルアクリレートである。他の有用なエポキシ樹脂は、周知であり、エピクロロヒドリン、アルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)、スチレンオキシド、アルケニルオキシド(例えば、ブタジエンオキシド)、及びグリシジルエステル(例えば、エチルグリシデート)などのエポキシドを含む。
【0024】
有用なエポキシ官能性ポリマーには、General Electric Companyから市販されている、米国特許第4,279,717号(Eckbergら)に記載されているものなどのエポキシ官能性シリコーンが挙げられる。これらは、シリコン原子の1〜20モル%が、エポキシアルキル基、米国特許第5,753,346号(Leirら)に記載されているようなエポキシシクロヘキシルエチルなどで置換された、ポリジメチルシロキサンである。
【0025】
また、種々のエポキシ含有物質の配合物を利用することもできる。かかる配合物は、エポキシ含有化合物(低分子量(200未満)、中分子量(約200〜1000)、及び高分子量(約1000超)など)の2つ以上の重量平均分子量分布を有し得る。あるいは、又はこれに加えて、エポキシ樹脂は、種々の化学的性質(脂肪族及び芳香族など)又は官能性(極性及び無極性など)を有するエポキシ含有物質の配合物を含み得る。他のカチオン反応性ポリマー(ビニルエーテルなど)を、所望に応じて更に混和することができる。また、エポキシには、芳香族グリシジルエポキシ(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Inc.から入手可能なEPON樹脂、及びMicroChem Corp.(Newton,MA)から入手可能なSU−8樹脂)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
更に、好適なカチオン反応種には、ビニルエーテルモノマー、オリゴマー、及び反応性ポリマー(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(International Specialty Products(Wayne,NJ)から入手可能なRAPI−CURE DVE−3)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、及びMorflex,Inc.(Greensboro,NC)のVECTOMERジビニルエーテル樹脂(例えば、VECTOMER 1312、VECTOMER 4010、VECTOMER 4051、VECTOMER 4060、及び他の製造業者から入手可能なこれらの等価物)、並びにこれらの混合物が挙げられる。1つ以上のビニルエーテル樹脂及び/又は1つ以上のエポキシ樹脂の(いずれかの比率における)配合物を利用することもできる。更に、ポリヒドロキシ官能性物質(例えば、米国特許第5,856,373号(Kaisakiら)に記載されているものなど)を、エポキシ−及び/又はビニルエーテル官能性物質と共に組み合わせて利用することもできる。
【0027】
非硬化性種には、例えば、酸又はラジカル誘起反応の際に溶解度が増加し得る、反応性ポリマーが挙げられる。かかる反応性ポリマーには、例えば、光生成した酸によって水溶性の酸基に変換され得るエステル基を有した、非水溶性ポリマー(例えば、ポリ(4−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレン))が挙げられる。また、非硬化性種には、R.D.Allenらによって「High Performance Acrylic Polymers for Chemically Amplified Photoresist Applications」,J.Vac.Sci.Technol.B,9,3357(1991)に記載されている、化学増幅型フォトレジストも挙げられる。化学増幅フォトレジストの概念は、特に、0.5マイクロメートル以下(又は更には0.2マイクロメートル以下)の構造を有するマイクロチップの製造に、現在広く用いられている。かかるフォトレジスト系において、触媒性の化学種(典型的には、水素イオン)を照射によって生成することができ、この照射によって、化学反応のカスケードが誘発される。このカスケード反応は、より多くの水素イオン又は他の酸性種を生成する反応を水素イオンが開始し、これによって反応速度が増幅されるときに、発生する。一般的な、酸を触媒とする化学増幅型フォトレジスト系の例には、脱保護(例えば、米国特許第4,491,628号(Itoら)に記載されているようなt−ブトキシカルボニルオキシスチレンレジスト、テトラヒドロピラン(THP)メタクリレート系物質、米国特許第3,779,778号(Smithら)に記載されているようなTHP−フェノール系物質、R.D.AllenらによってProc.SPIE 2438,474(1995)に記載されているようなt−ブチルメタクリレート系物質など);解重合(例えば、ポリフタルアルデヒド系物質);及び転位(例えば、ピナコール転位に基づく物質)が挙げられる。
【0028】
所望により、種々の種類の反応種の混合物を、フォトレジスト組成物中に利用することができる。例えば、フリーラジカル反応種とカチオン反応種の混合物も有用である。
【0029】
また、提供される組成物には、フォトレジストに分散した光開始剤系も含まれる。この光開始剤系は、多光子光開始剤系であり得るが、これは、かかる系を使用することにより、光の集束ビームの焦点領域に重合作用を制限又は限定することが可能となるからである。典型的には、かかる系は、少なくとも1つの多光子光増感剤と、少なくとも1つの光開始剤(又は電子受容体)と、場合により、少なくとも1つの電子供与体と、を含む、二成分系又は三成分系である。かかる多成分系は、感度の向上をもたらすことができ、光反応をより短い期間で成し遂げることが可能であり、これによって、試料及び/又は露光システムの1つ以上の成分の移動による問題が生じる可能性を低減することができる。
【0030】
典型的には、多光子光開始剤系は、光化学的に有効量の、(a)少なくとも2個の光子を同時に吸収することが可能であり、場合によるが、好ましくは、フルオレセインよりも大きな二光子吸収断面積を有する、少なくとも1つの多光子光増感剤と、(b)多光子光増感剤とは異なるものであり、電子励起状態の光増感剤に電子を供与することが可能な、任意選択による少なくとも1つの電子供与体化合物と、(c)電子励起状態の光増感剤から電子を受容することによって光増感することが可能であり、その結果、少なくとも1つのフリーラジカル及び/又は酸を形成する、任意選択による少なくとも1つの光開始剤と、を含む。
【0031】
あるいは、多光子光開始剤系は、少なくとも1つの光開始剤を含む一成分系であり得る。一成分多光子光開始剤系として有用な光開始剤には、アシルホスフィンオキシド(例えば、Cibaにより商品名IRGACURE 819で販売されているもの、並びにBASF Corporationにより商品名LUCIRIN TPO−Lで販売されている2,4,6トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド)と、共有結合したスルホニウム塩部分を有するスチルベン誘導体(例えば、W.ZhouらによってScience 296,1106(2002)に記載されているもの)が挙げられる。また、ベンジルケタールなどの、他の従来の紫外線(UV)光開始剤を利用することもできるが、これらの多光子光開始の感度は、一般に比較的低い。
【0032】
二成分及び三成分多光子光開始剤系において有用な多光子光増感剤、電子供与体、及び光開始剤(又は電子受容体)について、以下に説明する。
【0033】
光反応性組成物の多光子光開始剤系における使用に好適な多光子光増感剤は、十分な光に暴露する場合、少なくとも2個の光子を同時に吸収できるものである。光増感剤は、フルオレセインよりも大きい(すなわち、3’,6’−ジヒドロキシスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]3−オンよりも大きい)二光子吸収断面積を有することが好ましい。一般に、断面は、C.Xu及びW.W.WebbによりJ.Opt.Soc.Am.B,13,481(1996)(Marder及びPerryらによる国際公開公報第98/21521号によって引用されている)に記載されている方法によって測定される、約50×10
−50cm
4秒/光子を超えるものとすることができる。
【0034】
典型的には、光増感剤の二光子吸収断面積は、フルオレセインの約1.5倍を超え(すなわち、上記方法で測定される、約75×10
−50cm
4秒/光子を超え)、更により好ましくはフルオレセインの約2倍を超え(すなわち、約100×10
−50cm
4秒/光子を超え)、最も好ましくはフルオレセインの約3倍を超え(すなわち、あるいは、約150×10
−50cm
4秒/光子を超え)、また、好ましくは、フルオレセインの約4倍を超える(すなわち、あるいは、約200×10
−50cm
4秒/光子を超える)。
【0035】
典型的には、光増感剤は、反応種への可溶性を有するか、若しくは反応種中に高度に分散可能であり(反応種が液体である場合)、又は反応種及び(以下に説明する)組成物中に含まれるいずれかの結合剤と相溶性を有する。最も好ましくは、光増感剤は、米国特許第3,729,313号(Smith)に記載されている試験法を用いて、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを、光増感剤の一光子吸収スペクトルと重なり合う波長範囲(一光子吸収条件)における連続照射下で増感させることもできる。増感剤は、1つには貯蔵性を考慮して選択することもできる。したがって、特定の光増感剤の選択は、利用する特定の反応種に(並びに電子供与体化合物及び/又は光開始剤の選択に)ある程度依存し得る。
【0036】
典型的な多光子光増感剤には、大きな多光子吸収断面積を示すもの、例えば、ローダミンB(すなわち、N−[9−(2−カルボキシフェニル)−6−(ジエチルアミノ)−3H−キサンテン−3−イリデン]−N−エチルエタンアミニウムクロライド、又はヘキサフルオロアンチモン酸)、並びに、例えば、Marder及びPerryらによる、国際公開公報第98/21521号及び同99/53242号に記載されている、4つのクラスの光増感剤が挙げられる。4つのクラスは、(a)2つの供与体が共役π(pi)−電子架橋に結合された分子、(b)2つの供与体が1つ以上の電子求引基で置換された共役π(pi)−電子架橋に結合された分子、(c)2つの受容体が共役π(pi)−電子架橋に結合された分子、及び(d)2つの受容体が、1つ以上の電子供与性基で置換されている共役π(pi)−電子架橋に結合された分子(ここで、「架橋」とは、2つ以上の化学基を結合する分子断片を意味し、「供与体」とは、共役π(pi)−電子架橋に結合され得る低イオン化電位を有する原子又は原子団を意味し、「受容体」とは、共役π(pi)−電子架橋に結合され得る高電子親和力を有する原子又は原子団を意味する)として説明することができる。上述の4つのクラスの光増感剤は、標準Wittig条件下でアルデヒドをイリドと反応させることによって、又は国際公開公報第98/21521号に詳述されているMcMurray反応を用いることによって調製することができる。
【0037】
多光子光開始剤には、少なくとも1つのジスチリルベンゼン染料が含まれ得る。ジスチリルベンゼン染料は、例えば、二光子吸収及び高次吸収を同時に発生することができる化合物として、米国特許第6,267,913号(Marderら)に記載されている。ジスチリルベンゼン染料は、次に示す一般構造(I)を有し得る。
【0038】
【化2】
【0039】
Rはそれぞれ独立して、アルキル基、分枝アルキル基、芳香族基、及び置換芳香族基であり得る。一部の実施形態において、R基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、モルホリノ、フタルイミド、及びフェニルのような芳香族基などのアルキル基が含まれ得る。フェニル基は、例えば、1つ以上の環位置において、メチル基、メトキシ基、フッ素のようなハロゲン、トリフルオロメタン、又はシアノ基などによって、環上で付加的に置換されていてもよい。一部の実施形態において、Rには、H、クロロ、ブロモ、フルオロ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、又はシアノが含まれ得る。Aは、独立して、H、Cl、Br、NR
3R
4、OR
5、アルキル、アルケニル、アリール、及びO(C=O)R
6であり、式中、R
3〜R
6は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、モルフィリノ(morphylino)、フタルイミド、又はフェニルであり、ここで、フェニル基が存在する場合、フェニル基は、各環位置において、独立して、H、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ(ethyoxy)、フッ素、トリフルオロメタン、又はシアノによって置換される。一部の実施形態において、ジスチリルベンゼン染料は、次に示す構造((II〜IV))を有し得る。画像分解能を増感させるための光増感剤としてのジスチリルベンゼン染料の使用は、例えば、本出願人により2011年4月22日に出願された、同時係属出願U.S.S.N.61/478,180に開示されている。
【0040】
【化3】
【0041】
他の化合物は、構造(V)で表される。
【0042】
【化4】
【0043】
他の有用な多光子光増感剤化合物は、例えば、大きな多光子吸収断面積を有するものとして、米国特許第6,100,405号、同5,859,251号、同5,770,737号、及び米国特許出願公開第2008/0139683号(全てReinhardtら)において記載されているが、これらの断面は、本明細書に説明する方法以外の方法によって決定される。一部の実施形態において、光増感剤には、次に示す式を有した少なくとも1つの発色団が含まれ、
(T−Q)
n−N−Ph
m
Qは、単結合であるか又は1,4−フェニレンであり、nは1〜3であり得、また、mは(3−n)の値を有する。(T−Q)は、次に示す式を有し、
【化5】
R
1及びR
2は、Qが単結合である場合、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり得、nの値は2又は3である。一実施形態において、提供される光増感剤は、次に示す構造(構造(VI))を有し得る。
【0044】
【化6】
【0045】
光反応性組成物の多光子光開始剤系に有用な電子供与体化合物は、電子を電子励起状態の光増感剤に供与可能な、化合物(光増感剤自体以外)である。かかる化合物は、場合により、光開始剤系の多光子感光性を増大させ、これによって、光反応性組成物の光反応を成し遂げるのに必要な露光を減少させるのに使用することができる。電子供与体化合物は、ゼロよりも大きく、かつp−ジメトキシベンゼンの酸化電位以下である酸化電位を有することが好ましい。酸化電位は、標準飽和カロメル電極(「S.C.E.」)に対して約0.3〜1ボルトであることが好ましい。
【0046】
また、電子供与体化合物は、好ましくは反応種に可溶であり、(上述のように)光増感剤は、1つには貯蔵性を考慮して選択される。好適な供与体は一般に、所望の波長の光に暴露されると、光反応性組成物の硬化速度又は画像濃度を増加させることが可能である。
【0047】
カチオン反応種を取り扱うとき、電子供与体化合物は、その塩基性が顕著なものである場合、カチオン反応に悪影響を及ぼし得ることが当業者に理解される(例えば、米国特許第6,025,406号(Oxmanら)における議論を参照)。
【0048】
一般に、特定の光増感剤及び光開始剤と共に使用するのに好適な電子供与体化合物は、(例えば、米国特許第4,859,572号(Faridら)において記載されている)3つの成分の酸化電位及び還元電位を比較することによって選択することができる。かかる電位は、(例えば、R.J.Cox,Photographic Sensitivity,Chapter 15,Academic Press(1973)によって記載されている方法によって)試験的に測定できるか、又はN.L.Weinburg,Ed.,Technique of Electroorganic Synthesis Part II Techniques of Chemistry,Vol.V(1975)、及びC.K.Mann and K.K.Barnes,Electrochemical Reactions in Nonaqueous Systems(1970)などの文献から得ることができる。これらの電位は、相対的なエネルギー関係を反映するものであり、電子供与体化合物を選択する指針として使用することができる。
【0049】
光開始剤の還元電位が、一光子光増感剤よりもネガティブでない(又はポジティブである)場合、これは発熱過程を示すので、一光子光増感剤のより高いエネルギー軌道の電子は、一光子光増感剤から光開始剤の最低空軌道(LUMO)まで容易に移動する。その代りに、発熱過程がわずかに吸熱性であっても(すなわち、一光子光増感剤の還元電位が光開始剤の還元電位よりも最大0.1ボルト、ネガティブであっても)、周囲熱活性化は、かかるわずかな障壁を容易に克服することができる。
【0050】
同様に、電子供与体化合物の酸化電位が、一光子光増感剤の酸化電位よりもポジティブでない(又はネガティブである)場合、電子供与体化合物のHOMOから一光子光増感剤の軌道空位(orbital vacancy)に移動する電子は、より高い電位からより低い電位に移動しており、これがまた、発熱過程を示す。発熱過程がわずかに吸熱性であっても(すなわち、一光子光増感剤の酸化電位が電子供与体化合物の酸化電位よりも最大0.1ボルト、ポジティブであっても)、周囲熱活性化は、かかるわずかな障壁を容易に克服することができる。
【0051】
一光子光増感剤の還元電位が、光開始剤の還元電位よりも最大0.1ボルト、ネガティブであるか、又は一光子光増感剤の酸化電位が、電子供与体化合物の還元電位よりも最大0.1ボルト、ポジティブである、わずかな吸熱反応は、光開始剤又は電子供与体化合物のいずれかが、その励起状態の一光子光増感剤と最初に反応するか否かに関係なく、全ての場合に発生する。光開始剤又は電子供与体化合物が、その励起状態の一光子光増感剤と反応している場合、反応が発熱性であるか、又はわずかにのみ吸熱性であることが好ましい。光開始剤又は電子供与体化合物が、一光子光増感剤イオンラジカルと反応している場合、発熱反応がやはり好ましいが、更に多くの吸熱反応が、多くの場合に発生することを予想できる。このように、一光子光増感剤の還元電位は、次いで反応する光開始剤(second-to-react photoinitiator)の還元電位よりも最大0.2ボルト(若しくはそれ以上)、ネガティブであり、又は一光子光増感剤の酸化電位は、次いで反応する電子供与体化合物の酸化電位よりも最大0.2ボルト(若しくはそれ以上)、ポジティブであり得る。
【0052】
好適な電子供与体化合物には、例えば、D.F.EatonによるAdvances in Photochemistry、B.Vomanら編、13,pp.427〜488、John Wiley and Sons,New York(1986)、米国特許第6,025,406号(Oxmanら)、並びに米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されているものが挙げられる。かかる電子供与体化合物には、アミン(トリエタノールアミン、ヒドラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリフェニルアミン(及びそのトリフェニルホスフィンとトリフェニルアルシンの類似体)、アミノアルデヒド、及びアミノシランを含む)、アミド(ホスホルアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、スルフィン酸とその塩、ヘキサシアノ鉄(II)酸塩の塩、アスコルビン酸とその塩、ジチオカルバミン酸とその塩、キサントゲン酸塩の塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、(アルキル)
p(アリール)
qボレートの塩(p+q=4)(テトラアルキルアンモニウム塩が好ましい)、SnR
4化合物(式中、各Rは、独立して、アルキル基、アラルキル基(特に、ベンジル)、アリール基、及びアルカリル基から選択される)などの種々の有機金属化合物(例えば、n−C
3H
7Sn(CH
3)
3、(アリル)Sn(CH
3)
3、及び(ベンジル)Sn(n−C
3H
7)
3)、フェロセンなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。電子供与体化合物は、未置換とすることができるか、又は1つ以上の非妨害置換基で置換することもできる。典型的には、電子供与体化合物は、電子供与体原子(窒素原子、酸素原子、リン原子、又は硫黄原子など)と、電子供与体原子に対してα位置にある炭素原子又はシリコン原子に結合された除去可能な水素原子と、を含む。
【0053】
典型的には、アミン電子供与体化合物には、アルキルアミン、アリールアミン、アルカリルアミン、アラルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、トリエタノールアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、2,4−ジメチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ベンジルアミン、アミノピリジン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−2−ブテン−1,4−ジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−エチレンジピペリジン、p−N,N−ジメチル−アミノフェネタノール、及びp−N−ジメチルアミノベンゾニトリル);アミノアルデヒド(例えば、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジエチルアミノベンズアルデヒド、9−ジュロリジンカルボキシアルデヒド、及び4−モルホリノベンズアルデヒド);及びアミノシラン(例えば、トリメチルシリルモルホリン、トリメチルシリルピペリジン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン、N,N−ジエチルアミノトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)フェニルシラン、トリス(メチルシリル)アミン、トリス(ジメチルシリル)アミン、ビス(ジメチルシリル)アミン、N,N−ビス(ジメチルシリル)アニリン、N−フェニル−N−ジメチルシリルアニリン、及びN,N−ジメチル−N−ジメチルシリルアミン)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
三級芳香族アルキルアミン、特に、少なくとも1つの電子求引性基を芳香環上に有するものが、とりわけ良好な貯蔵性をもたらすことが判明している。また、良好な貯蔵性は、室温で固体となるアミンを使用しても得られている。良好な感光性は、1つ以上のジュロリジニル部分を含むアミンを使用して得られている。
【0055】
典型的には、アミド電子供与体化合物には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−フェニルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサエチルホスホルアミド、ヘキサプロピルホスホルアミド、トリモルホリノホスフィンオキシド、トリピペリジノホスフィンオキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
典型的には、アルキルアリールボレート塩には、次に示すものが挙げられる。
Ar
3B(n−C
4H
9)
−N(C
2H
5)
4+、Ar
3B(n−C
4H
9)
−N(CH
3)
4+、Ar
3B(n−C
4H
9)
−N(n−C
4H
9)
4+、Ar
3B(n−C
4H
9)
−Li
+、Ar
3B(n−C
4H
9)
−N(C
6H
13)
4+、Ar
3B(C
4H
9)
−N(CH
3)
3(CH
2)
2CO
2(CH
2)
2CH
3+、Ar
3B(C
4H
9)
−N(CH
3)
3(CH
2)
2OCO(CH
2)
2CH
3+、
Ar
3B(sec−C
4H
9)CH
3)
3(CH
2)
2CO
2(CH
2)
2CH
3+、Ar
3B(sec−C
4H
9)
−N(C
6H
13)
4+、
Ar
3B(C
4H
9)
−N(C
8H
17)
4+、Ar
3B(C
4H
9)
−N(CH
3)
4+、(p−CH
3O−C
6H
4)
−、Ar
3B(n−C
4H
9)
−N(n−C
4H
9)
4+、Ar
3B(C
4H
9)
−N(CH
3)
3(CH
2)
2OH
+、Ar
3B(n−C
4H
9)
3−N(CH
3)
4+、Ar
3B(C
2H
5)
3−N(CH
3)
4+、Ar
2B(n−C
4H
9)
2−N(CH
3)
4+、Ar
3B(C
4H
9)
−N(C
4H
9)
4+、Ar
4B
−N(C
4H
9)
4+、ArB(CH
3)
3−N(CH
3)
4+、(n−C
4H
9)
4B
−N(CH
3)
4+、及びAr
3B(C
4H
9)
−P(C
4H
9)
4+(式中、Arは、フェニル、ナフチル、置換(好ましくはフルオロ置換)フェニル、置換ナフチル、及び多くの縮合芳香環を有する基のようなもの、並びにテトラメチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルボレート、及びテトラブチルアンモニウムn−ヘキシル−トリス(3−フルオロフェニル)ボレート(Ciba Specialty Chemicals Corporation,(Tarrytown,NY)から、CGI 437及びCGI 746として入手可能)、及びこれらの混合物である)。
【0057】
好適なエーテル電子供与体化合物には、4,4’−ジメトキシビフェニル、1,2,4−トリメトキシベンゼン、1,2,4,5−テトラメトキシベンゼンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な尿素系電子供与体化合物には、N,N’−ジメチル尿素、N,N−ジメチル尿素、N,N’−ジフェニル尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−ブチルチオ尿素、N,N−ジ−n−ブチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−ブチルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジエチルチオ尿素、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
典型的には、フリーラジカル誘起反応に対する電子供与体化合物には、1つ以上のジュロリジニル部分を含んだアミン、アルキルアリールボレート塩、及び芳香族スルフィン酸の塩が挙げられる。ただし、かかる反応では、電子供与体化合物を、所望により(例えば、光反応性組成物の貯蔵性を改善するために、又は分解能、コントラスト、及び相反性を修正するために)、除外することもできる。酸誘起反応のための好ましい電子供与体化合物には、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、4−ジメチルアミノフェネチルアルコール、及び1,2,4−トリメトキシベンゼンが挙げられる。
【0059】
光反応性組成物の反応種に好適な光開始剤(すなわち、電子受容体化合物)は、電子励起状態の多光子光増感剤から電子を受容し、その結果、少なくとも1つのフリーラジカル及び/又は酸が形成されることによって光増感することが可能なものである。かかる光開始剤には、ヨードニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩)、スルホニウム塩(例えば、場合によりアルキル基又はアルコキシ基で置換されており、また場合により、隣接アリール部分を橋架けしている2,2’−オキシ基を有する、トリアリールスルホニウム塩)など、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
典型的には、光開始剤は、反応種に可溶であり、また典型的には、貯蔵性も有している(すなわち、光増感剤及び電子供与体化合物の存在下で、反応種中に溶解したとき、反応種の反応を自発的に促進しない)。したがって、特定の光開始剤の選択は、上述のように、選択される特定の反応種、光増感剤、及び電子供与体化合物に、ある程度依存し得る。反応種が酸開始化学反応され得る場合、光開始剤は、オニウム塩(例えば、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩)である。
【0061】
好適なヨードニウム塩には、米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されているものが挙げられる。また、好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同3,741,769号、同3,808,006号、同4,250,053号及び同4,394,403号(全てSmith)にも記載されている。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl
−、Br
−、I
−又はC
4H
5SO
3−などのアニオンを含有する)、又は金属錯体塩(例えば、SbF
6−、PF
6−、BF
4−、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート、SbF
5 OH
−若しくはAsF
6−を含有する)であり得る。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。
【0062】
有用な芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤の例には、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート;ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート;フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート;ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート;ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート;ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロヒ酸塩;ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート;フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩;2,2’−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート;ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート;及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩;並びにこれらの混合物が挙げられる。芳香族ヨードニウム錯塩は、BeringerらのJ.Am.Chem.Soc.81,342(1959)の教示に従い、対応する(例えば、ジフェニルヨードニウム重硫酸塩などの)芳香族ヨードニウム単塩のメタセシスによって調製することができる。
【0063】
好適なヨードニウム塩には、ジフェニルヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートなど)、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(例えば、Sartomer Companyから入手可能なSARCAT SR 1012)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
有用なスルホニウム塩には、次に式によって表すことができる、米国特許第4,250,053号(Smith)に記載されたものが挙げられ、
【化7】
式中、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、約4〜約20個の炭素原子を有する芳香族基(例えば、置換又は非置換フェニル、ナフチル、チエニル、及びフラニル、ただし、置換反応は、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲンなどの基を有し得る)、並びに1〜約20個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。本明細書に使用する用語「アルキル」には、置換アルキル(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリールなどの基で置換されたもの)が含まれる。R
3、R
4、及びR
5のうちの少なくとも1つは芳香族であり、好ましくは、それぞれが独立して芳香族である。Zは、共有結合、酸素、硫黄、−S(=O)−、−C(=O)−、−(O=)S(=O)−、及び−N(R”)−からなる群から選択され、R”は、アリール(フェニルなど、約6〜約20個の炭素のもの)、アシル(アセチル及びベンゾイルなど、約2〜約20個の炭素のもの)、炭素−炭素結合、又は−(R
6−)C(−R
7)−であり、R
6及びR
7は、独立して、水素、1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基、及び約2〜約4個の炭素原子を有するアルケニル基からなる群より選択される。
【0065】
スルホニウム塩に(及び他の種類の光開始剤のいずれかに)好適なアニオンX
−には、例えば、イミド、メチド、ホウ素中心、リン中心、アンチモン中心、ヒ素中心、及びアルミニウム中心のアニオンなど、種々のアニオンの種類が挙げられる。好適なイミド及びメチドアニオンの例示的かつ非限定的な例には、(C
2F
5SO
2)
2N
−、(C
4F
9SO
2)
2N
−、(C
8F
17SO
2)
3C
−、(CF
3SO
2)
3C
−、(CF
3SO
2)
2N
−、(C
4F
9SO
2)
3C
−、(CF
3SO
2)
2(C
4F
9SO
2)C
−、(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)N
−、((CF
3)
2NC
2F
4SO
2)
2N
−、(CF
3)
2NC
2F
4SO
2C
−(SO
2CF
3)
2、(3,5−ビス(CF
3)C
6H
3)SO
2N−SO
2CF
3、C
6H
5SO
2C
−(SO
2CF
3)
2、C
6H
5SO
2N
−SO
2CF
3などが挙げられる。典型的には、この種類のアニオンには、式(R
fSO
2)
3C
−で表されるものが挙げられ、式中、R
fは、1個〜約4個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基である。
【0066】
好適なホウ素中心アニオンの例示的かつ非限定的な例には、F
4B
−、(3,5−ビス(CF
3)C
6H
3)
4B
−、(C
6F
5)
4B
−、(p−CF
3C
6H
4)
4B
−、(m−CF
3C
6H
4)
4B
−、(p−FC
6H
4)
4B
−、(C
6F
5)
3(CH
3)B
−、(C
6F
5)
3(n−C
4H
9)B
−、(p−CH
3C
6H
4)
3(C
6F
5)B
−、(C
6F
5)
3FB
−、(C
6H
5)
3(C
6F
5)B
−、(CH
3)
2(p−CF
3C
6H
4)
2B
−、(C
6F
5)
3(n−C
18H
37O)B
−などが挙げられる。好ましいホウ素中心のアニオンは一般に、ホウ素に結合された3つ以上のハロゲン置換芳香族炭化水素基を含んでおり、フッ素が最も好ましいハロゲンである。好ましいアニオンの例示的ではあるが、非限定的な例には、(3,5−ビス(CF
3)C
6H
3)
4B
−、(C
6F
5)
4B
−、(C
6F
5)
3(n−C
4H
9)B
−、(C
6F
5)
3FB
−、及び(C
6F
5)
3(CH
3)B
−が挙げられる。
【0067】
他の金属又は半金属中心を含有する好適なアニオン類には、例えば、(3,5−ビス(CF
3)C
6H
3)
4Al
−、(C
6F
5)
4Al
−、(C
6F
5)
2F
4P
−、(C
6F
5)F
5P
−、F
6P
−、(C
6F
5)F
5Sb
−、F
6Sb
−、(HO)F
5Sb
−、及びF
6As
−が挙げられる。他の有用なホウ素中心の非求核塩、並びに他の金属又は半金属を含んだ他の有用なアニオンが、当業者には(前述の一般式から)容易に明らかとなるため、前述の列挙は、全てを網羅するものではない。典型的には、アニオンX
−は、(例えば、エポキシ樹脂などのカチオン反応種と共に使用するために)テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロヒ酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、及びヒドロキシペンタフルオロアンチモン酸塩から選択される。
【0068】
好適なスルホニウム塩光開始剤の例には、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、メチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ジフェニルナフチルスルホニウムヘキサフルオロアルセナート、トリトリルスルホニウム(tritolysulfonium)ヘキサフルオロホスフェート、アニシルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリ(4−フェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−エトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアルセナート、4−アセトニルフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−チオメトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(メトキシスルホニルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ジ(ニトロフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ジ(カルボメトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジメチルナフチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、p−(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、p−(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ−[p−(フェニルチオフェニル)]フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ジ−[p−(フェニルチオフェニル)]フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニウム)ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモン酸塩)、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニウム)ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)、10−メチルフェノキサチイニウムヘキサフルオロホスフェート、5−メチルチアントレニウムヘキサフルオロホスフェート、10−フェニル−9,9−ジメチルチオキサンテニウムヘキサフルオロホスフェート、10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムテトラフルオロボレート、5−メチル−10−オキソチアントレニウムテトラフルオロボレート、5−メチル−10,10−ジオキソチアントレニウムヘキサフルオロホスフェート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
有用なスルホニウム塩には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(例えば、Sartomer Companyから入手可能なSARCAT SR1010)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、Sartomer Companyから入手可能なSARCAT SR 1011)、及びトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、Sartomer Companyから入手可能なSARCAT KI85)などのトリアリール置換塩が挙げられる。
【0070】
また、提供されるプレポリマーには、接着促進剤が含まれていてもよい。接着促進剤は、重合後に、ガラス面などの表面へのアクリルプレポリマーの接着を増強するのに使用することができる。典型的には、SR 9008(Sartomer、Exton(PA)から入手可能)のようなアルコキシ化三機能性アクリル酸エステルなどのアルコキシ化多機能性モノマーを、提供されるアクリル感光性高分子系において接着促進剤として利用することができる。
【0071】
また、提供される組成物には、フォトレジストに分散した、少なくとも1つのポリマー連結ナノ粒子も含まれる。典型的には、ポリマー連結ナノ粒子には、官能基、及び表面改質され、官能基に結合することができるナノ粒子を含む、ポリマーが含まれる。ポリマーには、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのアクリレートが含まれ、約9,000〜約120,000、又は約9,000〜約50,000の分子量(M
n)を有し得る。ポリマーは、例えば、重合時に、シランと反応させることによって、官能基を提供することができる。一部の実施形態において、メチルメタクリレートを、メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの連鎖移動剤の存在下で重合して、トリメトキシシラン基が末端であるPMMAポリマーを生成することができる。その後、これらの官能化ポリマーを、例えば、イソオクチルトリメトキシシランを使用して、表面改質ナノ粒子に連結することができる。ポリマー連結ナノ粒子のポリマーは、そのナノ粒子にポリマーを連結する前に製造されることが考慮される。その結果、これらは、規定された分子量及び構造を有し、その場で形成されない。
【0072】
本開示によって考慮されるポリマー連結ナノ粒子には、上述するような表面改質ナノ粒子に結合されるアクリルポリマーが含まれる。ナノ粒子は無機であり得る。好適な無機ナノ粒子の例には、ジルコニア、チタニア、リン酸カルシウム(例えば、ハイドロキシアパタイト、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、及びこれらの組み合わせ)を含む、シリカ及び金属酸化物ナノ粒子が挙げられ、また、中心無機コア周囲の材料の混合物又は材料の層などの組み合わせ材料が挙げられる。ナノ粒子は、約100nm未満、他の実施形態において、約50nm以下、約3nm〜約50nm、約3nm〜約20nm、及び約5nm〜約10nmの平均粒径を有し得る。この範囲には、いずれかの大きさが含まれ得るか、又は範囲は、3nm〜100nm未満に及び得る。ナノ粒子が凝集している場合、凝集粒子の最大断面寸法は、これらの好ましい範囲内のいずれかである。
【0073】
有用な表面改質ジルコニアナノ粒子には、粒子の表面上に吸着したオレイン酸とアクリル酸との組み合わせが挙げられる。有用な表面改質シリカナノ粒子には、例えば、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、及びこれらの組み合わせを含む、シラン表面改質剤で表面改質されたシリカナノ粒子が挙げられる。シリカナノ粒子は、多数の表面改質剤で処理することが可能であり、表面改質剤には、例えば、アルコール、例えば、アルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、及びこれらの組み合わせを包含するオルガノシラン、及びオルガノチタネート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
ナノ粒子は、コロイド状分散液の形態であってもよい。有用な市販の非改質シリカ出発物質の例には、Nalco Chemical Co.(Naperville,IL)から、商品名NALCO 1040、1050、1060、2326、2327、及び2329コロイド状シリカとして入手可能なナノサイズコロイド状シリカが挙げられる。有用な金属酸化物コロイド分散液には、コロイド状酸化ジルコニウム(これらの好適な例は、米国特許第5,037,579号(Matchett)に記載されている)、及びコロイド状酸化チタン(これらの有用な例は、国際公開公報第00/06495号(Arneyら)に記載されている)が挙げられる。
【0075】
表面改質基は、表面改質剤から誘導することができる。模式的に、表面改質剤は、式A−Bにより表すことができ、式中、A基は、粒子の表面に結合することができ、また、B基は、連続相の成分に対して反応性であっても非反応性であってもよい、相溶化基である。相溶化基は、粒子の極性を比較的高く、比較的低く、又は比較的非極性とするように、選択することができる。
【0076】
好適なクラスの表面改質剤には、例えば、シラン、有機酸有機塩基及びアルコール、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。特に有用な表面改質剤にはシランが挙げられる。有用なシランの例には、例えば、アルキルクロロシラン、アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン;トリアルコキシアリールシラン;イソオクチルトリメトキシ−シラン;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロぺニルトリメトキシシラン、及び3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを含む、シラン官能性(メタ)アクリレート;例えば、ポリジメチルシロキサンを含むポリジアルキルシロキサン、例えば、置換及び非置換アリールシランを含むアリールシラン、例えば、置換及び非置換アルキルシランを含むアルキルシラン、例えば、メトキシ及びヒドロキシ置換アルキルシランを含む、アルキルシラン、並びにこれらの組み合わせを含む有機シランが挙げられる。
【0077】
有用な有機酸表面改質剤には、例えば、炭素のオキシ酸(例えば、カルボン酸)、硫黄及びリン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。カルボン酸官能基を有する極性表面改質剤の代表的な例には、CH
3O(CH
2CH
2O)
2CH
2COOH(以後、MEEAA)、及び化学構造CH
3OCH
2CH
2OCH
2COOH(以後、MEAA)を有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、及び酸又は塩いずれかの形態のモノ(ポリエチレングリコール)スクシネートが挙げられる。カルボン酸官能基を有する非極性表面改質剤の代表的な例には、オクタン酸、ドデカン酸、及びオレイン酸が挙げられる。
【0078】
酸を含む好適なリンの例には、ホスホン酸、例えば、オクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、及び酸又は塩いずれかの形態のモノポリエチレングリコールホスホナートが挙げられる。また、有用な有機塩基表面改質剤には、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、及びモノポリエチレングリコールアミンを含む、アルキルアミンが例として挙げられる。
【0079】
他の有用な非シラン表面改質剤の例には、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)スクシネート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。極性及びナノ粒子に対する反応性を共に付与する有用な表面改質剤は、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクシネートである。好適な表面改質アルコールの例には、例えば、オクタデシル、ドデシル、ラウリル、及びフルフリルアルコールを含む脂肪族アルコール、例えば、シクロヘキサノールを含む脂環式アルコール、並びに、例えば、フェノール及びベンジルアルコールを含む芳香族アルコール、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、これらには、例えば、表面改質剤のナノ粒子への添加(例えば、粉末又はコロイド状分散液の形態)、及び表面改質剤をナノ粒子と反応させるのを可能にすることが挙げられる。当業者であれば、相溶化基と共にナノ粒子をもたらす複数の合成順序が可能であり、その範囲内に想定されることを認識し、例えば、反応性基/結合剤を、ナノ粒子と反応させた後に、相溶化基と反応させてもよい。あるいは、反応性基/結合剤を、相溶化基と反応させた後に、ナノ粒子と反応させてもよい。
【0081】
提供される組成物には、組成物の全固形物重量に基づいて、約10重量%〜約80重量%、約20重量%〜約60重量%、約20重量%〜約50重量%、又は更には、約20重量%〜約40重量%の量のポリマー連結ナノ粒子が含まれ得る。
【0082】
提供される方法には、上述する光硬化性組成物の少なくとも1つ以上のボクセルを、体積を有する三次元微細構造体の少なくとも1つの固体(又は架橋)ボクセルを感光性を有するように形成するのに有効な条件下で、一定量の電磁エネルギーに対して像様に露光することが含まれる。固体ボクセルの体積は、電磁エネルギーの量に反比例する。すなわち、しきい線量の電磁波放射、より高い量の電磁波放射後に、電磁エネルギーの量が増加するので、固体ボクセルサイズが減少する。
【0083】
光硬化性組成物には、少なくとも2個の光子を同時吸収し、光開始剤系に少なくとも2個の光子を吸収させるのに十分な光によって多光子吸収組成物を像様に露光する(ボクセルごとに(voxel by voxel))ことが可能で、露光が、段階的な露光によって三次元パターンで行われる、光開始剤系が含まれる。組成物の1つ以上の部分は、三次元微細構造体又はナノ構造体の少なくとも一部を感光性を有するように形成するのに有効な条件下で、電磁エネルギーに対して像様に露光される。三次元微細構造体の少なくとも一部を感光性を有するように形成するのに有効な光硬化性組成物、及び感光性は、米国特許第6,855,478号(DeVoeら)に更に記載されている。
【0084】
図1は、三次元微細構造体及びナノ構造体を製造するための1つの方法論を概略的に示す。
図1を参照すると、システム100には、光学レンズシステム104を通ってレーザー光線103を導くレーザー光源102が含まれる。光学レンズシステム104は、重合性混合物を含んだ組成物を含む本体108内の集束領域(ボクセル)110内にレーザー光線103を集束させる。106で表される好適な並進機構は、三次元で、本体108、光学レンズシステム104、及び/又は集束領域110との間での相対運動を提供し、集束領域を本体108内のいずれかの所望の位置に配置することができる。この相対運動は、光源102、光学レンズシステム104、及び/又は本体108の物理的運動によって生じ得、本体108内に1つ以上の三次元構造体を形成することができる。1つの好適な並進システムには、可動式(並進)ステージを備え、ミラーを取り付けたガルバノメーターが含まれ得る。
【0085】
有用な露光システムには、少なくとも1つの光源(通常、パルスレーザー)と、少なくとも1つの光学素子と、が含まれる。典型的には、光源には、例えば、アルゴンイオンレーザー(例えば、Coherent Innova)によって励起されたフェムト秒近赤外線チタンサファイア発振器(例えば、Coherent Mira Optima 900−F)が含まれる。このレーザーは76MHzで作動し、パルス幅が200フェムト秒未満であり、700〜980nmで調整可能であり、平均出力が最大で1.4ワットである。
【0086】
別の例は、Spectra Physics「Mai Tai」Ti:サファイアレーザーシステムであり、これは、80MHz、約0.85ワットの平均電力で作動し、750〜850nmまで調整可能であり、約100フェムト秒のパルス幅を有する。ただし、実際には、(光反応性組成物に使用される)光増感剤に適切な波長で(多光子吸収をもたらすのに)十分な強度を提供する、いずれかの光源を利用することができる。かかる波長は、概して、約300〜約1500nmの範囲内、好ましくは約600〜約1100nm、より好ましくは約750〜約850nmであり得る。
【0087】
また、QスイッチNd:YAGレーザー(例えば、Spectra−Physics Quanta−Ray PRO)、可視波長色素レーザー(例えば、Spectra−Physics Quanta−Ray PROによって励起されるSpectra−Physics Sirah)、及びQスイッチダイオード励起レーザー(例えば、Spectra−Physics FCbar)も、利用することができる。
【0088】
当業者であれば、かかるレーザーシステムを使用するために、適切な設定を選択して、多光子重合を実行することができる。例えば、正方形単位の面積当たりのパルスエネルギー(E
p)は、広範囲内において変化し、パルス持続時間、強度及び焦点などの因子を調整して、試験的に決定される特定のフォトレジストのコントラスト曲線の慣行的実施及び知識に従って生じる、所望の硬化を達成することができる。E
pが非常に高い場合、硬化された物質は、除去されるか又は分解され得る。E
pが非常に低い場合、硬化は生じないか、又は非常にゆっくりと生じ得る。
【0089】
近赤外線パルスレーザーを使用する場合のパルス持続時間の点から、好ましいパルス長は、概して、約10
−8秒未満であり、より好ましくは約10
−9秒未満であり、最も好ましくは約10
−11秒未満である。多光子の硬化を行うのに好適なE
pレベルを設定する、比較的大きなウィンドウを提供するので、フェムト秒形態におけるレーザーパルスが最も好ましい。ピコ秒パルスでは、操作ウィンドウはそれほど大きくない。ナノ秒パルスでは、硬化は、一部の例で所望され得るものよりもゆっくりと進行し得るか、又は全く進行しない。かかる比較的長いパルスでは、E
pレベルは、パルスが比較的非常に長い場合の物質の損傷を回避するように、低いレベルで確立される必要があり得る。
【0090】
提供される方法には、光に暴露していない物質を除去することが更に含まれ得る。多光子吸収組成物には、硬化性種が含まれ得る。すなわち、感光性種は、硬化性物質であり得る。あるいは、感光性種は、例えば、光子の吸収によって解重合される物質であり得る。典型的には、物質は、硬化性物質であり、光に暴露していない物質の除去には、未硬化の物質を除去することが含まれる。この除去工程(現像)は、種々の方法を用いて発生させることができ、そのうちの1つは、好適な溶媒中に未硬化物質を溶解することを含む。提供される方法には、少なくとも部分的に(感光性を有するように形成された三次元微細構造体の一部を)現像することが含まれる。
【0091】
提供される方法及び組成物は、例えば、マイクロニードルなどの高忠実度の微細構造体を製造するのに使用することができる。上記に説明するように、微細構造体は、フォトレジスト組成物の二光子露光によって形成され、続いて、現像される。現像は、溶媒によって重合された微細構造体(露光された組成物)から未重合物質を除去し、次いで、重合された微細構造体を乾燥させることを含む。下記の実施例の節に説明するように、一実施形態において、マイクロニードルなどの物品は、現像時に溶媒を用いて乾燥させる場合、高さが約10%未満、約5%未満、又は更には約3%未満収縮する、提供される組成物によって製造された。また、提供される方法は、現像時に、約10容積%未満、約5容積%未満、又は更には約3容積%未満膨脹する物品を製造するのに使用することもできる。
【0092】
本発明の目的及び利点は、次に示す実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の物質及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0093】
実施例1−PMMA連結ナノ粒子の調製
150gのメチルメタクリレート(Sigma−Aldrich Co.(Milwaukee,WI))を、0.0385gの熱開始剤VAZO 67(DuPont(Wilmington,DE))、1.667gの連鎖移動剤メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Gelest Inc.(Morrisville,PA))、及び500mLのテトラヒドロフラン(THF)を収容した、ガラス瓶内で重合した。4つの別々の重合反応を、同量の原料で同時に行った。瓶を、70℃の水浴内に24時間置いた。GPC結果は、全てのポリマーの分子量が27000+250g/molの範囲にあることを示した。溶媒のうちの一部を、ロータリー(rotory)エバポレータにおいて減圧下で除去し、また、シラン官能化ポリマーを、次の工程で32.30%の固溶体として使用した。
【0094】
5nmのシリカナノ粒子(Nalco 2326,Nalco Company(Naperville,IL))を、種々の百分率のシラン官能化ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)によって改質した。基本手順は以下のとおりであり、正確な組成を下記の表に示す。THF中シラン官能化ポリ(pol)(メチルメタクリレート)及びイソオクチルトリメトキシシラン(Gelest Inc.(Morrisville,PA))の溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール中に溶解し、シリカナノ粒子の撹拌水溶液に加えた。混合物を80℃で24時間加熱した。反応後、溶液をアルミニウム皿に入れ、バッチオーブンにおいて、120℃で完全に乾燥させた。使用前に、最終試料を、30〜45%の固形物レベルで、シクロペンタノン中に溶解した。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例2−ナノ粒子含有レジストの調製(溶液A)。
染料1とは、多光子増感染料、ビス−[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−1−(2−エチルヘキシロキシ)−4−(メトキシ)ベンゼンをいい、次に示す手順によって調製した。2,5−ビス(クロロメチル)−1−メトキシ−4−(2−エチルヘキシロキシ)ベンゼンの混合物(28.60g)を、米国特許第5,189,136号(Wudlら)の手順に従って調製し、また、トリエチルホスファイト(37.4g)を加熱して、4時間還流させた。冷却後、生成物を高真空下で加熱し、残余のトリエチルホスファイトを除去した。粘稠油状物質を得、数日後に徐々に結晶化し、更に精製せずに次の工程に使用した。粘稠油状物質(34.35g)、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド(36.54g)、及び乾燥テトラヒドロフラン(1052.97g)の混合物に、カリウムt−ブトキシド(テトラヒドロフラン中1.0M、117.52g)を滴下した。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで、溶媒を真空下で除去した。水(296mL)及びジクロロメタン(795g)を残渣に加え、塩酸(2g)を加えて、酸混合物を相分離した。混合物を、ジクロロメタンで更に2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物を、30/70塩化メチレン/ヘキサンを使用して、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製し、浅緑色の固体として、36gのビス−[4−(ジフェニルアミノ)スチリル(stryl)]−1−(2−エチルヘキシロキシ)、4−(メトキシ)ベンゼンを得た。
【0097】
およそ575nmよりも短い波長への露光を防止するために、次に示す調製を赤色光下で行った。1.815gの900k MWポリ(メチルメタクリレート)(Sigma−Aldrich Co.(Milwaukee,WI))、5.49gのトリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリアクリレート(isocyanurate triacrylate)(Sartomer USA,LLC(Exton,PA)から入手した商品名SR368)、及び実施例1の3gのPMMA連結ナノ粒子溶液(シクロペンタノン中45.17重量%の固形物)を、6.216gのシクロペンタノンに加え、4時間混合した。その後、開始剤パッケージを加え、2時間混合した。開始剤パッケージは、次に示す配合物(2.36g)からなっていた。シクロペンタノン10g、染料1 0.205g、SR1012(Sartomer USA,LLC(Exton,PA)から入手したジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩)0.410g、及びフェノチアジン(Sigma−Aldrich Co.(Milwaukee,WI))0.1g、これらを、撹拌子を使用して20分間混合した。本実施例において、ナノ粒子は、全固形物のおよそ15.4重量%含まれていた。
【0098】
比較例1−非ナノ粒子含有レジスト(溶液B)。
実施例2の赤色光条件(>575nm)下で調製した。
調製のために、28.89gの900k MW PMMA及び32.94gのSR368を、37.29gのシクロペンタノンに加え、3時間混合した。次いで、次に示す配合物(14.16g)を加え、琥珀色の瓶内で20分間混合した。シクロペンタノン20g、フェノチアジン0.2g、SR1012 0.82g、及び染料1 0.41g。
【0099】
実施例2−書込み及び収縮の測定。
150sccmのテトラメチルシランガスを使用するおよそ2mTの圧力、及び1000Wの高周波(RF)電力で、Plasmatherm回分反応器システムを使用して、直径およそ2インチ(5.08cm)の銅基材に、厚さおよそ100nmのダイヤモンド様ガラスフィルム(炭素、水素、ケイ素及び酸素からなる非晶質ランダム共有結合網目(amorphous random covalent network))を被覆した。Plasma−Therm回分反応器は、26インチ(66.0cm)の低電力供給電極及び中心ガスポンプを備えた、反応性イオンエッチング(RIE)用に構成された、市販の回分プラズマシステム(モデル3032、Plasma−Therm(St.Petersburg,FL))であった。チャンバを、ドライメカニカルポンプ(EdwardsモデルiQDP80)によって補強されたルーツブロアー(EdwardsモデルEH1200)によりポンプ処理した。5kWの13.56Mhzソリッドステート発生器(RFPPモデルRF50S0)により、RF電力をインピーダンスマッチングネットワークを介して送達した。ガスの流速をMKS流量調節器によって制御した。蒸着のための基材を、下方電極上に置いた。各基材の試料を、回分プラズマ装置の電力供給電極上に置いた。プラズマ処理を、規定された流速で、適切な種類のガスを供給することによって行った。一旦流れが安定したら、高周波(RF)電力を電極にかけて、プラズマを発生させた。プラズマを、およそ30秒間そのままにした。プラズマ処理が完了した後、ガスを止め、チャンバを通気し、基材をチャンバから外に取り出した。
【0100】
次いで、酢酸によって酸性(pH 4〜5)になった、190プルーフのエタノール中の2重量%3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートからなる溶液を、基材上にドロップキャストして(drop-cast)、1〜2分間放置した。過剰の溶液を、200プルーフのエタノールを使用して洗い流した。次いで、基材をホットプレート上で105℃で4分間焼いた。
【0101】
およそ120,000の数平均分子量を有する、ポリ(メチルメタクリレート)、SR9008(Sartomer USA,LLC(Exton,PA))、及びSR368を、30:35:35の重量比で合わせて、モノマー混合物を得、この混合物を、十分なシクロペンタノン中に溶解して、54重量%のモノマー混合物の溶液を得た。この混合物に、十分なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Ciba Additives(Tarrytown,NY)からCGI−819として入手可能)、及びフルオロ界面活性剤FC−4330(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)を、CGI−819が2.91重量%の全固形物含量となり、FC−4330が0.096重量%の全固形物含量となるように加え、50.7重量%の全固形物とするのに十分なシクロペンタノンを加えた。6gのこの混合物を、0.7マイクロメートルのフィルタに通してろ過し、次いで、スピンコーターを使用して、およそ10マイクロメートルの厚さで基材上に被覆した。80℃で5分間ホットプレート上で乾燥させた後、モノマーを、Dバルブを使用して、UV光で硬化させた。
【0102】
溶液Aを、蒸着前に、5マイクロメートルのガラスフィルタ(Pall Acrodisc 32mmシリンジフィルタ、Pall Corporation(Port Washington,NY))に通してろ過した。溶液Bを、0.7マイクロメートルのシリンジフィルタ(Whatman 25mm GF/F,GE(Fairfield,CT))に通してろ過した。試料を、銅基材上に、先述するように調製した5.3gのろ過された溶液Aを注ぐことによって調製し、試料Aを生成した。第2の試料を、同様に調製した銅基材上に、6gのろ過された溶液Bを注ぐことによって調製し、試料Bを生成した。蒸着後、銅基材を、60℃のオーブンに最低2日間入れ、溶媒を除去した。
【0103】
ドライコーティングの二光子重合を、ダイオード励起Ti:サファイアレーザー(Spectra−Physics(Mountain View,CA))を使用し、800nmの波長、80fsの公称パルス幅、80MHzのパルス繰返し数、及びおよそ1Wの平均電力で作動させて行った。コーティングされた基材を、コンピュータ制御可能な3軸ステージ(Aerotech,Inc.(Pittsburgh,PA)から入手)に配置した。極性ビームスプリッターと共に、Pockelsセルを使用して、レーザー光線を弱化及び調節し、x、y、及びz軸制御のテレスコープ(Nutfield Technology,Inc.(Windham,NH)から入手可能)及びレンズ(Nikon Fluor 20倍水対象レンズ、作動距離2.0mm、0.5 N.A.)を備えたガルバノスキャナ(galvoscanner)を使用して、コーティングに焦点を合わせ、乾燥膜上にある流体に一致するFC−70(3M Company(St.Paul,MN))指標に漬浸した平均電力を、対物レンズの出力部で、波長校正したフォトダイオード(ThorLabs(Newton,NJ)から入手)を使用して測定し、平均電力が15.5mWであることが判明した。露光過程が終了した後、構造体を、SU−8現像液(MicroChem Co.(Newton,MA))を24時間使用して現像し、構造体をそのままにした。構造体は、高さおよそ1000マイクロメートルの先が切り取られた円錐であった。
【0104】
各試料を現像液から取り出した直後、それぞれの書き込まれた構造体の高さを、共焦点顕微鏡(Keyence VHX−600、株式会社キーエンス(Keyence Co.)(日本、大阪))を使用して測定した。次いで、試料を完全に乾燥させた後、高さをもう1回測定した。高さの相違を、本来の高さの割合として一覧化し比較する。本明細書では、乾燥前後の高さの相違を、収縮として定義する。低い収縮が好ましい。
【0105】
【表2】
【0106】
3倍よりも大きな収縮の低減は、長い現像時間を経る必要があるか、又は現像液が吸収される傾向のあるフォトレジストに、PMMA連結ナノ粒子を加えることによる利点を実証する。
【0107】
次に示すものは、本発明の態様によるポリマー連結ナノ粒子を含有するフォトレジストの例示的な実施形態である。
【0108】
実施形態1は、フォトレジストと、フォトレジストに分散した光開始剤系と、フォトレジストに分散したポリマー連結ナノ粒子と、を含む、組成物である。
【0109】
実施形態2は、フォトレジストがネガ型フォトレジストを含む、実施形態1による組成物である。
【0110】
実施形態3は、光開始剤系が二光子光開始剤系を含む、実施形態1による組成物である。
【0111】
実施形態4は、ポリマー連結ナノ粒子がアクリルポリマーを含む、実施形態1による組成物である。
【0112】
実施形態5は、アクリルポリマーがポリ(メチルメタクリレート)を含む、実施形態4による組成物である。
【0113】
実施形態6は、ポリ(メチルメタクリレート)が、約9,000〜約120,000の重量平均分子量を有する、実施形態5による組成物である。
【0114】
実施形態7は、ポリマー連結ナノ粒子が、組成物の全固形物重量の約20重量%〜約40重量%の量で存在する、実施形態1による組成物である。
【0115】
実施形態8は、ナノ粒子がシリカを含む、実施形態1による組成物である。
【0116】
実施形態9は、物品の製造方法であって、この製造方法は、フォトレジスト、フォトレジストに分散した光開始剤系、及びフォトレジストに分散したポリマー連結ナノ粒子を含む、露光していない組成物を準備することと、露光していない組成物を走査レーザー光線に暴露させて、物品の形状の露光した組成物を形成することと、組成物を現像することと、を含む。
【0117】
実施形態10は、フォトレジストがネガ型フォトレジストを含み、光開始剤系が二光子光開始剤系を含む、実施形態9による物品の製造方法である。
【0118】
実施形態11は、ポリマー連結ナノ粒子がアクリルポリマーを含む、実施形態10による物品の製造方法である。
【0119】
実施形態12は、アクリルポリマーがポリ(メチルメタクリレート)を含む、実施形態11による物品の製造方法である。
【0120】
実施形態13は、組成物を現像することが、露光した組成物を顕著に膨潤させない溶媒中に、露光していない組成物を溶解することを含む、実施形態9による物品の製造方法である。
【0121】
実施形態14は、露光した組成物が現像時に約5容積%未満膨潤する、実施形態13による物品の製造方法である。
【0122】
実施形態15は、物品が中空のマイクロニードル又はマイクロニードルアレイを含む、実施形態9による物品の製造方法である。
【0123】
実施形態16は、フォトレジストと、フォトレジストに分散した光開始剤系と、フォトレジストに分散したポリマー連結ナノ粒子と、を含む前駆体組成物から誘導された光重合組成物を含む、物品である。
【0124】
実施形態17は、物品が中空のマイクロニードルを含む、実施形態16による物品である。
【0125】
実施形態18は、マイクロニードルが、シクロペンタノン中で飽和させ、その後、乾燥させて、シクロペンタノンを除去する場合、高さが3%未満収縮する、実施形態17による物品である。
【0126】
実施形態19は、マイクロニードルが皮下薬物送達に使用される、実施形態17による物品である。
【0127】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の種々の改変及び変更が当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、かかる実施例及び実施形態は、あくまで例示を目的として示されるにすぎず、本発明の範囲は、本明細書において次に示す「特許請求の範囲」によってのみ限定されるものであることを理解すべきである。本開示に引用される参照文献は全て、その全体が本明細書中に組み込まれる。