(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のキースイッチがオンとされた際に、グロープラグへ対して予め定めた通電を行い、前記グロープラグの通電開始時における抵抗値と、前記グロープラグの通電後、所定時間経過後における前記グロープラグの抵抗値とを測定し、時間経過に対する抵抗値の変化の割合を抵抗値傾きとして算出し、前記抵抗値傾きが予め定められた第1傾き基準値を超えている場合に、前記グロープラグが正常と判定し、
前記抵抗値傾きが、予め定められた第2傾き基準値を下回る場合に、前記グロープラグの異常と判定し、
前記抵抗値傾きが、予め定められた第2傾き基準値以上であって、かつ、前記第1傾き基準値を下回る範囲内にある場合に、予め取得されている前記グロープラグの正常時における抵抗値傾きとの差を基に、前記グロープラグの通電の際の印加電圧の補正係数を算出し、前記補正係数を用いて前記印加電圧を補正することを特徴とするグロープラグ診断方法。
車両のキースイッチがオンとされた際に、グロープラグへ対して予め定めた通電を行い、前記グロープラグの通電開始時における抵抗値と、前記グロープラグの通電後、所定時間経過後における前記グロープラグの抵抗値とを測定し、時間経過に対する抵抗値の変化の割合を抵抗値傾きとして算出し、前記抵抗値傾きが予め定められた第1傾き基準値を超えている場合に、前記グロープラグが正常と判定し、
前記抵抗値傾きが、予め定められた第2傾き基準値を下回る場合に、前記キースイッチの直近のオフ時に、エラー仮判定が記憶されているか否かを判定し、前記エラー仮判定が記憶されていないと判定された場合に、エラー仮判定が生じたことを記憶する一方、前記エラー仮判定が記憶されていると判定された場合に、前記グロープラグの異常と判定し、
前記エラー仮判定が記憶された後、前記キースイッチがオフされた際に、前記グロープラグへ予め定められたテスト通電を行い、前記通電を終了する際に前記グロープラグの抵抗値を計測し、前記抵抗値が第1基準抵抗値以下である場合に、前記グロープラグが正常と判定することを特徴とするグロープラグ診断方法。
前記キースイッチがオフされた際の前記テスト通電後において、前記グロープラグの抵抗値が、第2基準抵抗値を上回る場合に、前記キースイッチの直近のオン時に、エラー仮判定が記憶されているか否かを判定し、前記エラー仮判定が記憶されていないと判定された場合に、エラー仮判定が生じたことを記憶する一方、前記エラー仮判定が記憶されていると判定された場合に、前記グロープラグの異常と判定すると共に、次回、キースイッチがオンされた際に警告動作を行い得るよう予約状態とすることを特徴とする請求項2記載のグロープラグ診断方法。
前記グロープラグの抵抗値が、前記第1基準抵抗値を上回り、かつ、第2基準抵抗値以下の範囲内にある場合に、予め取得されている前記グロープラグの正常時における抵抗値との差を基に、前記グロープラグの通電の際の印加電圧の補正係数を算出し、前記補正係数を用いて前記印加電圧を補正することを特徴とする請求項3記載のグロープラグ診断方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図6を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるグロープラグ駆動制御装置(以下「GCU」と称する)100について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明におけるGCU100は、通電駆動回路51と、計測回路52と、演算制御部(
図1においては「CPU」と表記)53とに大別されて構成されたものとなっている。
【0011】
通電駆動回路51は、通電制御用半導体素子2と、シャント抵抗器3とを主たる構成要素として、グロープラグ1の通電制御が可能に構成されたものとなっている。
すなわち、まず、通電制御用半導体素子2は、例えば、MOS FETなどが用いられ、そのドレインは、車両用バッテリ4の正極に、ソースは、シャント抵抗器3を介してグロープラグ1の正極側に接続され、グロープラグ1の負極側は、アースに接続されたものとなっている。また、通電制御用半導体素子2のゲートには、演算制御部53からの制御信号が印加されるようになっており、通電制御用半導体素子2の導通、非導通が制御可能となっている。
【0012】
一方、計測回路52は、演算増幅器5とアナログ・ディジタル変換器(
図1においては「A/D」と表記)6とを主たる構成要素として、シャント抵抗器3における電圧降下がディジタル信号として演算制御部53に供給可能に構成されたものとなっている。
すなわち、まず、演算増幅器5には、シャント抵抗器3の両端の電圧が入力されるようになっており、その入力電圧は、次段のアナログ・ディジタル変換器6の入力に適した電圧に増幅され、出力されるようになっている。そして、演算増幅器5の出力電圧は、アナログ・ディジタル変換器6によりディジタル値として演算制御部53に入力されるようになっている。
【0013】
演算制御部53は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を有すると共に、先の通電制御用半導体素子2へ対する制御信号を出力するためのインターフェイス回路(図示せず)などを主たる構成要素として構成されたものとなっているものである。
かかる演算制御部53においては、グロープラグ1の駆動制御処理や、後述するグロープラグ診断処理等が実行されるものとなっている。
【0014】
上記構成のGCU100には、エンジン(図示せず)の駆動制御処理や燃料噴射制御処理などを実行するエンジン制御用電子制御ユニット(
図1においては「ECU」と表記)200から、エンジンの動作状況に応じてグロープラグ1へ対する目標の印加電圧が所定の信号形式で入力、指示されるようになっている。
エンジン制御用電子制御ユニット200は、図示されないエンジンの動作制御や燃料噴射制御等を行う他、エンジンの動作状況に応じたグロープラグ1への印加電圧を演算算出し、演算制御部53へ対して指示するようになっている。
【0015】
上述のGCU100、エンジン制御用電子制御ユニット200には、キースイッチ(
図1においては「KSW」と表記)11の設定情報、すなわち、キースイッチ11がオン位置に設定された際の情報、及び、キースイッチ11がスタート位置に設定された際の情報が、それぞれ入力されるようになっている。
GCU100、及び、エンジン制御用電子制御ユニット200は、キースイッチ11がオンとされると図示されない経路によって車両用バッテリ4からの電源電圧の供給を受けて、始動できるようになっている。
なお、グロープラグ1の駆動制御の手法は種々あるが、本発明の実施の形態におけるグロープラグ診断方法を適用するにあたっては、特定の駆動制御に限定される必要はなく、装置の使用条件等に応じて適宜な駆動制御方法を採り得るものである。
【0016】
次に、上述の演算制御部53によって実行される本発明の実施の形態におけるグロープラグ診断処理の第1の実施例の手順について、
図2を参照しつつ説明する。
まず、
図2に示されたサブルーチンフローチャートは、演算制御部53において従来同様実行されるグロープラグ1の通電駆動制御などと共に実行される1つのサブルーチン処理となっているものである。
また、この
図2に示されたサブルーチン処理は、キースイッチ11がオンとされた際に実行されるものとなっている。
【0017】
しかして、キースイッチ11のオンにより演算制御部53により処理が開始されると、グロープラグ1の通常の駆動と同様に、始動用の通電が開始され、所要の電圧印加が行われる(
図2のステップS102参照)。なお、本発明の実施の形態において、キースイッチ11がオンされた状態にあっては、エンジン(図示せず)は未だ始動されていない状態であることを前提としている。
次いで、診断が可能か否かが判定される(
図2のステップS104参照)。
すなわち、以下の診断処理を実行するに適した所定の診断条件が満足されているか否かが判定される。
【0018】
ここで、所定の診断条件としては、例えば、実行時期を挙げることができる。具体的には、この一連の診断処理が実行されるべき所定の実行時期に達しているか否かを診断条件とすると好適である。所定の実行時期か否かは、より具体的には、例えば、車両の運転時間、車両の走行距離などを判断指標とすると好適である。
なお、このように、車両の運転時間が所定時間経過する毎、又は、車両の走行距離が所定走行距離となる毎に診断を実行することに代えて、車両が運転される毎に診断を実行するようにしても良い。
さらに、例えば、エンジン冷却水の温度が適正範囲にあるか否かを、診断条件としても良い。
【0019】
しかして、ステップS104において、所定の診断条件が満足されたと判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS106の処理へ進む一方、所定の診断条件が満たされていないと判定された場合(NOの場合)には、以後の一連の処理を実行するに適した状態ではないとして、一連の処理は終了され、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0020】
ステップS106においては、始動時の抵抗値傾きデータの取得が行われる。
一般に、グロープラグの抵抗値は、通電が開始されて、その後、適宜な通電時間が経過するまでの間に、
図5において実線の特性線で示されたように概ね時間の経過と共に上昇することは従来から知られている通りである。なお、
図5において、「Rini」 は、グロープラグの通電開始時におけるグロープラグの抵抗値、「Rsat」は、始動後適宜な通電時間が経過してグロープラグの抵抗値変化が安定した時点におけるグロープラグの抵抗値である。
ここで、グロープラグの通電開始時における抵抗値Riniは、グロープラグの通電が開始されて間もないため、グロープラグの発熱は不十分であり、大凡常温に近い状態であるため、その意味で抵抗値Riniは、いわば常温抵抗値である。
また、抵抗値Rsatは、始動後適宜な通電時間が経過してグロープラグの抵抗値変化が安定した時点における抵抗値であるが、別言すれば、グロープラグの発熱による抵抗値の変化が飽和した状態(換言すれば、発熱が飽和した状態)における抵抗値であり、いわば飽和抵抗値である。
【0021】
また、
図5において、「normal」は、グロープラグが正常な状態を意味し、「aging」は、グロープラグが劣化した状態を意味する。
本発明の実施の形態においては、上述のようにグロープラグ1へ通電を開始し始めた時点のグロープラグ1の抵抗値Riniと、通電開始から適宜な通電時間経過後における抵抗値が安定した時点におけるグロープラグ1の抵抗値Rsatを、横軸を通電開始時からの経過時間、縦軸を抵抗値とする直交座標上に、それぞれプロットした場合に、その2点間を結ぶ直線の傾きを、「抵抗値傾き」と定義する。
なお、「抵抗値傾き」は、上述の定義に代えて、グロープラグ1へ通電を開始し始めた時点のグロープラグ1の抵抗値Riniと、抵抗値Riniの取得時から所定時間経過後のグロープラグ1の抵抗値とから、上述したと同様にして算出した値を「抵抗値傾き」としても良い。この場合、所定時間経過後のグロープラグ1の抵抗値は、必ずしも飽和した状態の値である必要はない。
【0022】
したがって、ステップS106においては、まず、始動通電(
図2のステップ102参照)が開始された際におけるグロープラグ1の抵抗値(以下、説明の便宜上「常温抵抗値」と称する)Riniと、適宜な通電時間経過後における抵抗値(以下、説明の便宜上「飽和抵抗値」と称する)Rsatとが、アナログ・デジタル変換器6を介して入力されたシャント抵抗器3の電圧降下を基に演算算出される。
なお、飽和抵抗値Rsatを取得する際の、”適宜な通電時間経過後”は、飽和抵抗値を得るに十分な時間として定められるもので、グロープラグ1の具体的な電気的特性や印加電圧等を考慮して試験やシミュレーション結果に基づいて定めるのが好適である。
【0023】
しかして、グロープラグ1の抵抗値は、次のようにして演算制御部53において、演算処理により求められる。
まず、最初に、車両用バッテリ4の電圧から、シャント抵抗器3の電圧降下と通電制御用半導体素子2の電圧降下の和が減算されて、グロープラグ1の電圧降下が求められる。ここで、車両用バッテリ4の電圧は、通常、エンジン制御用電子制御ユニット200における診断処理等において実際の電圧が取得されるようになっているため、そのデータを流用すれば足りるが、実電圧に代えて、簡易的に公称値を用いるようにしても良い。また、通電制御用半導体素子2の電圧降下も予め標準値が把握されているため、定数として定めておき、これを上述の演算処理に用いれば良い。
【0024】
次いで、グロープラグ1の通電電流は、シャント抵抗器3を流れる電流と同一であり、シャント抵抗器3の抵抗値は予め把握されており、定数として演算制御部53の適宜な記憶領域に記憶されているため、実測されたシャント抵抗器3の電圧降下を、定数として演算制御部53に予め記憶されているシャント抵抗器3の抵抗値で除することにより求められる。
このようにして求められたグロープラグ1の電圧降下を、グロープラグ1の通電電流で除することで、グロープラグ1の抵抗値が求められる。
【0025】
上述のような演算により、先の常温抵抗値Riniと、飽和抵抗値Rsatを求めることができるが、実際に通電開始後の如何なる時点で常温抵抗値Riniを求め、また、その後、如何なる時間経過後に飽和抵抗値Rsatを求めるかは、個々のグロープラグ1の電気的特性や駆動制御の方法等を考慮し、試験結果やシミュレーション結果等に基づいて設定するのが好適である。
【0026】
次いで、飽和抵抗値Rsatと常温抵抗値Riniとの差を、常温抵抗値Riniが得られた時点と飽和抵抗値Rsatが得られた時点との時間差、換言すれば、常温抵抗値Riniを算出するためのシャント抵抗器3の電圧降下が演算制御部53に読み込まれた時点と、飽和抵抗値Rsatを算出するためのシャント抵抗器3の電圧降下が演算制御部53に読み込まれた時点との時間差で除して、その除算結果が始動時の抵抗値傾きとして求められる。
【0027】
次いで、上述のように得られた抵抗値傾きが第1傾き基準値a以上であるか否かが判定され(
図2のステップS108参照)、抵抗値傾きが第1傾き基準値a以上であると判定された場合(YESの場合)には、グロープラグ1は正常であると判定されて(
図2のステップS110参照)、一連の処理が終了され、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
ここで、抵抗値傾きによりグロープラグ1の劣化を判定する根拠について説明する。
グロープラグ1の抵抗値は、通電開始から時間の経過と共に上昇し、時間変化に対する抵抗値の変化、すなわち、抵抗値傾きがあることは、先に述べた通り、一般的に良く知られているところである。
【0028】
本願発明者は、抵抗値傾きとグロープラグ1の使用による劣化との関係を鋭意研究の結果、グロープラグ1の劣化が進むにつれ、常温抵抗値が上昇し、その結果、抵抗値傾きが小さくなるという知見を得るに至った。例えば、
図5において、実線で示された特性線は、使用開始間もないグロープラグの抵抗値傾きの例を示したものであるが、二点鎖線で示された特性線は、そのグロープラグの長期使用により劣化した場合の抵抗値傾きの例を示したものであり、抵抗値傾きが使用当初に比して小さくなっていることが確認できるものとなっている。
【0029】
このような知見に基づき、本願発明者は、グロープラグの抵抗値傾きにより、グロープラグの劣化を判断することができるという結論を得るに至ったもので、ステップS108における判定処理は、かかる本願発明者の研究結果に基づくものである。
なお、ステップS108において、第1傾き基準値aは、グロープラグ1の電気的特性や、使用される装置の運転条件等を考慮して、試験結果やシミュレーション結果等に基づいて、ここに適切な値が設定されるべきものである。
【0030】
一方、ステップS108において、抵抗値傾きが第1傾き基準値a以上ではないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS112の処理へ進み、抵抗値傾きが、第2傾き基準値b以上で、かつ、第1傾き基準値aを下回っているか否かが判定される。
そして、抵抗値傾きが、第2傾き基準値b以上で、かつ、第1傾き基準値aを下回っていると判定された場合(YESの場合)には、グロープラグ1がある程度劣化しているものの、その劣化状態に応じて、グロープラグ1への印加電圧を補正することで継続使用可能として、グロープラグ1の印加電圧を補正するための補正係数の算出が行われることとなる(
図2のステップS114参照)。
【0031】
この補正係数は、抵抗値傾きに応じて適切な値が定まるよう、試験やシミュレーション結果に基づいて予め設定された演算式により演算算出されるものとなっている。そして、演算算出された補正係数は、エンジン制御用電子制御ユニット200の適宜な記憶領域に記憶され、グロープラグ1の通電駆動制御に適宜供されるようになっている。
しかして、ステップS114の処理後は、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0032】
一方、ステップS112において、抵抗値傾きが、第2傾き基準値b以上で、かつ、第1傾き基準値aを下回る範囲ではないと判定された場合(NOの場合)、すなわち、第2傾き基準値bを下回っている場合は、その抵抗値傾きのデータが、演算制御部53、及び、エンジン制御用電子制御ユニット200のそれぞれの適宜な記憶領域に、グロープラグ1の抵抗値傾き異常データとして記憶されることとなる(
図2のステップS116参照)。
また、同時に、グロープラグ1の異常であるとして、いわゆるMILランプ等の所定の警告灯(図示せず)の点灯処理がなされ(
図2のステップS118)、一連の処理が終了されて、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0033】
次に、グロープラグ診断方法の第2の実施例について、
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
この第2の実施例は、キースイッチ11がオンされた際と、キースイッチ11がオフとされた際の各々において以下に説明する処理を実行することで、グロープラグ1の劣化の診断を可能としたものである。
最初に、
図3に示されたサブルーチンフローチャートを参照しつつ、キースイッチ11がオンされた際に実行される診断処理の手順について説明する。
まず、ステップS202〜S214の処理は、
図2で示されたステップS102〜S114までの処理と基本的に同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
【0034】
ステップS212において、抵抗値傾きが、第2傾き基準値b以上で、かつ、第1傾き基準値aを下回る範囲ではないと判定された場合(NOの場合)、すなわち、第2傾き基準値bを下回っている場合は、キースイッチ11の直近のオフ時に、エラー仮判定がなされたか否かが判定される(
図3のステップS216参照)。なお、エラー仮判定は、後述のステップS220において詳述するが、グロープラグ1が異常であるとする暫定的な判断である。
しかして、ステップS216において、キースイッチ11の直近のオフ時に、エラー仮判定がなされていると判定された場合(YESの場合)には、エラー確定、すなわち、グロープラグ1の異常が確実であるとして、いわゆるMILランプ等の所定の警告灯(図示せず)の点灯処理がなされ(
図3のステップS218参照)、一連の処理が終了されて、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
このように、このステップS218では、先にステップS212において、抵抗値傾きが、第2傾き基準値b以上で、かつ、第1傾き基準値aを下回る範囲ではないと判定されていることと、キースイッチ11の直近のオフ時に仮エラー判定がなされていることから、グロープラグ1の異常が確実、すなわち、エラー確定としている。
【0035】
一方、ステップS216において、キースイッチ11の直近のオフ時に、エラー仮判定がなされてはいないと判定された場合(NOの場合)には、先にステップS212において、抵抗値傾きが、第2傾き基準値b以上で、かつ、第1傾き基準値aを下回る範囲ではないとの判定が、キースイッチ11の直近のオフ時以降初めてであることから、グロープラグ1の異常である可能性があるとするエラー仮判定として、エラー仮判定が生じたことが、演算制御部53、及び、エンジン制御用電子制御ユニット200のそれぞれの適宜な記憶領域に記憶、保持されることとなる(
図3のステップS220参照)。
【0036】
次いで、グロープラグ1の印加電圧を補正するための補正係数の算出が行われることとなる(
図3のステップS222参照)。この補正係数の算出は、基本的には、先の
図2におけるステップS114における補正係数の算出処理と同一である。
算出された補正係数は、エンジン制御用電子制御ユニット200の適宜な記憶領域に記憶され、次回の始動の際にグロープラグ1の印加電圧の補正に用いられることとなる。このステップS222の処理後は、一連の処理が終了され、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0037】
次に、キースイッチ11がオフ時の際に実行される診断処理について、
図4に示されたサブルーチンフローチャートを参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する処理は、エンジン(図示せず)の駆動制御が停止されて、車両装置の動作診断等が実行される、いわゆるアフターラン状態にあって、以下に述べるようにキースイッチ11がオフされた際に実行されるものとなっているものである。
しかして、キースイッチ11がオフされることにより演算制御部53による処理が開始されると、グロープラグ1へのテスト通電が行われる(
図4のステップS302参照)。
【0038】
このテスト通電は、先に
図2で説明した第1の実施例における始動用通電(
図2のステップS102)に代わるもので、この後、通電後におけるグロープラグ1の抵抗値を得るためのもので、予め適宜定めたグロープラグ1への印加電圧、通電時間で行われるものである。なお、具体的に如何なる印加電圧、通電時間が適切であるかは、グロープラグ1の仕様や装置全体の仕様等を考慮し、試験やシミュレーション結果等に基づいて定めるのが好適である。
【0039】
次いで、テスト通電の終了時において、グロープラグ1の抵抗値が取得される(
図4のステップS304参照)。なお、グロープラグ1の抵抗値は、先に
図2を参照しつつ説明した第1の実施例におけるステップS106の処理で説明したと同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
次いで、上述の取得されたグロープラグ1の抵抗値が第1基準抵抗値c以下であるか否かが判定され(
図4のステップS306参照)、グロープラグ1の抵抗値が第1基準抵抗値c以下であると判定された場合(YESの場合)には、グロープラグ1は正常であると判定されて(
図4のステップS308参照)、一連の処理が終了され、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0040】
ここで、グロープラグ1の抵抗値が第1基準抵抗値c以下である場合に、グロープラグ1が正常と判定するのは、次述するような本願発明者の研究結果に基づくものである。
まず、本願発明者は、キースイッチ11のオフ後の抵抗値について鋭意研究の結果、キースイッチ11のオフ後の抵抗値は、グロープラグ1の使用時間、年数が経過するに従い上昇するという知見を得るに至った。
図6には、キースイッチ11オフ後のテスト通電時のグロープラグの抵抗値の変化の一例が示されており、同図について説明すれば、まず、同図において、横軸はキースイッチ11のオフ時からの経過時間を、縦軸は、グロープラグの抵抗値を、それぞれ示している。
同図において、実線の特性線は、グロープラグが使用開始間もない時点における抵抗値の変化特性を、二点鎖線の特性線は、グロープラグが劣化状態にある場合の抵抗値の変化特性を、一点鎖線の特性線は、劣化がさらに進み、グロープラグの故障と判断される際の抵抗値の変化特性を、それぞれ表したものである。
この特性線から、グロープラグの劣化が進むに従い、抵抗値が上昇することが確認できる。
【0041】
このような知見に基づき、本願発明者は、キースイッチ11のオフ後の適宜な時点Tend(
図6参照)におけるグロープラグの抵抗値により、グロープラグの劣化を判断することができるという結論を得るに至ったもので、ステップS306における判定処理は、かかる本願発明者の研究結果に基づくものである。
一方、ステップS306において、グロープラグ1の抵抗値が第1基準抵抗値c以下ではないと判定された場合(NOの場合)には、グロープラグ1の抵抗値が、第1基準抵抗値cを超え、かつ、第2基準抵抗値d以下であるか否かが判定される(
図4のステップS310参照)。
【0042】
ステップS310において、グロープラグ1の抵抗値が、第1基準抵抗値cを超え、かつ、第2基準抵抗値d以下の範囲であると判定された場合(YESの場合)には、グロープラグ1がある程度劣化しているものの、その劣化状態に応じて、グロープラグ1への印加電圧を補正することで継続使用可能として、グロープラグ1の印加電圧を補正するための補正係数の算出が行われることとなる(
図4のステップS312参照)。
この補正係数は、取得されたグロープラグ1の抵抗値に応じて適切な値が定まるよう、試験やシミュレーション結果に基づいて予め設定された演算式により演算算出されるものとなっている。そして、演算算出された補正係数は、エンジン制御用電子制御ユニット200の適宜な記憶領域に記憶され、グロープラグ1の通電駆動制御に適宜供されるようになっている。
一方、ステップS310において、グロープラグ1の抵抗値が、第1基準抵抗値cを超え、かつ、第2基準抵抗値d以下の範囲ではないと判定された場合(NOの場合)、すなわち、第2基準抵抗値dを上回っている場合には、キースイッチ11の直近のオン時に、エラー仮判定がなされたか否かが判定される(
図4のステップS314参照)。
【0043】
ステップS314において、キースイッチ11の直近のオン時に、エラー仮判定がなされていると判定された場合(YESの場合)には、エラー確定、すなわち、グロープラグ1の異常が確実であるとして、キースイッチ11が次回、オンとされた際に、警告動作が行われるよう予約状態とされ(
図4のステップS316参照)、一連の処理が終了されて、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
すなわち、演算制御部53の記憶領域の内、不揮発性を有する適宜な記憶領域に、キースイッチ11が次回、オンとされた際に警報動作が実行せしめられるよう所定のコマンド等が記憶され、予約状態とされる。そして、キースイッチ11が次回、オンとされた際に、このコマンド等が解読され、警報動作が実行されるようになっている。
ここで、警報動作は、例えば、いわゆるMILランプ等の所定の警告灯(図示せず)の点灯処理に代表されるものであるが、これに限定される必要はなく、警告灯の点灯に代えて、又は、警告灯の点灯と共に、警告音の発生や音声による報知等を行うのが好適である。
【0044】
一方、ステップS314において、キースイッチ11の直近のオン時に、エラー仮判定がなされていないと判定された場合(NOの場合)には、先にステップS310において、グロープラグ1の抵抗値が、第1基準抵抗値cを超え、かつ、第2基準抵抗値d以下の範囲でないとの判定が、キースイッチ11の直近のオン時以降初めてであることから、グロープラグ1の異常である可能性があるとするエラー仮判定として、エラー仮判定が生じたことが、演算制御部53、及び、エンジン制御用電子制御ユニット200のそれぞれの適宜な記憶領域に記憶、保持されることとなる(
図4のステップS318参照)。
このように、第2の実施例においては、キースイッチ11のオン時とオフ時のそれぞれにおいて、診断処理を実行することにより、グロープラグ診断処理のより一層の信頼性、確実性の向上が確保されることとなる。