特許第5996029号(P5996029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5996029
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】白衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20160908BHJP
   A41B 1/22 20060101ALI20160908BHJP
   A41D 1/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   A41D13/00
   A41B1/22
   A41D1/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-70473(P2015-70473)
(22)【出願日】2015年3月31日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】512031862
【氏名又は名称】村山 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100154210
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 宏
(72)【発明者】
【氏名】村山 秀敏
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−046693(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3058244(JP,U)
【文献】 実公昭10−008739(JP,Y1)
【文献】 仏国特許出願公開第01483701(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 1/22
A41D 1/02−1/04
A41D 3/00−3/08
A41D 13/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部と袖部とを有する白衣本体の胴体部の内側に縫合されて白衣本体の開襟部を被覆する上部部材を備え、
前記上部部材は、ワイシャツ状の襟部と、該襟部の両側に前記白衣本体の袖部と胴体部との境界まで伸びて前方下方に延伸される前方部と、該襟部の両側に前記白衣本体の袖部と胴体部との境界まで伸びて後方下方に延伸される後方部とを有し、
前記縫合は、前記前方部及び前記後方部の左右端及び下端において行われたものであることを特徴とする、白衣。
【請求項2】
前記後方部の左右端は、垂直方向に前記白衣本体の袖部の付根の縦幅以下の長さであることを特徴とする、請求項1に記載の白衣。
【請求項3】
前記前方部の下端の中央に、50mm以上の横幅の、前記白衣本体と前記上部部材の縫合されていないネクタイ挿入口を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の白衣。
【請求項4】
前記開襟部の下方に前記白衣本体の前方を係止するボタンを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白衣。
【請求項5】
前記開襟部の下方に前記白衣本体の前方を係止するボタンを有さず、プルオーバ形式のものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師が着用する白衣に関する。
【背景技術】
【0002】
医師(歯科医師を含む、以下同じ)は、診察や治療の際に白衣を着用していることが多い。多くの場合、医師は、ワイシャツを着用し、ネクタイを締め、その上に(又はその上のジャケットを着用してさらに上に)白衣を着用する。ワイシャツとネクタイによって折り目正しい整然とした服装の印象を与え、患者がそれを期待することも多いためである。
【0003】
一方、ワイシャツを着用し、その上に(又はその上のジャケットを着用してさらに上に)白衣を着用することは、医師の体の動きを不自由にしていた。ワイシャツ(又はジャケット)と白衣とが接触する箇所における摩擦により、医師の体の動きに抵抗する力が発生する。医師は、抵抗力を不快に感じ、抵抗力に対する力を必要とするために疲労を得る。
【0004】
整然とした服装の印象を与え、かつ、医師の体の動きを不自由にしないためには、例えば特許文献1に開示された着脱式交換襟と同様に、ワイシャツのうち白衣の首元(いわゆるVゾーン)から視認される部分のみを部材として用意し、その部材を白衣本体に付着すればよいようにも思える。しかし、この方法の場合には、部材と白衣本体との付着部において、衣服の動きが不自然になってしまう。具体的には、ワイシャツを着用しその上に白衣を着用する場合には、医師が体を前傾させたときに白衣が垂下して白衣とワイシャツとの間に空隙ができる。部材と白衣本体とを付着させるとこの空隙が構成されないため、不自然である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−070783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ワイシャツの首部を含んだ整然とした服装の印象を与える白衣であって、医師の体の動きを不自由にすることが少なく、衣服の動きが不自然にならないものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の白衣は、
胴体部と袖部とを有する白衣本体の胴体部の内側に縫合されて白衣本体の開襟部を被覆する上部部材を備え、
前記上部部材は、ワイシャツ状の襟部と、該襟部の両側に前記白衣本体の袖部と胴体部との境界付近まで伸びて前方下方に延伸される前方部と、該襟部の両側に前記白衣本体の袖部と胴体部との境界付近まで伸びて後方下方に延伸される後方部とを有し、
前記縫合は、前記前方部及び前記後方部の左右端及び下端において行われたものであることを特徴とする。
【0008】
上部部材がワイシャツのように見える。ワイシャツの首部を含んだ整然とした服装の印象を与える。
白衣本体の襟の箇所では上部部材と白衣本体とが縫合されていないので、医師が体を前傾させたときに白衣本体が垂下して白衣本体とワイシャツとの間に空隙ができる。衣服の動きが不自然にならない。
上部部材と白衣本体との摩擦は、前方部、後方部にのみ生じる。白衣本体の袖部及び上部部材のない下方では生じない。しかも、縫合されていることにより上部部材と白衣本体との相対位置が固定され、上部部材と白衣本体とが異方向に移動することに起因する摩擦が小さい。医師の体の動きの不自由が減少する。
【0009】
本発明の白衣は、
前記後方部の左右端は、垂直方向に前記白衣本体の袖部の付根の縦幅以下の長さであることを特徴とする。
【0010】
後方部と白衣本体との摩擦によって肩甲骨の動き、及び背筋の動きに対する抵抗力を生じることがない。医師の体の動きの不自由がさらに減少する。
【0011】
本発明の白衣は、
前記前方部の下端の中央に、50mm以上の横幅の、前記白衣本体と前記上部部材の縫合されていないネクタイ挿入口を有することを特徴とする。
【0012】
ネクタイを自然に着用することができる。
【0013】
本発明の白衣本体は、
前記開襟部の下方に前記白衣本体の前方を係止するボタンを有することを特徴とする。
【0014】
広く知られた前開きの白衣である。
【0015】
本発明の白衣は、
前記開襟部の下方に前記白衣本体の前方を係止するボタンを有さず、プルオーバ形式のものであることを特徴とする。
【0016】
プルオーバ形式の白衣もある。
【発明の効果】
【0017】
ワイシャツの首部を含んだ整然とした服装の印象を与える白衣であって、医師の体の動きを不自由にすることがなく、衣服の動きが不自然にならないものを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、白衣を示す図である。(実施例1)
図2図2は、上部部材を示す図である。(実施例1、2)
図3図3は、ネクタイの着用を説明する図である。(実施例1、2)
図4図4は、白衣を示す図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0020】
図1は、白衣を示す図である。図1(A)に正面から見た図、図1(B)に背面から見た図を示す。白衣1は、白衣本体2と上部部材3とを縫合したものである。白衣本体2は、胴体部21及び袖部22からなる。(図1(A)における一点鎖線は胴体部21と袖部22の境界のみを示す。何らかの物があることを必要としない。)上部部材3は、襟部31、前方部32及び後方部33からなる。襟部31は、ワイシャツの襟部の形状であり、図1(A)に示すように、白衣1を着用すると、ワイシャツの上から白衣を着用したように見える。
【0021】
白衣本体2と上部部材の縫合は、前方部32及び後方部33の左右端及び下端を、胴体部21に縫合するものである。前方部32及び後方部33の左右端は胴体部21と袖部22の境界付近まで伸びている。縫合部40は、胴体部と袖部の境界に、又は胴体部の前身頃と後身頃の境界にある、若しくは近接している。縫合部40に表れる縫い目は、胴体部と袖部を、又は胴体部の前身頃と後身頃を縫い合わせたように見え(これらの縫い合わせに合わせて上部部材3を縫合してもよい)、不自然な外観とならない。
【0022】
前方部32の下端の前方縫合部41においても縫合されている。ただし、前方部32の下端の中央に、縫合のないネクタイ挿入口42が設けられている。ネクタイ挿入口の横幅(図1(A)にWで示す。)は、ネクタイを上方から下方に通すため、ネクタイの横幅よりも大きい必要がある。50mm以上であることが好ましい。
【0023】
後方部33の下端の後方縫合部43においても縫合されている。ここで、後方部33左右端の長さは袖部22の付根の縦幅(図1(B)にHで示す。)以下である。後方部33は胴体部21の肩の部分の形状に沿って湾曲するので、後方縫合部43は、袖部22の付根の下端よりも上方にある。後方縫合部43よりも下方においては、後方部33がなく、後方部33(上部部材3)と胴体部21(白衣本体2)との摩擦による抵抗力が発生しない。後方縫合部43の位置に鑑みれば、医師の肩甲骨及び背筋については、その動作に対する抵抗力が発生しない。
【0024】
また、袖部22についても、上部部材3が存在しないので、医師の上腕の動作に対する抵抗力も発生しない。以上の、上腕、肩甲骨及び背筋のいずれの動作に対しても抵抗力が発生せず、医師の体の動きを不自然にすることがない。また、これらの抵抗力を補う力を脇腹部の筋肉から出して脇腹部の筋肉の疲労に繋がる可能性もない。
【0025】
縫合部40、前方縫合部41及び後方縫合部43のいずれも、上部部材3の襟部31とは別の箇所に設けられている。襟部31は、胴体部21(白衣本体2)と縫合されていない。このため、医師が体を前傾させたときに襟部31と胴体部21との間に空隙ができるように胴体部21が垂下して、自然に見える。
【0026】
図2は、上部部材を示す図である。図2(A)に正面から見た図、図2(B)に背面から見た図、図2(C)に斜視図を示す。図2(C)に示すように、上部部材3は、ワイシャツの襟部の形状である襟部31と、ワイシャツ生地の前方部32及び後方部33とからなる。前方部32と後方部33とはそれらの上端(肩の箇所)が繋がっており、上部部材3全体としては、ワイシャツの一部分と同様である。
【0027】
図2(A)に示すように、前方部32は、前開きのボタンを有している。これらのボタンを外して白衣1を着脱することができる。
【0028】
図2(B)に示すように、後方部33は、垂直方向に短い。図2(B)においてhで示す左右端の長さは、H以下である。これにより、医師の肩甲骨及び背筋の動作に対する抵抗力(後方部33と胴体部21の摩擦によるもの)が発生しないようになっている。
【0029】
図3は、ネクタイの着用を説明する図である。ネクタイ5は、前方部32よりも垂直方向に長い。そこで、前方部32の下端の中央に設けられた縫合のないネクタイ挿入口42に、ネクタイを上方から下方に通す。
【0030】
以上詳細に説明したように、本実施例の白衣1によれば、衣服の動きが不自然にならずに整然とした服装の印象を与えることができ、医師の体の動きを不自由にすることがない。
【実施例2】
【0031】
本実施例は、プルオーバ形式の白衣を示すものである。白衣本体2の形状のみが実施例1と相違する。他は実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。実施例1において図2に示した上部部材の形状及びサイズ、図3に示したネクタイの着用については、本実施例は実施例1と同様である。
【0032】
図4は、白衣を示す図である。白衣1は、首から被って着用するプルオーバ形式のものである。前方部32の前開きのボタンを外して白衣1を着脱することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ワイシャツの首部を含んだ整然とした服装の印象を与える白衣であって、医師の体の動きを不自由にすることがなく、衣服の動きが不自然にならないものである。多くの医師による利用が考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 白衣
2 白衣本体
21 胴体部
22 袖部
3 上部部材
31 襟部
32 前方部
33 後方部
4 縫合部
41 前方縫合部
42 ネクタイ挿入口
43 後方縫合部
5 ネクタイ
【要約】      (修正有)
【課題】ワイシャツの首部を含んだ整然とした服装の印象を与える白衣であって、医師の体の動きを不自由にすることが少なく、衣服の動きが不自然にならないものを提供する。
【解決手段】胴体部と袖部とを有する白衣本体2の胴体部21の内側に縫合されて白衣本体の開襟部を被覆する上部部材3を備える白衣を提供する。上部部材は、ワイシャツ状の襟部と、該襟部の両側に前記白衣本体の袖部22と胴体部との境界まで伸びる肩部と、該襟部及び該肩部から前方下方に延伸される前方部と、該襟部及び該肩部から後方下方に延伸される後方部とを有する。前方部、後方部及び肩部の左右端、並びに、前記前方部及び前記後方部の下端において上部部材と白衣本体を縫合する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4