(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボデー内に設けた弁体が軸装部に軸装したステムを介して回転自在に設けられ、前記軸装部或は前記ステムの何れか一方又は双方に設けた環状の装着溝に所定の長さを有する導電性の薄板波形部材が、その波の高さ(H)方向が前記軸装部或は前記ステムのほぼ径方向となるように、かつその板幅(X)方向が前記軸装部或は前記ステムのほぼ軸方向となるように装着され、前記薄板波形部材が自身のもつ弾性復元力により、前記薄板波形部材の一方側の山と他方側の谷とが前記ステムの外周面と前記軸装部の内周面の双方に確実に接触されるようにしたことを特徴とする帯電防止機能付バルブ。
前記軸装部と前記ステムとの上方の間隙には、前記薄板波形部材の波形状の波の高さを縮めた状態で前記装着溝に挿入するための環状の挿入口が形成された請求項1に記載の帯電防止機能付バルブ。
前記軸装部における前記装着溝の位置は、前記ステムの軸シール位置の上方であり、当該装着溝に前記薄板波形部材が湾曲状態に装着され、この薄板波形部材は、その両端部を拡径方向の弾性力が蓄積された状態で前記装着溝の内周面に弾性係合され、かつ前記薄板波形部材の中心側を支点に湾曲させたときに生じる圧力により前記ステムに弾性接触された請求項1又は2に記載の帯電防止機能付バルブ。
前記ステムの外周には、テーパまたはR面が設けられ、前記薄板波形部材が前記テーパまたはR面に沿わせて前記挿入口から挿入可能に設けられた請求項2又は3に記載の帯電防止機能付バルブ。
前記軸装部にグランドプレートが設けられ、このグランドプレートに設けられた前記装着溝に前記薄板波形部材が挿入された状態で、前記薄板波形部材と前記ステムが断続的に接触されるようにした請求項1乃至6の何れか1項に記載の帯電防止機能付バルブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の特許文献1のような帯電防止構造のバルブでは、金属球と圧縮ばねとを凹溝に格納しつつカシメ加工を行うことが難しいことから、この帯電防止構造を設ける場合には手間がかかる。しかも、カシメ加工を失敗した場合には、金属球が弁体に接触できなかったり適切に動作できなくなるおそれがあるため、ステムを交換したり製作し直して再度カシメ加工を施す必要がある。金属球、圧縮ばねのステムへの取付スペースの確保も難しく、ステムの強度を保持しながら取付スペースを設ける必要がある。金属球、圧縮ばねが接液部に設けられているため、接液状態で動作できるようにするためには、特殊な材料で成形する必要が生じることもある。
さらには、カシメ状態の良否を外部から判断することが難しく、組立後の金属球や圧縮ばねの装着の確認も困難になっていた。
【0006】
後者の特許文献2のボールバルブは、導電性の板ばねの脱落防止用として、この板ばねが装着されるグランドの上面が押圧板で覆われているため、板ばねの装着の確認が困難になる。板ばねを装着する場合には、グランドをステムから取外した状態で、予め折り曲げ加工した板ばねをさらに手で折り曲げながらグランド内周の凹溝に装着しなければならないため、板ばねの装着が困難であり、グランドやステムとの接触点を一定に保つことも難しくなる。板ばねの装着後には、再度グランドをステムに装着する必要があり、バルブの使用時には、板ばねの両端部と、これらと180°の角度で対向する屈曲部とをそれぞれグランド内周に接触させているため、接触が不安定になって静電気を除去できない場合がある。このとき、静電気を導電させるためのルートが、グランドから押え板を介してボルトからボデーになっていることも導電性悪化の不安定要素になる。
ステムを外周囲から抱きかかえるように板ばねが配置されているため、この板ばねのステムへの接触力が大きくなり、板ばねのばね荷重によりステムのトルクが上昇して操作に悪影響を及ぼすこともあった。
【0007】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、弁体やステムへの静電気を除去して帯電を確実に防止し、簡単な構造により導電用の部品を外部から容易に取付けでき、バルブの組立て前後にかかわらずこの部品の有無や装着状態を外部から判別することができ、接触抵抗を軽減して操作性を確保し、高い汎用性により製作できる帯電防止機能付バルブとその装着治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ボデー内に設けた弁体
が軸装部に軸装したステムを介して回転自在に設け
られ、軸装部或は前記ステムの何れか一方又は双方に設けた環状の装着溝に所定の長さを有する導電性の薄板波形部材
が、その波の高さ(H)方向が軸装部或はステムのほぼ径方向となるように、かつその板幅(X)方向が軸装部或はステムのほぼ軸方向となるように装着
され、薄板波形部材が自身のもつ弾性復元力により、薄板波形部材の一方側の山と他方側の谷とがステムの外周面と軸装部の内周面の双方に確実に接触
されるようにした帯電防止機能付バルブである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記軸装部と前記ステムとの上方の間隙には、前記薄板波形部材の波形状の波の高さを縮めた状態で前記装着溝に挿入するための環状の挿入口
が形成された帯電防止機能付バルブである。
【0010】
請求項3に係る発明は、軸装部における装着溝の位置は、ステムの軸シール位置の上方であり、当該装着溝に薄板波形部材
が湾曲状態
に装着
され、この薄板波形部材
は、その両端部を拡径方向の弾性力が蓄積された状態で装着溝の内周面に弾性係合され、かつ薄板波形部材の中心側を支点に湾曲させたときに生じる圧力によりステムに弾性接触された帯電防止機能付バルブである。
【0011】
請求項4に係る発明は、ステムの外周に
は、テーパまたはR面
が設け
られ、薄板波形部材
がテーパまたはR面に沿わせて挿入口から挿入可能に設け
られた帯電防止機能付バルブである。
【0012】
請求項5に係る発明は、挿入口の幅をステムの外周面と軸装部の内周面との幅より小さくした帯電防止機能付バルブである。
【0013】
請求項6に係る発明は、薄板波形部材
がステムの円周の25%から50%程度の長さ
である帯電防止機能付バルブである。
【0014】
請求項7に係る発明は、軸装部にグランドプレート
が設け
られ、このグランドプレートに設け
られた装着溝に薄板波形部材が挿入された状態で、薄板波形部材とステム
が断続的に接触
されるようにした帯電防止機能付バルブである。
【0015】
請求項8に係る発明は、帯電防止機能付バルブの装着治具であって、円筒体の端部に環状突部
が形成
され、この環状突部
は、挿入口に挿入された状態で薄板波形部材が装着溝に装着される装着治具である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、軸装部或はステムの何れか一方又は双方に設けた環状の装着溝に導電性の薄板波形部材を装着し、この薄板波形部材をステムと軸装部とに接触させることにより、この薄板波形部材を介して弁体やステムに帯電しようとする静電気を軸装部側からボデー側に導電し、ボデーから外部に放電することで静電気の帯電を確実に防止する。しかも、薄板波形部材が外周方向に弾発しながら接触していることで、ステムへの接触抵抗を軽減して軽い操作トルクで優れた操作性を確保しながらバルブ操作できる。バルブを分解したり部品を取り外すことなく導電用の部品を簡単な構造により外部から容易に取付けでき、バルブの組立て前後にかかわらずこの部品の有無を外部から目視で判別して誤装着も防止できる。各種のバルブサイズに応じて薄板波形部材を設けることができ、薄板波形部材の取付スペースも小さいため高い汎用性により製作できる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、軸装部をボデーに一体化した状態で、軸装部とステムとの上方の間隙の挿入口から薄板波形部材を波形状による弾性力を蓄積しながら挿入し、挿入口に続いて設けられた装着溝に装着できる。このため、軸装部を着脱することなくバルブを組立てた状態で容易に薄板波形部材を取付けでき、薄板波形部材が装着溝まで到達したときに弾性力により復元することで、抜け出しを防止しながら所定位置に確実に配置できる。装着後には、軸装部を取り外すことなく装着溝の上方の挿入口から薄板波形部材の有無や装着状態を目視により確認でき、使用時においては、波状の薄板波形部材が複数箇所でステムと軸装部との双方に接触することにより、連続した導通が可能になる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、装着溝がステムの軸シール位置の上方であることで流体の接液を確実に防ぎ、流体の種類に左右されることなく薄板波形部材を各種材料により形成できる。湾曲状態の薄板波形部材の両端部が装着溝の内周面に弾性係合し、かつ中心側を支点に湾曲させたときの圧力によりステムに弾性接触することで、この薄板波形部材の装着溝への係止状態が保持されて抜け出しを確実に防止できる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、薄板波形部材をテーパまたはR面に沿わせて装着溝の挿入口から滑らせるように挿入することで、この薄板波形部材をテーパまたはR面に沿って弾性力に抗するように自然に縮径させて装着溝まで案内し、装着溝に到達したときに拡径させて装着溝の外周に沿って装着できる。このため、薄板波形部材に縮径させる方向に無理な力を加えることなく、容易な装着が可能になる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、薄板波形部材が復元状態でステム外周面と軸装部内周面との間の装着溝に係止したときに、挿入口の幅がこの装着溝より小さいことによって薄板波形部材の装着溝への装着状態を維持して挿入口からの脱落を防止できる。
【0021】
請求項6に係る発明によると、薄板波形部材を装着溝よりも短く設け、この薄板波形部材に適度の拡径方向の弾性力を与えつつ装着溝に係止可能になり、この薄板波形部材でステムと装着溝との接触状態を維持して静電気を除去しつつ、ステムに対して必要最小限の接触状態に抑えることで操作トルクの増加を防いで軽い操作力によるバルブ開閉が容易となる。
【0022】
請求項7に係る発明によると、ボデーと別体に設けたグランドプレートに薄板波形部材を簡単に挿入して装着でき、グランドプレートを介して装着溝をボデーの上部側に設けることができるため、バルブを分解することなくボデー上部から薄板波形部材を装着できる。薄板波形部材とステムとが断続的に接触するため、薄板波形部材の接触面積を小さくしてステムの摩耗や操作トルクの上昇を防ぎ、多数の接触ポイントでこれらを当接させることにより導電性が安定して確実に静電気を除去する。
【0023】
請求項8に係る発明によると、薄板波形部材をボデーに仮着した状態でこのボデーの上部から環状突部を装着溝に挿入することで、この環状突部が薄板波形部材を押圧して装着溝まで挿入し、薄板波形部材を装着溝の適切な位置に簡単に装着できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明における帯電防止機能付バルブとその装着治具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の帯電防止機能付バルブの一実施形態を示しており、
図2においては、
図1におけるA−A拡大断面図を示している。
【0027】
図1において、本発明における帯電防止機能付バルブ(以下、バルブ本体1という)は、例えば、トラニオン型のボールバルブからなり、このバルブ本体1は、ボデー2の両側にキャップ2aをボルトナット2bにより固定したスリーピース構造を有している。バルブ本体1において、ボデー2内には弁体3が設けられ、この弁体3は、ボデー2上部に設けられた軸装部6に軸装されたステム5を介して回転自在に設けられている。
【0028】
弁体3の上下は、円筒状のラジアルベアリング11、円板状のスラストワッシャ12を介して、例えば、ステンレスなどの金属製トラニオンプレート13に軸支されている。ラジアルベアリング11は、非導電性の樹脂からなり、本実施形態では外周がステンレスで補強されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなり、スラストワッシャ12についても、例えば、PTFEなどの非導電性の樹脂からなっている。トラニオンプレート13は、位置決めピン14によりボデー2に位置決め固定されている。
【0029】
弁体3の両側には、非導電性の樹脂、例えばPTFE製のボールシート15が装着されたシートリテーナ16がそれぞれ配置され、このシートリテーナ16は、ばね17により弁体3の方向に付勢されている。このため、弁体3に帯電した静電気は、ばね17によりボールシート15を介してはボデー2、キャップ2aに逃がすことのできない構造になっている。
【0030】
ボデー2、キャップ2a、弁体3、ステム5、後述のボンネット8及びグランドプレート9は、導電性の金属、例えばSUS316などのステンレス鋼により形成される。
ボンネット8とグランドプレート9とはボルト18により固定されており、グランドプレート9は、図示しないボルトによりボデー2に固定されている。ステム5とボンネット8、ステム5とグランドプレート9とは、それぞれの部品の間にステム5が回転するための隙間を設けており、非接触の状態で配置されている。
【0031】
軸装部6はボンネット8と、このボンネット8の上部側に設けられたグランドプレート9とを有している。ボンネット8の内周にはシール用Oリング7が装着され、このOリング7とステム外周側との当接部位が軸シール位置となる。さらに、ボンネット8とステム5との間には、PTFE等の非導電性材料からなるラジアルベアリング26が装着されている。
図8に示すように、ボンネット8とグランドプレート9との間には、例えば、PTFE等の樹脂からなる非導電性材料からなるガスケット19が部分的に装着される。本実施形態においては、グランドプレート9は、下面にはガスケット19を押圧する機能を備え、上面にはバルブを開閉操作するアクチュエータ(図示せず)を搭載する機能を備える。グランドプレート9とステム5との間には、PTFE等の非導電性材料からなるラジアルベアリング27が装着されている。
【0032】
軸装部6とステム5との間において、軸装部6側であるグランドプレート9の上部には環状の装着溝10が設けられ、
図2に示すように、この装着溝10に導電性を有し、所定の長さを有する薄板波形部材20が装着されている。装着溝10は、ステム5の軸シール位置の上方側に設けられ、これにより薄板波形部材20が、流体が流れる接液部分の外側に配置されている。
【0033】
図2〜
図4に示すように、薄板波形部材20は、軸装部6側に形成された装着溝10にステム5と同芯状の湾曲状態で装着され、ステム5の外周面22と軸装部6の内周面23に、それぞれ波形の山と谷が断続的に接触された状態に設けられる。薄板波形部材20の両端部24、24は、拡径方向の弾性力が蓄積された状態で軸装部内周面23の装着溝10に弾性係合され、かつこの薄板波形部材20を、長さ方向の中心側である中心部25を支点に湾曲させたときに生じる圧力により弾性接触させている。
【0034】
図5、
図6において、薄板波形部材20は金属製からなり、例えば、SUS304−CSPなどのばね鋼や銅合金などの金属材料で設けられる。なお、
図5、
図6では、薄板波形部材20の形状を、外力が加えられていない自然な状態で図示している。
薄板波形部材20の長さLは、ステム5の円周の25%から50%程度であることが望ましい。長さLがステム5の円周の25%を下回ると短すぎて薄板波形部材20の湾曲が小さくなり、薄板波形部材20が装着溝10から外れてしまうおそれがある。ステム5が回動の際にやや傾いた場合、このステム5に薄板波形部材20に接触しなくなるおそれもある。一方、長さLがステム5の円周の50%を超えると長すぎて薄板波形部材20を装着溝10に装着するときに手間がかかることがある。
【0035】
薄板波形部材20の板厚tについては、0.06mm<板厚t<0.2mmの範囲内であり、好ましくは0.1mm程度であるとよい。板厚tが0.06mm以下であると薄すぎて弾性力が弱くなり、導電のために必要な接触が得られなくなる可能性がある。一方、板厚tが0.2mm以上であると厚すぎて固くなり、特に波形になっていることで強度が強すぎて湾曲させることが困難になることがある。
【0036】
薄板波形部材20全体の形状としては、波の数、波の高さH、波の幅Wを特に考慮する必要がある。1つの波の幅Wを山から山、或は谷から谷までとし、この1サイクルを1つの波としたときに、1サイクルの波の数を増やすことで、ステム外周面22と軸装部内周面23とのそれぞれの接触ポイントが増えるため、これらが導通しやすくなる。しかし、波の数を多くし過ぎると、薄板波形部材20を湾曲させて装着溝10に挿入するときに、この波がボンネット8に引っ掛かりやすくなって取扱いにくくなるため、この点を考慮しながら適宜の波の数にするとよい。
【0037】
波の高さHは、大きくすることでばね荷重が安定しやすくなるため、ステム外周面22、軸装部内周面23への接触状態が安定する。しかし、波の高さHを大きくし過ぎると、ステム外周面22、軸装部内周面23との接触抵抗の大きさが過剰になり、操作トルクが過大となるため、適度の大きさに設けることが望ましい。
波の幅Wは、広くすることで薄板波形部材20を装着溝10に挿入する際に、湾曲状に弾性変形しやすくでき、装着時の塑性変形を防いで均一なばね荷重を確保できる。
【0038】
これらのことを考慮した上で、薄板波形部材20を製作する場合には、波の数は、最少で2つ、最大で6つ程度が適当であり、波の高さHは、装着溝10の溝幅よりも、例えば0.2〜0.4mm程度大きくなることが望ましく、波の幅Wは、薄板波形部材20の挿入時に塑性変形しない寸法に設定する必要がある。
【0039】
本実施形態における薄板波形部材20の寸法としては、例えば、
図1におけるステム径φDがφ60mmである場合、
図5、
図6において、薄板波形部材20の波の数:6、波の高さH:1.7mm、波の幅W:15mmとし、長さLを90mm、板厚tを0.1mmとし、
図3、
図4に示した板幅Xを4mmとするとよい。この場合、1つの波の曲面Rは、半径8〜9mm程度になる。この曲面Rを有することで、ステム5や装着溝10との接触点を多くしながらも、ステム5への接触抵抗を軽減して軽い操作トルクでバルブ本体1を操作することができる。
【0040】
図4に示すように、ステム5におけるグランドプレート9の上面付近の外周にはテーパ30が設けられ、軸装部6とステム5との上方の間隙には環状の挿入口31が形成され、この挿入口31に続けて下方側に装着溝10が位置している。挿入口31には、テーパ30と対向する位置にテーパ面32が設けられ、これらテーパ30とテーパ面32との間から薄板波形部材20が挿入口31を介して装着溝10に挿入可能に設けられる。これによって、挿入口31の開口側が広くなって薄板波形部材20を挿入しやすくなり、挿入された薄板波形部材20が、テーパ30、テーパ面32により装着溝10まで案内される。テーパ30はR面であってもよく、薄板波形部材20をこのテーパ30またはR面に沿わせて装着溝10の挿入口31から挿入可能となる。また、本実施形態において、挿入口31にテーパ面32を設けているが、このテーパ面32は必須ではなく、テーパ面32を設けないストレート形状の挿入口31であってもよい。テーパ面32の代わりに図示しないアール面を設けるようにしてもよい。
【0041】
上記したバルブ本体1に薄板波形部材20を装着する場合には、
図2、
図3に示すように薄板波形部材20を湾曲させ、ステム5とグランドプレート9との間から
図3に示した実線の下方向の矢印の向きに挿入口31から挿入する。これにより、薄板波形部材20が湾曲状態でテーパ30、テーパ面32に沿って滑り、装着溝10に達したときに拡がる。
【0042】
挿入口31の幅W1は、
図6に示した薄板波形部材20の板厚tよりも大きく、且つ、波の高さHよりも小さく形成されている。
従って、薄板波形部材20は、波形状の波の高さを縮めた状態、具体的には、径方向に押し潰されつつもそれぞれの波形部分の弾性力を蓄積した状態で、挿入口31から装着溝10に挿入される。
【0043】
挿入された薄板波形部材20が装着溝10まで達すると、この装着溝10におけるステム5と軸装部6との対向位置で前記の弾性力により復元して、薄板波形部材20の波形部分の山や谷を、それぞれステム5の外周面22と軸装部6の内周面23との両方に接触させるようになっている。
【0044】
装着溝10の形成位置におけるステム5とグランドプレート9(装着溝10)との幅W2は、幅W1よりも大きくなっており、換言すると、挿入口31の幅W1は、ステム外周面22と装着部内周面23との幅である幅W2より小さくなっており、且つ、
図6の薄板波形部材20の波高さHよりも小さく形成されている。
従って、薄板波形部材20は、波形部分の弾性力を蓄積した状態で装着溝10に係止固定される。
【0045】
このとき、薄板波形部材20は固定されておらず、装着溝10内を周方向に自由に動けるようになっており、この状態で湾曲状に装着されていることにより、
図2、
図3において、その端部24、24側には直線状態に戻ろうとする外向きの力F1、F1が発生し、中央部25にも直線状態に戻ろうとする内向きの力F2が生じることになる。そのため、薄板波形部材20は、端部24、24側を支点にして初期の状態に戻ろうとし、力F1によりこの端部24、24が装着溝10に圧接し、力F2により中央部25がステム外周面22に圧接する。このため、薄板波形部材20を介してステム5とグランドプレート9とが導通する。
薄板波形部材20は、軸装部内周面23の装着溝10とステム外周面22との間に弾発した状態で係止しているため、装着溝10から脱落が確実に防がれる。
【0046】
さらに、薄板波形部材20は、その波形により外周側突部40、内周側突部41が形成され、これらは、波形の山、谷をなしている。薄板波形部材20の装着溝10への装着状態において、これら外周側突部40、内周側突部41は、軸装部内周面23とステム外周円22との間でやや圧縮された状態で配置され、これにより、薄板波形部材20のステム5、グランドプレート9への弾発力が高まり、これらの導通状態を高めた状態にできる。
【0047】
外周側突部40、内周側突部41は、薄板波形部材20を装着溝10に装着するときに決定されるものであり、予め決められているものではない。薄板波形部材20には表裏側がないため、その装着の向きにこだわることなく任意の向きに装着できる。
【0048】
なお、上記実施形態の帯電防止機能付バルブにおいて、装着溝10を軸装部6の内周面側に設ける場合、この装着溝10をグランドプレート9に設ける以外にも、軸シール位置の上方であればボンネット8に設けるようにしてもよい。さらに、装着溝10を、グランドプレート9と図示しないアクチュエータ取付部品との二部品で構成したり、グランドプレート9の内周に止め輪(図示せず)を係止して構成してもよい。
【0049】
一方、装着溝10をステム5の外周面22に設け、この装着溝10に薄板波形部材20を装着してもよい。このように、環状の装着溝10を軸装部6或はステム5の何れか一方又は双方に設け、この装着溝10に装着した薄板波形部材20をステム外周面22と軸装部内周面23との両方に接触させて帯電を防止できる。
【0050】
さらに、装着溝10は、脱落を防止しつつ薄板波形部材20を装着可能であって帯電を防止できるものであれば、環状以外の各種の形状に設けられていてもよい。例えば、外周側突部40、内周側突部41が均等に圧接可能な形状に設けることにより、ステム回転時のトルクの軽減化やトルクの安定化も可能になる。
【0051】
また、薄板波形部材20は、少なくともステム5の円周の25%以上の長さを有し、両端部24、24が軸装部内周面23、中心部25がステム外周面22に当接可能であれば、流路方向に対してステム5の一次側、二次側の何れに装着されていてもよい。
【0052】
さらに、薄板波形部材20は、その端部24、24が装着溝10の内周面に係止していなくてもよく、この場合、端部24に近い外周側突部40が支点となって上記の力F2により中央部25がステム外周面22に圧接することになる。
【0053】
続いて、本発明の帯電防止機能付バルブの上記実施形態における作用を説明する。
本発明の帯電防止機能付バルブにおいて、薄板波形部材20の装着時には、軸装部6が取り付けられたボデー2のステム5の上方から、波の高さを縮めた状態の薄板波形部材20を挿入口31に挿入すればよく、この挿入口31からテーパ30とテーパ面32とを介して装着溝10まで薄形波形部材20を滑らせるように案内して装着できる。このように、挿入口31を挿入するだけで装着溝10の所定位置に確実に配置できるため、取付け作業が容易になる。
【0054】
薄板波形部材20の装着後には、前述したように幅W2が幅W1よりも大きく、且つ、波高さHよりも小さく形成されていることにより、薄板波形部材20が弾性力により幅W2の大きさまで復元しながら装着溝10に係止して装着溝10への装着状態を保持でき、挿入口31からの脱落を防止できる。
【0055】
挿入口31に続けて下方側に装着溝10が形成されていることにより、ステム5の上方外部から挿入口31を介して装着溝10を目視でき、装着部10への薄板波形部材20の装着の有無や装着状態を容易に確認できる。この場合、前述したようにグランドプレート9の上部には、アクチュエータが搭載されることがあるが、このアクチュエータは出荷検査後に搭載されるため、薄板波形部材20の装着状態をアクチュエータ搭載前に確認できる。
【0056】
軸装部6のグランドプレート9に形成された装着溝10に導電性の薄板波形部材20を装着することで、外周側突部40がグランドプレート9の装着溝10に圧接し、かつ内周側突部41がステム5に圧接する。これにより、薄板波形部材20がステム外周面22と軸装部内周面側23との双方に接触し、この薄板波形部材20を介してステム5からグランドプレート9と一体化されたボンネット8、ボデー2までをアース部品として弁体3からボデー2までの導電性を確保し、薄板波形部材20を介して弁体3やステム5に帯電した静電気を確実に除去可能となる。
【0057】
この場合、ステム5の操作等により弁体3に静電気が発生すると、弁体3に帯電した静電気は金属同士で直接接触しているステム5に導電される。この静電気は、薄板波形部材20を介してグランドプレート9に導電され、次いで、グランドプレート9に直接接触しているボンネット8、さらには、ボンネット8と直接接触しているボデー2に導電されることで、弁体3への帯電が防止される。ボデー2に導電された静電気は、このボデー2と直接接触しているキャップ2a、キャップ2aに金属製ボルトを介して接続される配管(何れも図示せず)に導電され、外部に放電される。
【0058】
薄板波形部材20は、装着溝10におけるステム5と軸装部6との対向位置で弾性力により復元してこれら双方に接触するようにしていることで、弁体3をステム5により回動させた場合にも、薄板波形部材20のステム5及び軸装部6双方への接触状態を弾性力により確保でき、長期に渡って帯電防止性能を維持できる。
【0059】
図7においては、薄板波形部材の他例を示している。この薄板波形部材50は、線状の材料が波形に形成されて設けられ、上記の薄板波形部材20の場合と同様に、
図2における軸装部内周面23、ステム外周面22に圧接可能になる外周側突部40、内周側突部41が設けられる。この薄板波形部材50を
図2〜
図4の装着溝10に装着した場合にも、前記の薄板波形部材20と同等の機能が発揮される。この場合、薄板波形部材50の断面が円形状になることで歪みが生じる可能性が生じるが、バルブ本体1の組立てと同時にこの薄板波形部材50を挿入すれば、装着溝10への装着が容易になる。その際、薄板波形部材50を装着溝10に斜めに傾けるように装着することで確実に脱落が防止される。さらに、薄板波形部材の断面形状は、このような円形状や前記の矩形状以外であってもよく、各種の形状に設けることができる。
【0060】
図8においては、帯電防止機能付バルブの装着治具(以下、治具本体60という)を用いて、例えば、薄板波形部材20を装着する場合を示している。治具本体60は、薄板波形部材20をグランドプレート9に簡単に装着するために用いられる。
治具本体60は、例えば金属により一体成形され、円筒体61と環状の環状突部62とを有している。円筒体61の中央には貫通穴63が形成され、円筒体61の端部側に環状突部62が設けられている。環状突部62の厚さSは、挿入口31を構成するテーパ30とテーパ面32との間、具体的にはステム5の最大外周とグランドプレート9の最小内周との間に挿入可能な寸法に設けられる。環状突部62の高さTは、薄板波形部材20を装着溝10に挿入可能であり、この薄板波形部材20を下方に押し過ぎない寸法に設けられる。具体的には、高さTは、グランドプレート9の上面(装着溝10近傍の上面)から装着溝10の上端までの長さと略同じ寸法に設けられる。貫通穴63は、ステム5を挿入可能に、このステム5の軸径に合わせた内径寸法に設けられる。
【0061】
図4、
図8において、薄板波形部材20の装着の際には、先ず、この薄板波形部材20をテーパ30とテーパ面32との間から軽く挿入する。続いて、貫通穴63にステム5を挿入するようにしながら、薄板波形部材20を挿入した装着溝10とステム5との間に環状突部62を挿入するように治具本体60を上方より装着する。これにより、環状突部62が薄板波形部材20を装着方向に押圧し、この薄板波形部材20を湾曲状態で装着溝10まで案内して係止させることができる。
【0062】
この場合、薄板波形部材20は、テーパ30とテーパ面32とにより径方向に押し潰されながら挿入され、装着溝10まで押し込まれたときに弾性力により径方向に拡がることでこの装着溝10に固定される。その際、薄板波形部材20は、装着溝10に達すると同時に瞬時に拡がって接触音を発するため、この接触音を確認するまで治具本体60を挿入することで薄板波形部材20を確実に装着溝10に装着できる。このように治具本体60を用いるようにすれば、薄板波形部材20の装着がより簡単になるが、必ずしも治具本体60を用いて装着することはなく、手指等により直接装着してもよい。
【0063】
図9においては、薄板波形部材20の他の装着例を示しており、例えば、この薄板波形部材20を軸装部6におけるボンネット8に装着したものである。この場合、ボンネット8の接液部分の上方、具体的には軸シール位置であるOリング7の上方に環状の装着溝70を設け、この装着溝70に薄板波形部材20を装着するようにする。組み立て時には、装着溝70に沿わせるように薄板波形部材20を装着し、その後、ステム5の上部からこのボンネット8をボデー2に装着すればよい。この場合の薄板波形部材20の長さは、組み立て後の脱落を防ぐためにステム5の円周の50%程度に設けることが望ましく、長い寸法にすることで装着溝70への装着も容易になる。
【0064】
ボンネット8に薄板波形部材20を装着した場合には、グランドプレート9を装着する前に上方からの目視により薄板波形部材20の装着有無や装着状態を確認すればよい。グランドプレート9の装着後においては、適宜のテスタ等を用いることで薄板波形部材20を確認可能になる。薄板波形部材20をボンネット8の接液側に装着することも可能ではあるが、帯電防止機能を確実に発揮させるためには、接液部分の外側に装着することが望ましい。
【0065】
さらに、薄板波形部材20をボンネット8やグランドプレート9以外の軸装部分に設けるようにしてもよく、例えば、装着溝をボデー2に直接形成したりステム5の外周側に形成し、それぞれの装着溝に薄板波形部材を装着することもできる。何れの場合にも、前述の場合と同様に帯電防止機能を発揮するが、ボデー2への装着溝の加工は困難であり、ステム5への装着溝の加工はステム径φDを太くして強度を確保し、このステムが高強度の材料であるために加工が困難になるという問題が生じる。これらを考慮した上で、薄板波形部材20は、グランドプレート9に設けられた装着溝10に装着されていることが望ましい。なお、グランドプレート9をボンネット8に一体に設けるようにしてもよい。
【0066】
図10においては、本発明の帯電防止機能付バルブの他の実施形態を示している。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態におけるバルブ本体80は、フローティング型ボールバルブからなり、ボデー81にキャップ82をボルトナット2bにより固定したツーピース構造を有している。ボデー2内には弁体83が設けられ、この弁体83は、ボデー81上部に設けられた軸装部84に軸装されたステム85を介して回転自在に設けられている。
【0067】
弁体83の両側には、例えばPTFE製のボールシート86がそれぞれ配置されている。このため、弁体83に帯電した静電気は、ボールシート86からはボデー81、キャップ82に逃がすことのできない構造になっている。
【0068】
ボデー81、キャップ82、弁体83、ステム85、パッキン押さえ輪87は、導電性の金属、例えばSUS316などのステンレス鋼により形成される。
パッキン押さえ輪87は、軸装部84内に装着したシール用パッキン88を上方より押さえるために下部が軸装部84に挿入可能に設けられ、このパッキン押さえ輪87を図示しないボルトによりボデー81に締付けることで、パッキン88とステム85外周側との当接位置が軸シール位置となる。ステム85とボデー81(軸装部84を含む)、ステム85とパッキン押さえ輪87とは、それぞれの部品の間にステム85が回転するための隙間を設けており、非接触の状態で配置されている。図中、90は、ステム85のつば部91とボデー81との間に装着された、断面略L字形のPTFE製ステムベアリングである。また、弁体83とステム85との間には、ステム85の半径方向に図示しないばね部材を装着して導電性を確保してもよい。
【0069】
パッキン押さえ輪87の上部には環状の装着溝89が設けられ、この装着溝89に薄板波形部材20が装着されている。このように、装着溝89は、ステム85の軸シール位置(パッキン88)の上方側に設けられ、これにより薄板波形部材20が、ステム85の外周面85aと装着溝89の内周面に接触した状態で、流体が流れる接液部分の外側に配置される。
【0070】
弁体83に静電気が発生すると、この弁体83に帯電した静電気は金属同士で直接接触しているステム85に導電される。静電気は、薄板波形部材20を介してパッキン押さえ輪87に導電され、次いで、パッキン押さえ輪87に直接接触あるいはパッキン押さえ輪87をボデー81に締付け固定するボルト(図示せず)を介して間接的に接触している軸装部84(ボデー81)に導電されることで、弁体83への帯電が防止される。ボデー81に導電された静電気は、このボデー81と直接接触あるいはボルト2bを介して間接接触しているキャップ82、キャップ82に金属製ボルトを介して接続される配管(何れも図示せず)に導電される。
このようにして、前記実施形態のトラニオン型ボールバルブの場合と同様に、薄板波形部材20を介して静電気の帯電を防止できる。薄板波形部材20の取付け時には、バルブ上方よりステム85とパッキン押さえ輪87との間に容易に装着でき、外方からの目視により装着有無や装着状態の確認も可能になる。
【0071】
このフローティング型ボールバルブの場合、薄板波形部材20を接液部分に設けるようにし、この薄板波形部材20を特殊な材料で成形することで所定の流体に対応することもできる。
また、薄板波形部材をボールバルブ以外のバルブに装着することもでき、この場合にも前記と同様にステムと軸装部との間に薄板波形部材を設けることで前述の場合と同様の機能を発揮できる。